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特開2022-175705マスターバッチの製造方法及び樹脂マスターバッチの製造方法
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  • 特開-マスターバッチの製造方法及び樹脂マスターバッチの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175705
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】マスターバッチの製造方法及び樹脂マスターバッチの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
C08J3/22 CER
C08J3/22 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082341
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】500524752
【氏名又は名称】トラスト企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野 悦甫
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA15
4F070AA18
4F070AA23
4F070AA42
4F070AA47
4F070AA50
4F070AA52
4F070AA54
4F070AC12
4F070AC72
4F070AC88
4F070AC94
4F070AC96
4F070AE02
4F070AE03
4F070AE05
4F070AE07
4F070AE09
4F070AE30
4F070FA12
4F070FB04
4F070FB07
4F070FC03
4F070FC05
(57)【要約】
【課題】樹脂の発泡を抑制し、正常な樹脂の造粒を可能とするマスターバッチの製造方法及び樹脂マスターバッチの製造方法を提供する。
【解決方法】少なくとも一つが含水性である複数の添加剤を混合混錬して固形化し、前記複数の添加剤からなる固形物を得る工程と、前記固形物を脱水する工程と、脱水された前記固形物を溶融及び/又は加圧造粒してマスターバッチを得る工程と、前記マスターバッチに樹脂を混合して溶融造粒し、樹脂マスターバッチを得る工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つが含水性である複数の添加剤を混合混錬して固形化し、前記複数の添加剤からなる固形物を得る工程と、
前記固形物を脱水する工程と、
脱水された前記固形物を溶融及び/又は加圧造粒してマスターバッチを得る工程と、
を含むことを特徴とする、マスターバッチの製造方法。
【請求項2】
少なくとも一つが含水性である複数の添加剤を混合混錬して固形化し、前記複数の添加剤からなる固形物を得る工程と、
前記固形物を脱水する工程と、
脱水された前記固形物を溶融及び/又は加圧造粒してマスターバッチを得る工程と、
前記マスターバッチに樹脂を混合して溶融造粒し、樹脂マスターバッチを得る工程と、
を含むことを特徴とする、樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項3】
前記脱水は、前記固形物に吸湿性液体又は高分子吸着剤を接触させることによって行うことを特徴とする、請求項1に記載のマスターバッチの製造方法又は請求項2に記載の樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項4】
前記脱水は、前記固形物に対して、自然乾燥、熱風、冷凍及び電磁誘導加熱からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法を施すことによって行うことを特徴とする、請求項1に記載のマスターバッチの製造方法又は請求項2に記載の樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項5】
前記マスターバッチ内に水分含量が3~35質量%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法又は請求項2~4のいずれかに記載の樹脂マスターバッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチの製造方法及び樹脂マスターバッチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスターバッチを使用することで、粉体材料使用時に比べて工場内の飛散や機械の汚染などの心配がなく、取り扱いも安全で、作業の効率化につながるという利点がある。
【0003】
一方、プラスチック分野において、塩化ビニルやポリプロピレンなどの樹脂と木粉とを複合させることが広く行われてきた。木粉は成形品を木質部材に近い風合いに変化させる目的で用いられる他、増量剤としても用いられている。
【0004】
木粉を樹脂に均一に混合するためには、木粉をできるだけ粉砕し、細かいメッシュを通過するものを用いることが行われている。粉砕前の木チップや木繊維を用いると、嵩が大きいため所定の量を含有させることが難しく、また、連続式の混練機に定量的に供給することが難しく、大量生産するために木粉を用いている。
【0005】
しかしながら、微細な木粉は飛散や機械の汚染等の問題を生じるため、上述のようにマスターバッチ化することにより、使用するように工夫がなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-119559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような木粉のマスターバッチを使用し、樹脂と混合した場合に、当該樹脂が発泡して正常な造粒ができないという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、樹脂の発泡を抑制し、正常な樹脂の造粒を可能とするマスターバッチの製造方法及び樹脂マスターバッチの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、木粉等のマスターバッチを樹脂に混合して造粒を行う際の発泡がマスターバッチ内に含まれる水分に起因することを見出し、以下の発明を想到するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示す通りである。
[1]少なくとも一つが含水性である複数の添加剤を混合混錬して固形化し、前記複数の添加剤からなる固形物を得る工程と、
前記固形物を脱水する工程と、
脱水された前記固形物を溶融又は加圧造粒してマスターバッチを得る工程と、
を含むことを特徴とする、マスターバッチの製造方法。
[2]少なくとも一つが含水性である複数の添加剤を混合混錬して固形化し、前記複数の添加剤からなる固形物を得る工程と、
前記固形物を脱水する工程と、
脱水された前記固形物を溶融又は加圧造粒してマスターバッチを得る工程と、
前記マスターバッチに樹脂を混合して溶融造粒し、樹脂マスターバッチを得る工程と、
を含むことを特徴とする、樹脂マスターバッチの製造方法。
[3]前記脱水は、前記固形物に吸湿性液体又は高分子吸着剤を接触させることによって行うことを特徴とする、[1]に記載のマスターバッチの製造方法又は[2]に記載の樹脂マスターバッチの製造方法。
[4]前記脱水は、前記固形物に対して自然乾燥、熱風、冷凍及び電磁誘導加熱からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法を施すことによって行うことを特徴とする、[1]に記載のマスターバッチの製造方法又は[2]に記載の樹脂マスターバッチの製造方法。
[5]前記マスターバッチ内に水分含量が3~35質量%であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法又は[2]~[4]のいずれかに記載の樹脂マスターバッチの製造方法。
【0011】
なお、「含水性」なる文言は、添加剤自体が当初より水を含んでいる場合の他、ベントナイト等の水に溶いて使用する添加剤のように、後に当該添加剤に加水する場合をも含む概念である。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、マスターバッチを得る前に、その原料である固形物に対して脱水を行うようにしている。したがって、マスターバッチ内の水分量を十分に低減することができ、樹脂と混合した際の発泡を抑制することができる。
【0013】
また、添加剤が熱溶融性に劣っている場合においても、このような添加剤を予めマスターバッチ化した後に樹脂と混合し、溶融造粒するので、前記添加剤を樹脂(マスターバッチ)中に均一に分散させることができる。
【0014】
さらに、マスターバッチは複数の添加剤を含むので、粉体材料使用時に比べて工場内の飛散や機械の汚染することなく、当該複数の添加剤を樹脂中に均一に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態におけるマスターバッチ及び樹脂マスターバッチの製造工程を示すプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細及びその他の特徴について、実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
(添加剤準備工程:S1)
最初に、本実施形態では、マスターバッチの原料となる複数の添加剤を準備する。添加剤としては、以下に示すような脱水工程を行って水分による発泡を抑制するという観点から、複数の添加剤の少なくとも一種は水分を含有するか、及び/又はベントナイト等のように加水されて、含水性を有している。
【0018】
このような添加剤として、例えば、リネン、綿、ラミー、ポリノジック等の植物草木の繊維や繭からとれる絹等の動物の毛、ベントナイト、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、ゼオライト等の粘土鉱物、古紙、再生紙、工場残滓の紙、馬鈴薯、コーンスターチ、タピオカ等の澱粉、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)等の生分解性樹脂、木酢液、種々の農薬を挙げることができる。その他に、酸化チタン等の光触媒、カルボキシセルロース(CMC)、ポバール、コーン油、パーム油等の植物性油脂等を挙げることができる。また、卵殻、貝焼成物等のカルシウム含有物質を挙げることができる。
【0019】
繊維や粘土鉱物を添加剤として用いることにより、最終的に得る樹脂成形品の機械的強度(引張強度、曲げ強度、破断強度、耐衝撃性等)を向上させることができる。また、光触媒を用いることにより、樹脂成型品はガス吸着・分解機能を有することができる。さらに、植物性油脂を用いることにより、親水性の添加剤と疎水性との材料、すなわち樹脂との馴染み性をよくすることができる。
【0020】
なお、図1では添加剤としてA,B,Cの3種類を挙げているが、いずれの添加剤が上述の水分含有添加剤であってもよい。A,B,Cの全てが水分含有添加剤であってもよいし、A,B,Cの一種又は二種が水分含有添加剤であってもよい。
【0021】
また、図1では、添加剤としてA,B,Cの3種類を挙げているが、A及びBの二種類でもよいし、A,B,C,D・・・の四種類以上であってもよい。
【0022】
さらに、本実施形態で用いる添加剤の少なくとも一種は、上記のような水分含有添加剤の他に、汎用の添加剤、すなわち、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、熱安定剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、中和剤、防水剤、撥水剤、抗菌剤等であってもよい。
【0023】
添加剤として防水剤や撥水剤、抗菌剤を用いることにより、最終的な樹脂成形品に対して防水性、撥水性、抗菌性等を付与することができる。
【0024】
(混合混錬・固形化工程:S2)
次いで、本実施形態では、工程S1で準備した複数の添加剤を混錬機に入れて混錬して固形物を製造する。
【0025】
混合機としては、W型混錬機、V型混錬機、ドラム型混合機、リボン型混合機等の汎用の混合機を使用することができる。
【0026】
また、混錬時間は、上述した複数の添加剤が固形化するまで行うが、例えば5~30分行う。
【0027】
本工程で得られる固形物L1は、上述した複数の添加剤の凝集物であり、その大きさは、例えば径が0.5mm~15mm、長さが1mm~15mmである。
【0028】
(脱水工程:S3)
次いで、本実施形態では、上述のようにして得た固形物L1に脱水を施す。
【0029】
脱水操作は特に限定されないが、例えば固形物L1に対して、吸湿性液体を接触させて行うことができる。吸湿性液体としては、塩化リチウム、食塩水などの潮解性を有する塩の溶液や、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの吸湿性の高い多価アルコール、その他の吸湿性を有する安価な液体を用いることができる。
【0030】
脱水時間は、固形物L1の含有水分量や吸湿性液体の濃度等に依存するが、例えば10~120分である。
【0031】
なお、吸湿性液体を用いた脱水は1.5気圧かつ常温で行うことができる。
【0032】
また、吸湿性液体に代えて、固形状の高分子吸着剤を用いることもできる。高分子吸着剤としては、市販のものを用いることができる。
【0033】
また、電磁誘導加熱によって脱水工程を行うことができる。具体的には、所定の容器内に入れた固形物に対して電磁波(マイクロ波)を印加し、水分を加熱して蒸発させる。脱水に要する時間は、印加する電磁波(マイクロ波)の強度等の条件に依存するが、通常は数分程度である。
【0034】
その他、ヒータによる熱風を用いた通常の加熱操作によって脱水を行うこともできる。この場合の熱風は、例えば30~100℃である。
【0035】
また、フリーズドライ等の冷凍技術を用いて行うこともできる。
【0036】
さらには、上述した能動的な操作を行わずに、自然乾燥により脱水することもできる。
【0037】
さらに、ホッパー内に上記固形物を入れ、当該ホッパーから電熱コイル等が巻回されたシリンダ等の管内に固形物を導入した後コイルに通電し、当該通電による発熱によって固形物の脱水を行うこともできる。この場合の加熱温度は例えば30~150℃であり、加熱時間は30~180分である。
【0038】
脱水後の固形物L1の水分量は3~35質量%であることが好ましい。
【0039】
固形物L1の水分量、すなわち含水率が3%未満であると、後に説明する樹脂との溶融造粒において樹脂との相溶性が劣化してしまい、樹脂マスターバッチ中にマスターバッチが均一に分散しなくなってしまう場合がある。したがって、樹脂成形品における添加剤の効果を十分に奏することができない場合がある。
【0040】
一方、固形物L1の水分量、すなわち含水率が35%を超えると、目的とする樹脂の発泡を十分に抑制できない場合がある。
【0041】
(溶融及び/又は加圧造粒工程:S4)
次いで、本実施形態では、脱水処理した固形物L1を溶融造粒する。
【0042】
溶融造粒処理は、汎用の混錬機、例えばバンバリーミキサーや加圧ニーダー、二軸押出機を用いて行う。溶融温度は、固形物L1を構成する添加物の種類によって異なり、繊維や粘土鉱物等の軟化点の高いものが入っているほど高くなり、一般的には150~280℃である。
【0043】
加圧造粒処理の場合は、熱を加えない方法であり、打錠機、押出造粒機(ディスクペレッター)等を使用する。
【0044】
また、溶融造粒処理と加圧造粒処理とを併用することもできる。
【0045】
以上、S1~S4の工程を経ることによって、複数の添加剤を含むマスターバッチL2を得ることができる。なお、加圧造粒処理を経て得たマスターバッチは、薬の錠剤のように、粉が押し固められたような形状を呈し、水溶性である。
【0046】
(樹脂混合・溶融造粒工程:S5)
次に、樹脂マスターバッチの製造について説明する。樹脂マスターバッチは、上述のようにして得たマスターバッチに対して、適宜樹脂を混合し、溶融造粒して製造する。
【0047】
本実施形態で用いることのできる樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂およびポリアミド樹脂(ナイロン)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
また、種々の生分解性樹脂を用いてもよい。当該生分解樹脂は単独で用いることもできるし、上記熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。
【0049】
溶融造粒は、汎用の混錬機、例えばバンバリーミキサーや加圧ニーダー、二軸押出機を用いて行う。溶融温度は、樹脂の種類によって異なるが、一般的には120~280℃である。
【0050】
以上のような工程を経ることにより、樹脂マスターバッチL3を得ることができる。
【0051】
樹脂マスターバッチL3は、その後、押出成形や射出成形、または延伸等によって所定の樹脂成形品や樹脂フィルムに加工される。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、マスターバッチL2を得る前に、その原料である固形物L1に対して脱水を行うようにしている。したがって、マスターバッチL2内の水分量を十分に低減することができ、樹脂と混合した際の発泡を抑制することができる。
【0053】
また、添加剤が熱溶融性に劣っている場合においても、このような添加剤を予めマスターバッチ化した後に樹脂と混合し、溶融造粒するので、前記添加剤を樹脂(マスターバッチ)中に均一に分散させることができる。
【0054】
さらに、マスターバッチL2は複数の添加剤を含むので、粉体材料使用時に比べて工場内の飛散や機械の汚染することなく、当該複数の添加剤を樹脂中に均一に分散させることができる。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1