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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175888
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】印字物および読取システム
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/02 20060101AFI20221117BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20221117BHJP
   G01K 11/16 20210101ALI20221117BHJP
   G01K 11/12 20210101ALI20221117BHJP
   C09K 9/00 20060101ALI20221117BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20221117BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20221117BHJP
   G01N 21/29 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
G09F3/02 U
G01N21/27 A
G01N21/27 B
G01K11/16
G01K11/12 L
C09K9/00
G06K19/06 028
G06K19/06 037
G06K19/06 140
G09F3/00 M
G01N21/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082655
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪内 繁貴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 暢一郎
(72)【発明者】
【氏名】荻野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】會田 航平
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059BB01
2G059BB20
2G059CC10
2G059CC20
2G059EE02
2G059EE12
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF08
2G059HH02
2G059KK04
2G059KK07
2G059MM01
2G059MM05
2G059NN05
(57)【要約】
【課題】環境検知インクの印字物および印字物を精度よく簡単に読み取ることができる読取システムを提供する。
【解決手段】周囲環境に応じて色濃度が変化するインクで形成される印字物の色濃度を読み取る読取システムは、読取装置と情報処理装置とを備え、印字物は、インクにより形成された第1領域(参照領域100)、および第1領域と同じインクにより形成された第2領域(センサ領域101)を有し、第1領域は発色または消色した状態であり、環境変化の監視開始時点において、第2領域は前記第1領域と異なる色濃度であり、読取装置は、第1領域と第2領域を含む画像を取得し、情報処理装置は、第1領域の色情報を基準として、第2領域の色情報を判定する。印字物には、丸型印字物、二重丸型印字物、ドット型印字物、バーコード型印字物、QRコード型印字物などがある。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境変化に応じて色濃度が変化するインクで形成される印字物であって、
前記インクにより形成された第1領域、および前記第1領域と同じインクにより形成された第2領域を有し、
前記第1領域は発色または消色した状態であり、
環境変化の監視開始時点において、前記第2領域は前記第1領域と異なる色濃度である印字物。
【請求項2】
請求項1に記載の印字物であって、
環境変化の監視開始時点において、前記第2領域は、前記インクの色変化過程における最も高い色濃度、または最も低い色濃度であることを特徴とする印字物。
【請求項3】
請求項1に記載の印字物であって、
前記第1領域の面積が前記第2領域の面積よりも広いことを特徴とする印字物。
【請求項4】
請求項1に記載の印字物であって、
前記第2領域のある一点を中心として両サイドに、前記第1領域が配置されることを特徴とする印字物。
【請求項5】
請求項1に記載の印字物であって、
前記第1領域および前記第2領域が複数のドットから構成されることを特徴とする印字物。
【請求項6】
請求項1に記載の印字物であって、
前記第1領域および前記第2領域が同一1次元コードの一部であることを特徴とする印字物。
【請求項7】
請求項1に記載の印字物であって、
前記第1領域および前記第2領域が同一2次元コードの一部であることを特徴とする印字物。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の印字物であって、
前記環境変化は、温度変化であることを特徴とする印字物。
【請求項9】
周囲環境に応じて色濃度が変化するインクで形成される印字物の色濃度を読み取る読取システムであって、
情報取得装置と、情報処理装置と、を備え、
前記印字物は、前記インクにより形成された第1領域、および前記第1領域と同じインクにより形成された第2領域を有し、
前記第1領域は発色または消色した状態であり、環境変化の監視開始時点において、前記第2領域は前記第1領域と異なる色濃度であり、
前記情報取得装置は、前記第1領域と前記第2領域の色情報を取得し、
前記情報処理装置は、前記第1領域の色情報を基準として、前記第2領域の色情報を判定する読取システム。
【請求項10】
請求項9に記載の読取システムであって、
前記情報取得装置は、前記第1領域の少なくとも一部と前記第2領域の少なくとも一部を含む画像を取得する撮像装置であることを特徴とする読取システム。
【請求項11】
請求項9に記載の読取システムであって、
前記情報取得装置は、前記第1領域と前記第2領域の少なくとも一部の光の反射、屈折、干渉現象の情報を記録する光学装置であることを特徴とする読取システム。
【請求項12】
請求項11に記載の読取システムであって、
前記情報取得装置と前記情報処理装置が一体型の装置であることを特徴とする読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字物および読取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温度などの環境変化に応じて色が変わるインク(環境検知インク)で発色した表示物(紙片など)は、環境変化を検知するカラーセンサとして、温度などの計測値を電気信号に変換することが困難な測定対象に適用されたり、低コストでセンシングしたいという要望に応じて適用されたりする。
【0003】
カラーセンサの色は、通常、発色前から最も発色した状態までの間の色を示す。大まかな計測値を取得できればよいのであれば、肉眼で発色を確認するだけでよい。正確な計測値を機械的に取得したい場合には、カラーセンサの色を定量的なデジタル値に変換する読取装置が必要となる。
【0004】
色評価装置として、カラーセンサを撮影した画像から色情報を取得する方法がある。ここで、取得される画像には通常、撮影環境と撮影機材とが強く影響するため、高精度な色評価は難しい。画像に影響を与える撮影環境とは、例えば、光源の種類と明るさが挙げられる。被写体に当たる光のスペクトルは、直射日光、曇天の外光、蛍光灯、白熱電球などの光源の種類(照明機種)や、光源からの光の減衰度合いにより、様々に変化する。
【0005】
多くの場合、光源は複数存在し、それらの光が混合することもある。撮影時の状況によってセンサのある場所や向き、撮影者の立ち位置などが異なることは珍しくない。さらに、撮影時刻(太陽の位置)や天気なども常に変化する。それらの要因に依り、撮影対象のセンサに当たる照明の明るさとスペクトルは様々に変化する。
【0006】
特許文献1には、色が変化するカラーセンサと3色の色標本とを同時に撮像したカラー画像データから色標本の補正値を求める解析手段と、補正値を用いてカラーセンサの色を補正する補正手段と、を備える測定装置が記載されている。
【0007】
特許文献2には、第1の撮影環境において撮影された4つ以上の色標本の色情報が記憶部に登録されており、計測する物理量によって変化するカラーセンサのセンサ色と、計測する物理量によって変化しない4つ以上の参照色とが表示された表示物を第2の撮影環境で撮影した計測時の撮影データから、センサ色と、4つ以上の参照色とをそれぞれ取得することで、様々な撮影環境下で撮影されたカラーセンサから、高精度に測定値を求めることが可能な色評価装置が記載されている。
【0008】
これにより、様々な光源下でカラーセンサを撮像した場合でも、同じ画像に写っている色標本を手がかりにカラーセンサの色を高精度に補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-93277号公報
【特許文献2】特開2020-38073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の色補正には、カラーセンサ部とは異なる色の色標本が用いられている。また、色標本には、カラーセンサに使われた環境検知インクとは別の、環境変化においてほとんど変化しない色標本が用いられている。
【0011】
カラーセンサに使われた環境検知インクとは別の、環境変化においてほとんど変化しない色標本を用いるということは、少なくとも2種以上のインクが必要であり、カラーセンサの生産工程においてインクを設置する工程が増える。
【0012】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、生産性が高く、色情報を精読良く読み取ることが可能な環境検知インクの印字物、およびその読取システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明の印字物は、環境変化に応じて色濃度が変化するインクで形成される印字物であって、前記インクにより形成された第1領域(例えば、参照領域100)、および前記第1領域と同じインクにより形成された第2領域(例えば、センサ領域101)を有し、前記第1領域は発色または消色した状態であり、環境変化の監視開始時点において、前記第2領域は前記第1領域と異なる色濃度であることを特徴とする。
【0014】
また、周囲環境に応じて色濃度が変化するインクで形成される印字物の色濃度を読み取る読取システムであって、情報取得装置と、情報処理装置と、を備え、前記印字物は、前記インクにより形成された第1領域、および前記第1領域と同じインクにより形成された第2領域を有し、前記第1領域は発色または消色した状態であり、環境変化の監視開始時点において、前記第2領域は前記第1領域と異なる色濃度であり、前記情報取得装置は、前記第1領域と前記第2領域の色情報を取得し、前記情報処理装置は、前記第1領域の色情報を基準として、前記第2領域の色情報を判定することを特徴とする。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生産性が高く、色情報を精読良く読み取ることが可能な環境検知インクの印字物、およびその読取システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】第1実施形態に係る丸型印字物のセンサ領域変化前の模式図である。
図1B】第1実施形態に係る丸型印字物のセンサ領域変化途中の模式図である。
図1C】第1実施形態に係る丸型印字物のセンサ領域変化後の模式図である。
図2A】第2実施形態に係る二重丸型印字物のセンサ領域変化前の模式図である。
図2B】第2実施形態に係る二重丸型印字物のセンサ領域変化途中の模式図である。
図2C】第2実施形態に係る二重丸型印字物のセンサ領域変化後の模式図である。
図3A】第3実施形態に係るドット型印字物のセンサ領域変化前の模式図である。
図3B】第3実施形態に係るドット型印字物のセンサ領域変化途中の模式図である。
図3C】第3実施形態に係るドット型印字物のセンサ領域変化後の模式図である。
図4A】第4実施形態に係るバーコード型印字物のセンサ領域変化前の模式図である。
図4B】第4実施形態に係るバーコード型印字物のセンサ領域変化途中の模式図である。
図4C】第4実施形態に係るバーコード型印字物のセンサ領域変化後の模式図である。
図5A】第5実施形態に係るQRコード型印字物のセンサ領域変化前の模式図である。
図5B】第5実施形態に係るQRコード型印字物のセンサ領域変化途中の模式図である。
図5C】第5実施形態に係るQRコード型印字物のセンサ領域変化後の模式図である。
図6】発色の中間色を説明する説明図である。
図7】本実施形態に係る読取システムの一例である読取端末の外観および構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を説明するが、本発明は以下の内容に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形して実施できる。本発明は、異なる実施形態同士を組み合わせて実施できる。以下の記載において、異なる実施形態において同じ部材については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1Aは、第1実施形態に係る丸型印字物10のセンサ領域101変化前の模式図である。図1Bは、第1実施形態に係る丸型印字物10のセンサ領域101変化途中の模式図である。図1Cは、第1実施形態に係る丸型印字物10のセンサ領域101変化後の模式図である。
【0019】
図1A図1Cは、丸型印字物10の模式図であり、本実施形態の構成の説明のために丸形にて簡略化して図示している。丸型印字物10は、参照領域100とセンサ領域101とが接して配置されている構成である。丸型印字物10には有色の領域があり、その色は限定されない。具体的には例えば青色であり、例えば白色の下地を有する例えば製品(図示しない)に表示される。図示の例では、青色の濃さを白黒の濃淡で表現している。例えば、参照領域100とセンサ領域101は、環境変化に応じて発色するインク(環境検知インク)、例えば高温または低温になると青色に発色するインクを用いた印刷により表示できる。
【0020】
なお、表示について、製品の表面に直接印字することや、製品に貼り付けたり添付したりするラベル等や書類等に印字することなども、表示に含まれる。
【0021】
参照領域100とセンサ領域101に使用される環境検知インクは、例えば、温度、湿度、光、ガス濃度、振動等の大小に基づいて発色するインクである。
【0022】
参照領域100とセンサ領域101に使用される環境検知インクのうち、温度の大小に基づいて変色するインクは、例えば、金属錯体塩からなる無機系のサーモクロミック材料や、ロイコ染料やサーモクロミック液晶等の有機系材料を用いることができる。これら中でも、温度と経過時間との積に応じて変色する、ロイコ染料と顕色剤と消色剤を含むインクを用いることが好ましい。
【0023】
ロイコ染料としては、電子受容性の顕色剤と反応して呈色する電子供与性の化合物を用いることができる。例えば、トリフェニルメタンフタリド系、フルオラン系、フェノチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、スピロピラン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、トリアゼン系、スピロフタランキサンテン系、ナフトラクタム系、アゾメチン系等を用いることができる。
【0024】
顕色剤は、電子供与性のロイコ染料と反応してロイコ染料の分子構造を変化させる電子受容性の化合物を用いることができる。顕色剤の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,2’-ビフェノール、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エーテル-4-イソプロピルベンゼン等や、パラオキシ安息香酸エステル、没食子酸エステル等のフェノール類、カルボン酸誘導体の金属塩、サリチル酸およびサリチル酸金属塩、スルホン酸類、スルホン酸塩類、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル類、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類等を用いることもできる。
【0025】
消色剤は、ロイコ染料を消色させる添加剤である。消色剤としては、ロイコ染料と顕色剤との結合を解離させる化合物を用いることができる。消色剤としては、ロイコ染料に対して顕色性を示さず、ロイコ染料や顕色剤を溶解させる程度の極性を有する化合物が好ましい。このような消色剤としては、ヒドロキシ化合物、エステル化合物、ペルオキシ化合物、カルボニル化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、ハロゲン化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、N-オキシド化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、アジ化合物、エーテル化合物、油脂、糖、ペプチド、核酸、アルカロイド、ステロイド等が挙げられる。
【0026】
以降の説明において、環境変化に応じて色濃度が高くなる(消色した状態から発色した状態に変わる)環境検知インクを例に説明する。図1Aは、使用開始時点(監視開始時点)における印字物の状態を示す図である。印字物の使用開始時点において、参照領域100は発色状態、センサ領域101は消色状態である。ここで、印字物の使用開始時点(監視開始時点)とは、印字物により環境変化の監視や計測を開始する時である。また発色状態とは、環境変化に応じて色変化するインクの変色過程において最も色濃度が高い状態であり、消色状態とは、環境変化に応じて色変化するインクの変色過程において最も色濃度が低い状態である。
なお、環境変化に応じて色濃度が低くなる(発色状態から消色状態に変わる)環境検知インクの場合は、印字物の使用開始の時点において、参照領域は消色状態、センサ領域は発色状態である。したがって、参照領域は発色状態に限定されるわけではない。
【0027】
印字物10は、例えば、高温になると青色に発色するインクを、発色状態で印刷することにより参照領域100を形成し、同じインクを消色状態で印刷することによりセンサ領域101を形成することで、得ることができる。
【0028】
また、例えばある波長のレーザー照射(初期化工程)で、消色状態にできる場合、参照領域100とセンサ領域101を含む部分を、1色の環境検知インクで印刷し、センサ領域101のみを、初期化工程により消色状態にすることができる。具体的には、印刷物が発色状態の場合、初期化工程として消色する部分を、レーザー照射により、消色する温度まで上昇させ、その後急速に発色しない温度まで冷却するとよい。
【0029】
初期化工程によってセンサ領域101のみが消色状態になった初期状態の丸型印字物10をカラーセンサとして使用できる。
【0030】
図1Bは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が青色に発色している過程の丸型印字物10の状態を図示している。このとき、参照領域100がセンサ領域101に接する形で周囲に存在するため、センサ領域101の発色の濃さが途中段階であることを、参照領域100と比較することで目視にて判定できる。
【0031】
また、専用の読取装置と情報処理装置を用いることで、発色の中間色であることをデジタル化し、定量的に把握することができる。読取装置と情報処理装置は独立した装置でもよいし、一体型の装置どちらでもよい。
【0032】
発色濃度のデジタル化に必要な読取装置は、参照領域100とセンサ領域101とが両方の一部が撮影される撮像装置や反射光からのスペクトルデータを取得する光学装置がある。撮像装置は、カラーでもモノクロでもよく。参照領域100とセンサ領域101の色の濃淡に差が見られるものであれば限定されるものではない。例えば、デジタルカメラ、カメラ内蔵のスマートフォン、カメラ内蔵のタブレット端末などが挙げられる。光学装置は、参照領域100とセンサ領域101のスペクトルデータに差が見られるものであれば限定されるものではない。例えば、分光測色系、色度計、色彩計、色差系などが挙げられる。
【0033】
発色の中間色であることを撮像装置で取得した画像データから解析する例を示す。例えば、参照領域100とセンサ領域101の両方の領域が写った画像を、例えばデジタルカメラで撮影し、例えば、情報処理装置により撮影画像中の参照領域100とセンサ領域101の色のRGB値を抽出し解析することで、参照領域100の発色に対して、センサ領域101がどの程度発色したかを定量的に把握することができる。
【0034】
また、発色の中間色であることをスペクトルデータから解析する例を示す。例えば、参照領域100とセンサ領域101の反射率の測定による計算値から色を数量化する分光測色計用いることで、情報処理装置により参照領域100の発色に対しするセンサ領域101のスペクトル強度の差分から、どの程度発色したかを定量的に把握することができる。
【0035】
情報処理装置による発色濃度のデジタル化の方法の一例として、白色から青色に色変化する場合の、発色濃度のデジタル化の方法を、図6を参照して説明する。
【0036】
なお、本実施形態では、説明用の色モデルとしてRGB(Red、Green、Blue)モデルを採用した例で説明する。RGBモデルでは、画像を構成する1ピクセルの色は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色それぞれについての、最も暗い0から最も明るい255までの間の数値の組み合わせで表現される。以下、RGB成分を(R(赤)、G(緑)、B(青))のように括弧でくくって表記し、例えば、濃青色(0,0,255)、最も暗い黒色(0,0,0)、最も明るい白色(255,255,255)である。
【0037】
図6は、発色の中間色を説明する図である。式(1)および式(2)に、開始色を原点とした参照領域100の最終色および中間色のベクトルを示す。
最終色(R,G,B)=(R-R,G-G,B-B) …式(1)
実測色(r,g,b)=(r-R,g-G,b-B) …式(2)
【0038】
式(1)および式(2)より、開始色から最終色および中間色までのベクトルの長さ(それぞれ、Rの絶対値、rの絶対値)は、式(3)および式(4)式で表される。
【0039】
【数1】
【0040】
中間色(r,g,b)から式(1)のベクトル上に垂線を垂らした補正色(r,g,b)までの長さは式(5)で表される。
【0041】
【数2】
【0042】
式(3)および式(4)のベクトルの内積は式(6)で表される。
【0043】
【数3】
【0044】
開始色から最終色までのベクトルの長さ(前記式(3))に対する開始色から補正色までのベクトルの長さ(前記式(4))の比率は、式(5)および式(6)を式(3)および式(4)に代入し、式(7)が算出される。
【0045】
【数4】
【0046】
式(7)を発色濃度と定義し、中間色は、式(7)により計算される発色濃度が0%より大きく100%より小さくなる何れかの色である。発色濃度が大きいほど色が濃く、小さいほど色が淡い(薄い)と定義する。前記のように、センサ領域101が白色から青色に色変化する場合、白色の色濃度は(R,G,B)、濃青の色濃度は(R,G,B)で示される。
【0047】
図1Cは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が青色に発色した後の丸型印字物10の状態を図示している。このとき、参照領域100がセンサ領域101に接する形で周囲に存在するため、センサ領域101の発色の濃さが参照領域100と同じであることを、参照領域100と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。また、前記記載の読取装置の使用により、色を数値化して判定することも可能である。
【0048】
図1A図1Cの丸型印字物10を一例とする印刷形態において、参照領域100とセンサ領域101に同一種の環境検知インクを設けることで、環境変化においてほとんど変化しない色標本を参照領域に用いることなく、センサ領域の色濃度を精度よく目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できるシステムを提供できる。
【0049】
(第2実施形態)
図2Aは、第2実施形態に係る二重丸型印字物20のセンサ領域101変化前の模式図である。図2Bは、第2実施形態に係る二重丸型印字物20のセンサ101領域変化途中の模式図である。図2Cは、第2実施形態に係る二重丸型印字物20のセンサ領域101変化後の模式図である。第2実施形態以降では、第1実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0050】
図2A図2Cは、二重丸型印字物20の模式図であり、本実施形態の構成の説明のために二重丸形にて簡略化して図示している。二重丸型印字物20の参照領域100とセンサ領域101とは離れて配置している。二重丸型印字物20は有色の領域があり、その色は限定されない。具体的には例えば青色であり、例えば白色の下地を有する例えば製品(図示しない)に表示される。図示の例では、青色の濃さを白黒の濃淡で表現している。例えば、参照領域100とセンサ領域101は例えば高温または低温になると青色に発色するインク(環境検知インク)を用いた印刷により表示できる。
【0051】
参照領域100とセンサ領域101を離すことによって、それぞれ発色状態と消色状態で印刷する場合には、参照領域100とセンサ領域101の重なりを防ぐことができる。
【0052】
また、初期化工程において、センサ領域101を消色状態にする際に、例えばレーザー照射の解像度を気にすることなく、センサ領域101のみを消色状態にすることができる。同様に、参照領域100を消色状態にする際に、例えばレーザー照射の解像度を気にすることなく、参照領域100のみを消色状態にすることができる。
【0053】
図2Bは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が青色に発色している過程の二重丸型印字物20の状態を図示している。このとき、センサ領域101が参照領域100から離れた形で配置されていても、センサ領域101の発色の濃さが途中段階であることを、参照領域100と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。
【0054】
図2Cは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が青色に発色した後の二重丸型印字物20の状態を図示している。このとき、センサ領域101が参照領域100から離れた形で配置されていても、センサ領域101の発色の濃さが参照領域100と同じであることを、参照領域100と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。
【0055】
図2A図2Cの二重丸型印字物20を一例とする印刷形態において、参照領域100とセンサ領域101に同一種の環境検知インクを設けることで、環境変化においてほとんど変化しない色標本を参照領域に用いることなく、センサ領域101の色濃度を精度よく目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できるシステムを提供できる。
【0056】
(第3実施形態)
図3Aは、第3実施形態に係るドット型印字物30のセンサ領域101変化前の模式図である。図3Bは、第3実施形態に係るドット型印字物30のセンサ領域101変化途中の模式図である。図3Cは、第3実施形態に係るドット型印字物30のセンサ領域101変化後の模式図である。
【0057】
図3A図3Cは、ドット型印字物30の模式図であり、本実施形態の説明のために5×7のドット型にて簡略化して図示している。ドット型印字物30は、複数のドットからなる参照領域100と複数のドットからなるセンサ領域101とから構成される。ドット型印字物30は有色の領域を有し、その色は限定されない。具体的には例えば青色であり、例えば白色の下地を有する例えば製品(図示しない)に表示される。図示の例では、青色の濃さを白黒の濃淡で表現している。例えば、参照領域100とセンサ領域101は例えば高温または低温になると青色に発色するインク(環境検知インク)を用いた印刷により表示できる。
【0058】
参照領域100とセンサ領域101をドット型にすることよって、印刷装置として産業用インクジェットプリンタを活用できる。産業用インクジェットプリンタを活用し、それぞれ参照領域100を発色状態、センサ領域101を消色状態で印字することもできる。また、高速で流れる対象物への、産業用インクジェットプリンタによって形成された環境検知インクからなるドット型印字物30に対し、初期化工程において、例えば、高速でのレーザー照射が可能な場合、高速で流れる対象物に、センサ領域101のみを消色状態にすることもできる。
【0059】
図3Bは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が青色に発色している過程のドット型印字物30の状態を図示している。このとき、センサ領域101と参照領域100がドット状に配置されていても、センサ領域101の発色の濃さが途中段階であることを、参照領域100と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。
【0060】
図3Cは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が青色に発色した後のドット型印字物30の状態を図示している。このとき、センサ領域101と参照領域100がドット状に配置されていても、センサ領域101の発色の濃さが参照領域100と同じであることを、参照領域100と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。
【0061】
図3A図3Cのドット型印字物30を一例とする印刷形態において、参照領域100とセンサ領域101に同一種の環境検知インクを設けることで、環境変化においてほとんど変化しない色標本を参照領域に用いることなく、センサ領域101の色濃度を精度よく目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できるシステムを提供できる。
【0062】
(第4実施形態)
図4Aは、第4実施形態に係るバーコード型印字物40のセンサ領域101変化前の模式図である。図4Bは、第4実施形態に係るバーコード型印字物40のセンサ領域101変化途中の模式図である。図4Cは、第4実施形態に係るバーコード型印字物40のセンサ領域101変化後の模式図である。
【0063】
図4A図4Cは、バーコード型印字物40の模式図であり、本実施形態の説明のためにJANコード短縮タイプのバーコードにて簡略化して図示しているが、1次元コードであれば限定されるものではない。1次元バーコードの場合、所定の規格は例えばISO/IEC 15420:2000である。バーコード型印字物40は、複数の線からなる参照領域100と複数の線からなるセンサ領域101とから構成される。バーコード型印字物40は有色の領域を有し、発色変化した色で形成されたコードを専用のリーダーで読み取れる色であれば限定されない。具体的には例えば黒色であり、例えば白色の下地を有する例えば製品(図示しない)に表示される。図示の例では、黒色の濃さを白黒の濃淡で表現している。例えば、参照領域100とセンサ領域101は例えば高温または低温になると黒色に発色するインク(環境検知インク)を用いた印刷により表示できる。
【0064】
参照領域100とセンサ領域101をバーコード型にすることよって、参照領域100とセンサ領域101ともに情報記録領域として機能させることができる。バーコード型印字物40が高温または低温にさらされて、センサ領域101が発色状態にある場合にのみ、コードとして機能させることもできる。
【0065】
図4Bは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が黒色に発色している過程のバーコード型印字物40の状態を図示している。このとき、センサ領域101と参照領域100がバーコード状に配置されていても、センサ領域101の発色の濃さが途中段階であることを、参照領域100と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。
【0066】
図4Cは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が黒色に発色した後のバーコード型印字物40の状態を図示している。このとき、センサ領域101と参照領域100がバーコード状に配置されていても、センサ領域101の発色の濃さが参照領域100と同じであることを、センサ領域101と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。
【0067】
図4A図4Cのバーコード型印字物40を一例とする印刷形態において、参照領域100とセンサ領域101に同一種の環境検知インクを設けることで、環境変化においてほとんど変化しない色標本を参照領域に用いることなく、センサ領域の色濃度を精度よく目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できるシステムを提供できる。
【0068】
(第5実施形態)
第5実施形態は、2次元コードとしてのQRコード(登録商標)に適用した場合である。図5Aは、第5実施形態に係るQRコード型印字物50のセンサ領域101変化前の模式図である。図5Bは、第5実施形態に係るQRコード型印字物50のセンサ領域101変化途中の模式図である。図5Cは、第5実施形態に係るQRコード型印字物50のセンサ領域101変化後の模式図である。
【0069】
図5A図5Cは、QRコード型印字物50の模式図であり、本実施形態の説明のためにバージョン5の37セル×37セルのQRコードにて簡略化して図示しているが、2次元コードであれば限定されるものではない。QRコードの場合、所定の規格は例えばISO/IEC18004である。QRコード型印字物50は、複数のセルからなる参照領域100と複数のセルからなるセンサ領域101とから構成される。QRコード型印字物50は有色であり、発色変化した色で形成されたコードを専用のリーダーおよびソフトで読み取れる色であれば限定されない。具体的には例えば黒色であり、例えば白色の下地を有する例えば製品(図示しない)に表示される。図示の例では、黒色の濃さを白黒の濃淡で表現している。例えば、参照領域100とセンサ領域101は例えば高温または低温になると黒色に発色するインク(環境検知インク)を用いた印刷により表示できる。
【0070】
参照領域100とセンサ領域101をQRコード型にすることよって、参照領域100とセンサ領域101ともに情報記録領域として機能させることができる。また、センサ領域101が消色状態にある場合には、QRコード内の配置の仕方によってコードとしての機能を保持したり、無効化したりできる。QRコードが汚れていたり、破損していたりしても、コード自身でデータを復元する誤り訂正機能の範囲内、例えば、全体の面積に対して30%以下にセンサ領域101を配置することで、機能を保持することができる。QRコード型印字物50で図示したセンサ領域101配置では、センサ領域101が消色状態にある場合でもQRコード内の情報を取得することができる。
【0071】
図5Bは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が黒色に発色している過程のQRコード型印字物50の状態を図示している。このとき、センサ領域101と参照領域100がQRコード状に配置されていても、センサ領域101の発色の濃さが途中段階であることを、参照領域100と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。
【0072】
図5Cは、高温または低温にさらされて、センサ領域101が黒色に発色した後のQRコード型印字物50の状態を図示している。このとき、センサ領域101と参照領域100がQRコード状に配置されていても、センサ領域101の発色の濃さが参照領域100と同じであることを、センサ領域101と比較することで目視および読取装置の使用によりデジタル化して判定できる。
【0073】
第1実施形態から第5実施形態によれば、環境変化に応じて色濃度が変化するインクで形成される印字物であって、印字物は、インクで形成された第1領域(参照領域100)、および第1領域と同じインクにより形成された第2領域(センサ領域101)を有し、第1領域は発色または消色した状態であり、環境変化の監視開始時点において、第2領域は第1領域と異なる色濃度であることが特徴である。
【0074】
第1領域の面積は第2領域の面積と比較して広く配置されていることが好ましい。また、第2領域のある一点を中心として両サイドに、第1領域が配置されていてもよい。第1領域の色濃度を基準として、第2領域の色濃度を判定する場合、第1領域の面積を第2領域の面積に比べて広くし、基準となる第1領域の色濃度の視認性を高めることで、第2領域の色濃度の判定がしやすくなる。
【0075】
(読取システム)
図7は、本実施形態に係る読取システムの一例である読取端末70の外観および構成を示す説明図である。図7では、バーコード型印字物40の読み取りを図示している。読取端末70は、筺体78の上面に表示部72、数字・文字などを入力する入力部71を有している。読取端末70の前側先端部には、読取部73を有する。筺体78の持ち手部79の下面には、読取部73でコード(物品識別情報)(例えば、1次元バーコード、QRコード)を読取る際のスイッチ77を有している。当該スイッチ77は、センサ領域101の色調情報を読み込む際にも利用される。筺体78には、読取部73が読み取った色調情報に基づき、色変化があるか否かを判定する処理部75、管理サーバと通信を行う通信部76、記憶部74などを有している。また、読取端末70は、位置情報の取得のために、GPS(Global Positioning System)機能を有している。
【0076】
読取部73としては、識別のために管理対象の物品に付与されたものによって検出方法が異なる。バーコードが付与されている場合、赤外線式のバーコード検出器が挙げられる。さらにQRコードなどの2次元コードや物品そのものに対しては、カメラなどによる画像検出器、電子タグ(例えば、RFタグ)に対しては、RFIDシステムなどの専用読取器が挙げられる。本実施形態では、バーコードの物品情報と環境検知インクの色彩および光学情報を読取るためCCDカメラを検出器として読取部73に用いている。
【0077】
記憶部74は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、SDメモリカードなどがある。処理部75は、CPU(Central Processing Unit)によって、メモリ上のプログラムを実行することで実現される。
【0078】
本実施形態の読取システムは、周囲環境に応じて色濃度が変化するインクで形成される印字物の色濃度を読み取る読取システムであって、情報取得装置と、情報処理装置と、を備え、印字物は、インクにより形成された第1領域(参照領域100)、および第1領域と同じインクにより形成された第2領域(センサ領域101)を有し、第1領域は発色または消色した状態であり、環境変化の監視開始時点において、第2領域は前記第1領域と異なる色濃度であり、情報取得装置は、第1領域と第2領域の色情報を取得し、情報処理装置は、第1領域の色情報を基準として、第2領域の色情報を判定することが特徴である。これにより、センサ領域101に使われた環境検知インクとは別の、環境変化においてほとんど変化しない色標本を参照領域に用いることがない印字物の色濃度を精度よく簡単に読み取ることができる。
【0079】
情報取得装置は、第1領域の少なくとも一部と第2領域の少なくとも一部を含む画像を取得する撮像装置であってもよい。
【0080】
情報取得装置は、第1領域と第2領域の少なくとも一部の光の反射、屈折、干渉現象の情報を記録する光学装置であってもよい。
【0081】
情報取得装置と情報処理装置が、図7に示すように、一体型の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 丸型印字物
20 二重丸型印字物
30 ドット型印字物
40 バーコード型印字物
50 QRコード型印字物
70 読取端末(読取システム)
72 表示部
73 読取部(情報取得装置)
74 記憶部
75 処理部(情報処理装置)
76 通信部
77 スイッチ
78 筺体
79 持ち手部
100 参照領域(第1領域)
101 センサ領域(第2領域)
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7