(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175880
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】塩味増強剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20221117BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082643
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 康弘
(72)【発明者】
【氏名】安東 宣英
(72)【発明者】
【氏名】山本 孝
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG03
4B047LG06
4B047LG38
4B047LG39
4B047LG43
4B047LG44
4B047LG60
(57)【要約】
【課題】これまで塩味増強効果を有することが知られていなかった成分を用いる、新規塩味増強方法を提供すること
【解決手段】シトラール及び下記一般式(1)で表されるシトラール類縁体からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、食塩含有製品の塩味増強剤:
H3C-C(CH3)=CH-CH2-CH2-C(CH3)=CH-R1-R2 (1)
[式中、R1は-CH(OH)-、-C(=O)-又は-CH(OAc)-を示し、Acはアセチル基を示す。R2は炭素数1~4のアルキル基を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトラール及び下記一般式(1)で表されるシトラール類縁体からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、食塩含有製品の塩味増強剤:
H3C-C(CH3)=CH-CH2-CH2-C(CH3)=CH-R1-R2 (1)
[式中、R1は-CH(OH)-、-C(=O)-又は-CH(OAc)-を示し、Acはアセチル基を示す。R2は炭素数1~4のアルキル基を示す。]
【請求項2】
シトラール及び下記一般式(1)で表されるシトラール類縁体からなる群より選択される少なくとも一種を食塩含有製品に添加することを含む、食塩含有製品の塩味を増強する方法:
H3C-C(CH3)=CH-CH2-CH2-C(CH3)=CH-R1-R2 (1)
[式中、R1は-CH(OH)-、-C(=O)-又は-CH(OAc)-を示し、Acはアセチル基を示す。R2は炭素数1~4のアルキル基を示す。]
【請求項3】
請求項1記載の塩味増強剤を食塩含有製品に添加することを含む、食塩含有製品の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の塩味増強剤を含有する、食塩含有製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩味増強剤、塩味を増強する方法、食塩含有製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩は、食品業界においては飲食品に塩味を付与することによる味質の向上のほかに、飲食品の保存性の向上や物性の改善にも効果を有することから、広く一般に使用されている。しかし、一方で、ナトリウムの過剰摂取は高血圧症や胃がんといった生活習慣病をまねくおそれがあるとの指摘もされている。
【0003】
しかし、ナトリウムの摂取を抑えるために食塩の添加量を減らした低塩・減塩食品では、味のインパクトに欠け、食品自体のおいしさが損なわれることもある。そのため、食塩の添加量を抑えながらも、十分な塩味を感じることができる飲食品の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-289198号公報
【特許文献2】特開2009-148216号公報
【特許文献3】特開2011-4668号公報
【特許文献4】特開2011-10657号公報
【特許文献5】特開2011-254772号公報
【特許文献6】特開2006-296357号公報
【特許文献7】特開2013-17459号公報
【特許文献8】特開2012-239398号公報
【特許文献9】特開2012-200159号公報
【特許文献10】特開2011-229524号公報
【特許文献11】特開2011-72307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これまで塩味増強効果を有することが知られていなかった成分を用いる、新規塩味増強方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる状況の下、本発明者らは鋭意検討した結果、シトラール又はその特定の類縁体を用いることによりかかる課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる新規の知見に基づくものである。従って、本発明は以下の項を提供する:
項1.シトラール及び下記一般式(1)で表されるシトラール類縁体からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、食塩含有製品の塩味増強剤:
H3C-C(CH3)=CH-CH2-CH2-C(CH3)=CH-R1-R2 (1)
[式中、R1は-CH(OH)-、-C(=O)-又は-CH(OAc)-を示し、Acはアセチル基を示す。R2は炭素数1~4のアルキル基を示す。]
項2.シトラール及び下記一般式(1)で表されるシトラール類縁体からなる群より選択される少なくとも一種を食塩含有製品に添加することを含む、食塩含有製品の塩味を増強する方法:
H3C-C(CH3)=CH-CH2-CH2-C(CH3)=CH-R1-R2 (1)
[式中、R1は-CH(OH)-、-C(=O)-又は-CH(OAc)-を示し、Acはアセチル基を示す。R2は炭素数1~4のアルキル基を示す。]
項3.項1記載の塩味増強剤を食塩含有製品に添加することを含む、食塩含有製品の製造方法。
項4.項1記載の塩味増強剤を含有する、食塩含有製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、これまで塩味増強効果を有することが知られていなかった成分を用いる、新規塩味増強方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(I)塩味増強剤
第1の実施形態において、本発明は、シトラール及び下記一般式(1)で表されるシトラール類縁体からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、食塩含有製品の塩味増強剤を提供する:
H3C-C(CH3)=CH-CH2-CH2-C(CH3)=CH-R1-R2 (1)
[式中、R1は-CH(OH)-、-C(=O)-又は-CH(OAc)-を示し、Acはアセチル基を示す。R2は炭素数1~4のアルキル基を示す。]
本発明において「塩味」とは、5種類の基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)のうちの1つであり、塩化ナトリウムで代表されるような塩からい味を意味する。
本発明においてシトラールとはネラールとゲラニアールとの混合物を示す。また、本明細書において、一般式(1)で表されるシトラール類縁体を、単にシトラール類縁体(1)と示すことがある。本発明において、上記一般式(1)において、Acはアセチル基を示す。また、アルキル基とは、直鎖又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を示す。本発明において、アルキル基の炭素数は1~4であり、1~3が好ましく、1~2がより好ましく、1がさらに好ましい。より具体的には、炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。また、シトラール類縁体(1)には、幾何異性体、立体異性体、光学異性体等の異性体が存在する場合、特に明記しない限り、これらの異性体はシトラール類縁体(1)に包含される。例えば、一般式(1)には、それぞれのシス体、トランス体及びこれらの混合物が包含され得る。より具体的には、例えば、R1が-CH(OH)-の場合(アルコール体)、一般式(1)には、
【0009】
【0010】
がいずれも包含され得る。同様に、R1が-C(=O)-の場合(ケトン体)、一般式(1)には、
【0011】
【0012】
がいずれも包含され得る。また、R1が-CH(OAc)-の場合(エステル体)、一般式(1)には、
【0013】
【0014】
がいずれも包含され得る。
【0015】
シトラール類縁体(1)は公知又は公知の方法に準じて合成可能である。シトラール又はシトラール類縁体の市販品としては、例えば、シトラールとしては、シトラールF(Shandong NHU Pharmaceutical Co.,Ltd社製)等の商品名で販売されているものが挙げられる。本発明においては、これらのシトラール及びシトラール類縁体(1)は、1種類を単独で用いても、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の塩味増強剤においてシトラール又はシトラール類縁体(1)は精製された状態で用いられてもよいが、これに制限されず、本発明の作用効果を損なわない範囲において、シトラール又はシトラール類縁体(1)を含有する天然の材料を本発明の塩味増強剤として使用することができる。このような天然の材料としては、これらに限定されるものではないが、例えば:シトラールを含有する天然の材料として、レモン、シトラスフルーツ等を挙げることができる。
【0017】
本発明の塩味増強剤は、例えば後述する対象の食塩含有製品の塩味を増強するために用いられる。その形態を問わないが、粉末状、顆粒状、タブレット状、カプセル剤状等の固体の形態、ならびにシロップ状、乳液状、液状、ジェル状等の半固体又は液体の形態を有することができる。
【0018】
本発明の塩味増強剤は、シトラール又はシトラール類縁体(1)のみからなるものであってもよいし、シトラール又はシトラール類縁体(1)に加え、その形態に応じて、薬学的に許容される担体、又は飲食品に配合可能な担体を適宜配合することもできる。かかる担体としては、本発明の塩味増強剤の作用効果に影響を与えない範囲で、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類;デキストリン、セルロース、アラビアガム、でん粉(コーンスターチ等)等の多糖類;水、エタノール等の溶剤等を挙げることができる。さらに本発明の塩味増強剤の作用効果に影響を与えない範囲で、飲食品、医薬品等に通常使用されるような香料、色素、酸味料、又は日持向上剤等を配合することもできる。かかる実施形態において、本発明の塩味増強剤中のシトラール又はシトラール類縁体(1)の合計量は、本発明の塩味増強剤の使用態様、及び他の成分の有無等に応じて、0.00000001~99質量%(0.0001~990000ppm)の範囲から適宜設定することができる。
【0019】
(II)食塩含有製品
本発明は、前記本発明の塩味増強剤を含む食塩含有製品を提供する。前述のように、本発明の塩味増強剤はシトラール又はシトラール類縁体(1)を含む。従って、本発明は、シトラール又はシトラール類縁体(1)を含む食塩含有製品を提供する。当該本発明の食塩含有製品は、前述する本発明の塩味増強剤を、後述する対象の食塩含有製品に添加配合することで簡便に調製することができる。
【0020】
本発明において食塩とは、本発明の属する分野において通常意味するものとして理解されるが、塩化ナトリウムの含有量が質量比で100分の40以上のものが包含される。そして、本発明が対象とする食塩含有製品は、食塩を含有する製品であり、従って、塩化ナトリウムを含有する製品が広く包含される。また、食塩含有製品は、典型的には、食塩を含有する可食製品である。本発明において、対象となる製品としては、例えば飲食品、経口医薬品、口腔用医薬品、歯磨きや洗口液等のオーラルケア製品(医薬品又は医薬部外品を含む)を挙げることができ、好ましくは飲食品である。
【0021】
食塩を含有する飲食品は限定されないが、例えば、炭酸飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、乳酸飲料、その他種々の清涼飲料、乳飲料、種々のアルコール飲料などの飲料;おかき、煎餅、おこし、まんじゅう、飴、その他種々の和菓子;クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ドーナッツ、ワッフル、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメルキャンディー、チューインガム、ゼリー、ホットケーキ、その他種々の洋菓子;ポテトチップス、その他種々のスナック菓子;アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、その他種々の氷菓;フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、その他種々のペースト類;梅干、浅漬け等の漬物;ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、その他種々の畜肉製品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、竹輪、はんぺん、てんぷら、その他種々の魚介類製品;即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレー、その他種々のカレー類;みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、醤、めんつゆ、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、固形ブイヨン、焼き肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、ダシの素、粉末スープ、ラーメンスープ、ドレッシング、バター、ゆずこしょう、刻んだ香草に塩を添加したもの(きざみ青じそ等)、その他種々の調味料類;ヨーグルト、乳酸菌飲料、チーズ加工品等の乳製品、おにぎり、炒飯等の米飯類等、パン等が挙げられる。
【0022】
また経口医薬品としては、前述する塩分を含有する、トローチ、ドリンク剤、顆粒剤、散剤(粉末剤)、錠剤、カプセル剤等を、口腔用医薬品としては、前述する塩分を含有する、スプレー剤、軟膏剤、パスタ剤等を、またオーラルケア製品としては、前述する塩分を含有する、液体歯磨き、練り歯磨き、口中洗浄剤、口臭除去剤等を挙げることができる。
【0023】
本発明の効果が得られる範囲で、本発明の食塩含有製品には、塩化カリウム、乳清ミネラル、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、L-グルタミン酸アンモニウム等の公知の食塩代替物をさらに添加してもよい。
【0024】
本発明の食塩含有製品の塩分濃度は、本発明の食塩含有製品の目的や種類に応じて適宜設定することができる。制限はされないものの、例えば、本発明の食塩含有製品の塩分濃度としては塩化ナトリウム換算で、0.1~50質量%を挙げることができる。また、飲食品のうち、調味料、保存食品(漬物、干物、ビーフジャーキー等のように塩分濃度を高めることにより保存性を高めた食品)等のように比較的塩分濃度の高いものの塩分濃度としては塩化ナトリウム換算で、好ましくは、3~50質量%を挙げることができる。また、比較的塩分濃度の低い食品、例えば、調味料、保存食品以外の食品であって、水、熱湯等で希釈せずに味わう種類の食品の塩分濃度としては塩化ナトリウム換算で、好ましくは、0.1~5質量%を挙げることができる。
【0025】
シトラール及びシトラール類縁体(1)は、それ自体が塩味を呈する化合物ではないため、これらを食塩含有製品に添加することにより塩味増強できるという本発明の効果は、従来技術からは予想し得ないものである。また、シトラール及びシトラール類縁体(1)は、公知の食塩代替物である塩化カリウム等のような苦味、えぐ味を示さないため有用である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、食塩含有製品に対してシトラール又はシトラール類縁体(1)は、本発明の食塩含有製品中の最終濃度が、例えば、0.005~2000ppb、より好ましくは0.02~500ppb、さらに好ましくは0.1~100ppbとなるように配合される。かかる実施形態において、シトラール又はシトラール類縁体(1)として2種類以上を配合する場合は、それらの各々が上記濃度範囲となることが好ましい。かかる食塩含有製品中のシトラール又はシトラール類縁体(1)の最終濃度は、対象とする食塩含有製品の種類等に応じて適宜設定することができ、例えば下限値としては、前記の通り0.005ppb以上を挙げることができるが、好ましくは0.02ppb以上、より好ましくは0.1ppb以上である。また食塩含有製品中のシトラール又はシトラール類縁体(1)の最終濃度の上限値としては、前記の通り2000ppb以下を挙げることができるが、好ましくは500ppb以下、より好ましくは100ppb以下である。また、シトラール又はシトラール類縁体(1)として2種類以上を配合する場合は、シトラール又はシトラール類縁体(1)の合計量として、食塩含有製品中に対し、0.005~2000ppbの濃度範囲となることが好ましく、0.02~500ppbがより好ましく、0.1~100ppbがさらに好ましい。
【0027】
また、本発明の好ましい実施形態において、シトラール又はシトラール類縁体(1)は、食塩含有製品中における塩化ナトリウム1質量部に対し、0.0000000001~0.001質量部添加されることが好ましく、0.00000001~0.01質量部添加されることがより好ましい。
【0028】
本発明の食塩含有製品は、本発明の塩味増強剤を食塩含有製品に添加することにより製造することができる。従って、一実施形態において、本発明は、本発明の塩味増強剤を食塩含有製品に添加することを含む、食塩含有製品の製造方法を提供する。また前述のように、本発明の塩味増強剤は、シトラール又はシトラール類縁体(1)を含有する。従って、一実施形態において、本発明は、シトラール及びシトラール類縁体(1)からなる群より選択される少なくとも一種を食塩含有製品に添加することを含む、食塩含有製品の製造方法を提供する。かかる製造方法における各用語の意味、各成分の配合割合等は前記と同様である。シトラール又はシトラール類縁体(1)は、本発明の食塩含有製品の製造過程の任意の段階で添加することができる。
【0029】
本発明を用いることにより、食塩の配合量の増大や質の改善を要することなく、食塩含有製品の塩味を増強することができる。すなわち、本発明の製造方法により、簡便かつ安価に、塩味が増強された食塩含有製品を製造することができる。従って、本発明を用いることにより、塩味が増強され、味を改善し、嗜好性の向上が期待できる。逆にいえば、本発明によれば、塩味を大きく低減ないし損なうことなく、食塩の使用量を抑えることができる。
【0030】
本発明の食塩含有製品について塩味が増強されているか否かは、シトラール又はシトラール類縁体(1)が配合された本発明の食塩含有製品の塩味を、シトラール又はシトラール類縁体(1)が配合されていない以外は本発明の食塩含有製品と同じ組成の組成物(比較組成物)の塩味と比較することで評価することができ、比較組成物と比較して本発明の食塩含有製品の塩味のほうが、上昇している場合に、本発明の食塩含有製品について塩味が増強されていると判断することができる。制限されないものの、具体的には、後述する実施例の記載に従って評価することができる。シトラール又はシトラール類縁体(1)の配合により本発明の食塩含有製品の塩味が増強されることで、実際よりも多くの塩分を配合した組成物と同様の塩味を有する本発明の食塩含有製品を調製することができる。
【0031】
(III)食塩含有製品の塩味増強方法
本発明は、本発明の塩味増強剤を食塩含有製品に添加することを含む、食塩含有製品の塩味増強方法を提供する。また前述のように、本発明の塩味増強剤は、シトラール又はシトラール類縁体(1)を含有する。従って、一実施形態において、本発明は、シトラール及びシトラール類縁体(1)からなる群より選択される少なくとも一種を食塩含有製品に添加することを含む、食塩含有製品の塩味増強方法を提供する。かかる塩味増強方法における各用語の意味、各成分の配合割合等は前記と同様である。
シトラール又はシトラール類縁体(1)は、本発明の食塩含有製品の製造過程の任意の段階で添加することができる。
【0032】
なお、本明細書において、「含む」や「含有する」という用語には、「から実質的になる」及び「からなる」の意味が包含される。
【0033】
本発明の内容を以下の実験例や実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【実施例0034】
以下の実験例において、シトラールとしては、シトラールF(Shandong NHU Pharmaceutical Co.,Ltd社製)を使用した。また、シトラール類縁体としては、4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン-2-オール、4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン-2-イルアセテート、4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン-2-オンを使用した。また、以下の実施例において、食品中の塩分は、食塩(塩化ナトリウム)相当量として表示されたものである。また、以下の実施例において、食塩としては、日本海水食塩(株式会社日本海水社製、塩化ナトリウム99質量%以上)を使用した。
【0035】
実験例1 シトラール又はシトラール類縁体の塩味増強作用の評価
(1)評価方法
2質量%の食塩水に各シトラール又はシトラール類縁体を表1に記載の濃度となるよう添加した。また、コントロールとして、B(2質量%食塩水)、N2(塩分濃度10%up=2.2質量%食塩水)及びN4(塩分濃度20%up=2.4質量%食塩水)を調製した。飲食品の研究開発に従事し、官能評価についてよく訓練されたパネル(以下の実験例においても同じ)7名によって、各サンプルの塩味を評価した。具体的には、検体1つをスポイドで0.5mlの線くらいまで吸い、口に含み、以下の評価基準で塩味の評価をした。また、検体と検体との間は、水を含んで味覚をリフレッシュさせた。
0点:Bと同等若しくはBより塩味を弱く感じる
1点:BとN2の間くらいの塩味を感じる
2点:N2と同程度の塩味を感じる
3点:N2とN4の間くらいの塩味を感じる
4点:N4と同程度の塩味を感じる
5点:N4より塩味を強く感じる
(2)評価結果
結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
上記結果から明らかなように、シトラール及びシトラール類縁体はいずれも、食塩水の塩味を増強した。
【0038】
実験例2 シトラール又はシトラール類縁体の塩味増強作用の評価
(1)評価方法
キッコーマン株式会社社製 こいくちしょうゆ(塩分濃度17.5質量%)をイオン交換水にて10%(W/W)に希釈した(サンプルB(塩分濃度1.75質量%))。また、サンプルBに対し0.175質量%に相当する量の食塩を添加することにより、塩分濃度を10質量%高めたサンプルであるN2を調製した。さらに、サンプルBに対し0.35質量%に相当する量の食塩を添加することにより、塩分濃度を20質量%高めたサンプルであるN4を調製した。そして、サンプルBに、各シトラール又はシトラール類縁体を当該表2に記載の種類、濃度で添加したものを準備した。パネル7名によって、以下の評価基準に基づき各サンプルの塩味を評価した。
0点:Bと同等若しくはBより塩味を弱く感じる
1点:BとN2の間くらいの塩味を感じる
2点:N2と同程度の塩味を感じる
3点:N2とN4の間くらいの塩味を感じる
4点:N4と同程度の塩味を感じる
5点:N4より塩味を強く感じる
(2)評価結果
結果を表2に示す。
【0039】
【0040】
上記結果から分かるように、シトラール及びシトラール類縁体は、醤油の塩味を増強した。
【0041】
実験例3 シトラール又はシトラール類縁体の塩味増強作用の評価
(1)評価方法
サンプルB(ブランク)として、きざみ青じそ(ハウス食品株式会社製チューブ品 塩分濃度5.75%)を用いた。そして、サンプルBに、各シトラール又はシトラール類縁体を当該表3に記載の種類、濃度で添加したものを準備した。パネル7名によって、以下の評価基準に基づき各サンプルの塩味を評価した。
〇:B(ブランク)より塩味を強く感じる
-:B(ブランク)と塩味の強さが同じくらい
×:B(ブランク)より塩味を弱く感じる
(2)評価結果
結果を表3に示す。
【0042】
【0043】
上記結果から分かるように、シトラール及びシトラール類縁体は、きざみ青じその塩味を増強した。
【0044】
実験例4 シトラール又はシトラール類縁体の塩味増強作用の評価
(1)評価方法
サンプルB(ブランク)として、セブンプレミアム ゆずこしょう(塩分濃度26.2%)を用いた。そして、サンプルBに、各シトラール又はシトラール類縁体を当該表4に記載の種類、濃度で添加したものを準備した。パネル7名によって、以下の評価基準に基づき各サンプルの塩味を評価した。
〇:B(ブランク)より塩味を強く感じる
-:B(ブランク)と塩味の強さが同じくらい
×:B(ブランク)より塩味を弱く感じる
(2)評価結果
結果を表4に示す。
【0045】
【0046】
上記結果から分かるように、シトラール及びシトラール類縁体は、ゆずこしょうの塩味を増強した。