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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175820
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221117BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221117BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082533
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岐部 太一
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB29
5F045EH01
5F045EJ03
5F045EJ09
5F045EM05
5F045EM09
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA04
5F131CA09
5F131CA12
5F131CA17
5F131CA68
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB18
5F131EB25
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】接合層の外周面付近にプラズマやプロセスガスが侵入することを防止することができる保持装置を提供すること。
【解決手段】板状部材10と、ベース部材20と、板状部材10とベース部材20との間に配置され、板状部材10とベース部材20とを接合する接合層40とを備え、板状部材10の保持面11上に半導体ウエハWを保持する静電チャック1において、接合層40の外周面40a全域を覆うように配置された内側保護部材50と、内側保護部材50より外側に配置され、Z軸方向における寸法が、内側保護部材50より大きい外側保護部材60とを有し、外側保護部材60は、内側保護部材50の外周面全域を覆うように配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面とは第1の方向にて反対側に設けられる第2の面とを備える第1部材と、
第3の面と、前記第3の面とは前記第1の方向にて反対側に設けられる第4の面とを備える第2部材と、
前記第1部材の前記第2の面と前記第2部材の前記第3の面との間に配置され、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合層とを備え、
前記第1部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記接合層の外周面全域を覆うように配置された内側保護部材と、
前記内側保護部材より外側に配置され、前記第1の方向における寸法が、前記内側保護部材より大きい外側保護部材とを有し、
前記外側保護部材は、前記内側保護部材の外周面全域を覆うように配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載する保持装置において、
前記第1部材の前記第2の面側における外周部、及び前記第2部材の前記第3の面側における外周部にはそれぞれ、前記内側保護部材を配置するための第1段部と、前記外側保護部材を配置するための第2段部とが形成されており、
前記内側保護部材は、前記第1部材の前記第1段部の側面と、前記第2部材の前記第1段部の側面との両方に接触している
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する保持装置において、
前記外側保護部材は、前記内側保護部材よりも伸縮性が高いものである
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つの保持装置において、
前記外側保護部材は、前記内側保護部材を前記第1の方向と直交する第2の方向における内側方向に押圧している
ことを特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つの保持装置において、
前記内側保護部材の外周面は、前記第1の方向と直交する第2の方向における外側方向へ凸となる円弧形状に形成されている
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を保持面に保持する第1部材と、接合層を介して第1部材に接合された第2部材とを備える保持装置が知られている。この種の保持装置では、プラズマやプロセスガスにより接合層が劣化するおそれがあるため、接合層の外周面を保護する対策が施されている。例えば、特許文献1に記載されたウェハ支持部材(保持装置)では、接着層(接合層)の周辺部に凹部を形成し、凹部内にその壁面を押圧するように環状の保護部材を配置して、この保護部材により接着層へのプラズマやプロセスガスの侵入を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-80389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の保持装置では、保護部材と接合層との熱膨張率差に起因して、保護部材と接合層との間に空隙が生じるおそれがある。また、保護部材の封止性を高めるには、保護部材として伸縮性の高い材質を使用する必要があるが、保護部材もプラズマやプロセスガスにより劣化するため、保護部材の伸縮性が低下して、保護部材と接合層との間に空隙が生じるおそれもある。さらに、保護部材を凹部に配置したときに保護部材がねじれたり傾いたりして、保護部材と接合層との間に空隙が生じるおそれもある。そして、保護部材と接合層との間に空隙が生じると、その空隙にプラズマやプロセスガスが侵入して接合層を劣化させてしまう。
【0005】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、接合層の外周面付近にプラズマやプロセスガスが侵入することを防止することができる保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
第1の面と、前記第1の面とは第1の方向にて反対側に設けられる第2の面とを備える第1部材と、
第3の面と、前記第3の面とは前記第1の方向にて反対側に設けられる第4の面とを備える第2部材と、
前記第1部材の前記第2の面と前記第2部材の前記第3の面との間に配置され、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合層とを備え、
前記第1部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記接合層の外周面全域を覆うように配置された内側保護部材と、
前記内側保護部材より外側に配置され、前記第1の方向における寸法が、前記内側保護部材より大きい外側保護部材とを有し、
前記外側保護部材は、前記内側保護部材の外周面全域を覆うように配置されていることを特徴とする。
【0007】
この保持装置では、内側保護部材よりも第1の方向(保持装置の厚み方向)の寸法が大きい外側保護部材を、内側保護部材を覆うように配置しているため、内側保護部材にねじれや傾きが発生することを防止することができる。これにより、内側保護部材で接合層の外周面全域を確実に覆うことができる。従って、内側保護部材と外側保護部材とにより、接合層の外周面付近にプラズマやプロセスガスが侵入することを防止することができる。なお、仮に内側保護部材がずれて配置されたとしても、外側保護部材が内側保護部材を覆っているため、外側保護部材により、接合層の外周面付近へのプラズマやプロセスガスの侵入を防止することができる。
【0008】
上記した保持装置において、
前記第1部材の前記第2の面側における外周部、及び前記第2部材の前記第3の面側における外周部にはそれぞれ、前記内側保護部材を配置するための第1段部と、前記外側保護部材を配置するための第2段部とが形成されており、
前記内側保護部材は、前記第1部材の前記第1段部の側面と、前記第2部材の前記第1段部の側面との両方に接触していることが好ましい。
【0009】
このように、第1部材の第2の面側における外周部、及び第2部材の第3の面側における外周部に、内側保護部材を配置するための第1段部と、外側保護部材を配置するための第2段部とを設けることにより、内側保護部材と外側保護部材のそれぞれを位置ズレすることなく、適正な位置に配置することができる。このとき、内側保護部材によって接合層がしっかりと封止されているので、外側保護部材は、第1部材の第1段部の側面と第2部材の第2段部の側面とのうち、少なくとも一方に接触していればよい。これにより、接合層の外周面全域を確実に覆った状態の内側保護部材全体を外側保護部材で確実に覆うことができるため、内側保護部材によって接合層を確実に封止することができ、接合層へのプラズマやプロセスガスの侵入を防止することができる。
【0010】
上記した保持装置において、
前記外側保護部材は、前記内側保護部材よりも伸縮性が高いものであることが好ましい。
【0011】
これにより、外側保護部材で内側保護部材を内側へ効果的に押圧することができるため、接合層を封止する内側保護部材の封止性能を高めることができる。そのため、接合層へのプラズマやプロセスガスの侵入を効果的に防止することができる。
【0012】
上記した保持装置において、
前記外側保護部材は、前記内側保護部材を前記第1の方向と直交する第2の方向における内側方向に押圧していることが好ましい。
【0013】
これにより、内側保護部材と接合層との熱膨張率差に起因して、内側保護部材が、部分的にねじれたり、傾いたりすることを確実に防止することができ、外側保護部材で内側保護部材を内側へより効果的に押圧することができる。そのため、内側保護部材の封止性能を一層高めることができ、接合層へのプラズマやプロセスガスの侵入をより効果的に防止することができる。
【0014】
上記した保持装置において、
前記内側保護部材の外周面は、前記第1の方向と直交する第2の方向における外側方向へ凸となる円弧形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
これにより、外側保護部材で内側保護部材を内側へより一層効果的に押圧することができるため、内側保護部材の封止性能をさらに高めることができる。そのため、接合層へのプラズマやプロセスガスの侵入をより一層効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、接合層の外周面付近にプラズマやプロセスガスが侵入することを防止することができる保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の静電チャックの概略斜視図である。
図2】実施形態の静電チャックのXZ断面の概略構成図である。
図3】接合層の外周部付近を拡大したXZ断面の概略構成図である。
図4】変形例における接合層の外周部付近を拡大したXZ断面の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示に係る実施形態である保持装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置など)やエッチング装置(プラズマエッチング装置など)といった半導体製造装置に使用される静電チャックを例示する。
【0019】
本実施形態の静電チャック1について、図1図3を参照しながら説明する。本実施形態の静電チャック1は、半導体ウエハW(対象物)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内で半導体ウエハWを固定するために使用される。図1図2に示すように、静電チャック1は、板状部材10と、ベース部材20と、板状部材10とベース部材20とを接合する接合層40と、内側保護部材50および外側保護部材60を有する。なお、板状部材10は本開示の「第1部材」の一例であり、ベース部材20は本開示の「第2部材」の一例である。
【0020】
以下の説明においては、説明の便宜上、図1に示すようにXYZ軸を定義する。ここで、Z軸は、静電チャック1の軸線方向(図1において上下方向)の軸であり、X軸とY軸は、静電チャック1の径方向の軸である。そして、Z軸方向は、本開示の「第1の方向」の一例であり、X軸方向(Y軸方向)は、本開示の「第2の方向」の一例である。
【0021】
板状部材10は、図1に示すように、円盤状の部材であり、セラミックスにより形成されている。セラミックスとしては、様々なセラミックスが用いられるが、強度や耐摩耗性、耐プラズマ性等の観点から、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al)または窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックスが用いられることが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。
【0022】
板状部材10は、外周に沿って上側に切り欠きが形成された部分である外周部10aと、外周部10aの内側に位置する内側部10bとから構成されている。板状部材10における内側部10bの厚さ(Z軸方向における厚さであり、以下同様。)は、外周部10aに形成された切り欠きの分だけ、外周部10aの厚さより厚くなっている。すなわち、板状部材10の外周部10aと内側部10bとの境界の位置で、板状部材10の厚さが変化している。
【0023】
板状部材10の内側部10bの直径は、例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の外周部10aの直径は、例えば60mm~510mm程度(通常は210mm~360mm程度)である(ただし、外周部10aの直径は内側部10bの直径より大きい)。また、板状部材10の内側部10bの厚さは、例えば1mm~10mm程度であり、板状部材10の外周部10aの厚さは、例えば0.5mm~9.5mm程度である(ただし、外周部10aの厚さは内側部10bの厚さより薄い)。
【0024】
図1図2に示すように、板状部材10は、半導体ウエハWを保持する保持面11と、板状部材10の厚み方向(Z軸方向に一致する方向、上下方向)について保持面11とは反対側に設けられる下面12とを備えている。なお、外周部10aにおける上面(外周上面)は、例えば、静電チャック1を固定するための治具(不図示)が係合する。保持面11は本開示の「第1の面」の一例であり、下面12は本開示の「第2の面」の一例である。
【0025】
板状部材10の内部には、図2に示すように、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極13が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極13の形状は、例えば略円形である。チャック電極13に外部から電力が供給されると、静電引力が発生し、この静電引力によって半導体ウエハWが板状部材10の保持面11に吸着保持される。
【0026】
また、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極14が配置されている。ヒータ電極14に外部から電力が供給されると、ヒータ電極14が発熱することによって板状部材10が加熱され、板状部材10の保持面11に保持された半導体ウエハWが温められる。
【0027】
そして、板状部材10の外周部の下面12側には、図3に示すように、内側保護部材50が配置される円周状の第1段部31と、第1段部31の外側に設けられて外側保護部材60が配置される第2段部32が形成されている。第1段部31は、Z軸方向と略平行な側面31aと、Z軸方向と略直交する底面31bとを備え、断面L字状をなしている。同様に、第2段部32は、Z軸方向と略平行な側面32aと、Z軸方向と略直交する底面32bとを備え、断面L字状をなしている。
【0028】
ベース部材20は、図2に示すように、板状部材10の外周部10aと同径(あるいは外周部10aより径が大きい)円柱状の部材である。このベース部材20は、金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されていることが好ましいが、金属以外であってもよい。そして、ベース部材20は、上面21と、ベース部材20(板状部材10)の中心軸方向(すなわち、Z軸方向)について上面21とは反対側に設けられる下面22と、を備えている。なお、上面21は本開示の「第3の面」の一例であり、下面22は本開示の「第4の面」の一例である。
【0029】
なお、ベース部材20の直径は、例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)である。また、ベース部材20の厚さは、例えば20mm~40mm程度である。
【0030】
また、ベース部材20には、冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)を流すための冷媒流路23が形成されている。そして、冷媒流路23は、ベース部材20の下面22に設けられた不図示の供給口と排出口とに接続しており、供給口からベース部材20に供給された冷媒が、冷媒流路23内を流れて排出口からベース部材20の外へ排出される。このようにして、ベース部材20の冷媒流路23内に冷媒を流すことにより、ベース部材20が冷却され、これにより、接合層40を介して板状部材10が冷却される。
【0031】
そして、ベース部材20の外周部の上面21側には、図3に示すように、内側保護部材50が配置される円周状の第1段部35と、第1段部35の外側に設けられて外側保護部材60が配置される第2段部36が形成されている。第1段部35は、Z軸方向と略平行な側面35aと、Z軸方向と略直交する底面35bとを備え、断面L字状をなしている。同様に、第2段部36は、Z軸方向と略平行な側面36aと、Z軸方向と略直交する底面36bとを備え、断面L字状をなしている。
【0032】
接合層40は、板状部材10の下面12とベース部材20の上面21との間に配置され、板状部材10とベース部材20とを接合している。この接合層40を介して、板状部材10の下面12とベース部材20の上面21とが熱的に接続されている。接合層40は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。なお、接合層40の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば0.1mm~1.0mm程度である。また、接合層40の熱伝導率は、例えば1.0W/mKである。なお、接合層40(シリコーン系樹脂を想定)の熱伝導率は、0.1W/mK~2.0W/mK(好ましくは、0.5W/mK~1.5W/mK)の範囲内が望ましい。
【0033】
なお、本実施形態では、接合層40の外周面40aの位置が、板状部材10の第1段部31の側面31a、およびベース部材20の第1段部35の側面35aの位置に対して、ほぼ同一となっているが、内側に後退していてもよい。
【0034】
内側保護部材50および外側保護部材60は、プラズマやプロセスガスから接合層40を保護するための部材である。内側保護部材50は、その両端部が第1段部31,35に配置され、外側保護部材60は、その両端部が第2段部32,36に配置されている。
【0035】
内側保護部材50は、Z軸方向視で略円環状の部材である。この内側保護部材50は、エラストマー(例えば、合成ゴム等)や樹脂(例えば、フッ素樹脂等)により形成されている。なお、内側保護部材50の形成材料は、弾性を有し、かつ、耐プラズマ性、耐熱性、耐薬品性に優れた材料であることが好ましい。内側保護部材50の形成材料は、比較的柔らかい材料であることが好ましい。
【0036】
内側保護部材50のZ軸方向(図3では上下方向)の寸法は、側面31aのZ軸方向の寸法と接合層40の厚みと側面35aのZ軸方向の寸法との合計寸法にほぼ等しく、内側保護部材50は、Z軸方向の両端にて内周側が、側面31aおよび側面35aの両方に接触するとともに、Z軸方向の両端が底面31b,32bの両方に接触して、第1段部31,35内に配置されている。これにより、内側保護部材50は、接合層40の外周面40a全域を覆っている。なお、内側保護部材50は、Z軸方向の両端部にて、側面31aおよび側面35aに接触していれば、内側保護部材50のZ軸方向の寸法は、上記合計寸法よりも小さくてもよい。また、内側保護部材50のZ軸方向の寸法は、例えば0.3mm~6.0mm程度であり、幅寸法(X軸又はY軸方向(図3では横方向)の寸法)は、例えば0.3mm~2.0mm程度である。
【0037】
外側保護部材60も、内側保護部材50と同様、Z軸方向視で略円環状の部材である。この外側保護部材60は、例えばエラストマー(例えば、合成ゴムなど)や樹脂(例えば、フッ素樹脂等)により形成されている。なお、外側保護部材60の形成材料は、弾性を有し、かつ、耐プラズマ性、耐熱性、耐薬品性に優れた材料であることが好ましく、外側保護部材60は、内側保護部材50よりも伸縮性が大きいものであることが好ましい。これにより、外側保護部材60で内側保護部材50を内側へ効果的に押圧することができるからである。なお、伸縮性は、引張試験の前後の寸法変化により弾性率を測定すればよい。具体的には、JIS K 6251:2017、JIS K 7137-2:2001、JIS K 7161-1 2014等に基づいて測定する。また、外側保護部材60は、内側保護部材50よりも熱膨張率が小さいものであることが好ましい。これにより、内側保護部材50と接合層40(あるいは外側保護部材60)との熱膨張率差に起因して、内側保護部材50に部分的にねじれや傾きが発生したとしても、外側保護部材60により、内側保護部材50のねじれや傾きを修正することができるからである。また、伸縮性とは、元の形状に戻ろうとする性質(例えば、弾性)を指し、外側保護部材60の弾性力が、内側保護部材50の弾性力よりも大きければ、外側保護部材60が内側保護部材50を内側へ効果的に押圧することができる。
【0038】
外側保護部材60のZ軸方向(図3では上下方向)の寸法は、内側保護部材50のZ軸方向の寸法よりも大きく、外側保護部材60は、Z軸方向の両端にて内周側が側面32aおよび側面36aの両方に接触する一方、Z軸方向の両端が底面32bおよび底面36bには接触せずに(外側保護部材60と底面32b,36bとの間に隙間が存在するように)、第2段部32,36内に配置されている。これにより、内側保護部材50は、外側保護部材60により覆われている。なお、本実施形態では、外側保護部材60が、Z軸方向の両端にて、側面32aおよび側面36aの両方に接触しているが、外側保護部材60は、内側保護部材50の外周面全域を覆っていればよいため、側面32aまたは側面36aの少なくとも一方に接触していればよい。また、外側保護部材60のZ軸方向の寸法は、例えば0.3mm~7.0mm程度であり、幅寸法(X軸又はY軸方向(図3では横方向)の寸法)は、例えば0.3mm~2.0mm程度である。
【0039】
この外側保護部材60は、内側保護部材50を内側方向(Z軸方向視での静電チャック1の中心に向かう方向)に押圧している。なお、外側保護部材60による内側保護部材50の押圧は、例えば、設置前の外側保護部材60のZ軸方向視での大きさ(外径)を設置後の外側保護部材60の大きさ(外径)より小さく設定し、外側保護部材60を設置した際に外側保護部材60に張力が生じるようにすることにより、実現することができる。
【0040】
すなわち、外側保護部材60が内側保護部材50の外周を覆うように設置された状態において外側保護部材60に張力が生じていれば、外側保護部材60は内側保護部材50を押圧することができる。また、内側保護部材50の幅寸法(X軸又はY軸方向(図3では横方向)の寸法)が、底面31b,35bの径方向(X軸又はY軸方向)の寸法より大きくしても、設置された状態の外側保護部材60は内側保護部材50を押圧することができる。そして、本実施形態では、内側保護部材50よりも大きい外側保護部材60が、外側保護部材60と底面32b,36bとの間に隙間が存在するように。第2段部32,36配置されている。そのため、外側保護部材60が底面32b,36bに接触して内側へ収縮する変形が阻害されることがない。従って、外側保護部材60を第2段部32,36に配置した際、外側保護部材60に発生する張力を減少させることがないため、外側保護部材60によって内側保護部材50をしっかりと押圧することができる。
【0041】
なお、外側保護部材60は、内側保護部材50の外周を覆うように設置された状態において、第2段部32,36内に収まるようになっている。すなわち、外側保護部材60の外周面が、板状部材10の外周部10aの外周面、およびベース部材20の外周面からはみ出すことはない。これにより、静電チャック1にフォーカスリングを装着する際、外側保護部材60がフォーカスリングに干渉しないようになっている。なお、フォーカスリングは、半導体ウエハWの周辺部におけるプラズマの密度を半導体ウエハWの中央部におけるプラズマの密度と同程度に維持するために使用される環状の部材である。
【0042】
上記のような静電チャック1を、半導体製造装置の真空チャンバー内で半導体ウエハWを固定するために使用する場合、半導体ウエハWに回路パターンを形成する際に使用するプラズマやプロセスガスが接合層40に接触すると、接合層40が腐食してしまう。そのため、本実施形態の静電チャック1では、内側保護部材50と外側保護部材60を設けて、接合層40の外周面40aにプラズマやプロセスガスが接触することを防止している。
【0043】
そして、本実施形態では、内側保護部材50よりもZ軸方向の寸法が大きい外側保護部材60を、内側保護部材50を覆うように第2段部32,36に配置している。そのため、第1段部31,35に配置した内側保護部材50にねじれや傾きが発生したとしても、内側保護部材50の外周面全域を外側から外側保護部材60が覆うため、内側保護部材50のねじれや傾きが修正される。すなわち、第1段部31,35に配置される内側保護部材50に、ねじれや傾きが発生することを防止することができる。これにより、内側保護部材50で接合層40の外周面40a全域を確実に覆うことができる。
【0044】
従って、内側保護部材50と外側保護部材60とにより、接合層40の外周面40a付近にプラズマやプロセスガスが侵入することを防止することができる。なお、内側保護部材50のねじれや傾きが完全に修正されずに、内側保護部材50が第1段部31,35にずれて配置されたとしても、外側保護部材60が内側保護部材50を覆っているため、外側保護部材60により、接合層40の外周面40a付近へのプラズマやプロセスガスの侵入を防止することができる。
【0045】
そして、本実施形態の静電チャック1では、板状部材10の下面12側における外周部、およびベース部材20の上面21側における外周部に、内側保護部材50を配置するための第1段部31,35と、外側保護部材60を配置するための第2段部32,36とを設けている。そのため、内側保護部材50および外側保護部材60のそれぞれを位置ズレすることなく、適正な位置に配置することができる。
【0046】
すなわち、内側保護部材50の両端部を、第1段部31の側面31aと第1段部35の側面35aとの両方に接触させた状態で、第1段部31,35に配置することができる。これにより、接合層40の外周面40a全域を、内側保護部材50によって確実に覆うことができるため、内側保護部材50により接合層40を確実に封止することができる。また、本実施形態では、内側保護部材50の両端部は、第1段部31の底面31bと第1段部35の底面35bとの両方にも接触している。そのため、内側保護部材50による接合層40の封止性能が高められている。さらに、外側保護部材60の両端部を、第2段部32の側面32aと第2段部36の側面36aとの両方に接触させた状態で、第2段部32,36に配置することができる。これにより、接合層40の外周面40a全域を完全に覆った状態の内側保護部材50の全体を、外側保護部材60によって確実に覆うことができる。そのため、外側保護部材60によっても、接合層40を封止することができる。このようにして、本実施形態では、内側保護部材50と外側保護部材60との両方で、接合層40を封止することができるため、接合層40の外周面40a付近へのプラズマやプロセスガスの侵入を確実に防止することができる。
【0047】
また、外側保護部材60が内側保護部材50よりも伸縮性が高いものであるため、外側保護部材60によって内側保護部材50を内側へより効果的に押圧することができる。そのため、第1段部31,35に配置された内側保護部材50が、部分的にねじれたり、傾いたりすることを確実に防止することができる。従って、内側保護部材50による接合層40の封止性能をさらに高めることができる。これにより、接合層40の外周面40a付近へのプラズマやプロセスガスの侵入をより効果的に防止することができる。
【0048】
ここで、変形例について図4を参照しながら説明する。変形例では、図4に示すように、基本的な構成は上記の実施形態と同じであり、内側保護部材150の形状が上記の実施形態とは異なる。すなわち、変形例では、内側保護部材150の外周面150aが、径方向(X軸又はY軸方向)における外側方向へ凸となる円弧形状に形成されている。
【0049】
このような変形例では、上記の実施形態と同様に、接合層40の外周面40a全域を覆うように内側保護部材150が第1段部31,35に配置され、その内側保護部材150の外周面150a全域を覆うように外側保護部材60が第2段部32,36に配置されている。そして、変形例では、内側保護部材150の外周面150aが外側へ凸となる円弧形状であるため、外側保護部材60によって内側保護部材150を内側へより一層効果的に押圧することができる。従って、内側保護部材150による接合層40の封止性能をさらに高めることができるので、接合層40の外周面40a付近へのプラズマやプロセスガスの侵入をより一層効果的に防止することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態の静電チャック1によれば、内側保護部材50により接合層40の外周面40aを覆うように配置し、その内側保護部材50を覆うように、内側保護部材50よりもZ軸方向の寸法が大きい外側保護部材60を配置している。そのため、内側保護部材50にねじれや傾きが発生することを防止することができるので、内側保護部材50で接合層40の外周面40a全域を確実に覆うことができる。従って、内側保護部材50と外側保護部材60とにより、接合層40の外周面40a付近にプラズマやプロセスガスが侵入することを防止することができる。
【0051】
そして、板状部材10とベース部材20とにそれぞれ設けた第1段部31,35に内側保護部材50を配置し、第2段部32,36に外側保護部材60を配置しているため、内側保護部材50と外側保護部材60のそれぞれを位置ズレすることなく、適正な位置に配置することができる。従って、接合層40の外周面40a全域を確実に覆った状態の内側保護部材50の全体を外側保護部材60で確実に覆うことができるため、内側保護部材50によって接合層40を確実に封止することができ、接合層40へのプラズマやプロセスガスの侵入を防止することができる。
【0052】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、本開示を静電チャックに適用した場合を例示したが、本開示は、静電チャックに限られることなく、表面に対象物を保持する保持装置全般について適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 静電チャック
10 板状部材
11 保持面
12 下面
20 ベース部材
21 上面
22 下面
31 第1段部
32 第2段部
35 第1段部
36 第2段部
40 接合層
50 内側保護部材
60 外側保護部材
150 内側保護部材
150a 外周面
W 半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4