(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175665
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A01G25/00 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082280
(22)【出願日】2021-05-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売の申出1 2020年5月14日 クボタアグリサービス株式会社宛、電子メール及び添付ファイルを介して地図情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 集会1 2021年3月15日 農研機構主催の「令和2年度ICT水管理機器の実証実験に関する情報交換会」において、地図情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物1 2020年7月3日 カタログ「ほ場管理システム WATARAS新機能のご紹介・特長(こだわり)」にて、地図情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物2 2020年10月12日 「広報誌PAL」Vol.183、2020年秋号、20頁に、地図情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物3 2020年12月10日 カタログ「ほ場管理システム WATARAS」にて、地図情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物4 2021年4月26日 全国農業改良普及職員協議会機関誌「技術と普及」、2021年5月号vol.58、5頁、18頁、56-57頁に、地図情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 ウェブサイト公開1 2020年6月2日 ウェブサイト https://wataras.kubota.com/loginFormにおいて、地図情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 ウェブサイト公開2 2021年4月12日 ウェブサイト https://www.kubota-chemix.co.jp/において、地図情報を活用する新機能を追加した「圃場水管理システム」を公開 ウェブサイト公開3 2021年4月13日 ウェブサイト https://agriculture.kubota.co.jp/product/kanren/wataras/screen_function.htmlにおいて、地図情報を活用する新機能を追加した「圃場水管理システム」を公開
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(72)【発明者】
【氏名】小元 伸弥
(57)【要約】
【課題】圃場や圃場に設置した給排水機器の位置を極めて容易に特定できる圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置を提供する。
【解決手段】圃場水管理装置と端末装置とが情報通信網を介して接続された圃場水管理システムであって、圃場水管理装置は、各圃場と各圃場に設置された給排水機器及び各圃場の給排水状態を含む圃場管理情報を管理する圃場管理部と、地図情報提供装置から各圃場が位置する地域の地図情報を取得する地図情報取得部と、地図情報に圃場及び前記給排水機器を関連付ける位置情報を管理する位置情報管理部と、を備え、装置は、圃場水管理装置から圃場管理情報を取得して、表示部に所定の圃場の管理状態を表示するとともに、圃場水管理装置から取得した地図情報及び位置情報に基づいて、表示部に表示した地図に圃場及び給排水機器を特定する位置標識を重畳して表示する表示処理部と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場水管理装置と端末装置とが情報通信網を介して接続された圃場水管理システムであって、
前記圃場水管理装置は、
各圃場を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場に設置された給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場の給排水状態を含む圃場管理情報を管理する圃場管理部と、
地図情報提供装置から各圃場が位置する地域の地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記地図情報に前記圃場及び前記給排水機器を関連付ける位置情報を管理する位置情報管理部と、
を備えて構成され、
前記端末装置は、
前記圃場水管理装置から前記圃場管理情報を取得して、表示部に所定の圃場の管理状態を表示するとともに、前記圃場水管理装置から取得した前記地図情報及び前記位置情報に基づいて、前記表示部に表示した地図に前記圃場及び前記給排水機器を特定する位置標識を重畳して表示する表示処理部と、
を備えて構成されている圃場水管理システム。
【請求項2】
前記端末装置は、
前記表示部に表示された前記地図に前記圃場及び前記給排水機器の位置を特定する位置特定処理部と、
前記位置特定処理部で特定した前記圃場及び前記給排水機器の位置情報を前記圃場水管理装置に送信する位置情報送信部と、
をさらに備えて構成され、
前記圃場水管理装置に備えた位置情報管理部は、
前記位置情報送信部から送信された前記位置情報を更新処理するように構成されている請求項1記載の圃場水管理システム。
【請求項3】
前記圃場管理情報に前記給排水機器が正常であるか異常であるかを特定する状態情報が含まれ、前記表示処理部は、前記状態情報に基づいて前記位置標識の表示態様を異ならせる請求項1または2記載の圃場水管理システム。
【請求項4】
前記給排水機器は、少なくとも給水装置と水位センサを含む請求項1から3の何れかに記載の圃場水管理システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの水管理システムに用いられる圃場水管理装置であって、
各圃場を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場に設置された給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場の給排水状態を含む圃場管理情報を管理する圃場管理部と、
地図情報提供装置から各圃場が位置する地域の地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記地図情報に前記圃場及び前記給排水機器を関連付ける位置情報を管理する位置情報管理部と、
を備えている圃場水管理装置。
【請求項6】
請求項1から4の何れかの水管理システムに用いられる端末装置であって、
前記圃場水管理装置から前記圃場管理情報を取得して、表示部に所定の圃場の管理状態を表示するとともに、前記圃場水管理装置から取得した前記地図情報及び前記位置情報に基づいて、前記表示部に表示した地図に前記圃場及び前記給排水機器を特定する位置標識を重畳して表示する表示処理部と、
を備えている端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を作動させる圃場用電動アクチュエータを備えた給水栓や排水栓が開示されている。これらの給水栓や排水栓を用いることにより、圃場水管理装置を介して圃場への給水や圃場からの排水を遠隔制御することが可能になる。
【0003】
当該圃場用電動アクチュエータは、給水栓や排水栓を制御する制御装置であり、給水栓または排水栓を作動させる電動モータを備えたアクチュエータと、アクチュエータを制御するとともに圃場水管理装置と交信する電子回路を備えている。
【0004】
特許文献2には、給水栓と、前記給水栓を作動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する給水制御部と圃場水管理サーバと交信する通信部とを有する電子制御回路と、前記電子制御回路及び前記アクチュエータに給電する蓄電池とを備え、前記給水栓から灌漑用水を圃場に給水する給水制御装置と、前記給水制御装置に対する遠隔操作情報を設定入力する遠隔操作端末と、前記遠隔操作端末から前記遠隔操作情報を受信して対応する給水制御装置を遠隔制御する圃場水管理サーバと、を備えている圃場水管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-193914号公報
【特許文献2】特開2020-103285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示された技術を利用することにより、給水栓を備えた給水装置、排水堰を備えた排水装置、及び水位計を含む給排水機器が設置された各圃場に対して、前記水位計の検出水位に基づいて前記給水装置及び排水装置を遠隔制御する圃場水管理装置と、前記圃場水管理装置に前記圃場に対して給水要求または排水要求を送信する携帯型の端末装置と、を備えた圃場水管理システムを構築することができる。
【0007】
ところで、各圃場、及び、各圃場に設置した単一または複数の給排水機器などを固有に識別して管理するために、其々に固有の識別コードを付与する必要がある。そして、識別コードに対応する圃場や給排水機器の具体的な位置を把握するためには、其々の位置を示す住所または緯度・経度を把握する必要がある。
【0008】
しかし、圃場や給排水機器を住所で関連付けても、同じ住所に複数の給排水機器が設置されると、最早それらを個別に識別することが困難になる。圃場や給排水機器を緯度・経度で関連付ける場合には、それらの設置位置を、測量機器を用いて測量する必要があり、そのために非常に煩雑な測量作業を伴う。
【0009】
本発明の目的は、圃場や圃場に設置した給排水機器の位置を極めて容易に特定できる圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による圃場水管理システムの第一の特徴構成は圃場水管理装置と端末装置とが情報通信網を介して接続された圃場水管理システムであって、前記圃場水管理装置は、各圃場を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場に設置された給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場の給排水状態を含む圃場管理情報を管理する圃場管理部と、地図情報提供装置から各圃場が位置する地域の地図情報を取得する地図情報取得部と、前記地図情報に前記圃場及び前記給排水機器を関連付ける位置情報を管理する位置情報管理部と、
を備えて構成され、前記端末装置は、前記圃場水管理装置から前記圃場管理情報を取得して、表示部に所定の圃場の管理状態を表示するとともに、前記圃場水管理装置から取得した前記地図情報及び前記位置情報に基づいて、前記表示部に表示した地図に前記圃場及び前記給排水機器を特定する位置標識を重畳して表示する表示処理部と、を備えて構成されている点にある。
【0011】
圃場水管理装置に備えた圃場管理部により管理される各圃場及び各圃場に設置された給排水機器を個別に識別可能な圃場管理情報と、地図情報取得部により地図情報提供装置から取得した地図情報とが、位置情報管理部により関連付けて管理される。つまり、地図上で各圃場及び各圃場に設置された給排水機器の位置を特定することができるようになる。これらの情報が端末装置に送信されることにより、端末装置の表示部に地図と圃場及び給排水機器を特定する位置標識が重畳して表示される。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記端末装置は、前記表示部に表示された前記地図に前記圃場及び前記給排水機器の位置を特定する位置特定処理部と、前記位置特定処理部で特定した前記圃場及び前記給排水機器の位置情報を前記圃場水管理装置に送信する位置情報送信部と、をさらに備えて構成され、前記圃場水管理装置に備えた位置情報管理部は、前記位置情報送信部から送信された前記位置情報を更新処理するように構成されている点にある。
【0013】
端末装置に備えた位置特定処理部により、表示部に表示された地図上に圃場及び給排水機器の位置を特定する位置情報が生成されて、位置情報送信部により位置情報が圃場水管理装置に送信される。つまり、営農者が操作する端末装置を介して地図上に圃場及び給排水機器の位置が適切に特定される。
【0014】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記圃場管理情報に前記給排水機器が正常であるか異常であるかを特定する状態情報が含まれ、前記表示処理部は、前記状態情報に基づいて前記位置標識の表示態様を異ならせる点にある。
【0015】
地図上に重畳表示された圃場及び給排水機器を特定する位置標識の表示態様を目視することで、給排水機器が正常であるか異常であるかが容易に把握できる。
【0016】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記給排水機器は、少なくとも給水装置と水位センサを含む点にある。
【0017】
給排水機器として給水装置と水位センサを含むことにより、主要な機器の地図上での位置が容易に把握できる。
【0018】
本発明による圃場水管理装置の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成を備えた水管理システムに用いられる圃場水管理装置であって、各圃場を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場に設置された給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場の給排水状態を含む圃場管理情報を管理する圃場管理部と、地図情報提供装置から各圃場が位置する地域の地図情報を取得する地図情報取得部と、前記地図情報に前記圃場及び前記給排水機器を関連付ける位置情報を管理する位置情報管理部と、を備えている点にある。
【0019】
本発明による端末装置の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成を備えた水管理システムに用いられる端末装置であって、前記圃場水管理装置から前記圃場管理情報を取得して、表示部に所定の圃場の管理状態を表示するとともに、前記圃場水管理装置から取得した前記地図情報及び前記位置情報に基づいて、前記表示部に表示した地図に前記圃場及び前記給排水機器を特定する位置標識を重畳して表示する表示処理部と、を備えている点にある。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明によれば、圃場や圃場に設置した給排水機器の位置を極めて容易に特定できる圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】圃場水管理装置、端末装置、気象情報提供装置、給排水機器の機能ブロックの説明図
【
図3】圃場水管理装置の動作を説明するフローチャート
【
図5】(a),(b)は端末装置のログイン画面を含む表示画面の説明図
【
図6】(a),(b)は端末装置の圃場一覧画面及び圃場詳細画面を含む表示画面の説明図
【
図7】(a),(b)は端末装置の地図情報表示画面の一態様の説明図
【
図8】(a),(b)は端末装置の地図に位置登録処理を行なう態様の説明図
【
図9】(a),(b)は端端末装置の地図に位置登録処理を行なう態様の説明図
【
図10】(a),(b),(c)は端末装置の地図に位置登録処理を行なう態様の説明図
【
図11】(a),(b)は端末装置の地図に位置登録処理を行なう態様の説明図
【
図12】(a),(b)は端末装置の地図に位置登録処理を行なう態様の説明図
【
図13】(a),(b)は端末装置の地図に位置登録処理を行なう態様の説明図
【
図14】(a),(b)は端末装置の地図に位置登録処理を行なう態様の説明図
【
図15】(a),(b)は端末装置の地図に位置登録処理を行なう態様の説明図
【
図16】(a),(b)は端末装置の地図に異常情報を表示する態様の説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明による圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置を説明する。
[圃場水管理システムの構成]
図1に示すように、圃場水管理システム100は、圃場水管理装置として機能する圃場管理サーバ40と、各圃場の管理者である営農者が所有する端末装置50と、給排水機器とが情報通信網の一例であるインターネット30を介して接続されたシステムである。なお、情報通信網はインターネット30に限るものではない。
【0023】
稲作が行なわれる各圃場1には、給水管10に流れる用水を、導水路11を介して圃場1に導く給水装置12、放水路21を介して圃場1の水を排水路20に排水する排水装置22、圃場1の水温及び水位を計測する水温水位計2などの給排水機器が設けられている。
【0024】
給水装置12及び排水装置22は、インターネット30を介して圃場水管理サーバ40と通信可能に接続され、或いは必要に応じて圃場1の近傍に配された無線ルータ32でなる中継器を経由してインターネット30により圃場水管理サーバ40と通信可能に接続されている。例えば、IOT通信に好適なLTE-M(Long Term Evolution for machine-type-communication)方式を採用する場合には、中継器が不要となり、Lora(Low Power Wide Area)方式を採用する場合には中継器が必要になる。
【0025】
水温水位計2による測定水温及び水位は給水装置12を介して圃場水管理サーバ40に送信される。なお、水温水位計2が排水装置22を介して圃場水管理サーバ40に送信され、或いは水温水位計2が直接に圃場水管理サーバ40と通信できるように構成されていてもよい。また、水温計と水位計を其々別個のセンサとして構成されていてもよい。
【0026】
端末装置50として好ましくはスマートフォンやタブレット型コンピュータなどの携帯型の端末装置が使用される。なお、デスクトップ型やラップトップ型のコンピュータが端末装置50として使用されてもよい。
【0027】
稲作を例に説明すると、稲作の各工程、例えば、代掻き、田植え、活着期、分げつ期(前期、後期)、幼穂形成期~出穂開花期、登熟期など、各時期に応じて圃場1の貯水水位を可変に調整する必要がある。そのために圃場水管理システム100が活用される。
【0028】
図2に示すように、圃場水管理サーバ40は、CPUボード及びメモリボードを備えたコンピュータシステムであり、メモリボードに搭載されたメモリにインストールされたOSの管理下で所定のアプリケーションプログラムが実行されることにより所期の動作を実行する機能ブロックが構成される。具体的に、圃場管理部42、地図情報取得部44、位置情報管理部46、記憶部48の各機能ブロックが構成される。
【0029】
圃場管理部42は、各圃場1を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場1に設置された給水装置12及び排水装置22を含む給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場1の給排水状態を含む圃場管理情報を管理するとともに、給排水機器を遠隔制御する機能ブロックである。
【0030】
圃場特定情報には、圃場1の位置を示す緯度・経度及び圃場1の住所や管理者情報が含まれる。圃場1の給排水状態を示す情報には目標水位、現在水位、排水水位、水温、給水栓の開度などが含まれる。圃場管理情報は、メモリボードに搭載されたメモリの一区画で構成される記憶部48に格納される。
【0031】
地図情報取得部44は、例えば、Google Mapsのような商用の地図情報提供装置である地図情報提供サーバ60が提供するサービスを利用するためのAPI(Application Programming Interface)を備えている。地図情報取得部44は、例えば圃場管理情報に含まれる各圃場の住所地など地域を特定する情報に基づいて、地図情報提供部62に地図情報を要求する。地図情報提供部62は、地図情報取得部44からの要求に基づいて地図情報管理部64で管理される地図情報にアクセスするリンク情報を送信する。地図情報取得部44は当該リンク情報を記憶部48に格納する。
【0032】
地図情報管理部44は、端末装置50からの要求に基づいて、当該リンク情報を端末装置50に送信することにより、端末装置50の表示部に地図が表示される。位置情報管理部46は、端末装置50から送信される圃場1または給排水機器の識別情報と、それらの位置情報である緯度・経度情報を取得すると、それらの情報を圃場管理部42で管理される圃場特定情報や給排水機器特定情報に関連付ける。
【0033】
端末装置50には、要求処理部52、表示処理部54、位置特定処理部56、石情報送信部58の各機能ブロックを備えている。これらの機能ブロックは、圃場水管理サーバ40と同様に、端末装置50に備えたメモリにインストールされたOSの管理下にあるアプリケーションプログラムがCPUで実行されることにより実現され、圃場水管理サーバ40から送信された情報を受信して所定の処理を実行し、圃場水管理サーバ40に必要な情報を送信するブラウザとして機能する。
【0034】
表示処理部54は、圃場水管理サーバ40の圃場管理部42から送信される所定の圃場1及び給排水機器の情報を表示部に表示する機能ブロックであり、これにより端末装置50を所有する営農者が把握できるように当該圃場1の管理状態が表示される。
【0035】
さらに、表示処理部54は、地図情報取得部44から送信されたリンク情報に基づいて地図情報提供サーバ60から地図情報を取得して表示部に表示するとともに、地図上に圃場の位置や給排水機器の位置を表示する機能ブロックであり、これにより端末装置50を所有する営農者が圃場の位置や給排水機器の位置の確認や、地図上で圃場の位置や給排水機器の位置を特定することが可能になる。なお、具体的な表示態様や位置指定態様などは後述する。
【0036】
位置特定処理部56は、表示処理部54により表示部に表示された地図上で、圃場の位置や給排水機器の位置を特定して登録する処理、つまり地図上で指定された任意の点(緯度・経度で特定される点)に圃場や給排水機器の識別情報を関連付ける処理を実行する機能ブロックである。また、位置情報送信部58は、表示処理部54で関連付けられた緯度・経度と圃場や給排水機器の識別情報を圃場水管理サーバ40に送信する機能ブロックである。
【0037】
要求処理部52は、圃場特定情報で特定される所定の圃場1に対する給排水処理を含む管理を要求する。例えば、湛水制御する場合には、目標水位を指定して給水要求を送信する。圃場管理部42は、この要求に応答して、対応する圃場の排水装置に22に排水水位となる排水堰の高さを指定して作動させ、給水装置12に対して給水指令を出力する。給水装置12は、水温水位計2の値に基づいて給水栓を開閉制御するとともに、給水栓の動作状態や水温水位計2で測定された圃場の水温や水位を、圃場管理部42に送信する。
【0038】
さらに、要求処理部52は、圃場水管理サーバ40に、圃場1及び給排水機器の位置情報を登録する処理や一度登録した位置情報を新たな位置に更新する処理を要求する。
【0039】
給水装置12は、給水栓12Aと、給水制御装置12Bを備えている。給水制御装置12Bは、給水栓12Aを作動させるアクチュエータ120と、アクチュエータ120を制御する給水制御部122と、圃場水管理サーバ40と交信する通信部124と、を備えている。また、アクチュエータ120に備えたモータ、給水制御部122、通信部124などに給電する蓄電池126、蓄電池126を充電するソーラーセル128を備えている。
【0040】
排水装置22は、排水堰22Aと、排水制御装置22Bを備えている。排水制御装置22Bは、排水堰22Aを昇降作動させるアクチュエータ220と、アクチュエータ220を制御する排水水位制御部222と、圃場水管理サーバ40と交信する通信部224を備えている。また、アクチュエータ220に備えたモータ、排水水位制御部222、通信部224などに給電する蓄電池226、蓄電池226を充電するソーラーセル228を備えている。なお、ソーラーセル128,228は必須ではない。
【0041】
図3には、圃場水管理サーバ40によって実行される一連の水管理処理が示されている。
予め登録された何れかの端末装置50からログイン要求があると(SA1)、圃場管理部42は、端末装置50の操作者である営農者が管理する圃場の管理情報を記憶部から読み出して端末装置50に送信する(SA2)。これにより、端末装置50の表示部に営農者が管理する圃場の管理情報が表示される。
【0042】
端末装置50から地図の表示要求があると(SA3)、地図情報取得部44は地図情報提供サーバ60から該当する地域の地図にアクセスするリンク情報(地図情報)を取得して(SA4)、予め登録された圃場または給排水機器の位置情報がある場合には、リンク情報とともに位置情報を端末装置50に送信する(SA5)。これにより、端末装置50の表示部に営農者が管理する圃場を含む地図情報が表示される。
【0043】
端末装置50から圃場または給排水機器の位置情報が送信されると(SA6)、位置情報管理部46は当該圃場または給排水機器の識別情報と、それらの位置情報である緯度・経度情報を、圃場管理部42で管理される圃場特定情報や給排水機器特定情報に関連付けて記憶する(SA7)。
【0044】
端末装置50から圃場に対する処理要求があると(SA8)、圃場管理部42は当該圃場の給排水機器を遠隔制御するとともに、当該圃場の状態、例えば給水栓の開度、水位、水温などを更新して記憶する(SA9)。端末装置50がログオフされるまではステップSA2からSA9の処理を繰り返し、ログオフされるとステップSA1で待機する(SA10)。
【0045】
図4には、営農者が操作する端末装置50によって実行される一連の処理が示されている。
圃場水管理サーバ40にログインすると(SB1)、表示処理部54は圃場水管理サーバ40から送信される当該営農者が管理する圃場に関する圃場管理情報を取得して(SB2)、端末装置50に備えた表示部に取得した圃場及び給排水機器の管理状態を表示する(SB3)。営農者が管理する圃場の圃場管理情報は、ログイン情報と関連付けられている。
【0046】
営農者が画面の表示内容を確認して何らかのタッチ操作がなされ(SB4,Y)、操作が地図の表示要求に関する操作であると(SB5,Y)、要求処理部52は、圃場水管理サーバ40に対して地図の表示要求を送信し(SB6)、圃場水管理サーバから送信されるリンク情報に基づいて地図情報提供サーバ60から地図情報を取得して、表示部に地図を表示する(SB7)。ステップSB4で操作が無ければステップSB10でログオフのチェックが行われ(SB10)、ログオフされない場合には、ステップSB2の処理に戻る。
【0047】
このときに表示される地図情報は空中写真であることが好ましいが地形図であってもよい。なお、地図には、位置情報管理部46で管理された緯度・経度に圃場または給排水機器が関連付けられていれば、地図上で対応する緯度・経度の位置に圃場または給排水機器を示すラベルが表示される。
【0048】
営農者により表示画面に何らかのタッチ操作がされ、圃場水管理サーバ40に何らかの要求を送信する必要が生じると(SB5,Y)、圃場水管理サーバ40に処理要求を送信する(SB9)。処理要求として、管理対象である圃場への湛水、排水などを行なうための給排水機器に対する遠隔制御要求、日時を指定して湛水、排水などを行なうための給排水機器に対するスケジュール設定要求、表示された地図上に圃場や給排水機器の設置位置を登録するための位置情報登録要求などが含まれる。
【0049】
さらにステップSB10で、ログオフされるか否かを判断して(SB10)、ログオフされるまではステップSB2に戻り、ログオフされると、処理を終了する。また、上述したステップSB8で処理要求が無ければ(SB8,N)、ステップSB2の処理に戻る。
【0050】
図5から
図17には、表示処理部52によって端末装置50の表示部に表示処理される画面が示されている。以下、順に説明図する。なお、以下に説明する画面表示は理解を容易にするための例示であり、具体的な数値などの表示内容は、現実に即したものでない場合もある。
【0051】
図5(a)にはログイン画面が示されている。ユーザー名、パスワードを入力してログインすると、
図5(b)に示す初期画面が表示される。初期画面は、当該営農者が管理する圃場を一覧する圃場一覧画面となる。この例では、営農者により管理される圃場1、圃場2、圃場3の3つの圃場が表示され、其々の圃場の水位、水温、給水栓の状態、排水高さ(排水堰の目標高さ)が表示される。営農者は、圃場一覧画面により各圃場の状態を把握することができる。画面上部には表示モードを切り替える複数のメニューが表示されている。
【0052】
図6(a)に示す「圃場一覧」画面から太線で示す「圃場1」の表示領域がタッチされると、
図6(b)に示す「圃場詳細」画面に切替わり、圃場1の詳細な情報が表示される。この例では、水位水温計の値、給水装置の数とその状態が示されている。太線で示す「圃場一覧」の表示領域がタッチされると、
図6(a)に示す圃場一覧画面に切替わる。各画面の表示内容は、圃場管理サーバ40から送信された圃場管理情報に基づく。
【0053】
なお、
図6(b)に示されている「圃場制御」表示領域をタッチすると、対応する圃場に対する給水や排水、水位設定をリアルタイムで遠隔操作するための操作画面が表示され、画面の操作に従って、圃場水管理装置40により対応する圃場の給排水機器が遠隔制御される。また、「スケジュール設定」表示領域をタッチすると、対応する圃場への給水や排水などのスケジュールを圃場水管理サーバ40に設定するための操作画面が表示され、「圃場設定・機器設定」表示領域をタッチすると、対応する圃場に設置される機器の仕様などの情報を圃場水管理サーバ40に設定するための操作画面が表示される。
【0054】
図7(a)に示す「圃場一覧」画面から太線で示す「マップ表示」の表示領域がタッチされると、
図7(b)に示すように、画面の中段に圃場1,2,3が位置する地域の地図(空中写真)が表示されるとともに、下段には地図に含まれる圃場の管理情報である圃場名、水位、水温、バルブ(給水栓)の開度、給排水機器がつながる通信中継器が表示される。
図7(b)の「マップ表示」画面から太線で示す「圃場一覧」の表示領域がタッチされると
図7(a)に示す「圃場一覧」画面に戻る。
【0055】
当該地図は、圃場水管理サーバ40から送信されるリンク情報、つまり予め圃場の住所または緯度・経度に基づき地図と関連付けられたリンク情報に基づいて、表示処理部54が地図情報提供サーバ60から取得した地図である。地図に示される丸印で囲まれた数値2、丸印で囲まれた数値3は其々圃場2,圃場3を示している。なお、この時点で圃場1は地図と関連付けるリンク情報は生成されていないので、地図上には丸印で囲まれた数値1は表示されていない。
【0056】
図8(a)に示す「マップ表示」画面から太線で示す「圃場1」の表示領域がタッチされると、
図8(b)に示すように、圃場1の最新の管理情報である水位、水温、バルブ開度、排水高(排水堰の高さ)といった圃場詳細情報が表示される。
【0057】
図9(a)に示す「マップ表示」画面から太線で示す「位置情報登録」の表示領域がタッチされると、
図9(b)に示すように、地図上に「圃場1」を登録する画面に切替わり、「登録する位置情報をクリックしてください」とのメッセージが表示される。「OK」との表示領域をタッチして、地図上で「圃場1」の位置をタッチすると、
図10(a)に示すように、登録位置を示すマーカが表示され、
図10(b)に示すように、「この位置で登録しますか?」との確認メッセージが表示される。
【0058】
図10(b)の画面で、「OK」との表示領域をタッチすると、当該地図の緯度・経度と圃場1とを関連付けるように、位置情報管理部46に登録要求が送信され、緯度・経度と圃場1とを関連付けるリンク情報が生成されて、リンク情報が圃場管理情報に組み込まれる。その結果、
図10(c)に示すように、地図上に丸印で囲まれた数値1が表示されて、圃場1の位置が把握できるようになる。
【0059】
図11(a)に示す「マップ表示」画面では圃場3の圃場詳細情報が表示されている。この画面の右下の太線で示す「装置配置図」の表示領域がタッチされると、
図11(b)に示すように、圃場3に設置された給排水機器のリストが表示される。圃場3では2基の給水装置と3基の排水装置が設置されている。
【0060】
これら給排水機器は地図と関連付けられていないため、地図に表示されていない。
図12(a)に示す「マップ表示」画面から太線で示す「給水装置3-1」の表示領域がタッチされると、
図12(b)に示す「給水装置3-1」の詳細情報が表示される。
図13(a)に太線で示す「位置情報登録」の表示領域がタッチされると、
図13(b)に示すように、「登録する位置情報をクリックしてください」とのメッセージが表示される。「OK」との表示領域をタッチして、地図上で「給水装置3-1」の設置位置をタッチすると、
図14(a)に示すように、登録位置を示すマーカが表示され、「この位置で登録しますか?」との確認メッセージが表示される。
【0061】
図14(a)の画面で、「OK」との表示領域をタッチすると、当該地図の緯度・経度と「給水装置3-1」とを関連付けるように、位置情報管理部46に登録要求が送信され、緯度・経度と「給水装置3-1」とを関連付けるリンク情報が生成されて、リンク情報が圃場管理情報に組み込まれる。その結果、
図14(b)に示すように、地図上に「給水装置3-1」を示すマーカ表示されて、地図上で「給水装置3-1」の位置が把握できるようになる。
【0062】
図15(a)に示す画面で、地図表示領域の右下の太線で示す「通信中継器」との表示領域をタッチすると、
図15(b)に示すように、当該圃場1,2,3の給排水機器が圃場水管理サーバ40との間で通信するための通信中継器の位置が地図上に表示される。なお、当該通信中継器を地図に関連付ける操作は、上述した操作と同様である。
図15(b)に示す太線で示す通信中継器の型番の表示領域をタッチすると、通信中継器のIPアドレスや無線チャンネルを設定する画面が表示される。
【0063】
図16(a)には、圃場水管理サーバ40で管理される各圃場の給排水機器に異常が生じているか否かを報知する画面が示されている。地図上に表示される丸印で囲まれた数値で、ネガポジ反転された数値で示す圃場に何らかの異常が生じていることが確認できる。
図16(a)で「エラー状況」との表示量位kをタッチすると、
図16(b)に示すようにエラーが生じている圃場3,4のエラー状況の詳細が表示される。この例では通信不良が生じていることが示され、「対処方法」の表示領域をタッチすると対処方が案内表示される。例えば、給排水機器に設置された「蓄電池の容量を確認してください」などのメッセージが表示されるのである。
【0064】
以上説明したように、本発明による圃場水管理システムは、圃場水管理装置と端末装置とが情報通信網を介して接続された圃場水管理システムであって、前記圃場水管理装置は、各圃場を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場に設置された給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場の給排水状態を含む圃場管理情報を管理する圃場管理部と、地図情報提供装置から各圃場が位置する地域の地図情報を取得する地図情報取得部と、前記地図情報に前記圃場及び前記給排水機器を関連付ける位置情報を管理する位置情報管理部と、を備えて構成され、前記端末装置は、前記圃場水管理装置から前記圃場管理情報を取得して、表示部に所定の圃場の管理状態を表示するとともに、前記圃場水管理装置から取得した前記地図情報及び前記位置情報に基づいて、前記表示部に表示した地図に前記圃場及び前記給排水機器を特定する位置標識を重畳して表示する表示処理部と、を備えて構成されている。
【0065】
そして、前記端末装置は、前記表示部に表示された前記地図に前記圃場及び前記給排水機器の位置を特定する位置特定処理部と、前記位置特定処理部で特定した前記圃場及び前記給排水機器の位置情報を前記圃場水管理装置に送信する位置情報送信部と、をさらに備えて構成され、前記圃場水管理装置に備えた位置情報管理部は、前記位置情報送信部から送信された前記位置情報を更新処理するように構成されている。
【0066】
また、前記圃場管理情報に前記給排水機器が正常であるか異常であるかを特定する状態情報が含まれ、前記表示処理部は、前記状態情報に基づいて前記位置標識の表示態様を異ならせるように構成されている。そのため、地図上に重畳表示された圃場及び給排水機器を特定する位置標識の表示態様を目視することで、給排水機器が正常であるか異常であるかが容易に把握できる。
【0067】
以上の説明では、給排水機器として、給水装置、排水装置、水位センサ、温度センサ、通信中継器を例示したが、各圃場に遠隔制御可能な排水装置を備えていない場合や、通信中継器を備えていない場合もある。従って、給排水機器は、少なくとも給水装置と水位センサが含まれていればよい。なお、遠隔制御可能な排水装置を備えていない圃場では、営農者が圃場に設置された排水堰の高さなどを手動で調節することになる。
【0068】
以上説明した実施形態は本発明の一例に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されることを意図するものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1:圃場
2:水位計
10:給水管
12:給水装置
12A:給水栓
12B:給水制御装置
20:排水路
22:排水装置
22A:排水堰
22B:排水制御装置
40:圃場水管理サーバ(圃場水管理装置)
42:圃場管理部
44:地図情報取得部
46:位置情報管理部
48:記憶部
50:携帯端末(端末装置)
52:要求処理部
54:表示処理部処理部
56:位置特定処理部
58:位置情報送信部
60:地図情報提供サーバ
100:圃場水管理システム