(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175664
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】反応ユニットの製造方法、反応ユニットの製造キット、及び検出対象物質の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20221117BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G01N35/00 D
G01N33/543 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082279
(22)【出願日】2021-05-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 克則
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058CC02
2G058CC17
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】安価な方法でウェルからの液漏れを防止することが可能な、反応ユニットの製造方法等の提供。
【解決手段】(a)ポリプロピレンで構成される面をもつ第1の基板と、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される面をもつ第2の基板と、を準備する工程と、(b)第1の基板の第1の面において、貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物を塗布する工程と、(c)貫通孔の開口部の周囲に塗布された光硬化性組成物を硬化させて、硬化樹脂層を形成する工程と、(d)第2の基板の第1の面に、第1の基板の第1の面に形成された硬化樹脂層が密着するように固定し、トラック領域により形成される底面と貫通孔により形成される側面とを有するウェルを形成する工程と、を含む、反応ユニットの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有する、第1の基板と、
第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する、第2の基板と、
を準備する工程と、
(b1)前記第1の基板の前記第1の面において、前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物を塗布する工程と、
(c1)前記貫通孔の開口部の周囲に塗布された前記光硬化性組成物に光を照射して、硬化樹脂層を形成する工程と、
(d1)前記(c1)の工程後、前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記硬化樹脂層が密着することにより形成されるウェルであって、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルを形成する工程と、
を含む、反応ユニットの製造方法。
【請求項2】
(a2)第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有する、第1の基板と、
第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する、第2の基板と、
を準備する工程と、
(b2)前記第1の基板の前記第1の面において、前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物を塗布する工程と、
(c2)前記貫通孔の開口部の周囲に塗布された前記光硬化性組成物に光を照射して、半硬化樹脂層を形成する工程と、
(d2)前記(c2)の工程後、前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記半硬化樹脂層が密着することにより形成されるウェルであって、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルを形成する工程と、
(e2)前記(d2)の工程後、前記半硬化樹脂層に光を照射して、前記第1の基板の前記第1の面と、前記第2の基板の前記第1の面と、を接着する工程と、
を含む、反応ユニットの製造方法。
【請求項3】
第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有し、前記第1の面における前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が光硬化してなる硬化樹脂層が形成されている、第1の基板と、
第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する第2の基板と、
を含み、
前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記硬化樹脂層が密着するように固定したとき、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成される、
反応ユニットの製造キット。
【請求項4】
第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有し、前記第1の面における前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が光半硬化してなる半硬化樹脂層が形成されている、第1の基板と、
第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する第2の基板と、
を含み、
前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記半硬化樹脂層が密着するように接着したとき、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成される、
反応ユニットの製造キット。
【請求項5】
(i)請求項1又は2に記載の反応ユニットの製造方法により製造され反応ユニットの前記ウェルであって、前記トラック領域に捕捉用抗体が固定されている前記ウェルに、
前記捕捉用抗体に特異的結合性を有する検出対象物質を含有する試料を添加し、前記捕捉用抗体と前記検出対象物質との結合反応を行う工程と、
(ii)前記捕捉用抗体に結合した前記検出対象物質と、前記検出対象物質に特異的結合性を有する検出用抗体が固定されたナノ粒子が接触するようにすることにより、前記検出対象物質と、前記検出用抗体との結合反応を行う工程と、
(iii)前記工程(ii)後、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離する工程と、
(iv)前記分離された第2の基板に捕捉された前記ナノ粒子を計数する工程と、
を含む、検出対象物質の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応ユニットの製造方法、反応ユニットの製造キット、及び検出対象物質の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応に代表される免疫化学的分析方法で、検出対象物質を前記検出対象物質に特異的に結合する抗体等を固定したナノ粒子等(標識粒子)により標識する方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の方法では、抗体を固定した光ディスク基板上に反応ウェルを設けて、そのウェル中で液中抗原抗体反応を行っている。次いで、光ディスク基板上に捕捉された検出対象物質に、抗体を固定したナノ粒子を結合させ、光ディスク再生の技術を応用して、光ディスク基板上に捕捉されたナノ粒子を計測している。
【0003】
上記方法では、反応ウェル中に、水溶性の試薬類を滴下して、液中抗原抗体反応を行う。そのため、反応ウェルと光ディスク基板との接触部は水溶液が漏れないように密着させる必要がある。従来、反応ウェルと光ディスク基板との密着部には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)製のゴムパッキンが用いられ、これにより液漏れを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PDMS製のゴムパッキンは、一度設計して成形等により作製すると、サイズの変更等を行う場合、もう一度設計して作製し直す必要がある。そのため、サイズの変更等には、長時間の作製期間と追加費用が必要である。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な方法でウェルからの液漏れを防止することが可能な、反応ユニットの製造方法、及び反応ユニット製造キット、並びに前記反応ユニットを用いた検出対象物質の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を含む。
[1](a1)第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有する、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する、第2の基板と、を準備する工程と、(b1)前記第1の基板の前記第1の面において、前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物を塗布する工程と、(c1)前記貫通孔の開口部の周囲に塗布された前記光硬化性組成物に光を照射して、硬化樹脂層を形成する工程と、(d1)前記(c1)の工程後、前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記硬化樹脂層が密着することにより形成されるウェルであって、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルを形成する工程と、を含む、反応ユニットの製造方法。
[2](a2)第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有する、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する、第2の基板と、を準備する工程と、(b2)前記第1の基板の前記第1の面において、前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物を塗布する工程と、(c2)前記貫通孔の開口部の周囲に塗布された前記光硬化性組成物に光を照射して、半硬化樹脂層を形成する工程と、(d2)前記(c2)の工程後、前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記半硬化樹脂層が密着することにより形成されるウェルであって、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルを形成する工程と、(e2)前記(d2)の工程後、前記半硬化樹脂層に光を照射して、前記第1の基板の前記第1の面と、前記第2の基板の前記第1の面と、を接着する工程と、を含む、反応ユニットの製造方法。
[3]第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有し、前記第1の面における前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が光硬化してなる硬化樹脂層が形成されている、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する第2の基板と、を含み、前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記硬化樹脂層が密着するように固定したとき、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成される、反応ユニットの製造キット。
[4]第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有し、前記第1の面における前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が光半硬化してなる半硬化樹脂層が形成されている、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する第2の基板と、を含み、前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記半硬化樹脂層が密着するように接着したとき、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成される、反応ユニットの製造キット。
[5](i)[1]又は[2]に記載の反応ユニットの製造方法により製造され反応ユニットの前記ウェルであって、前記トラック領域に捕捉用抗体が固定されている前記ウェルに、前記捕捉用抗体に特異的結合性を有する検出対象物質を含有する試料を添加し、前記捕捉用抗体と前記検出対象物質との結合反応を行う工程と、(ii)前記捕捉用抗体に結合した前記検出対象物質と、前記検出対象物質に特異的結合性を有する検出用抗体が固定されたナノ粒子が接触するようにすることにより、前記検出対象物質と、前記検出用抗体との結合反応を行う工程と、(iii)前記工程(ii)後、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離する工程と、(iv)前記分離された第2の基板に捕捉された前記ナノ粒子を計数する工程と、を含む、検出対象物質の測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な方法でウェルからの液漏れを防止することが可能な、反応ユニットの製造方法、及び反応ユニット製造キット、並びに前記反応ユニットを用いた検出対象物質の測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2A】
図1に示すポリプロピレン基板10の上面図である。
【
図2B】
図2Aに示すポリプロピレン基板10のB-B切断線による断面図である。
【
図3】シクロオレフィンポリマー(COP)/シクロオレフィンコポリマー(COC)基板の一例の斜視図である。
【
図4A】
図3に示すCOP/COC基板20の上面図である。
【
図4B】
図4Aに示すCOP/COC基板20のトラック領域21の構造を説明する模式図。
【
図5】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図6A】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図6B】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図7A】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットの製造方法により製造された反応ユニットの一例を示す模式図である。
【
図7B】
図7Aに示す反応ユニット101のB-B切断線による断面図である。
【
図8A】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図8B】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図8C】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図9A】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットの製造方法により製造された反応ユニットの一例を示す模式図である。
【
図9B】
図9Aに示す反応ユニット102のB-B切断線による断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットを用いた検出対象物質の測定方法の一工程を説明する模式図である。
【
図11A】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットを用いた検出対象物質の測定方法の一工程を説明する模式図である。
【
図11B】本発明の一実施形態にかかる反応ユニットを用いた検出対象物質の測定方法の一工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。図面中、同一又は相当部分には同一又は対応する符号を付し、重複する説明は省略する。各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
【0011】
「抗体」とは、抗原結合活性を有する免疫グロブリンを意味する。抗体は、抗原結合活性を有していれば、インタクトな抗体である必要はなく、抗原結合断片であってもよい。本明細書において使用する「抗体」という用語は、抗原結合断片を包含する。「抗原結合断片」とは、抗体の一部を含むポリペプチドであって、元の抗体の抗原結合性を維持しているポリペプチドである。抗原結合断片は、元の抗体の6つの相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)を全て含むものが好ましい。すなわち、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3を全て含むことが好ましい。抗原結合断片としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2等が挙げられる。
【0012】
抗体は、いずれの生物に由来するものであってもよい。抗体が由来する生物としては、例えば、哺乳類(ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、イヌ等)、鳥類(ニワトリ、ダチョウ)等が挙げられるが、これらに限定されない。
抗体は、免疫グロブリンのいずれのクラス及びサブクラスであってもよい。抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
抗体は、免疫法、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法等の公知の方法により作製することができる。
【0013】
「特異的結合性を有する」とは、対象とする物質に高い結合性を有し、他の物質にはほとんど結合性を有しないことを意味する。
【0014】
[反応ユニットの製造方法]
1実施形態において、本発明は、反応ユニットの製造方法を提供する。本実施形態の製造方法により得られる反応ユニットは、検出対象物質を捕捉するための抗原抗体反応を行うためのものである。抗原抗体反応後は、光ピックアップを備えた計数装置(ExoCounter(登録商標)等)を用いて、検出対象物質の測定が行われる。
【0015】
<第1実施形態>
1実施形態において、反応ユニットの製造方法は、(a1)第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有する、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する、第2の基板と、を準備する工程と、(b1)前記第1の基板の前記第1の面において、前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物を塗布する工程と、(c1)前記貫通孔の開口部の周囲に塗布された前記光硬化性組成物を硬化させて、硬化樹脂層を形成する工程と、(d1)前記(c1)の工程後、前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記硬化樹脂層が密着することにより形成されるウェルであって、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルを形成する工程と、を含む。
【0016】
(工程(a1))
工程(a1)では、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有する、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する、第2の基板と、を準備する。
【0017】
≪第1の基板(ポリプロピレン基板)≫
図1は、反応ユニットの製造に用いる第1の基板(以下、「ポリプロピレン基板」ともいう)の一例を示す斜視図である。
図2Aは、
図1に示すポリプロピレン基板10の上面図である。
図2Bは、
図2Aに示すポリプロピレン基板10のB-B切断線による断面図である。
ポリプロピレン基板10は、位置決め穴12と、1個以上の貫通孔11とを有している。
【0018】
ポリプロピレン基板10は、円盤形状をしており、中央に位置決め穴12を備えている。ここでは、中央に位置決め穴12を備えるものとして説明しているが、位置決めが可能な構造であればよい。例えば、位置決め穴12の代わりに突起構造物であってもよい。ポリプロピレン基板10は、第1の面と、第2の面とを有している。第1の面は、
図1、
図2A及び
図2Bにおける下方の面である。第2の面は、
図1、
図2A及び
図2Bにおける上方の面である。
ポリプロピレン基板10は、少なくとも第1の面がポリプロピレンで構成されている。ポリプロピレン基板10は、全体がポリプロピレンで構成されていてもよく、他の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン等)で構成される基板において第1の面がポリプロピレンでコーティングされたものでもよい。
ポリプロピレン基板10のサイズは、後述のCOP/COC基板20のサイズに合わせて、適宜選択することができる。ポリプロピレン基板10は、例えば、最外周円の直径を約7~15cmとすることができる。
ポリプロピレン基板10の厚みは、特に限定されない。ポリプロピレン基板10の厚みは、例えば、5~15mmとすることができる。
ポリプロピレン基板10は、軽量化、低コスト化のために、中空であってもよい。
【0019】
貫通孔11は、ポリプロピレン基板10の第1の面から第2の面に貫通して形成されている。貫通孔11は、円筒形状をしている。貫通孔11は、ポリプロピレン基板10の周方向に等間隔で8個形成されている。貫通孔11の数及び配置は、これに限定されず、任意の数及び配置とすることができる。貫通孔11のサイズは、特に限定されない。貫通孔11は、例えば、直径5~15mmの円筒形状とすることができる。
【0020】
≪第2の基板(COP/COC基板)≫
図3は、反応ユニットの製造に用いる第2の基板(以下、「COP/COC基板」ともいう)の一例を示す斜視図である。
図4Aは、
図3に示すCOP/COC基板20の上面図である。COP/COC基板20は、トラック領域21と、位置決め穴22とを有している。ここでは、中央に位置決め穴22を備えるものとして説明しているが、位置決めが可能な構造であればよい。例えば、位置決め穴22の代わりに突起構造物であってもよい。
【0021】
COP/COC基板20は、円盤形状をしており、中央に位置決め穴22を備えている。COP/COC基板20は、第1の面と、第2の面とを有している。第1の面は、
図3、
図4Aにおける上方の面である。第2の面は、
図3、
図4Aにおける下方の面である。
COP/COC基板20は、少なくとも第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成されている。COP/COC基板20は、全体がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成されていてもよく、他の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート等)で構成される基板において第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種でコーティングされたものでもよい。COP/CPC基板の第1の面は、シクロオレフィンポリマーで構成されてもよく、シクロオレフィンコポリマーで構成されてもよく、シクロオレフィンポリマーとシクロオレフィンコポリマーとの混合物で構成されてもよい。
COP/COC基板20は、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同様のサイズとすることができる。COP/COC基板20は、例えば、直径を約7~15cmとすることができる。
【0022】
図4Bは、トラック領域21の構造を説明する模式図である。トラック領域21には、凹部23及び凸部24が、COP/COC基板20の半径方向に交互に配置されている。凹部23及び凸部24は、トラック領域21の内周部から外周部に向かってスパイラル状に形成されている。凹部23は光ディスクのグルーブに相当する。凸部24は光ディスクのランドに相当する。
【0023】
トラック領域21には、捕捉用抗体30が固定されていてもよい。捕捉用抗体30は、凹部23のみに固定されていてもよく、凹部23及び凸部24の両方に固定されていてもよい。トラック領域21に対する捕捉用抗体30の固定は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、トラック領域21を、表面疎水的相互作用によりタンパク質が物理吸着されるように表面加工してもよく、アミノ基若しくはカルボキシル基等を有するように表面加工してもよい。あるいは、アビジン-ビオチン結合を利用してもよい。
【0024】
(工程(b1))
工程(b1)では、ポリプロピレン基板の第1の面において、貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物を塗布する。
【0025】
≪光硬化性組成物≫
光硬化性組成物は、光重合性化合物を含有する組成物である。光重合性化合物は、光重合性基を有し、光照射により重合して硬化する。光重合性基は、特に限定されないが、例えば、ビニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基等が挙げられる。光重合性化合物の重合により形成される樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。弾性を有し、ポリプロピレン基板及びCOP/COC基板の間からの液漏れ防止効果が高いことから、アクリル樹脂が好ましい。後述の第2実施形態の方法に用いる場合、ポリプロピレン基板及びCOP/COC基板の間を光硬化性組成物により接着し、一連の反応工程を完了させ、その後測定工程へ進行させる。その際は、ポリプロピレン基板からCOP/COC基板を光硬化性組成物との界面で剥離する。その時に、COP/COC基板表面に残渣を残さず、剥離しやすい特性をもつ樹脂であることが好ましい。
【0026】
アクリル樹脂を形成する光重合性化合物としては、メタクリロイル基又はアクリロイル基を含むモノマー、オリゴマー、及びポリマー、並びに光重合性基を含むアクリル樹脂が挙げられる。
【0027】
メタクリロイル基又はアクリロイル基を含む単官能モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等の脂肪族多環構造を含む(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の脂肪族単環構造を含む(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の鎖状構造を含む(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート等の芳香族環構造を含む(メタ)アクリレート(以下「(B2)成分」という);テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
メタクリロイル基又はアクリロイル基を含む2官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
メタクリロイル基又はアクリロイル基を含む3官能以上のモノマーとしては、例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス-(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌレートトリアクリレート、トリス-(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌレートトリメタクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能モノマー;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の5官能以上のモノマー等が挙げられる。
【0030】
メタクリロイル基又はアクリロイル基を含むオリゴマー又はポリマーは、上記のようなモノマーを重合したものであってもよい。
光重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
光硬化性組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤の種類は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。光重合開始剤の種類としては、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類等のカルボニル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、芳香族オニウム塩化合物、チオ化合物、オキシムエステル化合物、アルキルアミン化合物、オニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、及びピリジニウム塩等が挙げられる。光重合開始剤は、光重合性化合物の種類に応じて適宜選択することができる。
光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
光硬化性組成物は、光重合性化合物、及び光重合開始剤等の任意成分を溶解又は分散させて混合するために、溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。溶剤としては、例えば、アルコール類、エーテル類等の有機溶剤を用いることができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
光硬化性組成物は、劣化防止剤、離型剤、希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、難燃剤、可塑剤、及び界面活性剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
≪光硬化性組成物の塗布≫
図5は、工程(b1)を説明する模式図である。ポリプロピレン基板10の第1の面において、貫通孔11の周囲に、光硬化性組成物40を塗布する。これにより、貫通孔11の周囲に、光硬化性組成物層41が形成される。
図5の例では、光硬化性組成物40の塗布に、塗布装置50が用いられている。
【0035】
光硬化性組成物層41は、貫通孔11の周囲に、切れ目なく形成される。光硬化性組成物層41は、貫通孔11の開口部の形状に応じて、貫通孔11の開口部の端部に沿って形成されることが好ましい。
図5の例では、光硬化性組成物層41は、円筒状の貫通孔11の開口部の円形状に沿って、リング状に形成されている。
光硬化性組成物層41の幅は、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20との間からの液漏れが防止するために、均一の幅及び厚さで形成されることが好ましい。光硬化性組成物層41の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5~5mm程度が挙げられる。光硬化性組成物層41の幅は、特に限定されない。光硬化性組成物層41の幅は、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20との間からの液漏れが防止できる程度の幅であればよい。ポリプロピレン基板10の貫通孔11は円筒形状に基づき形成される。貫通孔11を形成する円筒形状構造物の端部が、ポリプロピレン基板10の第1面側に突出している場合、この円筒形状構造物の外壁厚、即ち円筒形状成型基材部における内径から外径までの幅を円筒形状構造物端部の幅とすることができる。この場合、光硬化性組成物層41の幅は、上述の円筒形状構造物端部の幅と同じであることが好ましい。つまり、光硬化性組成物層41の幅は、COP/COC基板20に接する側のポリプロピレン基板10の貫通孔11を構成する円筒部の先端における外壁厚と同じ幅とすることが更に好ましい。貫通孔11を形成する円筒形状構造物の端部が、ポリプロピレン基板10の第1面側に突出している場合、光硬化性組成物層41の幅は、前記突出している円筒形状構造物端部の幅と同程度とすることが好ましい。光硬化性組成物層41の幅としては、例えば、0.5~10mm程度が挙げられる。
【0036】
(工程(c1))
工程(c1)では、前記貫通孔の開口部の周囲に塗布された前記光硬化性組成物を硬化させて、硬化樹脂層を形成する。
【0037】
図6Aは、工程(c1)を説明する模式図である。ポリプロピレン基板10の貫通孔11の周囲に形成された光硬化性組成物層41に対して、光照射装置60を用いて、光照射する。これにより、光硬化性組成物層41が硬化して、硬化樹脂層42が形成される。
【0038】
「硬化」とは、光硬化性組成物中の実質的に全ての重合性基が反応した状態を意味する。「実質的に全ての重合性基が反応した状態」とは、光硬化性組成物中のほとんどの重合性基が反応しており、未反応の重合性基が存在したとしても無視できる程度であることを意味する。光硬化性組成物中光硬化性組成物が硬化して形成された硬化樹脂層に対して、光を照射しても、それ以上の硬化は進行しない。
【0039】
光照射に用いる光の種類は、特に限定されず、光硬化性組成物が含有する光重合性化合物の種類に応じて、適宜選択することができる。光重合性化合物がアクリル系化合物である場合、照射する光としては、例えば、紫外線、可視光線等が挙げられる。照射光の波長としては、例えば、200~500nmが挙げられる。硬化に必要な積算光量としては、例えば、500~5000mJ/cm2が挙げられる。紫外線又は可視光線の光源としては、例えば、半導体励起固体レーザ、カーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、白色LED等が挙げられる。
【0040】
(工程(d1))
工程(d1)では、COP/COC基板の第1の面に、ポリプロピレン基板の第1の面に形成された硬化樹脂層が密着するように固定し、トラック領域により形成される底面と貫通孔により形成される側面とを有するウェルを形成する。
【0041】
図6B及び
図7Aは、工程(d1)を説明する模式図である。
図6Bに示すように、硬化樹脂層42が形成されたポリプロピレン基板10の第1の面と、COP/COC基板20の第1の面とが対向するように、ポリプロピレン基板10の第1の面にCOP/COC基板20を載置する。この状態で、固定具70等を用いて固定し、ポリプロピレン基板10の第1の面と、COP/COC基板20の第1の面に形成された硬化樹脂層とを密着させる(
図7A参照)。この際に、ポリプロピレン基板10の第2の面における貫通孔11の開口部が、固定具70により塞がれないように、固定を行う。これにより、COP/COC基板20のトラック領域21を底面とし、ポリプロピレン基板10の貫通孔11の内壁を側面とする、ウェルが形成される。すなわち、COP/COC基板20の第1の面に、ポリプロピレン基板10の第1の面に形成された硬化樹脂層42が密着することにより、底面がトラック領域21であり、側面が貫通孔11であるウェルが形成される。前記ウェルは、抗原抗体反応のための反応槽として用いられる。硬化樹脂層42は、パッキンとして機能し、トラック領域21と、ポリプロピレン基板10との隙間からの液漏れを防ぐ。
このようにして、トラック領域21で構成される底面と、貫通孔11で構成される側面とを有するウェルを備えた、反応ユニット101を得ることができる。
【0042】
図7Bは、
図7Aの反応ユニット101のB-B切断線による断面図である。ポリプロピレン基板10の貫通孔11の周囲には、硬化樹脂層42が形成されている。ポリプロピレン基板10と、COP/COC基板20とは、硬化樹脂層42を介して密着し、この状態で、固定具70により固定されている。硬化樹脂層42は、弾性を有しており、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20との間を塞ぐパッキンとして機能する。そのため、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20との間からの液漏れを効果的に防止することができる。
【0043】
<第2実施形態>
1実施形態において、反応ユニットの製造方法は、(a2)第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有する、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマーで構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する、第2の基板と、を準備する工程と、(b2)前記第1の基板の前記第1の面において、前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物を塗布する工程と、(c2)前記貫通孔の開口部の周囲に塗布された前記光硬化性組成物を半硬化させて、半硬化樹脂層を形成する工程と、(d2)前記(c2)の工程後、前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記半硬化樹脂層が密着することにより形成されるウェルであって、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルを形成する工程と、(e2)前記(d2)の工程後、前記半硬化樹脂層を硬化させて、前記第1の基板の前記第1の面と、前記第2の基板の前記第1の面と、を接着する工程と、を含む。
【0044】
(工程(a2)及び工程(b2))
工程(a2)は、前記工程(a1)と同様である。工程(b2)は、前記工程(b1)と同様である。
【0045】
(工程(c2))
工程(c2)では、貫通孔の開口部の周囲に塗布された前記光硬化性組成物を半硬化させて、半硬化樹脂層を形成する。
【0046】
図8Aは、工程(c2)を説明する模式図である。ポリプロピレン基板10の貫通孔11の周囲に形成された光硬化性組成物層41に対して、光照射装置60を用いて、光照射する。このとき、光硬化性組成物層41の硬化反応の進行途中で、光照射を終了する。これにより、光硬化性組成物層41が半硬化して、半硬化樹脂層43が形成される。
【0047】
「半硬化」とは、光硬化性組成物中の重合性基の一部が反応し、一部が未反応である状態を意味する。光硬化性組成物中光硬化性組成物が半硬化して形成された半硬化樹脂層に対して、光を照射した場合、未反応の重合性基が反応し、硬化が進行する。
【0048】
光硬化性組成物を半硬化させる場合の光照射量は、例えば、光硬化性組成物の硬化に必要な光照射量の1/10~7/10倍程度とすることができる。
【0049】
(工程(d2))
工程(d2)では、COP/COC基板の第1の面に、ポリプロピレン基板の第1の面に形成された半硬化樹脂層が密着することにより形成されるウェルであって、トラック領域により形成される底面と貫通孔により形成される側面とを有するウェルを形成する。
【0050】
図8Bは、工程(d2)を説明する模式図である。
図6Bに示すように、半硬化樹脂層43が形成されたポリプロピレン基板10の第1の面と、COP/COC基板20の第1の面とが対向するように、ポリプロピレン基板10の第1の面にCOP/COC基板20を載置する。この状態で、両者を互いに押圧することにより、COP/COC基板20の第1の面に、ポリプロピレン基板10の第1の面に形成された半硬化樹脂層43を密着させることができる。これにより、COP/COC基板20のトラック領域21を底面とし、ポリプロピレン基板10の貫通孔11の内壁を側面とする、ウェルが形成される。すなわち、COP/COC基板20の第1の面に、ポリプロピレン基板10の第1の面に形成された半硬化樹脂層43が密着することにより、底面がトラック領域21であり、側面が貫通孔11であるウェルが形成される。
【0051】
(工程(e2))
工程(e2)では、半硬化樹脂層を硬化させて、ポリプロピレン基板の第1の面と、COP/COC基板の第1の面と、を接着する。
【0052】
図8Cは、工程(e2)を説明する模式図である。ポリプロピレン基板10の貫通孔11の周囲に形成された半硬化樹脂層43に対して、光照射装置60を用いて、完全硬化に必要な積算光量まで光照射する。これにより、半硬化樹脂層43が硬化して、ポリプロピレン基板10の第1の面と、COP/COC基板20の第1の面とを接着する硬化樹脂層42が形成される。硬化樹脂層42により、ポリプロピレン基板10と、COP/COC基板20とが接着されて固定される。
このようにして、トラック領域21で構成される底面と、貫通孔11で構成される側面とを有するウェルを備えた、反応ユニット102を得ることができる。
【0053】
図9Aは、上記のように得られた反応ユニット102を示す斜視図である。
図9Bは、
図9Aの反応ユニット102のB-B切断線による断面図である。ポリプロピレン基板10の貫通孔11の周囲には、硬化樹脂層42が形成されている。ポリプロピレン基板10と、COP/COC基板20とは、硬化樹脂層42を介して接着し、固定されている。硬化樹脂層42は、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20とに接着し、両者の間を塞いでいる。そのため、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20との間からの液漏れを効果的に防止することができる。
【0054】
本発明の製造方法によれば、ポリプロピレン基板における貫通孔の周囲に、硬化樹脂層を形成し、これにより、ウェル底部からの液漏れを防止する。光硬化性組成物を塗布装置等により塗布するため、ポリプロピレン基板の形状及びサイズが変更された場合でもパッキンを作り直す必要がない。また、硬化性樹脂層を形成する光硬化性組成物は、比較的安価である。そのため、ランニングコストを低減することができる。
【0055】
[反応ユニットの製造キット]
1実施形態において、本発明は、反応ユニットの製造キットを提供する。本実施形態の反応ユニットの製造キットは、反応ユニットを製造するために用いることができる。
【0056】
<第3実施形態>
1実施形態において、反応ユニットの製造キットは、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有し、前記第1の面における前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が光硬化してなる硬化樹脂層が形成されている、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種で構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する第2の基板と、を含む。前記第2の基板の前記第1の面に、前記第1の基板の前記第1の面に形成された前記硬化樹脂層が密着するように固定したとき、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成される。
【0057】
(第1の基板(ポリプロピレン基板))
ポリプロピレン基板は、前記工程(a1)で準備されるものと同じである。前記工程(a1)で準備されるポリプロピレン基板に対して、前記工程(b1)及び工程(c1)を実施することにより、第1の面における貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が光硬化してなる硬化樹脂層が形成されている、ポリプロピレン基板を得ることができる。「光硬化性組成物が光硬化してなる硬化樹脂層」とは、光硬化性組成物が光照射により硬化した硬化樹脂層をいう。
【0058】
(第2の基板(COP/COC基板))
COP/COC基板は、前記工程(a1)で準備されるものと同じである。COP/COC基板は、トラック領域に、捕捉用抗体が固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。トラック領域に捕捉用抗体が固定されていない場合、ユーザーが任意の抗体を固定することができる。
【0059】
前記ポリプロピレン基板及びCOP/COC基板は、前記工程(d1)を実施することにより、反応ユニットとして使用することができる。すなわち、COP/COC基板の第1の面に、ポリプロピレン基板の第1の面に形成された硬化樹脂層が密着するように固定したとき、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成される。前記ウェルを反応用ウェルとして用いることができる。
【0060】
(任意の構成)
本実施形態の製造キットは、前記ポリプロピレン基板及びCOP/COC基板に加えて、任意の構成を含んでいてもよい。任意の構成としては、例えば、ポリプロピレン基板とCOP/COC基板とを固定する固定具、抗原抗体反応に用いられるナノ粒子、洗浄液、ブロッキング液、緩衝液等の各種試薬類、及び使用説明書等が挙げられる。
【0061】
≪固定具≫
固定具は、ポリプロピレン基板の第1の面と、COP/COC基板の前記第1の面とが密着するように固定し、トラック領域により形成される底面と貫通孔により形成される側面とを有するウェルを形成させるために用いられる。
【0062】
固定具は、ポリプロピレン基板と、COP/COC基板とを、押圧して固定できるものであれば、特に限定されない。固定具は、例えば、底板と、押し板と、を備え、押し板が垂直方向に移動可能な機構を備えるものであってもよい。底板は、COP/COC基板を載置可能なように、COP/COC基板より大きいサイズの基板により構成されてもよい。底板には、ポリプロピレン基板及びCOP/COC基板の位置決め穴に挿入可能な位置決め部材が設けられていてもよい。底板には、垂直方向に移動する押し板をガイドする支柱が設けられていてもよい。
【0063】
押し板は、COP/COC基板の上に、ポリプロピレン基板が積層された状態で、COP/COC基板を押圧可能なように、ポリプロピレン基板よりも大きなサイズの基板により構成されてもよい。ポリプロピレン基板の第2の面における貫通孔の開口部を塞がないように、押し板には、穴が設けられていてもよい。前記穴は、例えば、ポリプロピレン基板の端部を押し板が押圧可能なように、ポリプロピレン基板のサイズよりも少し小さいサイズの穴であってもよい。
【0064】
固定具は、COP/COC基板に対して、ポリプロピレン基板を押圧した状態で、押し板を固定する押し板固定機構を備えていてもよい。例えば、押し板固定機構としては、例えば、ネジ等が挙げられる。
【0065】
≪ナノ粒子≫
ナノ粒子は、トラック領域に固定される捕捉用抗体により捕捉された検出対象物質を測定するために用いられる。ナノ粒子は、表面に、検出対象物質に特異的に結合する検出用抗体が結合された状態で使用される。ナノ粒子には、検出用抗体が結合されていてもよく、結合されていなくてもよい。ナノ粒子に検出用抗体が結合されていない場合、ユーザーが、任意の検出用抗体をナノ粒子に結合させることができる。この場合、ナノ粒子の表面は、検出用抗体を結合しやすいように、表面修飾されていてもよい。そのような表面修飾としては、例えば、カルボキシ基修飾が挙げられる。
【0066】
「ナノ粒子」とは、ナノメートルオーダー(1000nm未満)の平均一次粒子径を有する粒子を意味する。ナノ粒子の平均一次粒子径は、検出対象物質に応じて、適宜選択することができる。ナノ粒子の平均一次粒子径としては、例えば、10~1000nm、50~500nm、100~300nm、又は150~200nm等が挙げられる。
【0067】
ナノ粒子の材質は、特に限定されない。ナノ粒子の材質としては、例えば、ポリスチレン、グリシジルメタクリレート等の樹脂;鉄、金、銀等の金属;ジルコニア、チタニア、酸化鉄等の金属酸化物;フェライト等の磁性材料等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
図4Bを参照し、検出対象物質がエクソソームである場合について、凹部23の深さ(凸部24の高さ)H、凹部23の幅Wa、凸部24の幅Wb、ナノ粒子の粒子径Rc、エクソソームの粒子径Raの関係について説明する。幅Wa、幅Wbは、点線で示すH/2の位置での幅である。
凹部23の深さ(凸部24の高さ)H、凹部23の幅Wa、凸部24の幅Wb、ナノ粒子の粒子径Rc、エクソソームの粒子径Raは、以下の式(1)~(6)のいずれかを満たすことが好ましく、全てを満たすことがより好ましい。
Wb<Ra ・・・(1)
Ra<Wa<4×Ra ・・・(2)
Wb<Rc<Wa<2×Rc ・・・(3)
Ra<Rc ・・・(4)
(Ra+Rc)/8<H ・・・(5)
(Ra+Rc)/6<H ・・・(6)
【0069】
上記式(1)~(6)を満たすことにより、エクソソームが、凹部23に入りやすくなり、ナノ粒子が、凹部23に入りやすくなる。また、凹部23に捕捉されたエクソソームに、複数のナノ粒子が結合しにくくなり、エクソソームとナノ粒子との数量関係を1対1に近づけることができる。
【0070】
<第4実施形態>
1実施形態において、反応ユニットの製造キットは、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有し、前記第1の面における前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が光半硬化してなる半硬化樹脂層が形成されている、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマーで構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する第2の基板と、を含む。
【0071】
(第1の基板(ポリプロピレン基板))
ポリプロピレン基板は、前記工程(a2)で準備されるものと同じである。前記工程(a2)で準備されるポリプロピレン基板に対して、前記工程(b2)及び工程(c2)を実施することにより、第1の面における貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が半硬化した半硬化樹脂層が形成されている、ポリプロピレン基板を得ることができる。「光硬化性組成物が光半硬化してなる硬化樹脂層」とは、光硬化性組成物が光照射により半硬化した半硬化樹脂層をいう。
【0072】
(第2の基板(COP/COC基板))
COP/COC基板は、前記工程(a2)で準備されるものと同じである。COP/COC基板は、トラック領域に、捕捉用抗体が固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。トラック領域に捕捉用抗体が固定されていない場合、ユーザーが任意の抗体を固定することができる。
【0073】
前記ポリプロピレン基板及びCOP/COC基板は、前記工程(d2)及び(e2)を実施することにより、反応ユニットとして使用することができる。すなわち、COP/COC基板の第1の面に、ポリプロピレン基板の第1の面に形成された半硬化樹脂層が密着するように接着したとき、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成される。前記ウェルを反応用ウェルとして用いることができる。
【0074】
(任意の構成)
本実施形態の製造キットは、前記ポリプロピレン基板及びCOP/COC基板に加えて、任意の構成を含んでいてもよい。任意の構成としては、上記第3実施形態の製造キットと同様のものが挙げられる。
【0075】
[反応ユニット]
<第5実施形態>
1実施形態において、反応ユニットを提供する。前記反応ユニットは、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有し、前記第1の面における前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が硬化した硬化樹脂層が形成されている、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマーで構成される基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する第2の基板と、を含む。前記第1基板の前記第1の面に形成された前記硬化樹脂層と、前記第2の基板の前記第1の面とが密着するように固定されており、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成されている。
【0076】
本実施形態の反応ユニットは、前記第1実施形態の反応ユニットの製造方法の方法により、製造することができる。本実施形態の反応ユニットの構成は、上記の通りである。COP/COC基板のトラック領域には、捕捉用抗体が固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。トラック領域に捕捉用抗体が固定されていない場合、ユーザーが任意の抗体を固定することができる。
【0077】
<第6実施形態>
1実施形態において、反応ユニットを提供する。前記反応ユニットは、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がポリプロピレンで構成される基板であって、前記第1の面から前記第2の面に貫通する貫通孔を1個以上有し、前記第1の面における前記貫通孔の開口部の周囲に、光硬化性組成物が光硬化してなる硬化樹脂層が形成されている、第1の基板と、第1の面と第2の面とを有し、少なくとも前記第1の面がシクロオレフィンポリマーで構成されるシ基板であって、前記第1の面に、凹部と凸部とが交互に形成されたトラック領域を有する第2の基板と、を含む。前記第1の基板の前記第1の面と、前記第2の基板の前記第1の面とが、前記硬化性樹脂層により接着されており、底面が前記トラック領域であり、側面が前記貫通孔であるウェルが形成されている。
【0078】
本実施形態の反応ユニットは、前記第2実施形態の反応ユニットの製造方法により、製造することができる。本実施形態の反応ユニットの構成は、上記の通りである。COP/COC基板のトラック領域には、捕捉用抗体が固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。トラック領域に捕捉用抗体が固定されていない場合、ユーザーが任意の抗体を固定することができる。
【0079】
[測定方法]
1実施形態において、本発明は、検出対象物質の測定方法を提供する。本実施形態の測定方法は、(i)トラック領域に捕捉用抗体が固定された前記実施形態の反応ユニットのウェルに、前記捕捉用抗体に特異的結合性を有する検出対象物質を含有する試料を添加し、前記捕捉用抗体と前記検出対象物質との結合反応を行う工程と、(ii)前記ウェルに前記検出対象物質に特異的結合性を有する検出用抗体が固定されたナノ粒子を添加し、前記捕捉用抗体に結合した前記検出対象物質と、前記検出対象物質に特異的結合性を有する検出用抗体が固定されたナノ粒子が接触するようにすることにより、前記検出対象物質と、前記検出用抗体との結合反応を行う工程と、(iii)前記工程(ii)後、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離する工程と、(iv)前記分離された第2の基板に捕捉された前記ナノ粒子を計数する工程と、を含む。
【0080】
検出対象物質は、本実施形態の測定方法の測定対象となる物質を意味する。検出対象物質は、特に限定されず、抗原抗体反応が生じる物質であればよい。検出対象物質としては、例えば、タンパク質、ペプチド、糖鎖、及び脂質、並びに前記化合物を発現する細胞、ウイルス及び細胞外小胞等が挙げられるが、これらに限定されない。細胞外小胞は、細胞が放出する小胞である。細胞外小胞の大きさは直径30nm~1μm程度である。細胞外小胞としては、エクソソーム、アポトーシス小体、マイクロベシクル等が挙げられる。
【0081】
(工程(i))
工程(i)では、トラック領域に捕捉用抗体が固定された前記実施形態の反応ユニットのウェルに、前記捕捉用抗体に特異的結合性を有する検出対象物質を含有する試料を添加し、前記捕捉用抗体と前記検出対象物質との結合反応を行う。
【0082】
反応ユニットは、前記第5実施形態の反応ユニット及び前記第6実施形態の反応ユニットのいずれであってもよい。前記第5実施形態の反応ユニットは、前記第1実施形態の反応ユニットの製造方法の製造方法により、製造することができる。前記第6実施形態の反応ユニットは、前記第2実施形態の反応ユニットの製造方法の製造方法により、製造することができる。反応ユニットは、トラック領域に、捕捉用抗体が固定されたものを用いる。
【0083】
「捕捉用抗体」とは、検出対象物質をCOP/COC基板上に捕捉するために使用される抗体である。捕捉用抗体は、検出対象物質に対して特異的結合性を有する抗体を用いる。検出対象物質が、エクソソームである場合、捕捉用抗体は、汎エクソソーム膜タンパク質に特異的結合性を有する抗体であってもよい。汎エクソソーム膜タンパク質とはエクソソームがユビキタスに有するタンパク質を意味する。「エクソソームがユビキタスに有する」とは、広範な種類のエクソソームが有していることをいう。汎エクソソーム膜タンパク質としては、例えば、CD9、CD63、及びCD81等が挙げられる。あるいは、捕捉用抗体は、一部のエクソソームのみが有する膜タンパク質に特異的結合性を有する抗体であってもよい。例えば、癌細胞又は癌細胞から放出されたエクソソームは、癌抗原を膜タンパク質として有する場合がある。そのため、検出対象物質が癌細胞由来エクソソームである場合、癌抗原に特異的結合性を有する抗体を用いてもよい。癌抗原としては、例えば、Her2、CD147、MUC1、CEA、メソテリン、EGFR、EGFRvIII、MAGE、NY-ESO-1、PSMA、PSA、CD19、VEGFR1、VEGFR2等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
試料は、検出対象物質の測定の対象となる試料である。試料は、任意のものを用いることができる。試料としては、例えば、体液試料(血液、血清、血漿、唾液、尿、涙、汗、乳汁、鼻汁、精液、胸水、消化管分泌液、脳脊髄液、組織間液、及びリンパ液等)、細胞培養上清等が挙げられるが、これらに限定されない。試料は、前記のような体液試料、又は培養上清等を希釈したものであってもよい。試料の希釈には、PBS等の緩衝液を用いることができる。
【0085】
試料は、反応ユニットのウェルに添加する。適切な条件で結合反応を行うと、試料中の検出対象物質は、COP/COC基板のトラック領域に固定された捕捉用抗体と結合する。
結合反応は、ウェルに試料を添加した状態で、所定時間インキュベートすることにより行うことができる。インキュベート時間は、捕捉用抗体に、試料中の検出対象物質が結合するのに十分な時間であればよい。インキュベート時間としては、例えば、30分以上、1~10時間、2~6時間、2~4時間、又は2~3時間等が挙げられる。インキュベート温度としては、例えば、10~40℃、20~40℃、又は30~40℃等が挙げられる。捕捉用抗体と検出対象物質との反応効率を向上させるために、インキュベート中、反応ユニットを緩やかに振盪してもよい。
【0086】
結合反応後、適宜、洗浄液を用いて、ウェルの洗浄を行ってもよい。ウェルを洗浄することにより、捕捉用抗体に結合していない物質を除去することができる。洗浄液は、特に限定されず、免疫化学的検出法で通常用いられる洗浄液を特に制限なく使用することができる。洗浄液としては、例えば、PBS、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等の緩衝液;前記緩衝液にTween20等の界面活性剤を添加したもの;及び純水等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
ウェルに試料を添加する前に、ウェルのブロッキング処理を行ってもよい。ブロッキング処理は、ブロッキング液を、ウェルに添加し、インキュベーションすることにより行うことができる。ブロッキング液は、特に限定されず、免疫化学的検出法に通常用いられるものを、特に制限なく使用することができる。ブロッキング液としては、例えば、1~5%程度のスキムミルク、カゼイン、若しくはウシ血清アルブミン(BSA)を含む緩衝液等が挙げられる。ブロッキング液用の緩衝液は、特に限定されないが、例えば、PBS、PBS-T、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等が挙げられる。
インキュベート温度としては、例えば、10~40℃、20~40℃、又は30~40℃等が挙げられる。インキュベーション時間としては、10~180分間、20~120分間、20~100分間、又は30~60分間等が挙げられる。反応領域210のブロッキング処理を行うことにより、ウェルに対する非特異吸着を低減することができる。
【0088】
(工程(ii))
工程(ii)では、ウェルに検出対象物質に特異的結合性を有する検出用抗体が固定されたナノ粒子を添加し、捕捉用抗体に結合した検出対象物質と、検出対象物質に特異的結合性を有する検出用抗体が固定されたナノ粒子とが接触するようにすることにより、検出対象物質と、検出用抗体との結合反応を行う。
【0089】
「検出用抗体」は、検出対象物質をナノ粒子により標識するために用いられる抗体である。検出用抗体は、ナノ粒子に固定されている。検出用抗体は、検出対象物質に対して特異的結合性を有する抗体を用いる。
例えば、検出対象物質が、エクソソームである場合、検出用抗体は、汎エクソソーム膜タンパク質に特異的結合性を有する抗体であってもよい。あるいは、検出用抗体は、一部のエクソソームのみが有する膜タンパク質に特異的結合性を有する抗体であってもよい。検出対象物質がエクソソームである場合、検出用抗体及び捕捉用抗体は、同じ汎エクソソーム膜タンパク質(例えば、CD9)に特異的結合性を有する抗体であってもよい。あるいは、検出用抗体及び捕捉用抗体は、互いに異なる汎エクソソーム膜タンパク質(例えば、CD9とCD63)に特異的結合性を有する抗体であってもよい。あるいは、捕捉用抗体は、汎エクソソーム膜タンパク質(例えば、CD9)に特異的結合性を有する抗体であり、検出用抗体は、検出対象のエクソソーム(例えば、癌細胞特異的エクソソーム)に特異的に発現する膜タンパク質(例えば、Her2、CD147等の癌抗原)に特異的結合性を有する抗体であってもよい。
【0090】
前記工程(i)後、ウェルに、検出用抗体が固定されたナノ粒子を添加する。適切な条件で結合反応を行うと、捕捉用抗体により捕捉された検出対象物質に、ナノ粒子に固定された検出用抗体が結合する。
結合反応は、ウェルにナノ粒子を添加した状態で、所定時間インキュベートすることにより行うことができる。インキュベート時間は、検出用抗体が、検出対象物質に結合するのに十分な時間であればよい。インキュベート時間としては、例えば、30分以上、1~10時間、2~6時間、2~4時間、又は2~3時間等が挙げられる。インキュベート温度としては、例えば、10~40℃、20~40℃、又は30~40℃等が挙げられる。検出用抗体と検出対象物質との反応効率を向上させるために、インキュベート中、反応ユニットを緩やかに振盪してもよい。
【0091】
結合反応後、適宜、洗浄液を用いて、ウェルの洗浄を行ってもよい。ウェルを洗浄することにより、捕捉用抗体に結合していない物質を除去することができる。洗浄液は、特に限定されず、免疫化学的検出法で通常用いられる洗浄液を特に制限なく使用することができる。洗浄液としては、例えば、PBS、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等の緩衝液;前記緩衝液にTween20等の界面活性剤を添加したもの;及び純水等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
図10は、工程(ii)後のトラック領域の状態を説明する模式図である。トラック領域21の凹部23に固定された捕捉用抗体30に、エクソソームEが捕捉されている。エクソソームEは、捕捉用抗体30に特異的結合性を有する膜タンパク質を発現している。前記膜タンパク質が、捕捉用抗体30に結合することにより、エクソソームEが凹部23に捕捉されている。
エクソソームEは、ナノ粒子80に固定された検出用抗体81に特異的結合性を有する膜タンパク質も発現している。前記膜タンパク質に、検出用抗体81が結合することにより、ナノ粒子80が、エクソソームEを介して凹部23に捕捉されている。
【0093】
(工程(iii))
工程(iii)では、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離する。
【0094】
図11Aは、工程(iii)を説明する模式図である。
反応ユニットが、前記第5実施形態の反応ユニットである場合、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20との固定を解除することにより、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20とを分離することができる。
【0095】
反応ユニットが、前記第6実施形態の反応ユニットである場合、ポリプロピレン基板10を抑えながら、COP/COC基板20を引き剥がす。これにより、ポリプロピレン基板10とCOP/COC基板20とを分離することができる。第6実施形態の反応ユニットでは、ポリプロピレン基板10及びCOP/COC基板20は、硬化樹脂層42により接着されている。光硬化性樹脂が硬化して形成された硬化樹脂層42は、シクロオレフィンポリマーよりも、ポリプロピレンに対する接着性が高い。そのため、ポリプロピレン基板10から、COP/COC基板20を剥離した際に、硬化樹脂層42はポリプロピレン基板10に残り、COP/COC基板20には残らない。硬化樹脂層42の残渣が残らないため、後述の工程(iv)において、COP/COC基板20のトラック領域21に捕捉されたナノ粒子を正確に計数することができる。
【0096】
(工程(iv))
工程(iv)では、前記分離されたCOP/COC基板に捕捉された前記ナノ粒子を計数する。
【0097】
図11Bは、工程(iv)を説明する模式図である。工程(iii)で、ポリプロピレン基板10から分離したCOP/COC基板20について、COP/COC基板20のトラック領域21に捕捉されたナノ粒子の数を計数する。トラック領域21に捕捉されたナノ粒子の数は、試料中の検出対象物質の量を反映している。そのため、トラック領域21に捕捉されたナノ粒子を計数することにより、間接的に、試料中の検出物質を測定することができる。
【0098】
COP/COC基板20のトラック領域21に捕捉されたナノ粒子の計数は、計数装置90を用いて行うことができる。計数装置90は、光ピックアップを備えた計数装置(ExoCounter(登録商標)等)である。光ピックアップは、トラック領域21に向けてレーザ光を照射する。レーザ光は、対物レンズにより、トラック領域21に集光される。レーザ光の波長は、例えば、405nm程度である。
光ピックアップは、トラック領域21からの反射光を受光し、反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号を生成し、CPU等を備えた制御部へ出力する。制御部では、光ピックアップから出力された受光レベル信号から、ナノ粒子の検出信号を抽出する。トラック領域21は、一定の線速度で駆動され、レーザ光は、凹部23に沿って走査される。光ピックアップは、凹部23に沿って、ナノ粒子の検出信号を抽出することで、トラック領域21に捕捉されたナノ粒子をカウントする。
【0099】
このような機構を備えた測定装置としては、例えば、特開2017-207289号公報に記載の計数装置が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、安価な方法でウェルからの液漏れを防止することが可能な、反応ユニットの製造方法、及び反応ユニット製造キット、並びに前記反応ユニットを用いた検出対象物質の測定方法が提供される。
【0101】
本開示は、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」の実現に貢献し、ヘルスケア製品・サービスによる価値創出に寄与する事項を含む。
【符号の説明】
【0102】
10…ポリプロピレン基板(第1の基板)、11…貫通孔、12…位置決め穴、20…COP/COC基板(第2の基板)、21…トラック領域、22…位置決め穴、23…凹部、24…凸部、30…捕捉用抗体、40…光硬化性組成物、41…光硬化性組成物層、42…硬化樹脂層、43…半硬化樹脂層、50…塗布装置、60…光照射装置、70…固定具、80…ナノ粒子、81…検出用抗体。