(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175739
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】複合フィルム、蓋材、及び内容物入り蓋付容器
(51)【国際特許分類】
B32B 25/08 20060101AFI20221117BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B32B25/08
B65D77/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082396
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小野 栞
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼村 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】谷川 遼治
【テーマコード(参考)】
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA23
3E067AB01
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3E067GD10
4F100AB10A
4F100AB16B
4F100AB33A
4F100AK04C
4F100AK05C
4F100AK06C
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4F100AT00A
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4F100BA07
4F100DG10A
4F100GB18
4F100JL12C
4F100JL13B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒートシールして再封可能な包装体を形成したときに、低温環境下における開封においても、再封部に粘着層及びヒートシール層からなる膜の残留を抑制できる、複合フィルム、当該複合フィルムから形成された蓋材、及び内容物入り蓋付容器を提供する。
【解決手段】複合フィルム10は、基材層、粘着層4、及びヒートシール層5を、この順で含み、前記基材層と前記ヒートシール層とは、前記粘着層によって互いに接着されており、前記粘着層は、熱可塑性エラストマーとロジンエステルとを含み、かつ前記ヒートシール層は、ポリエチレン樹脂を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、粘着層、及びヒートシール層を、この順で含み、
前記基材層と前記ヒートシール層とは、前記粘着層によって互いに接着されており、
前記粘着層は、熱可塑性エラストマーとロジンエステルとを含み、かつ
前記ヒートシール層は、ポリエチレン樹脂を含む、
複合フィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体である、請求項1又は2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記粘着層の厚さは、5μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記ヒートシール層は、密度0.920~0.958g/cm3のポリエチレン樹脂層である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレン樹脂層は、高密度ポリエチレンのみ、又は高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む、請求項5に記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記高密度ポリエチレンの含有率は、前記ヒートシール層の質量全体に対して、50~90質量%である、請求項6に記載の複合フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の複合フィルムから成形された蓋材。
【請求項9】
再封用である、請求項8に記載の蓋材。
【請求項10】
前記ヒートシール層側にハーフカットを有さない、請求項8又は9に記載の蓋材。
【請求項11】
収納部及びフランジ部を有する容器本体と、
前記容器本体に収容されている内容物と、
請求項1~7のいずれか一項に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、
を備え、
前記ヒートシール層が前記フランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、
内容物入り蓋付容器。
【請求項12】
前記容器本体は、紙カップであり、
前記フランジ部は、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する、請求項11に記載の内容物入り蓋付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルム、蓋材、及び内容物入り蓋付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一度では消費しきれない食品や医薬品等の包装手段として、再封機能を有する各種の包装体が用いられている。かかる包装体としては、ジッパー等の付属物を取り付けることなく、包装体そのものに再封機能を付与することのできる、多層フィルムを用いた封止が提案されている。
【0003】
再封を可能とする多層フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂(a)を主成分とする表面樹脂層(A)と、特定の物性を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分とする粘着樹脂層(B)と、オレフィン系樹脂(c)を主成分とするヒートシール樹脂層(C)とが、(A)/(B)/(C)の順に積層された積層体が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された多層フィルムを、容器本体等にヒートシールさせて封止した包装体は、問題を生じることなく、開封及び再封が可能となっていた。
【0005】
ここで、容器本体にヒートシールさせて封止した包装体において、開封及び再封が可能となるしくみは、容器本体等にヒートシールされた部分の両縁で、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)とが破断する(以下、「エッジ切れ」と呼ぶことがある。)ことに起因する。
【0006】
容器本体に蓋材がヒートシールされた包装体を例に挙げて、
図2を用いて、開封及び再封が可能となるしくみを説明する。
【0007】
図2は、蓋材100を用いて形成した内容物入り蓋付容器300を示す図である。内容物入り蓋付容器300は、開封時には、
図2(a)に示されるように、フランジ部202から突出しているタブ110を摘まんで蓋材100を引き上げることにより、接合部202aの外周に対応する位置で、粘着層104とヒートシール層106が破断し(外エッジ切れし)、この位置に対応する第1の破断部120aが暴露される。
【0008】
更に、蓋材100を引き上げると、
図2(b)に示されるように、基材層102と粘着層104との界面で蓋材100が層間剥離する。その後、層間剥離が接合部202aの内周に対応する位置に達すると、
図2(c)に示されるように、粘着層104とヒートシール層106が破断し(内エッジ切れし)、この位置に対応する第2の破断部120bが暴露されるとともに、容器本体200のフランジ部202には、再封部104aが形成される。
【0009】
すなわち、再封部104aは、フランジ部202に形成された接合部202aの領域に、蓋材100から、外エッジ切れ、層間剥離、及び内エッジ切れによって切り取られた、粘着層104とヒートシール層106からなる積層体であり、粘着層104が表面に露出した状態となっている。
【0010】
そして、開封された内容物入り蓋付容器300を再封する際には、再封部104aに蓋材100が押しつけられることによって、基材層102と粘着層104が密着して再封されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載された多層フィルムをヒートシールさせて封止した包装体は、低温環境下では、上記した内エッジ切れが困難となる場合があった。このため、低温環境下における開封の際には、内エッジ切れによる再封部の切り取りがなされず、容器フランジ部に粘着層及びヒートシール層からなる膜が残留してしまう場合があった。
【0013】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、ヒートシールして再封可能な包装体を形成したときに、低温環境下における開封においても、再封部に粘着層及びヒートシール層からなる膜の残留を抑制できる、複合フィルム、当該複合フィルムから形成された蓋材、及び内容物入り蓋付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、ヒートシールして再封可能な包装体を形成するための複合フィルムを、特定の材料を用いた特定の積層構成の積層体とすれば、低温環境下における開封であっても内エッジ切れを容易とし、再封部に粘着層及びヒートシール層からなる膜の残留を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0015】
《態様1》
基材層、粘着層、及びヒートシール層を、この順で含み、
前記基材層と前記ヒートシール層とは、前記粘着層によって互いに接着されており、
前記粘着層は、熱可塑性エラストマーとロジンエステルとを含み、かつ
前記ヒートシール層は、ポリエチレン樹脂を含む、
複合フィルム。
《態様2》
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーである、態様1に記載の複合フィルム。
《態様3》
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体である、態様1又は2に記載の複合フィルム。
《態様4》
前記粘着層の厚さは、5μm以下である、態様1~3のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様5》
前記ヒートシール層は、密度0.920~0.958g/cm3のポリエチレン樹脂層である、態様1~4のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様6》
前記ポリエチレン樹脂層は、高密度ポリエチレンのみ、又は高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む、態様5に記載の複合フィルム。
《態様7》
前記高密度ポリエチレンの含有率は、前記ヒートシール層の質量全体に対して、50質量%以上である、態様6に記載の複合フィルム。
《態様8》
態様1~7のいずれか一態様に記載の複合フィルムから成形された蓋材。
《態様9》
再封用である、態様8に記載の蓋材。
《態様10》
前記ヒートシール層側にハーフカットを有さない、態様8又は9に記載の蓋材。
《態様11》
収納部及びフランジ部を有する容器本体と、
前記容器本体に収容されている内容物と、
態様1~7のいずれか一態様に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、
を備え、
前記ヒートシール層が前記フランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、
内容物入り蓋付容器。
《態様12》
前記容器本体は、紙カップであり、
前記フランジ部は、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する、態様11に記載の内容物入り蓋付容器。
【発明の効果】
【0016】
本発明の複合フィルムによれば、ヒートシール層を容器本体等にヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封するときに、低温環境下における開封においても、再封部に粘着層及びヒートシール層からなる膜の残留を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の複合フィルムのヒートシール層を、容器本体等にヒートシールして形成した包装体は、ヒートシールされた接合部の外端縁及び内端縁の両者で、ヒートシール層が破断して開封されるため、複合フィルムのヒートシール層側の表面から、開封に利用するための切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0018】
したがって、容器とヒートシールすることが意図されている領域、例えば、容器本体のフランジ部とヒートシールする領域に沿って、ハーフカットを設ける必要も、ヒートシールの際に位置合わせの操作も必要なくなり、複合フィルム、蓋材、及び蓋付き容器の生産性に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る内容物入り蓋付容器を開封したときの剥離機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
《複合フィルム》
本発明の複合フィルムは、少なくとも、基材層、粘着層、及びヒートシール層が、この順で積層された複合フィルムであり、基材層とヒートシール層とが、粘着層によって互いに接着されている。そして、粘着層とヒートシール層とは、特定の材料からなる。
【0021】
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルムの構成について説明する。
図1に、本発明の複合フィルムの一実施形態に係る断面図を示す。
【0022】
図1に示される本発明の複合フィルムの一実施形態に係る複合フィルム10は、紙層1と、紙層層1の内側に積層配置されたアルミニウム層2と、アルミニウム層2の内側に積層配置された樹脂層3と、樹脂層3に隣接するように配置された粘着層4と、粘着層4の内側に積層配置されたヒートシール層5と、を備える。
【0023】
図1に示される本発明の複合フィルムの一実施形態に係る複合フィルム10においては、基材層は3層からなる積層体となっており、具体的には、基材層は、紙層1と、アルミニウム層2と、樹脂層3と、からなる。そして、
図1に示される複合フィルム10は、基材層と、粘着層4と、ヒートシール層5とが、この順で積層されている。
【0024】
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、及びヒートシール層を、必須の構成として含んでいれば、これら以外の層を任意に備えていてもよい。
【0025】
本発明の複合フィルムを構成するそれぞれの層の厚み等は、複合フィルムの用途等に応じて、適宜決定することができる。
【0026】
<基材層>
基材層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。基材層は、粘着層に隣接し、粘着層によってヒートシール層と接着されている。本発明の複合フィルムにおいて、基材層は、単層であっても、複層からなる積層体となっていてもよい。
【0027】
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、及びヒートシール層が、この順で積層されているため、基材層は、例えば包装体等の構造体を形成したときに、構造体の外層となる場合がある。この場合には、基材層は、最内層となるヒートシール層を熱融着して構造体を形成する時の保護層となりうる。また、内容物の表示等のための印刷を施すための印刷層ともなりうる。
【0028】
基材層が単層である場合には、基材層は、樹脂、特に保護層となり、印刷が可能となる樹脂からなる樹脂層であってよい。基材層となる樹脂層を形成する材料としては、一般的に用いられている樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のポリオレフィン、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0029】
なお、上記の樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0030】
中では、基材層と粘着層との間の接着性を向上させる観点から、基材層を構成する樹脂は、ポリエステルであることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0031】
更には、印刷適正、複合フィルムへの剛性付与、入手の容易性及び取り扱い性から、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが特に好ましい。
【0032】
なお、基材層が樹脂層である場合には、予め成形された樹脂フィルムを適用してもよい。基材層となる樹脂フィルムは、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0033】
更に、基材層となる樹脂フィルムには、その表面を粗面化させる粗面化処理が施されていてもよい。表面が粗面化されていることにより、隣接する粘着層とのアンカー効果が生じ、密着性を向上させることができる。
【0034】
基材層が2層以上の積層体である場合には、上記した単層である場合の層に加えて、他の層が備えられるようにする。他の層としては、例えば、バリア性を付与するためのバリア層、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。また、積層体となる基材層には、2層以上の同種の層が設けられていてもよい。
【0035】
(バリア層)
基材層を構成するバリア層は、複合フィルムにバリア性を付与するための層である。
【0036】
バリア層としては、例えば、酸素や水蒸気等のガスを遮断する機能を発現する、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、又はポリアクリロニトリル(PAN)等からなる樹脂層が挙げられる。
【0037】
なお、上記の樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0038】
あるいは、例えば、無機物蒸着膜層、金属箔層、有機物コート層等であってもよい。
【0039】
バリア層となる無機物蒸着膜層としては、例えば、シリカ蒸着膜、アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ・アルミナ蒸着膜等を挙げることができる。
【0040】
バリア層となる金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、チタン箔等の金属箔や、アルミニウム合金箔、ステンレス箔等の合金箔を挙げることができる。
【0041】
バリア層となる有機物コート層としては、塩化ビニリデンコート層、ポリフッ化ビニリデンコート層等のバリアコート層であってもよい。
【0042】
バリア層として無機物蒸着膜層又は有機物コート層を存在させる場合には、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0043】
バリア層として金属箔を存在させ場合には、バリア層の厚さは、5μm以上、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましい。また、100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0044】
(補強層)
基材層を構成する補強層は、複合フィルムの強度を補強するための層である。補強層の材料としては、例えば、コート紙、アート紙等の紙、合成紙、不織布等が挙げられる。補強層となる紙等が基材層の外部に面する場合には、その表面に、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷がなされていてもよい。
【0045】
(接着層)
基材層を構成する接着層は、層と層との間に存在し、層と層とを接着するための層である。接着層としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーからなる層等が挙げられる。
【0046】
また接着層は、接着剤からなる層であってもよい。例えば、ドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、ノンソルベントラミネート接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等であってよい。
【0047】
<粘着層>
粘着層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層であり、隣接する基材層と、ヒートシール層との間に配置され、これらを互いに接着させるものである。
【0048】
本発明の複合フィルムは、ヒートシール層を容器本体等とヒートシールさせて再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、粘着層と、粘着層に隣接する基材層との間で層間剥離が起こるようにすることができる。
【0049】
本発明の複合フィルムにおいて、粘着層は、熱可塑性エラストマーとロジンエステルとを、必須の構成成分として含む。粘着層が、熱可塑性エラストマーとロジンエステルとを含有していることによって、本発明の複合フィルムは、ヒートシール層をヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、粘着層と基材層との間で層間剥離を起こすとともに、良好な再封性を示すようにすることができる。
【0050】
また、低温環境下における開封であっても内エッジ切れを容易とし、再封部に粘着層及びヒートシール層からなる膜の残留を抑制することができる。
【0051】
粘着層は、例えば、熱可塑性エラストマーとロジンエステルと溶媒とを含む組成物を調製し、積層対象となる層の表面に塗工することで、作製することができる。熱可塑性エラストマーとロジンエステルの両方を溶解することのできる溶剤としては、例えば、酢酸エチルを挙げることができる。また、塗工手段としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、ドライラミネーターによる塗工等が挙げられる。
【0052】
粘着層の厚さは、5μm以下であることが好ましい。5μm以下であれば、ヒートシール層をヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、粘着層と基材層との間の層間剥離を、より容易に行うことができる。
【0053】
粘着層の厚さは、4μm以下、又は3μm以下であってもよく、1μm以上、1.5μm以上、又は2μm以上であることが、十分な再封性を得る観点から好ましい。
【0054】
また、粘着層は、4.0g/m2以下の量で存在することが、粘着層と基材層との間の層間剥離を良好に生じさせるとともに、良好な再封性を実現する観点から好ましい。粘着層の量は、3.8g/m2以下、又は3.5g/m2以下であってもよく、0.1g/m2以上、0.3g/m2以上、又は0.5g/m2以上であってもよい。
【0055】
(熱可塑性エラストマー)
本発明の複合フィルムの粘着層を構成する熱可塑性エラストマーは、高温で流動化して成形が可能であり、常温ではゴム弾性を示す材料である。本発明に適用できる熱可塑性エラストマーは、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーや、スチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0056】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-ブテン共重合体(EBM)、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。
【0057】
また、オレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)のマトリクスに、オレフィン系ゴム(EPM、EPDM等)を分散させたブレンド型のオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることも可能である。
【0058】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン-エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体(部分水添スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体;SBBS)、部分水添スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、部分水添スチレン-イソプレン・ブタジエン-スチレン共重合体等を挙げることができる。
【0059】
なお、本発明の複合フィルムの粘着層を構成する熱可塑性エラストマーは、1種単独であっても、2種以上の熱可塑性エラストマーを組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本発明の粘着層を構成する熱可塑性エラストマーとしては、常温又は高温領域においてゴム弾性を示すことから、スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0061】
更には、粘着付与剤との相溶性が良好であることから、スチレン系熱可塑性エラストマーの中でも、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体であってもよい。
【0062】
粘着層における熱可塑性エラストマーの含有率は、粘着層の質量全体に対して、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってよく、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよい。
【0063】
(ロジンエステル)
本発明の複合フィルムの粘着層を構成するロジンエステルは、ロジンをエステル化した化合物である。
【0064】
エステル化されるロジンの主成分となる樹脂酸(各種異性体)の種類は、特に限定されるものではなく、共役二重結合を有する共役樹脂酸であっても、非共役樹脂酸であっても、またこれらの混合物であってもよい。
【0065】
共役樹脂酸としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸等が挙げられる。また、非共役樹脂酸としては、例えば、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0066】
ロジンエステルの形態は、特に限定されるものではなく、例えば、ロジンまたは重合ロジンと多価アルコールとのエステル、水素添加ロジンのエステル、更にはエステルにマレイン酸を付加して得られるマレイン酸変性ロジンエステル等であってもよい。
【0067】
「ロジンエステル」として商業的に入手可能なものを用いることができ、例えば、ハリマ化成社製のハリタックシリーズや、荒川化学工業社製のエルテルガムシリーズ、ペンセル(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0068】
粘着層におけるロジンエステルの含有率は、粘着層の質量全体に対して、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってよく、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよい。
【0069】
粘着層に、十分な量のロジンエステルを含有させることによって、粘着層の粘着性を改良することができ、また、ロジンエステルの量が過剰にならないようにすることによって、粘着層の強度を維持することができる。
【0070】
なお、本発明の複合フィルムの粘着層を構成するロジンエステルは、1種単独であっても、2種以上のロジンエステルを組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(その他の成分)
本発明の複合フィルムの粘着層は、必須成分となる熱可塑性エラストマーとロジンエステル以外に、必要に応じて、機能性等を付与するための他の樹脂等や添加剤等が配合されていてもよい。
【0072】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層である。ヒートシール層は、本発明の複合フィルムを用いて包装体等を形成する際に、ヒートシールに用いられる層となる。このため、ヒートシール層は、複合フィルムの最内層となるように配置する。
【0073】
本発明の複合フィルムのヒートシール層は、ポリエチレン樹脂を含む。ポリエチレン樹脂であれば、熱接着が可能であり、形成された構造体に十分なシール強度を付与することができる。
【0074】
ヒートシール層が含むポリエチレン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
【0075】
本発明の複合フィルムに耐内容物性を付与したい場合には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることが好ましい。
【0076】
ヒートシール層は、予め成形されたフィルムを用いて形成してもよいし、対象となる積層体の表面に、ヒートシール層を形成するための材料を溶融して押出し、冷却固化させて形成してもよい。
【0077】
なお、ヒートシール層を構成するポリエチレン樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。また、ヒートシール層には、必要に応じて、ポリエチレン樹脂以外の樹脂等や添加剤等が配合されていてもよい。
【0078】
本発明の複合フィルムを構成するヒートシール層は、密度0.920~0.958g/cm3のポリエチレン樹脂層であってもよい。かかる構成によれば、十分な製膜性、ヒートシール性を備えるとともに、エッジ切れをより容易とすることができる。
【0079】
なお、本発明において、密度は、JIS K7112-1999に準拠して測定した値であってよい。
【0080】
ヒートシール層の密度は、0.923g/cm3以上、0.925g/cm3以上、0.927g/cm3以上、0.930g/cm3以上、0.933g/cm3以上、又は0.935g/cm3以上であってよく、0.952g/cm3以下、0.950g/cm3以下、又は0.948g/cm3以下であってよい。
【0081】
本発明の複合フィルムにおいて、ヒートシール層は、高密度ポリエチレンのみ、又は高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含むことが好ましい。高密度ポリエチレンのみ、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂からなる層であれば、ヒートシール層の製膜性及びエッジ切れ性をより良好にすることができる。
【0082】
ヒートシール層が、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂による層であるか否かは、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用いて、ヒートシール層について測定した曲線と、混合樹脂層を構成する各ポリエチレンに関して測定した曲線とを比較することで、確認することができる。
【0083】
なお、ヒートシール層に含まれるポリエチレン樹脂層が、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層である場合には、上記の密度は、各成分の密度を各成分の含有率で重みづけした加重平均であってよい。
【0084】
ヒートシール層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であってよい。この厚さは、10μm未満、7μm以下、6μm以下、又は5μm以下であることが、エッジ切れをより容易とする観点から好ましい。
【0085】
(高密度ポリエチレン)
本明細書中で、高密度ポリエチレンとは、分岐鎖を有する場合その分岐差を含め、メチレン基の繰返し単位を80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、若しくは98mol%以上含み、又は実質的にすべての繰返し単位がメチレン基である、密度が0.942g/cm3以上のポリエチレンをいう。
【0086】
特に、0.942g/cm3以上、0.945g/cm3以上、0.948g/cm3以上、0.950g/cm3以上、0.952g/cm3以上、又は0.955g/cm3以上の密度を有し、長鎖の分岐構造を実質的に有しておらず、エチレンを低圧法によってラジカル重合することによって得られるものである。
【0087】
高密度ポリエチレンの密度は、0.970g/cm3以下、0.967g/cm3以下、0.965g/cm3以下、0.962g/cm3以下、又は0.960g/cm3以下であってよい。
【0088】
好ましい高密度ポリエチレンの熱特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、そのメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、JIS K6922-1及び-2、並びにJIS K7210-1に準拠して測定した場合に、好ましくは0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であり、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、又は20g/10min以下である。
【0089】
ヒートシール層における高密度ポリエチレンの含有率は、ヒートシール層の質量全体に対して、50~100質量%であることが好ましい。
【0090】
更には、高密度ポリエチレンの含有率は、ヒートシール層の質量全体に対して、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
【0091】
(低密度ポリエチレン)
本明細書中で、低密度ポリエチレン(LDPE)とは、分岐鎖を含めて、メチレン基の繰返し単位を80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、若しくは98mol%以上含み、又は実質的にすべての繰返し単位がメチレン基である、密度が0.930g/cm3未満のポリエチレンをいう。
【0092】
低密度ポリエチレンの密度は、0.925g/cm3以下、又は0.923g/cm3以下であってもよく、0.870g/cm3以上、0.875g/cm3以上、0.880g/cm3以上、0.900g/cm3以上、0.910g/cm3以上、又は0.915g/cm3以上であってもよい。
【0093】
低密度ポリエチレンは、いわゆる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であってもよく、又は長鎖若しくは短鎖の分岐構造を有していてもよい。なお、短鎖の分岐構造は、炭素原子数4~18、4~10、又は4~8のα-オレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、1-オクテン等に由来する分岐構造であってよい。
【0094】
好ましい低密度ポリエチレンの熱特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、そのメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、JIS K6922-1及び-2、並びにJIS K7210-1に準拠して測定した場合に、好ましくは0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であり、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、又は20g/10min以下である。
【0095】
ヒートシール層における低密度ポリエチレンの含有率は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒートシール層の質量全体に対して、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0096】
<その他の層>
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、及びヒートシール層を、この順で含み、基材層とヒートシール層とが粘着層によって互いに接着されている構成であれば、これら以外の層が含まれていてもよい。
【0097】
《複合フィルムの製造方法》
本発明の複合フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0098】
《複合フィルムの用途》
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、特に限定されるものではない。
【0099】
<包装袋>
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、包装袋であってもよい。例えば、本発明の複合フィルムのヒートシール層を互いにヒートシールすることで、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋等を形成することができる。
【0100】
<蓋材>
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、蓋材であってもよい。本発明の複合フィルムから形成される蓋材は、例えば、容器本体の上端開口部を密封するための蓋材となりうる。そして、本発明の複合フィルムから形成された蓋材は、再封可能な蓋材となるため、再封可能な蓋付包装容器を形成することができる。
【0101】
本発明の複合フィルムから形成された蓋材は、例えば、容器本体の上端開口部にヒートシールされて、蓋付包装容器を形成するが、包装容器の開封時には、外エッジ切れ、蓋材を構成している粘着層と基材層との間の層間剥離、及び内エッジ切れによって、粘着層が基材層と再封可能な状態で露出する。そして、包装容器の再封時には、粘着層と基材層との間で再封されることとなる。
【0102】
<内容物入り蓋付容器>
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、内容物入り蓋付容器であってもよい。
【0103】
具体的には、収納部及びフランジ部を有する容器本体と、容器本体に収容されている内容物と、本発明の複合フィルムから形成された蓋材と、を備え、蓋材のヒートシール層が容器本体のフランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、内容物入り蓋付容器である。
【0104】
本発明の複合フィルムから形成された蓋材を用いて形成された内容物入り蓋付容器は、蓋材がヒートシールされた接合部が、再封可能となっている。
【0105】
蓋付容器の開封及び再封の機構は、上記した通りである。
【0106】
[内容物入り蓋付容器の構成]
内容物入り蓋付容器は、容器本体と、内容物と、本発明の複合フィルムから形成された蓋材と、を備える。
(容器本体)
内容物入り蓋付容器を形成するための容器本体は、収納部及びフランジ部を有する。
【0107】
容器本体の材料は、特に限定されるものではなく、本発明の複合フィルムから形成された蓋材のヒートシール層がヒートシールできるものであればよい。例えば、樹脂で表面がコーティングされた紙製の容器、又は樹脂製の容器等が挙げられる。
【0108】
{収納部}
収納部は、内容物が収納されている部分である。この部分の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、略円錐台形、多角錐台形、直方体形、立方体形等であってよい。
【0109】
{フランジ部}
フランジ部は、容器本体の収納部の上端開口部周縁の部分である。その形状は特に限定されるものではなく、例えば、鍔状であってよい。また、フランジ部の外周の形状は、蓋材の形状に応じて適宜選択することができる。
【0110】
中では、フランジ部は、容器の少なくともフランジ部が、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有することが好ましい。更には、容器本体が紙カップであり、フランジ部が、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する態様であることが好ましい。
【0111】
容器本体が、ポリエチレン樹脂でコーティングされたフランジ部を有する紙カップであれば、本発明の複合フィルムから形成された蓋材のヒートシール層との間で、一定のシール強度を得つつ、粘着層と基材層との界面で、スムーズに層間剥離することが可能となる。
【0112】
(内容物)
内容物は、収納部に収容されているものである。内容物としては、特に限定されるものではないが、例えば、スープ、即席麺、チルド食品、冷凍食品等の加熱式食品、又はスナック菓子、グミキャンディー等の非加熱式食品が挙げられる。
【実施例0113】
実施例及び比較例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0114】
<材料>
実施例及び比較例においては、層を構成する材料として、以下を準備した。
【0115】
(1)紙層
・紙(NMアート、日本製紙株式会社、坪量:79.1g/m2)
【0116】
(2)アルミニウム層
・アルミニウム箔(1N30、株式会社UACJ製、厚み:7μm)
【0117】
(3)樹脂層
・PETフィルム(PETB、ユニチカ株式会社、厚み:12μm)
【0118】
(4)粘着層
熱可塑性エラストマー
・スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体:SBBS(N515、旭化成株式会社)
ロジンエステル(エステルガムAA-G、荒川化学工業株式会社)
ポリテルペン(Sylvares(登録商標)TRB115、クレイトン社)
【0119】
(5)ヒートシール層
・LDPE(サンテック(登録商標)LD L2340、旭化成株式会社、密度:0.923g/cm3)
・HDPE(ニポロンハード(登録商標)LW13D、東ソー株式会社、密度:0.956g/cm3)
・HDPE(ノバテック(登録商標)HD HJ490、日本ポリエチレン株式会社、密度:0.958g/cm3)
【0120】
《実施例1~2》
<複合フィルムの作製>
表1に示す材料を用いて、以下に示す方法により、(紙層//アルミニウム層//樹脂層/粘着層/ヒートシール層)の積層構成となる複合フィルムを作製した。作製した複合フィルムにおいて、基材層は3層からなる積層体となっており、すなわち基材層は、紙層//アルミニウム層//樹脂層からなる積層体となっている。そして、複合フィルムは、基材層と、粘着層と、ヒートシール層とが、この順で積層された態様となっている。なお、ドライラミネートで貼り合わせた部分を、「//」で示している。また、粘着層の組成(質量%)については、粘着層全体に対する各成分の固形分量を示している。
【0121】
1.アルミニウム層となるアルミニウム箔と、樹脂層となるポリエステルフィルムとを、ドライラミネートにより貼り合わせて、(樹脂層//PETフィルム)の積層体を作製した。ドライラミネート用接着剤としては、2液硬化型ドライラミネート接着剤(タケラックA525/タケネートA52、三井化学株式会社)を用いた。
【0122】
2.アルミニウム層側に、紙層となる紙を、ドライラミネートにより貼り合わせて、(紙//アルミニウム層//PETフィルム)の積層体を作製した。ドライラミネート用接着剤としては、2液硬化型ドライラミネート接着剤(タケラックA525/タケネートA52、三井化学株式会社)を用いた。
【0123】
3.PETフィルム側に、粘着層となる、熱可塑性エラストマーとロジンエステルとの混合樹脂、熱可塑性エラストマーのみ、又は熱可塑性エラストマーとポリテルペンとの混合樹脂を、乾燥重量で3g/m2(厚み:3μm)となるよう塗工し、(紙//アルミニウム層//樹脂層/粘着層)の積層体を作製した。粘着層の種類や混合比率は、表1に示す通りである。
【0124】
4.粘着層の上に、ヒートシール層となるポリエチレン混合樹脂又はポリエチレン樹脂を、厚さ5μmとなるように押出ラミネートすることで、(紙//アルミニウム層//樹脂層/粘着層/ヒートシール層)の構成の複合フィルムを得た。ヒートシール層に用いたポリエチレン樹脂の種類、及びヒートシール層における当該樹脂の割合は、表1に示す通りである。
【0125】
<蓋材の作製>
得られた複合フィルムを、タブ付きφ101mmのサイズに切り抜き、蓋材を作製した。
【0126】
<蓋付容器の作製>
得られた蓋材を、PEコート紙カップ(フランジ幅:3mm、開口内径:90mm)に、加熱したヒートシールバーを用いて、ヒートシール幅3mm、圧力65Mpa、時間0.7秒の条件でヒートシールして、蓋付容器を作製した。
【0127】
《参考例1》
表1に示すように、粘着層を形成する材料として、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)とポリテルペンとの混合樹脂を用いた以外は、実施例2と同様にして複合フィルムを作製し、得られた複合フィルムを用いて蓋付容器を作製した。
【0128】
《比較例1》
ロジンエステルを用いることなく、熱可塑性エラストマーのみを、乾燥重量で4g/m2(厚み:4μm)となるよう塗工して粘着層を形成し、ヒートシール層の組成を表1に示すように変更し、その厚みを10μmとした以外は、実施例1と同様にして複合フィルムを作製し、得られた複合フィルムを用いて蓋付容器を作製した。
【0129】
《比較例2》
熱可塑性エラストマーのみを2回塗工して、乾燥重量で10g/m2(厚み:10μm)となる粘着層を形成した以外は、比較例1と同様にして複合フィルムを作製し、得られた複合フィルムを用いて蓋付容器を作製した。
【0130】
《評価》
【0131】
(給湯後再封試験)
実施例1~2、参考例1、及び比較例1~2で作製した蓋付容器について、1/3程度開封した後に90℃のお湯を注ぎ、指圧にて再封した。再封後5分間、蓋が密閉されているか評価した。結果を、表1に示す。
〇:5分間密閉されていた
×:5分以内に蓋が開いた
【0132】
(低温環境での開封試験)
実施例1~2、参考例1、及び比較例1~2で作製した蓋付容器について、0℃、-10℃、-20℃環境下での開封試験を実施し、以下の基準で評価を行った。
○:膜残りなく内エッジ切れした
△:膜残りはないが、糸引きが発生した場合
×:膜残りが発生した
【0133】