(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175672
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20221117BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/534
A61F13/537 210
A61F13/537 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082289
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴永 華帆
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA04
3B200BA06
3B200BB04
3B200BB09
3B200BB17
3B200CA11
3B200DA12
3B200DB15
3B200DB18
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】複数回の体液吸収後でも吸収速度が高く維持され、体液漏れ及び液戻りが防止された比較的薄型の吸収体を備える吸収性物品の提供。
【解決手段】トップシート10と、吸収体20と、バックシート30とを備え、吸収体20は、肌側の、内部にSAP12を有する吸収性シート21と、非肌側の、吸収性繊維とSAP12とを含有するフラッフ吸収体22とを備え、吸収性シート21とフラッフ吸収体22との間に開孔フィルム23が配置され、吸収性シート21は、肌側の第1の親水性不織布25と、非肌側の体液を一時的に貯留するパルプ含有不織布26とを有し、第1の親水性不織布25とパルプ含有不織布26との間にSAP12を封入する複数の第1閉空間29が形成され、吸収性シート21の各第1閉空間29には、SAP12が非接着下に封入されている、吸収性物品50。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、着用者の肌側に配置され、内部に高吸収性ポリマーを有する吸収性シートと、前記着用者の非肌側に配置され、吸収性繊維と前記高吸収性ポリマーとを含有するフラッフ吸収体と、を備え、
前記吸収性シートと前記フラッフ吸収体との間に配置され、一方の面から他方の面に貫通する複数の開孔を有する開孔フィルムをさらに有し、
前記吸収性シートは、着用者の肌側に位置する第1の親水性不織布と、前記着用者の非肌側に位置する非肌側不織布とを有し、
前記第1の親水性不織布と前記非肌側不織布は、これらの間に前記高吸収性ポリマーが封入される複数の第1の閉空間が形成されるように接合され、
前記非肌側不織布は、体液を一時的に貯留するパルプ含有不織布であり、
前記吸収性シートの各第1の閉空間には、前記高吸収性ポリマーが非接着下に封入されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性シートは、前記第1の親水性不織布の更に着用者の肌側に位置する第2の親水性不織布を有し、
前記第2の親水性不織布と前記パルプ含有不織布とは、これらの間に前記高吸収性ポリマーが封入される複数の第2閉空間が形成されるように接合され、
前記吸収性シートの各第2閉空間には、前記高吸収性ポリマーが非接着下に封入されている 、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートと前記吸収体の間に、体液を拡散させ及び/又はクッション性を有するセカンドシートをさらに有する請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記開孔フィルムは、前記開孔の一方及び他方の各表面における開孔径が2mm以下である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1の親水性不織布又は前記第2の親水性不織布は、それぞれ、体液を面方向及び厚さ方向に拡散し、坪量が10g/m2以上40g/m2以下、厚さが0.05mm以上0.3mm以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1の親水性不織布又は前記第2の親水性不織布は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、及びポリエステル繊維よりなる群から選択される1種又は2種以上の繊維を含む、エアスルー不織布又はスパンボンド不織布である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記パルプ含有不織布の坪量が30g/m2以上60g/m2以下である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。このような吸収性物品には、体液の吸収性の向上、着用者の装着感の向上、漏れ防止等を図るために、様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、一方の表面から他方の表面に貫通する開孔を多数有する開孔フィルムを用いた吸収性物品が知られている。この吸収性物品は、一方の表面の開孔の開口面積が他方の表面の開孔の開口面積よりも大きいという開孔フィルムの構造を利用して、開口面積の大きい面を肌側に配置することで、ウェットバックや吸収速度の向上を図るものである。従来から、開孔フィルムを吸収性物品に利用する提案が、種々なされている。
【0004】
特許文献1には、液透過性のトップシート、液体保持性の吸収体及び液不透過性のバックシートを備え、トップシートは肌当接面層とこの層の非肌側に積層される非肌当接面層とを含み、肌当接面層は熱可塑性樹脂からなる開孔フィルムであり、非肌当接面層は嵩高性のセルロース繊維を含む吸収性物品が開示されている(請求項1)。特許文献1によれば、体液が表面材上を液流れしたり、表面材上に液残りしたりすることがなく吸収体に導かれ、吸収性能が高く、ベタツキが少ない吸収性物品が提供されると記載されている(段落0014)。
【0005】
特許文献2には、肌側から非肌側に順に設けられる表面層と、吸収層と、底層とを備え、吸収層は、肌側から非肌側に、穿孔フィルム層(開孔フィルム)と、コア層と、下付着層とを有し、穿孔フィルム層は表面層とコア層との間に位置し、下付着層はコア層と底層との間に位置する尿とりパッドが開示されている(請求項1)。特許文献2によれば、滲み出し防止性に優れ、使用者に対してより快適な吸収性物品が提供されると記載されている(段落0018)。
【0006】
特許文献3には、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)及びフラッフパルプのうち少なくとも一つを吸収体成分として含む吸収体層と、吸収体層に接して配置され、かつ、耐水性、高通気性合成樹脂製開孔フィルムからなる吸収体被覆層とを備え、開孔フィルムは、頭頂部の開孔が小さく、底部の開孔が大きい漏斗状構造の多数の突起部を有し、その突起部の頭頂部が吸収体層に接するように配置されている吸収体が開示されている(請求項1)。特許文献3によれば、吸収体被覆層が外に漏れ出た未吸収の体液を吸収体層に再吸収させることから、大量の体液が短時間に排出されても体液漏れが生じ難く、吸収体の通気性が良好であることから、使用感覚に優れた吸収性物品になると記載されている(段落0058)。
【0007】
一方、特許文献4には、第1シートと、第1シートに対向配置される第2シートと、第1シートと第2シートとの間に配置されるSAPとを含み、第1シートは第2シートとの対向面が接着剤塗布面であり、第2シートは第1シートとの対向面が接着剤塗布面であり、SAPは第1シート及び/又は第2シートの接着剤塗布面に幅方向に間欠的にストライプ状に接着され、その幅方向両側は第1シート及び第2シートの接着剤塗布面同士の接着により封止された吸収性シートが、吸収体として開示されている。特許文献4に記載の吸収性シートとは、フラッフパルプ等の吸収性繊維とSAPとを含む、従来のフラッフ吸収体とは異なり、2枚の親水性不織布(ここでの第1、第2シート)とこれらの間に固着されたSAPとを含むものである。特許文献4によれば、吸収体の吸収性能を確保するとともに、吸収体幅を小さくすることができると記載されている(段落0012)。
【0008】
また、特許文献5には、吸収体が着用者の肌側に位置する肌側吸収体と、該肌側吸収体に積層され、着用者の非肌側に位置するフラッフ吸収体とを含み、肌側吸収体が吸収性シートであり、フラッフ吸収体がフラッフ吸収体である吸収性物品が開示されている(請求項1、請求項4)。特許文献5によれば、吸収体の強度低下及び吸収体の厚みの増加を防止しつつ、体液吸収量を高めると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8-66425号公報
【特許文献2】実用新案登録第3215515号公報
【特許文献3】特開2002-355271号公報
【特許文献4】特開2006-158676号公報
【特許文献5】特開2018-164633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1乃至3に記載の吸収性物品では、開孔フィルムを吸収体よりも肌側に配置し、特に特許文献3では一方表面の開口面積が他方表面よりも大きい開孔フィルムを用いることで、液戻りや体液漏れを防止し、吸収速度を高めているものの、体液拡散性の向上には有効とはいえず、吸収体の吸収性能を十分に使い切っておらず、複数回の体液吸収に支障をきたし易いという課題がある。
【0011】
特許文献4に記載の吸収性物品では、吸収体として吸収性シートを使用するものの、吸収性シートは、高吸収性ポリマーが初めに排出された体液を吸収して膨潤及び一体化するゲルブロッキングが発生し易いことで、2回目以降の体液排出の際、体液の通り道が塞がれ、2回目以降の体液の吸収速度が著しく低下するという課題がある。
【0012】
特許文献5には、吸収性シート(上吸収要素)40内の体液は周囲に拡散し易くなり、フラッフ吸収体(下吸収要素)50への体液の供給はより広範囲になると記載されている(段落0008)。しかしながら、フラッフ吸収体50は、
図1等から吸収性シート40よりも大寸に形成されるものの、吸収性シート40から供給される体液の拡散は、吸収性シート40との接触領域及びその周囲の狭い領域等に留まり易く、フラッフ吸収体50の周縁領域が体液吸収に十分に寄与しているとは言い難い。さらに、吸収性シート40とフラッフ吸収体50との間に開孔フィルムを配置することは、特許文献5の記載から自明ではない。
【0013】
本発明の目的は、複数回の体液吸収後でも吸収速度が高く維持され、体液漏れ及び液戻りが防止された比較的薄型の吸収体を備える吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、吸収体として吸収性シートとフラッフ吸収体とを併用した吸収性物品において、従来のように開孔フィルムをトップシートと吸収体との間に配置するのではなく、吸収性シートとフラッフ吸収体との間に配置するとともに、高吸収性ポリマーを未接着状態下で吸収性シートに封入し、更に該吸収性シートの最も非肌側にパルブ含有不織布を配置することで、目的に叶う吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0015】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、着用者の肌側に配置され、内部に高吸収性ポリマーを有する吸収性シートと、前記着用者の非肌側に配置され、吸収性繊維と前記高吸収性ポリマーとを含有するフラッフ吸収体と、を備え、
前記吸収性シートと前記フラッフ吸収体との間に配置され、一方の面から他方の面に貫通する複数の開孔を有する開孔フィルムをさらに有し、
前記吸収性シートは、着用者の肌側に位置する第1の親水性不織布と、前記着用者の非肌側に位置する非肌側不織布とを有し、
前記第1の親水性不織布と前記非肌側不織布は、これらの間に前記高吸収性ポリマーが封入される複数の第1の閉空間が形成されるように接合され、
前記非肌側不織布は、体液を一時的に貯留するパルプ含有不織布であり、
前記吸収性シートの各第1の閉空間には、前記高吸収性ポリマーが非接着下に封入されている、吸収性物品。
(2)前記吸収性シートは、前記第1の親水性不織布の更に着用者の肌側に位置する第2の親水性不織布を有し、
前記第2の親水性不織布と前記パルプ含有不織布とは、これらの間に前記高吸収性ポリマーが封入される複数の第2の閉空間が形成されるように接合され、
前記吸収性シートの各第2の閉空間には、前記高吸収性ポリマーが非接着下に封入されている、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記トップシートと前記吸収体の間に、体液を拡散させ及び/又はクッション性を有するセカンドシートをさらに有する、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記開孔フィルムは、前記開孔の一方及び他方の各表面における開孔径が2mm以下である、上記(1)乃至(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記第1の親水性不織布又は前記第2の親水性不織布は、それぞれ、体液を面方向及び厚さ方向に拡散し、坪量が10g/m2以上40g/m2以下、厚さが0.05mm以上0.3mm以下である、上記(1)乃至(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記第1の親水性不織布又は前記第2の親水性不織布は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、及びポリエステル繊維よりなる群から選択される1種又は2種以上の繊維を含む、エアスルー不織布又はスパンボンド不織布である、上記(1)乃至(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記パルプ含有不織布の坪量が30g/m2以上60g/m2以下である、上記(1)乃至(6)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数回の体液吸収後でも吸収速度が高く維持され、体液漏れ及び液戻りが防止された比較的薄型の吸収体を備える吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示すX-X切断線による幅方向の模式断面図である。
【
図3】本実施形態に係る吸収性シートの構成を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図3に示すX
1-X
1切断線による幅方向の模式断面図である。
【
図5】吸収性シート前駆体の構成を模式的に示す断面図である。(a)は一実施形態の吸収性シートであり、(b)は他の実施形態の吸収性シートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、吸収性物品50の着用とは、体液吸収の前後を問わず、着用者の身体に装着した状態をいう。吸収性物品50の、長手方向とは、吸収性物品50を着用したときに着用者の股間部を介して前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して略直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。吸収性物品50及びその各構成部材の肌側表面(以下「肌側の面」ともいう)とは着用者の肌に当接する表面又は該肌を臨む表面であり、非肌側表面(以下「非肌側の面」ともいう)とは着用者の衣類に当接する表面又は衣類を臨む表面である。体液とは、尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0019】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る吸収性物品50について説明する。
図1乃至
図2は、吸収性物品50を示す。
図3及び
図4は、吸収性シート21を示す。
図5は、接合部28を形成する前の吸収性シート前駆体21X(
図5(a))、21Y(
図5(b))を示す。各図は、吸収性物品50及び各構成部材の形状や、寸法の大小関係等を規定するものではない。
【0020】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用、成人用及び高齢者用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法L
50(
図1)、及び幅方向の寸法W
50(
図1)はいずれも特に限定されないが、例えば、L
50が100mm以上800mm以下の範囲、及びW
50が50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整すると、種々の形態の吸収性物品が容易に得られる。
【0021】
図1及び
図2に示す吸収性物品50は、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10と吸収体20との間に配置されるセカンドシート60と、セカンドシート60とバックシート30との間に配置される吸収体20と、トップシート10の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体20は、着用者の肌側に配置される吸収性シート21と、着用者の非肌側に配置されるフラッフ吸収体22とを備え、これらの間には開孔フィルム23が配置されている。吸収性シート21は、着用者の肌側から順に、第1の親水性不織布25、第1の高吸収性ポリマー層27、及びパルプ含有不織布26を重ね合わせて構成され(
図5(a))、第1の親水性不織布25とパルプ含有不織布26とを部分的に接合する接合部28を設けることで、第1の高吸収性ポリマー層27は、高吸収性ポリマー12を非接着下に封入する複数の空間(第1の閉空間)29に分割されている。
【0022】
本実施形態によれば、吸収体20として吸収性シート21とフラッフ吸収体22とを併用した上で、厚さ方向において吸収性シート21とフラッフ吸収体22との間に開孔フィルム23を配置することで、吸収性シート21からフラッフ吸収体22に供給される体液が、瞬間的に開孔フィルム23の抵抗を受けて開孔フィルム23の肌側表面を面方向に広く拡散しつつ、次の瞬間には開孔フィルム23の開孔33からフラッフ吸収体22に拡散するので、フラッフ吸収体22全体に体液が拡散し易くなり、複数回の体液吸収後でも優れた体液拡散性を有し、体液吸収量に関して充分な余力がある吸収性物品50を得ることができる。本実施形態では、開孔フィルム23を従来のようにトップシート10と吸収体20との間に配置して液戻りを防止するのではなく、吸収性シート21とフラッフ吸収体22との間に開孔フィルム23を配置して、体液拡散性を向上させ、従来とは全く異なる作用効果を得ることに成功している。また、本実施形態によれば、吸収性シート21とフラッフ吸収体22とを併用することで、フラッフ吸収体22の厚みを従来よりも薄くすることができるので、全体として薄型で、他者から目立ちにくい吸収性物品50を得ることができる。
【0023】
本実施形態の吸収性物品50は、トップシート10、吸収体20、開孔フィルム23、及びバックシート30を基本構成単位とし、例えば、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収体20との間へのセカンドシート60やトランスファシート(不図示)の配置等の、公知の様々な改変を加えることができる。以下、本実施形態の吸収性物品50の構成部材について、トップシート10、セカンドシート60、吸収体20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0024】
<トップシート>
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させて吸収体20の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開孔ポリエチレンフィルム等の開孔フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも各不織布が好ましい。
【0025】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20に誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0026】
<セカンドシート>
セカンドシート60は、トップシート10の非肌側、より詳しくはトップシート10と吸収体20との間に配置される。セカンドシート60を配置することで、クッション性が増し、吸収性物品50のフィット性と着用感が向上するとともに、トップシート10を透過してきた体液を吸収体20全体にほぼ均一に拡散させることができる。
【0027】
セカンドシート60の基材は、例えば、体液の透過速度がトップシート10より速く、体液を吸収体20へ素早く拡散させ、及び/又は、クッション性を有する嵩高な不織布である。該不織布としてはエアスルー不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。セカンドシート60の厚さは例えば0.1mm以上4mm以下の範囲であり、その坪量は例えば20g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は22g/m2以上37g/m2以下の範囲である。厚さが0.1mm未満、又は、坪量が20g/m2未満もしくは60g/m2より大きいと、吸収体20の肌側表面全体に体液が十分に拡散しないとともに、クッション性が低下し、吸収性物品50の着用感が低下する傾向がある。また、セカンドシート60の形状は、特に制限はないが、好ましい実施形態では、吸収体20の表面を完全に覆うことができる形状である。
【0028】
<吸収体>
吸収体20は、その長手方向の寸法(最大長さ)L
20(
図1)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体20の幅方向の寸法(最大幅)W
20(
図1)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上800mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する前部A及び後部Cの幅方向寸法がともに60mm以上400mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する中央部Bの幅方向寸法が90mm以上250mm以下の範囲である。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。なお、ここでの寸法及び平面視形状は、後述するように、吸収性シート21とフラッフ吸収体22とを重ね合わせた状態でのものである。
【0029】
本実施形態の吸収体20は、肌側に配置される吸収性シート21と、非肌側に配置されるフラッフ吸収体22とを備え、吸収性シート21とフラッフ吸収体22との間には、開孔フィルム23が配置されている。
【0030】
<吸収性シート>
吸収性シート21は、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含まないものである。吸収性シート21には、第1形態及び第2形態がある。第1形態の吸収性シート21は、
図5(a)に示す吸収性シート前駆体21Xの、所定の位置に接合部28を形成することで、第1の高吸収性ポリマー層(以下「SAP層」ともいう)27を面方向に分割して複数の閉空間29を形成したものである。第2形態の吸収性シート21は、吸収性シート前駆体21Xに代えて
図5(b)に示す吸収性シート前駆体21Yの、所定の位置に接合部28を形成することで、第1、第2のSAP層27をそれぞれ面方向に分割し、各SAP層27に複数の閉空間29を形成したものである。
【0031】
図5(a)に示す吸収性シート前駆体21Xは、着用者の肌側から順に、第1の親水性不織布25、第1のSAP層27、及びパルプ含有不織布26を重ね合わせて構成された吸収性シートである。また、
図5(b)に示す吸収性シート前駆体21Yは、着用者の肌側から順に、第1の親水性不織布25、第1のSAP層27、第2の親水性不織布25、第2のSAP層27、及びパルプ含有不織布26を重ね合わせて構成された吸収性シートである。吸収性シート21の厚さは、例えば、0.5mm以上5mm以下の範囲である。吸収性シート21の厚さが0.5mm未満では、吸収体20全体としての体液吸収能力が不十分になり、複数回の体液吸収を担えない傾向がある。吸収性シート21の厚さが20mmを超えると、吸収体20全体としての厚さが大きくなり、他者から目立ち易くなる傾向がある。高吸収性ポリマー12は、第1、及び第2のSAP層27の各閉空間29内に、無接着状態で封入されている。
【0032】
吸収性シート21によれば、薄型でありつつ、第1のSAP層27(第1形態)又は第1、第2のSAP層27(第2形態)が面方向に複数の小部屋である閉空間29に分割され、閉空間29内に高吸収性ポリマー12が無接着状態で封入され、一の閉空間29とそれに隣り合う他の閉空間29との間に体液拡散路となる接合部28が形成されていることから、吸収性物品50の使用開始時から使用終了時まで体液拡散性が高水準に維持され、また、高吸収性ポリマー12がゲルブロッキングを起こし難く、各閉空間29内に封入された高吸収性ポリマー12の体液吸収能力を十分に活用できるようになり、複数回の体液吸収を高い吸収速度で実施できる吸収性物品50が得られる。また、閉空間29内の高吸収性ポリマー12の体液吸収能力を最大限に活用できることから、高吸収性ポリマー12の封入量を最小限に留めることも可能であり、吸収性シート21の一層の薄型化や吸収性物品50の着用感、フィット感の向上等が得られる。さらに、複数の閉空間29内で高吸収性ポリマー12がほぼ均等に膨潤し、硬化するので、吸収性シート21全体としては大きく突出する部分が発生しにくく、吸収性物品50の着用感やフィット感をより一層向上させ得る。
【0033】
(親水性不織布)
第1、第2の親水性不織布25は、例えば、吸収体20の面方向及び厚さ方向に体液を拡散させる。親水性不織布25としては、体液の拡散性に優れる親水性不織布を特に限定なく使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなる繊維の1種又は2種以上を含む、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性シート21の薄型化や体液拡散性の向上等の観点から、スパンボンド不織布がより好ましい。親水性不織布25の坪量は、例えば、10g/m2以上40g/m2以下の範囲である。親水性不織布25の厚さは、例えば、0.05mm以上0.3mm以下の範囲である。なお、第1、第2の親水性不織布25には、同種又は異種の親水性不織布を用いることができる。
【0034】
(パルプ含有不織布)
パルプ含有不織布26は、吸収性シート21の最も非肌側に配置されることで、例えば、第1又は第2のSAP層27を支持し、体液が排出されたときに、高吸収性ポリマー12が体液吸収を開始する前に、体液を一時的に貯留及び保持し、体液漏れ、液戻り等の発生を防止する。高吸収性ポリマー12が体液を吸収するよりも、パルプ含有不織布26が体液を保持する方が速いが、高吸収性ポリマー12が体液吸収を開始すると、パルプ含有不織布26に保持された体液が高吸収性ポリマー12に吸収される。さらに、パルプ含有不織布26は体液の流れを整流し、吸収性シート21に供給された体液の一部を、その非肌側に位置する開孔フィルム23、及びフラッフ吸収体22に円滑に受け渡すので、この点でも体液漏れ、液戻り等の防止に寄与する。
【0035】
パルプ含有不織布26としては、構成繊維としてパルプ繊維を含む不織布を特に限定なく使用できるが、例えば、吸収性シート21への強度付与等に寄与する不織布32と、不織布32の少なくとも一方の表面に一体化され、吸収性シート21の体液拡散性や保液性等に寄与するパルプ層31と、を含むパルプ含有不織布26が挙げられる。一体化とは、吸収性物品50の使用終了まで、パルプ含有不織布26の機能が損なわれるほどに、パルプ層31と不織布32とが剥離しないことを意味する。好ましい実施形態では、パルプ層31が第1又は第2のSAP層27に面し、不織布32が開孔フィルム23を臨むように配置される。
【0036】
パルプ含有不織布26の中でも、水流交絡による一体化物が好ましい。該一体化物は、不織布32の表面に、パルプ繊維をウォータージェットで吹き付けて交絡し、一体化してパルプ層31を設けたものである。このパルプ含有不織布26では、不織布32の一方の表面で不織布32の構成繊維とパルプ繊維とが絡み合ってパルプ層31が一体化されると共に、パルプ繊維の一部が不織布32を厚み方向に突き抜けて他方の面に露出した状態になり、パルプ層31と不織布32とが強固に結合する。パルプ繊維としては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプの1種又は2種以上を使用できる。不織布32としては特に限定されないが、パルプ層31に対する支持性、パルプ含有不織布26全体の強度、保液性や柔らかさ、風合い等の観点から、スパンボンド不織布が好ましく、合成樹脂製繊維としてポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布がより好ましく、ポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布がさらに好ましい。
【0037】
パルプ含有不織布26の坪量は、吸収性物品50の厚さや体液吸収速度等の観点から、例えば、60g/m2以下の範囲、又は30g/m2以上60g/m2以下の範囲である。坪量が60g/m2を超えると、吸収性シート21が厚くなり、さらに、パルプ繊維が密になって、非肌側に位置する開孔フィルム23やフラッフ吸収体22への体液の円滑な受け渡しができず、体液漏れ等が発生し易くなる傾向がある。また、パルプ含有不織布26が硬さや厚みを増すことで、吸収性シート21が硬くなって着用時の快適性を損なう傾向がある。一方、坪量が30g/m2未満では,パルプ含有不織布26が柔らかくなり過ぎて製造歩留まりが低下し、また、体液吸収後に破れ易くなる傾向がある。パルプ層31の坪量は例えば30g/m2以上50g/m2以下の範囲であり、不織布32の坪量は例えば7g/m2以上30g/m2以下の範囲である。
【0038】
(SAP層)
第1、第2のSAP層27は、体液を吸収及び保持する。
第1形態の吸収性シート21では、第1のSAP層27は、
図2乃至
図4等に示すように、第1の親水性不織布25とパルプ含有不織布26とが、縦横に延びる帯状の接合部28により接合され、接合部28により周囲を囲まれた平面視ほぼ矩形状及び断面視円盤状の複数の第1の閉空間29に分割され、各第1の閉空間29の内部には高吸収性ポリマー12が非接着状態で封入されている。第1の閉空間29の個数は本実施形態の16個(
図3)に限定されず、任意の個数とすることができる。本明細書において、「円盤状」とは、厚さ方向の両側にわずかに突出した円盤状を意味する。
【0039】
第2形態の吸収性シート21では、第1のSAP層27はパルプ含有不織布26に代えて第2の親水性不織布25が用いられる以外は第1形態の吸収性シート21と同様に構成され、第2のSAP層27は、第1の親水性不織布25に代えて第2の親水性不織布25が用いられる以外は第1形態の吸収性シート21と同様に構成され、接合部28により周囲を囲まれた第1、第2の各SAP層27の複数の第1、第2の閉空間29の内部には、高吸収性ポリマー12が非接着状態で封入されている。第2形態の吸収性シート21では、第1のSAP層27の第1の閉空間29と、これに厚さ方向に重なる第2のSAP層27の第2の閉空間29とが、第2の親水性不織布25を介して一体化され、断面視円盤状の形状を有している。第2形態でも、第1、第2の閉空間29の個数は本実施形態の16個(
図3)に限定されず、任意の個数とすることができる。
【0040】
本実施形態の接合部28は、吸収性シート21の全縁辺に設けられた接合部28と、長手方向及び幅方向にそれぞれ延びる複数の接合部28と、から構成されている。接合部28の形成位置は本実施形態に限定されず、例えば、放射状、同心円状、長手方向に延びる複数の接合部28と幅方向に延びる複数の接合部28とが90°未満又は90°を超える角度で交差する形状等が挙げられる。接合部28の幅は、体液拡散性等の観点から、例えば、1mm以上5mm以下の範囲である。接合部28の幅が1mm未満では、接合部28が剥がれる可能性があり、接合部28の幅が5mmを超えると、接合部28を通って体液が拡散してしまい、非肌側方向に浸透しにくくなる傾向がある。また、第1、第2の閉空間29の平面視形状は、本実施形態の矩形状に限定されず、例えば、三角形状、正三角形状、六角形状、真円状、正方形状等が挙げられる。なお、接合部28は、例えば、ヒートシール溶着、超音波溶着、高周波溶着等を利用して、形成することができる。
【0041】
(高吸収性ポリマー)
第1、第2の各SAP層27に用いられる高吸収性ポリマー12としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマー12は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
高吸収性ポリマー12は、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマー12を用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体20が体液を吸収した後に硬化することにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0043】
第1、第2のSAP層27中の高吸収性ポリマー12の坪量は、ゲルブロッキングの発生を防止する観点から、例えば、150g/m2以上800g/m2以下の範囲、又は200g/m2以上700g/m2以下の範囲である。SAPの坪量を前述の数値範囲内とすることで、第1、第2の高吸収性ポリマー層27中でのゲルブロッキングを一層防止し、かつ、吸収体20(吸収性シート21)を柔らかい触感にすることができる。また、第1、第2の高吸収性ポリマー層27の一層の厚さは、例えば、0.5mm以上10.0mm以下の範囲又は0.5mm以上6.0mm以下の範囲である。なお、第1、第2のSAP層27の坪量及び厚さは同一でも異なっていてもよい。
【0044】
<吸収性シートの製造方法>
第1形態の吸収性シート21は、公知の方法に従って製造できる。例えば、第1の親水性不織布25の非肌側表面の閉空間形成予定領域に所定量の高吸収性ポリマー12を散布する第1工程と、高吸収性ポリマー12を散布した第1の親水性不織布25の非肌側表面にパルプ含有不織布26の肌側面(パルプ層31の肌側面)を重ね合わせて積層体を得る第2工程と、得られた積層体の所定領域に対し、厚さ方向の両側から、ヒートシール、超音波印加、高周波印加等を実施し、所定の接合部28を形成する第3工程を含む製造方法が挙げられる。第2形態の吸収性シート21も同様にして製造できる。ヒートシール、超音波印加、高周波印加等を利用した接合部28の形成は、前述の積層体の厚さ方向片側から実施してもよい。
【0045】
<開孔フィルム>
開孔フィルム23は、
図2に示すように、一方の表面から他方の表面に貫通する複数の開孔33を有することで液透過性を示す。開孔フィルム23は、吸収性シート21の非肌側に配置される。この場所に開孔フィルム23を配置することで、吸収性シート21を非肌側方向に通液した体液が、長手方向、幅方向に拡散しつつ、開孔フィルム23のさらに非肌側に配置したフラッフ吸収体22に満遍なく通液する。
【0046】
開孔フィルム23としては、貫通孔である開孔33を有する開孔樹脂フィルムを特に限定なく使用でき、一方の表面の開孔33の開孔径と他方の表面の開孔33の開孔径とが同じである開孔樹脂フィルム、一方の表面の開孔33の開孔径が他方の表面の開孔33の開孔径よりも大きく、開孔33が漏斗状の立体形状を有する開孔樹脂フィルム等が挙げられる。より具体的には、開孔ポリエチレンフィルム、開孔ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。開孔フィルム23における開孔33の数は、液透過性等の観点から、例えば50個/cm2以上であり、上限は開孔33の開孔径に応じて、体液の面方向への広がりと開孔フィルム23のフラッフ吸収体22への通液性とが高水準でバランス良く得られる範囲を適宜選択すればよい。開孔数が50個/cm2未満では、開孔フィルム23が硬くなり、かつ、液透過性が低下する傾向がある。また、液透過性等の観点から、開孔面積率は25%以上50%以の範囲、又は30%以上50%以下の範囲である。
【0047】
開孔フィルム23において、一方及び他方の各表面における開孔33の開孔径は、液拡散性、強度及び加工性の観点から、例えば、2mm以下の範囲、又は0.50mm以上0.65mm以下の範囲である。開孔径が2mm超えると開孔フィルム23の強度、加工性等が低下する傾向がある。また、開孔径が0.50mmより小さい場合、液透過性が低下する傾向がある。「開孔径」は、開孔フィルム23を、ワンショット3D形状測定機(商品名:VR-3100、(株)キーエンス製)で撮影し、任意に選んだ3つの開孔33の直径を測定した平均値である。開孔フィルム23の坪量は、強度及び加工性の観点から、例えば、20g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は23g/m2以上30g/m2以下の範囲である。坪量が20g/m2未満では、開孔フィルム23が破断し易くなる傾向があり、坪量が60g/m2を超えると、肌触りが硬くなる傾向がある。また、開孔フィルム23の平面視形状は特に限定されず、例えば、フラッフ吸収体22を全体的に覆う形状であればよい。
【0048】
<フラッフ吸収体>
フラッフ吸収体22は、開孔フィルム23の非肌側に配置され、吸収性繊維と高吸収性ポリマー12とを含有する。本実施形態ではフラッフ吸収体22の平面視形状は略長方形であるが、これに限定されず、例えば、砂時計型、Iの字型、長円型、楕円形型、4角が丸まった角丸長方形等が挙げられる。好ましい実施形態では、フラッフ吸収体22の長さ方向寸法及び幅方向寸法は、それぞれ、吸収性シート21の長さ方向寸法及び幅方向寸法よりもやや大きめに形成される。
【0049】
フラッフ吸収体22としては、例えば、吸収性繊維と高吸収性ポリマー12とを混合し、所定の形状に成形したものを特に限定なく使用できる。吸収性繊維としては、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。高吸収性ポリマー12としては、吸収性シート21で用いられるのと同じものを特に限定なく使用できる。
【0050】
フラッフ吸収体22中の、吸収性繊維の坪量は、例えば100g/m2以上800g/m2以下の範囲又は180g/m2以上450g/m2以下の範囲である。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収できる。フラッフ吸収体22中の高吸収性ポリマー12の坪量は、例えば50g/m2以上800g/m2以下の範囲、又は90g/m2以上400g/m2以下の範囲である。高吸収性ポリマー12の坪量を前述の範囲から選択することで、フラッフ吸収体22中でのゲルブロッキングを防止し、フラッフ吸収体22に体液を複数回吸収させることができる。
【0051】
<キャリアシート>
本実施形態では、吸収体20全体を、又は吸収性シート21及びフラッフ吸収体22のいずれか一方もしくは両方をキャリアシート(不図示)で包んでもよい。キャリアシートは親水性シートであり、例えば、吸収体20(又は吸収性シート21又はフラッフ吸収体22)を全体的に又は部分的に包む。例えば、キャリアシートの幅方向中央部に吸収体20を載置し、必要に応じてキャリアシートと吸収体20とをホットメルト接着剤等で接着した後、キャリアシートの幅方向両端部を吸収体20の肌側で重ね合わせて必要に応じてホットメルト接着剤等で接着することにより、キャリアシートでC折りした吸収体20が得られる。キャリアシートとしては、この分野で常用される親水性シートをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。また、キャリアシートの厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0052】
<バックシート>
バックシート30は、吸収体20が保持する体液が着用者の衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0053】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m2以上60g/m2以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0054】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れ等を防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0055】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0056】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの坪量は、例えば、13g/m2以上20g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0057】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収性シート21と開孔フィルム23とフラッフ吸収体22とをこの順に重ね合わせて吸収体20を得る工程と、トップシート10及びセカンドシート60と、バックシート30との間に吸収体20を収容する工程と、トップシート10の縁辺とバックシート30の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を利用して固定する工程と、立体ギャザー40をバックシート30及びトップシート10の所定位置に設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。吸収性物品50には、必要に応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。こうして得られた吸収性物品50を折り畳んで製品化される。
【0058】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0059】
以下に実施例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0060】
<実施例1~6及び比較例1~4>
(吸収性シートの作成)
図3及び
図4に示す構造を有し、かつ表1に示す構成を有し、長さ120mm、幅80mm、厚さ1mmの実施例1~6及び比較例1~4の各吸収性シートを作製した。
【0061】
(吸収性物品の作製)
図1及び
図2に示す構造を有する吸収性物品を作製した。
上記で得られた吸収性シートと、表1に示す開孔径及び開孔数を有し、坪量が26g/m
2である開孔フィルムと、表1に示す重量割合でフラッフパルプとSAPとを混合したフラッフ吸収体とをこの順に重ね合わせ、吸収体を作製した。
液透過性のトップシートとしてエアスルー不織布(坪量25g/m
2)、セカンドシートとしてエアスルー不織布(坪量30g/m
2)、立体ギャザーとしてスパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布(坪量15g/m
2)、液不透過性のバックシートとして通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m
2)をそれぞれ用いた。トップシート、バックシート、吸収体を一体化する際に、ホットメルト接着剤を用いてトップシートと吸収体上面とを接合し、長さ230mm、幅90mm、厚さ15mmの実施例1~6及び比較例1~4の各吸収性物品を作製した。
【0062】
実施例1~6及び比較例1~4の各吸収性物品について、以下の評価を実施した。結果を表1に示す。
<評価>
(吸収速度3回法)
底面積16.8cm2の円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、吸収性物品の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ20mlを投下し、生理食塩水が吸収性物品に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間(秒)を計測した(1回目)。そして3分経過後に同様の時間を計測し(2回目)、同様に3回目を計測した。表1に、1回目、2回目、3回目、及び合計の各吸収速度(秒)を示す。
(濡れ広がり性)
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水100mlを吸収体の中心部に向かって注水し、吸収部位から製品長手方向に生理食塩水が20cm広がるまでの時間(秒)を計測し、濡れ広がり性を評価した。結果を表1に示した。
(液戻り量)
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水120mlを吸収体の中心部に向かって注水し、10分間放置した後、生理食塩水の吸収部位に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製 No.2 ろ紙、直径55mm)を置き、その上に35kgf/cm2の錘を乗せ、30秒経過後、ろ紙の重量を測り、ろ紙の重量差を液戻り量(g)とした。
(45度漏れ性試験)
体液の一時的な吸収を見るために45度漏れ性試験を行った。250mm×400mm×8mmの2枚のアクリル板を、一方を水平に、他方を水平に置いたアクリル板から45度に傾斜させて固定した。水平から45度に傾斜させた側のアクリル板に作製した吸収性物品を貼り付ける。20mLの生理食塩水を吸収体の中心部に向かって注水し、吸収性物品の下側から漏れが生じなければ「○」、漏れが生じた場合「×」と判定した。
【0063】
【0064】
表1の結果から、実施例1~6の吸収性物品は複数回の吸収後でも吸収速度が速く、且つ、液戻り、45度漏れ性が良好で漏れにくいことがわかる。一方、比較例1~4の吸収性物品は、吸収速度が遅い、乃至は、液戻りが悪い、またはその両方である結果だった。
よって、本実施形態によれば、ゲルブロッキング生じにくいため吸収速度が速く、一時吸収にも優れる吸収性物品を得ることができる。