(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175865
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
H03H9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082620
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】森本 賢周
(72)【発明者】
【氏名】丸本 学
(72)【発明者】
【氏名】飯田 洋輝
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG09
5J108GG14
5J108GG16
5J108KK04
(57)【要約】
【課題】樹脂フィルムで封止した圧電デバイスの特性の低下を抑制する。
【解決手段】基板部4aと枠部4bとを有して、上部が開口した凹部6を構成するベース4と、凹部6に収納される圧電素子3と、この圧電素子3が収納された凹部6を覆うようにベース4に接合されるリッドとを備える圧電デバイスであって、前記リッドは、樹脂フィルム5であり、この樹脂フィルム5の両主面のベース4に接合される側の主面には、金属膜15が形成されており、樹脂フィルム5は、ベース4の凹部6を覆っている領域が、凹部6側へ撓んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と該基板部の外周部から上方に延びる枠部とを有すると共に、前記基板部と前記枠部とによって、上部が開口した凹部を構成するベースと、前記凹部に収納される圧電素子と、該圧電素子が収納された前記凹部を覆うように前記ベースに接合されて、前記凹部を封止するリッドとを備える圧電デバイスであって、
前記リッドは、樹脂フィルムであり、該樹脂フィルムの両主面の前記ベースに接合される側の主面には、金属膜が形成されており、
前記樹脂フィルムは、該樹脂フィルムの周端部が前記ベースの前記枠部の上端面に接合されると共に、前記ベースの前記凹部を覆っている領域が、前記凹部側へ撓んでいる、
ことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの前記ベースに接合される側の前記主面とは反対側の主面に、金属膜が形成されている、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの前記ベースに接合される側の前記主面に形成されている前記金属膜は、前記樹脂フィルムの前記周端部を除いた内側の領域に形成されている、
請求項1または2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記樹脂フィルムは、前記内側の領域に形成されている前記金属膜の一部が、前記枠部の前記上端面に密着した状態で、前記樹脂フィルムの前記周端部が前記枠部の前記上端面に接合されている、
請求項3に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記樹脂フィルムに形成されている前記金属膜が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、又は、ニッケル(Ni)からなる金属膜を含む、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記樹脂フィルムに形成されている前記金属膜が、チタン(Ti)又はクロム(Cr)からなる下地金属膜に、金(Au)膜が積層されてなる積層金属膜を含む、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記ベースの前記枠体の前記樹脂フィルムが接合される前記上端面には、ベース側金属膜が形成されており、前記ベース側金属膜は、前記樹脂フィルムに接合されるチタン(Ti)からなる金属膜を含む、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子等の圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイス、例えば、圧電振動子として、表面実装型の水晶振動子が広く用いられている。この種の水晶振動子には、例えば、特許文献1に記載されているように、両面に励振用電極が形成された水晶素子に、水晶板やガラス板からなる基板と、同じく水晶板やガラス板からなる蓋体とを、水晶素子を挟むように接合して、水晶素子の両面の励振用電極を気密に封止した水晶振動子がある。
【0003】
この特許文献1では、前記基板及び前記蓋体を、均一な厚みの樹脂フィルムで構成して水晶素子の励振用電極を封止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-30126号公報(段落[0051])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように樹脂フィルムで構成した基板や蓋体は、水晶板やガラス板で構成した基板や蓋体のように気密に封止するのが困難であり、水晶素子の励振用電極が、樹脂フィルムを透過した水分や酸素等のガスの影響を受けて、経時的に特性が劣化し、信頼性の低下を招く。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであって、樹脂フィルムで封止した圧電デバイスの特性の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0008】
(1)本発明に係る圧電デバイスは、基板部と該基板部の外周部から上方に延びる枠部とを有すると共に、前記基板部と前記枠部とによって、上部が開口した凹部を構成するベースと、前記凹部に収納される圧電素子と、該圧電素子が収納された前記凹部を覆うように前記ベースに接合されて、前記凹部を封止するリッドとを備える圧電デバイスであって、
前記リッドは、樹脂フィルムであり、該樹脂フィルムの両主面の前記ベースに接合される側の主面には、金属膜が形成されており、前記樹脂フィルムは、該樹脂フィルムの周端部が前記ベースの前記枠部の上端面に接合されると共に、前記ベースの前記凹部を覆っている領域が、前記凹部側へ撓んでいる。
【0009】
本発明に係る圧電デバイスによると、圧電素子が収納された凹部を覆うようにベースに接合されるリッドは、樹脂フィルムであり、この樹脂フィルムの両主面のベースに接合される側の主面には、金属膜が形成されているので、この金属膜によって、水分や酸素等のガスが透過するのを阻止して圧電素子を封止することができ、圧電素子が、水分や酸素等のガスによって劣化して特性が低下するのを抑制することができる。
【0010】
また、ベースの凹部を覆っている樹脂フィルムは、ベースへの加熱圧着等の接合によって、凹部を覆っている領域が、凹部側に撓んでいるので、樹脂フィルムの周端部が、凹部を囲む枠部の上端面の内周縁に確実に密着して凹部を封止することができる。
【0011】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記樹脂フィルムの前記ベースに接合される側の前記主面とは反対側の主面に、金属膜が形成されている。
【0012】
この実施態様によると、樹脂フィルムには、ベースに接合される側の主面だけではなく、前記主面とは反対側の主面にも、金属膜が形成されているので、樹脂フィルムの両主面の金属膜によって、水分や酸素等のガスが透過するのを効果的に阻止して圧電素子を封止することができる。
【0013】
(3)本発明の一実施態様では、前記樹脂フィルムの前記ベースに接合される側の前記主面に形成されている前記金属膜は、前記樹脂フィルムの前記周端部を除いた内側の領域に形成されている。
【0014】
この実施態様によると、ベースの枠部に接合される樹脂フィルムの金属膜は、樹脂フィルムの周端部を除いた内側の領域に形成されるので、樹脂フィルムは、金属膜が形成されていない周端部でベースの枠部に直接接合することができ、金属膜を介して樹脂フィルムをベースの枠部に接合するのに比べて、容易に接合することができる。
【0015】
(4)本発明の他の実施態様では、前記樹脂フィルムは、前記内側の領域に形成されている前記金属膜の一部が、前記枠部の前記上端面に密着した状態で、前記樹脂フィルムの前記周端部が前記枠部の前記上端面に接合されている。
【0016】
この実施態様によると、樹脂フィルムの周端部の内側に形成されている金属膜の一部が、ベースの枠部の上端面に密着した状態で、樹脂フィルムの周端部が枠部の上端面に接合されているので、枠部で囲まれた凹部は、樹脂フィルムの金属膜によって完全に覆われた状態となり、凹部への水分や酸素等のガスの侵入を効果的に阻止することができる。また、樹脂フィルムが加熱プレスによって加熱圧着される際に、樹脂フィルムの周端部の内側に形成されている金属膜とベースの枠部の上端面とが密着した部分が、枠部で囲まれた凹部側に変形する。そして冷却後には樹脂フィルムが収縮することによって、樹脂フィルムの金属膜とベースの枠部との密着部分が加圧されることになる(ガスケットリングのような作用)。これにより、枠部で囲まれた凹部は、樹脂を含まない金属膜のみによって覆われるため、凹部への水分や酸素等のガスの侵入を効果的に阻止することができる。
【0017】
(5)本発明の更に他の実施態様では、前記樹脂フィルムに形成されている前記金属膜が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、又は、ニッケル(Ni)からなる金属膜を含んでいる。
【0018】
(6)本発明の一実施態様では、前記樹脂フィルムに形成されている前記金属膜が、チタン(Ti)又はクロム(Cr)からなる下地金属膜に、金(Au)膜が積層されてなる積層金属膜を含んでいる。
【0019】
(7)本発明の他の実施態様では、前記ベースの前記枠体の前記樹脂フィルムが接合される前記上端面には、ベース側金属膜が形成されており、前記ベース側金属膜は、前記樹脂フィルムに接合されるチタン(Ti)からなる金属膜を含んでいる。
【0020】
この実施態様によると、樹脂フィルムは、ベース側金属膜のチタン(Ti)からなる金属膜に接合されるので、例えば、金(Au)等からなる金属膜に接合されるのに比べて、接合強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る圧電デバイスによると、圧電素子が収納された凹部を覆うようにベースに接合されるリッドは、樹脂フィルムであり、この樹脂フィルムの両主面のベースに接合される側の主面には、金属膜が形成されているので、この金属膜によって、水分や酸素等のガスが透過するのを阻止して圧電素子を封止することができ、圧電素子が、水分や酸素等のガスによって劣化して特性が低下するのを抑制することができる。
【0022】
また、ベースの凹部を覆っている樹脂フィルムは、ベースへの加熱圧着等の接合によって、凹部を覆っている領域が、凹部側に撓んでいるので、樹脂フィルムの周端部が、凹部を囲む枠部の上端面の内周縁に確実に密着して凹部を封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る水晶振動子の概略断面図である。
【
図3】
図3は
図1の樹脂フィルムとベースとの接合部分の一部拡大断面図である。
【
図6】
図6は本発明の他の実施形態に係る水晶振動子の
図1に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この実施形態では、圧電デバイスとして水晶振動子に適用して説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る水晶振動子の
図2のA-A線に沿う概略断面図であり、
図2は、
図1の水晶振動子の概略平面図である。なお、
図2では、後述の樹脂側金属膜15が形成された矩形の領域を仮想線で示すと共に、この樹脂側金属膜15で覆われた内部の構成を示すために、樹脂側金属膜15を透過した状態を図示している。
【0026】
この実施形態の水晶振動子1は、直方体状のパッケージ2を備える表面実装型の水晶振動子1であり、その平面形状は略矩形である。パッケージ2は、水晶素子3を収納したベース4と、このベース4に接合されたリッドとしての樹脂フィルム5とを備えている。
【0027】
ベース4は、絶縁材料からなり、平面視略矩形であって、上方に開口した凹部6を備えている。この実施形態では、ベース4は、平面視略矩形の基板部4aと、この基板部4aの外周部から上方に延びる枠部4bとを備え、更に、基板部4aの一方の短辺側(
図1,
図2の左側)には、短辺に沿って延びる段部4cを備えている。このベース4は、セラミックグリーンシートが積層された状態で焼成されて一体化された焼成体であり、上方に開口した凹部6の周囲は、平面視で矩形枠状の枠部4bとなっている。
【0028】
ベース4の段部4cの上面には、一対の電極パッド7,7が、ベース4の短辺方向に沿って互いに離間して形成されている。これら一対の電極パッド7,7は、図示しない配線パターンによってベース4の内部を経由して、外底面の一対の外部接続端子8,8に電気的に接続されている。
【0029】
この実施形態では、一対の電極パッド7,7及び外部接続端子8,8は、例えば、タングステン(W)やモリブデン(Mo)からなるメタライズ膜の上に、ニッケル(Ni)膜が形成され、更に、Ni膜の上に、金(Au)膜が積層形成されている。このNi膜及びAu膜は、電解メッキによって形成されている。
【0030】
ベース4内に収納されている水晶素子3は、平面視矩形のATカットの水晶振動片9の表裏の各主面に、励振電極10a,10bがそれぞれ形成された圧電素子である。各励振電極10a,10bは、平面視矩形の水晶振動片9の一方の短辺側へ引き出された各引出電極11a,11bを介して、水晶振動片9の前記短辺側の各角部に形成された一対の各接続電極12a,12bにそれぞれ接続されている。各接続電極12a,12bは、水晶振動片9の側面を経由して、該水晶振動片9の表裏の両面にそれぞれ形成されている。
【0031】
ベース4の一対の各電極パッド7,7と、水晶振動片9の一対の各接続電極12a,12bとは、導電性接着剤13によって接合される。
【0032】
ベース4の枠部4bの上端面は、リッドとしての樹脂フィルム5との接合領域である。この接合領域には、ベース側金属膜としての金属膜14が形成されている。この金属膜14は、例えば、タングステン(W)やモリブデン(Mo)からなるメタライズ膜の上に、ニッケル(Ni)膜が形成されており、上記の電極パッド7,7や外部接続端子8,8とは異なり、最上層のAu膜は形成されていない。
【0033】
この実施形態では、リッドとしての樹脂フィルム5を、水晶素子3が収納されたベース4の枠部4bの上端面に接合して、ベース4の水晶素子3が収納された凹部6を封止している。この樹脂フィルム5は、矩形であって、ベース4の枠部4bの上端面の外周側の一部を除く領域を覆うことができるサイズである。
【0034】
この樹脂フィルム5は、耐熱性の樹脂フィルムが好ましく、この実施形態では、ポリイミド樹脂フィルムであり、300℃程度の耐熱性を有している。この樹脂フィルム5は、表裏両面の全面に熱可塑性の接着層が形成されている。この樹脂フィルム5は、ベース4の枠部4bの上端面に、例えば、加熱プレスによって加熱圧着される、すなわち、樹脂フィルム5の熱可塑性の接着層が溶融して接合される。
【0035】
ポリイミド樹脂フィルムは、上記のように300℃程度の耐熱性を有するので、当該水晶振動子1を、外部の回路基板等に半田実装する場合の半田リフロー処理の高温に耐えることができ、樹脂フィルムが変形等することがない。
【0036】
この実施形態の樹脂フィルム5は、透明であるが、加熱圧着の条件によっては、不透明となる場合がある。なお、この樹脂フィルムは、透明、不透明、あるいは、半透明であってもよい。
【0037】
この実施形態では、水分や酸素等のガスが、樹脂フィルム5を透過して樹脂フィルム5によって封止された内部空間に侵入し、水晶振動片9の両主面の励振電極10a,10bを劣化させるのを防止するために、次のように構成している。
【0038】
すなわち、樹脂フィルム5は、ベース4の枠部4bに接合される側の主面、すなわち、ベース4に収納された水晶素子3に対向する側(内側)の主面に、金属膜15が形成されている。
【0039】
以下では、樹脂フィルム5に形成されている金属膜15を、ベース4に形成されている金属膜と区別するために、「樹脂側金属膜15」と称する。
【0040】
この実施形態では、樹脂側金属膜15は、樹脂フィルム5のベース4に接合される側の主面の全面に形成されるのではなく、
図2の仮想線で示すように、矩形の樹脂フィルム5の主面の周端部を除く内側の矩形の領域に形成されている。この矩形の領域は、ベース4の枠部4bで囲まれた凹部6を完全に覆うと共に、ベース4の枠部4bの上端面の内周側の一部に及ぶ領域である。
【0041】
樹脂フィルム5のベース4の枠部4bに接合される側の主面の周端部は、樹脂側金属膜15は形成されておらず、樹脂自体が露出している。樹脂フィルム5の周端部の露出した樹脂部分が、上記のように、例えば、加熱プレスによって加熱、加圧され、溶融して接合される。
【0042】
図3は、
図1の樹脂フィルム5とベース4の枠部4bとの接合部分の一部拡大断面図である。
【0043】
樹脂フィルム5に形成されている樹脂側金属膜15は、例えば、チタン(Ti)又はクロム(Cr)からなる下地金属膜、この実施形態では、Ti膜16に、金(Au)膜17が積層されて構成されている。
【0044】
この樹脂側金属膜15は、Ti膜16とAu膜17との積層金属膜に限らず、例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、又は、ニッケル(Ni)の単層金属膜であってもよい。
【0045】
この樹脂側金属膜15は、例えば、スパッタリングや蒸着といった方法を用いて、樹脂フィルム5に成膜することができる。
【0046】
樹脂側金属膜15の厚み、この例では、下地金属膜であるTi膜16とAu膜17とを合わせた積層金属膜全体の厚みは、水分や酸素等のガスの透過を確実に阻止するために、例えば、2000Å~3000Åであるのが好ましい。
【0047】
ベース4の枠部4bの上端面の金属膜14は、上記のように、タングステン(W)やモリブデン(Mo)からなるメタライズ膜18の上に、Ni膜19が形成されている。
【0048】
図4は、
図1に対応する水晶振動子1の摸式的な断面図であり、
図5は、
図4のセクションPの拡大図である。
図4では、樹脂フィルム5やベース4に比べて、樹脂側金属膜15及び側金属膜14等は、無視できる程度に薄いので、金属膜は省略している。また、樹脂フィルム5の撓みを誇張して示している。
【0049】
樹脂フィルム5は、例えば、加熱プレスによって、加熱されると共に、上下から加圧されてベース4の枠部4bに溶着されるが、その際、冷却された樹脂フィルム5が収縮し、内方側(中央側)へ引っ張られる結果、樹脂フィルム5の凹部6を覆っている領域が、
図4に示すように、凹部6側に撓むように変形する。
【0050】
また、冷却後には樹脂フィルム5が収縮することによって、樹脂フィルム5の樹脂側金属膜15とベース4の枠部4bとの密着部分が加圧されることになる。すなわち、Ti膜16にAu膜17が積層された樹脂側金属膜15は、樹脂フィルム5の周端部に押圧されて密着し(ガスケットリングのような作用)、枠部4bで囲まれた凹部6は、実質的に樹脂を含まない樹脂側金属膜15のみによって覆われるため、凹部6への水分や酸素等のガスの侵入を効果的に阻止することができる。
【0051】
以上のように、樹脂フィルム5のベース4に接合される側の主面には、その周端部を除く内側の矩形の領域に、樹脂側金属膜15が形成されているので、ベース4の凹部6に収容されている水晶素子3は、樹脂フィルム5の樹脂側金属膜15が形成された領域に覆われて封止されることになる。
【0052】
これによって、水分や酸素等のガスが、樹脂フィルム5によって封止された内部空間に侵入して水晶素子3を構成する水晶振動片9の両主面の励振電極10a,10bを劣化させるのを阻止することができ、水晶振動子1の特性の低下を抑制することができる。
【0053】
また、樹脂フィルム5が接合されるベース4の枠部4bの上端面の金属膜として、Ni膜19が、最上層の金属膜として形成されているので、樹脂フィルム5の周端部は、ベース4の最上層のNi膜19に接合されることになる。これによって、樹脂フィルム5が、Au膜に接合されるのに比べて接合強度を高めることができる。
【0054】
上記実施形態では、樹脂側金属膜15は、樹脂フィルム5のベース4に接合される側の主面のみに接合されたが、本発明の他の実施形態として、樹脂側金属膜を、樹脂フィルム5のベース4に接合される側とは反対側の主面、すなわち、ベース4の凹部6に対向する側とは反対側である外側の主面にも形成してもよい。
【0055】
図6は、本発明の他の実施形態の水晶振動子1
1の上記
図1に対応する概略断面図であり、
図7は、
図6の水晶振動子1
1の上記
図3に対応する一部拡大断面図である。
【0056】
この実施形態の水晶振動子11では、上記実施形態と同様に、樹脂フィルム51のベース4に接合される側の主面に、樹脂側金属膜15が形成されており、更に、樹脂フィルム51のベース4に接合される側とは反対側である外側の主面に、樹脂側金属膜20が形成されている。
【0057】
この樹脂側金属膜20は、樹脂フィルム51の前記外側の主面の全面にそれぞれ形成されている。
【0058】
この樹脂側金属膜20は、上記実施形態と同様に、下地金属膜であるTi膜21上に、Au膜22が形成されている。
【0059】
樹脂フィルム51は、上記実施形態と同様に、例えば、加熱プレスによって、加熱、加圧され、ベース4に接合される側の主面の樹脂が溶融してベース4に接合される。
【0060】
この実施形態の水晶振動子11によれば、樹脂フィルム51の内側の主面だけではなく、外側の主面には、その全面に、樹脂側金属膜20が形成されているので、ベース4の凹部6に収納された水晶素子3を構成する水晶振動片9の励振電極10a,10bは、樹脂フィルム51と共に、樹脂側金属膜15,20で覆われて封止されることになる。
【0061】
これによって、水分や酸素等のガスが、樹脂側金属膜15,20が形成された樹脂フィルム51によって封止された内部空間に侵入して水晶振動片9の両主面の励振電極10a,10bを劣化させるのを効果的に阻止することができ、水晶振動子1の特性の低下を抑制することができる。
【0062】
上記各実施形態では、樹脂フィルム5,51に形成された樹脂側金属膜15,20によって、水分や酸素等のガスが、ベース4の凹部6に侵入するのを阻止したが、本発明の他の実施形態として、樹脂フィルム5,51に形成された樹脂側金属膜15,20を、電磁遮蔽体として機能させてもよい。
【0063】
すなわち、ベース4の外底面にグランド用の外部接続端子を設けると共に、樹脂フィルム5に形成された樹脂側金属膜15、あるいは、樹脂フィルム51に形成された樹脂側金属膜15,20の少なくともいずれか一方の金属膜15,20を、ベース4に形成した内部配線等を介してグランド用の外部接続端子に電気的に接続する。
【0064】
これによって、樹脂フィルム5,51に形成された樹脂側金属膜15,20は、グランド用の外部接続端子を介して接地されることになり、樹脂側金属膜15,20を電磁遮蔽体として機能させることができ、水晶振動子1,11への電気的なノイズの影響を低減することができる。
【0065】
したがって、樹脂フィルム5,51に形成された樹脂側金属膜15,20によって、水分や酸素等のガスが、ベース4の凹部6に侵入するのを阻止するだけではなく、電磁遮蔽体として作用させて、電気的なノイズの影響を低減することができる。
【0066】
上記の各実施形態では、樹脂側金属膜15を、樹脂フィルム5,51の主面の周端部を除く内側の矩形の領域に形成し、樹脂フィルム5,51の周端部の樹脂部分を、加熱プレスによって加熱溶融して、ベース4の枠部4bの上端面のベース側金属膜14に接合した。
【0067】
本発明の他の実施形態として、樹脂側金属膜15を、前記周端部を含む樹脂フィルム5,51の主面の全面に形成すると共に、ベース4の枠部4bの上端面との接合領域には、金錫合金等の封止用金属を形成しておき、この封止用金属によって、樹脂フィルム5,51の樹脂側金属膜15を、ベース4の枠部4bの上端面の金属膜14に接合してもよい。この場合、ベース側の金属膜14は、電極パッド7,7や外部接続端子8,8と同様に、最上層にAu膜を形成しておくのが好ましい。
【0068】
このように封止用金属によって、樹脂側金属膜15が全面に形成された樹脂フィルム5,51を、ベース4の枠部4bの上端面の金属膜14の最上層のAu膜に接合するので、樹脂側金属膜15が形成された樹脂フィルム5,51によって、水晶素子3が収容された凹部6を気密に封止することができる。
【0069】
上記各実施形態では、樹脂フィルム5,51は、ポリイミド樹脂であったが、ポリイミド樹脂に限らず、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されるような樹脂、例えば、ポリアミド樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂等を用いてもよい。
【0070】
上記実施形態では、圧電デバイスとして、水晶振動子に適用して説明したが、水晶振動子に限らず、圧電フィルタ、圧電発振器等の他の圧電デバイスに適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,11 水晶振動子
2,21 パッケージ
3 水晶素子
4 ベース
4a 基板部
4b 枠部
5,51 樹脂フィルム
6 凹部
14 金属膜
15,20 樹脂側金属膜