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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175863
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】運動訓練システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A61H1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082615
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 達也
(72)【発明者】
【氏名】日原 康太
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA04
4C046AA42
4C046AA45
4C046AA47
4C046BB04
4C046DD02
4C046DD08
4C046DD12
4C046DD14
4C046DD16
4C046DD33
4C046EE06
4C046EE32
4C046FF22
4C046FF27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用者と訓練指導者とが離れた位置にいる場合でも、効果的な運動訓練を行うシステム及びプログラムを提供する。
【解決手段】運動訓練システムは、第1運動訓練装置1Aと第2運動訓練装置1Bとをデータの送受信可能に接続したシステムである。第1運動訓練装置1Aは、操作者が操作する第1操作部3Aを有し、第1操作部3Aは、XY平面の第1の可動領域α1で移動可能である。第2運動訓練装置1Bは、操作者が操作する第2操作部3Bを有し、第2操作部3Bは、XY平面の前記第1の可動領域α1よりも狭い第2の可動領域α2で移動可能である。第1運動訓練装置1AのPCは、第1操作部3AのXY平面での可動領域を第2の可動領域α2に制限可能である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
XY平面の第1の可動領域で移動可能な第1操作部と、
第1X軸および第1Y軸方向駆動モータを有し、前記第1操作部をXY平面で駆動する第1駆動部と、
前記第1操作部を操作する操作者から前記第1操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する第1力センサと、
前記第1X軸および第1Y軸方向駆動モータを制御する第1制御部と、を備えた第1運動訓練装置と、
XY平面の前記第1の可動領域よりも狭い第2の可動領域で移動可能な第2操作部と、
第2X軸および第2Y軸方向駆動モータを有し、前記第2操作部をXY平面で駆動する第2駆動部と、
前記第2操作部を操作する操作者から前記第2操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する第2力センサと、
前記第2X軸および第2Y軸方向駆動モータを制御する第2制御部と、を備え、前記第1運動訓練装置とデータの送受信可能に接続された第2運動訓練装置と、を有し、
前記第1制御部は、前記第1操作部の前記XY平面での可動領域を前記第2の可動領域に制限可能であり、
前記第1操作部と前記第2操作部とを前記第2の可動領域内で前記第1力センサ及び/又は前記第2力センサの入力値に基づいて移動させる、
ことを特徴とする運動訓練システム。
【請求項2】
前記XY平面における前記第2操作部の位置を検出する位置検出手段をさらに備え、
前記第1制御部は、前記第2操作部を前記第2の可動領域の端部まで移動させた際の前記位置検出手段により検出された前記第2操作部の位置に基づいて、前記第1操作部の前記XY平面での可動領域を制限する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の運動訓練システム。
【請求項3】
前記第1運動訓練装置は、前記第1操作部のホームポジションとして、前記第1の可動領域に合わせた第1ホームポジションと、前記第2の可動領域に合わせた第2ホームポジションとを有する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の運動訓練システム。
【請求項4】
前記第1運動訓練装置は、前記第1操作部の可動領域を表示可能な表示部を有し、
前記表示部は、前記第1運動訓練装置の可動領域が前記第2の可動領域に制限された場合には、前記可動領域の表示を前記第2の可動領域に合わせた表示に切り替える、
ことを特徴とする、請求項1ないし3の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項5】
前記第1運動訓練装置は、装置と操作者との距離を検出可能な第1距離センサを有する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項6】
前記第2運動訓練装置は、装置と操作者との距離を検出可能な第2距離センサを有する、
ことを特徴とする、請求項1ないし5の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項7】
前記第1運動訓練装置は、操作者の上肢の長さを入力可能な第1入力部を有する、
ことを特徴とする、請求項1ないし6の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項8】
前記第2運動訓練装置は、操作者の上肢の長さを入力可能な第2入力部を有する、
ことを特徴とする、請求項1ないし7の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項9】
XY平面の第1の可動領域で移動可能な第1操作部と、
第1X軸および第1Y軸方向駆動モータを有し、前記第1操作部をXY平面で駆動する第1駆動部と、
前記第1操作部を操作する操作者から前記第1操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する第1力センサと、
前記第1X軸および第1Y軸方向駆動モータを制御する第1制御部と、を備えた第1運動訓練装置と、
XY平面の前記第1の可動領域よりも狭い第2の可動領域で移動可能な第2操作部と、
第2X軸および第2Y軸方向駆動モータを有し、前記第2操作部をXY平面で駆動する第2駆動部と、
前記第2操作部を操作する操作者から前記第2操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する第2力センサと、
前記第2X軸および第2Y軸方向駆動モータを制御する第2制御部と、を備え、前記第1運動訓練装置とデータの送受信可能に接続された第2運動訓練装置と、を有する運動訓練システムに用いられるプログラムであって、
前記第2の可動領域を取得する第1工程と、
前記第1操作部の前記XY平面での可動領域を、前記第1工程で取得した前記第2の可動領域に制限する第2工程と、
前記第1操作部と前記第2操作部とを前記第2の可動領域内で前記第1力センサ及び/又は前記第2力センサの入力値に基づいて移動させる第3工程と、をコンピュータにより実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の平面運動を支援可能な運動訓練システム、及び、運動訓練システムに用いられるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動機能を向上させるために様々な運動訓練が行われている。例えば、机上を拭くような動作で肩や肘を屈伸させるワイピング訓練や傾斜したボード上で手を上下方向に滑動させるサンディング訓練が広く行われている。そして、これらの運動訓練を支援するために種々の運動訓練装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、XY平面で移動可能な操作部と、X軸およびY軸方向駆動モータを有し操作部をXY平面で駆動する駆動部と、操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、力センサで検出されたX軸およびY軸方向の力Fx,Fyに基づいてX軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部とを備えた運動訓練装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-89621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用者と訓練指導者とが離れた位置にいる場合でも、効果的な運動訓練を行うシステムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運動訓練システムは、XY平面の第1の可動領域で移動可能な第1操作部と、第1X軸および第1Y軸方向駆動モータを有し、前記第1操作部をXY平面で駆動する第1駆動部と、前記第1操作部を操作する操作者から前記第1操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する第1力センサと、前記第1X軸および第1Y軸方向駆動モータを制御する第1制御部と、を備えた第1運動訓練装置と、XY平面の前記第1の可動領域よりも狭い第2の可動領域で移動可能な第2操作部と、第2X軸および第2Y軸方向駆動モータを有し、前記第2操作部をXY平面で駆動する第2駆動部と、前記第2操作部を操作する操作者から前記第2操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する第2力センサと、前記第2X軸および第2Y軸方向駆動モータを制御する第2制御部と、を備え、前記第1運動訓練装置とデータの送受信可能に接続された第2運動訓練装置と、を有し、前記第1制御部は、前記第1操作部の前記XY平面での可動領域を前記第2の可動領域に制限可能であり、前記第1操作部と前記第2操作部とを前記第2の可動領域内で前記第1力センサ及び/又は前記第2力センサの入力値に基づいて移動させることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のプログラムは、XY平面の第1の可動領域で移動可能な第1操作部と、第1X軸および第1Y軸方向駆動モータを有し、前記第1操作部をXY平面で駆動する第1駆動部と、前記第1操作部を操作する操作者から前記第1操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する第1力センサと、前記第1X軸および第1Y軸方向駆動モータを制御する第1制御部と、を備えた第1運動訓練装置と、XY平面の前記第1の可動領域よりも狭い第2の可動領域で移動可能な第2操作部と、第2X軸および第2Y軸方向駆動モータを有し、前記第2操作部をXY平面で駆動する第2駆動部と、前記第2操作部を操作する操作者から前記第2操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する第2力センサと、前記第2X軸および第2Y軸方向駆動モータを制御する第2制御部と、を備え、前記第1運動訓練装置とデータの送受信可能に接続された第2運動訓練装置と、を有する運動訓練システムに用いられるプログラムであって、前記第2の可動領域を取得する第1工程と、前記第1操作部の前記XY平面での可動領域を、前記第1工程で取得した前記第2の可動領域に制限する第2工程と、前記第1操作部と前記第2操作部とを前記第2の可動領域内で前記第1力センサ及び/又は前記第2力センサの入力値に基づいて移動させる第3工程と、をコンピュータにより実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者と訓練指導者とが離れた位置にいる場合でも、効果的な運動訓練を行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の運動訓練装置の外観斜視図。
図2】実施形態の運動訓練装置の装置本体の斜視図。
図3】第1アクチュエータ機構の詳細を示す断面図。
図4】第2アクチュエータ機構の詳細を示す断面図。
図5】操作部の構成を示す分解斜視図。
図6】運動訓練装置の制御部のブロック図。
図7】実施形態の運動訓練システムの概略図。
図8】実施形態の運動訓練システムのブロック図。
図9】(a)大きい方の可動領域を、(b)小さい方の可動領域をそれぞれ示す模式図。
図10】運動訓練システムの可動領域設定の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明が適用可能な実施形態の運動訓練システムについて説明する。本実施形態の運動訓練システムは、詳しくは後述するように、データの送受信可能に接続された複数の運動訓練装置を備えたものである。このため、まずは、1つの運動訓練装置について説明する。
【0011】
[運動訓練装置]
本実施形態の運動訓練装置は略水平な載置面に載置され、例えば、使用者(運動訓練者)の上肢の運動機能向上を目的として行われる運動訓練に使用される(図1参照)。運動訓練装置1は、図1に示すように、操作部3を有し、使用者Uは運動訓練装置1の前側に位置し、例えば上肢運動訓練を行うために、右腕ULを前方に伸ばして操作部3を右手で把持している。尚、本明細書中では、図1の運動訓練装置1における使用者Uの手前側を前側、奥側を後側と称することとする。
【0012】
運動訓練装置1は、装置本体100と、PC(パーソナルコンピューター)70とを有する。また、本実施形態の運動訓練装置1は、これら装置本体100及びPC70に加えて、運動訓練装置1の情報を表示する表示部としてのモニター76を含む。なお、PC70は、運動訓練装置1全体を制御する制御部であり、制御プログラムがインストールされた汎用性のあるPCでも良いし、運動訓練装置1専用のものであっても良い。いずれにしても、制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0013】
装置本体100は、XY平面(載置面および基台2と平行な水平面)で移動可能な操作部3、操作部3をXY平面で駆動する駆動部200などを有する。これら操作部3や駆動部200は、基台2上に配置されている。駆動部200は、X軸およびY軸方向駆動モータとしての第1モータ6及び第2モータ30を有する。具体的には、駆動部200は、第1モータ6を有し、操作部3をX軸方向(図2の矢印Xの方向)に移動させる第1アクチュエータ機構AXと、第2モータ30を有し、操作部3及び第1アクチュエータ機構AXをY軸方向(図2の矢印Yの方向)に移動させる第2アクチュエータ機構AYとを備えている。
【0014】
操作部3は、ハンドル部材62に作用するX軸およびY軸方向の力を検出する力センサ60(図5参照)を備えている。PC70は、力センサ60、モータ制御部27,31及びモニター76に接続されている。X軸およびY軸方向駆動モータ6,30は、XY平面での操作部3の位置を検出する位置検出手段としてのエンコーダ6a、30a(図6)と一体に構成されている。
【0015】
これらの構成により、制御部としてのPC70は、力センサ60やエンコーダ6a、30aからの入力値に基づいて、モータ制御部27,31を介して第1モータ6及び第2モータ30の駆動を制御し、操作部3をXY平面上で移動させ、訓練情報や操作部3の移動軌跡等をモニター76に表示する。
【0016】
以下、図2図5に基づいて各構成について詳細に説明する。操作部3は、第1スライダーブロック4(第1保持部材)に取付プレート5を介して取り付けられており、第1スライダーブロック4と一体となって移動するように構成されている。第1スライダーブロック4は、XY平面上のX軸方向に延設した第1ガイドロッド9aおよび9bに沿ってスライド可能に設けられている。そして、第1ベルト10の一部は、ベルト固定プレート28とビス29によって第1スライダーブロック4に固定されている。これにより、第1ベルト10が第1モータ(X軸方向駆動モータ)6によって回転駆動すると、第1スライダーブロック4は第1ガイドロッド9a,9bに沿ってX軸方向にスライド移動する。
【0017】
図3に示す通り、第1アクチュエータ機構AXの第1モータ6の駆動は、軸13、プーリー14、ベルト15、プーリー17および軸16を介してプーリー18に伝達される。第1モータ6は支持板21に設けられており、支持板21は支持板11に固定されている。支持板11は、軸16を回転可能に支持し、第2スライダーブロック7とモータ制御部27を固定支持している。なお、支持板11及び第2スライダーブロック7を併せて第1ガイドロッド9a,9bの一端およびプーリー18を保持する第2保持部材という。
【0018】
X軸方向において第1モータ6の反対側には、支持板12,24が設けられている。支持板12,24は、軸19を回転可能に支持し、第3スライダーブロック8を固定支持している。軸19にはプーリー20が設けられており、プーリー18とプーリー20との間に第1ベルト10が架け渡されている。また、第1ガイドロッド9a,9bの一端は第2スライダーブロック7に固定支持され、第1ガイドロッド9a,9bの他端は第3スライダーブロック8に固定支持されている。なお、支持板12,24及び第3スライダーブロック8を併せて第1ガイドロッド9a,9bの他端およびプーリー20を保持する第3保持部材という。
【0019】
上述した通り、第1スライダーブロック4は、第1ベルト10の一部が固定されており、第1モータ6を駆動するとプーリー18が回転してプーリー20と共に第1ベルト10が回転する。このため、第1スライダーブロック4は、第1ガイドロッド9a,9bに沿ってX軸方向にスライド移動する。なお、第1ベルト10と第1ガイドロッド9a,9bは、それぞれX軸方向に平行で且つ第1ベルト10の両側に第1ガイドロッド9aと9bが配置され、基台2からの高さ位置は略同一となっている。
【0020】
図2に示す様に、第1アクチュエータ機構AXが有する第2スライダーブロック7と第3スライダーブロック8は、第2ガイドロッド55と第3ガイドロッド48に対してY軸方向にスライド移動可能に支持されている。そして、第2ベルト53と第3ベルト46が回転することで、第1アクチュエータ機構AX全体がY軸方向に移動可能となっている。図3に示す通り、第2ベルト53の一部は、第2スライダーブロック7に固定された支持板21に設けられたベルト固定プレートにビス23によって固定されている。また、第3ベルト46の一部は、第3スライダーブロック8に固定された支持板24に設けられたベルト固定プレート25にビス26によって固定されている。そして、第2アクチュエータ機構AYの第2モータ(Y軸方向駆動モータ)30が回転駆動することによって第3ベルト46および第2ベルト53が回転し、それにより第1アクチュエータ機構AXはY軸方向にスライド移動する。
【0021】
次に、図2図4を用いて第2アクチュエータ機構AYについて説明する。第2アクチュエータ機構AYは、第1アクチュエータ機構AXをY軸方向に移動させるための機構である。第2モータ30およびモータ制御部31は、基台2に設けられた支持板34,支柱33および支持板32からなる支持フレームの上部に設けられている。この支持フレームは使用者Uと反対の装置奥側(基台2のモニター76側)の中央部に固定されている。
【0022】
第2モータ30には不図示の軸およびプーリーが設けられており、プーリー36との間でベルト37が架け渡されている。支持板32と34との間には軸35が回転可能に支持され、この軸35にはプーリー36,38および39が設けられており、プーリー36の回転力が軸35を通じてプーリー38および39に伝達される。
【0023】
支持板32、34のX軸方向の両側には、コの字に形成された支持板45a,52aが設けられている。支持板45aは、軸43を回転可能に支持しており、軸43にプーリー42と44aが設けられている。プーリー38とプーリー42にはベルト40が架け渡されており、第2モータ30の回転駆動をベルト37,プーリー36,軸35,プーリー38,ベルト40,プーリー42および軸43を介してプーリー44aに伝達する。つまり、ベルト40は、第2モータ30の駆動を第3ベルト46に伝達するための第5ベルトである。
【0024】
支持板45a近傍にはガイド支持部47aが設けられており、第3ガイドロッド48の一端を支持している。また、基台2上で支持板45aのY軸方向における反対側(装置右手前側)には、支持板45aの対となる支持板45bとガイド支持部47aの対となるガイド支持部47bとが配置されている。
【0025】
支持板45bは、軸43bを回転可能に支持し、軸43bにはプーリー44aの対となるプーリー44bが設けられている。第3ベルト46はプーリー44aと44bとの間で架け渡されており、上述した通りその一部が第3スライダーブロック8と一体に移動するベルト固定プレート25に固定されている。また、ガイド支持部47bは、第3ガイドロッド48の他端を支持し、ガイド支持部47aと共に第3ガイドロッド48を固定支持している。第3ベルト46と第3ガイドロッド48とはそれぞれY軸方向に平行に延設され、基台2からの高さ位置は略同一となっている。
【0026】
X軸方向において支持フレームに対して支持板45aの反対側(基台2の左奥側)には、支持板52aが配置されている。支持板52aは、軸49を回転可能に支持しており、軸49にプーリー50と51aが設けられている。プーリー39とプーリー50には、ベルト41が架け渡されており、第2モータ30の回転駆動をベルト37,プーリー36,軸35,プーリー39,ベルト41,プーリー50および軸49を介してプーリー51aに伝達する。つまり、ベルト41は、第2モータ30の駆動を第2ベルト53に伝達するための第4ベルトである。
【0027】
支持板52a近傍にはガイド支持部54aが設けられており、第2ガイドロッド55の一端を支持している。また、基台2上で支持板52aのY軸方向における反対側(装置左手前側)には支持板52aの対となる支持板52bとガイド支持部54aの対となるガイド支持部54bとが配置されている。
【0028】
支持板52bは軸49bを回転可能に支持し、軸49bにはプーリー51aの対となるプーリー51bが設けられている。第2ベルト53は、プーリー51aと51bとの間で架け渡されており、上述した通りその一部が第2スライダーブロック7と一体に移動するベルト固定プレート22に固定されている。また、ガイド支持部54bは、第2ガイドロッド55の他端を支持し、ガイド支持部54aと共に第2ガイドロッド55を固定支持している。第3ベルト46と第3ガイドロッド48とは、それぞれY軸方向に平行に延設され、基台2からの高さ位置は略同一となっている。
【0029】
上述した通り、第2モータ30の回転駆動はプーリー44aとプーリー51aに伝達され、第3ベルト46と第2ベルト53が回転する。これにより、第3ベルト46と第2ベルト53にそれぞれ固定された第3スライダーブロック8と第2スライダーブロック7(つまり第1アクチュエータ機構AX全体)が第3ガイドロッド48と第2ガイドロッド55に沿ってY軸方向にスライド移動する。
【0030】
ここで、図4を参照するとベルト40とベルト41とは、X軸方向に平行に延設しているが、高さ方向の位置(基台2からの距離)が異なっている。具体的には、ベルト40の下方にベルト41が配置されている。そして、この高さ方向において、第3ベルト46、第3ガイドロッド48、第2ベルト53および第2ガイドロッド55は、ベルト40とベルト41との間で略同一高さに配置されている。
【0031】
また、図2及び図3を参照すると、操作部3をX軸方向に移動させるための第1ガイドロッド9a,9bおよび第1ベルト10は、操作部3および第1アクチュエータ機構AXをY軸方向に移動させるための第3ガイドロッド48と第2ガイドロッド55との間で、且つ、Y軸方向に平行に配置された第3ガイドロッド48,第3ベルト46,第2ガイドロッド55および第2ベルト53に対して直交するX軸方向に延設するように配置されている。そして、これらの第1ベルト10,第1ガイドロッド9a・9b,第3ベルト46,第3ガイドロッド48,第2ベルト53および第2ガイドロッド55は、高さ方向においてベルト40とベルト41との間に配置されている。これにより、運動訓練装置の高さ方向の寸法を薄く構成することができる。
【0032】
言い換えると、図4において基台2からプーリー44a,51aの上端までの距離(XY平面と直交する方向、つまり高さ)をL1、基台2からプーリー44a,51aの下端までの距離をL2、基台2からプーリー38,42の下端までの距離をL3、基台2からプーリー39,50までの距離をL4としたときに、以下の関係が成り立つように各部材が配置されている。「L1>L2」「L3>L1」「L2>L4」。よって、「L3>L1>L2>L4」となり、プーリー44aとプーリー51aとはL3とL4との間に配置されている。そして、ベルトはそれぞれプーリーの上端と下端との間で架け渡されており、第3ベルト46,第2ベルト53の高さ方向における中央と第3ガイドロッド48,第2ガイドロッド55の高さ方向の中央とが略同一で、第3ガイドロッド48の上端がベルト40に干渉せず、第2ガイドロッド55の下端がベルト41に干渉しないように配置されている。
【0033】
また、図3において基台2とプーリー18,19の上端までの距離がL1、基台2とプーリー18,19の下端までの距離がL2となるように配置されている。以上から、第1ベルト10、第1ガイドロッド9a,9b、第3ベルト46、第3ガイドロッド48、第2ベルト53および第2ガイドロッド55は、高さ方向においてL3とL4との間、すなわちプーリー38,42の下端とプーリー39,50の上端との間で重複して配置されている。
【0034】
また、第1ベルト10は第1ガイドロッド9a,9bに挟まれるように配置されている。よって、使用者Uが操作部3に力を加えた際に第1ガイドロッド9aまたは9bを中心に回転する力を受けることができ、回転方向の移動を抑えることができる。
【0035】
操作部3は、図1に示すように第1スライダーブロック4の前方向に配置され、図5に示すように、比較的短い垂直な操作ロッド61と、その上端に設けられたハンドル部材62とからなる。本実施形態のハンドル部材62は、使用者Uの上肢ULの運動機能を訓練するために片手で掴むことができるように、比較的厚い小型の円形ディスク状に形成されている。ハンドル部材62は、使用者Uが掴んだ手で回すことができるように、操作ロッド61を中心に回動可能に取り付けられる。
【0036】
また、操作部3は、操作ロッド61に一体に設けられた力センサ60を有する。力センサ60は、取付プレート5を介して、第1アクチュエータ機構AXのスライダーブロック4に一体に固定されている。力センサ60は、使用者Uが自力で操作部3を動かす能動訓練モード及び操作部3の力で上肢又は下肢を動かす受動訓練モードのいずれにおいても、ハンドル部材62から操作ロッド61に作用する使用者Uの力を検出する。本実施形態では、力センサ60として、歪みゲージを用いた6軸力覚センサが採用されている。
【0037】
一般に、6軸力覚センサは、直交する3軸方向x,y,zの力(Fx,Fy,Fz)とx,y,z3軸周りのモーメント(Mx,My,Mz)とを検出することができる。本実施形態では、6軸力覚センサを、そのX軸及びY軸が、第1アクチュエータ機構AXの左右方向(第1ガイドロッド9a,9bと平行な方向)及び前後方向(第3ガイドロッド48および第2ガイドロッド55と平行な方向)とそれぞれ一致するように配向する。
【0038】
これにより、力センサ60は、使用者Uの上肢又は下肢が操作部3を動かし又は該操作部により動かされるとき、操作ロッド61が使用者Uの上肢又は下肢から直接受ける力を、前後方向の力成分と左右方向の力成分とそれらに直交する垂直方向の力成分とに分けて、更に前後方向、左右方向及び垂直方向の各軸周りにそれぞれ作用するモーメントとして、検出することができる。
【0039】
実際の運動訓練装置1の使用において、力センサ60が検出する前後方向(Y軸方向)、左右方向(X軸方向)及び垂直方向(XY平面と直交する高さ方向)の力成分は、第1及び/又は第2駆動モータ6、30の回転力と使用者Uが操作部3に及ぼす力との差分、即ち操作部3が使用者Uの上肢又は下肢から受ける抗力として検出される。
【0040】
上述のように、運動訓練装置1は、第1モータ6及び第2モータ30を制御するための制御部としてのPC70を備える。PC70は、図6に示すように、駆動制御部71と、信号制御部72と、表示制御部73と、メモリ74と、それらを制御管理するための制御CPU75とを備える。
【0041】
駆動制御部71は、モータ制御部27,31を介して第1モータ6及び第2モータ30に接続され、それらの駆動を制御する。モータ制御部27,30は、PC70の中に組み込んでもよい。信号制御部72は、力センサ60及びエンコーダ6a、30aに接続され、力センサ60及びエンコーダ6a、30aから出力される信号を受信する。表示制御部73は、モニター76に接続され、該モニター76の表示を制御する。メモリ74は、運動訓練装置1を動作させるためのプログラムに加えて、例えば使用者Uの個人データや訓練履歴等の訓練に関するデータを保存する。
【0042】
制御CPU75は、力センサ60、エンコーダ6a,30a、および不揮発性のメモリ74から入力される情報に基づいて操作部3の速度を求め、駆動制御部71に電流値(出力電流Ii、デューティ)を出力して、第1モータ6及び第2モータ30への電力供給を制御する。
【0043】
なお、本実施形態では、操作部3を取付プレート5を介して第1スライダーブロック4と高さ方向において重複する位置に設け、操作部3の下端が基台2から浮いている状態で固定する態様を示したが、取付プレート5の下面に自由回転するコロなどの摺動部材を設けて基台2上で滑らかに動くようにした上で取付プレート5の下面と基台2とが接触するように構成してもよい。これにより、使用者Uによる下方にかかる力を基台2で受けることができる。また、操作部3を第1スライダーブロック4の上部に取り付けるようにしてもよい。そうすることで操作部3の可動領域がより装置奥側に広げることができる。
【0044】
[運動訓練システム]
次に、本実施形態の運動訓練システム1000について、図7ないし図10を用いて説明する。従来、運動訓練装置1により使用者Uが運動訓練を行う際には、例えば、使用者Uが操作部3を掴みその上から訓練指導者が使用者Uの手をとって使用者Uの上肢状況に応じた動作範囲で操作部3を移動させることで、操作部3が辿る軌道を設定していた。そして、使用者Uのみが操作部3を掴み設定された軌道を辿ることで、使用者Uによる操作部3の位置とそのときに操作部3が受ける負荷とを検出する運動訓練モードを行なっていた。
【0045】
しかしながら、リハビリが必要な患者(使用者)が遠隔地にいる場合など、訓練指導者が直接、使用者の訓練を行うことが難しい場合もある。また、同じ建物内であっても、使用者と運動訓練者が別の部屋にいる状態で訓練する場合も考えられる。したがって、使用者と訓練指導者が離れた位置にいる場合でも、効果的な運動訓練を行うシステムが望まれる。そこで、本実施形態では、複数の運動訓練装置を備えた運動訓練システムを用いることで、遠隔での運動訓練を可能としている。
【0046】
図7及び図8に示すように、運動訓練システム1000は、第1運動訓練装置1Aと、第2運動訓練装置1Bとを有し、第1運動訓練装置1Aと第2運動訓練装置1Bをデータの送受信可能に接続したものである。例えば、LAN(Local Area Network)やインターネット回線により両者が接続されている。本実施形態の場合、第1運動訓練装置1Aと第2運動訓練装置1Bとは、それぞれ上述の運動訓練装置1と同じ構成を有し、図7、8では、それぞれの装置の構成であることを示す添え字「A」、「B」を付して示している。また、本実施形態では、操作者としての訓練指導者Tが第1運動訓練装置1Aを、操作者としての使用者Uが第2運動訓練装置1Bをそれぞれ操作することを想定している。なお、使用者Uが第1運動訓練装置1Aを、訓練指導者Tが第2運動訓練装置1Bをそれぞれ操作しても良い。
【0047】
具体的には、図8に示すように、第1運動訓練装置1Aは、第1操作部3A、第1駆動部200A、第1力センサ60A、第1制御部としてのPC70A、第1位置検出手段としてのエンコーダ6Aa、30Aaを有する。第1駆動部200Aは、第1X軸および第1Y軸方向駆動モータとしての第1モータ6A及び第2モータ30Aを有し、第1操作部3AをXY平面で駆動する。第1力センサ60Aは、第1操作部3Aを操作する使用者から第1操作部3Aに作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する。PC70Aは、第1モータ6A及び第2モータ30Aを制御する。エンコーダ6Aa、30Aaは、XY平面における第1操作部3Aの位置を検出する。
【0048】
同様に、第2運動訓練装置1Bは、第2操作部3B、第2駆動部200B、第2力センサ60B、第2制御部としてのPC70B、位置検出手段及び第2位置検出手段としてのエンコーダ6Ba、30Baを有する。第2駆動部200Bは、第2X軸および第2Y軸方向駆動モータとしての第1モータ6B及び第2モータ30Bを有し、第2操作部3BをXY平面で駆動する。第2力センサ60Bは、第2操作部3Bを操作する訓練指導者から第2操作部3Bに作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する。PC70Bは、第1モータ6B及び第2モータ30Bを制御する。エンコーダ6Ba、30Baは、XY平面における第2操作部3Bの位置を検出する。
【0049】
また、第1運動訓練装置1Aは、第1距離センサ80Aと、第1入力部81Aとを有する。第1距離センサ80Aは、装置と操作者との距離を検出可能な、例えば、レーザセンサや超音波センサである。第1距離センサ80Aは、例えば、運動訓練装置1Aの装置本体100(図1参照)の前側に設けられ、装置本体100の前側に存在する操作者(使用者U又は訓練指導者T)と、装置本体100との距離を計測する。第1入力部81Aは、例えば、PC70Aに付属のキーボードやテンキー、或いは、別途、第1運動訓練装置1A専用に設けられた数値を入力可能な入力装置である。本実施形態では、第1入力部81Aは、第1運動訓練装置1Aを操作する操作者(使用者U又は訓練指導者T)の上肢の長さを入力可能である。
【0050】
同様に、第2運動訓練装置1Bは、第2距離センサ80Bと、第2入力部81Bとを有する。第2距離センサ80Bは、装置と操作者との距離を検出可能な、例えば、レーザセンサや超音波センサである。第2距離センサ80Bは、例えば、運動訓練装置1Bの装置本体100(図1参照)の前側に設けられ、装置本体100の前側に存在する操作者(使用者U又は訓練指導者T)と、装置本体100との距離を計測する。第2入力部81Bは、例えば、PC70Bに付属のキーボードやテンキー、或いは、別途、第2運動訓練装置1B専用に設けられた数値を入力可能な入力装置である。本実施形態では、第2入力部81Bは、第2運動訓練装置1Bを操作する操作者(使用者U又は訓練指導者T)の上肢の長さを入力可能である。
【0051】
なお、第1運動訓練装置1Aと第2運動訓練装置1Bのうち、訓練指導者Tが操作する運動訓練装置(本実施形態では、第2運動訓練装置1B)は、上述した距離センサや入力部を省略しても良い。
【0052】
このような第1運動訓練装置1A及び第2運動訓練装置1Bを備える運動訓練システム1000では、第1運動訓練装置1AのPC70Aが、第1力センサ60Aの入力値と第2力センサ60Bの入力値との合成値に基づいて、第1モータ6A及び第2モータ30Aを制御可能である。同様に、第2運動訓練装置1BのPC70Bが、第1力センサ60Aの入力値と第2力センサ60Bの入力値との合成値に基づいて、第1モータ6B及び第2モータ30Bを制御可能である。
【0053】
これにより、例えば、第1操作部3Aを使用者Uが、第2操作部3Bを訓練指導者Tがそれぞれ操作した場合、第1操作部3A及び第2操作部3Bのそれぞれに、第1力センサ60Aの入力値と第2力センサ60Bの入力値との合成値に基づく力を発生させることでき、上述のように、使用者Uが操作部を掴みその上から訓練指導者Tが使用者Uの手をとって操作部を移動させる状態を再現できる。
【0054】
このように本実施形態の場合、使用者と訓練指導者とが離れた位置にいる場合でも効果的な運動訓練を行うべく、第1運動訓練装置1Aと第2運動訓練装置1Bをデータの送受信可能に接続している。但し、接続された運動訓練装置の操作部の可動領域が互いに異なる場合、訓練を適切に行えない可能性がある。
【0055】
運動訓練装置としては、大きな訓練施設などには大きな装置を設置できるが、小さな施設や使用者の自宅などで使用する場合には、大きな装置が置けない可能性があり、装置を小型化することが望まれる。例えば、訓練施設にいる訓練指導者Tが大きな運動訓練装置(本実施形態では、第1運動訓練装置1A)を使用し、自宅などにいる使用者Uが小さな運動訓練装置(本実施形態では、第2運動訓練装置1B)を使用ことが考えられる。
【0056】
このように大きさが異なる運動訓練装置を上述のようにデータの送受信可能に接続して使用した場合、大きな方の第1運動訓練装置1Aを操作している操作者が、小さい方の第2運動訓練装置1Bの第2操作部3Bの可動領域よりも広い領域で第1操作部3Aを操作しても、第2運動訓練装置1Bの第2操作部3Bは第1操作部3Aの動きに追従できない。また、何ら対策を施さなければ、第1運動訓練装置1Aを操作する操作者が、第2運動訓練装置1Bの可動領域に合わせて第1操作部3Aを操作することは困難である。
【0057】
そこで、本実施形態では、大きい方の装置の可動領域を小さい方の装置の可動領域に合わせるように、可動領域に制限をかけるようにしている。特に、本実施形態では、特別な器具などを用いずに、ソフトウェアによりモータに駆動される操作部の移動範囲を制限する(ソフトリミットをかける)ことで、可動領域の制限を行えるようにしている。
【0058】
具体的には、図9(a)に示す第1運動訓練装置1Aの第1操作部3Aの可動領域を第1の可動領域α1とし、図9(b)に示す第2運動訓練装置1Bの第2操作部3Bの可動領域を、第1の可動領域α1よりも狭い第2の可動領域α2とする。図9(a)、(b)は、それぞれの装置のXY平面内の操作部の可動領域を示した模式図である。また、操作部の可動領域とは、その装置において操作部を最大限移動させることが可能なXY平面内の領域である。
【0059】
本実施形態では、第1運動訓練装置1AのPC70Aは、第1操作部3AのXY平面での可動領域を第2の可動領域α2に制限可能である。即ち、PC70Aは、データの送受信可能に接続された第2運動訓練装置1BのPC70から第2の可動領域α2の情報を取得して、第1運動訓練装置1Aの可動領域を、通常時に設定されている第1の可動領域α1(図9(a)の太線の範囲)から第2の可動領域α2(図9(a)の破線の範囲)に変更する。
【0060】
ここで、第2運動訓練装置1Bの第2の可動領域α2の情報は、予めPC70Bに保存している場合には、この情報を第1運動訓練装置1AのPC70Aに送信することで、PC70Aがこの情報を取得できる。但し、このような情報がPC70Bに保存されていない場合、第2の可動領域α2の情報を取得できない。そこで、本実施形態では、実際に第2操作部3Bを第2運動訓練装置1Bの可動領域の限界まで移動させ、その位置から第2の可動領域α2を把握できるようにしている。
【0061】
即ち、PC70Aは、第2操作部3Bを第2の可動領域α2の端部まで移動させた際のエンコーダ6Ba、30Baにより検出された第2操作部3Bの位置に基づいて、第1操作部3AのXY平面での可動領域を制限する。例えば、第2運動訓練装置1Bの第2操作部3Bを自動で或いは手動で、X軸方向の両端部及びY軸方向の両端部まで移動させる。この際、第2操作部3Bがそれ以上その方向に移動できなくなった位置をエンコーダ6Ba、30Baにより検出し、PC70BがPC70Aにこの検出した位置の情報を送信する。PC70Aはこの情報に基づいて、第1運動訓練装置1Aの可動領域を制限する。
【0062】
この際、第1運動訓練装置1Aにおいて通常用いる第1の可動領域α1における第1操作部3Aのホームポジションと、新たに制限された第2の可動領域α2における第1操作部3Aのホームポジションが一致しない場合がある。この場合、PC70Aは、第2の可動領域α2に合わせたホームポジションを新たに設定する。即ち、第1運動訓練装置1Aは、第1操作部3Aのホームポジションとして、第1の可動領域α1に合わせた第1ホームポジションと、第2の可動領域α2に合わせた第2ホームポジションとを有することになる。
【0063】
例えば、図9(a)に実線で示す第1操作部3Aの位置を第1ホームポジションHP1、図9(b)に実線で示す第2操作部3Bの位置を第2ホームポジションHP2とする。この場合に、PC70Aは、図9(a)に破線で示す第1操作部3Aの位置を、第2の可動領域α2に合わせた第2ホームポジションHP2に設定する。
【0064】
なお、操作者の体の大きさ、特に、上肢の訓練の場合には上肢の長さは人それぞれである。このため、第1運動訓練装置1A及び第2運動訓練装置1Bは、上述したように、それぞれ、装置と操作者との距離を検出可能な第1距離センサ80A及び第2距離センサ80Bを有する。これにより、ホームポジションに対する操作者の体の位置を操作者ごとに合わせることができる。例えば、操作者に合わせて操作部のホームポジションを設定するようにしても良いし、操作者に対して体をどの位置にするかを指示するようにしても良い。
【0065】
また、本実施形態では、上述のように、第1運動訓練装置1A及び第2運動訓練装置1Bは、それぞれ第1入力部81A及び第2入力部81Bを有する。そして、第1入力部81A及び第2入力部81Bから、例えば、操作者の上肢の長さを入力可能である。これにより、ホームポジションに対する操作者の体の位置を操作者ごとに合わせることができる。
【0066】
なお、この上肢の長さと、上述の距離センサにより測定した装置と操作者との距離の情報と組み合わせることで、より適切にホームポジションと操作者の体の位置関係を設定可能であるが、どちらかだけの情報でも良い。即ち、距離センサと入力部のどちらか一方は省略しても良い。また、訓練指導者Tが操作する運動訓練装置は、距離センサと入力部の何れも省略しても良い。
【0067】
また、第1運動訓練装置1Aは、モニター76に第1操作部3Aの可動領域を表示可能である。即ち、第2運動訓練装置1Bに接続されていない通常の状態では、モニター76には、第1の可動領域α1が表示される。また、モニター76には、エンコーダ6Aa、30Aaにより検出された第1操作部3Aの位置も合わせて表示される。このため、第1運動訓練装置1Aを操作している操作者は、モニター76を見ることで、第1操作部3Aが第1の可動領域α1内のどの位置にいるかを把握できる。
【0068】
本実施形態では、上述のように、第1運動訓練装置1Aの可動領域α1が第2の可動領域α2に制限された場合には、可動領域の表示を第2の可動領域α2に合わせた表示に切り替えるようにしている。このため、操作者は、モニター76を見ることで、第1操作部3Aが第2の可動領域α2内のどの位置にいるかを把握でき、可動領域が変更されても第1操作部3Aの操作がし易い。
【0069】
[運動訓練システムの可動領域設定の制御の流れ]
図10のフローチャートを用いて、運動訓練システム1000における可動領域設定の制御の流れを説明する。まず、図10に示す「装置A」を訓練指導者Tが操作する第1運動訓練装置1A、「装置B」を使用者Uが操作する第2運動訓練装置1Bとする。第1運動訓練装置1AのPC70Aの制御CPU75(図6参照)は、第2運動訓練装置1BのPC70Bに対して装置情報を要求する(S101)。PC70Bは、この要求に応じて第2運動訓練装置1Bの装置情報をPC70Aに送信する(S201)。この装置情報には第2の可動領域α2が含まれる。また、第2の可動領域α2の情報は、上述のように、予めPC70Bに記憶されていれば、PC70Bはこの情報をPC70Aに送信する。記憶されていなければ、上述のように第2操作部3Bを移動させることでエンコーダ6Ba、30Baの検出に基づく第2の可動領域α2の位置をPC70Aに送信する。
【0070】
PC70Aは、PC70Bから送信された装置情報を取得する(S102)。そして、この情報に基づいて第1運動訓練装置1Aの可動領域を決定し(S103)、第1操作部3Aの可動領域を第2の可動領域α2に制限する(S104)。即ち、ソフトリミットを設定する。また、PC70Aは、ソフトリミットの設定に伴い、モニター76の表示座標を設定する(S105)。具体的には、モニター76に表示する第1操作部3Aの可動領域を第2の可動領域α2にする。
【0071】
次いで、PC70Aは、第1操作部3Aを第2の可動領域α2に合わせた第2ホームポジションHP2に移動させる(S106)。なお、第2運動訓練装置1Bは、S201で装置情報を送信した後に、第2操作部3Bをホームポジションに移動させておく(S202)。S106で第1操作部3Aのホームポジションへの移動が完了すると、PC70Aは、PC70Bに対して、領域設定が完了した旨の通知を行う(S107)。これにより、第1運動訓練装置1A及び第2運動訓練装置1Bの準備が完了する。その後、例えば、訓練指導者Tが第1操作部3Aを第2の可動領域α2内で操作するなどして、第2運動訓練装置1Bを使用する使用者Uへの訓練を行う。
【0072】
なお、上述の装置Aと装置Bとの関係は逆であっても良い。即ち、「装置A」である第1運動訓練装置1Aを使用者Uが操作し、「装置B」である第1運動訓練装置1Aを訓練指導者Tが操作するようにしても良い。即ち、使用者Uが使用する運動訓練装置の方が大きい場合であっても、同様に、可動領域の制限を行う。
【0073】
上述のような運動訓練システム1000では、第1操作部3Aと第2操作部3Bとを第2の可動領域α2内で第1力センサ60A及び/又は第2力センサ60Bの入力値に基づいて移動させる。このような運動訓練システム1000を用いた運動訓練モードとしては、使用者Uが自ら設定された軌道をなぞるように操作部を移動させる能動訓練モード(アシストモード、自主トレーニングモード)と、自動的に軌道を辿る操作部に引っ張られて運動する受動訓練モード(訓練指導モード、自動モード)とがある。受動訓練モードは主としてリハビリ中の人を対象とする運動訓練モード、能動訓練モードはリハビリ最終段階の人や健常者を対象とする運動訓練モードとして想定されている。
【0074】
[受動訓練モード]
上述の運動訓練モードのうち、受動訓練モードについて説明する。受動訓練モードとは、使用者Uが操作する第1操作部3Aを自動的に移動させるモードである。本実施形態の受動訓練モードには訓練指導モードと自動モードが備わっている。本実施形態の訓練指導モードでは、第1運動訓練装置1AのPC70Aの制御CPU75は、第2力センサ60Bの入力値に基づいて第1操作部3Aを移動させる。そして、訓練指導モードの実行中に第1力センサ60Aの入力があった場合に、第1力センサ60Aの入力値と第2力センサ60Bの入力値との合成値に基づいて、第1モータ6A及び第2モータ30Aを制御する。即ち、使用者Uが第1操作部3Aを把持した状態で、訓練指導者Tが第2操作部3Bを操作する。すると、第2力センサ60Bの入力値が運動訓練装置1BのPC70Aに送信され、第1操作部3Aが移動する。この際、訓練指導者T側のセンサ値である第2力センサ60Bの入力値と、使用者U側のセンサ値である第1力センサ60Aの入力値が合成され、この合成値に基づいて第1操作部3Aを駆動する第1モータ6A及び第2モータ30Aが制御される。なお、この際、第2運動訓練装置1BのPC70Bの制御CPU75は、第1力センサ60Aの入力値と第2力センサ60Bの入力値との合成値に基づいて、第2操作部3Bを駆動する第2モータ6B及び第2モータ30Bを制御するようにしても良い。
【0075】
例えば、訓練指導者Tが第2操作部3Bを操作することで、この操作方向と同方向の力が第1操作部3Aに発生するが、第1操作部3Aを把持している使用者Uがこの操作方向に十分に追従できない場合には、第1操作部3Aに抵抗力が作用する。そして、操作方向と同方向の力とこの抵抗力とが合成された力が、それぞれのモータにより第1操作部3A及び第2操作部3Bに発生する。
【0076】
これにより、第1操作部3Aが使用者Uから受ける抵抗力を無視して第2操作部3Bの操作方向に移動することがなく、使用者Uへの過度な負担を軽減できる。これと共に、第2操作部3Bにも同様の力が発生することで、第2操作部3Bにも第1操作部3Aが使用者Uから受ける抵抗力に応じた力が発生し、第2操作部3Bを操作している訓練指導者Tは、使用者Uが上肢を動かしにくい位置などを把握できる。このため、訓練指導者Tは、その使用者Uに応じた速度や軌道で第2操作部3Bの操作が可能となる。この結果、使用者Uと訓練指導者Tが離れた位置にいる場合でも、従来行っていた、使用者Uが操作部3を掴みその上から訓練指導者が使用者Uの手をとって使用者Uの上肢状況に応じた動作範囲で操作部3を移動させる訓練と同等の訓練を行うことが可能となる。
【0077】
一方、本実施形態の自動モードでは、使用者Uが操作する第1操作部3Aを装置に設定された所定の軌道に沿って自動的に移動させるモードであって、使用者Uが操作する第1操作部3Aが所定の軌道からずれた場合に所定の軌道上の次の目標位置に導くように、第1モータ6A及び第2モータ30Aを制御するモードである。その際に、第1操作部3Aの動きが訓練指導者T側の第2操作部3Bに再現され、訓練指導者Tは使用者Uの訓練内容を確認することができる。また、第1操作部3Aの移動軌跡や第1力センサ60Aの入力値等の訓練情報を訓練指導者T側のモニターに表示することが望ましい。
【0078】
[能動訓練モード]
次に、能動訓練モードについて説明する。能動訓練モードとは、使用者Uが第1操作部3Aを能動的に操作するモードである。本実施形態の能動訓練モードにはアシストモードと自主トレーニングモードとが備わっている。本実施形態のアシストモードは、使用者Uが第1操作部3Aを操作している際に、第1操作部3Aの位置が所定の軌道から外れた場合に、操作部3を所定の軌道に向けて戻すアシスト力を発生させるように、第1モータ6A及び第2モータ30Aを制御する能動訓練モードの1つである。本実施形態では、このアシスト力は、訓練指導者Tが第2操作部3Bを操作して第2力センサ60Bに力が入力されることで発生させる。
【0079】
即ち、第1運動訓練装置1Aの制御CPU75は、使用者Uが所定の軌道に沿って第1操作部3Aを移動させている際に、訓練指導者Tが第2操作部3Bを操作した場合の第2力センサ60Bの入力値がアシスト力となり、その際の第1力センサ60Aの入力値との合成値に基づいて第1操作部3Aを移動させるように、第1モータ6A及び第2モータ6Bを制御する。なお、所定の軌道は、予め設定されている目標軌道である。
【0080】
また、第2運動訓練装置1Bの制御CPU75は、アシストモードの実行時に、訓練指導者Tが第2操作部3Bを把持した状態で、第1操作部3Aが移動する軌道に沿って第2操作部3Bを移動させるように、第1モータ6B及び第2モータ30Bを制御する。
【0081】
上述のアシストモードについて具体的に説明すると、使用者Uが第1操作部3Aを所定の軌道に沿って移動させると、第1力センサ60Aの入力値に基づいて、第2運動訓練装置1Bの第2操作部3Bも移動する。この際、訓練指導者Tが第2操作部3Bを把持している。この状態で訓練を行っている場合に、例えば、第1操作部3Aが所定の軌道から外れた場合、第2操作部3Bも同様の動きをするため、訓練指導者Tが第2操作部3Bを操作して第1操作部3Aが所定の軌道に向けて戻るように第2操作部3Bを移動させるとアシスト力が発生し、第2力センサ60Bの入力値と第1力センサ60Aの入力値との合成値に基づいて第1操作部3Aを移動させる。
【0082】
これにより、使用者Uと訓練指導者Tが離れた位置にいる場合でも、使用者Uが所定の軌道に沿って第1操作部3Aを移動させにくい場合に、訓練指導者Tによるサポートが行える。
【0083】
一方、本実施形態の自主トレーニングモードは、使用者Uが第1操作部3Aを自由に移動させることができるモードであって、使用者Uが第1操作部3Aを所定の軌道に沿って移動させるように操作する。その際に訓練指導者Tのサポートは行われず、上述の自動モードと同様に訓練指導者T側の第2操作部3Bは第1操作部3Aの動きが再現され、訓練指導者Tは使用者Uの訓練内容を確認することができる。また、第1操作部3Aの移動軌跡や第1力センサ60Aの入力値等の訓練情報を訓練指導者T側のモニターに表示することが望ましい。
【0084】
また、自主トレーニングモードにおいては、上述したアシストモードのアシスト力を装置が自動的に発生するようにしてもよい。その場合は、使用者Uが第1操作部3Aを所定の軌道に沿って移動させている際に、所定の軌道から所定以上外れた場合に第1操作部3Aを所定の軌道に戻すアシスト力が発生し、第1力センサ60Aの入力値に応じた速度ベクトルとアシスト力に応じた速度ベクトルとの合成値に基づいて第1操作部3Aを移動させるように第1モータ6Aと第2モータ30Aを駆動する。
【0085】
なお、上述の何れかの運動訓練モードにおいて、第1力センサ60Aと第2力センサ60Bとのうちの何れか一方のセンサの入力値は、使用しないようにしても良い。例えば、アシストモードの実行時に、訓練指導者が把持する第2操作部3Bの第2力センサ60Bの入力値の影響をなくすために、第2力センサ60Bの入力値をしないようにしても良い。また、スイッチの切り替えなどにより、第1力センサ60Aと第2力センサ60bのうちの一方のセンサの入力値を無視できるようにしても良い。
【0086】
本実施形態では、上述のように、操作部の可動領域が異なる2つの運動訓練装置を接続した運動訓練システム1000において、大きい方の可動領域を小さい方の可動領域に制限するようにしている。このため、使用者と訓練指導者とが離れた位置にいる場合でも、効果的な運動訓練を行え、更に、可動領域が異なる装置同士でも、適切な運動訓練を行える。
【0087】
[他の実施形態]
上述の運動訓練システム1000では、例えば、予めPC70A及びPC70Bに、上述の制御が可能なプログラムがインストールされているが、第1運動訓練装置1A及び第2運動訓練装置1Bが備える制御部に上述のプログラムをインストールしても良い。或いは、既に設置されている運動訓練装置や運動訓練システムが備えるコンピュータにこのプログラムをインストールするようにしても良い。即ち、本発明は、上述の運動訓練システム1000に用いられるプログラムであっても良い。
【0088】
このプログラムは、以下のような工程をコンピュータに実行させるプログラムでもある。即ち、プログラムは、次の3つの工程を有する。まず、第1工程では、第2運動訓練装置1Bの第2の可動領域α2を取得する。第2工程では、第1操作部3AのXY平面での可動領域を、第1工程で取得した第2の可動領域α2に制限する。第3工程では、第1操作部3Aと第2操作部3Bとを第2の可動領域α2内で第1力センサ60A及び/又は第2力センサ60Bの入力値に基づいて移動させる。
【符号の説明】
【0089】
1A・・・第1運動訓練装置
1B・・・第2運動訓練装置
3A・・・第1操作部
3B・・・第2操作部
6A・・・第1モータ(第1X軸方向駆動モータ)
6Aa・・・エンコーダ(第1位置検出手段)
6B・・・第1モータ(第2X軸方向駆動モータ)
6Ba・・・エンコーダ(第2位置検出手段)
30A・・・第2モータ(第1Y軸方向駆動モータ)
30Aa・・・エンコーダ(第1位置検出手段)
30B・・・第2モータ(第2Y軸方向駆動モータ)
30Ba・・・エンコーダ(位置検出手段、第2位置検出手段)
60A・・・第1力センサ
60B・・・第2力センサ
70A・・・PC(第1制御部)
70B・・・PC(第2制御部)
75・・・制御CPU
76・・・モニター(表示部)
80A・・・第1距離センサ
80B・・・第2距離センサ
81A・・・第1入力部
81B・・・第2入力部
200A・・・第1駆動部
200B・・・第2駆動部
図1
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