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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175747
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】回転式伸縮装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/34 20140101AFI20221117BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20221117BHJP
   E05C 19/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E05B83/34
B60K15/05 B
E05C19/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082418
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 衛
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250JJ46
2E250KK01
2E250LL13
3D038CA32
3D038CC16
(57)【要約】
【課題】ロッドを押し込んで回転させる際のコイルバネのねじれを抑制して、ロッドの作動不良を抑制できる回転式伸縮装置を提供する。
【解決手段】この回転式伸縮装置10は、本体部材11と、ロッド40と、ロッド内に設けられたバネ収容空間44と、ロッド40を付勢するコイルバネ50と、ロッド40及び筒状部15間に形成され、ロッド40を回転させつつ軸方向移動させるカム機構と、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間に配置された、スペーサ80とを有しており、スペーサ80と閉塞端部43との間に、コイルバネ50の軸心Cに位置する部分を含むように、スペーサ80と閉塞端部43とを局所的に当接させる、回転摺動部が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周が円形状をなした筒状部を有する本体部材と、
外周が円形状をなすと共に、前記筒状部内に配置され、同筒状部に対して回転可能に且つ軸方向移動可能に保持されるロッドと、
該ロッドの内部に設けられ、前記ロッドの一端側に閉塞端部が配置され、他端側が開口した形状をなす、バネ収容空間と、
該バネ収容空間内に配置され、前記ロッドを前記筒状部の一端から突出する方向に付勢するコイルバネと、
前記ロッド及び前記筒状部の間に形成され、前記ロッドを回転させつつ軸方向移動させるカム機構と、
前記コイルバネの一端部と前記閉塞端部との間に配置された、スペーサとを有しており、
前記スペーサと前記閉塞端部との間に、前記コイルバネの軸心に位置する部分を含むように、前記スペーサと前記閉塞端部とを局所的に当接させるか、又は、前記スペーサと前記コイルバネの一端部との間に、前記コイルバネの軸心に位置する部分を含むように、前記スペーサと前記コイルバネの一端部とを局所的に当接させる、回転摺動部が設けられていることを特徴とする回転式伸縮装置。
【請求項2】
前記回転摺動部は、
前記閉塞端部に設けられ、前記スペーサ側に向けて突出した閉塞端部側突部と、
前記スペーサの、前記閉塞端部側突部が当接する突部当接面とからなる請求項1記載の回転式伸縮装置。
【請求項3】
前記回転摺動部は、
前記スペーサに設けられ、前記閉塞端部側に向けて突出したスペーサ側突部と、
前記閉塞端部の、前記スペーサ側突部が当接する閉塞端面とからなる請求項1記載の回転式伸縮装置。
【請求項4】
前記スペーサは、前記コイルバネの一端部外周を囲む周壁を有するキャップ状をなしている請求項3記載の回転式伸縮装置。
【請求項5】
前記スペーサは、前記コイルバネの一端部内周に挿入される支軸を有している請求項3記載の回転式伸縮装置。
【請求項6】
前記コイルバネの一端部側に設けられた座巻き部の終端が、前記スペーサ側に向けて突出しており、
前記回転摺接部は、
前記コイルバネの前記終端と、
前記スペーサの、前記コイルバネの終端が当接する終端当接面とからなる請求項1記載の回転式伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のフューエルリッドの開閉構造に用いられ、押し込み動作によって回転しながら伸縮するように構成された、回転式伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のフューエルリッドには、開口部に対してリッドを閉じた状態で、リッドを受け止めて支持するためのロッドが配置されている。このロッドは、リッドの押し込み動作によって伸縮する構造とされていることが多い。
【0003】
このような構造を有する装置として、下記特許文献1には、筒状部を有する本体部材と、筒状部に対して軸方向スライド及び回転可能に保持される移動部材と、移動部材を付勢するバネ部材と、移動部材外周に形成された突部と、筒状部内周に形成され、突部が嵌入するカム溝とを有する、回転式伸縮装置が記載されている。前記カム溝は、第1嵌合溝と、第2嵌合溝と、第1ガイド溝と、第2ガイド溝とを有し、それらが筒状部内周に沿って周回するように配置されている。また、移動部材は、バネ収容空間を有しており、その一端側に閉塞端部が配置されている。更に、上記バネ部材はコイルバネとなっており、同コイルバネが圧縮された状態で、その軸方向の一端部が、移動部材の閉塞端部を押圧して、移動部材を筒状部の一端から突出する方向に付勢している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2018/038034A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1の回転式伸縮装置において、コイルバネの付勢力に抗して、移動部材が、カム溝によって回転しながら押し込まれていくと、次のような問題が生じることがあった。
【0006】
すなわち、コイルバネの他端部は、本体部材の内面に当接して支持されているため、その回転がある程度規制されているが(引用文献1の図7参照)、コイルバネの一端部は、移動部材が回転しながら押し込まれていくときに、移動部材の回転力が作用するので、移動部材の回転方向と同方向にねじられてしまうことがあった。そして、ねじられたコイルバネの一端部が弾性復帰すると、移動部材の押し込み時の回転方向とは反対方向の回転力が、移動部材に作用するため、移動部材の動作をより安定させることが求められる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ロッドを押し込んで回転させる際の、コイルバネのねじれを抑制して、ロッドの動作を安定させることができる、回転式伸縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る回転式伸縮装置は、内周が円形状をなした筒状部を有する本体部材と、外周が円形状をなすと共に、前記筒状部内に配置され、同筒状部に対して回転可能に且つ軸方向移動可能に保持されるロッドと、該ロッドの内部に設けられ、前記ロッドの一端側に閉塞端部が配置され、他端側が開口した形状をなす、バネ収容空間と、該バネ収容空間内に配置され、前記ロッドを前記筒状部の一端から突出する方向に付勢するコイルバネと、前記ロッド及び前記筒状部の間に形成され、前記ロッドを回転させつつ軸方向移動させるカム機構と、前記コイルバネの一端部と前記閉塞端部との間に配置された、スペーサとを有しており、前記スペーサと前記閉塞端部との間に、前記コイルバネの軸心に位置する部分を含むように、前記スペーサと前記閉塞端部とを局所的に当接させるか、又は、前記スペーサと前記コイルバネの一端部との間に、前記コイルバネの軸心に位置する部分を含むように、前記スペーサと前記コイルバネの一端部とを局所的に当接させる、回転摺動部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スペーサと閉塞端部とを局所的に当接させるか、又は、スペーサとコイルバネの一端部とを局所的に当接させる、回転摺動部が設けられているので、スペーサと閉塞端部との摺動面積、又は、スペーサとコイルバネの一端部との摺動面積を、回転摺動部がない場合と比べて小さくすることができ、ロッドからの回転力が、スペーサを介してコイルバネに伝達される際に、その回転力をコイルバネの一端部側に作用させにくくすることができる。その結果、コイルバネのねじれを抑制することができるので、ロッドの動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る回転式伸縮装置の、一実施形態を示す斜視図である。
図2】同回転式伸縮装置の分解斜視図である。
図3】同回転式伸縮装置の斜視図である。
図4図3のA-A矢視線における断面図である。
図5】同回転式伸縮装置において、筒状部の一端からロッドが突出した状態の要部拡大説明図である。
図6】同回転式伸縮装置を構成するカム溝の展開図である。
図7】同回転式伸縮装置において、ロッドの係合片が開閉体の係合溝に係合していない状態の平面図である。
図8】同回転式伸縮装置において、ロッドの係合片が開閉体の係合溝に係合した状態の平面図である。
図9】同回転式伸縮装置における回転摺動部の変形例を示しており、図9Aは第1変形例の要部拡大断面図、図9Bは第2変形例の要部拡大断面図、図9Cは第3変形例の要部拡大断面図である。
図10】同回転式伸縮装置における回転摺動部の変形例を示しており、図10Aは第4変形例の要部拡大断面図、図10Bは第5変形例の要部拡大断面図、図10Cは第6変形例の要部拡大断面図である。
図11】同回転式伸縮装置における回転摺動部の、第7変形例を示す要部拡大断面図である。
図12】実施例及び比較例との、ロッドの回転角度と、コイルバネのバネ荷重又は回転摺動部における摺動トルクとの関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(回転式伸縮装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る回転式伸縮装置の、一実施形態について説明する。
【0012】
この回転式伸縮装置は、例えば、図1に示すように、フューエルリッド等の開閉体の開閉構造に用いられるものである。図1に示すように、車体1aの燃料給油口周縁には、略円筒箱状をなした固定部材1が固定されている。また、固定部材1の開口部2には、ヒンジ部3を介して開閉体(フューエルリッド)5が開閉可能に取付けられている。更に、固定部材1の開口部2の、ヒンジ部3とは周方向反対側には、凹部3aが設けられており、この凹部3aに、この実施形態の回転式伸縮装置10(以下、単に「伸縮装置10」ともいう)が配置されている。
【0013】
また、開閉体5の内面側には、係合部6が設けられている。この係合部6は、一対の側壁部7,7と、それらの一端部どうしを連結した連結壁8とからなり、門形枠状をなしている。なお、一対の側壁部7,7の間には、係合溝9が設けられている。
【0014】
この実施形態の伸縮装置10は、上記のようなフューエルリッドの開閉構造に利用されるが、例えば、自動車の小物入れの開閉構造や、押し込むことで開閉する構造の家具や日用品等に利用してもよく、使用態様や設置場所等は特に限定されない。
【0015】
そして、図2~4に示すように、この実施形態の伸縮装置10は、第1本体部20及び第2本体部30からなり、内周が円形状をなした筒状部15を有する本体部材11と、外周が円形状をなすと共に、筒状部15内に配置されて、筒状部15に対して回転可能に且つ軸方向移動可能に保持されるロッド40と、このロッド40の内部に設けられ、ロッド40の一端側に閉塞端部43が配置され、他端側が開口した形状をなす、バネ収容空間44と、このバネ収容空間44内に配置され、ロッド40を筒状部15の一端15a(軸方向の先端)から突出する方向に付勢するコイルバネ50と、ロッド40及び筒状部15の間に形成され、ロッド40を回転させつつ軸方向移動させるカム機構と、コイルバネ50の一端と閉塞端部43との間に配置された、スペーサ80とを有している。また、この実施形態における上記カム機構は、ロッド40の外周に形成されたカム突部48と、筒状部15に周回して形成され、カム突部48が嵌入して、ロッド40を回転させつつ軸方向移動させるカム溝70(図5参照)とから構成されている。
【0016】
上記コイルバネ50は、この実施形態の場合、所定径の線材を所定ピッチで巻回してなるものであって、所定長さで延びている。このコイルバネ50の軸方向の一端部及び他端部には、座巻部51,53が設けられている。また、このコイルバネ50の、軸方向一端部側の座巻部51の終端55は、終端55以外の座巻部51よりも縮径するように巻回されている。なお、コイルバネ50の軸心(コイルバネ50の径方向の中心を通過し且つ軸方向に沿って延びる線分)を「軸心C1」とする(図4参照)。
【0017】
そして、この実施形態における伸縮装置10には、スペーサ80と閉塞端部43との間に、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分を含むように、スペーサ80と閉塞端部43とを局所的に当接させる、回転摺動部が設けられている。
【0018】
以下、各構成部材について説明する。まず、本体部材11の構造について詳述する。
【0019】
この本体部材11は、内周が円形状をなした筒状部15を、軸方向に分割するようにして互いに組付けられる、第1本体部20と第2本体部30とから構成されている。図5に示すように、筒状部15は、同筒状部15を軸方向に分割してなる第1筒部23及び第2筒部33からなり、第1筒部23が第1本体部20側に設けられ、第2筒部33が第2本体部30側に設けられている。なお、図5,6においては、構造を分かりやすく説明するため、便宜上、各本体部20,30の各筒部23,33のみを図示している。
【0020】
図2に示すように、前記第1本体部20は、一方向に長く伸びる略長箱状をなしたベース部21を有しており、このベース部21の長手方向一端側に、略円筒状をなした筒状壁22が設けられている。この筒状壁22は、大径の筒状部分22aとそれよりも小径の筒状部分22bとが軸方向に連設された構成となっている。この筒状壁22の内側に、前記第1筒部23が一体形成されている。この筒状壁22も、前記筒状部15を構成する部材となっている。また、筒状壁22の筒状部分22aの一端(先端)側外周、及び、筒状部分22bの一端側外周には、ゴムや弾性エラストマー等からなる、キャップ17が装着されている。
【0021】
図4に示すように、この筒状壁22内には、第2本体部30の第2筒部33が挿入されるようになっている。また、ベース部21の、筒状壁22よりも長手方向他端側であって幅方向一側にも、ゴム等からなるキャップ19が装着されている。更に、ベース部21の、第2本体部30との当接面側の外周縁部の、長手方向一端側であって幅方向一側には、係止凹部25が形成されている。
【0022】
一方、図2に示すように、第2本体部30は、上記第1本体部20に対応して一方向に長く伸びる略長板状をなしたベース部31を有している。このベース部31の長手方向一端側には、前記第1筒部23と併せて、筒状部15を形成する有底円筒状の第2筒部33が設けられている。
【0023】
また、第2筒部33の外径は、前記第1筒部23の外径と同一で、かつ、第1本体部20の筒状壁22内に挿入可能な寸法となっている。そのため、図3に示すように、第1本体部20と第2本体部30とが組付けられて本体部材11が構成された状態で、筒状壁22内に第2筒部33が挿入され、図4図5に示すように、第1筒部23及び第2筒部33の軸方向に対向する端面に、カム溝70が形成されるようになっている。このカム溝70の詳細な構造については後述する。
【0024】
また、図2に示すように、ベース部31の外周縁部の、長手方向一端側であって幅方向一側には、係止爪35が突設されている。この係止爪35が、第1本体部20の係止凹部25が係止すると共に、固定ピン36(図4参照)によって、第1本体部20と第2本体部30とが組付けられて、本体部材11が構成されるようになっている(図3参照)。
【0025】
更に図2図4に示すように、第2筒部33の底部33аの内面中央からは、円柱状をなしたバネ支持柱37が突設されている。このバネ支持柱37は、コイルバネ50内に挿入されて、コイルバネ50を傾きにくくする。また、バネ支持柱37に支持されたコイルバネ50は、その軸方向他端部側の座巻部53が、第2筒部33の底部33аに当接するようになっている。
【0026】
次に、ロッド40について詳述する。
【0027】
図4に示すように、この実施形態のロッド40は、略円筒状をなして所定長さで延びる筒状壁41を有しており、この筒状壁41の軸方向一端側には、閉塞端部43が配置されており、軸方向他端側は開口しており、ロッド40の内部に、コイルバネ50を収容可能なバネ収容空間44が設けられている。すなわち、バネ収容空間44の、ロッド40の軸方向一端側に閉塞端部43が配置され、軸方向他端側は開口している。なお、ロッド40の軸心を「軸心C2」とする。この実施形態の場合、軸心C2は、コイルバネ50の軸心C1と一致するようになっている(図4参照)。
【0028】
また、この実施形態における閉塞端部43は、円筒状をなした筒状壁41に対応して円板状をなしており、この閉塞端部43の内面、すなわち、閉塞端部43の、バネ収容空間44側に向く面が、閉塞端面43аをなしている。また、閉塞端部43と、コイルバネ50の軸方向一端部側の座巻部51との間に、スペーサ80が配置されるようになっている(図4参照)。
【0029】
更に、閉塞端部43の外面(閉塞端面43аとは反対側の面)の中央からは、筒状壁41よりも縮径した柱状部46が突設されており、その先端には、長手方向両端が円弧状をなした帯状の係合片47が連設されている。更に、筒状壁41の軸方向基端側には、テーパ面41aが形成されている(図4参照)。
【0030】
そして、図7図8に示すように、ロッド40の係合片47は、ロッド40の回転に伴って回転して角度が変わって、開閉体5の係合部6に係脱するようになっている。この実施形態の場合、固定部材1の開口部2から開閉体5が開いたときに、開閉体5に設けた係合部6の係合溝9の溝方向に沿った方向となるように、係合片47の長手方向が配置され(図7参照)、一方、固定部材1の開口部2に対して開閉体5を閉じたときに、係合溝9の溝方向に対して直交するように、係合片47の長手方向の角度が変化する(図8参照)。
【0031】
更に、筒状壁41の外周であって、軸方向の基端寄りの箇所には、一対のカム突部48,48が外径方向に突出している。この実施形態の場合、ロッド40とは別体とされ、ステンレスやバネ鋼材等の金属線材を適宜屈曲して形成されてなる、図示しない突部形成部材を有しており、その両端に、一対のカム突部48,48が屈曲形成されている(図4参照)。上記の突部形成部材がロッド40の外周に装着されることで、一対のカム突部48,48がロッド外周から突出するようになっている(図4参照)。各カム突部48は、その外周が円形状をなしている。そして、これらのカム突部48,48が、筒状部15に形成したカム溝70内に嵌入して、ロッド40の押し込み動作に応じて、ロッド40を回転及び軸方向移動させる。なお、カム突部48はロッド40と一体形成してもよい。
【0032】
また、筒状壁41の、一対のカム突部48,48よりも、軸方向基端側の外周であって、一対のカム突部48,48の突出方向に直交する位置には、四角孔状をなしたロック孔49,49が形成されている。このロック孔49には、後述するロックリテーナ65(図1参照)のロック突部67が挿脱し、ロッド40を押し込み状態にロックするか又はロック状態を解除する。
【0033】
そして、前記閉塞端部43には、スペーサ80側に向けて突出した閉塞端部側突部45が設けられている。より具体的には、閉塞端部43の閉塞端面43а側であって、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分を含む径方向中央部から、外面が曲面状をなした閉塞端部側突部45が突設されている(図4参照)。この閉塞端部側突部45は、閉塞端面43а側に位置する底部の外周が円形状をなし、この底部から、閉塞端面43аに対して離れる方向に向けて、曲面を描きながら次第に突出量が増大する曲面突起状をなしている。また、閉塞端部側突部45の、ロッド40の軸心C2に整合する部分が、閉塞端面43аから最も突出した頂部45аとなっており、この頂部45аの外面は、丸みを帯びた円弧状曲面をなしている。なお、閉塞端部側突部45は、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分を含むものとなっている。
【0034】
上記の閉塞端部43に関連して、スペーサ80について説明する。
【0035】
この実施形態におけるスペーサ80は、厚さ方向両面が互いに平行な面を有する一定厚さで、且つ、その外周が円形状とされた、略円板状をなしている。また、スペーサ80の外径は、ロッド40の筒状壁41の内径に適合した寸法で形成されており(筒状壁41の内径よりもやや小さい外径で形成されている)、バネ収容空間44内にて回転可能となっている。
【0036】
また、スペーサ80の、厚さ方向の一方の面、すなわち、閉塞端部43に向く面であって、コイルバネ50の軸心Cに位置する部分を含む径方向中央部が、突部当接面81をなしている。図4に示すように、この突部当接面81に、閉塞端部側突部45の頂部45аが、局所的(部分的)に当接するようになっている。この突部当接面81は、コイルバネ50の付勢力に抗して、ロッド40を回転させながら押し込むときに、ロッド40の押し込みによる押圧力、及び、ロッド40の回転による回転力を、閉塞端部側突部45を介して受ける部分となっている。すなわち、本実施形態では、スペーサ80の突部当接面81と、ロッド40の閉塞端部43に設けた閉塞端部側突部45とが、本発明における「回転摺動部」をなしている。なお、スペーサ80の閉塞端部43側の面の外周縁部には、R状部81аが形成されており、バネ収容空間44の内周に干渉しにくくなっている。
【0037】
更に図4に示すように、スペーサ80の、厚さ方向の他方の面、すなわち、突部当接面81とは反対側の面が、バネ当接面82をなしている。このバネ当接面82に、コイルバネ50の座巻部51の終端55が当接するようになっている。また、座巻部51の終端55は、バネ当接面82の中でも、スペーサ80の突部当接面81よりも径方向外方部分において、当接するようになっている(図4参照)。
【0038】
また、図4に示すように、コイルバネ50は、軸方向他端部側の座巻部53が、第2筒部33の底部33аに当接すると共に、軸方向一端部側の座巻部51の終端55が、スペーサ80のバネ当接面82に当接して、圧縮された状態で、ロッド40のバネ収容空間44及び筒状部15の内部に保持される。そのため、コイルバネ50の弾性付勢力が、常時スペーサ80のバネ当接面82に作用して、スペーサ80が閉塞端部43側に向けて押圧されるようになっている。
【0039】
そして、図4に示すように、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間にスペーサ80が配置された状態で、コイルバネ50の付勢力に抗して、ロッド40が回転しながら押し込まれていくと、スペーサ80の突部当接面81と閉塞端部側突部45とからなる回転摺動部を介して、ロッド40が回転する。すなわち、スペーサ80の突部当接面81に、局所的に当接した閉塞端部側突部45が、突部当接面81に摺接しながら、回転摺動部を介してロッド40が回転するようになっている。その結果、ロッド40からの押し込み力や回転力は、スペーサ80を介して、コイルバネ50の一端部に伝達されることになる。
【0040】
なお、回転摺動部の形状や構造は、上記態様に限定されるものではなく、図9~11に示す態様も採用することができる。これについては後述する。
【0041】
また、図4に示すように、本体部材11内には、ウォームギヤ61を装着したモーター60が配置されている。更に、このモーター60に隣接した位置には、ロックリテーナ65が配置される。図2に示すように、このロックリテーナ65は、一対のガイド片66a,66aを有する本体66と、本体66の一側面から突出したロック突部67と、本体66の一端面から略L字状に突出した操作ノブ68とを有している。また、本体66内には、ウォームギヤ61に歯合する歯合部66bが形成されている。
【0042】
そして、モーター60に、図示しない電力供給手段から、複数のバスバー63等を介して電力が供給されて、ウォームギヤ61が回転すると、ロッド40に対して、ロックリテーナ65が近接離反する方向にスライドして、ロック突部67が、ロッド40のロック孔49に係脱するようになっている。ロック突部67が、ロッド40のロック孔49内に入り込んで係合すると、ロッド40の回転及び軸方向移動が規制され、ロック孔49から抜け出ることで、ロッド40の回転及び軸方向移動が許容される。
【0043】
次に、カム突部48が嵌入するカム溝70の構造について、詳述する。
【0044】
図5及び図6に示すように、このカム溝70は、カム突部48が嵌合してロッド40を筒状部15の軸方向の一端15aから所定長さ突出した状態に保持する突出保持部71と、カム突部48が嵌合してロッド40を筒状部15の一端15аから所定長さ筒状部15内に引き込んだ状態に保持する引き込み保持部73と、カム突部48が突出保持部71に嵌合した状態で、ロッド40が押し込まれたときに、カム突部48を引き込み保持部73へと導く、引き込みガイド部75と、カム突部48が引き込み保持部73に嵌合した状態で、ロッド40が押し込まれたときに、カム突部48を突出保持部71へと導く、突出ガイド部77とを有している。
【0045】
なお、以下の説明においては、筒状部15の軸方向の一端15aを、単に「一端」又は「軸方向一端」ともいい、筒状部15の軸方向の他端(一端15aとは反対側の端部)を、単に「他端」又は「軸方向他端」ともいう。また、筒状部15の周方向の一方向(図6の矢印R参照)側の端部を、単に「周方向一端」ともいい、筒状部15の周方向の他方向側の端部を、単に「周方向他端」ともいう。
【0046】
図6には、カム溝70の展開図が示されているが、同図に示すように、引き込みガイド部75、及び、突出ガイド部77が、筒状部15の軸心Cに対して傾斜し且つ周方向の一方向(矢印R参照)に向けて延びた形状をなしている。
【0047】
また、この実施形態におけるカム溝70は、図6に示すように、突出保持部71、引き込みガイド部75、引き込み保持部73、突出ガイド部77の後、次の突出保持部71、引き込みガイド部75、引き込み保持部73、突出ガイド部77、・・・の順で、筒状部15の周方向に沿って周回するように配置されている。すなわち、この実施形態のカム溝70は、筒状部15の周方向全周に亘って連続して形成されている。
【0048】
なお、ロッド40は、上述したように、コイルバネ50の付勢力によって筒状部15の一端15aから突出する方向に付勢されるが、その際には、ロッド40に設けた一対のカム突部48,48が、カム溝70の突出保持部71,71に嵌合するため、筒状部15の一端15aからロッド40全体が抜け出ないように、抜け止め保持されるようになっている。
【0049】
突出保持部71及び引き込み保持部73は、第1本体部20の第1筒部23の端面(第2筒部33に対向する端面)に形成された凹溝状をなしている。また、突出保持部71は、筒状部15の一端15a側(ロッド40の突出方向側)に配置されており、引き込み保持部73は、筒状部15の軸方向の他端側に、突出保持部71に対して周方向に位置ずれして配置されている。
【0050】
また、引き込みガイド部75は、その基端部75аが突出保持部71に連結されていると共に、筒状部15の軸方向他端側に向けて且つ周方向一方向に向けて傾斜しつつ延びており、更に延出方向の先端部75bが、筒状部15の軸方向一端側に向けて且つ周方向一方向に向けて傾斜して、引き込み保持部73に連結されている。更に、突出ガイド部77は、その基端部77аが、引き込み保持部73に連結されていると共に、筒状部15の一端15a側に向けて且つ周方向一方向に向けて傾斜しつつ延びており、延出方向の先端部77bが突出保持部71に連結されている。
【0051】
そして、突出保持部71にカム突部48が嵌合した状態で、コイルバネ50の付勢力に抗して、ロッド40が押し込まれると、カム突部48が引き込みガイド部75によりガイドされて、ロッド40が回転しながら筒状部15の一端15aから徐々に引き込まれていく。更に、ロッド40が押し込まれると、引き込みガイド部75の傾斜した先端部75bを介して、カム突部48が引き込み保持部73へとガイドされて、同引き込み保持部73に嵌合し、ロッド40が筒状部15の一端15аから所定長さ筒状部15内に引き込んだ状態に保持される。この状態で、ロッド40が更に押し込まれると、カム突部48が引き込み保持部73から抜け出て、突出ガイド部77によりガイドされて、ロッド40が回転しながら筒状部15の一端15аから徐々に押し出されていき、カム突部48が突出保持部71に嵌合することで、ロッド40が筒状部15の一端15аから所定長さ突出した状態に保持される(図5参照)。
【0052】
なお、この実施形態におけるカム機構は、ロッド40側に設けられたカム突部48と、筒状部15側に設けられたカム溝70とからなるが、カム機構としては、ロッド側に設けられたカム溝と、筒状部側に設けられたカム突部とからなる構造であってもよく、ロッドを回転させつつ軸方向移動させることが可能であればよい。
【0053】
(回転摺動部の変形例)
図9~11には、回転摺動部の変形例が示されている。以下、詳述する。図9Aには第1変形例、図9Bには第2変形例、図9Cには第3変形例が示されている。これらの変形例は、スペーサがキャップ状をなしている点で共通している。
【0054】
(第1変形例)
図9Aに示す第1変形例におけるスペーサ80Aは、円板状をなした基部83と、この基部83の周縁から、閉塞端部43に対して離れる方向に向けて円筒状をなすように延出した周壁84とからなる、キャップ状となっている。また、図9Aに示すように、周壁84は、コイルバネ50の軸方向一端部側の座巻部51の外周を囲む部分となっている。また、基部83の、閉塞端部43に向く面であって、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分を含む径方向中央部から、外周が曲面状をなしたスペーサ側突部85が突設されている。なお、このスペーサ側突部85は、図4に示す実施形態における閉塞端部側突部45と同様の形状となっている。
【0055】
そして、このスペーサ側突部85の頂部85aが、閉塞端部43の閉塞端面43aの、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分を含む径方向中央部に、局所的に当接するようになっている。すなわち、この第1変形例では、スペーサ側突部85と閉塞端面43aとが、本発明における「回転摺動部」をなしている。なお、スペーサ80Aの基部83の、スペーサ側突部85とは反対側の面に、コイルバネ50の座巻部51の終端55が当接する。
【0056】
(第2変形例)
図9Bに示す第2変形例におけるスペーサ80Bは、スペーサ側突部86の形状が、第1変形例と異なる以外は、第1変形例と基本的に同一である。すなわち、第2変形例における基部83は、その外周縁部から閉塞端部43に向けて略円錐状をなすように次第に突出した形状をなしており、この突出部分がスペーサ側突部86となっている。このスペーサ側突部86の、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分が最も突出した頂部86aとなっており、この頂部86aは尖った形状をなしている。なお、第2変形例における周壁84は、第1変形例の周壁84よりも長く延びている。
【0057】
そして、スペーサ側突部86の頂部86aが、閉塞端部43の閉塞端面43aの、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分を含む径方向中央部に、局所的に当接する。すなわち、この第2変形例では、スペーサ側突部86と閉塞端面43aとが、本発明における「回転摺動部」をなしている。なお、スペーサ側突部86の尖った頂部86aが、閉塞端面43aに局所的に当接するので、図9Aに示す第1変形例の場合に比べて、閉塞端面43aに対する接触面積は小さい(第1変形例の場合、スペーサ側突部85の頂部85aが曲面状をなしているので、第2変形例に比べて、閉塞端面43aに対する接触面積は大きい)。
【0058】
(第3変形例)
図9Cに示す第3変形例におけるスペーサ80Cは、スペーサ側突部87の形状が、第2変形例と異なる以外は、第2変形例と基本的に同一である。すなわち、第3変形例における基部83は、その外周縁部から閉塞端部43に向けて曲面を描きながら次第に突出する略球面状をなしており、この突出部分がスペーサ側突部87となっている。このスペーサ側突部87の、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分が最も突出した頂部87aとなっており、この頂部87aは丸みを帯びた円弧状曲面をなしている。
【0059】
そして、スペーサ側突部87の頂部87aが、閉塞端部43の閉塞端面43aの、コイルバネ50の軸心Cに位置する部分を含む径方向中央部に、局所的に当接する。すなわち、この第3変形例では、スペーサ側突部87と閉塞端面43aとが、本発明における「回転摺動部」をなしている。
【0060】
図10Aには第4変形例、図10Bには第5変形例、図10Cには第6変形例が示されている。これらの変形例は、スペーサに、コイルバネ50の一端部内周に挿入される支軸88を設けた点で共通している。
【0061】
(第4変形例)
図10Aに示す第4変形例におけるスペーサ80Dは、第2変形例のスペーサ80Bと同様の、基部83及び略円錐状をなしたスペーサ側突部86を有しており、基部83の、スペーサ側突部86とは反対側の面であって、その径方向中央部から、円柱状をなした支軸88が所定長さで延出している。この支軸88が、コイルバネ50の軸方向一端部側の座巻部51の終端55内に挿入されて、同終端55が、基部83の、支軸88の基端側周縁部に当接するようになっている。この第4変形例では、第2変形例のスペーサ80Bと同様に、スペーサ側突部86と閉塞端面43aとが、本発明における「回転摺動部」をなしている。
【0062】
(第5変形例)
図10Bに示す第5変形例におけるスペーサ80Eは、第3変形例のスペーサ80Cと同様の、基部83及び略球面状をなしたスペーサ側突部87と、第4変形例のスペーサ80Dと同様の、支軸88とを有している。この第5変形例では、第3変形例のスペーサ80Cと同様に、スペーサ側突部87と閉塞端面43aの径方向中央部とが、本発明における「回転摺動部」をなしている。
【0063】
(第6変形例)
図10Cに示す第6変形例におけるスペーサ80Fは、第1変形例のスペーサ80Aと同様の、基部83及びその径方向中央部から突出した曲面突起状をなしたスペーサ側突部85と、第4,第5変形例のスペーサ80D,80Eと同様の、支軸88とを有している。この第6変形例では、第1変形例のスペーサ80Aと同様に、スペーサ側突部85と閉塞端面83aとが、本発明における「回転摺動部」をなしている。
【0064】
(第7変形例)
図11には、回転摺動部の第7変形例が示されている。
【0065】
スペーサ80は、図4に示す実施形態と同様で、厚さ方向両面が互いに平行な面を有する略円板状をなしており、閉塞端部43の閉塞端面43aには、閉塞端部側突部45は突設されていない構成となっている。また、コイルバネ50は、軸方向一端部側の座巻部51の終端55が、スペーサ80側に向けて突出している。なお、コイルバネ50の終端55は、コイルバネ50の軸心C1を含む位置から突出している。また、コイルバネ50の終端55は、尖った部分55aを有しており、この尖った部分55aが、スペーサ80のバネ当接面82の、コイルバネ50の軸心C1に位置する部分を含む径方向中央部の、終端当接面82aに局所的に当接するようになっている。なお、スペーサ80の、バネ当接面82とは反対側の面が、閉塞端部43の閉塞端面43аに当接するようになっている。
【0066】
このように、この第7変形例においては、スペーサ80とコイルバネ50の一端部との間に、コイルバネ50の軸心C1を含む部分を含むように、スペーサ80とコイルバネ50の一端部とを局所的に当接させる、回転摺動部が設けられている。すなわち、この第7変形例では、スペーサ80の終端当接面82aと、コイルバネ50の終端55とが、本発明における「回転摺動部」をなしている。
【0067】
そして、図11に示すように、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間にスペーサ80が配置された状態で、コイルバネ50の付勢力に抗して、ロッド40が回転しながら押し込まれていくと、スペーサ80の終端当接面82aとコイルバネ50の終端55とからなる回転摺動部を介して、ロッド40が回転する。すなわち、スペーサ80の終端当接面82aに、局所的に当接したコイルバネ50の終端55が摺接しながら、回転摺動部を介してロッド40が回転するようになっている。その結果、ロッド40からの押し込み力や回転力は、スペーサ80を介して、コイルバネ50の一端部に伝達されることになる。
【0068】
以上説明した、スペーサの形状や構造は、図4図9~11に示す態様に限定されるものではない。例えば、スペーサに設けたスペーサ側突部を、略円錐状に突出しつつ頂部が丸みを帯びた形状としたり、頂部が平坦面状をなした突部としたり、円柱状や円錐状のピン状突部としたりしてもよく、また、閉塞端部に設けた閉塞端部側突部を、略三角錐状の突部としたり、略球面状に突出した突部としたりしてもよく、コイルバネの軸心に位置する部分を含み、コイルバネの一端部がロッドの閉塞端面に直接接触する場合の接触面積よりも、小さい接触面積を有する形状や構造であればよい。
【0069】
また、スペーサの材料としては、例えば、ポリアセタール(POM)や、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂材料や、鉄系金属や、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属材料などを用いることができる。なお、摺動抵抗や摩擦抵抗を低くする観点からは、スペーサは、ロッドとは異なる材料で形成されたものであることが好ましい。また、第7変形例におけるスペーサとしては、コイルバネの終端の食い込みを抑えつつ、摺接可能とさせるために、金属材料であることが好ましい。なお、回転摺動部間に、グリース等の潤滑剤を塗布して、摺動抵抗や摩擦抵抗を低減するようにしてもよい。
【0070】
更に、回転式伸縮装置を構成するスペーサ以外の各部材、すなわち、本体部材や、第1本体部、第2本体部、ロッド、モーター、ウォームギヤ、ロックリテーナ等の形状や構造も、上記態様に限定されるものではない。また、カム溝としては、筒状部の周方向に周回するように設けられた形状や構造であればよい。
【0071】
(作用効果)
次に、上記構造からなる伸縮装置10の作用効果について説明する。
【0072】
図5に示すように、ロッド40のカム突部48が、カム溝70の突出保持部71に嵌合した状態では、筒状部15の一端15aからロッド40が所定長さ突出されている。この状態でのロッド40の係合片47は、図7に示すように、係合部6の係合溝9を通過して、開閉体5の内面側に当接しており、開閉体5は固定部材1の開口部周縁に対して開閉可能となっている。
【0073】
上記状態から開閉体5を閉じると、係合片47が押圧されて、ロッド40がコイルバネ50の付勢力に抗して、筒状部15の奥側に押し込まれていき、突出保持部71から抜け出たカム突部48が、引き込みガイド部75によりガイドされて、ロッド40が回転しながら筒状部15内に引き込まれる。更に、ロッド40が押し込まれると、引き込みガイド部75の先端部75bを介して、カム突部48が引き込み保持部73へとガイドされて、同引き込み保持部73に嵌合して、ロッド40を筒状部15の一端15аから所定長さ筒状部15内に引き込んだ状態に保持される。それと共に、図8に示すように、ロッド40の係合片47が、開閉体5の係合部6の係合溝9の溝方向に対して、その長手方向が直交するので、固定部材1の開口部周縁に対して開閉体5を閉じた状態にロックすることができる。
【0074】
上記状態で、モーター60によりウォームギヤ61を所定方向に回転させ、ロックリテーナ65のロック突部67を、ロッド40のロック孔49に係合させることによって、ロッド40を更に押し込むことができなくなる。その結果、カム突部48をカム溝70の引き込み保持部73から外すことができなくなり、開閉体5を閉じた状態にロックすることができる。一方、ウォームギヤ61を上記とは逆方向に回転させて、ロックリテーナ65のロック突部67を、ロッド40のロック孔49から外すことで、ロッド40の押し込み不能状態が解除され、開閉体5のロック状態が解除される。
【0075】
上記のような開閉体5のロック解除状態から、ロッド40がコイルバネ50の付勢力に抗して押し込まれると、カム突部48が、引き込み保持部73から抜け出た後、コイルバネ50の付勢力によって、ロッド40が筒状部15の一端15a側に再度押圧されて、カム突部48が、突出ガイド部77によりガイドされ、ロッド40が回転しながら筒状部15の一端15aから突出していく。そして、突出保持部71にカム突部48が嵌合することで、ロッド40が筒状部15の一端15aから突出した状態に保持される(図5参照)。また、この状態では図7に示すように、係合片47が、開閉体5の係合部6の係合溝9の溝方向に沿った方向となるので、開閉体5の閉じ状態のロックが解除される。このとき、ロッド40によって開閉体5が押されて、固定部材1の開口部から開閉体5を所定高さ持ち上げるので(リフター動作)、開閉体5を手動で開くことができる。
【0076】
そして、この伸縮装置10においては、図4に示すように、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間に、スペーサ80を配置すると共に、スペーサ80と閉塞端部43との間に、コイルバネ50の軸心Cに位置する部分を含むように、スペーサ80と閉塞端部43とを局所的に当接させる、回転摺動部(ここでは、スペーサ80の突部当接面81と、閉塞端部43に設けた閉塞端部側突部45)を設けた構成としたので、以下のような作用効果を奏するようになっている。
【0077】
すなわち、ロッド40が押し込まれながら回転すると、その押し込み力や回転力は、コイルバネ50には直接作用せずに、スペーサ80を介して作用すると共に、スペーサ80と閉塞端部43とを局所的に当接させる回転摺動部を設けたことで、スペーサ80と閉塞端部43との摺動面積を、回転摺動部がない場合と比べて、小さくすることができるため、ロッド40からの押し込み力や回転力を、コイルバネ50の軸方向の一端部(座巻部51)に作用させにくくすることができる。
【0078】
すなわち、スペーサ80を、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間に介在させると共に、回転摺動部を設けたことによる摺動面積の減少に起因する、摺動トルクの減少によって、ロッド40の回転動作に追随して、スペーサ80が共回りしにくくなって空回りしやすくなるため、ロッド40からの押し込み力や回転力が、コイルバネ50に作用しにくくなる。その結果、コイルバネ50のねじれを抑制することができるので、ロッド40の作動不良(カム突部48がカム溝70の突出保持部71や引き込み保持部73に嵌合しなくなることに起因する、ロッド40を筒状部15から突出した状態や引き込まれた状態に維持できない等の不良)を抑制して、ロッド40の押し引き動作や回転動作を安定させることができる。
【0079】
上記の作用効果は、図9Aに示す第1変形例、図9Bに示す第2変形例、図9Cに示す第3変形例、図10Aに示す第4変形例、図10Bに示す第5変形例、図10Cに示す第6変形例においても、同様に得ることができる。また、図11に示す第7変形例においては、スペーサ80とコイルバネ50の一端部とを局所的に当接させる回転摺動部を設けたことで、スペーサ80とコイルバネ50の一端部との摺動面積を、回転摺動部がない場合と比べて小さくできるため、ロッド40からの押し込み力や回転力を、コイルバネ50の軸方向の一端部に作用させにくくでき、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0080】
上述した作用効果について、図12を参照して説明する。図12には、実施例と比較例との、ロッドの回転角度と、コイルバネのバネ荷重又は回転摺動部における摺動トルクとの関係を示したグラフが示されている。ここでの実施例は、図4に示す実施形態であり、比較例は、本願出願人による出願である、国際公開WO2018/038034A1に記載の図7に示す態様であり、スペーサを有さず、バネ部材(以下、「コイルバネ」ともいう)が移動部材(以下、「ロッド」ともいう)の閉塞端部に直接的に当接しているものである。
【0081】
また、図12における実線が、実施例におけるロッドの回転角度とバネ荷重との変動を示しており、破線が、実施例におけるロッドの回転角度と摺動トルクとの変動を示しており、二点鎖線が、比較例におけるロッドの回転角度とバネ荷重との変動を示しており、一点鎖線が、比較例におけるロッドの回転角度と摺動トルクとの変動を示している。なお、比較例における摺動トルクは、バネ部材の一端部と閉塞端部との摺動トルクを意味する。
【0082】
図12において、符号「P1」の部分は、カム突部48が突出保持部71に嵌合した状態を示している(図6のP1参照、比較例ではカム突部が第1嵌合溝に嵌合した状態)。この状態では、実施例及び比較例のバネ荷重や摺動トルクは、最も低くなっている。
【0083】
そして、P1の状態からロッド40が押されていくと、コイルバネ50が圧縮され、引き込みガイド部75によりガイドされながら、ロッド40が回転するため、バネ荷重や摺動トルクが次第に増大していき、符号「P2」に示すように、カム突部48が引き込みガイド部75の先端部75bに位置したとき(比較例ではカム突部が第1ガイド溝の先端部に位置したとき)、実施例及び比較例のバネ荷重や摺動トルクが最も高くなる。
【0084】
また、P2の状態からロッド40が押されると、引き込みガイド部75の傾斜した先端部75bによりガイドされ、コイルバネ50の付勢力によって、ロッド40が押し込み方向とは反対方向に押圧されながら、ロッド40が回転するため、バネ荷重や摺動トルクはやや減少していき、符号「P3」に示すように、カム突部48が引き込み保持部73に嵌合したとき(比較例ではカム突部が第2嵌合溝に嵌合したとき)、実施例及び比較例のバネ荷重や摺動トルクが、P2に示す状態よりも低い状態に維持される。
【0085】
更に、P3の状態からロッド40が押されると、コイルバネ50が圧縮されて、突出ガイド部77によりガイドながら、ロッド40が回転するため、バネ荷重や摺動トルクが増大し、符号「P4」に示すように、カム突部48が突出ガイド部77の基端部77aに位置したとき(比較例ではカム突部が第2ガイド溝の基端部に位置したとき)、実施例及び比較例のバネ荷重や摺動トルクは、P2に示す状態と同程度に高くなる。
【0086】
そして、P4の状態からロッド40が押されると、突出ガイド部77によりガイドされて、コイルバネ50の付勢力によって、ロッド40が押し込み方向と反対方向に押圧されながら、ロッド40が回転するため、バネ荷重や摺動トルクが次第に減少していき、符号「P5」に示すように、カム突部48が再び突出保持部71に嵌合したとき(比較例ではカム突部が第1嵌合溝に嵌合したとき)、実施例及び比較例のバネ荷重や摺動トルクは、P1に示す状態と同程度に低くなる。
【0087】
そして、本実施例の場合は、上述したスペーサ80及び回転摺動部を設けた構成(段落0075~0077等参照)を採用したことによって、図12の実線で示すバネ荷重や、図12の破線で示す摺動トルクのように、図12の二点鎖線で示す比較例のバネ荷重や、図12の一点鎖線で示す比較例の摺動トルクに比べて遥かに低い、バネ荷重や摺動トルクとなり、コイルバネ50のねじれを抑制できることが分かる。特に図12の破線で示す、実施例の摺動トルクは、山部や谷部がほとんど存在せず、トルク変動が極めて少なく、スペーサ80や回転摺動部を設けたことによる効果が顕著であった。
【0088】
また、図4に示す実施形態においては、回転摺動部は、閉塞端部43に設けられ、スペーサ80側に向けて突出した閉塞端部側突部45と、スペーサ80の、閉塞端部側突部45が当接する突部当接面81とからなる。
【0089】
上記態様によれば、スペーサ側に突部を設ける必要がないので、スペーサ80の形状や構造を簡素化することができ、スペーサ80を製造しやすくなる。
【0090】
更に、図9Aに示す第1変形例、図9Bに示す第2変形例、図9Cに示す第3変形例、図10Aに示す第4変形例、図10Bに示す第5変形例、図10Cに示す第6変形例においては、回転摺動部は、スペーサ80A,80B,80C,80D,80E,80Fに設けられ、閉塞端部43側に向けて突出したスペーサ側突部85,86,87と、閉塞端部43の、スペーサ側突部85,86,87が当接する閉塞端面43аとからなる。
【0091】
上記態様によれば、スペーサ側に突部を設けたことで、ロッド40の形状や構造を簡素化することができ、ロッド40を製造しやすくなる。
【0092】
また、図9Aに示す第1変形例、図9Bに示す第2変形例、図9Cに示す第3変形例においては、スペーサ80A,80B,80Cは、コイルバネ50の一端部外周を囲む周壁84を有するキャップ状をなしている。
【0093】
上記態様によれば、コイルバネ50の一端部外周が、キャップ状をなしたスペーサ80A,80B,80Cの周壁84で覆われるので、例えば、ロッド40の押し込み回転時に、コイルバネ50が傾いたとしても、コイルバネ50の一端部外周と、バネ収容空間44の内周との、摺動抵抗を低減することができ、ロッド40の押し引き動作や回転動作に影響を及ぼしにくい。
【0094】
また、スペーサ80A,80B,80Cを、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間に配置する際には、コイルバネ50の一端部外周にキャップ状のスペーサ80A,80B,80Cを配置した状態で、スペーサ80A,80B,80Cごとコイルバネ50を、バネ収容空間44に挿入することで、スペーサ80A,80B,80Cを、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間に配置することができ、スペーサ80A,80B,80Cの組付け作業性を向上させることができる。
【0095】
更に、図10Aに示す第4変形例、図10Bに示す第5変形例、図10Cに示す第6変形例においては、スペーサ80D,80E,80Fは、コイルバネ50の一端部内周に挿入される支軸88を有している。
【0096】
上記態様によれば、スペーサ80D,80E,80Fを、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間に配置する際には、コイルバネ50の一端部内周に、スペーサ80D,80E,80Fの支軸88を挿入した状態で、スペーサ80D,80E,80Fごとコイルバネ50を、バネ収容空間44に挿入することで、スペーサ80D,80E,80Fを、コイルバネ50の一端部と閉塞端部43との間に配置することができ、スペーサ80D,80E,80Fの組付け作業性を向上させることができる。
【0097】
また、図11に示す第7変形例においては、コイルバネ50の一端部側に設けられた座巻部51の終端55が、スペーサ80側に向けて突出しており、回転摺動部は、コイルバネ50の終端55と、スペーサ80の、コイルバネ50の終端55が当接する終端当接面82аとからなる。
【0098】
上記態様によれば、回転摺動部を、コイルバネ50の終端55を利用して設けることができるので、回転摺動部を比較的簡単な構造にでき、伸縮装置10の製造コストを低減できる。また、スペーサ80に突部が設けられていないので、バネ収容空間44の閉塞端部43が削られるおそれがなく、更に、回転摺動部の、摺動抵抗も小さくすることができる。
【0099】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
10 回転式伸縮装置(伸縮装置)
11 本体部材
15 筒状部
20 第1本体部
30 第2本体部
40 ロッド
43 閉塞端部
43a 閉塞端面
44 バネ収容空間
50 コイルバネ
51,53 座巻部
55 終端
60 モーター
65 ロックリテーナ
70 カム溝
80,80A,80B,80C,80D,80E,80F スペーサ
81 突部当接面
82 バネ当接面
83 基部
84 周壁
85,86,87 スペーサ側突部
88 支軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12