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特開2022-175815フィジカルディスタンス誘発装置、および、フィジカルディスタンス誘発システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175815
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】フィジカルディスタンス誘発装置、および、フィジカルディスタンス誘発システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20221117BHJP
   G08B 5/22 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G08B5/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082524
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 竜也
(72)【発明者】
【氏名】福原 聖人
(72)【発明者】
【氏名】下出 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安野 瑞起
(72)【発明者】
【氏名】大石 諸兄
(72)【発明者】
【氏名】桑田 純一
(72)【発明者】
【氏名】大稔 真斗
【テーマコード(参考)】
5C083
5E555
【Fターム(参考)】
5C083AA01
5C083BB12
5C083DD09
5C083JJ03
5C083JJ55
5E555AA46
5E555AA56
5E555AA74
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC14
5E555CA46
5E555DA03
5E555DA23
5E555DA27
5E555DB51
5E555DC85
5E555DD08
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】人が多く集まる場所で列になる場面において、適切なフィジカルディスタンスが保たれるように行動を促す。
【解決手段】フィジカルディスタンス誘発装置2は、対象領域内の人の位置を測位するTOFセンサ1と、対象領域に所定間隔で線上に配置された複数のスピーカ42a~42dと、対象領域に、列の立ち位置を誘導するマーカおよび移動方向を誘導するマーカの両方、または列の立ち位置を誘導するマーカを表示するプロジェクタ3と、測位部が検知した人に対して、スピーカ42a~42dの鳴動とプロジェクタ3によるマーカの表示により、他人と所定間隔を保ちつつ移動または停止するように誘導する制御部21と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域に居る人の位置を測位する測位部と、
前記対象領域に所定間隔で線上に配置された複数のスピーカと、
前記対象領域に、列の立ち位置を誘導するマーカおよび移動方向を誘導するマーカの両方、または列の立ち位置を誘導するマーカを表示する投影装置と、
前記測位部が検知した人に対して、前記スピーカの鳴動と前記投影装置によるマーカの表示により、他人と所定間隔を保ちつつ移動または停止するように誘導する制御部と、
を備えることを特徴とするフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項2】
前記スピーカは、前記列の各立ち位置に対応して配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記測位部により前記対象領域に新たな人の進入が検知された場合、前記列の立ち位置に向けて、第1コンテンツで前記スピーカを順次鳴動させると共に、前記投影装置により前記立ち位置に目標マーカを表示し、前記立ち位置に向けて移動誘発マーカを動かす表示を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記測位部により、前記列の立ち位置に人が検知された場合、前記投影装置により、当該立ち位置に停止誘発マーカを表示する、
ことを特徴とする請求項3に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記測位部により前記立ち位置に人が検知された場合、前記投影装置により、当該立ち位置の前記停止誘発マーカの形状を繰り返し変化させる、
ことを特徴とする請求項4に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記測位部により前記立ち位置に人が検知された場合、前記第1コンテンツとは異なる第2コンテンツで前記スピーカを鳴動させる、
ことを特徴とする請求項3に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記測位部により前記列の立ち位置に人が検知され、かつ前記測位部により前記対象領域に新たな人が検知された場合、当該列から所定間隔だけ後方に離間した新たな立ち位置に向けて、前記第1コンテンツで前記スピーカを順次鳴動させると共に、前記投影装置により、前記新たな立ち位置に目標マーカを表示し、前記新たな立ち位置に向けて移動誘発マーカを動かす表示を行う、
ことを特徴とする請求項4に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記測位部により前記列の立ち位置に人が検知され、かつ前記測位部により前記対象領域に新たな人が検知された場合、前記投影装置により、前記立ち位置を示す停止誘発マーカの周囲に、前記立ち位置に検知された人と同じグループの人のための目標地点を示すマーカを表示する、
ことを特徴とする請求項5に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記測位部により前記列の立ち位置に複数の人が検知された場合、前記投影装置により、前記立ち位置に表示された停止誘発マーカを拡大する、
ことを特徴とする請求項5に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記測位部により前記列の立ち位置に複数の人が検知された場合、前記投影装置により、前記立ち位置を示す停止誘発マーカを拡大して表示すると共に、当該立ち位置の後方の立ち位置を示す停止誘発マーカまたは目標マーカを順次後方にずらして表示する、
ことを特徴とする請求項9に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項11】
前記制御部は、人が検知されていた第1立ち位置から人が検知されなくなり、かつ、当該第1立ち位置の後方の第2立ち位置に人が検知された場合、前記第1立ち位置に向けて、第1コンテンツで前記スピーカを順次鳴動させると共に、前記投影装置により前記第1立ち位置に目標マーカを表示し、前記第1立ち位置に向けて移動誘発マーカを動かす表示を行う、
ことを特徴とする請求項8に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項12】
前記スピーカは、所定方向に音声の指向性をもつ、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項13】
対象領域に居る人の位置を測位する測位部と、
前記対象領域に所定間隔で直線上に配置された複数のスピーカと、
前記対象領域を撮影する撮影装置と、
前記対象領域の映像に重畳して、列の立ち位置を誘導するマーカと移動方向を誘導するマーカ、または立ち位置を誘導するマーカを表示する表示装置と、
前記測位部が検知した人に対して、前記スピーカの鳴動と前記表示装置によるマーカの表示により、他人と所定間隔を保ちつつ移動または停止するように誘導する制御部と、
を備えることを特徴とするフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項14】
対象領域に居る人の位置を測位する測位部と、
前記対象領域を撮影する撮影部、および、前記対象領域の映像に重畳して立ち位置と移動方向、または立ち位置を誘導するマーカを表示する表示部を備えた端末装置と、
前記測位部が検知した人に対して、前記端末装置の表示部に重畳表示されたマーカにより、他人と所定間隔を保ちつつ移動または停止するように誘導する制御部と、
を備えることを特徴とするフィジカルディスタンス誘発装置。
【請求項15】
対象領域に居る人の位置を測位する測位部と、
前記対象領域に所定間隔で直線上に配置された複数のスピーカと、
前記対象領域に、列の立ち位置を誘導するマーカと移動方向を誘導するマーカ、または立ち位置を誘導するマーカを表示する投影装置と、
前記測位部が検知した人に対して、前記スピーカの鳴動と前記投影装置によるマーカの表示により、他人と所定間隔を保ちつつ移動または停止するように誘導する制御装置と、
を備えることを特徴とするフィジカルディスタンス誘発システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィジカルディスタンス誘発装置、および、フィジカルディスタンス誘発システムに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的なCOVID-19(Coronavirus Disease-19)の流行により、感染症に強い社会の実現と経済活動の両立が求められている。感染経路は主に飛沫感染・接触感染であり、空気(飛沫核)感染の可能性も示唆されている。COVID-19の感染対策として、「2m以上の物理的距離の維持」、「手指消毒」、「室内の換気」が有効な対策とされている。
一般的に混雑が生じる場所の例として、待ち行列がある。待ち行列においては、床面に所定間隔の足跡サインのステッカーを貼って、人々の物理的距離を維持させることが行われている。
【0003】
特許文献1には、待ち行列の所定の誘導範囲に人が入った場合、当該人が所持する端末装置に、待ち行列の並ぶべき場所に誘導するための情報を送信することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-109395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、床面の足跡サインによる誘導では、感染リスクを鑑みた他人との間隔を維持することが困難な場合がある。フィジカルな足跡サインは、あくまで「1人」を想定した距離になっているが、実際は、家族連れなど複数人で並ぶことが多く、フィジカルディスタンシングが取れていないことが多い。
【0006】
更に床面の足跡サインには、列の最後尾を誘導する機能がない。特許文献1には、待ち行列並ぶべき場所に誘導することが記載されているが、人々の物理的距離を維持させることは考慮されていない。また、最前列の人が離脱したときには列を順次詰めてゆく必要があるが、床面の足跡サインや特許文献1に記載の発明は、このような場合の誘導機能を有していない。
【0007】
そこで、本発明は、人が多く集まる場所で列になる場面において、適切なフィジカルディスタンスが保たれるように行動を促すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明のフィジカルディスタンス誘発装置は、対象領域内の人の位置を測位する測位部と、前記対象領域に所定間隔で線上に配置された複数のスピーカと、前記対象領域に、列の立ち位置を誘導するマーカおよび移動方向を誘導するマーカの両方、または列の立ち位置を誘導するマーカを表示する投影装置と、前記測位部が検知した人に対して、前記スピーカの鳴動と前記投影装置によるマーカの表示により、他人と所定間隔を保ちつつ移動または停止するように誘導する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のフィジカルディスタンス誘発システムは、対象領域内の人の位置を測位する測位部と、前記対象領域に所定間隔で直線上に配置された複数のスピーカと、前記対象領域に、列の立ち位置を誘導するマーカと移動方向を誘導するマーカ、または立ち位置を誘導するマーカを表示する投影装置と、前記測位部が検知した人に対して、前記スピーカの鳴動と前記投影装置によるマーカの表示により、他人と所定間隔を保ちつつ移動または停止するように誘導する制御装置と、を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人が多く集まる場所で列になる場面において、適切なフィジカルディスタンスが保たれるように行動を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係るフィジカルディスタンス誘発装置の構成図である。
図2】フィジカルディスタンス誘発装置の概略のモード遷移図である。
図3】対象領域に誰もいない状態を示す図である。
図4】対象領域に人が進入した状態を示す図である。
図5A】対象領域に人が進入した場合における音と映像を示す図である。
図5B】対象領域に人が進入した場合における音と映像を示す図である。
図5C】対象領域に人が進入した場合における音と映像を示す図である。
図6】停止位置に人が留まった状態を示す図である。
図7】停止位置に人が留まった状態におけるマーカ表示を示す図である。
図8A】対象領域に人が進入した場合における音と映像を示す図である。
図8B】対象領域に人が進入した場合における音と映像を示す図である。
図8C】対象領域に人が進入した場合における音と映像を示す図である。
図9】先頭の停止位置に2人が留まった状態を示す図である。
図10】先頭と2番目の停止位置にそれぞれ1人が留まった状態を示す図である。
図11A】先頭の停止位置から人が離脱した場合における音と映像を示す図である。
図11B】先頭の停止位置から人が離脱した場合における音と映像を示す図である。
図11C】先頭の停止位置から人が離脱した場合における音と映像を示す図である。
図12】第2の実施形態に係るフィジカルディスタンス誘発装置の構成図である。
図13】対象領域に誰もいない状態を示す図である。
図14】対象領域に人が進入した状態を示す図である。
図15】停止位置に人が留まった状態を示す図である。
図16】変形例における対象領域を示す図である。
図17】前に進んでよい場合のモニタ表示画面である。
図18】その場に留まらせる場合のモニタ表示画面である。
図19】第3の実施形態に係るフィジカルディスタンス誘発装置の構成図である。
図20】停止位置に人が留まった状態を示す図である。
図21】前に進んでよい場合の端末装置の表示画面である。
図22】その場に留まらせる場合の端末装置の表示画面である。
図23】フィジカルディスタンス誘発装置と端末装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。本発明は、人が多く集まる場所(屋内)で列になる場面において、家族連れなど必ずしも距離を取る必要のない複数人が並ぶ状況でも、適切なフィジカルディスタンスが保たれるように行動を促すための装置およびシステムに関するものである。
【0013】
《第1の実施形態》
第1の実施形態は、センサの出力結果からプロジェクタで情報を表示し、必要に応じてスピーカを使用して音で誘導して、人の行動変容を促すものである。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係るフィジカルディスタンス誘発装置2の構成図である。
フィジカルディスタンス誘発装置2は、TOF(Time of Flight)センサ1と、プロジェクタ3と、スピーカ42a~42dに接続されたオーディオインタフェース41とが接続されている。フィジカルディスタンス誘発装置2は、制御部21と、記録部22と、映像出力部23と、音響出力部24とを含んで構成される。このフィジカルディスタンス誘発装置2は、人が多く集まる場所で列になる場面において、家族連れなど必ずしも距離を取る必要のない複数人が並ぶ状況でも、適切なフィジカルディスタンスが保たれるように行動を促す装置である。
【0015】
TOFセンサ1は、測位部であり、対象領域に居る人の位置を測位して、測位した位置をフィジカルディスタンス誘発装置2に入力する。なお、人の位置を測位するのはTOFセンサに限定されず、例えばレーザーセンサなどであってもよい。
【0016】
プロジェクタ3は、投影装置であり、フィジカルディスタンス誘発装置2が出力した映像信号に基づき、対象領域に映像を投影(出力)する。プロジェクタ3は、対象領域に、列の立ち位置を誘導するマーカおよび移動方向を誘導するマーカの両方、または列の立ち位置を誘導するマーカを表示する。
【0017】
オーディオインタフェース41は、例えばオーディオアンプなどの音響出力装置であり、フィジカルディスタンス誘発装置2が出力した音響信号を増幅してスピーカ42a~42dに出力し、これらスピーカ42a~42dを鳴動させる。
【0018】
スピーカ42a~42dは、範囲を絞って音を届ける指向性スピーカであり、対象領域に所定間隔で線上に配置されている。スピーカ42a~42dは、列の各立ち位置に対応して配置されている。
フィジカルディスタンス誘発装置2の制御部21は、このフィジカルディスタンス誘発装置2を統括制御するものであり、例えば不図示のCPU(Central Processing Unit)とメモリを含んで構成される。制御部21は、TOFセンサ1が検知した人に対して、スピーカ42a~42dの鳴動とプロジェクタ3によるマーカの表示により、他人と所定間隔を保ちつつ移動または停止するように誘導する。
【0019】
記録部22は、このフィジカルディスタンス誘発装置2がプロジェクタ3で投影する映像コンテンツや、スピーカ42a~42dを鳴らす音響コンテンツを格納する部位である。
【0020】
映像出力部23は、例えばGPU(Graphics Processing Unit)ボードであり、記録部22に格納された映像コンテンツを再生して映像信号を生成するものである。
音響出力部24は、音響信号を生成するものである。音響出力部24が生成した音響信号は、オーディオインタフェース41に出力される。
【0021】
図2は、フィジカルディスタンス誘発装置2の概略のモード遷移図である。
通常、フィジカルディスタンス誘発装置2は、図3に示す対象領域5が無人であることを検知して、モードM10から動作を開始する。
【0022】
図3は、対象領域5に誰もいない状態を示す図である。
対象領域5は、例えば矩形であり、上部にスピーカ42a~42dが設置され、更に不図示のプロジェクタ3が設置されている。人々は、この対象領域5にて所定のサービスを受けるために列を成して並ぶ。スピーカ42a~42dは、この列の各立ち位置に対応して配置されている。そして、対象領域5の床面には、人が、この場所に列として並ぶことがわかるように列マーカ50が表示されている。
【0023】
図2に戻り説明を続ける。無人のモードM10において、スピーカ42a~42dは鳴動せず、かつプロジェクタ3は、この場所に列として並ぶことがわかる列マーカ50を表示する。ここでフィジカルディスタンス誘発装置2は、TOFセンサ1により、この対象領域5への人の進入を検知すると、この人の移動を誘発するためのモードM11に遷移する。
【0024】
図4は、対象領域5に人6が進入した状態を示す図である。
対象領域5のスピーカ42a~42dは、順番に音(リズム等)を鳴らすことで、人6が進む方向を示す。ここで鳴らされる音は、記録部22に第1コンテンツとして格納されている。これにより、人6は、目標位置に移動しなければならないことを音によって認識可能である。
【0025】
図4では、スピーカ42aが鳴動している。これらスピーカ42a~42dは、例えばスピーカ42aからスピーカ42dまで1秒ごとに順番に鳴動し、この順番での鳴動を繰り返す。これによりフィジカルディスタンス誘発装置2は、人6を他人とのフィジカルディスタンスを保ったまま、列の最後尾に誘導することができる。
【0026】
対象領域5の床面には、プロジェクタ3により、人6が停止する位置を表す目標マーカ51と、人6が前に進むことを促す移動誘発マーカ52が表示されている。この移動誘発マーカ52は、望ましい行列の立ち位置を示すと共に、この行列にて目標マーカ51に向けての移動を誘発するものである。目標マーカ51は、列の最後尾に人が停止すべき範囲を示すものである。移動誘発マーカ52は、望ましい行列の立ち位置に沿って、例えば図形や記号(矢印など)が、目標マーカ51の方向に移動するパターンが繰り返し表示されるものが望ましい。これによりフィジカルディスタンス誘発装置2は、人々に対して目標マーカ51に向けての移動を誘発できる。
【0027】
つまり制御部21は、TOFセンサ1により対象領域5に新たな人の進入が検知された場合、列の立ち位置に向けて、第1コンテンツでスピーカ42a~42dを順次鳴動させると共に、プロジェクタ3により立ち位置に目標マーカ51を表示し、立ち位置に向けて移動誘発マーカ52を動かす表示を行う。これにより、人が列になる場面において、人々に対して、適切なフィジカルディスタンスが保たれるように行動を促すことができる。
【0028】
図5Aから図5Cは、図4で対象領域5に人6が進入した時点以降における音と映像を示す図である。
図5Aにおいて、人6は、移動誘発マーカ52に沿って紙面左側に移動している。そして、スピーカ42bが鳴動しており、移動誘発マーカ52は、目標マーカ51に向けて少しだけ紙面左側に移動する。なお、図5Aから図5Cにおいて、紙面左側とは列の方向である。
【0029】
図5Bにおいて、人6は、移動誘発マーカ52に沿って更に紙面左側に移動している。そして、スピーカ42cが鳴動しており、移動誘発マーカ52は、目標マーカ51に向けて更に少しだけ紙面左側に移動する。
【0030】
図5Cにおいて、人6は、移動誘発マーカ52に沿って更に紙面左側に移動している。そして、スピーカ42dが鳴動しており、移動誘発マーカ52は、目標マーカ51に向けて更に少しだけ紙面左側に移動する。
このようにして人6は、スピーカ42a~42dの鳴動順番と移動誘発マーカ52の方向により、目標マーカ51へ移動することができる。
【0031】
図6は、停止位置に人6が留まった状態を示す図である。
図6では、人6が目標とする位置(停止位置)に到達して、その位置に留まっている。このとき、人6が停止している位置には、停止誘発マーカ53が表示されている。スピーカ42a~42dにて順番に鳴動していた音が止まる。その人6が留まっている場所の直上のスピーカ42dから、その場に留まりたくなる音が再生される。その場に留まりたくなる音は、記録部22に第2コンテンツとして格納されている。その場に留まりたくなる音とは、例えば鈴虫の音色や鳥のさえずりや、リラックスできる音楽などである。
【0032】
つまり制御部21は、TOFセンサ1により立ち位置に人が検知された場合、第1コンテンツとは異なる第2コンテンツで、立ち位置のスピーカを鳴動させる。これにより、人6は、音によって正しい停止位置にいることを認識可能である。
【0033】
図7は、停止位置に人6が留まった状態における停止誘発マーカ53の動的表示を示す図である。
図7では、停止誘発マーカ53a~53eのアニメーション表示例を説明している。人6が停止している位置で、停止誘発マーカ53a,53b,53cの順に大きく投影されたのち、停止誘発マーカ53d,53eの順に小さく投影される。そして、停止誘発マーカ53e,53d,53cの順に大きく投影されたのち、停止誘発マーカ53b,53aの順に小さく投影される。フィジカルディスタンス誘発装置2は、この停止誘発マーカ53a~53eを順次表示することにより、人6に対してその場に留まりたくなるような気分を誘発する。
【0034】
つまり制御部21は、TOFセンサ1により、列の立ち位置に人が検知された場合、プロジェクタ3により、この立ち位置に停止誘発マーカ53を表示する、そして制御部21は、TOFセンサ1により、列の立ち位置に人が検知された場合、プロジェクタ3により、この立ち位置の停止誘発マーカ53の形状を繰り返し変化させる。
停止誘発マーカ53は、停止位置の範囲を示すと共に、所定周期で繰り返し形状・色彩・模様などが変化するものが望ましい。これによりフィジカルディスタンス誘発装置2は、人々に対して停止を誘発することができる。
【0035】
図8A図8Cは、対象領域5に新たな人6bが進入した場合における音と映像を示す図である。
図8Aで示すように、人6aが目標とする位置(停止位置)に到達して、その位置に留まっている。このとき、人6aが停止している位置には、停止誘発マーカ53が表示されており、その直上のスピーカ42dが、その場に留まりたくなるような音を鳴動している。
【0036】
図8Aでは、新たな人6bが対象領域5に進入している。
対象領域5のスピーカ42a~42cは、順番に音(リズム等)を鳴らすことで、人6bが進む方向を示す。スピーカ42a~42cは、指向性を有しているので、順番に音やリズム等を鳴らすことにより、人6bが進む方向を示すことができる。
【0037】
図8Aでは、スピーカ42aが鳴動している。これらスピーカ42a~42cは、例えばスピーカ42aからスピーカ42cまで1秒ごとに順番に鳴動し、この順番での鳴動を繰り返す。このときの鳴動音は、記録部22に格納された第1コンテンツである。
対象領域5の床面には、人6aを留まらせる停止誘発マーカ53の紙面右側に、同じグループの他の人が停止する位置を表すマーカ54が投影されている。対象領域5の床面には更に、人6bが他のグループの場合に停止する位置を表す目標マーカ51と、人6bが前に進むことを促す移動誘発マーカ52が表示されている。目標マーカ51は、人6aを留まらせる停止誘発マーカ53よりも一つだけ列の後ろ側に投影され、列の最後尾を示している。移動誘発マーカ52は、目標マーカ51に繰り返し動くように投影される。
【0038】
つまり制御部21は、TOFセンサ1により列の立ち位置に人が検知され、かつTOFセンサ1により対象領域5内に新たな人が検知された場合、プロジェクタ3により、立ち位置を示す停止誘発マーカ53の周囲に、立ち位置に検知された人と同じグループの人のための目標地点を示すマーカ54を表示する。
【0039】
図8Bにおいて、人6bは、移動誘発マーカ52に沿って紙面左側に移動している。そして、スピーカ42bが鳴動しており、移動誘発マーカ52は、目標マーカ51に向けて少しだけ紙面左側に移動する。
【0040】
図8Cにおいて、人6bは、移動誘発マーカ52に沿って紙面左側に移動している。そして、スピーカ42cが鳴動しており、移動誘発マーカ52は、目標マーカ51に向けて少しだけ紙面左側に移動する。
【0041】
つまり制御部21は、TOFセンサ1により列の立ち位置に人6aが検知され、かつTOFセンサ1により対象領域5内に新たな人6bが検知された場合、列から所定間隔だけ後方に離間した新たな立ち位置に向けて、第1コンテンツでスピーカ42a~42cを順次鳴動させると共に、プロジェクタ3により、この新たな立ち位置に目標マーカ51を表示し、新たな立ち位置に向けて移動誘発マーカ52を動かす表示を行う。これにより制御部21は、人6aには停止を誘導し、人6bには目標位置への移動を誘導できる。
【0042】
図9は、先頭の停止位置に2人が留まった状態を示す図である。
スピーカ42a~42cは、順番に鳴動していた音が停まる。更に、人が留まっている場所であるスピーカ42dにて、その場に留まりたくなる音が再生される。
床面の停止誘発マーカ53は、2人を含む範囲に広がり、複数の人を含んだグループに対応するマーカ表示に切り替わる。
【0043】
つまり制御部21は、複数の人を含むグループの場合、プロジェクタ3(図1参照)により、立ち位置に表示された停止誘発マーカ53を拡大し、この立ち位置の後方の立ち位置を示す停止誘発マーカ53または目標マーカ51を順次後方にずらして表示する。これにより、制御部21は、家族連れなど必ずしも距離を取る必要のない複数人が並ぶ状況でも、適切なフィジカルディスタンスが保たれるように行動を促すことができる。なお、停止位置に留まる人数が変わるごとに、人が留まっている場所であるスピーカ42dが再生する音響コンテンツを変化させるとよい。
【0044】
図10は、先頭と2番目の停止位置にそれぞれ1人が留まった状態を示す図である。
スピーカ42a~42cは、順番に鳴動していた音が停まる。更に、人が留まっている場所であるスピーカ42c,42dにて、その場に留まりたくなる音が再生される。
床面には、停止誘発マーカ53a,53bがそれぞれ投影される。これにより、人6a,6bは、列の適切な位置に立っていることを認知可能である。
【0045】
なお、スピーカ42c,42dは、それぞれ同じ環境音における異なる鳥のさえずりを再生したり、同じ音楽における異なる楽器の音を再生するなど、統一性のある音響コンテンツを分割して再生するとよい。これにより停止位置に留まっている人は、それぞれ好適な音響コンテンツを鑑賞可能である。
【0046】
図11Aから図11Cは、先頭の停止位置から人6aが離脱した場合における音と映像を示す図である。
図11Aに示すように、人6aが離脱すると、スピーカ42dは、その場に留まりたくなる音の再生を停止する。そして、その場に留まりたくなるような停止誘発マーカ53aが非表示になる
人6bが留まっている場所に対応するスピーカ42cは、その場に留まりたくなる音の再生を継続する。プロジェクタ3は、その場に留まりたくなるような停止誘発マーカ53bの投影を継続する。
【0047】
図11Bに示すように、人6bが留まっている場所に対応するスピーカ42cは、その場に留まりたくなる音の再生を停止し、再びスピーカ42a~42dは、順番に音(リズム等)を鳴らす。
プロジェクタ3は、その場に留まりたくなるような停止誘発マーカ53bの投影を停止し、人6bが進む方向を示す移動誘発マーカ52と、列の最後尾を示す目標マーカ51を投影する。
【0048】
図11Cに示すように、スピーカ42a~42dは、順番に鳴動していた音が停まる。更に、人6bが留まっている場所であるスピーカ42dにて、その場に留まりたくなる音が再生される。
床面には、停止誘発マーカ53とマーカ54がそれぞれ投影される。これにより、人6bは、列の適切な位置に立っていることを認知可能である。
【0049】
つまり図1に示した制御部21は、人が検知されていた第1立ち位置から人が検知されなくなり、かつ、この第1立ち位置の後方の第2立ち位置に人が検知された場合、第1立ち位置に向けて、第1コンテンツでスピーカ42a~42dを順次鳴動させると共に、図1に示したプロジェクタ3により第1立ち位置に目標マーカ51を表示し、第1立ち位置に向けて移動誘発マーカ52を動かす表示を行う。
【0050】
《第2の実施形態》
第2の実施形態は、カメラから取得した映像をモニタに表示し、その映像の上にセンサからの情報をもとに人の行動を促す情報を表示し、スピーカの音で誘導して、人の行動変容を促すものである。
【0051】
図12は、第2の実施形態に係るフィジカルディスタンス誘発装置2Aの構成図である。
フィジカルディスタンス誘発装置2Aは、第1の実施形態と同様なTOFセンサ1と、スピーカ42a~42dに接続されたオーディオインタフェース41とが接続されている。フィジカルディスタンス誘発装置2Aは、第1の実施形態のプロジェクタ3に代えてモニターディスプレイ7が接続され、更にカメラ8が接続されている。フィジカルディスタンス誘発装置2Aは、第1の実施形態と同様に制御部21と、記録部22と、映像出力部23と、音響出力部24とを含んで構成される。
【0052】
モニターディスプレイ7は、対象領域に設置された映像出力装置であり、フィジカルディスタンス誘発装置2が出力した映像信号に基づき、映像を表示(出力)する。
カメラ8は、対象領域に設置された撮像機器であり、対象領域を撮像する。フィジカルディスタンス誘発装置2Aは、各種マーカをカメラ8の撮影画像に位置合わせして、拡張現実とする。映像出力部23は、カメラ8の撮影画像と、フィジカルディスタンス誘発装置2Aが生成する各種マーカとを重畳表示する。
【0053】
図13は、対象領域5に誰もいない状態を示す図である。
対象領域5は、例えば矩形であり、上部にスピーカ42a~42dが設置され、モニターディスプレイ7とカメラ8とが設置されている。人々は、この対象領域5にて所定のサービスを受けるために列を成して並ぶ。スピーカ42a~42dは、この列の各立ち位置に対応して配置されている。
【0054】
図14は、対象領域5に人6が進入した状態を示す図である。
モニターディスプレイ7には、カメラ8が撮像した映像が表示され、その上に拡張現実としての目標マーカ71と移動誘発マーカ72とが重ねて表示されている。人6は、モニターディスプレイ7に表示された目標マーカ71により、列の最後尾を認知可能である。移動誘発マーカ72により、人6は、列の最後尾に達していないことを認知可能である。
つまり、モニターディスプレイ7は、対象領域5の映像に重畳して立ち位置と移動方向、または立ち位置を指示するマーカを表示する表示装置である。
そして、スピーカ42a~42dは、第1コンテンツの音が順次鳴動する。図14では、スピーカ42aが鳴動している。
【0055】
図15は、停止位置に人が留まった状態を示す図である。
人6が目標位置に到達すると、モニターディスプレイ7の目標マーカが、停止を促す停止誘発マーカ73に変わる。これによりフィジカルディスタンス誘発装置2Aは、人6を他人とのフィジカルディスタンスを保ったまま、停止位置へ留まるように誘導できる。そして、スピーカ42dから第2コンテンツの音が鳴動する。この第2コンテンツは、その場に留まりたくなるような音である。
【0056】
なお、第1の実施形態と同様に、新たに別の人が進入した場合、フィジカルディスタンス誘発装置2Aは、停止誘発マーカ73の後部に別のマーカを拡張現実としてカメラ画像に表示し、更にその後方に目標マーカ71を拡張現実として表示する。
【0057】
この別のマーカの位置に別の人が入った場合、フィジカルディスタンス誘発装置2Aは、停止誘発マーカ73を拡大して、拡張現実としてカメラ画像に重畳表示する。このとき、フィジカルディスタンス誘発装置2Aは、別の人を同一グループとして認識する。
【0058】
目標マーカ71の位置に別の人が入った場合、フィジカルディスタンス誘発装置2Aは、目標マーカ71を停止誘発マーカ73に切り替えて、拡張現実としてカメラ画像に重畳表示する。このときフィジカルディスタンス誘発装置2Aは、別の人を別グループとして認識する。
【0059】
《第2の実施形態の変形例》
ここでは、列に並んだ人の体温を測定して、モニターディスプレイの表示により、体温に応じた適切な動作を促すものである。人の体温が37.5度以下であれば、前に進んでよい行動を促す。また、その際に映像や音によって人の体温を測りやすくして、測定精度を上げることが考えられる。
【0060】
図16は、変形例における対象領域を示す図である。
対象領域5は、例えば矩形であり、上部にスピーカ42a~42dとモニターディスプレイ7a~7dがそれぞれ設置され、更に不図示のサーモパイルセンサが設置されている。人6は、この対象領域5にて所定のサービスを受けるために列を成して並び、ここではスピーカ42dの直下に留まっている。そして、スピーカ42dから、第2コンテンツの音が鳴動する。この第2コンテンツは、その場に留まりたくなるような音である。
【0061】
スピーカ42a~42dとモニターディスプレイ7a~7dは、この列の各立ち位置に対応して配置されている。モニターディスプレイ7a~7dには、不図示のカメラが組み込まれている。そして、モニターディスプレイ7a~7dには、カメラの映像に重ねて、人がこの場所に列として並ぶことがわかるようなマーカが表示されている。
【0062】
図17は、前に進んでよい場合のモニターディスプレイ7aの表示画面である。
前に進んで良い場合とは、列の前に待っている人が進んで空きができた状態、かつ、そこで待っている人の体温が37.5度以下の場合である。このとき、モニターディスプレイ7aには、カメラの映像に重畳して「お進みください」の文字と、進行方向を示すアイコンとが表示される。なお、モニターディスプレイ7b~7dも、モニターディスプレイ7aと同様に表示される。
【0063】
図18は、その場に留まらせる場合のモニターディスプレイ7aの表示画面である。
その場に留まらせる場合とは、列の前に待っている人が進んでおらず、空きがない状態、または、そこで待っている人の体温が37.5度以下の場合である。モニターディスプレイ7aには、カメラの映像に重畳して「お待ちください」の文字と、停止を誘導するアイコンとが表示される。なお、モニターディスプレイ7b~7dも、モニターディスプレイ7aと同様に表示される。
【0064】
《第3の実施形態》
第3の実施形態は、インターネットを介したフィジカルディスタンス誘発装置からの情報を端末装置で処理して表示するものであり、必要に応じて端末装置のスピーカも活用する。端末装置には、自身のカメラ映像に重ねて人に行動を促す情報が表示される。
【0065】
図19は、第3の実施形態に係るフィジカルディスタンス誘発装置2Bの構成図である。
フィジカルディスタンス誘発装置2Bは、第1の実施形態と同様にTOFセンサ1が接続され、更にインターネットを介して端末装置9a~9cと接続されている。フィジカルディスタンス誘発装置2Bは、第1の実施形態と同様に制御部21と、記録部22を含んで構成され、更に通信部25を含んでいる。
通信部25は、例えばネットワークインタフェースであり、インターネットを介して端末装置9a~9cなどと通信する。
【0066】
端末装置9a~9cは、例えばスマートフォンなどの携帯端末であり、スピーカ91と、モニタ92と、カメラ93とを含んで構成される。これら端末装置9a~9cは、対象領域を撮影するカメラ93、および、対象領域の映像に重畳して立ち位置と移動方向、または立ち位置を誘導するマーカを表示するモニタ92を備えている。
【0067】
端末装置9a~9cは、カメラ93でARマーカを撮影することにより、自己位置を推定する。端末装置9a~9cは更に、フィジカルディスタンス誘発装置2Bと連携することにより、この装置の持ち主に対して、適切なフィジカルディスタンスを保ちつつ、行列に並べるように行動を促す。
【0068】
なお、端末装置9a~9cは、自己位置推定にてAR(Augmented Reality)マーカの使用に限定されず、Wi-Fi(登録商標)やBeaconやBluetooth(登録商標)を活用した自己位置の測位や、GPS(Global Positioning System)を使った自己位置の測位などを行ってもよい。
【0069】
図20は、停止位置に人6が留まった状態を示す図である。
対象領域5の床面には、自己位置推定に用いられるARマーカ59a~59dが貼り付けられている。人6は、端末装置9aによって対象領域5の床面を撮影する。端末装置9aは、カメラ映像中のARマーカ59a~59dにより自己位置を認識する。端末装置9aは、フィジカルディスタンス誘発装置2Bから移動体情報やレイアウト情報を受信して、自己位置と突き合わせることにより、対象領域5のレイアウトにおける自己位置を認識する。
【0070】
更に端末装置9aは、フィジカルディスタンス誘発装置2Bから目標マーカや移動誘発マーカや停止誘発マーカなどのナビケーション情報を受信し、これをカメラ画像に重畳表示させる。これにより端末装置9aは、持ち主である人6に対して、適切なフィジカルディスタンスを保ちつつ、行列に並べるように行動を促すことができる。
【0071】
図21は、前に進んでよい場合の端末装置9aの表示画面である。
モニタ92には、円形の目標マーカ921と、矢印の移動誘発マーカ922とがカメラ映像に重畳されて表示される。人6は、モニタ92に表示された拡張現実により、行列の存在とその最後尾の位置とを認知可能である。
【0072】
図22は、その場に留まらせる場合の端末装置9aの表示画面である。
モニタ92には、円形の停止誘発マーカ923がカメラ映像に重畳されて表示される。なお、このとき、人6は自身の足元を撮影している。人6は、モニタ92に表示された拡張現実により、今の位置が列に定められた正規の停止位置であることを認知可能である。
【0073】
なお、第1の実施形態と同様に、新たに別の人が進入した場合、フィジカルディスタンス誘発装置2Bは、停止誘発マーカ923の後部に、別のマーカを拡張現実として端末装置9aに表示させ、更にその後方に目標マーカ921を拡張現実として表示させる。
【0074】
この別のマーカの位置に別の人が入った場合、フィジカルディスタンス誘発装置2Bは、停止誘発マーカ923を拡大して拡張現実として、端末装置9aのモニタ92に表示させる。フィジカルディスタンス誘発装置2Bは、停止位置にいた人と別の人とを同一グループとして認識する。
【0075】
目標マーカの位置に別の人が入った場合、フィジカルディスタンス誘発装置2Bは、目標マーカ921を停止誘発マーカ923に切り替えて、拡張現実として端末装置9aのモニタ92に表示させる。フィジカルディスタンス誘発装置2Bは、別の人が列の最後尾についたことを認識する。
【0076】
図23は、フィジカルディスタンス誘発装置2Bと端末装置9aの処理を示すフローチャートである。
フィジカルディスタンス誘発装置2Bの制御部21は、TOFセンサ1で人物位置を測定すると(ステップS10)、その動作を判定する(ステップS11)。そして、制御部21は、移動体座標の位置を演算し(ステップS12)、レイアウトデータベースを参照して、対象領域5のレイアウトと移動体座標とを端末装置9aなどに送信する(ステップS13)。
【0077】
次に制御部21は、目標地点を判定し(ステップS14)、ナビゲーション情報表示を判定すると、端末装置9aなどに送信する(ステップS15)。制御部21は、これら一連の処理を繰り返すことで、各端末装置9aなどに表示させるナビゲーション情報を更新する。ここでナビゲーション情報とは、目標マーカ921や移動誘発マーカ922や停止誘発マーカ923などの映像コンテンツ、端末装置9aのスピーカ91から流す各種音響コンテンツなどのことをいう。
【0078】
端末装置9aの制御部(不図示)は、カメラ93の撮影画像からARマーカ59a~59dのうち何れかを認識すると(ステップS20)、フィジカルディスタンス誘発装置2Bからレイアウトと移動体座標とを受信する(ステップS21)。そして、端末装置9aの制御部は、レイアウト内のマーカの位置関係と移動体座標の中から自己位置を推定する(ステップS22)。
【0079】
次に、端末装置9aの制御部は、ナビゲーション情報を受信し(ステップS23)、自己位置に応じて、目標地点またはナビゲーションの表示有無を判定すると(ステップS24)、モニタ92やスピーカ91にナビゲーション出力し(ステップS25)、一連の画面更新処理を終了する。
【0080】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0081】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0082】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の変形例として、例えば、次の(a)~(d)のようなものがある。
【0083】
(a) 人の体温の測定と誘導は、第2の実施形態に限られず、第1、第3の実施形態で実施してもよい。
(b) 人の動作判定は、第3の実施形態に限られず、第1、第2の実施形態で実施してもよい。
(c) 測位部は、TOFセンサやレーザーセンサに限定されず、人の位置を測定可能な任意の機器を用いてもよい。
(d) 本発明は、単一の装置に限定されず、複数の装置が連携して動作するシステムとして構成されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 TOFセンサ (測位部)
2,2A,2B フィジカルディスタンス誘発装置
21 制御部
22 記録部
23 映像出力部
24 音響出力部
25 通信部
3 プロジェクタ (投影装置)
41 オーディオインタフェース
42a~42d スピーカ
5 対象領域
51 目標マーカ
52 移動誘発マーカ
53,53a~53e 停止誘発マーカ
54 マーカ
59a~59d ARマーカ
6,6a,6b 人
7,7a~7d モニターディスプレイ (表示装置)
71 目標マーカ
72 移動誘発マーカ
73 停止誘発マーカ
8 カメラ
9a~9c 端末装置
91 スピーカ
92 モニタ
921 目標マーカ
922 移動誘発マーカ
923 停止誘発マーカ
93 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23