(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175904
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20221117BHJP
【FI】
F24H4/02 Q
F24H4/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082681
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】窪田 広記
(72)【発明者】
【氏名】阿部 基
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA65
3L122AB22
3L122BA32
3L122BB13
3L122BB14
3L122DA22
3L122GA06
(57)【要約】
【課題】圧縮機14の保護を目的として予め決められた運転可能圧力範囲内で圧縮機14を駆動させることを目的とする。
【解決手段】制御手段には、圧縮機14の回転数を下げても圧縮機14の保護のために圧縮機14の回転数と吐出圧力によって予め定められた圧縮機14の運転可能圧力範囲内になるかどうかを判定する判定手段26を設け、制御手段は、沸き上げ運転中に、入水温度検出手段が沸き上げ終了直前温度を検出すると、判定手段26で圧縮機14の回転数を下げても運転可能圧力範囲内であるか否かを判定し、運転可能圧力範囲内であると判定した場合は、圧縮機14の回転数を下げて、沸き上げ運転を継続し、運転可能圧力範囲内にならないと判定した場合は、圧縮機14の回転数を変えず、沸き上げ運転を継続するようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、
圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧器、蒸発器を備えたヒートポンプ式加熱手段と、
該ヒートポンプ式加熱手段の前記水冷媒熱交換器の水側と前記貯湯タンクとを環状に接続する加熱循環回路と、
外気温度を検出する外気温度検出手段と、
前記貯湯タンクから前記水冷媒熱交換器に送水される入水温度を検出する入水温度検出手段と、
前記水冷媒熱交換器から前記貯湯タンクに送水される沸き上げ温度を検出する沸き上げ温度検出手段
前記外気温度検出手段で検出した前記外気温度に基づいて前記圧縮機の回転数を制御し、前記貯湯タンク内の湯水を目標沸き上げ温度に加熱する沸き上げ運転を制御すると共に、前記沸き上げ運転中に、前記入水温度検出手段が所定の沸き上げ終了直前温度を検出すると、前記圧縮機の回転数を下げる沸き終い制御をする制御手段とを備えたヒートポンプ式給湯装置において、
前記制御手段には、前記圧縮機の回転数を下げても前記圧縮機の保護のために前記圧縮機の回転数と吐出圧力によって予め定められた前記圧縮機の運転可能圧力範囲内になるかどうかを判定する判定手段を設け、
前記制御手段は、前記沸き上げ運転中に、前記入水温度検出手段が前記所定の沸き上げ終了直前温度を検出すると、
前記判定手段で前記圧縮機の回転数を下げても前記運転可能圧力範囲内であるか否かを判定し、
前記運転可能圧力範囲内であると判定した場合は、前記圧縮機の回転数を下げて、前記沸き上げ運転を継続し、
前記運転可能圧力範囲内にならないと判定した場合は、前記圧縮機の回転数を変えず、前記沸き上げ運転を継続するようにしたことを特徴とするヒートポンプ式給湯装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記外気温度が所定外気温度以上であるかの第一要件を満たし、かつ、前記目標沸き上げ温度が所定沸き上げ温度以上であるかの第二要件を満たす場合は、前記運転可能圧力範囲内にならないと判定するようにしたことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯湯式のヒートポンプ式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のヒートポンプ式給湯装置においては、下部に給水管が接続され、上部に出湯管が接続された貯湯タンクと、圧縮機、凝縮器としての水冷媒熱交換器、減圧器としての電子膨張弁、蒸発器としての空気熱交換器を冷媒配管で環状に接続したヒートポンプサイクルを有したヒートポンプ式加熱手段と、貯湯タンク下部から取り出した湯水を水冷媒熱交換器の水側に流通させ貯湯タンク上部に戻す循環ポンプを有した加熱循環回路とを備え、貯湯タンク内の湯水をヒートポンプ式加熱手段に循環させ沸き上げるようにしたものであった。
【0003】
このヒートポンプ式加熱手段は、沸き上げ運転終了の直前に圧縮機の回転数を下げる沸き終い制御をすることで、圧縮機の吐出圧力の上昇を抑えることができると共に、比較的高い給水温度の水でも沸き上げることが可能な沸き終い制御を行うヒートポンプ給湯機があった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のヒートポンプ給湯装置において、夏場のように外気温度が高い場合では圧縮機の回転数が低く、また、目標沸き上げ温度が高い場合では吐出圧力も高くなるが、この状態で入水温度が高くなり、沸き終い制御により圧縮機の回転数を下げると、予め決められた圧縮機の運転可能圧力範囲を外れてしまうため、圧縮機に負荷がかかり、圧縮機の寿命を縮めてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は上記課題を解決するために、湯水を貯湯する貯湯タンクと、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧器、蒸発器を備えたヒートポンプ式加熱手段と、該ヒートポンプ式加熱手段の前記水冷媒熱交換器の水側と前記貯湯タンクとを環状に接続する加熱循環回路と、外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記貯湯タンクから前記水冷媒熱交換器に送水される入水温度を検出する入水温度検出手段と、前記水冷媒熱交換器から前記貯湯タンクに送水される沸き上げ温度を検出する沸き上げ温度検出手段前記外気温度検出手段で検出した前記外気温度に基づいて前記圧縮機の回転数を制御し、前記貯湯タンク内の湯水を目標沸き上げ温度に加熱する沸き上げ運転を制御すると共に、前記沸き上げ運転中に、前記入水温度検出手段が所定の沸き上げ終了直前温度を検出すると、前記圧縮機の回転数を下げる沸き終い制御をする制御手段とを備えたヒートポンプ式給湯装置において、前記制御手段には、前記圧縮機の回転数を下げても前記圧縮機の保護のために前記圧縮機の回転数と吐出圧力によって予め定められた前記圧縮機の運転可能圧力範囲内になるかどうかを判定する判定手段を設け、前記制御手段は、前記沸き上げ運転中に、前記入水温度検出手段が前記所定の沸き上げ終了直前温度を検出すると、前記判定手段で前記圧縮機の回転数を下げても前記運転可能圧力範囲内であるか否かを判定し、前記運転可能圧力範囲内であると判定した場合は、前記圧縮機の回転数を下げて、前記沸き上げ運転を継続し、前記運転可能圧力範囲内にならないと判定した場合は、前記圧縮機の回転数を変えず、前記沸き上げ運転を継続するようにした。
【0007】
また、前記判定手段は、前記外気温度が所定外気温度以上であるかの第一要件を満たし、かつ、前記目標沸き上げ温度が所定沸き上げ温度以上であるかの第二要件を満たす場合は、前記運転可能圧力範囲内にならないと判定するようにした。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、沸き上げ運転終了直前の沸き終い制御において、沸き終い制御により圧縮機の回転数を下げると、運転可能圧力範囲内に収まらないと判定される場合では、沸き終い制御による圧縮機の回転数を下げる制御を行わないため、運転可能圧力範囲内で圧縮機を駆動させることで、圧縮機を安定させて駆動させることができ、圧縮機への負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明のヒートポンプ式給湯装置の一実施形態の概略構成図。
【
図2】同一実施形態の電子膨張弁の開度と制御パラメータとの関係を示した図。
【
図3】同一実施形態の圧縮機の回転数と吐出圧力の関係、及び、圧縮機の運転可能圧力範囲を示す図。
【
図4】同一実施形態の沸き終い制御を説明するフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を有した貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱するヒートポンプ式加熱手段、4は前記貯湯タンク2の下部に接続された加熱往き管5及び前記貯湯タンク2の上部に接続された加熱戻り管6からなり、貯湯タンク2とヒートポンプ式加熱手段3とを湯水が循環するよう環状に接続する加熱循環回路、7は前記貯湯タンク2の下部に接続され貯湯タンク2に水を給水する給水管、8は前記貯湯タンク2の上部に接続され貯湯されている高温水を出湯する出湯管である。
【0011】
9は給水管7から分岐された給水バイパス管、10は出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水を混合して給湯設定温度の湯とする混合弁、11は混合弁10で混合後の給湯温度を検出する給湯温度センサ、12は貯湯タンク2の側面上下にわたり複数設けられ、貯湯タンク2内の湯の温度を検出する貯湯温度センサ、13は前記貯湯タンクユニット1内の各センサの出力を受けて各機器の動作を制御する貯湯制御手段である。
【0012】
前記ヒートポンプ式加熱手段3は、冷媒を圧縮する圧縮機14と、圧縮機14から吐出された冷媒を流通させる冷媒側の流路と加熱往き管5からの湯水を加熱戻り管6に流通させる水側の流路とを有し、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換する水冷媒熱交換器15と、水冷媒熱交換器15通過後の冷媒を減圧させる減圧器としての電子膨張弁16と、電子膨張弁16からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器17とを冷媒配管で環状に接続したヒートポンプサイクル18と、水冷媒熱交換器15の水側の加熱循環回路4途中に設けられて貯湯タンク2の湯水を循環させる加熱循環ポンプ19とを備えており、ヒートポンプサイクル18内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。
【0013】
20は圧縮機14と水冷媒熱交換器15との間に設けられ、圧縮機14から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度センサ、21は水冷媒熱交換器15と電子膨張弁16との間に設けられ、水冷媒熱交換器15の冷媒側から流出し電子膨張弁16に向かう冷媒の温度を検出する流出温度センサ、22は空気熱交換器17の空気入口側に設けられ、外気温度を検出する外気温度検出手段としての外気温度センサ、23は水冷媒熱交換器15の水側に流入する入水温度を検出する入水温度検出手段としての入水温度センサ、24は水冷媒熱交換器15の水側から貯湯タンク2に向かって流出する沸き上げ温度を検出する沸き上げ温度検出手段としての沸き上げ温度センサである。
【0014】
25は前記ヒートポンプ式加熱手段3内の各センサの出力を受けて各機器の動作を制御する制御手段としての加熱制御手段で、貯湯制御手段13と通信可能に接続され、貯湯制御手段13と連携して作動するものである。
【0015】
26は、加熱制御手段25に設けられた判定手段であり、沸き上げ運転の終了直前に圧縮機14の回転数を下げても圧縮機14の保護のために圧縮機14の回転数と吐出圧力によって予め定められた圧縮機14の運転可能圧力範囲内になるかどうかを判定する。
【0016】
判定手段26の具体的な判定方法としては、外気温度センサ22で検出した外気温度が所定外気温度以上であるか否かと、貯湯制御手段13で設定された温度である目標沸き上げ温度が所定沸き上げ温度以上であるか否かを確認し、二つの要件を満たした場合、沸き終い制御により圧縮機14の回転数を下げると、運転可能圧力範囲外になってしまうと判定し、二つの要件を満たさない場合、沸き終い制御で圧縮機14の回転数をさげても運転可能圧力範囲内に収まると判定する。
【0017】
次に、沸き上げ運転の動作について説明する。
深夜時間帯となると、貯湯制御手段13は貯湯タンク2内の湯水が所定の目標沸き上げ温度になるように沸き上げ運転を開始するよう加熱制御手段25へ沸き上げ開始命令を指示する。そして、加熱制御手段25は、沸き上げ運転において、前記目標沸き上げ温度及び外気温度センサ22で検出した外気温度に応じて設定される回転数で動作するように圧縮機14を制御すると共に、吐出温度センサ20の検出する冷媒温度と流出温度センサ21の検出する冷媒温度との温度差ΔHが所定の目標温度差ΔHmとなるように電子膨張弁16の開度を所定の周期でフィードバック制御する。同時に、加熱制御手段25は沸き上げ温度センサ24で検出する水冷媒熱交換器15で加熱された湯が目標沸き上げ温度になるように加熱循環ポンプ19の回転数をフィードバック制御する。
【0018】
なお、前記所定の目標沸き上げ温度は、過去の給湯量の最大値や平均値等の給湯実績から貯湯制御手段13によって算出される。
【0019】
また、加熱制御手段25は、前記所定の目標温度差ΔHmを前記目標沸き上げ温度と、外気温度センサ22の検出する外気温度と、入水温度センサ23の検出する入水温度とに基づいて、次式により算出する。
ΔHm=外気温度×A+入水温度×B+目標沸き上げ温度×C+D
(ここで、A、Bは負の係数、Cは正の係数、Dは固定値である。)
【0020】
前記所定の目標温度差ΔHmは、上式より外気温度が高くなる程、値が小さくなっていき、入水温度が高くなる程、値が小さくなっていき、目標沸き上げ温度が高くなる程、値が大きくなるものであり、外気温度や入水温度といった条件が刻々と変化する沸き上げ運転中において、その時その時でヒートポンプ式加熱手段3の運転効率が最大効率となる所定の目標温度差ΔHmを確実に求めることができ、ヒートポンプ式加熱手段3を高効率で運転させることができるものである。なお、前記所定の目標温度差ΔHmの算出は沸き上げ運転中常時行われるものであってもよく、電子膨張弁16の開度をフィードバック制御する所定の周期にあわせて行ってもよいものである。
【0021】
先に説明したとおり、沸き上げ運転の際、加熱制御手段25は、吐出温度センサ20の検出する冷媒温度と流出温度センサ21の検出する冷媒温度との温度差ΔHが、算出した所定の目標温度差ΔHmとなるように電子膨張弁16の開度を制御しているが、具体的には、ΔH<ΔHmの場合は、電子膨張弁16の開度を閉じる方向に制御し、ΔH>ΔHmの場合は、電子膨張弁16の開度を開く方向に制御するものである。
【0022】
ここで、沸き上げ運転中のある一定条件下での電子膨張弁16の開度に対する制御パラメータの関係について、
図2を用いて説明するが、横軸は電子膨張弁16の開度、縦軸は電子膨張弁16の開度制御によって制御される制御パラメータであり、ここでは圧縮機14から吐出され吐出温度センサ20で検出される冷媒の吐出温度と水冷媒熱交換器15から流出し流出温度センサ21の検出する冷媒の流出温度との温度差とする。
【0023】
図2に示すように、このものでは、電子膨張弁16開度を変化させると、圧縮機14から吐出される冷媒の吐出温度及び水冷媒熱交換器15から流出する冷媒の流出温度の双方が変化するので、
図2中の太実線で示されるように電子膨張弁16の開度変化1パルス当たりの温度変化量が大きく、吐出温度と流出温度との温度差を所定の目標温度差とするまでの制御速度が速く、制御性が良く、ヒートポンプ式加熱手段3をすばやく最大効率で運転させることができるものである。
【0024】
このように、上述のような加熱制御手段25による制御が行われながら、沸き上げ運転が進行していくと、貯湯タンク2の下部の水がヒートポンプ式加熱手段3へ循環され、貯湯タンク2の上部から目標沸き上げ温度に加熱された湯が積層状態に貯湯される。貯湯タンク2内に必要な湯量が沸き上げられたことを貯湯温度センサ12で検出するか、ヒートポンプ式加熱手段3の入水温度センサ23で検出する入水温度が沸き上げし難い所定の高温度以上を検出するか、あるいは電力料金単価の安い深夜時間帯が終了した時点で、貯湯制御手段13は沸き上げ運転を停止するべく加熱制御手段25に停止指示を出し、加熱制御手段25は圧縮機14と加熱循環ポンプ19の運転を停止して、沸き上げ運転を終了する。
【0025】
この沸き上げ運転の終了直前の沸き終い時においては、貯湯タンク2内の湯層と水層との間の混合層の湯水がヒートポンプ式加熱手段3へ流入し、このとき、水冷媒熱交換器15の水側に流入する湯水の入水温度が徐々に上昇していくものである。
【0026】
ここで、沸き終い時における沸き終い制御について説明する。
沸き上げ運転終了に近づき、入水温度センサ23が沸き上げ終了直前温度を検出すると、加熱制御手段25は、圧縮機14の吐出圧力が上昇するので、圧縮機14の回転数を低くして加熱能力を落とすように制御し、吐出圧力を低く押さえ、高温の給水温度まで沸き上げ運転が継続できるようにしている。
【0027】
沸き上げ終了直前温度の一例として、一実施形態では、沸き上げ終了直前温度を沸き上げ温度よりも所定温度(ここでは15℃)低い温度のことを示し、入水温度センサ23で検出した温度が沸き上げ温度センサ24で検出した温度よりも15℃低い温度以上(沸き上げ終了直前温度)を検出したら、沸き終い制御を行う。
【0028】
次に、沸き終い制御と後述する運転可能圧力範囲について
図3のグラフに基づいて説明する。
図3は、横軸に圧縮機14の回転数をとり、縦軸に吐出圧力をとって、外気温度のパラメータ(冬は例えば外気温度5℃、夏は例えば外気温度29℃)にして、ある給水温度の場合の圧縮機14の回転数に対する吐出圧力の関係を示したものである。
また、圧縮機14の保護を目的として予め決められた運転可能圧力範囲が設けられ、運転可能圧力範囲内で圧縮機14を駆動させることで、圧縮機14を安定させて駆動させることができ、圧縮機14への負荷を軽減することができる。
【0029】
まず、夏期間で外気温度が高く(ここでは外気温度29℃)、目標沸き上げ温度が低い(1)の場合、圧縮機14の回転数をAとして沸き上げ運転を行っているとき、この沸き上げ運転の終了直前の沸き終い制御では、圧縮機14の回転数Aを回転数Bに下げる。このとき、圧縮機14の回転数Bは運転可能圧力範囲内で圧縮機14が駆動しているため圧縮機14を安定させて駆動させることができ、圧縮機14への負荷を軽減させられることが示される。
【0030】
次に、冬期間で外気温度が低く(ここでは外気温度5℃)、目標沸き上げ温度が高い(2)の場合、圧縮機14の回転数をAとして沸き上げ運転を行っているとき、この沸き上げ運転の終了直前の沸き終い制御では、圧縮機14の回転数Aを回転数Bに下げる。このとき、圧縮機14の回転数Bは運転可能圧力範囲内で圧縮機14が駆動しているため圧縮機14を安定させて駆動させることができ、圧縮機14への負荷を軽減させられることが示される。
【0031】
次に、夏期間で外気温度が高く(ここでは外気温度29℃)、目標沸き上げ温度が高い(3)の場合、圧縮機14の回転数をAとして沸き上げ運転を行っているとき、この沸き上げ運転の終了直前の沸き終い制御では、圧縮機14の回転数Aを回転数Bに下げてしまうと、圧縮機14の回転数Bは運転可能圧力範囲外となり、圧縮機14の負荷が増大し、劣化や故障の原因になってしまうことが示される。
【0032】
このように、夏期間で外気温度が高いため圧縮機14の回転数が低く、目標沸き上げ温度が高い場合、沸き終い制御により圧縮機14の回転数を下げると、運転可能圧力範囲外となる可能性がある。
【0033】
次に、
図4のフローチャートに基づいて、一実施形態の沸き上げ運転の終了直前の沸き終い制御と判定手段26について詳しく説明する。
深夜時間帯となり、貯湯制御手段13は貯湯タンク2内の湯水が所定の目標沸き上げ温度になるように沸き上げ運転を開始するよう加熱制御手段25へ沸き上げ開始命令を指示し、加熱制御手段25は、回転数Aで圧縮機を回転させ、沸き上げ運転を開始する(S1)。
【0034】
沸き上げ運転を継続させると、貯湯タンク2内の湯層と水層との間の混合層の湯水がヒートポンプ式加熱手段3へ流入することで、水冷媒熱交換器15の水側に流入する湯水の入水温度が徐々に上昇していく、このとき、加熱制御手段25は入水温度センサ23で検出した入水温度を確認し、入水温度が前記沸き上げ終了直前温度(ここでは、沸き上げ温度-15℃)以上であると検出すると(S2がYes)、沸き終い制御待機状態に移行する(S3)。
【0035】
そして、判定手段26は、外気温度センサ22で検出した外気温度が所定外気温度以上(ここでは20℃以上)であるか確認し(S4)、次に、目標沸き上げ温度が所定沸き上げ温度以上(ここでは50℃以上)であるかを確認して(S5)、圧縮機14の回転数を下げても圧縮機14の保護のために圧縮機14の回転数と吐出圧力によって予め定められた圧縮機14の運転可能圧力範囲内になるかどうかを判定する。
【0036】
二つの要件のうち、少なくとも1つの要件を満たさない場合は(S4、S5の少なくとも一方がNo)、沸き終い制御待機状態から沸き終い制御に移行し、圧縮機14の回転数を下げて、圧縮機14の回転数Bで沸き上げ運転を継続する(S6)。
【0037】
その後、貯湯タンク2内に必要な湯量が沸き上げられたことを貯湯温度センサ12で検出するか、ヒートポンプ式加熱手段3の入水温度センサ23で検出する入水温度が沸き上げし難い所定の高温度以上を検出するか、あるいは電力料金単価の安い深夜時間帯が終了したら(S7がYes)、貯湯制御手段13は沸き上げ運転を停止するべく加熱制御手段25に停止指示を出し、加熱制御手段25は圧縮機14と加熱循環ポンプ19の運転を停止して、沸き上げ運転を終了する(S8)。
【0038】
また、S4及びS5で、外気温度センサ22の検出温度が20℃以上(S4がYes)、かつ、目標沸き上げ温度が50℃以上の二つの要件を満たす場合(S5がYes)、沸き終い制御待機状態をキャンセルし、圧縮機14の回転数を下げず、圧縮機14の回転数Aのまま沸き上げ運転を継続する(S9)。
【0039】
そして、貯湯タンク2内に必要な湯量が沸き上げられたことを貯湯温度センサ12で検出するか、ヒートポンプ式加熱手段3の入水温度センサ23で検出する入水温度が沸き上げし難い所定の高温度以上を検出するか、あるいは電力料金単価の安い深夜時間帯が終了したら(S7がYes)、貯湯制御手段13は沸き上げ運転を停止するべく加熱制御手段25に停止指示を出し、加熱制御手段25は圧縮機14と加熱循環ポンプ19の運転を停止して、沸き上げ運転を終了する(S8)。
【0040】
このように、沸き上げ運転終了直前の沸き終い制御において、沸き終い制御により圧縮機14の回転数を下げると、運転可能圧力範囲内に収まらないと判定される場合では、沸き終い制御による圧縮機14の回転数を下げる制御を行わないため、運転可能圧力範囲内で圧縮機14を駆動させることで、圧縮機14を安定させて駆動させることができ、圧縮機14への負荷を軽減することができる。
【0041】
なお、本発明はこれまで説明してきた一実施形態に限定されることなく、その趣旨を変更しない範囲で適用可能なもので、例えば、ヒートポンプサイクル18は減圧器としてエジェクターを用いたエジェクターサイクルでもよいものである。
【0042】
また、
図4で説明した運転可能圧力範囲において、この運転可能圧力範囲は圧縮機14によって異なるため、別の圧縮機14を用いた場合、運転可能圧力範囲も異なっても良い。本発明は、沸き終い制御による圧縮機14の回転数を外気温度及び目標沸き上げ温度に応じて、変えないか下げるかを判定手段26で判定し、適切な沸き上げ運転を行うものである。
【0043】
また、一実施形態では、所定外気温度や所定目標沸き上げ温度、所定温度などの温度を具体的な温度で記載したが、この温度は一例であり適宜変更しても良いものである。
【0044】
また、一実施形態では、沸き上げ終了直前温度に達したことを、入水温度センサ23で検出した温度が沸き上げ温度よりも所定温度(15℃)低い温度以上に達したことで説明したが、これに限られるものではなく、例えば、入水温度センサ23で検出した入水温度が予め定めた所定温度以上に達したことでも良く、入水温度センサ23で検出した温度が目標沸き上げ温度よりも所定温度低い温度以上に達したことでも良く、貯湯タンク2の下部付近に備えた貯湯温度センサ12で検出した温度が所定沸き終い開始温度以上に達したことでも良いものであり、水冷媒熱交換器15の水側に流入する湯水の入水温度が高くなり、沸き上げ運転の終了の直前であることを判断できるなら上記以外の方法でも良いものである。
【符号の説明】
【0045】
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプ式加熱手段
13 貯湯制御手段
14 圧縮機
22 外気温度センサ(外気温度検出手段)
23 入水温度センサ(入水温度検出手段)
24 沸き上げ温度センサ(沸き上げ温度検出手段)
25 加熱制御手段(制御手段)
26 判定手段