(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175893
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】テールゲート閉鎖構造
(51)【国際特許分類】
E05F 15/627 20150101AFI20221117BHJP
E05F 11/04 20060101ALI20221117BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E05F15/627
E05F11/04
B60J5/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082663
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 遼
(72)【発明者】
【氏名】中川 茂
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
【テーマコード(参考)】
2E050
2E052
【Fターム(参考)】
2E050NA06
2E050QA04
2E050QB02
2E050QC02
2E050QD01
2E050QE02
2E052AA09
2E052DA01
2E052DA03
2E052DB01
2E052DB03
2E052EA01
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA15
(57)【要約】
【課題】電子部品を追加することなく、簡易に下側テールゲートを閉鎖できるテールゲート閉鎖構造を提供する。
【解決手段】下側テールゲート12を閉鎖するテールゲート閉鎖構造は、前記下側テールゲート12に接続され、巻き取られることで前記下側テールゲート12を閉鎖する出力ワイヤ22と、規定の閉方向Acに回転することで前記出力ワイヤ22を巻き取る出力プーリ50と、前記出力プーリ50に軸方向に隣接配置され、前記閉方向Acに回転することで、前記出力プーリ50を前記閉方向に回転させる入力プーリ40と、ユーザからの閉鎖動作を受け付ける操作ハンドル18と、前記操作ハンドル18に接続されるとともに、前記入力プーリ40に巻き付く入力ワイヤ20であって、前記閉鎖動作を、前記閉方向Acの回転として前記入力プーリ40に伝達する入力ワイヤ20と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両背面に形成されたゲート開口の下縁近傍において車幅方向に延びる軸周りに揺動する下側テールゲートを閉鎖するテールゲート閉鎖構造であって、
前記下側テールゲートに接続され、巻き取られることで前記下側テールゲートを閉鎖する出力ワイヤと、
前記出力ワイヤが接続され、規定の閉方向に回転することで前記出力ワイヤを巻き取る出力プーリと、
前記出力プーリに軸方向に隣接配置され、前記閉方向に回転することで、前記出力プーリを前記閉方向に回転させる入力プーリと、
ユーザからの閉鎖動作を受け付ける操作ハンドルと、
前記操作ハンドルに接続されるとともに、前記入力プーリに巻き付く入力ワイヤであって、前記閉鎖動作を、前記閉方向の回転として前記入力プーリに伝達する入力ワイヤと、
を備えることを特徴とするテールゲート閉鎖構造。
【請求項2】
請求項1に記載のテールゲート閉鎖構造であって、
前記出力プーリは、下側テールゲートを閉鎖の開始直後における、前記出力ワイヤの単位回転角度当たりの巻き取り量である単位巻取量が、前記閉鎖の終期における前記単位巻取量より小さくなる形状である、
および/または、
前記入力プーリは、前記閉鎖の開始直後における、前記入力ワイヤの前記単位巻取量が、前記閉鎖の終期における前記単位巻取量より大きくなる形状である、
ことを特徴とするテールゲート閉鎖構造。
【請求項3】
請求項2に記載のテールゲート閉鎖構造であって、
前記出力プーリは、回転中心から周縁までの距離である回転半径が最小となる始点から前記閉方向と逆方向である開方向に所定角度進んだ任意の途中点までの間、前記始点から前記開方向に進むにつれて、前記回転半径が連続的に大きくなる形状であり、
前記出力ワイヤが前記始点から延びる初期状態から、前記閉方向に前記所定角度だけ回転するまでの間、前記出力ワイヤの前記単位巻取量が連続的に増加する、
ことを特徴とするテールゲート閉鎖構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のテールゲート閉鎖構造であって、
前記出力プーリおよび前記入力プーリは、略車幅方向に延びる片持ち支持の支持軸に回転可能に取り付けられている、ことを特徴とするテールゲート閉鎖構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、下側テールゲートを閉鎖するテールゲート閉鎖構造を開示する。
【背景技術】
【0002】
テールゲートは、後部荷室にアクセスするために、車両の後端面に設けられる扉である。こうしたテールゲートの中には、上下両開きタイプのものがある。かかるテールゲートの場合、ゲート開口の上縁近傍において車幅方向に延びる軸周りに揺動する上側テールゲートと、ゲート開口の下縁近傍において車幅方向に延びる軸周りに揺動する下側テールゲートと、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、多くの場合、下側テールゲートは、完全開状態において、ユーザの腰高さより低い位置にある。そのため、完全開状態の下側テールゲートを閉じる場合、ユーザは、下側テールゲートを掴むために、体を屈める必要がある。しかし、こうした体を屈める動作は、ユーザにとって手間であった。また、下側テールゲートは、上側テールゲートに比べて汚れやすい。かかる下側テールゲートを手で掴んだ場合、ユーザの手が汚れるという問題もあった。
【0005】
特許文献1には、上側テールゲートおよび下側テールゲートを、モータを用いて自動で開閉する技術が開示されている。かかる技術によれば、ユーザは、下側テールゲートの閉鎖に際して、当該下側テールゲートを手で掴む必要がない。その結果、ユーザが体を屈めたり、手を汚したりする必要がないため、簡易に、下側テールゲートを閉鎖できる。しかし、特許文献1の場合、下側テールゲートを動かすためのモータ、すなわち、電子部品を追加する必要があり、コストや設置スペースの増加を招く。
【0006】
そこで、本明細書では、電子部品を追加することなく、簡易に下側テールゲートを閉鎖できるテールゲート閉鎖構造を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示するテールゲート閉鎖構造は、車両背面に形成されたゲート開口の下縁近傍において車幅方向に延びる軸周りに揺動する下側テールゲートを閉鎖するテールゲート閉鎖構造であって、前記下側テールゲートに接続され、巻き取られることで前記下側テールゲートを閉鎖する出力ワイヤと、前記出力ワイヤが接続され、規定の閉方向に回転することで前記出力ワイヤを巻き取る出力プーリと、前記出力プーリに軸方向に隣接配置され、前記閉方向に回転することで、前記出力プーリを前記閉方向に回転させる入力プーリと、ユーザからの閉鎖動作を受け付ける操作ハンドルと、前記操作ハンドルに接続されるとともに、前記入力プーリに巻き付く入力ワイヤであって、前記閉鎖動作を、前記閉方向の回転として前記入力プーリに伝達する入力ワイヤと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記出力プーリは、下側テールゲートを閉鎖の開始直後における、前記出力ワイヤの単位回転角度当たりの巻き取り量である単位巻取量が、前記閉鎖の終期における前記単位巻取量より小さくなる形状である、および/または、前記入力プーリは、前記閉鎖の開始直後における、前記入力ワイヤの前記単位巻取量が、前記閉鎖の終期における前記単位巻取量より大きくなる形状であってもよい。
【0009】
また、前記出力プーリは、回転中心から周縁までの距離である回転半径が最小となる始点から前記閉方向と逆方向である開方向に所定角度進んだ任意の途中点までの間、前記始点から前記開方向に進むにつれて、前記回転半径が連続的に大きくなる形状であり、前記出力ワイヤが前記始点から前記始点の接線方向に延びる初期状態から、前記閉方向に前記所定角度だけ回転するまでの間、前記出力プーリの単位回転角度当たりの前記出力ワイヤの巻き取り量が連続的に増加してもよい。
【0010】
また、前記出力プーリおよび前記入力プーリは、略車幅方向に延びる片持ち支持の支持軸に回転可能に取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示するテールゲート閉鎖構造によれば、電子部品を追加しなくても、簡易に下側テールゲートを閉鎖できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】入力プーリおよび出力プーリの軸方向視図である。
【
図6】(a)は、下側テールゲートが完全閉鎖され、操作ハンドルが初期位置にある場合の入力プーリおよび出力プーリの図であり、(b)は、下側テールゲートが完全開放され、操作ハンドルが初期位置にある場合の入力プーリおよび出力プーリを示す図である。
【
図7】(a)は、下側テールゲートの閉鎖途中における入力プーリおよび出力プーリを示す図であり、(b)は、下側テールゲートが完全閉鎖され、操作ハンドルが終期位置まで引き出された際の、入力プーリおよび出力プーリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照してテールゲートの閉鎖構造について説明する。
図1は、車両を後方からみた斜視図である。なお、以下の図面において、「Fr」、「Up」,「Rh」は、それぞれ、車両の前方、上方、右側方を意味する。
【0014】
図1に示すように、車両の後部には、荷室があり、車両の背面には、当該荷室に連通するゲート開口10が形成されている。かかる車両は、例えば、車椅子使用者を荷室に載せることができる福祉車両でもよい。
【0015】
ゲート開口10は、上下両開きタイプのテールゲートにより開閉自在に覆われている。テールゲートは、上側テールゲート14および下側テールゲート12を有する。
図1では、開状態の上側テールゲート14と、閉状態の下側テールゲート12と、を図示している。また、
図1において二点鎖線は、開状態の下側テールゲート12を示している。上側テールゲート14は、ゲート開口10の上縁近傍において車幅方向に延びる軸周りに揺動可能な扉で、ゲート開口10の大部分を覆う。
【0016】
下側テールゲート12は、ゲート開口10の下縁近傍において車幅方向に延びる軸周りに揺動可能な扉で、ゲート開口10の下部を覆う。下側テールゲート12は、開状態では、車両後方に突出し、その根元は、荷室の床面に連なっている。荷室に車椅子使用者を乗車させる場合には、上側テールゲート14および下側テールゲート12を完全開口する。この時点で、下側テールゲート12は、荷室のフロアとほぼ同じ高さから延びている。この状態になれば、車椅子を、下側テールゲート12に載せたうえで、車椅子を荷室側へと進める。
【0017】
上側テールゲート14および下側テールゲート12は、いずれも、図示しないラッチ機構により閉状態に維持されている。上側テールゲート14および下側テールゲート12それぞれに設けられた開レバー(図示せず)を操作すると、ラッチ機構が解除されて、上側テールゲート14および下側テールゲート12が開放される。なお、このラッチ機構および開レバーの構成は、従来の技術を利用できるため、ここでの詳説は、省略する。
【0018】
上側テールゲート14を閉鎖する際、ユーザは、上側テールゲート14を手で掴み、閉鎖方向に押す。上側テールゲート14が完全閉鎖されると、ラッチ機構の作用により、閉状態で維持される。一方、下側テールゲート12を閉鎖する際、ユーザは、下側テールゲート12を掴まずに、荷室内に設けられた操作ハンドル18を操作する。具体的には、下側テールゲート12は、ユーザが操作ハンドル18を、所定の引き出し方向Baに引っ張ることで閉鎖される。操作ハンドル18を引っ張ることで、後に詳説するように、プーリボックス16に収容された入力プーリ40および出力プーリ50(
図1では見えず、
図2、
図3参照)が駆動され、下側テールゲート12が閉鎖される。
【0019】
つまり、本例では、下側テールゲート12については、当該下側テールゲート12を手で掴まずに閉鎖できる。かかる構成とするのは、次の理由による。通常、下側テールゲート12は、起立姿勢のユーザの腰よりも十分に低い位置にある。特に、開状態の下側テールゲート12に車椅子を載せることを想定した福祉車両では、車椅子を載せやすくするため、開状態の下側テールゲート12の高さを、路面から10~20cm程度と非常に低くしている場合もある。かかる下側テールゲート12を閉鎖するために、当該下側テールゲート12を手で掴もうとした場合、ユーザは、大きく屈む必要がある。しかし、こうした屈み動作は、ユーザにとって負担であった。また、上述した通り、下側テールゲート12は、路面に近い高さであるため、路面の泥土が付着しやすい。また、下側テールゲート12は、車椅子等が載置される場合も多いため、車椅子の車輪に付着した泥土で汚れやすい。かかる下側テールゲート12を手で掴んだ場合、ユーザの手が汚れるという問題もあった。
【0020】
そこで、下側テールゲート12を、手動ではなく、モータ等を利用して、電動で閉鎖することも考えられる。かかる構成とすれば、ユーザの屈みや手の汚れを確実に防止できる。しかし、モータ等の電子部品を設けた場合、その分、コストの増加や設置スペースの増加という新たな問題を招く。そこで、本例では、操作ハンドル18と、操作ハンドル18の動きを下側テールゲート12に閉鎖動作として伝達する伝達機構と、を設け、ユーザが、下側テールゲート12を掴むことなく、下側テールゲート12を閉鎖できるようにしている。かかる構成とすることで、ユーザは、下側テールゲート12の閉鎖時に屈む必要がなく、また、手の汚れを効果的に防止できる。
【0021】
次に、下側テールゲート12に伝達する伝達機構について
図2~
図5を参照して説明する。
図2は、プーリボックス16の断面図である。また、
図3は、入力プーリ40および出力プーリ50の軸方向視図である。さらに、
図4は、入力プーリ40の、
図5は、出力プーリ50の軸方向視図である。なお、以下の説明では、ユーザが操作ハンドル18を操作していないときの操作ハンドル18の位置を「初期位置」と呼び、ユーザが下側テールゲート12を閉鎖するために、操作ハンドル18を最大限引き出した際の操作ハンドル18の位置を「終期位置」と呼ぶ。また、プーリ40,50に巻き取られたワイヤ20,22は、本来、プーリ40,50の周縁より内側に位置しているが、
図4以降では、理解を容易にするため、巻き取られたワイヤ20,22をプーリ40,50の周縁より外側に図示している。
【0022】
図1に示すように、荷室の隅部には、プーリボックス16が設けられている。プーリボックス16は、入力プーリ40および出力プーリ50を収容する箱である。このプーリボックス16は、
図2に示すように、フロアパネル24から上方に立脚するボックス本体26と、当該ボックス本体26と対向配置されるカバー30と、を有している。ボックス本体26およびカバー30は、その周縁において互いに連結されることで、両者の間に収容空間を形成する。収容空間には、入力プーリ40および出力プーリ50が配置される。
【0023】
ボックス本体26には、支持軸28が固着されている。支持軸28は、車幅方向に延びる軸部材である。この支持軸28は、
図2から明らかなとおり、その一端のみがボックス本体26に固着され、他方が自由端となる片持ち状の軸である。支持軸28は、片持ちであっても撓みが生じない程度の強度で設計される。
【0024】
支持軸28は、入力プーリ40および出力プーリ50を支持する。入力プーリ40および出力プーリ50は、いずれも、支持軸28に対して自由に回転可能である。そのため、入力プーリ40および出力プーリ50は、互いに独立して回転できる。ただし、所定の条件下では、入力プーリ40の回転に連動して出力プーリ50も回転するが、これについては、後述する。
【0025】
入力プーリ40は、操作ハンドル18の動きに連動して回転するプーリである。この入力プーリ40は、入力ワイヤ20を介して、操作ハンドル18に、機械的に接続されている。
図2に示すように、入力プーリ40は、薄肉の円盤状ベース48と、当該円盤状ベース48から軸方向に立脚する複数のリブ49と、を有している。かかる構成とすることで、入力プーリ40の軽量化を実現しつつ、入力プーリ40の強度を高く保てる。ただし、入力プーリ40は、軽量化と強度とを両立できるのであれば、リブ49等を有さない平円盤状でもよい。また、こうしたリブ49は、動力伝達において重要でないため、
図3以降の図面においては、リブ49の図示は省略している。
【0026】
入力プーリ40の周面には、入力ワイヤ20を巻き取るためのプーリ溝42が形成されている。入力ワイヤ20の一端は、入力プーリ40に固着され、入力ワイヤ20の他端は、操作ハンドル18に固着されている。そして、入力プーリ40が、
図3の紙面反時計回り方向である開方向Aoに回転すると、入力ワイヤ20が入力プーリ40に巻き取られる。その一方で、操作ハンドル18が引き出し方向Baに引っ張られ、入力ワイヤ20が引き出されると、入力プーリ40は、開方向Aoの逆方向である閉方向Acに回転する。また、入力プーリ40は、図示しないバネにより、開方向Aoに付勢されている。そのため、ユーザが操作ハンドル18から手を離した場合、入力プーリ40は、自動的に開方向Aoに回転し、入力ワイヤ20が巻き取られる。
【0027】
入力プーリ40のうち、出力プーリ50との対向面には、入力プーリ40と同心の円弧状のカム溝44が形成されている。このカム溝44は、
図4に示す通り、300°前後の角度範囲に亘っており、軸方向視で略C字状である。このカム溝44のうち、閉方向Ac上流側の端部、すなわち、
図4において太線で図示した箇所は、後述するラチェットピン54に当接する当接壁46として機能する。
【0028】
出力プーリ50は、下側テールゲート12の動きに連動して回転するプーリである。この出力プーリ50は、出力ワイヤ22を介して、下側テールゲート12に、機械的に接続されている。
図2に示すように、出力ワイヤ22も、薄肉の円盤状ベース58と、当該円盤状ベース58から軸方向に立脚する複数のリブ59と、を有している。ただし、出力プーリ50に関しても、軽量化と強度とを両立できるのであれば、リブ59等を有さない平円盤状でもよい。また、
図3以降の図面では、リブ59の図示を省略している。
【0029】
出力プーリ50の周面には、出力ワイヤ22を巻き取るためのプーリ溝52が形成されている。出力ワイヤ22の一端は、出力プーリ50に固着され、出力ワイヤ22の他端は、下側テールゲート12に固着されている。そして、出力プーリ50が閉方向Acに回転すると、出力ワイヤ22が巻き取られ、下側テールゲート12が閉鎖される。一方、下側テールゲート12が開放方向に動くと、出力ワイヤ22が、出力プーリ50から引き出されるとともに、出力プーリ50が開方向Aoに回転する。
【0030】
また、
図3、
図5から明らかなとおり、本例の出力プーリ50は、回転中心から周縁までの距離である回転半径が連続的に変化するアンモナイト形状である。すなわち、出力プーリ50の周縁のうち、回転半径が最小となる点を始点Piとした場合、当該始点Piから開方向Aoに約150°進んだ任意の途中点Pmまでの間、出力プーリ50の回転半径は、開方向Aoに進むにつれて連続的に大きくなっている。途中点Pmより、開方向Ao下流側の範囲では、出力プーリ50の回転半径は一定である。このように出力プーリ50をアンモナイト形とするのは、下側テールゲート12の閉鎖の開始直後の出力トルクを大きくするためであるが、これについては、後述する。
【0031】
出力プーリ50のうち入力プーリ40との対向面からは、ラチェットピン54が突出している。ラチェットピン54は、軸方向に延びるピンである。このラチェットピン54は、軸方向視で、カム溝44と重複する位置に設けられており、ラチェットピン54の末端は、カム溝44内に進入している。このラチェットピン54が、カム溝44の範囲内を移動している場合、入力プーリ40および出力プーリ50は、互いに独立して回転可能であり、一方の回転力が他方に伝達されることはない。一方で、ラチェットピン54が、カム溝44の周方向端部に当接した状態で、その当接状態を維持する方向に入力プーリ40および出力プーリ50の一方が回転すると、当該一方の回転が、他方に伝達される。
【0032】
次に、下側テールゲート12を閉鎖する際の入力プーリ40および出力プーリ50の動きについて
図6、
図7を参照して説明する。
図6、
図7は、入力プーリ40および出力プーリ50の動きを示す図である。
図6、
図7において、入力プーリ40は、実線で、出力プーリ50は、破線で、それぞれ図示している。また、実線矢印は、入力プーリ40の回転方向を、破線矢印は、出力プーリ50の回転方向を示している。また、
図6、
図7では、入力ワイヤ20の図示は省略している。
【0033】
図6(a)は、下側テールゲート12が完全閉鎖され、操作ハンドル18が初期位置にある場合の入力プーリ40および出力プーリ50を示している。この場合、ラチェットピン54は、カム溝44の閉方向Ac上流側端部の近傍に位置している。また、出力ワイヤ22は、出力プーリ50の全周囲に巻き取られている。
【0034】
この状態で、下側テールゲート12が開放されると、出力ワイヤ22が引き出され、出力プーリ50が、開方向Ao(すなわち、
図6(a)の破線矢印方向)に回転する。このとき、ラチェットピン54は、カム溝44の範囲内を進むため、出力プーリ50の回転は、入力プーリ40には伝達されない。
【0035】
図6(b)は、下側テールゲート12が完全開放され、操作ハンドルが初期位置にある場合の入力プーリ40および出力プーリ50を示している。このとき、ラチェットピン54は、カム溝44の閉方向Ac上流側の端部、すなわち、当接壁46の近傍に位置している。また、出力ワイヤ22は、完全に巻き戻されており、始点Pi近傍から、その接線方向に延びている。
【0036】
この状態で、ユーザが、下側テールゲート12を閉鎖するために、操作ハンドル18を引き出し方向Baに引っ張ると、入力プーリ40は、閉方向Ac、すなわち、
図6(b)の実線矢印方向に回転する。そして、入力プーリ40が閉方向Acに回転、ひいては、当接壁46が、閉方向Acに移動すると、当該当接壁46とラチェットピン54が当接し、ラチェットピン54が、当接壁46により閉方向Acに押される。その結果、入力プーリ40も、閉方向Ac、すなわち、
図6(b)の破線矢印方向に回転する。つまり、操作ハンドル18を引き出し方向Baに引っ張ることで、入力プーリ40および出力プーリ50の双方が、閉方向Acに回転する。
【0037】
出力プーリ50が閉方向Acに回転することで、出力ワイヤ22が巻き取られていき、下側テールゲート12が閉鎖方向に動く。
図7(a)は、下側テールゲート12の閉鎖途中における入力プーリ40および出力プーリ50を示している。
【0038】
ここで、下側テールゲート12の閉鎖を開始するためには、比較的、大きめの力が必要となる。出力プーリ50から大きな力を出力するためには、出力プーリ50の半径を小さくし、単位回転角度当たりの出力ワイヤ22の巻き取り量(以下「単位巻き取り量」と呼ぶ)を小さくすればよい。しかし、出力プーリ50を小径とし、単位巻き取り量を小さくした場合、下側テールゲート12を完全閉鎖するまでに必要な出力プーリ50および入力プーリ40の回転量が大きくなる。入力プーリ40の回転量が大きい場合、操作ハンドル18の引き出し量、ひいては、ユーザの操作量が大きくなり、操作性が悪化する。
【0039】
そこで、本例では、下側テールゲート12の閉鎖開始直後に大きな力を出力しつつ、下側テールゲート12を完全閉鎖するまでに必要なユーザの操作量を小さく抑えるために、出力プーリ50を、始点Piから任意の途中点Pmまでの間、回転半径が連続的に増加するアンモナイト形としている。ここで、単位巻き取り量は、出力プーリ50の回転半径に比例する。この回転半径を連続的に変化させることで、単位巻き取り量も連続的に変化する。
【0040】
本例では、下側テールゲート12が完全開放された際、すなわち、
図6(b)の状態において、出力ワイヤ22は、出力プーリ50の始点Piから引き出されている。そのため、操作ハンドル18を初期位置から引っ張り始めた直後、すなわち、下側テールゲート12の閉鎖を開始した直後においては、単位巻き取り量が小さくなる。その結果、比較的、大きな力で下側テールゲート12の閉鎖を開始できる。一方で、単位巻き取り量は、出力プーリ50の回転に伴い、徐々に増加する。その結果、操作ハンドル18の操作量が同じであっても、下側テールゲート12の閉鎖方向への移動量が大きくなる。結果として、操作ハンドル18の操作量を小さく抑えつつ、下側テールゲート12を閉鎖させることができる。
【0041】
つまり、本例によれば、出力プーリ50をアンモナイト形とすることで、下側テールゲート12を完全閉鎖するまでに必要なユーザの操作量を小さく抑えつつ、下側テールゲート12の閉鎖の開始直後には大きな力を出力できる。結果として、下側テールゲート12を閉鎖する際のユーザの操作性を良好に保ちつつ、下側テールゲート12を適切に閉鎖できる。
【0042】
図7(b)は、下側テールゲート12が完全閉鎖され、操作ハンドル18が終期位置まで引き出された際の、入力プーリ40および出力プーリ50を示している。この場合、出力ワイヤ22は、
図7(b)に示すように、出力プーリ50の全周に巻き取られている。この状態で、ユーザが操作ハンドル18を手から離すと、入力プーリ40は、バネの付勢力により開方向Aoに回転する。この回転に伴い、入力ワイヤ20が入力プーリ40に巻き取られる。一方で、入力プーリ40が開方向Aoに回転した場合、当接壁46は、ラチェットピン54に干渉しない方向に移動するため、この入力プーリ40の回転は、出力プーリ50には伝達されない。そして、最終的に、操作ハンドル18が、初期位置に戻れば、
図6(a)の状態になる。
【0043】
以上の説明から明らかなとおり、本例では、ユーザの閉鎖操作(すなわち、操作ハンドル18の引き出し方向Baへの引っ張り操作)を、下側テールゲート12に伝達する入力ワイヤ20、入力プーリ40、出力ワイヤ22、および、出力プーリ50を設けているため、ユーザが、下側テールゲート12の閉鎖のために下側テールゲート12を手で掴む必要がない。その結果、下側テールゲート12を閉鎖する際のユーザの操作性を大幅に向上できる。
【0044】
また、本例では、入力プーリ40および出力プーリ50を、軸方向に並べて配置し、片持ち状の支持軸28で支持している。その結果、操作ハンドル18の動きを下側テールゲート12に伝達する伝達機構(すなわち、入力プーリ40および出力プーリ50等)の設置スペースを小さく抑えることができる。さらに、出力プーリ50をアンモナイト形とすることで、結果として、操作ハンドル18の操作量を小さく抑えつつ、下側テールゲート12の閉鎖開始直後には、大きな力を出力できる。
【0045】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、下側テールゲート12の閉鎖構造は、操作ハンドル18、入力ワイヤ20、入力プーリ40、出力ワイヤ22、および、出力プーリ50を有するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、本例では、出力プーリ50をアンモナイト形としているが、下側テールゲート12を、適切な操作量で適切に閉鎖できるのであれば、出力プーリ50は、他の形状でもよい。例えば、出力プーリ50は、楕円形、ハート形等でもよい。また、出力プーリ50は、円形であるものの、当該円形の中心からずれた位置に支持軸28が取り付けられる偏心円形でもよい。さらに、下側テールゲート12を閉鎖できる力が得られるのであれば、出力プーリ50は、単位巻き取り量が常に一定の円形でもよい。
【0046】
また、出力プーリ50に替えて、または、加えて、入力プーリ40を、非円形にし、出力トルクを変動させてもよい。この場合、下側テールゲート12の閉鎖の開始直後における、入力プーリ40の回転半径が、閉鎖終期における回転半径よりも大きくなるような形状としてもよい。入力プーリ40の回転半径が大きい場合、操作ハンドル18を引っ張る力が、減速されて出力プーリ50に伝達される。その結果、操作ハンドル18を引っ張る力が小さくても、下側テールゲート12を閉鎖するための大きな力が出力できる。
【0047】
また、上述の説明では、入力プーリ40にカム溝44を、出力プーリ50にラチェットピン54を設けているが、これは、逆でもよい。すなわち、入力プーリ40にラチェットピン54を設け、出力プーリ50にカム溝44を設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 ゲート開口、12 下側テールゲート、14 上側テールゲート、16 プーリボックス、18 操作ハンドル、20 入力ワイヤ、22 出力ワイヤ、24 フロアパネル、26 ボックス本体、28 支持軸、30 カバー、40 入力プーリ、42 プーリ溝、44 カム溝、46 当接壁、48,58 円盤状ベース、49,59 リブ、50 出力プーリ、52 プーリ溝、54 ラチェットピン、Ac 閉方向、Ao 開方向、Ba 引き出し方向、Pi 始点、Pm 途中点。