(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175757
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】沸騰水型原子炉の炉心
(51)【国際特許分類】
G21C 5/00 20060101AFI20221117BHJP
G21C 19/19 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G21C5/00 A
G21C19/19 060
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082432
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 清志
(72)【発明者】
【氏名】三輪 順一
(72)【発明者】
【氏名】日野 哲士
(57)【要約】
【課題】
燃料集合体の構造改変を要することなく、浮き上がり防止部材の設置の実現を可能とし、且つ、燃料交換時の作業の効率向上を実現可能な沸騰水型原子炉の炉心を提供する。
【解決手段】
沸騰水型原子炉の炉心103は、燃料集合体120が正方格子状に配置され、燃料集合体120の上部が上部格子板129で支持され、燃料集合体120の下部が燃料支持金具109で支持されると共に4体の燃料集合体120の中心に十字型制御棒132が挿入される沸騰水型原子炉の炉心103であって、上部格子板129の上面に固定される浮き上がり防止部材1は、水平面内において回転可能な十字形状の防止板2を有し、防止板2が燃料集合体120の上部に位置付けられ、燃料集合体120の上方への浮き上がりを抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体が正方格子状に配置され、燃料集合体の上部が上部格子板で支持され、前記燃料集合体の下部が燃料支持金具で支持されると共に4体の燃料集合体の中心に十字型制御棒が挿入される沸騰水型原子炉の炉心であって、
前記上部格子板の上面に固定される浮き上がり防止部材は、水平面内において回転可能な十字形状の防止板を有し、前記防止板が前記燃料集合体の上部に位置付けられ、前記燃料集合体の上方への浮き上がりを抑制することを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項2】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記防止板は、原子炉運転前に前記燃料集合体の上部に位置付けられ、原子炉運転時に前記燃料集合体の上方への浮き上がりを抑制することを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項3】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記防止板は、燃料集合体の上部平面におけるチャンネルボックスの枠の上部に位置付けられることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
燃料交換時において、前記防止板は前記上部格子板の上部に位置付けられることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項5】
請求項4に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
水平面内において回転可能な十字形状の防止板は、4体の燃料集合体の上部に位置付けられることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項6】
請求項4に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記浮き上がり防止部材は、
前記水平面内において回転可能な十字形状の防止板の中心に設けられた防止板用回転軸と、
前記防止板の回転を可能とする防止板通過用開口部を有する防止部材本体と、
を有することを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項7】
請求項6に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記防止部材本体の長手方向に沿った両側面を画定する辺の間隔で定義される防止部材本体の幅は、前記上部格子板の幅以下であり、且つ、前記防止板の長手方向に沿った両側面を画定する辺の間隔で定義される防止板の幅は前記防止部材本体の幅以下であることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項8】
請求項6に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記防止部材本体の下面に形成された突起部と前記上部格子板の上面に形成された突起部用切欠部とが嵌合することで、前記浮き上がり防止部材が前記上部格子板の上面に固定されることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項9】
請求項6に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記浮き上がり防止部材は、前記防止板用回転軸に設けられたストッパーを有し、
前記ストッパーに設けた第1の嵌合部と、前記防止部材本体に設けた燃料集合体側嵌合部とが嵌合することで、前記防止板が前記燃料集合体の上部に位置付けられた状態で固定されることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項10】
請求項6に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記浮き上がり防止部材は、前記防止板用回転軸に設けられたストッパーを有し、
前記ストッパーに設けた第1の嵌合部と、前記防止部材本体に設けた上部格子板側嵌合部とが嵌合することで、前記防止板は前記上部格子板の上部に位置付けられた状態で固定されることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項11】
請求項6に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記上部格子板の上面に設けた第2の嵌合部と、前記防止板の下面に設けた上部格子板側嵌合部とが嵌合することで、前記防止板が前記燃料集合体の上部に位置付けられた状態で固定されることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項12】
請求項6に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記上部格子板の上面に設けた第2の嵌合部と、前記防止板の下面に設けた燃料集合体側嵌合部とが嵌合することで、前記防止板は前記上部格子板の上部に位置付けられた状態で固定されることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉の炉心に係り、特に、原子炉運転時に、炉心に装荷される燃料集合体の浮き上がりを防止し得る沸騰水型原子炉の炉心に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉運転時における燃料集合体の浮き上がりを防止する技術として、例えば、特許文献1に開示される技術が知られている。特許文献1では、水平断面(横断面)が六角形状の燃料集合体が三角格子配列で稠密に配置されたものが示されており、燃料集合体の上方への浮き上がりを抑制するために、燃料浮き上がり防止部材を、燃料集合体を構成する上部タイプレートのハンドルの上部に設ける構成が開示されている。
また、特許文献2には、作動板、支持部、及びストッパ部を有する飛び上がり防止機構を備えた燃料集合体が開示されている。特許文献2では、原子炉運転中において、流体によって作動板が押圧され上方に移動した際に、ストッパ部は、開口部からチャンネルボックスの外側に突出し、上部格子板の下面部と対向することで燃料集合体の浮き上がりを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-017609号公報
【特許文献2】特開2020―176911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らの検討によれば、通常運転時、燃料集合体が浮き上がらないようにできれば、炉心流量の制御幅を広げることでMCPR(Minimum Critical Power Ratio:最小限界出力比)に関する余裕を確保し、局所出力ピーキングの上限を緩和することが可能となる。これに対して、燃料集合体が浮き上がると、燃料集合体の下部が燃料支持金具の上部開口部から外れ、浮き上がった燃料集合体が隣接する燃料集合体と接触しチャンネルボックスが破損することが懸念される。また、燃料集合体への冷却材の流路が維持できなくなり、燃料集合体内の燃料棒の除熱性能が低下することも懸念される。従って、通常運転時においても、燃料集合体の下部の支持状態を保持するために燃料集合体の浮き上がりを防止する必要がある。燃料集合体の浮き上がり防止構造は、現行炉にも適用できるように最小限の構造変更で実現することが望ましい。また、現行炉の燃料交換に使用している燃料交換機(把持部を含む)を使用して燃料交換作業ができ、さらに、浮き上がり防止構造は燃料交換作業の妨げにならないことが重要である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される燃料浮き上がり防止部材は、燃料集合体上部に設置されるため、燃料交換時は必ず燃料浮き上がり防止部材を原子炉圧力容器外に取り外す必要がある。また、取り外した燃料浮き上がり防止部材の保管スペースも確保する必要がある。
また、特許文献2に開示される飛び上がり防止機構を備えた燃料集合体は、原子炉運転中でないと流体力が生ぜず飛び上がり防止機構が機能しないため、飛び上がり防止機構のロックが正確に行われているかの確認が容易ではなく、燃料集合体の上部に飛び上がり防止機構を設ける必要があり、燃料集合体の構造改変を要する。
【0006】
そこで、本発明は、燃料集合体の構造改変を要することなく、浮き上がり防止部材の設置の実現を可能とし、且つ、燃料交換時の作業の効率向上を実現可能な沸騰水型原子炉の炉心を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心は、燃料集合体が正方格子状に配置され、燃料集合体の上部が上部格子板で支持され、前記燃料集合体の下部が燃料支持金具で支持されると共に4体の燃料集合体の中心に十字型制御棒が挿入される沸騰水型原子炉の炉心であって、前記上部格子板の上面に固定される浮き上がり防止部材は、水平面内において回転可能な十字形状の防止板を有し、前記防止板が前記燃料集合体の上部に位置付けられ、前記燃料集合体の上方への浮き上がりを抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料集合体の構造改変を要することなく、浮き上がり防止部材の設置の実現を可能とし、且つ、燃料交換時の作業の効率向上を実現可能な沸騰水型原子炉の炉心を提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例に係る実施例1の浮き上がり防止部材を構成する防止板が燃料集合体上部に位置する状態における炉心の部分上面図である。
【
図5】実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止板が燃料集合体上部に位置する状態における炉心に装荷された燃料集合体上部の鳥瞰図である。
【
図6】実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止板及びサポート部並びに防止板用回転軸の鳥瞰図である。
【
図7】
図1のD-D断面矢視図であって、実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止部材本体と防止板とを組み合わせた状態における部分縦断面図である。
【
図8】
図7のE-E断面矢視図であって、実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止部材本体と防止板とを組み合わせた状態における水平断面図(横断面図)である。
【
図9】
図8のF-F断面矢視図であって、実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止板の配置の固定部を示した図である。
【
図10】実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止板が上部格子板上部に位置する状態における炉心の部分上面図である。
【
図11】実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止板が上部格子板上部に位置する状態における炉心に装荷された燃料集合体上部の鳥瞰図である。
【
図12】
図10のG-G断面矢視図であって、実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止部材本体と防止板とを組み合わせた状態における部分縦断面図である。
【
図13】
図12のH-H断面矢視図であって、実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止部材本体と防止板とを組み合わせた状態における水平断面図(横断面図)である。
【
図14】
図13のJ-J断面矢視図であって、実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止板の配置の固定部を示した図である。
【
図15】実施例1に係る浮き上がり防止部材を構成する防止板の位置を変更するための切替治具である。
【
図16】本発明の他の実施例に係る実施例2の浮き上がり防止部材を構成する防止板の配置の固定部を示した図(
図1のK-K断面矢視図に相当)であって、浮き上がり防止部材を構成する防止板が燃料集合体上部に位置する状態における図である。
【
図17】実施例2に係る浮き上がり防止部材を構成する防止板の配置の固定部を示した図(
図10のL-L断面矢視図に相当)であって、浮き上がり防止部材を構成する防止板が上部格子板上部に位置する状態における図である。
【
図19】沸騰水型原子炉の炉心に装荷される燃料集合体の縦断面図である。
【
図20】沸騰水型原子炉の炉心に装荷される燃料集合体の上部支持構造図である。
【
図21】沸騰水型原子炉の炉心に装荷される燃料集合体の下部支持構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず本発明に係る浮き上がり防止部材が適用される沸騰水型原子炉について説明する。
図18は沸騰水型原子炉の縦断面図である。
図18では、沸騰水型原子炉として改良型沸騰水型原子炉(Advanced Boiling Water Reactor:ABWR)を一例として示すが、これに限られるものではない。例えば、再循環ポンプを備え減速材としての冷却水を原子炉圧力容器外へ通流し再び原子炉圧力容器内のダウンカマへ流入させることで冷却水を循環させる通常の沸騰水型原子炉(BWR)、或は、チムニによる冷却水の自然循環方式を用いることで、BWRにおける再循環ポンプ、ABWRにおけるインターナルポンプを不要とする高経済性単純化沸騰水型原子炉(Economic Simplified Boiling Water Reactor:ESBWR)等、その他の原子炉へも同様に適用可能である。
【0011】
図18に示すように、燃料集合体が装荷される炉心を備える改良型沸騰水型原子炉100は、原子炉圧力容器101内に円筒状の炉心シュラウド102が設けられ、炉心シュラウド102内に、複数体の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心103が設置されている。また、原子炉圧力容器101内には、炉心103を覆うシュラウドヘッド104、シュラウドヘッド104に取り付けられ上方へと延伸する気水分離器105、及び気水分離器105の上方に配される蒸気乾燥器106が設けられている。
上部格子板129が、シュラウドヘッド104の下方で炉心シュラウド102内に配され、炉心シュラウド102に取り付けられて炉心103の上端部に位置している。炉心支持板108が、炉心103の下端部に位置して炉心シュラウド102内に配され、炉心シュラウド102に設置されている。また、複数の燃料支持金具109が炉心支持板108に設置されている。
また、原子炉圧力容器101内には、燃料集合体の核反応を制御するため炉心103へ複数の横断面十字状の制御棒(十字型制御棒、図示せず)を挿入可能とする制御棒案内管110が設けられている。原子炉圧力容器101の底部より下方に設置された制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)内に制御棒駆動機構111を備え、制御棒は制御棒駆動機構111に連結されている。
【0012】
原子炉圧力容器101の底部に、その下方より原子炉圧力容器101の内部へ貫通するよう複数のインターナルポンプ113が設置されている。複数のインターナルポンプ113は、複数の制御棒案内管110の最外周部より外側であって、環状に相互に所定の間隔にて離間し、複数台配されている。これにより、インターナルポンプ113は、制御棒案内管110等と干渉することはない。そして、各インターナルポンプ113のインペラ117が、円筒状の炉心シュラウド102と原子炉圧力容器101の内面との間に形成される環状のダウンカマ114内に位置付けられている。原子炉圧力容器101内の冷却水118は、各インターナルポンプ113のインペラ117により、ダウンカマ114を介して、炉心103へ供給される。炉心103内に流入する冷却水118は、燃料集合体(図示せず)の核反応により加熱され気液二相流となり、気水分離器105へ流入する。気水分離器105を通流する気液二相流は、湿分を含む蒸気(気相)と水(液相)に分離され、液相は再び冷却水118としてダウンカマ114へ降下する。一方、蒸気(気相)は、蒸気乾燥器106へと導入され湿分が除去された後、主蒸気配管115を介してタービン(図示せず)へ供給される。復水器等を介して給水配管116より原子炉圧力容器101内に流入する冷却水118は、ダウンカマ114内を下方へと通流する(降下する)。このように、インターナルポンプ113は、炉心103で発生する熱を効率良く冷却するため、冷却水118を炉心103へ強制循環させる。
【0013】
図19は、
図18に示す改良型沸騰水型原子炉の炉心に装荷される燃料集合体の縦断面図である。
図19に示すように燃料集合体120は、複数の燃料棒121、上部タイプレート124、下部タイプレート123、複数のスペーサ122、チャンネルボックス125、及びハンドル130等を備えている。ハンドル130は、燃料集合体120の炉心103への装荷又は燃料集合体120の交換時にクレーン(燃料交換機)等により把持するために設けられている。また、燃料棒121は、複数の燃料ペレット(図示せず)を、密封された被覆管(図示せず)内に充填している。下部タイプレート123は各燃料棒121の下端部を支持し、上部タイプレート124は各燃料棒121の上端部を保持する。燃料集合体120の下部は、炉心支持板108を貫通するよう配される燃料支持金具109に設けられた4つの上部開口部127に、燃料集合体120を構成する下部タイプレート123の下部が嵌合し支持される。燃料支持金具109の中央には、水平断面(横断面)が十字型の十字型制御棒132を上下に移動できるように制御棒移動用開口部128が設けられている。また、燃料集合体120上方には上部格子板129が設置され、上部格子板129の1つの格子内には4体の燃料集合体120が装荷されている。
【0014】
図20は
図18に示す改良型沸騰水型原子炉の炉心に装荷される燃料集合体の上部支持構造図であり、
図21は
図18に示す改良型沸騰水型原子炉の炉心に装荷される燃料集合体の下部支持構造図である。
図20に示すように、4体の燃料集合体120の中央には十字型制御棒132が移動できるように、チャンネルボックス125に設置されたチャンネルスペーサ133で空間を確保している。上部格子板129は、燃料集合体120を原子炉の炉心103内に装荷する際の案内と位置決めの役割を有すると共に、改良型沸騰水型原子炉100(
図18参照)の通常運転時には燃料集合体120の上部を横方向から支持している。
図21に示すように、燃料集合体120の下部は燃料支持金具109に設けた上部開口部127に燃料集合体120の一部である下部タイプレート123の下部を嵌め込み支持している(嵌め込む長さはH)。燃料支持金具109は4つの上部開口部127を備えており、4つの上部開口部127の中央には十字型制御棒132(
図20参照)を上下に移動できるように制御棒移動用開口部128を設けている。
以下、図面を用いて本発明の実施例について、本発明に係る浮き上がり防止部材を中心に詳細説明する。
【実施例0015】
図1は本発明の一実施例に係る実施例1の浮き上がり防止部材を構成する防止板が燃料集合体上部に位置する状態における炉心の部分上面図、
図2は
図1のA-A断面矢視図、
図3は
図1のB-B断面矢視図、
図4は
図1のC-C断面矢視図、
図5は浮き上がり防止部材を構成する防止板が燃料集合体上部に位置する状態における炉心に装荷された燃料集合体上部の鳥瞰図(上部タイプレート124のハンドル130は図示せず)である。
【0016】
本実施例の特徴となる構成要素は、
図1~
図5に示すように、上部格子板129の上部(上面)に設置している浮き上がり防止部材1である。浮き上がり防止部材1は、4枚の防止板2、防止部材本体7(防止部材本体7a,7bの詳細は後述する)、4枚の防止板2のうち1枚の防止板2の端部付近上面(防止板2の長手方向の端部付近上面)に設けられたサポート部3、後述する防止板用回転軸6、後述する防止板通過用開口部8、及び、突起部17等を備える。
図1に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する4枚の防止板2は、それぞれ4体の燃料集合体120の上面に重なり且つハンドル130と干渉することなく、十字型制御棒132と接しない面に防止板2を位置付ける。ここで、浮き上がり防止部材1を構成する4枚の防止板2は、同一平面内において、隣接する防止板2が相互に90°の角度をなす。換言すれば、4枚の防止板2は、平面視十字形状を有する。
【0017】
図1及び
図5に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2は燃料集合体120を構成するチャンネルボックス125の枠(数mmの厚み)の上部に配置する(位置付ける)。
図1~
図3に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体の幅(長手方向に沿った両側面を画定する辺の間隔)は上部格子板129の幅(長手方向に沿った両側面を画定する辺の間隔)以下である。また、
図5に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2の幅(長手方向に沿った両側面を画定する辺の間隔)は浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体の幅以下であり、4枚の防止板2のうち2枚の防止板2は防止板通過用開口部8の中に納めることができる。すなわち、同一平面内で直線状に繋がる2枚の防止板2は防止板通過用開口部8の中に納めることができる。本実施例では一例として、
図4及び
図5に示すように浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体の下面に形成された突起部17と上部格子板129の上面に形成された突起部用切欠部18を嵌合することで、浮き上がり防止部材1を上部格子板129上に固定している。ここで、上述の突起部17と突起部用切欠部18との嵌合は、上部格子板129の上面に形成された突起部用切欠部18に、浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体の下面に形成された突起部17を横方向よりスライドさせて嵌合させる。但しこれに限らず、溶接等により、浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体の下面を上部格子板129の上面に固定する構成としても良い。
【0018】
図1及び
図5に示すように、原子炉運転前に浮き上がり防止部材1を構成する防止板2を燃料集合体120の上部に配置する(位置付ける)ことで、原子炉運転中に浮き上がり防止部材1を構成する防止板2により燃料集合体120の上方向の動きを抑制できる。すなわち、燃料集合体120の浮き上がりを防止できる。なお、1つの浮き上がり防止部材1は4枚の防止板2を備える構成であるため、同時に4体の燃料集合体120の浮き上がりを防止できる。これは、上述の通り4枚の防止板2は、平面視十字形状を有するためである。
【0019】
次に、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2の配置(位置)を変更するための構造について説明する。
図6は、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2及びサポート部3並びに防止板用回転軸6の鳥瞰図である。
図6に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する4枚の防止板2は十字形状となっており、中心部には防止板2を挟むように防止板用回転軸6が設けられている。4枚の防止板2のうち、1枚の防止板2には配置(位置)を変更するためのサポート部3が設けられている。サポート部3は、1枚の防止板2の長手方向であって、且つ、防止板用回転軸6とは反対側の端部付近の上面に上方へ立設する切替治具受部5を有している。
【0020】
図7は、
図1のD-D断面矢視図であって、浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体7a,7bと防止板2とを組み合わせた状態における部分縦断面図である。
図7に示すように、防止板用回転軸6は防止部材本体7a,7bと組み合わせて設置しており、防止板用回転軸6が回転することにより、防止板2の配置(位置)を変更できる。なお、防止板用回転軸6の回転については後述する。
【0021】
図8は、
図7のE-E断面矢視図であって、浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体7bと防止板2とを組み合わせた状態における水平断面図(横断面図)である。
図8及び
図7に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する防止板用回転軸6bにはストッパー9が設けられており、
図8に示すように回転防止用壁(燃料集合体側)12と回転防止用壁(上部格子板側)13により、回転の動きを抑制している。従って、ストッパー9を回転防止用壁(燃料集合体側)12に寄せる(当接させる)ことで、燃料集合体120上部に、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2を配置することができる。すなわち、
図1に示したように、浮き上がり防止部材1を構成する4枚の防止板2は、それぞれ4体の燃料集合体120の上面に重なり且つハンドル130と干渉することなく、十字型制御棒132と接しない面に防止板2を位置付けることができる。
【0022】
また、
図9は、
図8のF-F断面矢視図であって、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2の配置の固定部を示した図である。浮き上がり防止部材1を構成する防止板2が配置された位置から動かないようにするために、
図9に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する防止板用回転軸6bに設置されたストッパー9に設けた嵌合部A14と、防止部材本体7bに設けた燃料集合体側嵌合部15を組み合わせることで防止板2の配置を固定することができる。すなわち、嵌合部A14と燃料集合体側嵌合部15とが嵌合することにより防止板2の位置が固定される。
【0023】
図10は浮き上がり防止部材1を構成する防止板2が上部格子板129の上部に位置する状態における炉心の部分上面図であり、
図11は浮き上がり防止部材1を構成する防止板2が上部格子板129の上部に位置する状態における炉心に装荷された燃料集合体上部の鳥瞰図である。
図11においては、見やすさの関係から、上部タイプレート124のハンドル130を省略している。
図10及び
図11に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2は防止板通過用開口部8の中と上部格子板129の上部に配置される。これにより、燃料交換時に浮き上がり防止部材1を構成する防止板2が邪魔になることはない。すなわち、燃料交換時に燃料集合体120が浮き上がり防止部材1を構成する防止板2と接触或いは衝突することはない。
【0024】
図12は、
図10のG-G断面矢視図であって、浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体7a,7bと防止板2とを組み合わせた状態における部分縦断面図である。
図12に示すように、防止板用回転軸6は防止部材本体7a,7bと組み合わせて設置しており、防止板用回転軸6が回転することにより、防止板2の配置(位置)を変更できる。なお、防止板用回転軸6の回転については後述する。
【0025】
図13は、
図12のH-H断面矢視図であって、浮き上がり防止部材1を構成する防止部材本体7bと防止板2とを組み合わせた状態における水平断面図(横断面図)である。
図13及び
図12に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する防止板用回転軸6bに設けられたストッパー9が、回転防止用壁(燃料集合体側)12と回転防止用壁(上部格子板側)13により、回転の動きを抑制している。従って、ストッパー9を回転防止用壁(上部格子板側)13に寄せる(当接させる)ことで、
図10及び
図11に示したように、上部格子板129の上部に浮き上がり防止部材1を構成する防止板2を配置することができる。
【0026】
また、
図14は、
図13のJ-J断面矢視図であって、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2の配置の固定部を示した図である。浮き上がり防止部材1を構成する防止板2が配置された位置から動かないようにするために、
図14に示すように、浮き上がり防止部材1を構成する防止板用回転軸6bに設置されたストッパー9に設けた嵌合部A14と、防止部材本体7bに設けた上部格子板側嵌合部16を組み合わせることで防止板2の配置を固定することができる。すなわち、嵌合部A14と上部格子板側嵌合部16とが嵌合することにより防止板2の位置が固定される。
【0027】
図15は、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2の位置を変更するための切替治具19である。この切替治具19は、4つの浮き上がり防止部材1に設置されている防止板2の配置を変更する機能を有する。
図15に示すように、切替治具19は吊り部20及び4か所に切替治具差込部21を備えている。切替治具19を構成する吊り部20は、既設の燃料交換用クレーン(燃料交換機)の把持部により把持され、切替治具差込部21がサポート部3と防止板2を接続するよう立設する切替治具受部5に嵌合するよう位置決めされる。換言すれば、
図15に示す切替用治具差込部21を
図6に示すサポート部3の切替治具受部5に差込むことで、浮き上がり防止部材1を構成する防止板2の配置を変更するための準備ができる。その後、既設の燃料交換用クレーン(燃料交換機)の把持部により把持された切替治具19を移動することができる。これにより、
図15に示す切替治具19を用いることで、同時に16体の燃料集合体120の浮き上がり対策ができる。すなわち、既設の燃料交換用クレーン(燃料交換機)の把持部により把持された切替治具19を移動し、
図1に示したように、4つの浮き上がり防止部材1を構成する4枚の防止板2は、それぞれ16体の燃料集合体120の上面に重なり且つハンドル130と干渉することなく、十字型制御棒132と接しない面に防止板2を位置付けることができる。なお、切替治具19は、例えば、ステンレス鋼製である。
【0028】
以上の通り本実施例によれば、燃料集合体の構造改変を要することなく、浮き上がり防止部材の設置の実現を可能とし、且つ、燃料交換時の作業の効率向上を実現可能な沸騰水型原子炉の炉心を提供することが可能となる。
なお、より具体的には、上部格子板上部に浮き上がり防止部材を設置し、浮き上がり防止部材を構成する防止板を原子炉運転前に燃料集合体の上部に配置する(位置付ける)ことで、浮き上がり防止部材を構成する防止板が燃料集合体の上方向の動きを上部格子板で抑制でき、燃料集合体の浮き上がりを防止することができる。これより、炉心流量を制御できる範囲を広げることができ、MCPRに関する余裕を確保し、局所出力ピーキングの上限を緩和することが可能となる。また、原子炉運転前に燃料集合体浮き上がり防止対策が実施されていることは燃料集合体上方から確認できる。
また、燃料交換時には浮き上がり防止部材を構成する防止板の配置を上部格子板の上部に移動することで、既存の燃料交換方法が適用できる。そのため、現行炉に適用できると共に、現行炉の燃料交換機も使用した燃料交換作業も可能となる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。