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特開2022-175774VAV空調システムおよび空調制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175774
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】VAV空調システムおよび空調制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20221117BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20221117BHJP
   F24F 110/70 20180101ALN20221117BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20221117BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/64
F24F110:70
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082460
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】今西 祐
(72)【発明者】
【氏名】大曲 康仁
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260AB07
3L260BA42
3L260CA12
3L260CA17
3L260CB44
3L260EA07
3L260FB30
3L260FB44
3L260FC06
(57)【要約】
【課題】ファン回転数の増加補正の回数を減らし、省エネルギー、省コストを実現する。
【解決手段】VAV空調システムは、VAVユニット1のダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出するVAVコントローラ2と、各VAVユニット1の静圧過不足情報を統合する前に、被制御エリアの室内温度または室内CO2濃度に基づいて静圧過不足情報の再判定を行う再判定部61と、各VAVユニット1の静圧過不足情報を統合する前に、再判定部1の判定結果に基づいて各VAVユニット1の静圧過不足情報を変更する静圧過不足情報変更部62とを備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機と、
被制御エリア毎に設けられたVAVユニットと、
被制御エリアの負荷状況に応じて決まる要求風量に応じて、前記VAVユニットのダンパの開度を被制御エリア毎に制御するように構成された第1の制御部と、
前記ダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出するように構成されたステータス通知部と、
各VAVユニットの前記要求風量の値を合算した総要求風量に基づいて前記空調機のファン回転数を決定するように構成されたファン回転数決定部と、
各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報に基づいて前記空調機のファン回転数を補正するように構成されたファン回転数補正部と、
前記ファン回転数決定部によって決定され前記ファン回転数補正部によって補正されたファン回転数となるように、前記空調機のファンを制御するように構成された第2の制御部と、
各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合する前に、前記被制御エリアの室内温度または室内CO2濃度に基づいて前記静圧過不足情報の再判定を行うように構成された再判定部と、
各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合する前に、前記再判定部の判定結果に基づいて各VAVユニットの前記静圧過不足情報を変更するように構成された静圧過不足情報変更部とを備えることを特徴とするVAV空調システム。
【請求項2】
請求項1記載のVAV空調システムにおいて、
前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度が許容温度領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするVAV空調システム。
【請求項3】
請求項2記載のVAV空調システムにおいて、
前記許容温度領域は、冷房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の無限大から正の第1の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の第1の所定温度から無限大までの領域である第1の許容温度領域と、冷房時に被制御エリアの室内温度が負の無限大から正の第2の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度が正の第3の所定温度から無限大までの領域である第2の許容温度領域とからなり、
前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度が前記第1の許容温度領域と前記第2の許容温度領域のうち少なくとも一方の領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするVAV空調システム。
【請求項4】
請求項1記載のVAV空調システムにおいて、
前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするVAV空調システム。
【請求項5】
請求項1記載のVAV空調システムにおいて、
各被制御エリアの将来時刻における室内温度を予測するように構成された室内温度予測部をさらに備え、
前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度と室内温度予測値のうち少なくとも一方が許容温度領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするVAV空調システム。
【請求項6】
請求項5記載のVAV空調システムにおいて、
前記許容温度領域は、冷房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の無限大から正の第1の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の第1の所定温度から無限大までの領域である第1の許容温度領域と、冷房時に被制御エリアの室内温度が負の無限大から正の第2の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度が正の第3の所定温度から無限大までの領域である第2の許容温度領域とからなり、
前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度と室内温度予測値のうち少なくとも一方が、前記第1の許容温度領域と前記第2の許容温度領域のうち少なくとも一方の領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするVAV空調システム。
【請求項7】
請求項5または6記載のVAV空調システムにおいて、
前記再判定部は、前記静圧過不足情報が適正を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度予測値が前記許容温度領域外の場合に、適正から静圧不足へと変更すべきと判定することを特徴とするVAV空調システム。
【請求項8】
請求項1記載のVAV空調システムにおいて、
各被制御エリアの将来時刻における室内CO2濃度を予測するように構成された室内CO2濃度予測部をさらに備え、
前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度または室内CO2濃度予測値と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするVAV空調システム。
【請求項9】
請求項8記載のVAV空調システムにおいて、
前記再判定部は、前記静圧過不足情報が適正を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度予測値と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域外の場合に、適正から静圧不足へと変更すべきと判定することを特徴とするVAV空調システム。
【請求項10】
被制御エリアの負荷状況に応じて決まる要求風量に応じて、VAVユニットのダンパの開度を被制御エリア毎に制御する第1のステップと、
前記ダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出する第2のステップと、
各VAVユニットの前記要求風量の値を合算した総要求風量に基づいて、前記VAVユニットに給気を供給する空調機のファン回転数を決定する第3のステップと、
各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報に基づいて前記空調機のファン回転数を補正する第4のステップと、
前記第3のステップで決定され前記第4のステップで補正されたファン回転数となるように、前記空調機のファンを制御する第5のステップと、
各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合する前に、前記被制御エリアの室内温度または室内CO2濃度に基づいて前記静圧過不足情報の再判定を行う第6のステップと、
各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合する前に、前記第6のステップの判定結果に基づいて各VAVユニットの前記静圧過不足情報を変更する第7のステップとを含むことを特徴とする空調制御方法。
【請求項11】
請求項10記載の空調制御方法において、
前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度が許容温度領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
【請求項12】
請求項11記載の空調制御方法において、
前記許容温度領域は、冷房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の無限大から正の第1の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の第1の所定温度から無限大までの領域である第1の許容温度領域と、冷房時に被制御エリアの室内温度が負の無限大から正の第2の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度が正の第3の所定温度から無限大までの領域である第2の許容温度領域とからなり、
前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度が前記第1の許容温度領域と前記第2の許容温度領域のうち少なくとも一方の領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
【請求項13】
請求項10記載の空調制御方法において、
前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
【請求項14】
請求項10記載の空調制御方法において、
各被制御エリアの将来時刻における室内温度を予測する第8のステップをさらに含み、
前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度と室内温度予測値のうち少なくとも一方が許容温度領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とする空調制御方法。
【請求項15】
請求項14記載の空調制御方法において、
前記許容温度領域は、冷房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の無限大から正の第1の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の第1の所定温度から無限大までの領域である第1の許容温度領域と、冷房時に被制御エリアの室内温度が負の無限大から正の第2の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度が正の第3の所定温度から無限大までの領域である第2の許容温度領域とからなり、
前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度と室内温度予測値のうち少なくとも一方が、前記第1の許容温度領域と前記第2の許容温度領域のうち少なくとも一方の領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
【請求項16】
請求項14または15記載の空調制御方法において、
前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が適正を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度予測値が前記許容温度領域外の場合に、適正から静圧不足へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
【請求項17】
請求項10記載の空調制御方法において、
各被制御エリアの将来時刻における室内CO2濃度を予測する第8のステップをさらに含み、
前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度または室内CO2濃度予測値と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
【請求項18】
請求項17記載の空調制御方法において、
前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が適正を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度予測値と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域外の場合に、適正から静圧不足へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間の熱負荷の変動に応じて給気吹出量を変えることにより冷暖房能力を調節するVAV空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、VAV(Variable Air Volume)空調システムでは、被制御エリア毎に可変給気量調節ユニット(VAVユニット)を設け、このVAVユニットからの給気吹出量をVAVコントローラによって被制御エリアの負荷状況に応じて制御するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
VAV空調システムにおける変風量制御では、各VAVユニットの要求風量に応じて風量(ファン回転数)を制御できるインバータ方式の空調機が用いられる。ファン回転数はインバータ周波数に比例する。
【0004】
空調機のファン回転数Fは、各VAVユニットの要求風量viを合算した総要求風量Σviから次式によって求められる(図15)。
F=a×Σvi+b (ただし、Vmin≦Σvi≦Vmax) ・・・(1)
F=Fmin(Σvi<Vmin) ・・・(2)
F=Fmax(Σvi>Vmax) ・・・(3)
【0005】
式(1)におけるa,bは予め規定された定数である。式(2)は総要求風量Σviが下限値Vminより小さい場合、ファン回転数Fが下限値Fminに制限されることを意味している。式(3)は総要求風量Σviが上限値Vmaxより大きい場合、ファン回転数Fが上限値Fmaxに制限されることを意味している。
【0006】
また、VAV空調システムでは、各VAVユニットを制御するVAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報(ステータス)に基づいてトータル静圧過不足情報が作成され、トータル静圧過不足情報に基づいて、ファン回転数Fが増加・減少補正される。
【0007】
各VAVコントローラは、それぞれが制御するVAVユニットのダンパ開度に応じて、「静圧不足」、「適正」、「静圧過剰」のうちいずれかの静圧過不足情報を出力する。空調制御装置は、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中に「静圧不足」が1つでもある場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧不足」とする。空調制御装置は、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中に「適正」と「静圧過剰」が混在する場合には、トータル静圧過不足情報を「適正」とする。空調制御装置は、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報が全て「静圧過剰」の場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧過剰」とする。
【0008】
空調制御装置は、トータル静圧過不足情報が「静圧不足」の場合、空調機のファン回転数Fをα%増加補正する(αは規定値)。空調制御装置は、トータル静圧過不足情報が「適正」の場合、ファン回転数Fを現状維持する。空調制御装置は、トータル静圧過不足情報が「静圧過剰」の場合、ファン回転数Fをα%減少補正する。
【0009】
以下、従来技術の問題点について説明する。
【0010】
[第1の問題点]
各VAVコントローラは、室内温度と室内温度設定値とに基づいて、図16に示すように要求風量を求める。図16の例では、冷房時に、室内温度が冷房時室内温度設定値より高い場合、図16の特性に応じて要求風量が増加し、室内温度が冷房時室内温度設定値以下の場合、要求風量が最小風量となる。また、暖房時に、室内温度が暖房時室内温度設定値より低い場合、図16の特性に応じて要求風量が増加し、室内温度が暖房時室内温度設定値以上の場合、要求風量が最小風量となる。
【0011】
VAVコントローラは、決定した要求風量を確保するように、VAVユニット内のダンパの開度を制御する。具体的には、VAVコントローラは、VAVユニット内の風量センサによって計測された計測風量のフィードバックを受けて、要求風量と計測風量とが等しくなるようにダンパ開度を制御する。
【0012】
各VAVコントローラは、VAVユニットのダンパ開度に応じて、「静圧不足」、「適正」、「静圧過剰」のうちいずれかの静圧過不足情報を出力するが、静圧過不足情報が「静圧不足」となっている場合でも、室内温度が良好(室内温度設定値と室内温度との差の絶対値がΔ℃以内)なことがある。図17では、室内温度がPVのときの例を示している。図17は冷房時の例を示しているが、暖房時においても室内温度が良好にもかかわらず静圧不足になる現象が発生する。なお、室内温度の制御方向(温める、冷やす)が変わるため、室内温度が良好かどうかの判断には室内温度設定値と室内温度との差の絶対値を用いる。
【0013】
室内温度が良好(室内温度設定値と室内温度との差の絶対値がΔ℃以内)でも静圧不足になるという問題は、室内温度が良好、すなわち要求風量が小さいにもかかわらず、計測風量が要求風量に満たないことに起因する。計測風量が要求風量に満たない原因として、ファン回転数が不足していたり、他のVAVユニットの要求風量が大きいために対象のVAVユニットへの風量が不足していたりすることが考えられる。その結果、室内温度が良好であっても、トータル静圧過不足情報が「静圧不足」となり、ファン回転数が増加補正され、増エネルギー、増コストとなる問題が発生していた。
【0014】
[第2の問題点]
また、一般的に快適な温度(例えば夏場で25~27℃)よりも、過度な温度設定をする(例えば室内温度設定値が20℃)ことにより、VAVユニットの要求風量が常に最大風量となることがある(図18)。このとき、「静圧不足」の静圧過不足情報が出力され続けるため、ファン回転数が増加補正され続けてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3334069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ファン回転数の増加補正の回数を減らし、省エネルギー、省コストを実現することができるVAV空調システムおよび空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のVAV空調システムは、空調機と、被制御エリア毎に設けられたVAVユニットと、被制御エリアの負荷状況に応じて決まる要求風量に応じて、前記VAVユニットのダンパの開度を被制御エリア毎に制御するように構成された第1の制御部と、前記ダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出するように構成されたステータス通知部と、各VAVユニットの前記要求風量の値を合算した総要求風量に基づいて前記空調機のファン回転数を決定するように構成されたファン回転数決定部と、各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報に基づいて前記空調機のファン回転数を補正するように構成されたファン回転数補正部と、前記ファン回転数決定部によって決定され前記ファン回転数補正部によって補正されたファン回転数となるように、前記空調機のファンを制御するように構成された第2の制御部と、各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合する前に、前記被制御エリアの室内温度または室内CO2濃度に基づいて前記静圧過不足情報の再判定を行うように構成された再判定部と、各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合する前に、前記再判定部の判定結果に基づいて各VAVユニットの前記静圧過不足情報を変更するように構成された静圧過不足情報変更部とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のVAV空調システムの1構成例において、前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度が許容温度領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
また、本発明のVAV空調システムの1構成例において、前記許容温度領域は、冷房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の無限大から正の第1の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の第1の所定温度から無限大までの領域である第1の許容温度領域と、冷房時に被制御エリアの室内温度が負の無限大から正の第2の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度が正の第3の所定温度から無限大までの領域である第2の許容温度領域とからなり、前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度が前記第1の許容温度領域と前記第2の許容温度領域のうち少なくとも一方の領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
また、本発明のVAV空調システムの1構成例において、前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のVAV空調システムの1構成例は、各被制御エリアの将来時刻における室内温度を予測するように構成された室内温度予測部をさらに備え、前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度と室内温度予測値のうち少なくとも一方が許容温度領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
また、本発明のVAV空調システムの1構成例において、前記許容温度領域は、冷房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の無限大から正の第1の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の第1の所定温度から無限大までの領域である第1の許容温度領域と、冷房時に被制御エリアの室内温度が負の無限大から正の第2の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度が正の第3の所定温度から無限大までの領域である第2の許容温度領域とからなり、前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度と室内温度予測値のうち少なくとも一方が、前記第1の許容温度領域と前記第2の許容温度領域のうち少なくとも一方の領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
また、本発明のVAV空調システムの1構成例において、前記再判定部は、前記静圧過不足情報が適正を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度予測値が前記許容温度領域外の場合に、適正から静圧不足へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のVAV空調システムの1構成例は、各被制御エリアの将来時刻における室内CO2濃度を予測するように構成された室内CO2濃度予測部をさらに備え、前記再判定部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度または室内CO2濃度予測値と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
また、本発明のVAV空調システムの1構成例において、前記再判定部は、前記静圧過不足情報が適正を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度予測値と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域外の場合に、適正から静圧不足へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の空調制御方法は、被制御エリアの負荷状況に応じて決まる要求風量に応じて、VAVユニットのダンパの開度を被制御エリア毎に制御する第1のステップと、前記ダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出する第2のステップと、各VAVユニットの前記要求風量の値を合算した総要求風量に基づいて、前記VAVユニットに給気を供給する空調機のファン回転数を決定する第3のステップと、各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報に基づいて前記空調機のファン回転数を補正する第4のステップと、前記第3のステップで決定され前記第4のステップで補正されたファン回転数となるように、前記空調機のファンを制御する第5のステップと、各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合する前に、前記被制御エリアの室内温度または室内CO2濃度に基づいて前記静圧過不足情報の再判定を行う第6のステップと、各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合する前に、前記第6のステップの判定結果に基づいて各VAVユニットの前記静圧過不足情報を変更する第7のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の空調制御方法の1構成例において、前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度が許容温度領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の空調制御方法の1構成例において、前記許容温度領域は、冷房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の無限大から正の第1の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の第1の所定温度から無限大までの領域である第1の許容温度領域と、冷房時に被制御エリアの室内温度が負の無限大から正の第2の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度が正の第3の所定温度から無限大までの領域である第2の許容温度領域とからなり、前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度が前記第1の許容温度領域と前記第2の許容温度領域のうち少なくとも一方の領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の空調制御方法の1構成例において、前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の空調制御方法の1構成例は、各被制御エリアの将来時刻における室内温度を予測する第8のステップをさらに含み、前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度と室内温度予測値のうち少なくとも一方が許容温度領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定することを特徴とするものである。
また、本発明の空調制御方法の1構成例において、前記許容温度領域は、冷房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の無限大から正の第1の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度と室内温度設定値との差が負の第1の所定温度から無限大までの領域である第1の許容温度領域と、冷房時に被制御エリアの室内温度が負の無限大から正の第2の所定温度までの領域で、暖房時に被制御エリアの室内温度が正の第3の所定温度から無限大までの領域である第2の許容温度領域とからなり、前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度と室内温度予測値のうち少なくとも一方が、前記第1の許容温度領域と前記第2の許容温度領域のうち少なくとも一方の領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の空調制御方法の1構成例において、前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が適正を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内温度予測値が前記許容温度領域外の場合に、適正から静圧不足へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の空調制御方法の1構成例は、各被制御エリアの将来時刻における室内CO2濃度を予測する第8のステップをさらに含み、前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度または室内CO2濃度予測値と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域内の場合に、静圧不足から適正へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の空調制御方法の1構成例において、前記第6のステップは、前記静圧過不足情報が適正を示しているVAVユニットについて対応する被制御エリアの室内CO2濃度予測値と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大から正の所定濃度までの領域外の場合に、適正から静圧不足へと変更すべきと判定するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、再判定部と静圧過不足情報変更部とを設けることにより、静圧不足の静圧過不足情報を減らすことができるので、ファン回転数の増加補正の回数を減らすことができ、省エネルギー、省コストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の冷房時の許容温度領域を説明する図である。
図2図2は、本発明の暖房時の許容温度領域を説明する図である。
図3図3は、本発明による静圧過不足情報の再判定の例を説明する図である。
図4図4は、本発明による静圧過不足情報の再判定の別の例を説明する図である。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係るVAV空調システムの構成を示すブロック図である。
図6図6は、本発明の第1の実施例に係るVAV空調システムのVAVコントローラの構成を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の第1の実施例に係るVAV空調システムの空調機の構成を示すブロック図である。
図8図8は、本発明の第1の実施例に係るVAV空調システムの空調機コントローラの構成を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の第1の実施例に係るVAV空調システムのVAVコントローラの動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、本発明あの第1の実施例に係るVAV空調システムの空調機コントローラの動作を説明するフローチャートである。
図11図11は、本発明の第1の実施例に係るVAV空調システムの分析装置の動作を説明するフローチャートである。
図12図12は、本発明の第2の実施例に係るVAV空調システムの構成を示すブロック図である。
図13図13は、本発明の第2の実施例に係るVAV空調システムの分析装置の動作を説明するフローチャートである。
図14図14は、本発明の第1、第2の実施例に係るVAV空調システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図15図15は、空調機のファン回転数と各VAVユニットの総要求風量との関係を示す図である。
図16図16は、室内温度と室内温度設定値とに基づく要求風量の決定方法を説明する図である。
図17図17は、室内温度が良好でも静圧不足になる例を説明する図である。
図18図18は、過剰な温度設定により静圧不足になる例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[発明の原理]
本発明では、温度(実測値または予測値)情報に基づき静圧過不足情報を「静圧不足」から「適正」に変更、または「適正」から「静圧不足」に変更する形で再判定を行う。より具体的には、「静圧不足」と判定されたVAVユニットであっても、室内温度の実測値が許容温度領域内であれば「適正」と再判定する。また、「適正」と判定されたVAVユニットであっても、室内温度の予測値が許容温度領域外であれば「静圧不足」と再判定する。
【0028】
ここで、本発明では、許容温度領域として、第1の許容温度領域A1と第2の許容温度領域A2の2種類を想定している。第1の許容温度領域A1は、冷房時に室内温度PVと室内温度設定値SPとの差PV-SPが負の無限大からΔ℃(正の第1の所定温度)までの領域であり、暖房時に室内温度PVと室内温度設定値SPとの差PV-SPが-Δ℃(負の第1の所定温度)から無限大までの領域である。第1の許容温度領域A1は、上記の第1の問題点を解決するためのものである。
【0029】
第2の許容温度領域A2は、一般的に快適とされている室内温度帯(例えば夏場25~27℃、冬場20~24℃)内に設定された所定温度(冷房時適正化室内温度上限または暖房時適正化室内温度下限)の消費エネルギーが増加する側の領域である。第2の許容温度領域A2は、上記の第2の問題点を解決するためのものである。図1に冷房時の許容温度領域A1,A2を示し、図2に暖房時の許容温度領域A1,A2を示す。
【0030】
なお、室内温度が一般的に快適とされている温度帯以外の領域であっても消費エネルギーが減少する側(冷房時に室内温度設定値を上げる側、暖房時に室内温度設定値を下げる側)の領域については第2の許容温度領域A2としない。すなわち、冷房時の第2の許容温度領域A2は、負の無限大から冷房時適正化室内温度上限(正の第2の所定温度)までの温度領域であり、暖房時の第2の許容温度領域A2は、暖房時適正化室内温度下限(正の第3の所定温度)から無限大までの温度領域である。
【0031】
本発明において、冷房時に「静圧不足」から「適正」へと再判定する例を図3を用いて説明する。図3中のt1~t8は室内温度の計測値が得られる時刻を表している。また、説明を簡単にするため、図3中では許容温度領域A1を用いた場合のみを例示している。
【0032】
時刻t1,t2では、室内温度が許容温度領域A1外のため、静圧過不足情報が「静圧不足」から「適正」へ変更されることはない。時刻t3~t7では、室内温度が許容温度領域A1内のため、静圧過不足情報が「静圧不足」から「適正」へと変更される。時刻t8では、室内温度が許容温度領域A1外のため、再判定結果は「静圧不足」となる。
このように、本発明では、再判定により、「静圧不足」と判定されるVAVユニットの数が減るので、ファン回転数が増加補正される機会も減少する。
【0033】
室内温度として、現在の値に加えて、1ステップ先の室内温度の予測値を使うことで、温度変化の傾向を考慮して静圧過不足情報を再判定することもできる。この場合は、室内温度の計測値および1ステップ先の予測値のうち少なくとも一方が許容温度領域内であれば「適正」と再判定する。
【0034】
本発明において、冷房時に「静圧不足」から「適正」へと再判定する例を図4を用いて説明する。図4中のt1~t8は室内温度の計測値と予測値が得られる時刻を表している。○印は室内温度の計測値を示し、□印は室内温度の予測値を示している。また、説明を簡単にするため、図4中では許容温度領域A1を用いた場合のみを例示している。
【0035】
時刻t1では、室内温度の計測値が許容温度領域A1外のため、静圧過不足情報が「静圧不足」から「適正」へ変更されることはない。時刻t2では、室内温度の計測値が許容温度領域A1外であるが、予測値が許容温度領域A1内のため、静圧過不足情報が「静圧不足」から「適正」へと変更される。時刻t3~t6では、室内温度の計測値および予測値共に許容温度領域A1内のため、静圧過不足情報が「静圧不足」から「適正」へと変更される。時刻t7では、予測値が許容温度領域A1外であるが、計測値が許容温度領域A1内のため、静圧過不足情報が「静圧不足」から「適正」へと変更される。時刻t8では、計測値および予測値共に許容温度領域A1外のため、再判定結果は「静圧不足」となる。
【0036】
室内温度の予測値を使う利点は、時刻t2のときのように室内温度の計測値が許容温度領域外であっても、予測値が許容温度領域内のときに「適正」と判定することで、1ステップ早くファン回転数を減少補正することができ、省エネルギー、省コストに寄与できることである。
【0037】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図5は本発明の第1の実施例に係るVAV空調システムの構成を示すブロック図である。VAV空調システムは、被制御エリア(空調ゾーン)毎に設けられ、被制御エリアへ供給する給気の量を被制御エリア毎に制御する可変給気量調節ユニットであるVAVユニット1と、VAVユニット1毎に設けられ、対応するVAVユニット1を制御するVAVコントローラ2と、空調機3と、空調機3からの給気を各VAVユニット1へ供給する給気ダクト4と、空調機3を制御する空調機コントローラ5と、中央システム7に設けられた分析装置6とから構成される。
【0038】
図6はVAVコントローラ2の構成を示すブロック図である。各VAVコントローラ2は、対応する被制御エリアの室内温度と被制御エリアの居住者または空調システムの管理者によって設定された室内温度設定値との偏差に基づいてVAVユニット1の要求風量を算出する要求風量算出部20と、要求風量算出部20によって算出された要求風量を確保するように、VAVユニット1の給気吹出量を調節するダンパの開度を制御する風量制御部21(第1の制御部)と、要求風量の値を空調機コントローラ5に通知する要求風量通知部22と、被制御エリア毎の静圧過不足情報を空調機コントローラ5に対して送出するステータス通知部23と、対応する被制御エリアの室内温度を空調機コントローラ5に通知する室内温度通知部24とを備えている。
【0039】
図7は空調機3の構成を示すブロック図である。空調機3は、冷却コイル30と、加熱コイル31と、ファン32とを備えている。なお、図7に示した構成は1例であって、図7以外の構成であってもよいことは言うまでもない。
【0040】
図8は空調機コントローラ5の構成を示すブロック図である。空調機コントローラ5は、給気温度と給気温度設定値との偏差に基づいて空調機3を制御するための操作量を出力する操作量出力部50と、各VAVコントローラ2から通知された要求風量の値からシステム全体の総要求風量の値を算出する風量算出部51と、算出された総要求風量の値に基づいて空調機3のファン回転数を決定するファン回転数決定部52と、空調機3のファン32を制御する風量制御部53(第2の制御部)と、各VAVコントローラ2から通知された静圧過不足情報に基づいてトータル静圧過不足情報を作成する情報作成部54と、トータル静圧過不足情報に基づいて空調機3のファン回転数を補正するファン回転数補正部55とを備えている。
【0041】
図1に示すように、分析装置6は、被制御エリア毎の室内温度と静圧過不足情報と室内温度設定値のデータを蓄積するデータ蓄積部60と、各VAVユニット1の静圧過不足情報を統合する前に、被制御エリアの室内温度に基づいて静圧過不足情報の再判定を行う再判定部61と、各VAVユニット1の静圧過不足情報を統合する前に、再判定部61の判定結果に基づいて各VAVユニット1の静圧過不足情報を変更する静圧過不足情報変更部62とを備えている。
【0042】
VAVユニット1とVAVコントローラ2とは、被制御エリア毎に設けられる。空調機3によって冷却または加熱された空気(給気)は、給気ダクト4を介して各被制御エリアのVAVユニット1へ供給され、VAVユニット1を通過して各被制御エリアへ供給されるようになっている。VAVユニット1内には図示しないダンパが設けられており、VAVユニット1を通過する給気の量を調整できるようになっている。
【0043】
次に、本実施例の動作について説明する。図9はVAVコントローラ2の動作を説明するフローチャート、図10は空調機コントローラ5の動作を説明するフローチャートである。
【0044】
VAVコントローラ2の室内温度通知部24は、対応する被制御エリアの室内温度センサによって計測された室内温度PVと室内温度設定値SPの値を空調機コントローラ5に通知する(図9ステップS100)。なお、室内温度設定値SPが空調システムの管理者によって設定され、空調機コントローラ5から各VAVコントローラ2に通知される場合には、室内温度設定値SPを各VAVコントローラ2から空調機コントローラ5に通知する必要はない。
【0045】
VAVコントローラ2の要求風量算出部20は、対応する被制御エリアの熱負荷状況に応じて、制御対象のVAVユニット1の要求風量viを算出する(図9ステップS101)。具体的には、要求風量算出部20は、対応する被制御エリアの室内温度PVと被制御エリアの居住者または空調システムの管理者によって設定された室内温度設定値SPとが一致するように、VAVユニット1の要求風量viを算出する。
【0046】
VAVコントローラ2の要求風量通知部22は、要求風量算出部20が算出した要求風量viの値を空調機コントローラ5に通知する(図9ステップS102)。
VAVコントローラ2の風量制御部21は、要求風量算出部20が算出した要求風量を確保するように、制御対象のVAVユニット1内のダンパ(不図示)の開度を制御する(図9ステップS103)。
【0047】
VAVコントローラ2のステータス通知部23は、対応する被制御エリアの現在の冷暖房の制御状態を示す静圧過不足情報を空調機コントローラ5に対して送出する(図9ステップS104)。ステータス通知部23は、例えばVAVユニット1のダンパ開度に基づいて、「静圧不足」、「適正」、「静圧過剰」のうちいずれかの静圧過不足情報を作成する。
【0048】
具体的には、ステータス通知部23は、VAVユニット1のダンパ開度が全開であれば、「静圧不足」とする。ステータス通知部23は、VAVユニット1のダンパ開度が全開でなく、所定開度(例えば85%)以上であれば、「適正」とする。ステータス通知部23は、VAVユニット1のダンパ開度が所定開度未満であれば、「静圧過剰」とする。
【0049】
VAVコントローラ2とVAVユニット1との組は、以上のようなステップS100~S104の処理を空調が停止するまで(図9ステップS105においてYES)、一定時間毎に行う。
【0050】
一方、空調機コントローラ5の操作量出力部50は、給気温度と給気温度設定値とが一致するように、所定の制御演算アルゴリズム(例えばPID)によって操作量を算出して空調機3に出力する(図10ステップS200)。こうして、空調機3の冷却コイル30または加熱コイル31に供給される熱媒(冷水または温水)の量が操作量に応じて調節され、給気温度が制御される。
【0051】
空調機コントローラ5の風量算出部51は、各VAVコントローラ2から通知された要求風量viの値を合算した総要求風量Σviを算出する(図10ステップS201)。
空調機コントローラ5のファン回転数決定部52は、総要求風量Σviの値に基づいて空調機3のファン回転数Fを決定する(図10ステップS202)。ファン回転数決定部52は、上記の式(1)~式(3)に示した関係式に基づいて、総要求風量Σviに対応するファン回転数Fを決定する。
【0052】
空調機コントローラ5の情報作成部54は、各VAVコントローラ2から通知された静圧過不足情報に基づいてトータル静圧過不足情報を作成するが、後述のような分析装置6による静圧過不足情報の変更があったかどうかを確認する(図10ステップS203)。
【0053】
情報作成部54は、分析装置6による静圧過不足情報の変更がなかった場合、各VAVコントローラ2から通知された静圧過不足情報をそのまま用いてトータル静圧過不足情報を作成する(図10ステップS204)。従来と同様に、情報作成部54は、各VAVコントローラ2から送られてくる静圧過不足情報の中に「静圧不足」が1つでもある場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧不足」とする。情報作成部54は、各VAVコントローラ2から送られてくる静圧過不足情報の中に「適正」と「静圧過剰」が混在する場合には、トータル静圧過不足情報を「適正」とする。情報作成部54は、各VAVコントローラ2から送られてくる静圧過不足情報が全て「静圧過剰」の場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧過剰」とする。
【0054】
また、情報作成部54は、分析装置6によって静圧過不足情報が変更された場合、変更された静圧過不足情報と、各VAVコントローラ2から通知された静圧過不足情報のうち分析装置6によって変更されていない静圧過不足情報とを用いて、トータル静圧過不足情報を作成する(図10ステップS205)。情報作成部54は、変更された静圧過不足情報と変更されていない静圧過不足情報の中に「静圧不足」が1つでもある場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧不足」とする。情報作成部54は、変更された静圧過不足情報と変更されていない静圧過不足情報の中に「適正」と「静圧過剰」が混在する場合には、トータル静圧過不足情報を「適正」とする。情報作成部54は、変更された静圧過不足情報と変更されていない静圧過不足情報が全て「静圧過剰」の場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧過剰」とする。
【0055】
空調機コントローラ5のファン回転数補正部55は、トータル静圧過不足情報に基づいて空調機3のファン回転数Fを補正する(図10ステップS206)。従来と同様に、ファン回転数補正部55は、トータル静圧過不足情報が「静圧不足」の場合、ファン回転数決定部52が決定したファン回転数Fをα%増加補正する(αは予め定められた正の実数)。ファン回転数補正部55は、トータル静圧過不足情報が「適正」の場合、ファン回転数決定部52が決定したファン回転数Fを現状維持する。ファン回転数補正部55は、トータル静圧過不足情報が「静圧過剰」の場合、ファン回転数決定部52が決定したファン回転数Fをα%減少補正する。
【0056】
空調機コントローラ5の風量制御部53は、ファン回転数決定部52によって決定されファン回転数補正部55によって必要に応じて補正されたファン回転数Fとなるように、空調機3のファン32を制御する(図10ステップS207)。こうして、空調機3から送出される給気の風量が制御される。
空調機コントローラ5は、以上のようなステップS200~S207の処理を空調が停止するまで(図10ステップS208においてYES)、一定時間毎に行う。なお、各空調機コントローラ5は、対応する空調機3毎に図10の処理を行う。したがって、各空調機コントローラ5は、同一の空調系統(同一の空調機3)に属するVAVユニット1およびVAVコントローラ2について図10の処理を行うことになる。
【0057】
図11は分析装置6の動作を説明するフローチャートである。分析装置6のデータ蓄積部60は、空調の動作中に、各VAVコントローラ2から通知された室内温度PVと静圧過不足情報と、室内温度設定値SPとを空調機コントローラ5から常時収集して蓄積する(図11ステップS300)。
【0058】
分析装置6の再判定部61は、各VAVコントローラ2から通知された最新の静圧過不足情報の再判定を行う。具体的には、再判定部61は、データ蓄積部60に蓄積されている最新のデータを取得する(図11ステップS301)。そして、再判定部61は、ステップS301で取得した最新の静圧過不足情報の中から「静圧不足」の静圧過不足情報を抽出する(図11ステップS302)。
【0059】
次に、再判定部61は、ステップS302で抽出した「静圧不足」の静圧過不足情報について再判定を行う(図11ステップS303)。ここでは説明を明確にするため、最新の静圧過不足情報が「静圧不足」のVAVユニットを1-i、VAVユニット1-iに対応する被制御エリアの最新の室内温度をPVi、室内温度設定値をSPi、VAVユニット1-iに対応する被制御エリアの第1の許容温度領域をA1i、第2の許容温度領域をA2iとする。
【0060】
再判定部61は、静圧過不足情報が「静圧不足」のVAVユニット1-iについて、室内温度設定値SPiと冷房時適正化室内温度上限と暖房時適正化室内温度下限とに基づいて、第1の許容温度領域A1iと第2の許容温度領域A2iとを設定する。そして、再判定部61は、室内温度PViが第1の許容温度領域A1iと第2の許容温度領域A2iのうち少なくとも一方の領域内であれば、「静圧不足」の静圧過不足情報を「適正」に変更すべきと判定する。また、再判定部61は、室内温度PViが第1の許容温度領域A1iと第2の許容温度領域A2iの領域外であれば、「静圧不足」の静圧過不足情報を変更すべきでないと判定する。再判定部61は、以上のような静圧過不足情報の再判定を「静圧不足」のVAVユニット1毎(被制御エリア毎)に行う。
【0061】
分析装置6の静圧過不足情報変更部62は、再判定部61によって「静圧不足」の静圧過不足情報が「適正」に変更すべきと判定された場合(図11ステップS304においてYES)、空調機コントローラ5が保持している同情報を「適正」に変更する(図11ステップS305)。また、静圧過不足情報変更部62は、「適正」に変更すべきと判定された静圧過不足情報が無い場合(ステップS304においてNO)、静圧過不足情報の変更が無いことを空調機コントローラ5に通知する(図11ステップS306)。
【0062】
上記のとおり、空調機コントローラ5の情報作成部54は、静圧過不足情報の変更がなかった場合、各VAVコントローラ2から通知された静圧過不足情報をそのまま用いてトータル静圧過不足情報を作成する(ステップS204)。また、情報作成部54は、静圧過不足情報が変更された場合、変更された静圧過不足情報と、各VAVコントローラ2から通知された静圧過不足情報のうち分析装置6によって変更されていない静圧過不足情報とを用いて、トータル静圧過不足情報を作成する(ステップS205)。
【0063】
分析装置6は、以上のようなステップS300~S306の処理を空調が停止するまで(図11ステップS307においてYES)、一定の周期毎に行う。なお、分析装置6は、空調機コントローラ5毎(空調機3毎)に図11の処理を行う。
【0064】
こうして、本実施例では、「静圧不足」の静圧過不足情報を減らすことができるので、ファン回転数の増加補正の回数を減らすことができ、省エネルギー、省コストを実現することができる。
【0065】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図12は本発明の第2の実施例に係るVAV空調システムの構成を示すブロック図である。本実施例のVAV空調システムは、VAVユニット1と、VAVコントローラ2と、空調機3と、給気ダクト4と、空調機コントローラ5と、中央システム7に設けられた分析装置6aとから構成される。
【0066】
VAVユニット1とVAVコントローラ2と空調機3と空調機コントローラ5の構成は第1の実施例と同じである。
図12に示すように、分析装置6aは、データ蓄積部60と、再判定部61aと、静圧過不足情報変更部62と、各被制御エリアの将来時刻における室内温度を予測する室内温度予測部63とを備えている。
【0067】
図13は分析装置6aの動作を説明するフローチャートである。分析装置6aのデータ蓄積部60は、空調の動作中に、各VAVコントローラ2から通知された室内温度PVと静圧過不足情報と、室内温度設定値SPと、各VAVコントローラ2から通知された要求風量viと、給気温度APVのデータを空調機コントローラ5から常時収集して蓄積する(図13ステップS300a)。
【0068】
分析装置6aの再判定部61aは、データ蓄積部60に蓄積されている最新のデータを取得する(図13ステップS301a)。再判定部61aは、ステップS301aで取得した最新の静圧過不足情報の中から「静圧不足」の静圧過不足情報と「適正」の静圧過不足情報とを抽出する(図13ステップS302a)。
【0069】
一方、室内温度予測部63は、被制御エリアの1ステップ先(所定時間後)の室内温度PV’を被制御エリア毎に予測する(図13ステップS308)。1ステップ先の室内温度PV’とは、現在から再判定周期が経過した後の室内温度PVであり、次の再判定時の室内温度PVである。
【0070】
室内温度予測部63は、図示しない外気温度センサが計測した最新の外気温度TOと、図示しない外気湿度センサが計測した最新の外気湿度HOと、ステップS301aで取得した最新の要求風量viと、ステップS301aで取得した被制御エリアの最新の室内温度PVと、ステップS301aで取得した最新の給気温度APVとに基づいて、被制御エリアの室内温度PV’を例えばニューラルネットワークにより予測する。
【0071】
室内温度予測部63には、外気温度TOと外気湿度HOと要求風量viと給気温度APVと室内温度PVと、1ステップ先の室内温度PV’との関係を被制御エリア毎にモデル化したニューラルネットワークが予め構築されている。ニューラルネットワークは、過去のデータ収集期間中に記録された時系列データのうち、外気温度TOの時系列データと外気湿度HOの時系列データと要求風量viの時系列データと給気温度APVの時系列データと室内温度PVの時系列データとをニューラルネットワークの入力変数とし、これら入力変数に対して1ステップ先の室内温度PV’の時系列データをニューラルネットワークの出力変数として、目的とする出力変数が得られるように事前に学習が行われている。なお、室内温度PV’の予測方法は、本実施例以外の方法を用いてもよい。
【0072】
次に、再判定部61aは、ステップS302aで抽出した「静圧不足」の静圧過不足情報と「適正」の静圧過不足情報について再判定を行う(図13ステップS303a)。ここでは説明を明確にするため、最新の静圧過不足情報が「静圧不足」のVAVユニットを1-i、VAVユニット1-iに対応する被制御エリアの最新の室内温度をPVi、室内温度設定値をSPi、VAVユニット1-iに対応する被制御エリアの第1の許容温度領域をA1i、第2の許容温度領域をA2i、VAVユニット1-iに対応する被制御エリアについて室内温度予測部63が予測した室内温度の予測値をPVi’とする。また、最新の静圧過不足情報が「適正」のVAVユニットを1-j、VAVユニット1-jに対応する被制御エリアの最新の室内温度をPVj、室内温度設定値をSPj、VAVユニット1-jに対応する被制御エリアの第1の許容温度領域をA1j、第2の許容温度領域をA2j、VAVユニット1-jに対応する被制御エリアについて室内温度予測部63が予測した室内温度の予測値をPVj’とする。
【0073】
再判定部61aは、静圧過不足情報が「静圧不足」のVAVユニット1-iについて、室内温度設定値SPiと冷房時適正化室内温度上限と暖房時適正化室内温度下限とに基づいて、第1の許容温度領域A1iと第2の許容温度領域A2iとを設定する。そして、再判定部61aは、室内温度PViと1ステップ先の予測値PVi’のうち少なくとも一方が、第1の許容温度領域A1iと第2の許容温度領域A2iのうち少なくとも一方の領域内であれば、「静圧不足」の静圧過不足情報を「適正」に変更すべきと判定する。また、再判定部61aは、室内温度PViと1ステップ先の予測値PVi’が第1の許容温度領域A1iと第2の許容温度領域A2iの領域外であれば、「静圧不足」の静圧過不足情報を変更すべきでないと判定する。
【0074】
また、再判定部61aは、静圧過不足情報が「適正」のVAVユニット1-jについて、室内温度設定値SPjと冷房時適正化室内温度上限と暖房時適正化室内温度下限とに基づいて、第1の許容温度領域A1jと第2の許容温度領域A2jとを設定する。そして、再判定部61aは、1ステップ先の室内温度の予測値PVj’が、第1の許容温度領域A1jと第2の許容温度領域A2jの領域外であれば、「適正」の静圧過不足情報を「静圧不足」に変更すべきと判定する。さらに、再判定部61aは、1ステップ先の予測値PVj’が第1の許容温度領域A1jと第2の許容温度領域A2jのうち少なくとも一方の領域内であれば、「適正」の静圧過不足情報を変更すべきでないと判定する。再判定部61aは、以上のような静圧過不足情報の再判定を「静圧不足」のVAVユニット1毎および「適正」のVAVユニット1毎に行う。
【0075】
図13のステップS304~S306の処理は第1の実施例で説明したとおりである。分析装置6aは、以上のようなステップS300a~S302a,S308,S303a,S304~S306の処理を空調が停止するまで(図13ステップS307においてYES)、一定の周期毎に行う。なお、分析装置6aは、空調機コントローラ5毎(空調機3毎)に図13の処理を行う。
【0076】
第1、第2の実施例では、各VAVコントローラ2は、対応する被制御エリアの室内温度と室内温度設定値とが一致するようにVAVユニット1の要求風量を算出し、要求風量を確保するようにVAVユニット1のダンパの開度を制御している。これに対して、各VAVコントローラ2が、対応する被制御エリアのCO2センサによって計測された室内CO2濃度とCO2濃度設定値とが一致するようにVAVユニット1の要求風量を算出し、要求風量を確保するようにVAVユニット1のダンパの開度を制御してもよい。
【0077】
このようなCO2濃度制御を行う場合は、許容CO2濃度領域として許容CO2濃度領域A1のみを用いる。許容CO2濃度領域A1は、室内CO2濃度と室内CO2濃度設定値との差が負の無限大からΔppm(正の所定濃度)までの領域である。第1の実施例の再判定部61は、静圧過不足情報が「静圧不足」のVAVユニット1-iについて、室内CO2濃度PViが許容CO2濃度領域A1i内であれば、「静圧不足」の静圧過不足情報を「適正」に変更すべきと判定する。また、再判定部61は、室内CO2濃度PViが許容CO2濃度領域A1i外であれば、「静圧不足」の静圧過不足情報を変更すべきでないと判定すればよい(図11ステップS303)。
【0078】
また、CO2濃度制御を行う場合、第2の実施例の室内温度予測部63の代わりに、各被制御エリアの将来時刻における室内CO2濃度を予測する室内CO2濃度予測部を設けるようにすればよい。CO2濃度の予測については、例えば自己回帰モデル、ニューラルネットワークなどを用いる。
【0079】
第2の実施例の再判定部61aは、静圧過不足情報が「静圧不足」のVAVユニット1-iについて、室内CO2濃度PViと1ステップ先の室内CO2濃度予測値PVi’のうち少なくとも一方が、許容CO2濃度領域A1i内であれば、「静圧不足」の静圧過不足情報を「適正」に変更すべきと判定する。また、再判定部61aは、室内CO2濃度PViと1ステップ先の室内CO2濃度予測値PVi’が第1の許容温度領域A1i外であれば、「静圧不足」の静圧過不足情報を変更すべきでないと判定すればよい(図13ステップS303a)。
【0080】
また、再判定部61aは、静圧過不足情報が「適正」のVAVユニット1-jについて、1ステップ先の室内CO2濃度予測値PVi’が許容CO2濃度領域A1j外であれば、「適正」の静圧過不足情報を「静圧不足」に変更すべきと判定する。さらに、再判定部61aは、1ステップ先の室内CO2濃度予測値PVi’が許容CO2濃度領域A1j内であれば、「適正」の静圧過不足情報を変更すべきでないと判定すればよい(図13ステップS303a)。
【0081】
第1、第2の実施例のVAVコントローラ2と空調機コントローラ5と分析装置6,6aの各々は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図14に示す。コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インタフェース装置(I/F)302とを備えている。
【0082】
VAVコントローラ2の場合、I/F302には、VAVユニット1と空調機コントローラ5と被制御エリアの温度センサ等が接続される。空調機コントローラ5の場合、I/F302には、空調機3とVAVコントローラ2と分析装置6,6a等が接続される。分析装置6,6aの場合、I/F302には、空調機コントローラ5等が接続される。本発明の空調制御方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。各装置のCPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、VAV空調システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…VAVユニット、2…VAVコントローラ、3…空調機、4…給気ダクト、5…空調機コントローラ、6,6a…分析装置、7…中央システム、20…要求風量算出部、21…風量制御部、22…要求風量通知部、23…ステータス通知部、24…室内温度通知部、30…冷却コイル、31…加熱コイル、32…ファン、50…操作量出力部、51…風量算出部、52…ファン回転数決定部、53…風量制御部、54…情報作成部、55…ファン回転数補正部、60…データ蓄積部、61,61a…再判定部、62…静圧過不足情報変更部、63…室内温度予測部。
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