(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175770
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】絶縁素子
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20221117BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20221117BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H01F27/00 R
H01F17/00 A
H01F27/32 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082450
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 敏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和幸
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓雄
(72)【発明者】
【氏名】牧野 伸顕
(72)【発明者】
【氏名】大黒 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤 慶彦
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044BB04
5E044BB10
5E070AA11
5E070AB08
5E070CB02
5E070CB20
(57)【要約】
【課題】第1コイルと第2コイルとの間の層間絶縁膜におけるアバランシェ降伏を抑制することができる絶縁素子を提供する。
【解決手段】絶縁素子は、第1コイルと、第2コイルと、前記第1コイルと前記第2コイルとの間に設けられた層間絶縁膜と、を備える。前記層間絶縁膜は、第1層と、第2層と、前記第1層と前記第2層との間に設けられた第3層と、を有する。前記第1層は、前記第1コイルと前記第3層との間に設けられ、前記第2層は、前記第2コイルと前記第3層との間に設けられ、前記第3層のバンドギャップは、前記第1層のバンドギャップ及び前記第2層のバンドギャップよりも狭い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルと、
第2コイルと、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に設けられた層間絶縁膜と、
を備え、
前記層間絶縁膜は、第1層と、第2層と、前記第1層と前記第2層との間に設けられた第3層と、を有し、
前記第1層は、前記第1コイルと前記第3層との間に設けられ、
前記第2層は、前記第2コイルと前記第3層との間に設けられ、
前記第3層のバンドギャップは、前記第1層のバンドギャップ及び前記第2層のバンドギャップよりも狭い絶縁素子。
【請求項2】
前記第1層及び前記第2層は、酸化シリコン層であり、
前記第3層は、酸窒化シリコン層または窒化シリコン層である請求項1に記載の絶縁素子。
【請求項3】
前記第1層の厚さ及び前記第2層の厚さは、前記第3層の厚さよりも薄い請求項1または2に記載の絶縁素子。
【請求項4】
第1領域と第2領域とを有する基板と、
前記基板と前記層間絶縁膜との間に設けられた第1絶縁層と、
前記第1領域上の前記第1絶縁層内に設けられた第1導電層と、
前記層間絶縁膜上に設けられた第2絶縁層と、
前記第1領域上の前記第2絶縁層内に設けられた第2導電層と、
前記層間絶縁膜内に設けられ、前記第1導電層と前記第2導電層とを接続する第3導電層と、
をさらに備え、
前記第1コイルは、前記第2領域上の前記第1絶縁層内に設けられ、前記第1導電層と接続され、
前記第2コイルは、前記第2領域上の前記第2絶縁層内に設けられ、前記第2導電層とは接続されていない請求項1~3のいずれか1つに記載の絶縁素子。
【請求項5】
前記基板の前記第1領域は、前記第1導電層と接続された回路を有する請求項4に記載の絶縁素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、絶縁素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のコイルと、一対のコイルの間に設けられた層間絶縁膜とを備え、電磁誘導を利用して一対のコイル間に信号を伝送する絶縁素子が知られている。一対のコイル間の層間絶縁膜には高電界がかかる場合があり、層間絶縁膜には高い信頼性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-150241号公報
【特許文献2】特開2015-138874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、第1コイルと第2コイルとの間の層間絶縁膜におけるアバランシェ降伏を抑制することができる絶縁素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、絶縁素子は、第1コイルと、第2コイルと、前記第1コイルと前記第2コイルとの間に設けられた層間絶縁膜と、を備える。前記層間絶縁膜は、第1層と、第2層と、前記第1層と前記第2層との間に設けられた第3層と、を有する。前記第1層は、前記第1コイルと前記第3層との間に設けられ、前記第2層は、前記第2コイルと前記第3層との間に設けられ、前記第3層のバンドギャップは、前記第1層のバンドギャップ及び前記第2層のバンドギャップよりも狭い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】(a)は、第1コイルと第2コイルとの間に電圧を印加したときの実施形態の層間絶縁膜のエネルギーバンド図であり、(b)は、第1コイルと第2コイルとの間に電圧を印加したときの比較例の層間絶縁膜のエネルギーバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。各図において、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
【0009】
絶縁素子1は、第1コイル31と、第2コイル32と、層間絶縁膜20とを備える。層間絶縁膜20は、第1コイル31と第2コイル32との間に設けられている。
【0010】
層間絶縁膜20は、第1層21と、第2層22と、第3層23とを有する。第1層21は、第1コイル31と第3層23との間に設けられている。第2層22は、第2コイル32と第3層23との間に設けられている。第3層23は、第1層21と第2層22との間に設けられている。
【0011】
第3層23のバンドギャップは、第1層21のバンドギャップ及び第2層22のバンドギャップよりも狭い。例えば、第1層21及び第2層22は、酸化シリコン層である。酸化シリコン層は、例えばSiO2層である。第3層23は、酸窒化シリコン層である。または、第3層23は、窒化シリコン層である。
【0012】
第1層21の厚さ及び第2層22の厚さは、第3層23の厚さよりも薄い。層間絶縁膜20の全体の厚さは、例えば、約10μmである。第1層21の厚さ及び第2層22の厚さは、例えば、約2μmである。
【0013】
絶縁素子1は、基板10と、第1絶縁層41と、第2絶縁層42と、第3絶縁層43と、第4絶縁層44と、第1導電層61と、第2導電層62と、第3導電層63と、保護膜45とをさらに備える。
【0014】
基板10は、例えば、シリコン基板である。基板10は、第1領域11と第2領域12とを有する。基板10の第1領域11は、回路15を有する。回路15は、半導体集積回路を含む。回路15は、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)回路を含む。
【0015】
基板10上に第3絶縁層43が設けられ、第3絶縁層43上に第1絶縁層41が設けられ、第1絶縁層41上に層間絶縁膜20が設けられ、層間絶縁膜20上に第2絶縁層42が設けられている。
【0016】
第1絶縁層41は、基板10と層間絶縁膜20との間に設けられている。第1絶縁層41は、例えば、酸化シリコン層である。
【0017】
第1導電層61は、基板10の第1領域11上の第1絶縁層41内に設けられている。第1導電層61は、例えば図示しない導電ビアなどを介して、第1領域11上において回路15と電気的に接続されている。
【0018】
第1コイル31は、基板10の第2領域12上の第1絶縁層41内に設けられている。第1コイル31と第1導電層61は、例えば、同じ材料からなり、同時に形成される。第1コイル31及び第1導電層61は、例えば、銅を主に含む。第1コイル31は、第1絶縁層41内で例えば渦巻き状に形成されている。第1コイル31は、第1絶縁層41内に設けられた図示しない導電層を介して、第1導電層61と電気的に接続されている。
【0019】
第2絶縁層42は、層間絶縁膜20上に設けられている。第1絶縁層41と第2絶縁層42との間に層間絶縁膜20が設けられている。第2絶縁層42は、例えば、酸化シリコン層である。
【0020】
第2導電層62は、基板10の第1領域11上の第2絶縁層42内に設けられている。
【0021】
第2コイル32は、基板10の第2領域12上の第2絶縁層42内に設けられている。第2コイル32と第2導電層62は、例えば、同じ材料からなり、同時に形成される。第2コイル32及び第2導電層62は、例えば、銅を主に含む。第2コイル32は、第2絶縁層42内で例えば渦巻き状に形成されている。第2絶縁層42内において、第2コイル32は第2導電層62と接続されていない。
【0022】
第3導電層63は、第1導電層61と第2導電層62との間の層間絶縁膜20内に設けられ、第1導電層61と第2導電層62とを電気的に接続している。
【0023】
第1コイル31と第1絶縁層41との間にバリアメタル91が設けられている。第1導電層61と第1絶縁層41との間にバリアメタル93が設けられている。第2コイル32と第2絶縁層42との間にバリアメタル92が設けられている。第2導電層62と第2絶縁層42との間にバリアメタル94が設けられている。第3導電層63と層間絶縁膜20との間にバリアメタル95が設けられている。
【0024】
バリアメタル91~95は、第1コイル31、第2コイル32、第1導電層61、第2導電層62、及び第3導電層63に含まれる金属原子(例えば銅原子)の絶縁材料中への拡散を防ぐ。バリアメタル91~95として、例えば、Ta、TaNが用いられる。
【0025】
基板10と第1絶縁層41との間に第3絶縁層43が設けられている。第3絶縁層43は、例えば、酸化シリコン層である。第3絶縁層43と第1絶縁層41との間に、第1絶縁膜51が設けられている。第1絶縁膜51は、第3絶縁層43及び第1絶縁層41とは異なる材料の膜であり、例えば、窒化シリコン膜である。
【0026】
第1絶縁層41と、層間絶縁膜20の第1層21との間に、第2絶縁膜52が設けられている。第2絶縁膜52は、第1絶縁層41及び第1層21とは異なる材料の膜であり、例えば、窒化シリコン膜である。
【0027】
層間絶縁膜20の第2層22と、第2絶縁層42との間に、第3絶縁膜53が設けられている。第3絶縁膜53は、第2層22及び第2絶縁層42とは異なる材料の膜であり、例えば、窒化シリコン膜である。
【0028】
第2絶縁層42上に第4絶縁層44が設けられている。第4絶縁層44は、例えば、酸化シリコン層である。第2絶縁層42と第4絶縁層44との間に、第4絶縁膜54が設けられている。第4絶縁膜54は、第2絶縁層42及び第4絶縁層44とは異なる材料の膜であり、例えば、炭窒化シリコン(SiCN)膜である。
【0029】
第4絶縁層44上に保護膜45が設けられている。保護膜45は、絶縁膜であり、例えば、窒化シリコン膜や、ポリイミドのような有機膜である。
【0030】
第4絶縁膜54上に第1パッド71と第2パッド72が設けられている。第1パッド71及び第2パッド72は、金属材料からなる。第1パッド71及び第2パッド72は、例えば、アルミニウムを主に含む。
【0031】
第4絶縁膜54には、第2コイル32に達する第1開口部54aが形成される。第1パッド71の一部は、第1開口部54a内にも形成され、第2コイル32と接続されている。第1パッド71の上面は第4絶縁層44及び保護膜45から露出される。第1パッド71の上面には、第1金属ワイヤ81が接合される。第2コイル32は、第1パッド71を介して、第1金属ワイヤ81と電気的に接続されている。
【0032】
また、第4絶縁膜54には、第2導電層62に達する第2開口部54bが形成される。第2パッド72の一部は、第2開口部54b内にも形成され、第2導電層62と接続されている。第2パッド72の上面は第4絶縁層44及び保護膜45から露出される。第2パッド72の上面には、第2金属ワイヤ82が接合される。第2導電層62は、第2パッド72を介して、第2金属ワイヤ82と電気的に接続されている。
【0033】
第1コイル31は、第1導電層61、第3導電層63、第2導電層62、及び第2パッド72を介して、第2金属ワイヤ82と電気的に接続されている。
【0034】
第2コイル32には、第1金属ワイヤ81及び第1パッド71を通じて、外部回路または外部機器から電気信号が印加される。第2コイル32には、例えば、高周波のデジタル信号が印加される。
【0035】
第2コイル32に電気信号が印加されることで磁界が発生し、この磁界により第1コイル31に誘導電流が発生する。これにより、第2コイル32から第1コイル31へ信号が伝送される。逆に、第2金属ワイヤ82、第2パッド72、第2導電層62、第3導電層63、及び第1導電層61を通じて第1コイル31に印加された信号を、電磁誘導により第2コイル32に伝送することもできる。例えば半導体集積回路である回路15と、回路15よりも高電圧で動作する外部回路(または外部機器)との間を、層間絶縁膜20で絶縁しつつ、信号の伝送を行うことができる。
【0036】
第1コイル31と第2コイル32との間の信号伝送時、層間絶縁膜20には電界がかかる。
【0037】
図2(b)は、第1コイル31と第2コイル32との間に電圧を印加したときの比較例の層間絶縁膜120のエネルギーバンド図である。相対的に、第2コイル32が高電位であり、第1コイル31が低電位である。
【0038】
比較例においては、層間絶縁膜120として1層の酸化シリコン(SiO2)層を用いている。層間絶縁膜120にかかる電界が高電界の場合、エネルギーバンドの傾きが大きくなり、電子が高速に加速され、アバランシェ降伏が発生する懸念がある。
【0039】
これに対して、
図2(a)は、第1コイル31と第2コイル32との間に電圧を印加したときの実施形態の層間絶縁膜20のエネルギーバンド図である。相対的に、第2コイル32が高電位であり、第1コイル31が低電位である。
【0040】
本実施形態によれば、層間絶縁膜20は、第1層21と第2層22との間に、これらよりもバンドギャップが狭い第3層23を設けた構成にしている。このため、層間絶縁膜20を構成する原子に対する電子の衝突回数を上記比較例に比べて増やすことができる。すなわち、電子が高エネルギーに加速されないうちに、層間絶縁膜20を構成する原子に衝突する頻度が高くなる。これにより、層間絶縁膜20におけるアバランシェ降伏を抑制し、層間絶縁膜20の信頼性を高くできる。この結果、絶縁素子1の破壊を抑制することができる。
【0041】
なお、相対的に、第2コイル32を低電位にし、第1コイル31を高電位にした場合においても、第1層21と第2層22との間に、これらよりもバンドギャップが狭い第3層23を設けた構成にすることで、電子の衝突回数を比較例に比べて増やすことができ、層間絶縁膜20におけるアバランシェ降伏を抑制することができる。
【0042】
本実施形態では、例えば、第1層21及び第2層22として酸化シリコン層を用い、第3層23として酸窒化シリコン層を用いている。酸窒化シリコンは、酸化シリコンに比べて、電界に依存せずに、通過電荷量に依存して破壊しやすい傾向がある。通過電荷量は、絶縁膜が破壊に至るまでに絶縁膜を通過した電荷量である。
【0043】
したがって、第1層21の厚さ及び第2層22の厚さは、第3層23への電子の注入を抑制するのに十分な厚さでよい。第1層21と第2層22を必要以上に厚くしなくてよい。これにより、第1層21及び第2層22の厚さの増大に伴う膜応力の増大によるクラックの発生を抑制することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…絶縁素子、10…基板、11…第1領域、12…第2領域、15…回路、20…層間絶縁膜、21…第1層、22…第2層、23…第3層、31…第1コイル、32…第2コイル、41…第1絶縁層、42…第2絶縁層、43…第3絶縁層、44…第4絶縁層、45…保護膜、61…第1導電層、62…第2導電層、63…第3導電層、71…第1パッド、72…第2パッド