(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175776
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】VAV空調システムおよび空調制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20221117BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20221117BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082463
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】今西 祐
(72)【発明者】
【氏名】関根 秀太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260AB07
3L260BA41
3L260CB44
3L260EA28
3L260FB44
3L260FC06
(57)【要約】
【課題】ファン回転数を低減し、省エネルギー、省コストを実現する。
【解決手段】VAV空調システムの空調機コントローラ5は、各VAVユニット1の静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報を作成し、トータル静圧過不足情報に基づいて空調機3のファン回転数を補正する。空調機コントローラ5は、静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニット1が第1の台数以上の場合にトータル静圧過不足情報を静圧不足とし、静圧不足を示すVAVユニット1が第1の台数未満で、かつ静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが第2の台数未満の場合にトータル静圧過不足情報を適正とし、静圧不足を示すVAVユニット1が第1の台数未満で、かつ静圧過剰を示すVAVユニットが第2の台数以上の場合にトータル静圧過不足情報を静圧過剰とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機と、
被制御エリア毎に設けられたVAVユニットと、
被制御エリアの負荷状況に応じて決まる要求風量に応じて、前記VAVユニットのダンパの開度を被制御エリア毎に制御するように構成された第1の制御部と、
前記ダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出するように構成されたステータス通知部と、
各VAVユニットの前記要求風量の値を合算した総要求風量に基づいて前記空調機のファン回転数を決定するように構成されたファン回転数決定部と、
各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報を作成するように構成された情報作成部と、
前記トータル静圧過不足情報に基づいて前記空調機のファン回転数を補正するように構成されたファン回転数補正部と、
前記ファン回転数決定部によって決定され前記ファン回転数補正部によって補正されたファン回転数となるように、前記空調機のファンを制御するように構成された第2の制御部とを備え、
前記情報作成部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数以上(第1の台数は1以上かつ前記VAVユニットの全数以下の整数)の場合に前記トータル静圧過不足情報を静圧不足とし、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ前記静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが第2の台数未満(第2の台数は1以上かつ前記VAVユニットの全数以下の整数)の場合に前記トータル静圧過不足情報を適正とし、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ前記静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが前記第2の台数以上の場合に前記トータル静圧過不足情報を静圧過剰とすることを特徴とするVAV空調システム。
【請求項2】
請求項1記載のVAV空調システムにおいて、
前記第1の台数と前記第2の台数を任意に設定可能な設定変更受付部をさらに備えることを特徴とするVAV空調システム。
【請求項3】
被制御エリアの負荷状況に応じて決まる要求風量に応じて、VAVユニットのダンパの開度を被制御エリア毎に制御する第1のステップと、
前記ダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出する第2のステップと、
各VAVユニットの前記要求風量の値を合算した総要求風量に基づいて、前記VAVユニットに給気を供給する空調機のファン回転数を決定する第3のステップと、
各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報を作成する第4のステップと、
前記トータル静圧過不足情報に基づいて前記空調機のファン回転数を補正する第5のステップと、
前記第3のステップで決定され前記第5のステップで補正されたファン回転数となるように、前記空調機のファンを制御する第6のステップとを含み、
前記第4のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数以上(第1の台数は1以上かつ前記VAVユニットの全数以下の整数)の場合に前記トータル静圧過不足情報を静圧不足とし、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ前記静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが第2の台数未満(第2の台数は1以上かつ前記VAVユニットの全数以下の整数)の場合に前記トータル静圧過不足情報を適正とし、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ前記静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが前記第2の台数以上の場合に前記トータル静圧過不足情報を静圧過剰とするステップを含むことを特徴とする空調制御方法。
【請求項4】
請求項3記載の空調制御方法において、
前記第1の台数と前記第2の台数を任意に設定可能な第7のステップをさらに含むことを特徴とする空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間の熱負荷の変動に応じて給気吹出量を変えることにより冷暖房能力を調節するVAV空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、VAV(Variable Air Volume)空調システムでは、被制御エリア毎に可変給気量調節ユニット(VAVユニット)を設け、このVAVユニットからの給気吹出量をVAVコントローラによって被制御エリアの負荷状況に応じて制御するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
VAV空調システムにおける変風量制御では、各VAVユニットの要求風量に応じて風量(ファン回転数)を制御できるインバータ方式の空調機が用いられる。ファン回転数はインバータ周波数に比例する。
【0004】
空調機のファン回転数Fは、各VAVユニットの要求風量viを合算した総要求風量Σviから次式によって求められる(
図10)。
F=a×Σvi+b (ただし、Vmin≦Σvi≦Vmax) ・・・(1)
F=Fmin(Σvi<Vmin) ・・・(2)
F=Fmax(Σvi>Vmax) ・・・(3)
【0005】
式(1)におけるa,bは予め規定された定数である。式(2)は総要求風量Σviが下限値Vminより小さい場合、ファン回転数Fが下限値Fminに制限されることを意味している。式(3)は総要求風量Σviが上限値Vmaxより大きい場合、ファン回転数Fが上限値Fmaxに制限されることを意味している。
【0006】
また、VAV空調システムでは、各VAVユニットを制御するVAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報(ステータス)に基づいてトータル静圧過不足情報が作成され、トータル静圧過不足情報に基づいて、ファン回転数Fが増加・減少補正される。
【0007】
各VAVコントローラは、それぞれが制御するVAVユニットのダンパ開度に応じて、「静圧不足」、「適正」、「静圧過剰」のうちいずれかの静圧過不足情報を出力する。空調制御装置は、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中に「静圧不足」が1つでもある場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧不足」とする。空調制御装置は、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中に「適正」と「静圧過剰」が混在する場合には、トータル静圧過不足情報を「適正」とする。空調制御装置は、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報が全て「静圧過剰」の場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧過剰」とする。
【0008】
空調制御装置は、トータル静圧過不足情報が「静圧不足」の場合、空調機のファン回転数Fをα%増加補正する(αは規定値)。空調制御装置は、トータル静圧過不足情報が「適正」の場合、ファン回転数Fを現状維持する。空調制御装置は、トータル静圧過不足情報が「静圧過剰」の場合、ファン回転数Fをα%減少補正する。
【0009】
各VAVコントローラは、室内温度と室内温度設定値とに基づいて、
図11に示すように要求風量を求める。
図11の例では、冷房時に、室内温度が冷房時室内温度設定値より高い場合、
図11の特性に応じて要求風量が増加し、室内温度が冷房時室内温度設定値以下の場合、要求風量が最小風量となる。また、暖房時に、室内温度が暖房時室内温度設定値より低い場合、
図11の特性に応じて要求風量が増加し、室内温度が暖房時室内温度設定値以上の場合、要求風量が最小風量となる。
【0010】
VAVコントローラは、決定した要求風量を確保するように、VAVユニット内のダンパの開度を制御する。具体的には、VAVコントローラは、VAVユニット内の風量センサによって計測された計測風量のフィードバックを受けて、要求風量と計測風量とが等しくなるようにダンパ開度を制御する。
【0011】
図12に示すように、従来技術では、全てのVAVユニットが「静圧過剰」となったときにはじめてファン回転数が減少補正される。そのため、一度でもファン回転数の増加補正が働くと、全てのVAVユニットが「静圧過剰」とならない限りファン回転数の減少補正が働かない。したがって、ファン回転数を減らせる可能性があるにもかかわらず、過度に高いファン回転数で運転し続けてしまい、増エネルギー、増コストになるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ファン回転数を低減し、省エネルギー、省コストを実現することができるVAV空調システムおよび空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のVAV空調システムは、空調機と、被制御エリア毎に設けられたVAVユニットと、被制御エリアの負荷状況に応じて決まる要求風量に応じて、前記VAVユニットのダンパの開度を被制御エリア毎に制御するように構成された第1の制御部と、前記ダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出するように構成されたステータス通知部と、各VAVユニットの前記要求風量の値を合算した総要求風量に基づいて前記空調機のファン回転数を決定するように構成されたファン回転数決定部と、各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報を作成するように構成された情報作成部と、前記トータル静圧過不足情報に基づいて前記空調機のファン回転数を補正するように構成されたファン回転数補正部と、前記ファン回転数決定部によって決定され前記ファン回転数補正部によって補正されたファン回転数となるように、前記空調機のファンを制御するように構成された第2の制御部とを備え、前記情報作成部は、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数以上(第1の台数は1以上かつ前記VAVユニットの全数以下の整数)の場合に前記トータル静圧過不足情報を静圧不足とし、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ前記静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが第2の台数未満(第2の台数は1以上かつ前記VAVユニットの全数以下の整数)の場合に前記トータル静圧過不足情報を適正とし、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ前記静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが前記第2の台数以上の場合に前記トータル静圧過不足情報を静圧過剰とすることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のVAV空調システムの1構成例は、前記第1の台数と前記第2の台数を任意に設定可能な設定変更受付部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の空調制御方法は、被制御エリアの負荷状況に応じて決まる要求風量に応じて、VAVユニットのダンパの開度を被制御エリア毎に制御する第1のステップと、前記ダンパの開度に基づいて静圧過不足情報をVAVユニット毎に送出する第2のステップと、各VAVユニットの前記要求風量の値を合算した総要求風量に基づいて、前記VAVユニットに給気を供給する空調機のファン回転数を決定する第3のステップと、各VAVユニットの前記静圧過不足情報を統合したトータル静圧過不足情報を作成する第4のステップと、前記トータル静圧過不足情報に基づいて前記空調機のファン回転数を補正する第5のステップと、前記第3のステップで決定され前記第5のステップで補正されたファン回転数となるように、前記空調機のファンを制御する第6のステップとを含み、前記第4のステップは、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数以上(第1の台数は1以上かつ前記VAVユニットの全数以下の整数)の場合に前記トータル静圧過不足情報を静圧不足とし、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ前記静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが第2の台数未満(第2の台数は1以上かつ前記VAVユニットの全数以下の整数)の場合に前記トータル静圧過不足情報を適正とし、前記静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ前記静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが前記第2の台数以上の場合に前記トータル静圧過不足情報を静圧過剰とするステップを含むことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の空調制御方法の1構成例は、前記第1の台数と前記第2の台数を任意に設定可能な第7のステップをさらに含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数以上の場合にトータル静圧過不足情報を静圧不足とし、静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが第2の台数未満の場合にトータル静圧過不足情報を適正とし、静圧過不足情報が静圧不足を示すVAVユニットが第1の台数未満で、かつ静圧過不足情報が静圧過剰を示すVAVユニットが第2の台数以上の場合にトータル静圧過不足情報を静圧過剰とすることにより、ファン回転数を低減し、省エネルギー、省コストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明におけるトータル静圧過不足情報の決定方法およびファン回転数補正の決定方法を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係るVAV空調システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係るVAV空調システムのVAVコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例に係るVAV空調システムの空調機の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例に係るVAV空調システムの空調機コントローラの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例に係るVAV空調システムのVAVコントローラの動作を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の実施例に係るVAV空調システムの空調機コントローラの動作を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の実施例に係るVAV空調システムの空調機コントローラの設定変更受付部の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の実施例に係るVAV空調システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、空調機のファン回転数と各VAVユニットの総要求風量との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、室内温度と室内温度設定値とに基づく要求風量の決定方法を説明する図である。
【
図12】
図12は、従来技術におけるトータル静圧過不足情報の決定方法およびファン回転数補正の決定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の原理]
従来技術では、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中に「適正」と「静圧過剰」が混在する場合には、トータル静圧過不足情報を「適正」とし、ファン回転数を現状維持するようにしていた。
【0021】
一方、本発明では、「静圧過剰」が一定割合以上もしくは指定台数以上であれば、ファン回数数を減少補正する。さらに、「静圧不足」が一定割合以上もしくは指定台数以上であれば、ファン回数数を増加補正する(
図1)。
【0022】
すなわち、本発明では、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中に「静圧不足」がL台以上(Lは1以上かつVAVユニットの全数以下の整数)ある場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧不足」とする。また、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中の「静圧不足」がL台未満、かつ各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中の「静圧過剰」がK台未満(Kは1以上かつVAVユニットの全数以下の整数)の場合には、トータル静圧過不足情報を「適正」とする。また、各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中の「静圧不足」がL台未満、かつ各VAVコントローラから送られてくる静圧過不足情報の中の「静圧過剰」がK台以上の場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧過剰」とする。
【0023】
これにより、本発明では、過度に高いファン回転数で運転することが無くなり、必要最小限のファン回転数に抑制することができる。本発明では、従来技術のようにL=1としてもよいが、Lを上げることにより、「静圧不足」のVAVユニットが多少存在してもファン回転数を現状維持もしくは減少補正する積極的な省エネルギーを選択することができる。
【0024】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図2は本発明の実施例に係るVAV空調システムの構成を示すブロック図である。VAV空調システムは、被制御エリア(空調ゾーン)毎に設けられ、被制御エリアへ供給する給気の量を被制御エリア毎に制御する可変給気量調節ユニットであるVAVユニット1と、VAVユニット1毎に設けられ、対応するVAVユニット1を制御するVAVコントローラ2と、空調機3と、空調機3からの給気を各VAVユニット1へ供給する給気ダクト4と、空調機3を制御する空調機コントローラ5と、システム全体を制御する中央システム6とから構成される。
【0025】
図3はVAVコントローラ2の構成を示すブロック図である。各VAVコントローラ2は、対応する被制御エリアの室内温度と被制御エリアの居住者または空調システムの管理者によって設定された室内温度設定値との偏差に基づいてVAVユニット1の要求風量を算出する要求風量算出部20と、要求風量算出部20によって算出された要求風量を確保するように、VAVユニット1の給気吹出量を調節するダンパの開度を制御する風量制御部21(第1の制御部)と、要求風量の値を空調機コントローラ5に通知する要求風量通知部22と、被制御エリア毎の静圧過不足情報を空調機コントローラ5に対して送出するステータス通知部23とを備えている。
【0026】
図4は空調機3の構成を示すブロック図である。空調機3は、冷却コイル30と、加熱コイル31と、ファン32とを備えている。なお、
図4に示した構成は1例であって、
図4以外の構成であってもよいことは言うまでもない。
【0027】
図5は空調機コントローラ5の構成を示すブロック図である。空調機コントローラ5は、給気温度と給気温度設定値との偏差に基づいて空調機3を制御するための操作量を出力する操作量出力部50と、各VAVコントローラ2から通知された要求風量の値からシステム全体の総要求風量の値を算出する風量算出部51と、算出された総要求風量の値に基づいて空調機3のファン回転数を決定するファン回転数決定部52と、空調機3のファン32を制御する風量制御部53(第2の制御部)と、各VAVコントローラ2から通知された静圧過不足情報に基づいてトータル静圧過不足情報を作成する情報作成部54と、トータル静圧過不足情報に基づいて空調機3のファン回転数を補正するファン回転数補正部55と、情報作成部54に設定されているK(第2の台数)、L(第1の台数)をユーザの要求に応じて任意に設定可能な設定変更受付部56とを備えている。
【0028】
VAVユニット1とVAVコントローラ2とは、被制御エリア毎に設けられる。空調機3によって冷却または加熱された空気(給気)は、給気ダクト4を介して各被制御エリアのVAVユニット1へ供給され、VAVユニット1を通過して各被制御エリアへ供給されるようになっている。VAVユニット1内には図示しないダンパが設けられており、VAVユニット1を通過する給気の量を調整できるようになっている。
【0029】
次に、本実施例の動作について説明する。
図6はVAVコントローラ2の動作を説明するフローチャート、
図7は空調機コントローラ5の動作を説明するフローチャートである。
【0030】
VAVコントローラ2の要求風量算出部20は、対応する被制御エリアの熱負荷状況に応じて、制御対象のVAVユニット1の要求風量viを算出する(
図6ステップS100)。具体的には、要求風量算出部20は、対応する被制御エリアの室内温度PVと被制御エリアの居住者または空調システムの管理者によって設定された室内温度設定値SPとが一致するように、VAVユニット1の要求風量viを算出する。
【0031】
VAVコントローラ2の要求風量通知部22は、要求風量算出部20が算出した要求風量viの値を空調機コントローラ5に通知する(
図6ステップS101)。
VAVコントローラ2の風量制御部21は、要求風量算出部20が算出した要求風量を確保するように、制御対象のVAVユニット1内のダンパ(不図示)の開度を制御する(
図6ステップS102)。
【0032】
VAVコントローラ2のステータス通知部23は、対応する被制御エリアの現在の冷暖房の制御状態を示す静圧過不足情報を空調機コントローラ5に対して送出する(
図6ステップS103)。ステータス通知部23は、例えばVAVユニット1のダンパ開度に基づいて、「静圧不足」、「適正」、「静圧過剰」のうちいずれかの静圧過不足情報を作成する。具体的には、ステータス通知部23は、VAVユニット1のダンパ開度が全開であれば、「静圧不足」とする。ステータス通知部23は、VAVユニット1のダンパ開度が全開でなく、所定開度(例えば85%)以上であれば、「適正」とする。ステータス通知部23は、VAVユニット1のダンパ開度が所定開度未満であれば、「静圧過剰」とする。
【0033】
VAVコントローラ2とVAVユニット1との組は、以上のようなステップS100~S103の処理を空調が停止するまで(
図6ステップS104においてYES)、一定時間毎に行う。
【0034】
一方、空調機コントローラ5の操作量出力部50は、給気温度と給気温度設定値とが一致するように、所定の制御演算アルゴリズム(例えばPID)によって操作量を算出して空調機3に出力する(
図7ステップS200)。こうして、空調機3の冷却コイル30または加熱コイル31に供給される熱媒(冷水または温水)の量が操作量に応じて調節され、給気温度が制御される。
【0035】
空調機コントローラ5の風量算出部51は、各VAVコントローラ2から通知された要求風量viの値を合算した総要求風量Σviを算出する(
図7ステップS201)。
空調機コントローラ5のファン回転数決定部52は、総要求風量Σviの値に基づいて空調機3のファン回転数Fを決定する(
図7ステップS202)。ファン回転数決定部52は、上記の式(1)~式(3)に示した関係式に基づいて、総要求風量Σviに対応するファン回転数Fを決定する。
【0036】
空調機コントローラ5の情報作成部54は、各VAVコントローラ2から通知された静圧過不足情報に基づいてトータル静圧過不足情報を作成する(
図7ステップS203)。本実施例では、情報作成部54は、各VAVコントローラ2から送られてくる静圧過不足情報の中に「静圧不足」のVAVコントローラ2がL台以上(Lは1以上かつVAVユニット1の全数以下の整数)ある場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧不足」とする。
【0037】
また、情報作成部54は、「静圧不足」のVAVコントローラ2がL台未満で、かつ「静圧過剰」のVAVコントローラ2がK台未満(Kは1以上かつVAVユニット1の全数以下の整数)の場合には、トータル静圧過不足情報を「適正」とする。また、情報作成部54は、「静圧不足」のVAVコントローラ2がL台未満で、かつ「静圧過剰」のVAVコントローラ2がK台以上の場合には、トータル静圧過不足情報を「静圧過剰」とする。
【0038】
空調機コントローラ5のファン回転数補正部55は、トータル静圧過不足情報に基づいて空調機3のファン回転数Fを補正する(
図7ステップS204)。従来と同様に、ファン回転数補正部55は、トータル静圧過不足情報が「静圧不足」の場合、ファン回転数決定部52が決定したファン回転数Fをα%増加補正する(αは予め定められた正の実数)。ファン回転数補正部55は、トータル静圧過不足情報が「適正」の場合、ファン回転数決定部52が決定したファン回転数Fを現状維持する。ファン回転数補正部55は、トータル静圧過不足情報が「静圧過剰」の場合、ファン回転数決定部52が決定したファン回転数Fをα%減少補正する。
【0039】
空調機コントローラ5の風量制御部53は、ファン回転数決定部52によって決定されファン回転数補正部55によって必要に応じて補正されたファン回転数Fとなるように、空調機3のファン32を制御する(
図7ステップS205)。こうして、空調機3から送出される給気の風量が制御される。
空調機コントローラ5は、以上のようなステップS200~S205の処理を空調が停止するまで(
図7ステップS206においてYES)、一定時間毎に行う。なお、各空調機コントローラ5は、対応する空調機3毎に
図7の処理を行う。したがって、各空調機コントローラ5は、同一の空調系統(同一の空調機3)に属するVAVユニット1およびVAVコントローラ2について
図7の処理を行うことになる。また、上記のVAVコントローラ2の台数およびVAVユニット1の台数は、同一の空調系統(同一の空調機3)に属する範囲内での台数となる。
【0040】
こうして、本実施例では、ファン回転数Fを低減し、省エネルギー、省コストを実現することができる。
【0041】
上記の例では、K,Lの値を固定としたが、本実施例では、空調機コントローラ5の設定変更受付部56によってK,Lの値を変更することが可能である。
図8は設定変更受付部56の動作を説明するフローチャートである。設定変更受付部56は、空調機コントローラ5の入力装置(不図示)を操作する管理者等のユーザから設定変更の要求があったときに(
図8ステップS300においてYES)、ユーザからの要求を受け付ける(
図8ステップS301)。
【0042】
そして、設定変更受付部56は、情報作成部54に設定されているK,Lの値を、ユーザから指定されたK,Lの値に更新する(
図8ステップS302)。上記のとおり、Kは1以上かつVAVユニット1の全数以下、Lは1以上かつVAVユニット1の全数以下の範囲で設定可能である。
こうして、本実施例では、K,Lの値を任意に変更することができ、温熱環境の快適性と省エネルギー性能のバランスを必要に応じて変更することができる。
【0043】
本実施例のVAVコントローラ2と空調機コントローラ5の各々は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図9に示す。コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インタフェース装置(I/F)302とを備えている。
【0044】
VAVコントローラ2の場合、I/F302には、VAVユニット1と空調機コントローラ5と被制御エリアの温度センサ等が接続される。空調機コントローラ5の場合、I/F302には、空調機3とVAVコントローラ2と中央システム6等が接続される。本発明の空調制御方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。各装置のCPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、VAV空調システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…VAVユニット、2…VAVコントローラ、3…空調機、4…給気ダクト、5…空調機コントローラ、6…中央システム、20…要求風量算出部、21…風量制御部、22…要求風量通知部、23…ステータス通知部、30…冷却コイル、31…加熱コイル、32…ファン、50…操作量出力部、51…風量算出部、52…ファン回転数決定部、53…風量制御部、54…情報作成部、55…ファン回転数補正部、56…設定変更受付部。