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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175700
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】指し棒
(51)【国際特許分類】
   A45B 9/04 20060101AFI20221117BHJP
   A45B 7/00 20060101ALI20221117BHJP
   A45B 9/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A45B9/04 Z
A45B7/00 B
A45B9/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082334
(22)【出願日】2021-05-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】521208789
【氏名又は名称】副 祥吾
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】副 祥吾
【テーマコード(参考)】
3B104
【Fターム(参考)】
3B104AA01
(57)【要約】
【課題】車椅子の利用者等にとって便利な指し棒を提供する。
【解決手段】一方の端部に備えられる機能部と、他方の端部に備えられるグリップ部と、前記グリップ部と前記機能部とを第1方向に沿って接続しており、前記第1方向に伸縮する伸縮部と、を有し、前記機能部は、略J字状に湾曲する第1先端部と、前記第1先端部の湾曲部分から、前記湾曲部分の中心または焦点に対して離間する方向に突出する第2先端部と、を有する指し棒。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に備えられる機能部と、
他方の端部に備えられるグリップ部と、
前記グリップ部と前記機能部とを第1方向に沿って接続しており、前記第1方向に伸縮する伸縮部と、を有し、
前記機能部は、
略J字状に湾曲する第1先端部と、
前記第1先端部の湾曲部分から、前記湾曲部分の中心または焦点に対して離間する方向に突出する第2先端部と、を有する指し棒。
【請求項2】
前記第2先端部は、前記湾曲部分のうち湾曲開始部から頂部までの部分から、突出している請求項1に記載の指し棒。
【請求項3】
前記第2先端部は、前記第1方向に沿っており前記第1先端部を含む第1仮想平面に交差する方向に突出する請求項1または請求項2に記載の指し棒。
【請求項4】
前記第1先端部における前記湾曲部分の先端は、前記第1方向に沿っており前記第1先端部を含む第1仮想平面に垂直であって前記第1方向に沿う第2仮想平面に対して、一方側に配置されており、
前記第2先端部の先端は、前記第2仮想平面に対して他方側に配置されている請求項1から請求項3までのいずれかに記載の指し棒。
【請求項5】
前記第2先端部は、前記第2先端部の付け根位置における前記湾曲部分の接線方向に略垂直な方向に突出する請求項1から請求項4までのいずれかに記載の指し棒。
【請求項6】
前記第2先端部は、タッチ式操作部を反応させる反応部を、先端に有する請求項1から請求項5までのいずれかに記載の指し棒。
【請求項7】
前記第1先端部は、前記第1先端部における他の部分より柔軟な滑り止め部を有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の指し棒。
【請求項8】
前記グリップ部には、手先を通すベルトが設けられており、前記ベルトの材質はゴムまたはエラストマーである請求項1から請求項7までのいずれかに記載の指し棒。
【請求項9】
前記グリップ部における前記伸縮部に接続する側とは反対側の基端には、マグネットが備えられる請求項1から請求項8までのいずれかに記載の指し棒。
【請求項10】
前記グリップ部の外周面は、略5角形または略6角形の断面形状を有する請求項1から請求項9までのいずれかに記載の指し棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子の利用者等にとって便利な指し棒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公共施設などのバリアフリー化が進められ、車椅子等の利用者も、様々な施設を利用できる、すべての人が安全に生活できる社会を目指す活動が、様々な分野で進められている。また、このような社会を目指すためには、より活動しやすい車椅子の開発や、車椅子の利用者が活用できる様々なツールの開発も欠かすことができない。
【0003】
車椅子の利用者が様々な施設を利用する際に問題となり得る一つの特徴として、体の位置の上下動に関する可動範囲が狭いことや、体の位置が立ち姿勢の人に比べて低いことが挙げられる。一例を挙げると、エレベータの操作ボタンや、施設や交通機関の券売機、銀行ATMなどは、車椅子の利用者にとっては操作位置が高く、操作が難しいという問題がある。
【0004】
そこで、車椅子の利用者が、直接手の届かない位置にあるボタンの操作をするためのツールとして、指し棒を利用することが考えられる(特許文献1等参照)。このような指し棒を使うことで、車椅子の利用者が、直接手の届かない位置にあるボタン等の操作を行うことが可能となる。
【0005】
しかしながら、従来の指し棒は、特に車椅子の利用者にとっては、使用しないときの収納という観点で課題がある。すなわち、車椅子の利用者は、車椅子の操作などに手を使う必要があるため、車椅子の利用者に対しては、指し棒の利用および収納を、より簡単に切り換えられることが求められる。また、車椅子の利用者は、視線の方向と指し棒の延びる方向との間の角度をつけることが難しい状況に遭遇することが多いため、従来の直線的な形状の指し棒では、指し棒の先端が見えづらい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-11697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、車椅子の利用者等にとって便利な指し棒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る指し棒は、
一方の端部に備えられる機能部と、
他方の端部に備えられるグリップ部と、
前記グリップ部と前記機能部とを第1方向に沿って接続しており、前記第1方向に伸縮する伸縮部と、を有し、
前記機能部は、
略J字状に湾曲する第1先端部と、
前記第1先端部の湾曲部分から、前記湾曲部分の中心または焦点に対して離間する方向に突出する第2先端部と、を有する。
【0009】
本発明に係る指し棒は、略J字状に湾曲する第1先端部を有するため、第1先端部を車椅子のアームレストなどに引っ掛けることにより、使用しないときは簡単に収納できる。そのため、このような指し棒は、指し棒の利用および収納を、より簡単に切り換えられることができる。また、本発明に係る指し棒は、第1先端部および第2先端部による機能部が、グリップ部および伸縮部に対して直線的に形成されていないため、視線の方向と指し棒の延びる方向との間の角度をつけることが難しい状況であっても、第2先端部の先端に対する利用者からの見えづらさを、回避することができる。
【0010】
また、本発明に係る指し棒は、伸縮部を有するため、使用しないときは短くしてコンパクトに収納できる。さらに、略J字状の第1先端部は、床に置かれたバッグや袋の持ち手に引っ掛けることにより、本発明に係る指し棒を、車椅子に座った状態で、バッグなどを手元に引き寄せるためのツール(便利棒)として使用することができる。
【0011】
また、たとえば、前記第2先端部は、前記湾曲部分のうち湾曲開始部から頂部までの部分から、突出していてもよい。
【0012】
このような指し棒は、第2先端部の先端が、伸縮部の延長方向の近くに配置されるため、指し棒として操作しやすい。
【0013】
また、たとえば、前記第2先端部は、前記第1方向に沿っており前記第1先端部を含む第1仮想平面に交差する方向に突出してもよい。
【0014】
第2先端部がこのような方向に突出することにより、第2先端部を用いてボタン等を押す際に、第1先端部が邪魔になる問題を、容易に回避することができる。
【0015】
また、たとえば、前記第1先端部における前記湾曲部分の先端は、前記第1方向に沿っており前記第1先端部を含む第1仮想平面に垂直であって前記第1方向に沿う第2仮想平面に対して、一方側に配置されていてもよく、
前記第2先端部の先端は、前記第2仮想平面に対して他方側に配置されていてもよい。
【0016】
第1先端部と第2先端部とをこのように配置することにより、第1先端部を使用するときに第2先端部が邪魔になることを防止し、また、第2先端部を使用するときに第1先端部が邪魔になることを防止できる。
【0017】
また、たとえば、前記第2先端部は、前記第2先端部の付け根位置における前記湾曲部分の接線方向に略垂直な方向に突出してもよい。
【0018】
このような形状とすることにより、たとえ第2先端部の長さが短い場合でも、第2先端部の先端が第1先端部から離れるため、第2先端部を指し棒の先端として容易に使用することができる。
【0019】
また、たとえば、前記第2先端部は、タッチ式操作部を反応させる反応部を、先端に有してもよい。
【0020】
このような指し棒は、タッチパネル等のタッチ式の操作部を有する券売機、ATM、エレベータなどの施設を利用する際に、車椅子の利用者が、好適に使用することができる。
【0021】
また、たとえば、前記第1先端部は、前記第1先端部における他の部分より柔軟な滑り止め部を有してもよい。
【0022】
第1先端部が滑り止め部を有することにおり、車椅子のアームレスト等に引っ掛けて収納された指し棒が、振動等により脱落する問題を防止することができる。また、滑り止め部は、第1先端部に対象物を引っ掛けて手元に引き寄せる場合に、引っ掛けた対象物が第1先端部から脱落する問題を防止できる。
【0023】
また、たとえば、前記グリップ部には、手先を通すベルトが設けられていてもよく、前記ベルトの材質はゴムまたはエラストマーであってもよい。
【0024】
ベルトに手先を通して指し棒を使用することにおり、車椅子の利用者の手から、意図せず指し棒が脱落する問題を防止できる。また、このようなベルトが設けられていることにより、握力が弱い人であっても、適切に指し棒を使用することができる。
【0025】
また、たとえば、前記グリップ部における前記伸縮部に接続する側とは反対側の基端には、マグネットが備えられていてもよい。
【0026】
このような指し棒によれば、たとえば、車椅子の利用者が、鍵などの金属性の小物を地面に落としたような場合に、指し棒の先端側を握り、マグネットを落下物に近づけることにより、容易に落下物を拾うことが可能である。
【0027】
また、たとえば、前記グリップ部の外周面は、略5角形または略6角形の断面形状を有してもよい。
【0028】
グリップ部の断面形状を略5角形または略6角形とすることにより、握った状態での安定感が向上し、機能部の角度調整が容易となるため、指し棒の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る指示棒の使用状態を示す外観図である。
図2図2は、図1に示す指示棒の収納状態を示す外観図である。
図3図3は、図1に示す指示棒における伸縮部のストッパー機構を示す部分拡大図である。
図4図4は、変形例に係る指示棒の使用状態を示す外観図である。
図5図5は、実施形態と変形例に係る指示棒における第2先端部の周辺を拡大して表示した拡大図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る指示棒の使用状態と収納状態とを示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係る指し棒10の使用状態を示す外観図である。指し棒10は、一方の端部10aに備えられる機能部40と、他方の端部10bに備えられるグリップ部20と、グリップ部20と機能部40とを第1方向D1に沿って接続する伸縮部30とを有する。図1および図2に示すように、指し棒10、特に指し棒10の伸縮部30は、第1方向D1に伸縮可能であり、指し棒10は、図1に示す使用状態と、図2に示す収納状態とに変形可能である。
【0031】
指し棒10は、車椅子等の利用者が、車椅子に座った状態では手が届かない位置の操作部を操作したり、車椅子に座った状態では手が届かない位置にある対象物を手元に引き寄せたりするために使用される。指し棒10には、様々な態様での使用方法があるが、図1に示すように伸縮部30を延ばした状態で使用される場合が多い。
【0032】
一方、図2に示すように、指し棒10は、伸縮部30などを短くすることにより、全長を短くすることができる。指し棒10は、図2に示すように全長を短くした収納状態と、図1に示すように全長を長くした使用状態との間で変形可能である。ただし、指し棒10は、図2に示すように全長を短くした状態で使用されてもよく、また、伸縮部30の一部のみを延ばしたり、機能部40の直線部分43のみを延ばした状態で使用することも可能である。
【0033】
図1に示す伸縮部30は、互いに第1方向D1にスライド可能に連結された伸縮第1部分32と伸縮第2部分34とを有する。伸縮第1部分32と伸縮第2部分34とは、いずれも中空筒状である。図1図2との比較から理解できるように、伸縮第1部分32の内部には、第1先端部42における直線部分43が挿通可能であり、伸縮第2部分34の内部には、伸縮第1部分32が挿通可能になっている。さらに、グリップ部20の内部も空洞が形成されており、グリップ部20の内部には、伸縮第2部分34が挿通可能になっている。
【0034】
これにより、図2に示す収納状態では、グリップ部20の内部に、伸縮第2部分34、伸縮第1部分32および直線部分43の大半が収容される。図2に示す収納状態における指し棒10の全長は、図2に示す使用状態の4分の1~2分の1程度となることが好ましいが、伸縮の構造および伸縮の程度は特に限定されない。また、指し棒10の全長は、特に限定されないが、たとえば、図1に示す使用状態で50~100cm程度、図2に示す収納状態で15~40cm程度とすることができるが、特に限定されない。
【0035】
グリップ部20、伸縮第2部分34、伸縮第1部分32および第1先端部42には、図1に示すように指し棒10を第1方向D1に伸ばした際に、互いに抜け落ちないように、テーパー構造や突起などによる抜け止め構造(不図示)が形成されている。また、図1に示す使用状態において、第1方向D1に沿う押し込み方向の荷重を支えられるように、伸縮第2部分34と伸縮第1部分32との間には、図3に示すような係合爪によるロック機構36が設けられていてもよい。
【0036】
図3に示すようなロック機構36は、グリップ部20と伸縮第2部分34の間や、伸縮第1部分32と第1先端部42との間に形成されていてもよい。ただし、図3に示す例とは異なり、グリップ部20、伸縮第2部分34、伸縮第1部分32および第1先端部42は、隣接する各部分同士の摩擦抵抗により、第1方向D1に沿う押し込み方向の荷重を支える構造であってもよい。
【0037】
図1および図2に示すグリップ部20の表面は、指し棒10の使用者が握って使用しやすいように、樹脂、革、木、金属などにより構成されるが、グリップ部20の材質は特に限定されない。グリップ部20の外周面の断面形状は、略5角形または略6角形とすることが好ましく、略5角形とすることが特に好ましい。グリップ部20の外周面の断面形状をこのような形状とすることにより、グリップ部20を握った状態での安定感が向上し、機能部40の角度調整が容易となるため、指し棒10の操作性が向上する。
【0038】
図1および図2に示すように、グリップ部20には、手先を通すベルト62が設けられている。ベルト62の材質は、グリップ部20とベルト62との間に通した手先を適度な強さで拘束できるように、ゴムまたはエラストマーであることが好ましい。このようなベルト62を設けることにより、たとえば、グリップ部20を握って指し棒10を支えることが難しい、指先の動きに障害のある使用者であっても、適切に指し棒10を使用することができる。また、グリップ部20とベルト62との間に手を通して指し棒10を使用することにより、使用中に指し棒10を手から落下させてしまう問題を防止することができる。
【0039】
図1および図2に示すように、グリップ部20における伸縮部30に接続する側とは反対側の基端22には、マグネット24が備えられる。マグネット24は、指し棒10における他方の端部10bの中でも、最も端部に配置されている。
【0040】
マグネット24は、たとえば、車椅子の利用者が、鍵などの金属性の小物を地面に落としたような場合に、指し棒10を用いて、その落下物を拾う場合に使用することができる。この場合、使用者である車椅子の利用者は、図1に示す指し棒10の第1先端部42または伸縮部30を握り、マグネット24を落下物に近づけることにより、マグネット24に落下物を吸着させ、落下物を拾うことができる。
【0041】
なお、指し棒10のマグネット24を用いて落下物を拾う場合、使用者は、第1先端部42の湾曲部分44をグリップして指し棒10を使うことにより、使用中に指し棒10を手から落下させてしまう問題を防止することができる。ただし、使用者は、指し棒10における湾曲部分44以外の部分を握って、グリップ部20のマグネット24を使用してもよい。
【0042】
図1に示すように、機能部40は、略J字状に湾曲する第1先端部42と、第1先端部42の湾曲部分44から突出する第2先端部52とを有する。第2先端部52は、第1先端部42の湾曲部分44の中心または焦点44dに対して離間する外径方向に突出する。
【0043】
図1に示すように、第1先端部42は、伸縮部30に接続しており第1方向D1に沿って直線状に延びる直線部分43と、直線部分43における一方の端部10a側に接続しており湾曲する湾曲部分44を有する。湾曲部分44は、円弧状、楕円弧状、または二次曲線などの曲線状の形状とすることができるが、特に限定されない。
【0044】
図1に示すように、第2先端部52は、第1先端部42の湾曲部分44のうち、湾曲開始部44aから頂部44bまでの部分から突出していることが好ましい。これにより、第2先端部52の先端52cでボタンや操作パネルを押す際に、第1先端部42が邪魔になったり、第1先端部42が指し棒10の使用者の視野を遮ったりする問題を防止できる。
【0045】
図5(a)は、図1に示す指し棒10を、一方の端部10a側から、第1方向D1に沿って見た平面図である。図5(a)に示すように、第2先端部52は、第1方向D1(図1参照)に沿っており第1先端部42を含む第1仮想平面F1に、交差する方向に突出することが好ましい。なお、図5(a)に示す指し棒10における突出方向は、グリップ部20を右手に握った状態で第2先端部52を操作する際に、特に使用しやすい。これとは異なり、グリップ部20を左手に握った状態で、第2先端部152を操作しやすい指し棒110については、図4および図5(b)を用いて後ほど説明する。
【0046】
図5(a)に示すように、第1先端部42における湾曲部分44の先端44cは、第1方向D1(図1参照)に沿う第2仮想平面F2に対して一方側72に配置されている。これに対して、第2先端部52の先端52cは、第2仮想平面F2に対して他方側74に配置されている。なお、図5(a)に示すように、第2仮想平面F2は、第1方向D1(図1参照)に沿っており第1先端部42を含む第1仮想平面F1に垂直である。
【0047】
第1先端部42における湾曲部分44の先端44cと、第2先端部52の先端52cとを、第2仮想平面F2の一方側72と他方側74とに配置することにより、このような指し棒10は、第1先端部42を使用するときに第2先端部52が邪魔になることを防止し、また、第2先端部52を使用するときに第1先端部42が邪魔になることを防止できる。
【0048】
図1に示すように、第2先端部52は、第2先端部52の付け根位置52aにおける湾曲部分44の接線方向T1に略垂直な方向に突出していてもよい。接線方向T1に垂直な方向に突出することにより、第2先端部52の先端52cの操作性が向上する。ただし、第2先端部52は、接線方向T1に対して斜め方向に突出していても構わない。
【0049】
図5に示すように、第2仮想平面F2から第1先端部42における湾曲部分44の先端44cの中心位置までの長さL1は、たとえば5~15cm程度とすることができ、第2先端部52の突出長さL2は、たとえば1~8cm程度とすることができるが、特に限定されない。また、第2先端部52の太さは、第1先端部42の太さより細いことが、第2先端部52により正確にボタン等に触れる観点から好ましい。また、第2先端部52の突出長さL2は、第2仮想平面F2から第1先端部42における湾曲部分44の先端44cの中心位置までの長さL1より短いことが、第2先端部52の抗折強度を確保する観点から好ましい。
【0050】
図1および図2に示す指し棒10は、複数の用途に用いることができる。まず、第1の用途として、車椅子の利用者が、車椅子に座った状態では直接手で触れることができない位置のボタンや操作パネル(たとえば、エレベータの操作ボタンや、券売機やATMの操作パネルなど)を、指し棒10を用いて操作することが挙げられる。
【0051】
第1の用途では、主として、図1に示すように伸縮部30を延ばした使用状態に指し棒10を変形させて、指し棒10を使用する。使用者は、指し棒10のグリップ部20を手で把持し、第2先端部52の先端52cでボタンや操作パネルをプッシュまたはタッチすることにより、車椅子に座った状態では直接手で触れることができない位置のボタンや操作パネルを操作する。
【0052】
なお、図1に示す第2先端部52は、静電容量方式などのタッチ式操作部を反応させる反応部54を、先端52cに有する。反応部54は、導電性繊維、導電性樹脂、金属膜などを有し、静電容量方式などのタッチ式操作部表面に、人間の指で触れたときと同様の静電容量の変化を生じさせる。反応部54がタッチ式操作部表面の静電容量を変化させる方式については、特に限定されず、市販のスタイラスペンなどと同様の様式を採用することができる。
【0053】
図1に示す指し棒10では、図5(a)に示すように、一方の端部10a側から見て、第2先端部52は、第1先端部42における湾曲部分44の先端44cから右回りの挟角を形成する位置に設けられる。このような配置とすることにより、指し棒10は、グリップ部20を右手に握った状態で第2先端部52を操作する際に、特に使用しやすい。
【0054】
一方、図4は、変形例に係る指し棒110を示す外観図であり、図5(b)は、図4に示す指し棒110を、一方の端部110a側から、第1方向D1に沿って見た平面図である。変形例に係る指し棒110は、第2先端部152の突出方向および付け根位置152aと、他方の端部110b側に配置されるグリップ部20に設けられるベルト162の位置が異なることを除き、図1および図5(a)に示す指し棒10と同様である。
【0055】
指し棒110では、図5(b)に示すように、一方の端部110a側から見て、第2先端部152は、第1先端部42における湾曲部分44の先端44cから左回りの挟角を形成する位置に設けられる。このような配置とすることにより、指し棒110は、グリップ部20を左手に握った状態で第2先端部152を操作する際に、特に使用しやすい。
【0056】
手先を通すベルト162は、グリップ部20の面のうち、第2先端部152の突出方向とは反対側に位置する面に配置することができるが、ベルト162の配置はこれのみには限定されない。なお、図5(a)、図5(b)に示す例とは異なり、第2先端部52、152が第1仮想平面F1に沿って突出する態様も考えられる。このような指し棒は、グリップ部20を右手に握った場合でも、左手に握った場合でも、同様の操作性を奏する。
【0057】
指し棒10の第2の用途は、床に置かれたバッグなど、車椅子に座った状態では直接手で引っ張り上げることが難しい対象物を、図1に示す第1先端部42に、引っ掛けて手元に引き寄せるものである。第2の用途では、指し棒10は、図1に示すように伸縮部30を延ばした状態で用いられてもよく、図2に示すように、伸縮部30を縮めた状態で用いられてもよい。
【0058】
第2の用途では、使用者は、指し棒10のグリップ部20または伸縮部30などを把持して第1先端部42を操作し、引き寄せようとする対象物の取っ手や掛け紐などに、第1先端部42における湾曲部分44の先端44cを通し、第1先端部42に対象物を引っ掛ける。さらに、使用者は、対象物に第1先端部42を引っ掛けた状態で、指し棒10を引いて第1先端部42を引き寄せることにより、対象物を手元に引き寄せることができる。
【0059】
図1に示すように、第1先端部42は、第1先端部42における他の部分より柔軟な滑り止め部48を有していてもよい。滑り止め部48は、湾曲部分44の内側や、湾曲部分44の先端44cに備えられる。滑り止め部48を有する第1先端部42は、対象物を第1先端部42に引っ掛けて引き寄せる途中で、対象物が第1先端部42から脱落してしまう問題を防止できる。
【0060】
指し棒10の第3の用途は、床に落とした鍵などの金属性の小物を、グリップ部20の基端22に備えられるマグネット24で吸着し、車椅子に座った状態で手元に拾い上げるものである。第3の用途では、主として、図1に示すように伸縮部30を延ばした状態で、指し棒10を使用する。
【0061】
第3の用途では、使用者は、指し棒10を、第1および第2の用途とは逆向きに持つ。すなわち、使用者は、第1先端部42や伸縮部30など、指し棒10における一方の端部10a側を把持する。さらに、使用者は、指し棒10の他方の端部10b側の基端22に備えられるマグネット24を、金属小物などの対象物に接触させて吸着する。最後に、使用者は、マグネット24が対象物を吸着した状態で、指し棒10を引いてグリップ部20を引き寄せることにより、対象物を拾うことができる。
【0062】
指し棒10の第4の用途は、車椅子のアームレストなどに、図2に示す第1先端部42の湾曲部分44を引っ掛けて、指し棒10を収納するものである。第4の用途では、主として、図2に示すように伸縮部30を縮めることにより、指し棒10を収納状態に変形させて用いる。
【0063】
指し棒10は、必要なときは直ちに使用できる状態で、かつ、車椅子の利用者の邪魔にならない状態で収納されることが好ましい。指し棒10は、使用しない状態では、第1先端部42の湾曲部分44を車椅子のアームレストなどに引っ掛けることにより、必要なときは直ちに使用できる状態で、かつ、車椅子の利用者の邪魔にならない状態で収納できる。
【0064】
なお、第1先端部の湾曲部分44に備えられる滑り止め部48は、第4の用途においては、収納した指し棒10が、車椅子のアームレスト等から脱落する問題を防止できる。また、滑り止め部48は、第3の用途において第1先端部42を把持する場合、手元の滑りを防止する効果も期待できる。
【0065】
指し棒10において、伸縮部30、グリップ部20における表面またはマグネット24以外の部分、機能部40における反応部54または滑り止め部48以外の部分の材質は、特に限定されないが、剛性が高く軽量な材質であることが好ましい。指し棒10におけるこれらの部分の材質としては、たとえば、アルミニウム合金、マグネシウム合金またはステンレスのような金属または合金材料、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの樹脂材料、カーボン、炭素繊維・樹脂複合材料などの繊維樹脂複合材料などが挙げられるが、特に限定されない。
【0066】
指し棒10は、略J字状に湾曲する第1先端部42を有するため、第1先端部42を車椅子のアームレストなどに引っ掛けることにより、使用しないときは簡単に収納できる。そのため、このような指し棒10は、指し棒の利用および収納を、より簡単に切り換えられることができる。また、指し棒10は、第1先端部42の湾曲部分44から第2先端部52が突出する形状を有するため、第2先端部52を用いた操作ボタンや操作パネルの押し下げや、第1先端部42を用いたバッグなどのつり上げを、容易に行うことができる。また、指し棒10は、伸縮部30を有するため、使用しないときは短くしてコンパクトに収納できる。
【0067】
以上、本発明に係る指し棒10、110を、実施形態および変形例を挙げて説明してきたが、本発明に係る指し棒10、110は、上述した実施形態や変形例にのみに限定されるものではなく、他の様々な実施形態や変形例が存在することは言うまでもない。たとえば、図6は、本発明の第2実施形態に係る指し棒210を示す概略図である。図6(a)は、指し棒210の使用状態における外観を示しており、図6(b)は、指し棒210の収納状態における外観を示している。
【0068】
指し棒210は、機能部240における第1先端部242および第2先端部252のサイズの比率および詳細形状や、グリップ部220におけるベルト262の配置などが、図1に示す指し棒210とは異なる。ただし、指し棒210は、概略形状や主要な機能については、図1に示す指し棒10と同様である。図1図6との比較から理解できるように、指し棒210の第1先端部242の直線部分243の長さは、伸縮部30における伸縮第1部分32および伸縮第2部分34や、グリップ部20より長い。
【0069】
また、指し棒210は、湾曲部分244が指し棒10よりやや小型であり、第2先端部252も指し棒10より短い。このように、指し棒10、210における各部の長さや詳細形状は、使用者の体格や筋力などに応じて、適宜調整可能である。
【0070】
また、指し棒10、210は、一方の手でグリップ部20を把持し、他方の手で第1先端部42、242を把持し、指し棒10、210の両側を引っ張ることにより延ばす方式であってもよい。また、これとは異なり、指し棒10、210は、いずれかの端部を把持して振ることにより遠心力で延ばす方式であってもよい。また、図6に示す回転方向80について、機能部40は、グリップ部20に対して相対回転しないように回転止めがされていてもよい。また、伸縮部30は、実施形態に示すようなスライド式だけに限定されず、折り畳み式、屈曲式、蛇腹式など、スライド式以外の伸縮構造であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10、110、210…指し棒
10a、110a…一方の端部
20、220…グリップ部
22…基端
24…マグネット
10b、110b…他方の端部
40、240…機能部
42、242…第1先端部
43、243…直線部分
44、244…湾曲部分
44a…湾曲開始部
44b…頂部
44c…先端
44d…中心または焦点
48…滑り止め部
52、152、252…第2先端部
52a、152a…付け根位置
52c…先端
T1…接線方向
54…反応部
30…伸縮部
32…伸縮第1部分
34…伸縮第2部分
36…ロック機構
62、162、262…ベルト
D1…第1方向
F1…第1仮想平面
F2…第2仮想平面
72…一方側
74…他方側
80…回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6