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  • 特開-アーム部材 図1
  • 特開-アーム部材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175743
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】アーム部材
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20221117BHJP
   B60G 7/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F16C11/06 N
B60G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082413
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】平松 克大
【テーマコード(参考)】
3D301
3J105
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301CA11
3D301DA90
3D301DA96
3D301DB09
3D301DB13
3J105AA23
3J105AA24
3J105AA32
3J105AB50
3J105AC04
3J105CA02
3J105CB13
3J105CB24
3J105CB52
3J105CB62
3J105CC33
3J105CD02
3J105CE02
3J105CE03
3J105CF01
(57)【要約】
【課題】ボールジョイントを基材の穴部に強固に保持可能なアーム部材を提供する。
【解決手段】アーム部材1は、金属製の基材2と、筒状のハウジング27を有するボールジョイント3と、を備える。基材2は、穴部17を有する。ハウジング27は、穴部17に挿入される。ハウジング27は、穴部17の縁部の位置で基材2に対し軸方向に当接される当接部37を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴部を有する金属製の基材と、
前記穴部に挿入された筒状のハウジングを有するボールジョイントと、を備え、
前記ハウジングは、前記穴部の縁部の位置で前記基材に対し軸方向に当接される当接部を備える
ことを特徴とするアーム部材。
【請求項2】
基材及びボールジョイントのハウジングのそれぞれの少なくとも一部を覆って配置された繊維強化樹脂製の外殻部を備える
ことを特徴とする請求項1記載のアーム部材。
【請求項3】
当接部は、ハウジングの外面から外方に突出する突出部である
ことを特徴とする請求項1または2記載のアーム部材。
【請求項4】
当接部は、ハウジングの軸方向の中間部に形成されている
ことを特徴とする請求項3記載のアーム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の基材に形成された穴部に対しボールジョイントのハウジングが挿入されて固定されたアーム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の懸架装置において、強度の確保と軽量化とを両立するために、金属製の基材を繊維強化樹脂(FRP)により補強したサスペンションアームが知られている。このサスペンションアームは、被接続部に対して接続されるボールジョイントを有している。ボールジョイントは、円筒状のハウジングが基材に形成された円形状の穴部に圧入されて取り付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-517515号公報(第10-11頁、図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の構成の場合、ボールジョイントはハウジングを穴部に対して圧入して固定するに過ぎないため、ボールジョイントに対して高荷重が付加された場合であっても、ボールジョイントを強固に固定しておくことが望まれる。このような課題は、サスペンションアーム以外のアーム部材でも同様に生じる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ボールジョイントを基材の穴部に強固に保持可能なアーム部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のアーム部材は、穴部を有する金属製の基材と、前記穴部に挿入された筒状のハウジングを有するボールジョイントと、を備え、前記ハウジングは、前記穴部の縁部の位置で前記基材に対し軸方向に当接される当接部を備えるものである。
【0007】
請求項2記載のアーム部材は、請求項1記載のアーム部材において、基材及びボールジョイントのハウジングのそれぞれの少なくとも一部を覆って配置された繊維強化樹脂製の外殻部を備えるものである。
【0008】
請求項3記載のアーム部材は、請求項1または2記載のアーム部材において、当接部は、ハウジングの外面から外方に突出する突出部であるものである。
【0009】
請求項4記載のアーム部材は、請求項3記載のアーム部材において、当接部は、ハウジングの軸方向の中間部に形成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のアーム部材によれば、基材に対するハウジングの位置を当接部と基材との当接によって規制し、ボールジョイントに対して軸方向に加わる荷重を当接部と基材とによって受けることにより、ボールジョイントへの過大な荷重に対するボールジョイントの基材からの脱落を抑制し、ボールジョイントを基材の穴部に強固に保持可能となる。
【0011】
請求項2記載のアーム部材によれば、請求項1記載のアーム部材の効果に加えて、強度の確保と軽量化とを両立したアーム部材を提供できる。
【0012】
請求項3記載のアーム部材によれば、請求項1または2記載のアーム部材の効果に加えて、当接部を容易に形成できるとともに、ハウジングを穴部に挿入するだけで当接部を基材に対して穴部の縁部に容易に当接させることができる。
【0013】
請求項4記載のアーム部材によれば、請求項1ないし3いずれか一記載のアーム部材の効果に加えて、当接部によってハウジングの重量を過剰に大きくすることがなく、軽量化に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態のアーム部材の一部を示す断面図である。
図2】(a)は同上アーム部材の斜視図、(b)は同上アーム部材の基材の斜視図である。
図3】同上アーム部材を用いた懸架装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1において、1はアーム部材を示す。本実施の形態において、アーム部材1は、例えば自動車の懸架装置あるいは操舵装置に用いられる車両用アーム部材である。アーム部材1は、基材2と、基材2に取り付けられるボールジョイント3と、を備えるボールジョイント装置である。図示される例では、アーム部材1は、さらに、基材2及びボールジョイント3のそれぞれの少なくとも一部を覆う外殻部4を備える。アーム部材1は、任意の物としてよいが、本実施の形態では、例えば図3に示すように、タイヤT側に接続されるボールジョイント3と車体側に接続されるブッシュ部5とを備えるダブルウィッシュボーン式サスペンションのアッパアームまたはロアアーム等に用いられるサスペンションアームである。
【0017】
本実施の形態において、アーム部材1は、一対のアーム部7を有し、これらアーム部7の一端部が連結部8により連結され、アーム部7の他端部が自由端状となっている。アーム部7の他端部には、ブッシュ部5がそれぞれ設けられている。すなわち、図示されるアーム部材1は、全体としてU字状またはV字状の外観を呈する。
【0018】
図1及び図2(b)に示す基材2は、金属骨格である。基材2は、アーム部材1の形状に応じて形成されている。すなわち、本実施の形態において、基材2は、一対のアーム部7に対応する一対の基材アーム部10を有し、これら基材アーム部10の一端部が連結部8に対応する基材連結部11により連結され、基材アーム部10の他端部が自由端状となっている。また、本実施の形態において、基材アーム部10の他端部には、ブッシュ部5(図2(a))が取り付けられる円筒状のリング部12が形成されている。リング部12は、円筒状に形成され、基材アーム部10の長手方向と交差または直交する方向に軸方向を有する。リング部12,12は、互いに同軸上に配置されている。
【0019】
基材2は、基材アーム部10から基材連結部11に亘り、平板状の基材本体部15を有するとともに、基材本体部15の両側縁部から側壁部16がそれぞれ立ち上がる、断面U字状に形成されている。さらに、基材本体部15には、連結部8に位置して、ボールジョイント3が取り付けられる穴部17が形成されている。穴部17は、丸穴状に形成され、基材本体部15を厚み方向に貫通している。
【0020】
ボールジョイント3は、ボール側部材であるボールスタッド18を備える。ボールスタッド18は、例えば鋼鉄等により軸状に形成されている。ボールスタッド18は、一端部にボール部19を有し、ボール部19から他端部に、軸状(円柱状)のスタッド部20が突設されている。スタッド部20は、図示しない外部の被接続部材と接続される。以下、本実施の形態では、説明を明確にするために、図1に示す上下方向を上下方向として説明するが、アーム部材1における上下方向は、その設置される向きや角度に応じて適宜設定されるものとする。
【0021】
ボール部19は、摺動部材であるベアリングシート21により回動可能に保持される。ベアリングシート21は、合成樹脂により円筒状に形成されている。本実施の形態において、ベアリングシート21は、2ピース構造となっている。つまり、図示されるベアリングシート21は、第一シート部材23と、第二シート部材24と、を有する。第一シート部材23は、ボール部19の赤道位置Eから上側に亘る範囲を回動可能に保持する。ここで、ボール部19の赤道位置Eとは、ボールスタッド18の軸方向においてボール部19の最大径となる位置である。第二シート部材24は、第一シート部材23の下端部側に内挿されている。第二シート部材24は、ボール部19の赤道位置Eよりも下側の範囲を回動可能に保持する。図示される例では、第二シート部材24には、ボール部19の外周面に対向する内周側の位置に、潤滑剤の溜め部25が凹設されている。
【0022】
ベアリングシート21は、ボール部19とともに、受け側部材であるハウジング27に収容されている。ハウジング27は、ソケットなどとも呼ばれるもので、鍛造、あるいは鋳造などにより形成された金属製である。ハウジング27は、開口部28を上端部に有する有底円筒状に形成されている。ハウジング27の外径寸法は、基材2の穴部17の内径寸法と略等しい、または、穴部17の内径寸法より僅かに小さい。すなわち、ハウジング27の外径寸法は、穴部17の内径寸法以下に設定されている。
【0023】
本実施の形態において、ハウジング27は、円筒状の受け側部材本体部であるハウジング本体部30と、ハウジング本体部30にかしめ固定されてこのハウジング本体部30の下端部を閉塞する閉塞部材であるプラグ31と、を有する。ハウジング本体部30とプラグ31とによって、ハウジング27の内部にベアリングシート21が嵌着されてベアリングシート21を収容保持する内室が形成されている。ハウジング27は、基材2の穴部17に対して上方から挿入されて下端部側が基材2の基材本体部15よりも下方に突出している。
【0024】
開口部28は、ボールスタッド18のスタッド部20が突出する部分である。開口部28は、ダストカバー33により覆われる。ダストカバー33は、弾性を有する部材により円筒状に形成されている。ダストカバー33は、ハウジング本体部30の外周面とボールスタッド18のスタッド部20とに亘り取り付けられる。ダストカバー33は、下端部がハウジング本体部30に固定され、上端部がスタッド部20の外周面に圧接されている。図示される例では、ダストカバー33の下端部は、ハウジング本体部30の外周面に形成された取付溝34に嵌合され、固定部材である円環状等のクリップ35により取付溝34に締め付け固定されている。
【0025】
また、ハウジング27(ハウジング本体部30)の外周面には、当接部37が形成されている。当接部37は、基材2に対し、穴部17の縁部の位置で軸方向、つまり上下方向に当接される。当接部37は、ハウジング27(ハウジング本体部30)の外周面から径方向に突出して形成された突出部である。つまり、当接部37によって、ハウジング27(ハウジング本体部30)の外周面は軸方向に段差状となっている。本実施の形態において、当接部37は、上下両端部がハウジング27(ハウジング本体部30)の外周面に対してそれぞれ段差状に突出するように形成されている。当接部37の外径寸法は、基材2の穴部17の内径寸法よりも大きく設定されている。当接部37の下端部に基材2の穴部17の縁部(基材本体部15)が当接される。当接部37の下端部よりも上側のハウジング27(ハウジング本体部30)が基材本体部15よりも上方に突出する。当接部37は、溶接等の任意の手段により基材2(基材本体部15)に対し固定されている。
【0026】
図示される例では、当接部37は、ハウジング27(ハウジング本体部30)の軸方向である上下方向の中央部に位置している。すなわち、当接部37は、ハウジング27(ハウジング本体部30)の軸方向寸法すなわち上下寸法に対して、上下寸法が短く設定されている。つまり、当接部37は、ハウジング27(ハウジング本体部30)の軸方向の中間部に形成されている。本実施の形態において、当接部37は、ハウジング27(ハウジング本体部30)の軸方向である上下方向の中央部よりも下側寄りに位置している。図示される例では、当接部37は、ボール部19の赤道位置Eよりも下方に全体が位置している。
【0027】
図1及び図2(a)に示すように、外殻部4は、繊維強化樹脂により形成されている。繊維としては、例えば炭素繊維が好適に用いられる。本実施の形態において、外殻部4は、基材2の表面全体を覆うとともに、ボールジョイント3のハウジング27(ハウジング本体部30)を取付溝34よりも下方、かつ、基材2の基材本体部15よりも上方の位置まで覆う。つまり、外殻部4は、基材2の基材本体部15と側壁部16とを覆って断面U字状に形成されている。また、本実施の形態において、外殻部4は、リング部12の外周側を覆う。なお、外殻部4は、基材2よりも下方に突出するボールジョイント3のハウジング27については覆っていない。
【0028】
そして、アーム部材1は、ボールジョイント3のハウジング27の内室にボール部19を回動可能に保持したベアリングシート21を取り付けるとともに、プレス成形等により予め成形された基材2の穴部17に対し、ハウジング27を挿入する。このとき、ハウジング27に形成された当接部37が穴部17の縁部に当接することでハウジング27が位置決めされる。この状態で、ハウジング27の当接部37を溶接等により基材2に固定した中間体を形成する。次いで、この中間体を成形型にセットし、基材2及びハウジング27の一部を覆うように外殻部4を成形する。そして、ボールスタッド18とハウジング27とに亘りダストカバー33を取り付けてアーム部材1を完成する。
【0029】
本実施の形態において、アーム部材1は、図3に示すように、アーム部7,7間にショックアブソーバ40を通すようにショックアブソーバ40の下端部に配置され、ボールジョイント3のボールスタッド18のスタッド部20をタイヤT側に接続し、ブッシュ部5を車体側に接続するように取り付ける。
【0030】
このように、金属製の基材2に形成された穴部17に対し挿入されるボールジョイント3のハウジング27に、穴部17の縁部の位置で基材2に対し軸方向に当接される当接部37を形成することで、基材2に対するハウジング27の位置を当接部37と基材2との当接によって規制し、ボールジョイント3に対して軸方向に加わる荷重を当接部37と基材2とによって受けることにより、ボールジョイント3への過大な荷重に対するボールジョイント3の基材2からの脱落を抑制し、ボールジョイント3を基材2の穴部17に強固に保持可能となる。
【0031】
特に、アーム部材1が懸架装置に用いられるサスペンションアームの場合には、自動車の旋回時、あるいはバウンド時に上下方向に大きな荷重が加わるため、当接部37によってハウジング27の位置を規制することで、このような上下方向の大きな荷重に対して、ボールジョイント1を基材2に確実に保持しておくことができる。
【0032】
また、基材2及びボールジョイント1のハウジング27のそれぞれの少なくとも一部を覆って繊維強化樹脂製の外殻部4を形成することで、強度の確保と軽量化とを両立したアーム部材1を提供できる。
【0033】
当接部37をハウジング27の外面から外方に突出する突出部として形成することで、当接部37を容易に形成できるとともに、ハウジング27を穴部17に挿入するだけで当接部37を基材2に対して穴部17の縁部に容易に当接させることができる。
【0034】
また、当接部37をハウジング27の軸方向の中間部に形成することで、当接部37によってハウジング27の重量を過剰に大きくすることがなく、軽量化に優れる。
【0035】
なお、上記一実施の形態において、当接部37は、少なくとも下端部が穴部17に対して上方から当接するように形成されていれば、上端部側の形状は問わない。
【0036】
また、アーム部材1は、車両の懸架装置、あるいは操舵装置に限らず、任意の装置に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば自動車の懸架装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0038】
1 アーム部材
2 基材
3 ボールジョイント
4 外殻部
17 穴部
27 ハウジング
37 当接部
図1
図2
図3