(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175826
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】芯折れ防止機構付きシャープペンシル
(51)【国際特許分類】
B43K 21/027 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
B43K21/027 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082542
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】392005126
【氏名又は名称】ミクロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】金成 裕之
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FA04
2C353FC13
2C353FE04
2C353FG01
(57)【要約】
【課題】芯保護パイプを有するスライダーを前後動可能に装着し、筆記に伴ってスライダーを後退させる形式のシャープペンシルにおいて、筆圧により芯保護パイプが湾曲するようなことがなく、スライダーがスムーズに移動して少ないノック操作で芯を繰り出すことができる芯折れ防止機能付きシャープペンシルを提供する。
【解決手段】テーパー部材16に、外側パイプ19を有する外側パイプホルダー18を設け、外側パイプホルダー内に、芯保護パイプ17を有するスライダー20を前後動可能に収納する。芯保護パイプは、外側パイプの先端から外方に突出する。スライダーの内部には、芯保護パイプを引きずりながら筆記しても、邪魔にならない程度のきわめて弱い荷重の弱芯保持部25が設けられている。スライダーの外面には、抵抗力を生じない無抵抗摺接面が設けられている。スライダーは、芯と一緒に移動し、ガタツキもなく、芯折れを防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック及び締付リングを含む芯送り出し機構を収納した本体と、該本体の先端に設けられたテーパー部材と、該テーパー部材内に前後動可能に設けられ前進したときテーパー部材の先端から突出する芯保護パイプを有するスライダーと、上記芯保護パイプの先端を囲むよう上記テーパー部材の先端に設けられた外側パイプを具備し、上記スライダーの外面にはテーパー部材の内面に抵抗力を生じることなく摺接する無抵抗摺接面が形成され、該スライダーの内面には上記チャックにより送り出された芯が自重で落下しない程度の弱い保持力を有する弱芯保持部が設けられている芯折れ防止機構付きシャープペンシル。
【請求項2】
上記チャック及び締付リングを前進させて芯を送り出すときの芯送り距離は、筆記に必要な芯の突出量に、チャックが締付リングに入り込むときの芯の引き込み距離を加えた距離である請求項1に記載の芯折れ防止機構付きシャープペンシル。
【請求項3】
上記弱芯保持部の芯保持力は、芯保護パイプを引きずりながら筆記しても、邪魔にならない程度の荷重である請求項1に記載の芯折れ防止機構付きシャープペンシル。
【請求項4】
上記外側パイプは、テーパー部材に固定されている請求項1に記載の芯折れ防止機構付きシャープペンシル。
【請求項5】
上記外側パイプは、テーパー部材内に挿入した外側パイプホルダーに設けられている請求項1に記載の芯折れ防止機構付きシャープペンシル。
【請求項6】
上記外側パイプホルダーは前後動可能に設けられ、その後端は上記チャック、締付リングを保持する保持筒に対向しており、この保持筒は筆圧よりも大きいバネ圧のクッションスプリングで前方に付勢されて請求項5に記載の芯折れ防止機構付きシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダーの先端に設けた芯保護パイプにより芯の先端外周を覆って芯折れを防止し、筆記に伴って芯保護パイプとスライダーが後退するようにした芯折れ防止機構付きシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本体の先端にテーパー部材を設け、このテーパー部材に設けた先端開口部から出没可能に芯保護パイプを挿入し、該芯保護パイプの後端をテーパー部材内で前後動するスライダーに固定し、芯保護パイプに芯の先端を挿通して芯折れを防止し、芯の消耗にともなって芯保護パイプとスライダーを後退させるようにしたシャープペンシルが広く知られている(例えば特許文献1参照)。ノック式シャープペンシルでは、通常、芯送り出し機構として、コレットチャック形式のチャックと、該チャックを締着する締付リング(クラッチ)と、チャックを後方に付勢するチャックスプリングが用いられており、チャックは締付リング内に潜り込むことにより閉じて芯を把持する。上記チャックをノックすると、チャックは芯を把持したまま前進し、その途中で締付リングによるチャックの締め付けが解放され、芯は前進する。この操作により芯は、前進位置まで繰り出され、芯保護パイプから突出する。
【0003】
上記ノック操作を止めると、チャックは後退する。この際、芯が前進位置に保持されていないと、芯はチャックと一緒に後退することになり、何度もノックしなければ芯を繰り出すことができなくなる。そのため、通常は、芯が前進位置に留まるように、スライダーに芯保持部を設けて芯を仮保持している。また、上記チャックが後退する際、チャックは後退の途中で締付リング内に潜り込むことにより徐々に閉じられから、このとき、芯は少し引き込まれる。このときの引き込み力で、スライダーが一緒に後退してしまうと芯を繰り出すことができなくなる。特許文献1は、従来のスライダーの一例を示し、スライダーの内面には、芯の外面に摩擦抵抗をもって摺接する合成樹脂材料製の芯保持部が形成され、外面には、テーパー部材の内面に摩擦抵抗をもって摺接する合成樹脂製の抵抗用弾性片が設けられている。そして、テーパー部材の内面に摺接する抵抗用弾性片の摩擦抵抗を、芯の外面に摺接する芯把持部の摩擦抵抗よりも大きくなるように設けてあり、芯が引き込まれるときに、スライダーが後退しないようにしてある。
【0004】
筆記の際、芯保護パイプは紙面にあたって後退する。このときの抵抗力は、芯を仮保持している芯保持部材の抵抗力とスライダーを定位置に保持している抵抗用弾性片による抵抗力を加えた抵抗力となる。この大きな抵抗力は、常に芯保護パイプに作用しているから、筆記先端の抵抗力が大きくなり、筆記抵抗が高くなってスムーズな筆記が阻害される。
【0005】
上記のようにして、芯保護パイプにより芯折れを防止できるが、さらに、芯の筆記先端に、過大な荷重が作用したとき、芯折れを防止するようにしたシャープペンシルも知られている。
図17はそのような一例を示している。
図17において、本体101の先端に連結したテーパー部材102には、上記特許文献1のものと同様の構成の芯保護パイプ103を有するスライダー104が挿入され、スライダーの内面には芯を仮保持する芯保持部105が設けられ、外面には芯保持部による抵抗力よりも大きな抵抗力を有する抵抗用弾性片106が設けられている。チャック107や締付リング108、チャックスプリング113等の芯送り出し機構を保持する保持筒109は、筆圧よりも大きな弾性力を有するクッションスプリング110で前方に付勢されている。そして、筆記状態では、
図17Aに示すように、スライダー104及び芯保護パイプ103は前進してテーパー部材102の内面段部111に当接しており、芯保護パイプ103の先端がテーパー部材102から突出し、筆記することができる。
図17Bに示すように、矢印方向に過大な荷重が先端に作用すると、芯保護パイプ103及びスライダー104は後退し、スライダー104は後退位置に停止する。このとき、チャック107は芯112を把持した状態のままであるから、芯112に押されて、保持筒109とともに、クッションスプリング110に抗して、後退する。このときの後退距離はL1である。過大な荷重がなくなると、チャック107等を保持する保持筒109は、クッションスプリング110により前進するから、このとき、
図17Cに示すように、チャック107に把持された状態の芯112も前進する。前進の際、チャック107は、スライダー104を押さないから、スライダーは、抵抗用弾性片106による抵抗力で後退した位置に停止したままである。このような状態になると、芯保護パイプ103はテーパー部材102の先端から突出しないので、芯112だけが前進し、テーパー部材102の先端から突出する。このとき突出する距離は、上記L1に相当する距離L2である。そのため、先端部分は、芯保護パイプ103で保護されずにテーパー部材の外方に露出するから、芯が折れやすくなる。
【0006】
通常、筆記時の視認性を確保するため、芯保護パイプは、テーパー部材から3~4mm程度突出させた状態で使用することが多い。そのため、筆記時の角度によっては芯の筆記先端から作用する筆圧が芯保護パイプの横方向に作用し、芯保護パイプには、テーパー部材の先端に接する部分を支点として芯保護パイプを湾曲する方向に力が加わることになる。この力は、芯保護パイプの外面とテーパー部材の先端間での抵抗となり、かつ該芯保護パイプを介してスライダーにも作用するから、スライダーは側方に押圧され、スライダーの直進動を阻害する原因ともなる。このように、横方向に力が作用すると、スライダーの直進動が確保されずに、芯折れを発生する原因の1つにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63-21082号公報(実用新案登録請求の範囲、図面)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決課題は、芯を保護する芯保護パイプを先端に有するスライダーを具備し、芯を繰り出す際にスライダーを前進させ、筆記に伴ってスライダーを後退させるようにしたシャープペンシルにおいて、少ないノック操作により芯を繰り出すことができ、筆記する際に、大きな引き摺り抵抗を生じることがなく、スライダーがスムーズに後退し、かつ芯保護パイプやスライダーがしなったり、傾いたりせずに安定状態で移動できるようにした芯折れ防止機構付きシャープペンシルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、チャック及び締付リングを含む芯送り出し機構を収納した本体と、該本体の先端に設けられたテーパー部材と、該テーパー部材内に前後動可能に設けられ前進したときテーパー部材の先端から突出する芯保護パイプを有するスライダーと、上記芯保護パイプの先端を囲むよう上記テーパー部材の先端に設けられた外側パイプを具備し、上記スライダーの外面にはテーパー部材の内面に抵抗力を生じることなく摺接する無抵抗摺接面が形成され、該スライダーの内面には上記チャックにより繰り出された芯が自重で落下しない程度の弱い保持力を有する弱芯保持部が設けられている芯折れ防止機構付きシャープペンシルが提供される。なお、本発明において、芯がテーパー部材から繰り出される方向を、「前」、「先」とし、本体内に収納される方向を、「後」として説明する。
【0010】
上記弱芯保持部の芯保持力は、芯保護パイプを引きずりながら筆記しても、邪魔にならない程度の荷重であり、約数グラム程度に設定されている。上記外側パイプは、テーパー部材に固定したり、若しくはテーパー部材内に挿入した外側パイプホルダーに設けられている。該外側パイプホルダーは、テーパー部材内に固定したり、前後動可能に設けられている。前後動可能に設けた場合、外側パイプホルダーの後端は、チャック、締付リングを保持する保持筒に対向しており、この保持筒は筆圧よりも大きいバネ圧のクッションスプリングで前方に付勢されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記のように構成され、本体の先端に設けたテーパー部材内には、前進したときテーパー部材の先端から突出する芯保護パイプを有するスライダーが前後動可能に設けられ、上記芯保護パイプの先端を囲むよう上記テーパー部材の先端には、外側パイプが設けられている。上記スライダーの外面には、テーパー部材の内面に摺接する無抵抗摺接面が形成され、該スライダーの内面には送り出された芯が自重で落下しない程度の弱い保持力を有する弱芯保持部が設けられている。この構成により、芯送り出し機構のチャックをノックすると、チャックで送り出された芯の外面は、スライダー内の弱芯保持部に接触する。このスライダーの外面にはテーパー部材の内面に抵抗力を生じることなく接触する無抵抗摺接面が設けられているから、スライダーは弱芯保持部に進入した芯によって前進し、1回のノックで芯は前進位置に送り出され、芯保護パイプで芯を保護した状態で、筆記することができる。なお、ノックが後退するときの芯が引き込まれるときの引き込み距離を考慮して、ノック操作による芯送り距離は、通常の筆記に必要な一回分の芯送り量に、引き込み距離を加えた分、多く芯送りされる。そして、筆記に伴って芯保護パイプが紙面にあたると、スライダーの外面に無抵抗摺接面が形成されているとともに弱芯保持部による芯保持力がきわめて弱いので、芯保護パイプ及びスライダーは容易に後退し、筆記の際の引き摺り抵抗が弱く、筆記しやすい。
【0012】
また、スライダーの前部に設けた芯保護パイプは、テーパー部材に設けた外側パイプで外周が覆われ、該外側パイプを挿通して外方に突出するから、外側パイプにより保護される。そのため、筆記時に芯保護パイプを湾曲させるような力が作用しても外側パイプにより保護され、芯保護パイプが湾曲するようなおそれがなくなる。したがって、スライダーの傾きが抑えられ、落下させたときに芯保護パイプが曲がらないようにできる。以上のように、スライダーの直進動が確保されるので、一層芯折れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】外側パイプホルダーを使用しない実施例の一部の断面図及び一部の拡大説明図。
【
図3】スライダーの一実施例を示し、Aは平面図、Bは半断面図、Cは右側面図。
【
図4】スライダーの他の実施例を示し、Aは平面図、Bは半断面図、Cは右側面図。
【
図5】外側パイプホルダーを示し、Aは平面図、Bは半断面図、Cは一部の縦断面図、Dは右側面図。
【
図6】外側パイプホルダーの他の実施例を示し、Aは平面図、Bは半断面図及び一部の拡大説明図。
【
図7】
図3に示すスライダー及び
図5に示す外側パイプホルダーをテーパー部材に組み込んだ状態の説明図。
【
図8】
図7に示す外側パイプホルダー等が後退した状態の説明図。
【
図9】
図4に示すスライダー及び
図6に示す外側パイプホルダーをテーパー部材に組み込んだ状態の説明図。
【
図10】
図9に示す外側パイプホルダー等が後退した状態の説明図。
【
図11】芯送り出し機構を示し、Aは芯保護パイプを収納した状態、Bはノックした状態、Cはチャックが戻り始めた状態、Dは筆記状態の各説明図。
【
図12】筆記状態を示し、Aは筆記の開始時、Bは芯保護パイプが後退したときの側面図。
【
図13】クッション機構を示し、Aは筆記状態、Bはクッションスプリングが縮んだ状態の各説明図。
【
図14】クッション機構の動作を示し、Aはクッションスプリングが縮んで芯保護パイプが後退した状態、Bはクッションスプリングが伸長して芯保護パイプが筆記状態に戻った状態の各側面図。
【
図15】外側パイプの保護機構を示し、Aは外側パイプ内に芯保護パイプを収納した状態の側面図、Bは落下した状態の側面図、Cは芯保護パイプを収納した状態の説明図、Dは落下した状態の説明図。
【
図16】クッション機構を具備していないシャープペンシルの断面図。
【
図17】従来のシャープペンシルを示し、Aは筆記状態、Bは芯保護パイプの先端に過大な荷重が作用したときの芯が後退した状態、Cは過大な荷重が取り除かれた状態の各説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例を示し、筒状の本体1は、大径の後部2の外側にクリップ3を有し、該後部2よりも内径の小さい前部4内には、公知のように、芯送り出し機構を構成するチャック5及び締付リング6が収納されている。上記本体の後部2内には、後端に消しゴム7を装着した芯タンク8が挿入されており、該芯タンク8の先端に上記チャック5が固着されている。該チャック5は、締付リング6内に引き込まれたとき、芯9を把持する。該チャック5と締付リング6は、上記本体の前部4内に前後動可能に挿入した保持筒10に挿入されている。保持筒10の内段部11と上記芯タンク8の先端間には、チャック5を後方に付勢するチャックスプリング12が設けられている。また、保持筒10の後端と本体内に設けた肩部13間には、通常の筆圧よりも大きなバネ圧のクッションスプリング14が設けられている。上記本体前部4の外周にはグリップ15が設けられている。本体1の先部にはテーパー部材16がねじ着され、テーパー部材16の先端からは、ステンレスパイプ等で作られた芯保護パイプ17が突出している。上記の構成により、芯タンク8をノックすると、公知のように、チャック5が前進し、前進の途中で締付リング6によるチャックの締付が解放され、芯9は前方に送られ、芯保護パイプ17から突出し、筆記することができる。
【0015】
上記テーパー部材16内には、外側パイプホルダー18が設けられ、この外側パイプホルダー18の先端には、芯保護パイプ17の外周を覆う内径の外側パイプ19が固着されている。外側パイプ19は、筆記時に芯保護パイプ17に作用する湾曲力を押さえることができる強度を有し、好ましくは芯保護パイプ17の外面が摺接する内径で、視認性を邪魔しない程度の細い外径のステンレスパイプ等の細い金属パイプ材料で形成してある。また、外側パイプ19の長さは、筆記時に上記芯保護パイプ17を突出した際、芯保護パイプ17の先端よりも後方に外側パイプ19の先端が位置するような長さに形成されている。上記外側パイプホルダー18は、テーパー部材16内に固定的に設けてもよいが、好ましくは、外側パイプ19に過大な荷重が作用したときに後退できるよう前後動可能に設けてある。上記外側パイプ19は、
図2に示すように、外側パイプホルダー18を用いないで、テーパー部材16の先部に直接固定してもよい。上記外側パイプホルダー18内には、スライダー20が前後動可能に収納されており、該スライダー20の先端には、上記外側パイプ19内に挿通されて芯9を保護する上記芯保護パイプ17が固定されている。
図2に示す実施例の場合には、テーパー部材16内にスライダー20が前後動可能に収納され、該スライダー20が後方に抜け出さないように、抜け止め用の隆起部21がテーパー部材16の後方内面に設けられている。
【0016】
図3は、スライダー20の一実施例を示し、該スライダー20は、先部側筒部22と、該先部側筒部22よりも大径の後部側筒部23を有し、該先部側筒部22に設けた取付孔24に上記芯保護パイプ17が固定される。後部側筒部23の内方には、芯9を仮保持する筒状の弱芯保持部25が設けられている。上記弱芯保持部25は、従来のシャープペンシルと同様に、長手方向に延びるスリットを設けて芯9を弾性的に保持するようにしてあるが、ゴム材料等の弾性材料で弱芯保持部を構成することもできる(図示略)。本発明の弱芯保持部25による芯保持力は、従来のシャープペンシルの芯保持部に比べてはるかに小さな弱芯保持力に設定されている。具体的には、本体1の先端を下向きにしたときに、自重で芯9が落下しない程度の極めて弱い芯保持力、例えば数g程度に設定され、芯保護パイプ17を引きずりながら筆記しても、邪魔にならない程度の荷重に設定されている。また、従来のシャープペンシルでは、チャックが後退するとき、スライダーが一緒に後方に引き込まれないよう大きな弾性抵抗力でテーパー部材に内接する抵抗用弾性片をスライダーに設けてあるが、本発明の上記後部側筒部には、そのような抵抗用弾性片は設けられていない。本発明の後部側筒部23は、外側パイプホルダー18の内面に内接するが、外側パイプホルダー18との間で接触抵抗を生じないよう無抵抗摺接面26に形成してある。なお、
図3に示す実施例では、後部側筒部23の外面に外側パイプホルダー18から抜け落ちないよう抜け止め爪27を設けてあるが、
図4に示す実施例のように後端面を抜け止め用当接部28としてもよい。
【0017】
図5を参照し、外側パイプホルダー18は、上記テーパー部材16内に挿入される大きさの筒状体に形成され、先端にテーパー部材16の先端開口部から突出するテーパー形状の取付部位29が形成され、その内部に、外側パイプ19の取付孔30が形成されている。外側パイプホルダー18の外面には、上記テーパー部材16の内面に当って抜け止めの作用を奏する肩部31が形成され、該肩部31の後方は小径部に形成され、その後端には、上記保持筒10の先端に当接するストッパー部32が設けられている。上記小径部には、スライダー20に設けた抜け止め爪27(
図3参照)が入り込む抜け止め溝33が設けられている。外側パイプホルダー18の内面には上記スライダー20が前進したとき、先部側筒部22の先端が当接するストッパー部34が設けられている。ストッパー部34の後方にはスライダー20の無抵抗摺接面26がスライドする後部側摺動面35が形成されている。また、後端には、ノック操作により、上記チャック5と締付リング6を前進させた際、前進の途中で上記締付リング6によるチャック5の締付を解放するよう、締付リング6が当接する内方段部36が設けられている。
【0018】
図6は、外側パイプホルダー18の他の実施例を示す。この実施例においては、
図5に示すような抜け止め溝33に代えて、
図4に示すスライダー20の抜け止め用当接部28が当接するよう抜け止め用の隆起部37を設けてあり、後端には上記保持筒10の先端に当接するストッパー部32を設けてある。
【0019】
図3に示すスライダー20の先部側筒部22には芯保護パイプ17が固定され、
図5に示す外側パイプホルダー18には外側パイプ19が固定される。そして、芯保護パイプ17を外側パイプ19に挿通し、かつ抜け止め爪27を抜け止め溝33に係合させた状態でスライダー20と外側パイプホルダー18を組み合わせ、これをテーパー部材16に組み込む(
図7参照)。外側パイプホルダー18は、テーパー部材16の内面にあたって止まるまで差し込まれるが、このとき、芯保護パイプ17は、先端が外側パイプ19の先端よりも前方に少し突出できるような長さに形成されている。この状態で、芯保護パイプ17の先端に過大な荷重が作用すると、芯保護パイプ17の全体が外側パイプ19内に入り込み、スライダー20の後端がストッパー部32に当たるとともに、スライダー20は外側パイプホルダー18内で後退し、さらに外側パイプホルダー18も、
図8に示すように、テーパー部材16内で後退する。
【0020】
図4に示すスライダー20に、芯保護パイプ17を固定し、
図6に示す外側パイプホルダー18に、外側パイプ19を固定する。そして、芯保護パイプ17を、先端が外側パイプ19の先端よりも突出すように、外側パイプ19に挿通し、外側パイプホルダー18内に設けた隆起部37の前方に位置するようにスライダー20を外側パイプホルダー18内に組み込み、これをテーパー部材16にセットする(
図9参照)。この状態で、芯保護パイプ17の先端に過大な荷重が作用すると、
図10に示すように、芯保護パイプ17の全体が外側パイプ19内に入り込み、スライダー20の後端が隆起部37に当たる位置まで、スライダー20が外側パイプホルダー18内で後退し、さらに外側パイプホルダー18も、テーパー部材16内で後退する。
【0021】
本発明の芯送り出し構造が、
図11に示されている。
図11Aは、筆記に伴って芯保護パイプ17が外側パイプ19内に没入している状態を示している。この状態は、上記
図8、
図10に示したようにスライダー20は、ストッパー部32や隆起部37に当接する位置まで後退している。この状態で、締付リング6の先端と、内方段部36の間には、距離L3の隙間があいており、この距離L3が、芯送り距離となる。すなわち、
図11Bのように芯タンク8をノックすると、チャック5及び締付リング6は前進し、前進の途中で締付リング6は内方段部36に当って前進が停止し、チャック5を解放する。このように、締付リング6が内方段部36に当接するまで芯9を送り出すことができるので、この距離が、芯送り距離となる。チャック5はさらに前進し、スライダー20を、ストッパー部34に当たる位置まで前方に押し出し、芯保護パイプ17の先端を外側パイプ19の先端から突出させる。このとき、外側パイプ19の先端から芯保護パイプ17の先端までの距離が、パイプ最大突出距離L4となる。
【0022】
ノックを停止すると、チャック5は、チャックスプリング12により後退する(
図11C参照)。後退の途中でチャック5は締付リング6内に次第に入り込み、閉鎖しながら後退するので、芯9は後方に引き込まれる。このとき、
図11Dに示すように、スライダー20の弱芯保持部25は極めて弱い保持力で芯9を保持しているから、スライダー20も後退し、スライダー20の先端と、ストップ部34の間には、芯引き込み距離L5に相当する隙間があく。この隙間はわずかな量であるが、芯9はチャック5に把持されているので、支承なく筆記することができる。上記スライダー20には、従来のシャープペンシルのような抵抗用弾性片が設けられていないので、チャック5が後退して芯9を後方に引き込むとき、スライダー20も引き込まれる。そのため、筆記状態を確保するためには、上記芯送り距離L3は、引き込み距離L5を考慮して芯を送り出さなければならない。具体的には、例えば筆記する際に必要な芯の突出量を、0.8mmとし、引き込み距離が0.7mmである場合には、芯送り距離L3は、0.8mmに0.7mmを加えた1.5mmとしてある。このようにすれば、芯が引き込まれて0.7mm後退したとしても、1.5mm-0.7mm=0.8mmとなり、芯送り距離L3として、0.8mmを確保できるので、支承なく筆記することができる。
【0023】
この状態で筆記することができ、芯を保護する芯保護パイプ17は、
図12Aに示すように、距離L6突出して紙面38にあたり、芯の摩滅に伴って、芯保護パイプ及びスライダーは後退して、突出距離はL7となる(
図12B参照)。後退の際、上記スライダー20は、外周に無抵抗摺接面26を有し、外側パイプホルダー18の内周面との間で抵抗を生じることなく移動するで、大きな引き摺り抵抗がほとんど生じない。筆記を続けると、スライダー20は、
図11Aに示すように、後端がストッパー部32に当る位置まで後退する。そして、この状態になったら、上述のように芯タンク8をノックすると、上記
図11B、
図11C、
図11Dに示すように、一回のノック操作で芯9を繰り出すことができる。この際、スライダー20の外周が無抵抗摺接面26に形成されているので、芯送り出しの際にスライダー20を芯9と一緒に前進させることができ、芯9だけが芯保護パイプ17の先端から飛び出すおそれはない。
【0024】
筆記の際に芯保護パイプ17がテーパー部材16から突出する長さは、外側パイプ19を有しない従来のシャープペンシルでは、芯保護パイプ17の外周が外側パイプ19で覆われていないから、テーパー部材16の先端から芯保護パイプのほぼ全長が露出することになる。一方、本発明では、芯保護パイプ17の外周を、テーパー部材16に設けた外側パイプ19で覆っているから、芯保護パイプ17が露出する長さは、外側パイプ19の先端から突出する長さであり、従来のシャープペンシルに比べて、芯保護パイプ17が露出する長さが短い。筆記時には、
図12Aに示すように、本体を斜めに持って筆記するので、芯保護パイプ17の先端には、筆圧による斜めの荷重が作用し、この荷重は芯保護パイプ17を曲げようとする湾曲力となる。この湾曲力は、(芯保護パイプの先端部に作用する荷重)×(芯保護パイプの先端部が突出する長さ)となる。上記のように、本発明の芯保護パイプの先端は、外側パイプの先端から突出しているので、従来のように、外側パイプを設けないで芯保護パイプをテーパー部材から直接露出させた場合に比べて、突出長さを短くできる。そのため、芯保護パイプ17に作用する湾曲力を少なくすることができる。したがって、芯保護パイプ17やスライダー20が後退するときに作用する摩擦抵抗力も減少され、スライダー20の直進動が確保され、十分に芯折れを防止することができる。
【0025】
また、芯保護パイプ17は、外側パイプ19にガイドされて移動するので、外側パイプ19を有していない従来のシャープペンシルに比べてガイド長さが長くなる。そのため、芯保護パイプ17及びスライダー20のブレが少なくなり、安定状態で後退するから、一層芯折れを防止することができる。シャープペンシルを落下させたときには、芯保護パイプ17が外側パイプ19内に後退するので、芯保護パイプ17の先端を保護することができる。
【0026】
図1に示す実施例では、保持筒10の後方にクッションスプリングを設けてあるので、過大筆圧が作用してときに、クッション作用を奏することができる。
図13を参照し、
図13Aは、
図1に示すように、チャック5及び締付リング6により芯9は把持されている。この状態で芯9の先端に過大な荷重が作用すると、
図13B及び
図14Aに示すように、芯9を介して芯保護パイプ17、スライダー20が後退(
図14A参照)し、同時に、チャック5及び締付リング6を収納した保持筒10も、クッションスプリング14を縮ませながら後退する。このとき、クッションスプリング14の長さ、距離L8に縮み、外側パイプホルダー18と保持筒10の間に隙間L9があく。そして、過大な荷重が消失すると、上記クッションスプリング14の作用で保持筒10が隙間L9分、前進し、スライダー20及び芯保護パイプ17も同じ距離前進し、筆記状態に戻る(
図13A、
図14B参照)。このとき、スライダー20の外周には抵抗用弾性片が設けられていないので、芯9と一緒にスライダー20が前進する。したがって、
図17Cに示した従来のシャープペンシルのように、スライダーがテーパー部材内の途中で留まって芯の先端だけが突出するような事態を生じるおそれはなく、芯の先端まで芯保護パイプにより確実に保護することができる。
【0027】
図15は、上記外側パイプ19の保護機構を示している。この実施例では、外側パイプホルダー18は、テーパー部材16に前後動可能に挿入されている。先ず、
図15A、
図15Cに示すように、芯保護パイプ17を外側パイプ19内に収納する。この状態で、本体を床39に落下させた場合、
図15B、
図15Dに示すように、外側パイプ19を固定した外側パイプホルダー18は、テーパー部材16内で距離L10後退し、上記保持筒10に当り、保持筒10をクッションスプリング14に抗して後退させる。クッションスプリング14は、縮んで長さL11となる。このクッションスプリング14の緩衝作用により、外側パイプ19の損傷が防止され、床から持ち上げれば、クッションスプリング14の作用により、保持筒10及び外側パイプホイルダー18が前進し、最初の状態に戻る。
【0028】
上記実施例では、クッション機構を設けてあるが、該クッション機構を省略することもできる。
図16は、そのような実施例を示し、基本的には上記
図1に示す実施例と同じ構成なので、共通する部分は、同じ符号を用いて説明する。本体1は筒状に形成され、後部2は外側にクリップ3を有し、該後部2よりも内径の小さい前部4の外周には、グリップ15が設けられている。この前部4の先端には、チャック5及び締付リング6が前後動可能に収納され、チャック5の後部は本体1に収納した芯タンク8に連結している。芯タンク8の先部と、本体の前部内に設けた内段部11間にはチャックスプリング12が設けられ、チャック5を後方に付勢している。芯タンク8の後端には、公知の消しゴム繰り出し機構40が設けられ、消しゴム7が装着されている。消しゴムは、
図1に示すように、芯タンクの後端に装着してもよい。上記本体1の先部には、テーパー部材16がねじ着されており、このテーパー部材16内に、外側パイプ19を有する外側パイプホルダー18が挿入され、固定されている。外側パイプホルダー18内には、スライダー20が前後動可能に挿入され、スライダー20の先端には、芯保護パイプ17が固定されている。芯保護パイプ17は、上記外側パイプ19に前後動可能に挿入され、その先端から突出する。
【0029】
上記スライダー20の内方には、芯9を仮保持する筒状の弱芯保持部25が設けられている。上記弱芯保持部25は、従来のシャープペンシルと同様に、長手方向に延びるスリットを設けて芯を弾性的に仮保持するようにしてあるが、ゴム材料等の弾性材料で弱芯保持部を構成することもできる(図示略)。上記弱芯保持部25による芯保持力は、従来のシャープペンシルに比べてはるかに小さな弱芯保持力に設定されている。具体的には、本体の先端を下向きにしたときに、自重で芯が落下しない程度の極めて弱い芯保持力、例えば数g程度に設定され、芯保護パイプ17を引きずりながら筆記しても、邪魔にならない程度の荷重に設定されている。また、スライダー20の外面には無抵抗摺接面26が形成され、該無抵抗摺接面26は、外側パイプホルダー18の内面にほとんど無抵抗で摺接する。外側パイプホルダー18の内面には、スライダー20の抜け止め用の隆起部37が設けられている。
【0030】
上記構成により芯タンク8をノックすると、チャック5が前進して芯9を送り出すことができる。ノックを止めてチャック5が後退するとき、チャック5は締付リング6内に入り込み、そのときに、芯9が引き込まれる。したがって、ノック操作により芯を送り出す距離は、引き込み距離を考慮して定められる。すなわち、筆記する際に必要な芯の突出量に、芯の引き込み距離を加えた距離を、芯送り距離としてある。このようにすれば、チャックが後退するとき、芯9が後方に引き込まれても、筆記に必要な長さを確保でき、支障なく筆記することができる。
【0031】
上記の構成により、
図16の実施例に示すシャープペンシルは、1回のノック操作でスライダー20及び芯保護パイプ17を前進させて芯9を送り出すことができる。筆記に伴ってスライダー20及び芯保護パイプ17は抵抗を生じることなく後退するから、先端を引きずりながら筆記しても、違和感がなく、筆記の邪魔にならない。また、芯保護パイプ17は外側パイプ19により外周が覆われているので、筆記時の先端に作用する湾曲力に十分耐え、屈曲しにくくでき、芯折れを防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 本体
5 チャック
6 締付リング
10 保持筒
14 クッションスプリング
16 テーパー部材
17 芯保護パイプ
18 外側パイプホルダー
19 外側パイプ
20 スライダー
25 弱芯保持部
26 無抵抗摺接面