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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175759
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電磁誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20221117BHJP
   H05B 6/04 20060101ALI20221117BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221117BHJP
【FI】
H05B6/12 323
H05B6/04 321
H05B6/12 303
H02M7/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082435
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】庄司 浩幸
【テーマコード(参考)】
3K059
3K151
5H770
【Fターム(参考)】
3K059AA02
3K059AC14
3K059AD03
3K059CD72
3K151BA45
3K151CA49
3K151CA50
5H770AA01
5H770BA09
5H770DA22
5H770DA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の加熱コイルに流れる電流を均等化し、被加熱物に対して所望の電力を効率良く供給できるインバータ方式の電磁誘導加熱装置を提供すること。
【解決手段】直流電圧を出力する直流電源1と、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ2と、交流電圧を用いて被加熱物を誘導加熱する加熱コイル11、12、13、を備えた電磁誘導加熱装置であって、インバータは、直流電源の正電極Pと負電極Nの間に設けた、3個以上のスイッチング素子を直列接続したスイッチング素子直列体を備え、負電極には、第一スイッチング素子と第一加熱コイルと第一共振コンデンサを直列接続した第一直列体と、第一スイッチング素子と第二スイッチング素子と第一電源コンデンサと第二加熱コイルと第二共振コンデンサを直列接続した第二直列体と、が接続されており、第一スイッチング素子と第二スイッチング素子は、スイッチング素子直列体に含まれている電磁誘導加熱装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を出力する直流電源と、
前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記交流電圧を用いて被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、
を備えた電磁誘導加熱装置であって、
前記インバータ回路は、前記直流電源の正電極と負電極の間に設けた、3個以上のスイッチング素子を直列接続したスイッチング素子直列体を備え、
前記負電極には、
第一スイッチング素子と第一加熱コイルと第一共振コンデンサを直列接続した第一直列体と、
前記第一スイッチング素子と第二スイッチング素子と第一電源コンデンサと第二加熱コイルと第二共振コンデンサを直列接続した第二直列体と、
が接続されており、
前記第一スイッチング素子と前記第二スイッチング素子は、前記スイッチング素子直列体に含まれていることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項2】
直流電圧を出力する直流電源と、
前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記交流電圧を用いて被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、
を備えた電磁誘導加熱装置であって、
前記インバータ回路は、前記直流電源の正電極と負電極の間に設けた、3個以上のスイッチング素子を直列接続したスイッチング素子直列体を備え、
前記正電極には、
第一スイッチング素子と第一加熱コイルと第一共振コンデンサを直列接続した第一直列体と、
前記第一スイッチング素子と第二スイッチング素子と第一電源コンデンサと第二加熱コイルと第二共振コンデンサを直列接続した第二直列体と、
が接続されており、
前記第一スイッチング素子と前記第二スイッチング素子は、前記スイッチング素子直列体に含まれていることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記第一スイッチング素子をオフし、前記第二スイッチング素子をオンした期間には、前記第一電源コンデンサを電圧源として、前記第二スイッチング素子、前記第一加熱コイル、前記第一共振コンデンサ、前記第二共振コンデンサ、前記第二加熱コイルの経路で電流が流れることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記第二加熱コイルと前記第二共振コンデンサには並列に、第一並列スイッチング素子が接続されていることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記負電極には、前記第一スイッチング素子と前記第二スイッチング素子と第三スイッチング素子と第二電源コンデンサと第三加熱コイルと第三共振コンデンサを直列接続した第三直列体が接続されており、前記第三スイッチング素子は、前記スイッチング素子直列体に含まれていることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項2に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記正電極には、前記第一スイッチング素子と前記第二スイッチング素子と第三スイッチング素子と第二電源コンデンサと第三加熱コイルと第三共振コンデンサを直列接続した第三直列体が接続されており、前記第三スイッチング素子は、前記スイッチング素子直列体に含まれていることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記第二スイッチング素子をオフし、前記第三スイッチング素子をオンした期間には、前記第二電源コンデンサを電圧源として、前記第三スイッチング素子、前記第一電源コンデンサ、前記第二加熱コイル、前記第二共振コンデンサ、前記第三共振コンデンサ、前記第三加熱コイルの経路で電流が流れることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記第三加熱コイルと前記第三共振コンデンサには並列に、第二並列スイッチング素子が接続されていることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記第一加熱コイル、前記第二加熱コイル、前記第三加熱コイルの電流位相が120度ずつシフトするように各スイッチング素子を制御することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物に対し所望の電力を供給して誘導加熱を行うインバータ方式の電磁誘導加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、火を使わずに鍋などの被加熱物を加熱するインバータ方式の電磁誘導加熱装置が広く用いられるようになってきている。電磁誘導加熱装置は、加熱コイルに高周波電流を流し、加熱コイルに近接して配置された金属製の被加熱物(鍋など)に渦電流を発生させ、被加熱物自体の電気抵抗により発熱させるものである。
【0003】
加熱コイルを2つ備えた場合に加熱できる従来例として、特許文献1に開示される電磁誘導加熱装置がある。この電磁誘導加熱装置は、直流電源に直列接続された3つ半導体スイッチ(同文献の図1、符号Q1a、Q1b、Q1c)を備え、2つの加熱コイル(同文献の図1、符号6、7)に同位相の電流を流して加熱したい場合は、Q1bを常時オン状態にし、Q1aとQ1cを交互にオンオフ(同文献の図3)して誘導加熱し、2つの加熱コイルに逆位相の電流を流して加熱したい場合は、同期してオンオフするQ1aとQ1cに対し、Q1bを排他的にオンオフ(同文献の図24)して誘導加熱するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/064932号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、加熱コイルと被加熱物との磁気的な結合状態によって加熱コイルおよび被加熱物の抵抗を含む等価インピーダンスが異なる場合(例えば、被加熱物の材質や載置位置が異なる場合など)、2つの加熱コイルに流れる電流の大きさは各々の等価インピーダンスにより定まるためコイル電流は均等にならず加熱効率は低下する。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題に対処することであり、加熱コイルおよび被加熱物の抵抗を含む等価インピーダンスが異なる場合においても、複数の加熱コイルに流れる電流を均等化し、被加熱物に対して所望の電力を効率良く供給できるインバータ方式の電磁誘導加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の電磁誘導加熱装置は、直流電圧を出力する直流電源と、前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、前記交流電圧を用いて被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、を備えた電磁誘導加熱装置であって、前記インバータ回路は、前記直流電源の正電極と負電極の間に設けた、3個以上のスイッチング素子を直列接続したスイッチング素子直列体を備え、前記負電極には、第一スイッチング素子と第一加熱コイルと第一共振コンデンサを直列接続した第一直列体と、前記第一スイッチング素子と第二スイッチング素子と第一電源コンデンサと第二加熱コイルと第二共振コンデンサを直列接続した第二直列体と、が接続されており、前記第一スイッチング素子と前記第二スイッチング素子は、前記スイッチング素子直列体に含まれているものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電磁誘導加熱装置によれば、加熱コイルおよび被加熱物の抵抗を含む等価インピーダンスが異なる場合においても、複数の加熱コイルの電流を均等化し、被加熱物対して所望の電力を効率良く供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の電磁誘導加熱装置の回路構成図。
図2】実施例1の電磁誘導加熱装置の動作波形。
図3A】実施例1のモードa時の電流経路。
図3B】実施例1のモードb時の電流経路。
図3C】実施例1のモードc時の電流経路。
図3D】実施例1のモードd時の電流経路。
図4】実施例2の電磁誘導加熱装置の回路構成図。
図5】実施例2の電磁誘導加熱装置の動作波形。
図6】実施例2の電磁誘導加熱装置の動作波形。
図7】実施例3の電磁誘導加熱装置の回路構成図。
図8】実施例3の電磁誘導加熱装置の回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を用いながら説明する。なお、各図において、符号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示しており、適宜重複説明を省略している。
【実施例0011】
まず、図1から図3Dを用いて、本発明の実施例1に係る電磁誘導加熱装置を説明する。なお、本実施例の電磁誘導加熱装置は、金属筐体の上部に耐熱ガラス製のトッププレートを設置し、トッププレートの下方に配置した加熱コイルに高周波電流を供給することで、トッププレート上面の所定位置に載置した金属製の被加熱物を誘導加熱するものであるが、以下ではこのような周知構成の説明は省略する。
【0012】
図1は、実施例1の電磁誘導加熱装置の回路構成図である。図1において、直流電源1は200Vまたは100Vの商用交流電源から供給される交流電圧を整流し直流電圧を出力する電源である。この直流電源1の正電極Pと負電極Nとの間には、4個のパワー半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)5a、5c、5e、5fが直列に接続されている。また、スイッチング素子5a、5c、5e、5fにはそれぞれ、ダイオード6a、6c、6e、6fが逆方向に並列接続されている。なお、図1では4個のスイッチング素子を直列接続した構成を例示しているが、3個以上のスイッチング素子の直列体を、正電極Pと負電極Nの間に配置した電磁誘導加熱装置であれば、本発明を適用することができる。
【0013】
ここで、スイッチング素子5a、5cの接続点を出力端子A、スイッチング素子5c、5eの接続点を出力端子C、スイッチング素子5e、5fの接続点を出力端子Eと称することとする。
【0014】
図1に示すように、出力端子Aには電源コンデンサ31の一端が接続され、電源コンデンサ31の他端と直流電源1の負電極Nの間には、加熱コイル11と共振コンデンサ21の直列体が接続されている。この構成は、負電極Nに、スイッチング素子5f,5e,5c、電源コンデンサ31、加熱コイル11、共振コンデンサ21の直列体が接続されていると見做すこともできる。尚、加熱コイル11と共振コンデンサ21の接続順は入れ替えても問題はない。
【0015】
また、出力端子Cには電源コンデンサ32の一端が接続され、電源コンデンサ32の他端と直流電源1の負電極Nの間には、加熱コイル12と共振コンデンサ22の直列体が接続されている。この構成は、負電極Nに、スイッチング素子5f,5e、電源コンデンサ32、加熱コイル12、共振コンデンサ22の直列体が接続されていると見做すこともできる。尚、加熱コイル12と共振コンデンサ22の接続順は入れ替えても問題はない。
【0016】
更に、出力端子Eと直流電源1の負電極Nの間には、加熱コイル13と共振コンデンサ23の直列体が接続されている。この構成は、負電極Nに、スイッチング素子5f、加熱コイル13、共振コンデンサ23の直列体が接続されていると見做すこともできる。尚、加熱コイル13と共振コンデンサ23の接続順は入れ替えても問題はない。
【0017】
上記した回路構成の電磁誘導加熱装置において、スイッチング素子5a、5c、5e、5fを適切にオンオフすることにより、加熱コイル11から13に均等に電流を流す電流共振形インバータを実現することができる。
【0018】
次に、図2および図3Aから図3Dを用いて、本実施例の電磁誘導加熱装置が備える各スイッチング素子の具体的な制御方法を説明する。なお、加熱コイル11、12、13に流れる電流i11、i12、i13の向きは、図1に示す一点鎖線の矢印方向を正方向とする。
【0019】
図2は、各部の動作波形であり、上から順に、(a)各スイッチング素子のゲート駆動信号vg5a~vg5f、(b)各加熱コイルの電流i11、i12、i13、(c)各スイッチング素子および各ダイオードの電流i5a~i5f、i6a~i6fである。
【0020】
図2の下部に示すa~dは、スイッチング素子5a~5fのオンオフにより規定される4つの動作モードである。以下、図3Aから図3Dを用いて、各動作モードにおける電流経路を説明する。
【0021】
<モードa>
図3Aに示すように、スイッチング素子5aと5eがオン、スイッチング素子5cと5fがオフの期間には、直流電源1からスイッチング素子5a、電源コンデンサ31、加熱コイル11、共振コンデンサ21の経路で電流が流れる。この電流によって、電源コンデンサ31には電荷が蓄積される。なお、電源コンデンサ31は、共振コンデンサ21以上の容量を持ち、共振コンデンサ21以上の電荷を蓄積できるものとする。また、後述するモードcで充電された電源コンデンサ32を電圧源として、スイッチング素子5e、加熱コイル13、共振コンデンサ23、共振コンデンサ22、加熱コイル12の経路で電流が流れる。
【0022】
<モードb>
次に、スイッチング素子5aと5eがターンオフ、スイッチング素子5cと5fがターンオンすると、図3Bに示すように、加熱コイル11と加熱コイル12の蓄積エネルギーによって、加熱コイル11、共振コンデンサ21、共振コンデンサ22、加熱コイル12、電源コンデンサ32、ダイオード6c、電源コンデンサ31の経路で電流が環流する。また、加熱コイル13の蓄積エネルギーによって、加熱コイル13、共振コンデンサ23、ダイオード6fの経路で電流が環流する。
【0023】
ここで、スイッチング素子5cと5fは、ダイオード6cと6fに電流が流れている期間にターンオンさせることにより、ゼロ電圧スイッチング動作となりスイッチング損失の少ないソフトスイッチング動作が可能となる。
【0024】
<モードc>
加熱コイル11と加熱コイル12の蓄積エネルギーがゼロになると、図3Cに示すように、電源コンデンサ31を電圧源として、スイッチング素子5c、電源コンデンサ32、加熱コイル12、共振コンデンサ22、共振コンデンサ21、加熱コイル11の経路で電流が流れ、加熱コイル11と加熱コイル12の電流は負方向に切り替わる。このモードcにより、電源コンデンサ31の電荷が電源コンデンサ32に移動する。なお、電源コンデンサ32は、共振コンデンサ22以上の容量を持ち、共振コンデンサ22以上の電荷を蓄積できるものとする。また、加熱コイル13の蓄積エネルギーがゼロになると、共振コンデンサ23から加熱コイル13、スイッチング素子5fの経路で電流が流れ、加熱コイル13の電流も負方向に切り替わる。
【0025】
<モードd>
次にスイッチング素子5cと5fがターンオフ、スイッチング素子5aと5eがターンオンすると、図3Dに示すように、加熱コイル11の蓄積エネルギーによって、加熱コイル11、電源コンデンサ31、ダイオード6a、直流電源1の経路で電流が還流する。また、加熱コイル12と加熱コイル13の蓄積エネルギーによって、加熱コイル12、共振コンデンサ22、共振コンデンサ23、加熱コイル13、ダイオード6e、電源コンデンサ32の経路で電流が環流する。
【0026】
ここで、スイッチング素子5aと5eは、ダイオード6aと6eに電流が流れている期間にターンオンさせることにより、ゼロ電圧スイッチング動作となりスイッチング損失の少ないソフトスイッチング動作が可能となる。
【0027】
加熱コイル11~13の蓄積エネルギーがゼロになるとモードaに移行し加熱コイル11~13の電流は正方向に切り替わる。
【0028】
以上のモードa~dを繰り返すことにより、モードaにおいて加熱コイル11に流れる電流が共振コンデンサ21と電源コンデンサ31を充電し、モードcにおいて電源コンデンサ31を電源として加熱コイル12に流れる電流が共振コンデンサ22と電源コンデンサ32を充電し、モードaにおいて電源コンデンサ32を電源して加熱コイル13に流れる電流が共振コンデンサ23を充電する。このように、電源コンデンサ31と電源コンデンサ32を用いることにより、電源コンデンサ31と電源コンデンサ32の電荷量が保存されながら加熱コイル11~13に電流が流れる。その結果、加熱コイルおよび被加熱物の抵抗を含む等価インピーダンスが異なる場合においても、加熱コイル11~13の電流は特別な制御を加えることなく自然とバランスする。なお、共振コンデンサ21と共振コンデンサ22を省略した構成でも、加熱コイル11~13の電流をバランスさせることができるが、共振コンデンサと電源コンデンサを別個に設けて直列接続することで耐圧を向上させることができる。
【0029】
以上で説明したように、本実施例の電磁誘導加熱装置によれば、加熱コイルおよび被加熱物の抵抗を含む等価インピーダンスが異なる場合においても、複数の加熱コイルの電流を均等化し、被加熱物対して所望の電力を効率良く供給することができる。
【実施例0030】
次に、図4から図6を用いて、本発明の実施例2に係る電磁誘導加熱装置を説明する。なお、実施例1との共通点については、重複説明を省略する。
【0031】
図4に示す本実施例の回路構成は、概説すれば、図1に示す実施例1の回路構成に2つの並列スイッチング素子(スイッチング素子5b、5d)を付加したものである。図4において、電源コンデンサ31と加熱コイル11の接続点を出力端子Bと称すると、出力端子Bと直流電源1の負電極Nとの間にスイッチング素子5bが接続されている。また、電源コンデンサ32と加熱コイル12の接続点を出力端子Dと称すると、出力端子Dと直流電源1の負電極Nとの間にスイッチング素子5dが接続されている。また、スイッチング素子5b、5dにはそれぞれダイオード6b、6dが逆方向に並列接続されている。
【0032】
本実施例では、追加したスイッチング素子5bがスイッチング素子5aと相補にオンオフし、追加したスイッチング素子5dがスイッチング素子5cと相補にオンオフする。これにより、スイッチング素子5a、5bと電源コンデンサ31、加熱コイル11、共振コンデンサ21が一段目のインバータを構成し、スイッチング素子5c、5dと電源コンデンサ32、加熱コイル12、共振コンデンサ22が二段目のインバータを構成し、スイッチング素子5e、5fと加熱コイル13、共振コンデンサ23が三段目のインバータを構成する。以下、各インバータの使用方法の一例として、モードaとモードcの特徴的な電流経路を説明する。
【0033】
実施例1のモードaでは、図3Aに示したように、電源コンデンサ32を電圧源として、スイッチング素子5e、加熱コイル13、共振コンデンサ23、共振コンデンサ22、加熱コイル12の経路で電流が流れていたが、本実施例のモードaでは、スイッチング素子5cと相補にオンオフするスイッチング素子5dがターンオンしているため、電源コンデンサ32を電圧源として、スイッチング素子5e、加熱コイル13、共振コンデンサ23、スイッチング素子5dの経路で、すなわち、加熱コイル12を回避する経路で電流が流れる。このようにして、電源コンデンサ32から加熱コイル12に給電しない電流経路を形成することができる。
【0034】
また、実施例1のモードcでは、図3Cに示したように、電源コンデンサ31を電圧源として、スイッチング素子5c、電源コンデンサ32、加熱コイル12、共振コンデンサ22、共振コンデンサ21、加熱コイル11の経路で電流が流れていたが、本実施例のモードcでは、スイッチング素子5aと相補にオンオフするスイッチング素子5bがターンオンしているため、電源コンデンサ31を電圧源として、スイッチング素子5c、電源コンデンサ32、加熱コイル12、共振コンデンサ22の経路で、すなわち、加熱コイル11を回避する経路で電流が流れる。このようにして、電源コンデンサ31から加熱コイル11に給電しない電流経路を形成することができる。
【0035】
図5は、各部の動作波形であり、上から順に、(a)各スイッチング素子のゲート駆動信号vg5a~vg5f、(b)各加熱コイルの電流i11、i12、i13、(c)各スイッチング素子および各ダイオードの電流i5a~i5f、i6a~i6fである。
【0036】
図5において、スイッチング素子5aと5cと5eがオンしているタイミングをスイッチング周期内で120度ずつずらすことで、加熱コイル11から13の電流位相を120度ずつシフトさせながら電流をバランスさせることが可能である。
【0037】
なお、インバータの段数を3段から4段に増やした場合は、90度ずつずらすことで同様に加熱コイル電流の位相をシフトさせることが可能である。このように、複数の加熱コイルの電流位相をシフトさせながら電流をバランスさせることにより被加熱物をむらなく加熱することが可能となる。
【0038】
また、実施例2の電磁誘導加熱装置において、加熱コイル電流の位相をシフトさせず加熱コイル11から13の電流を同位相で流す場合には、図6に示すようにスイッチング素子5aと5dと5eがオンしているタイミングを合わせれば良い。
【実施例0039】
図7図8は、実施例3の電磁誘導加熱装置の回路構成図である。実施例1や実施例2との共通点については重複説明を省略する。
【0040】
図7に示す電磁誘導加熱装置は、概説すれば、図1に示す実施例1の加熱コイルと共振コンデンサを直流電源1の正電極P側に移動したものであり、実施例1と同様にスイッチング素子5a、5c、5e、5fを駆動することによって各加熱コイルの電流位相を制御するものである。
【0041】
同様に、図8に示す電磁誘導加熱装置は、概説すれば、図4に示す実施例2の加熱コイルと共振コンデンサを直流電源1の正電極P側に移動したものであり、実施例2と同様にスイッチング素子5aから5fを駆動することによって各加熱コイルの電流位相を制御するものである。
【0042】
図7図8のように、電磁誘導加熱装置を構成しても、実施例1や実施例2と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 直流電源、
2 インバータ、
5 スイッチング素子、
6 ダイオード、
11~13 加熱コイル、
21~23 共振コンデンサ、
31、32 電源コンデンサ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8