(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175650
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】複合翼およびターボ機械
(51)【国際特許分類】
F01D 5/28 20060101AFI20221117BHJP
F04D 29/32 20060101ALI20221117BHJP
F01D 5/30 20060101ALI20221117BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20221117BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20221117BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20221117BHJP
B29C 70/34 20060101ALI20221117BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20221117BHJP
B29L 31/08 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
F01D5/28
F04D29/32 A
F01D5/30
F01D25/00 L
F02C7/00 C
B29C70/16
B29C70/34
B29K105:08
B29L31:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082261
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】澤 史雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 顕一
(72)【発明者】
【氏名】宮下 妃菜子
【テーマコード(参考)】
3G202
3H130
4F205
【Fターム(参考)】
3G202EA09
3G202FA03
3G202FA11
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB52
3H130AC17
3H130BA22C
3H130BA23C
3H130CB11
3H130EB01C
3H130EC05C
3H130EC17C
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG03
4F205AH04
4F205AH31
4F205HA08
4F205HA14
4F205HA22
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HB11
4F205HF05
4F205HK03
4F205HK04
(57)【要約】
【課題】複合翼の底部において、せん断力に対する荷重を保持し、強度の高い信頼性を得る。
【解決手段】実施形態における複合翼は、ターボ機械のロータに用いられる複合翼であって、一端が前記ロータに取り付け可能で、繊維に樹脂が含有されてなる複数の複合材料層が積層されて一体的に成形されてなる根元部と、前記根元部の他端から延在する翼部と、を備え、前記複合材料層が、前記根元部を補強する部材であってスリットが形成される補強部材の前記スリットに編み込まれることで、前記補強部材が前記根元部の一部を成す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械のロータに用いられる複合翼であって、
一端が前記ロータに取り付け可能で、繊維に樹脂が含有されてなる複数の複合材料層が積層されて一体的に成形されてなる根元部と、
前記根元部の他端から延在する翼部と、
を備え、
前記複合材料層が、前記根元部を補強する部材であってスリットが形成される補強部材の前記スリットに編み込まれることで、前記補強部材が前記根元部の一部を成す、
複合翼。
【請求項2】
前記補強部材が取り付けられた前記積層された複合材料層のうち前記積層の方向に隣接する複合材料層は、前記積層の方向に互い違いに配置される、
請求項1に記載の複合翼。
【請求項3】
前記補強部材が取り付けられた前記複合材料層は、
前記積層の方向の列を一列とする複数の列の各々において積層されてなる、
請求項1または2に記載の複合翼。
【請求項4】
前記根元部の最外層には、絶縁物により分割された金属製のシースが取り付けられ、
前記シースには、前記根元部が成形されるときの前記複合材料層に含まれる樹脂の硬化乃至固化の過程をモニタリングする機器の電極が電気的に接続可能である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合翼。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の複合翼を備えるターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複合翼およびターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一部のターボ機械(turbomachinery)の回転翼においては、軽量化の為に複合材料翼である複合翼が用いられることが知られている。例えば、カーボンファイバー(carbon fiber(炭素繊維))などの繊維と、当該繊維を接着する樹脂とからなる一体成形物が複合翼として回転翼に用いられることがある(例えば特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-112132号公報
【特許文献2】特開2013-78950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1または特許文献2の開示内容においては、複合翼が回転するときに生じる遠心力によって、翼底部に応力が生じた際に基材にかかるせん断力に対する荷重が保持されない可能性がある。
【0005】
例えば、特許文献2には、複合材料製ファンブレード(fan blade)の曲面に応じて複数枚のプリプレグ(prepreg)が積層される構成が開示されている。このブレードの根元部(楔部)においては、ロータ(rotor)に対してブレードが固定される為に、楔の形状を模した構成として複数枚のシート(sheet)が積層されることが考えられる。
【0006】
しかしながら上記の根元部では、ブレードの回転による遠心力に耐える為の強固な構造が求められる。このような根元部における強固な構造が実現される為には、ブレードにおける積層されるシート同士の一体化が必要であるとともに、最低限の積層されるシートが不連続にならないように配慮される必要がある。
【0007】
しかしながら、上記構成では、楔の形状に起因して、不連続な構造を介在することは避けられず、何らかの補強材を含む構造とすることが必要となる。
その理由は、上記不連続の構造において応力が集中する場合があること、および上記不連続の構造における強度が連続部に比較して低下することである。
よって、補強材とプリプレグとが不連続である部分においては、強度を向上させ、かつ応力が集中しないようにする必要がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、底部において、せん断力に対する荷重を保持し、強度の高い信頼性を得ることが可能な複合翼およびターボ機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態における複合翼は、ターボ機械のロータに用いられる複合翼であって、一端が前記ロータに取り付け可能で、繊維に樹脂が含有されてなる複数の複合材料層が積層されて一体的に成形されてなる根元部と、前記根元部の他端から延在する翼部と、を備え、前記複合材料層が、前記根元部を補強する部材であってスリットが形成される補強部材の前記スリットに編み込まれることで、前記補強部材が前記根元部の一部を成す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複合翼の底部において、せん断力に対する荷重を保持し、強度の高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るターボ機械の複合翼の一例を示す断面図。
【
図2】実施形態に係るターボ機械の複合翼の根元部の補強部材とプリプレグとの組み合わせの構造の一例を示し、(a)は断面図、(b)は正面図。
【
図3】実施形態に係るターボ機械の複合翼の根元部の複数のプリプレグおよび補強部材の配置の一例を示し、(a)は断面図、(b)は正面図。
【
図4】実施形態に係るターボ機械の複合翼の根元部の複数のプリプレグおよび補強部材の配置の一例を示し、(a)は断面図、(b)は正面図。
【
図5】実施形態に係るターボ機械の複合翼およびシース(sheath)の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、実施形態に係るターボ機械の複合翼の一例を示す断面図である。
図1に示された例では、ターボ機械に備えられる複合翼10は、先端10aから基端10bまで延在する。複合翼10は、基端10b側において図示しないロータ、例えばタービンロータの外周部に取付け可能である。ここで、
図1に示される方向Zは、複合翼10が延在する方向、すなわち先端10aから基端10bまでに沿った方向である。
【0013】
この方向Zは、複合翼10の長手方向であり、ロータの径方向(放射方向)に相当する。
図1に示される方向Yは、方向Zに直交する方向であって、ロータの軸方向に沿った方向である。
図1に示される方向Xは、方向Y及び方向Zに直交する方向であり、ロータの周方向接線に沿った方向である。
【0014】
複合翼10は、翼部(翼形部)11と根元部(翼根部)12とを有する。翼部11は、複合翼10がロータに取り付けられた状態で、ロータの回転に伴ってターボ機械内の流体を圧縮する翼である。翼部11は、先端10aから翼端部(翼形端部)11aまで複合翼10の方向Z(長手方向)に沿って延びる。根元部12は、翼部11の末端である翼端部11aに設けられる。言い換えると、翼部11は、根元部12からみた先端10a側から方向Zに沿って翼端部11aまで延在する。
【0015】
この複合翼10の翼部11および根元部12は、強化繊維および熱硬化性の樹脂を含むシート状の複数の複合材料層であるプリプレグ層(以下、プリプレグと称することがある)14がX方向に沿って積層されて平板形状に成形された後で、例えば加熱および加圧されることで、積層されたプリプレグ14同士が固着して一体に成形されてなる。
【0016】
上記プリプレグは、強化繊維を含み、さらに熱硬化性の樹脂を含む。このプリプレグは、例えば、ガラスまたはカーボンなどの織布に樹脂が含浸されて、半硬化させた耐熱、高強度、かつ軽量な複合素材である。
図1では、シート状の複数のプリプレグ14が上記積層されて上記一体に根元部12が成形されてなる例が示される。
【0017】
また、上記のように加熱および加圧されることで、上記一体に成形された部材同士から所定の接着力が生じる部材であれば、上記の熱硬化性の樹脂を含むプリプレグに代えて、熱可塑性の樹脂がマトリックス(matrix)化されるシートから成形される部材が用いられても良い。
【0018】
図1に示された例では、上記積層される複数のプリプレグ14のうち一部のプリプレグ14に補強部材13が取り付けられる。この補強部材13は、プリプレグ14のシートが、根元部12において、この根元部12の形状にあわせて一体に成形されながら強度を保持する為に設けられる部材である。この補強部材13は、当該補強部材13にプリプレグ14が取り付けられることで根元部12の一部を構成する。
【0019】
図1に示された例では、積層されたプリプレグ14は、補強部材13が取り付けられるプリプレグ14と、補強部材13が取り付けられないプリプレグ14とが、積層の方向に沿って交互に配置される。
【0020】
図2は、実施形態に係るターボ機械の複合翼の根元部の補強部材とプリプレグとの組み合わせの構造の一例を示し、(a)は断面図であり、(b)は正面図である。この
図2では、
図1に示された積層されるプリプレグ14のうち補強部材13が設けられた1つのプリプレグ14が示される。
図2(a)の紙面横方向はX方向であって、
図2(b)の紙面横方向は、X方向から90度傾いたY方向である。
図2(a)および
図2(b)に示されるように、補強部材13には、対応するプリプレグ14が編み込まれることが可能な、スリット(slit)状の少なくとも1箇所の孔が形成される。
補強部材13の長手部分とプリプレグ14の長手部分とが揃えられた状態で、補強部材13の孔にプリプレグ14が挿入されて編み込まれることで、補強部材13がプリプレグ14に固定され得る。このように、補強部材13がプリプレグ14に固定されたときは、根元部12にかかるせん断力に対して好適な特性が得られ、根元部12の強度を増加させることができる。
【0021】
また、補強部材13に形成される孔は、プリプレグ14が編み込まれることが可能な、長手方向、すなわちZ方向に沿った複数箇所の孔であってもよい。このように、補強部材13に形成される孔が複数箇所の孔であるときは、この補強部材13がプリプレグ14に固定されたときの応力が効果的に分散され、根元部12の良好な強度が得られる。
【0022】
補強部材13は、根元部12に生じる応力を有効に伝達し、かつプリプレグ14との接着が容易なものであれば良く、その目的に合致するものであれば、例えば樹脂、セラミックス(ceramics)、金属、あるいはその複合材料でも良い。
【0023】
図3および
図4は、実施形態に係るターボ機械の複合翼の根元部の複数のプリプレグおよび補強部材の配置の一例を示し、(a)は断面図であり、(b)は正面図である。これら
図3および
図4では、
図1に示された積層されるプリプレグ14のうち補強部材13が設けられるプリプレグ14の各々が抜き出されて示される。
これら示されるプリプレグ14は、補強部材13が設けられないプリプレグ14を挟んだ複数のプリプレグ14である。
図3(a)および
図4(a)の紙面横方向はX方向であって、
図3(b)および
図4(b)の紙面横方向は、X方向から90度傾いたY方向である。
【0024】
図3(a)および
図3(b)に示された例では、根元部12の複数のプリプレグ14は、
図1に示される複数のプリプレグであることに加え、プリプレグ14の各々が、積層の方向であるX方向に互い違いに配置され、これらのプリプレグ14の各々に補強部材13が取り付けられる。
【0025】
すなわち、
図3(a)および
図3(b)に示された例では、1つのプリプレグを挟んで隣接するプリプレグ同士がX方向に揃えられて配置される。
図3(a)および
図3(b)に示された例では、
図1に示された例との間でプリプレグ14の数が同じで、かつ、各々のプリプレグ14が積層の方向に沿って所謂ジグザグ状に配置される。
【0026】
また、
図4(a)および
図4(b)に示された例では、根元部12のプリプレグ14は、
図3(a)および
図3(b)に示される互い違いの配置を成すことに加え、X方向の2つの列の各々に複数の積層したプリプレグ14が設けられる、いわゆる2並列構造を成す。これらのプリプレグの各々に補強部材13が取り付けられることで、補強部材13は、上記互い違いの配置かつ上記2並列構造を成す。
【0027】
図4(a)および
図4(b)に示された例では、
図1、
図3(a)および
図3(b)に示された例と比較して、プリプレグ14の数が2倍であって、かつ、2列分のプリプレグ14が積層の方向に沿ってジグザグ状に配置される。つまり、
図4(a)および
図4(b)に示された例では、補強部材13が取り付けられたプリプレグ14は、当該プリプレグ14の積層の方向の列を一列とする複数の列の各々において積層されてなる。
なお、上記複数のプリプレグ14は、上記互い違いの配置でなく、単にX方向の2つの列の各々に複数の積層したプリプレグ14が設けられる2並列構造を成してもよい。
【0028】
図5は、実施形態に係るターボ機械の複合翼およびシースの一例を示す断面図である。
図1などに示された、補強部材13が配置される根元部12の最外層には、
図5に示されるように金属製のシース21a,21bが取り付けられても良い。
【0029】
図5に示された例では、根元部12の最外層における、X方向に並んだプリプレグ14および当該プリプレグ14に編み込まれる補強部材13のうち、Y方向からみた一方の側における基端10b付近以外の部分が、X方向を平板方向とするシース21aで覆われ、根元部12の最外層におけるX方向に並んだプリプレグ14および補強部材13のうち、Y方向からみた他方の側における基端10b付近以外の部分が、X方向を平板方向とするシース21bで覆われる。
【0030】
この
図5に示された例では、シース21aは、絶縁物22によりX方向からみた一端側と他端側とに隔てられた2分割構造を成す。この分割されたシース21aの一方および他方には、計測装置31のプローブが電気的に接続可能である。
【0031】
シース21aに上記プローブが電気的に接続された状態で、計測装置31は、例えば電極に電圧を印加して、電流値を計測し、この電流値の変化に基づいて、プリプレグ14の成形樹脂の硬化ないし固化の過程をモニタリングすることができる。
【0032】
同様に、上記他方の側のシース21bは、シース21b用の絶縁物によりX方向からみた一端側と他端側とに隔てられた2分割構造を成し、この分割されたシース21bの一方および他方に計測装置31のプローブが電気的に接続された状態で、上記モニタリングが実施され得る。
【0033】
以上説明したように、実施形態に係るターボ機械の複合翼においては、根元部12のプリプレグ14が補強部材13のスリットに対して編み込まれる構造が保持され得る為、根元部12のプリプレグ14と補強部材13との間に生じるせん断力に対して好適な特性を発揮することができ、根元部12の強度を増大させることが可能である。
【0034】
また、補強部材13が、スリット状の複数の孔が形成される構造を有し、この補強部材13が、積層される複数のプリプレグ14の各々に対応して配置されることで、根元部12における応力を効果的に分散し、根元部12の良好な強度を発揮することが可能となる。
【0035】
さらに、補強部材13が取り付けられたプリプレグ14が積層の方向に互い違いに配置されることで、プリプレグ14の繊維と補強部材13とが密に配置されることになる為、根元部12の強度を効果的に高めることが可能である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
10…複合翼、11…翼部、12…根元部、13…補強部材、14…プリプレグ層、21a,21b…シース、22…絶縁物、31…計測装置。