(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175927
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】カットスタイル判定システム及びカットスタイル判定方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221117BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20221117BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20221117BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
A01K29/00 B
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082709
(22)【出願日】2021-05-14
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
(71)【出願人】
【識別番号】514235307
【氏名又は名称】アニコム ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】大内 美樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 千尋
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩菜
(72)【発明者】
【氏名】宇野 博未
(72)【発明者】
【氏名】大越 美江
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L096BA08
5L096BA20
5L096GA30
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で、動物のカットスタイルの種類を判定するカットスタイル判定システム等を提供することを目的とする。
【解決手段】動物の画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する判定手段と、を備えるカットスタイル判定システムであって、前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する判定手段と、を備えるカットスタイル判定システムであって、
前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定システム。
【請求項2】
動物の画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する判定手段と、を備えるカットスタイル判定システムであって、
前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類に関するラベルとを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の画像とし、出力をその動物のカットスタイルの種類判定とする学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定システム。
【請求項3】
前記受付手段により受け付けられる動物の画像が、動物の顔を正面から撮影した画像である請求項1又は2記載のカットスタイル判定システム。
【請求項4】
前記受付手段により受け付けられる動物の顔画像が、動物の耳まで含む動物の顔画像である請求項3記載のカットスタイル判定システム。
【請求項5】
前記教師データとして用いられる動物の画像が、トリミングを受けてから所定期間内の動物の画像である請求項2記載のカットスタイル判定システム。
【請求項6】
前記教師データとして用いられる動物の画像が、解像度が統一されたものである請求項2記載のカットスタイル判定システム。
【請求項7】
動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する学習済みモデルの生成方法であって、教師データとして、動物の画像と、その動物のカットスタイルの種類に関するラベルとをコンピュータに入力し、人工知能に学習させることを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
【請求項8】
動物の画像を用意するステップと、
前記画像を学習済みモデルに入力し、コンピュータが前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類判定を出力するステップと、を有するカットスタイル判定方法であって、
前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定方法。
【請求項9】
動物の画像を用意するステップと、
前記画像を学習済みモデルに入力し、コンピュータが前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類判定を出力するステップと、を有するカットスタイル判定方法であって、
前記学習済みモデルが、動物の画像とその動物のカットスタイルの種類に関するラベルとを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の画像とし、出力をその動物のカットスタイルの種類判定とする学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カットスタイル判定システム及びカットスタイル判定方法に関し、詳しくは、動物の画像から、動物のカットスタイルの種類に関する判定結果を提供するカットスタイル判定システム及びカットスタイル判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫、ウサギを始めとするペットは、人間にとってかけがえのない存在であり、様々なペット向けのサービスが普及、発展している。中でも、ペットの被毛をカットやブラッシング等により整えるトリミングサービスについては、ペットにとって定期的に必要なサービスであり、ペットの飼育者の関心が高い。
【0003】
ペットのトリミングは、単純な作業ではなく、高度な技術が求められるものである。そのため、トリマー向けの専門学校などの訓練機関や、ジャパンケネルクラブ認定の「JKC公認トリマー資格」などのトリマー向けの認定資格が存在している。
【0004】
ペットのトリミングには、人の髪型と同様に、幾つかの型、すなわちカットスタイルが存在する。たとえば、ライオンカット、サマーカット、テディベアカットなどである。
【0005】
そして、カットスタイルの種類については、そのカットスタイルを採用してトリミングを行ったトリミングサロンが飼い主に教示していれば、飼い主はそれを把握することができるが、そうではない場合などでは、ペットの飼い主には、自らの飼育するペットのカットスタイルの種類を簡易な方法で知りたいというニーズがあると考えられる。
【0006】
そこで、簡易な方法で、カットスタイルの種類を判定する手段が求められている。
【0007】
特許文献1には、髪色やヘアスタイルなどをシミュレーションするためのヘアシミュレーション装置が開示されているが、ペットのカットスタイルの種類判定については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、簡易な方法で、カットスタイルの種類を判定するカットスタイル判定システムやカットスタイル判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルによって上記課題が解決し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の[1]~[9]である。
[1]動物の画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する判定手段と、を備えるカットスタイル判定システムであって、前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定システム。
[2]動物の画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する判定手段と、を備えるカットスタイル判定システムであって、前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類に関するラベルとを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の画像とし、出力をその動物のカットスタイルの種類判定とする学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定システム。
[3]前記受付手段により受け付けられる動物の画像が、動物の顔を正面から撮影した画像である[1]又は[2]のカットスタイル判定システム。
[4]前記受付手段により受け付けられる動物の顔画像が、動物の耳まで含む動物の顔画像である[3]のカットスタイル判定システム。
[5]前記教師データとして用いられる動物の画像が、トリミングを受けてから所定期間内の動物の画像である[2]記載のカットスタイル判定システム。
[6]前記教師データとして用いられる動物の画像が、解像度が統一されたものである[2]のカットスタイル判定システム。
[7]動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する学習済みモデルの生成方法であって、教師データとして、動物の画像と、その動物のカットスタイルの種類に関するラベルとをコンピュータに入力し、人工知能に学習させることを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
[8]動物の画像を用意するステップと、前記画像を学習済みモデルに入力し、コンピュータが前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類判定を出力するステップと、を有するカットスタイル判定方法であって、前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定方法。
[9]動物の画像を用意するステップと、前記画像を学習済みモデルに入力し、コンピュータが前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類判定を出力するステップと、を有するカットスタイル判定方法であって、前記学習済みモデルが、動物の画像とその動物のカットスタイルの種類に関するラベルとを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の画像とし、出力をその動物のカットスタイルの種類判定とする学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、簡易な方法で、カットスタイルの種類を判定するカットスタイル判定システムやカットスタイル判定方法を提供することが可能となる。また、簡易な方法でカットスタイルの種類を判定できることにより、当該カットスタイルに適した被毛や皮膚のケア用品やケア方法等を提案することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】(A)トイプードルのベアカットの一例の画像、(B)トイプードルのアフロカットの一例の画像、(C)トイプードルのきのこカットの一例の画像、(D)トイプードルの顔バリカットの一例の画像である。
【
図4】(A)ミニチュアシュナウザーのシュナカットの一例の画像、(B)ミニチュアシュナウザーのベアカットの一例の画像、(C)ミニチュアシュナウザーのモヒカンカットの一例の画像である。
【
図5】本発明のカットスタイル判定システムの一実施態様を表す構成概略図である。
【
図6】本発明のカットスタイル判定システムによるカットスタイル判定の流れの一例を表すフローチャート図である。
【
図8】(A)ラインが取れている例の画像、(B)ラインが取れていない例の画像である。
【
図9】(A)カット面が揃っている例の画像、(B)カット面が揃っていない例の画像である。
【
図10】(A)左右のバランスが取れている例の画像、(B)バランスが取れていない例の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<カットスタイル判定システム>
本実施形態のカットスタイル判定システムは、動物の画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する判定手段と、を備えるカットスタイル判定システムであって、前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルであることを特徴とする。
【0015】
[受付手段]
受付手段は、動物の画像の入力を受け付ける手段である。動物としては、犬、猫、ウサギ等の哺乳類が挙げられ、犬及び猫が好ましい。画像の受付方法は、スキャン、画像データの入力、送信、その場で撮影しての画像取り込みなどいずれの方法であってもよい。画像のフォーマットは特に限定されず、静止画であっても動画であってもよい。動物のトリミングは全身を対象とするものであり、画像に写っている動物の部位は特に限定されないが、動物の画像は、動物の顔が写っている画像が好ましく、
図1のように動物の顔を正面から撮影した写真であることがより好ましく、動物の顔が大きく写っている写真がさらに好ましい。また、
図7(B)の丸枠のようにマズル付近のみになるようにトリミングしたり、
図7(C)の四角の枠のように目の付近のみになるようにトリミングした画像よりも、
図7(A)のように、動物の耳まで写っている顔の画像が特に好ましい。そのような写真として、ヒトの運転免許証の写真のような写真が挙げられる。
図2のように、動物の健康保険証に用いられるような画像も好ましい。画像は、白黒、グレースケール、カラーのいずれであってもよい。動物の顔全体が写っていない画像、画像編集ソフトウェアで形状が編集された画像、複数の動物が写っている画像、目や耳が判別出来ないほど顔が小さく写っている画像あるいは不鮮明な画像は好ましくない。画像については、ノーマライゼーションが施されたものや、解像度が統一されたものが好ましい。
【0016】
[判定手段]
判定手段は、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する手段である。本実施形態において、学習済みモデルは、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルである。
【0017】
上記のような学習済みモデルは、例えば、教師あり学習や教師なし学習によって生成することができる。教師あり学習の場合の教師データとしては、例えば、動物の画像とその動物のカットスタイルの種類に関するデータが挙げられる。動物の画像に、その動物のカットスタイルの種類に応じたタグを付けて教師データとしてもよい。
【0018】
カットスタイルの種類とは、例えば、JKCのショークリップやトリミング競技会で決められたカット、具体的には、パピー・クリップ(生後15カ月以下)、パピー・クリップII(セカンド)、コンチネンタル・クリップまたはイングリッシュ・サドル・クリップ、ライオン・クリップ、モダン・クリップ、スカンジナビアン・クリップ、テリア・クリップなどが挙げられる。その他、サマーカット、ライオンカット、テディベアカット、モヒカンカット、アフロカット、ピーナッツカット、シュナウザーカット、アシンメトリーカット、ラムクリップ、足のブーツカット、臀部のパンツカット、全身バリカン、ミッキーカット、飾り毛スタイル、トップノット、フルコート、フレアカット、ツインテール、編み込みスタイル、シュナカット等が挙げられる。
【0019】
教師データとして用いる動物の画像のフォーマットは特に限定されない。動物のトリミングは全身を対象とするものであり、画像に写っている動物の部位は特に限定されないが、動物の画像は、動物の顔が写っている画像が好ましく、動物の顔を正面から撮影した写真であることがより好ましく、
図1のように、動物の顔が大きく写っている写真がさらに好ましい。また、
図7(B)の丸枠のようにマズル付近のみになるようにトリミングしたり、
図7(C)の四角の枠のように目の付近のみになるようにトリミングした画像よりも、
図7(A)のように、動物の耳まで写っている顔の画像が特に好ましい。そのような写真として、ヒトの運転免許証の写真のような写真が挙げられる。
図2のように、動物の健康保険証に用いられるような画像でもよい。画像は、白黒、グレースケール、カラーのいずれであってもよい。動物の顔全体が写っていない画像、画像編集ソフトウェアで形状が編集された画像、複数の動物が写っている画像、目や耳が判別出来ないほど顔が小さく写っている画像あるいは不鮮明な画像は好ましくない。画像については、トリミングを受けてから所定期間内の動物のものや、ノーマライゼーションが施されたものや、解像度が統一されたものが好ましい。教師データで用いた画像と、受付手段により受け付ける画像の解像度が統一されていることがより好ましい。
【0020】
学習済みモデルとしては、人工知能(AI)が好ましい。人工知能(AI)とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムであり、具体的には、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラムなどのことをいう。人工知能としては、汎用型、特化型のいずれであってもよく、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク等のいずれであってもよく、公開されているソフトウェアを使用することができる。
【0021】
学習済みモデルを生成するために、人工知能を学習させる。学習としては、機械学習とディープラーニング(深層学習)のいずれであってもよいが、ディープラーニングが好ましい。ディープラーニングは、機械学習を発展させたものであり、特徴量を自動的に見つけ出す点に特徴がある。
【0022】
学習済みモデルを生成するための学習方法としては、特に制限されず、公開されているソフトウェアを用いることができる。例えば、NVIDIAが公開しているDIGITS (the Deep Learning GPU Training System)を用いることができる。その他、例えば、「サポートベクターマシン入門」(共立出版)等において公開されている公知のサポートベクターマシン法(Support Vector Machine法)等によって学習させてもよい。
【0023】
本発明のカットスタイル判定システムやカットスタイル判定方法は、カットスタイルの種類判定を行う判定手段に加えて、当該カットスタイルにかかるトリミングの良否判定やスコア判定を行うトリミング結果判定手段を備えていてもよい。トリミング結果判定手段は、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のトリミングの良否を判定する判定手段であって、前記学習済みモデルが、トリミングを受けた動物の画像と、該動物のトリミングの良否との関係を学習した学習済みモデルである。具体的には、前記学習済みモデルが、トリミングを受けた動物の画像と、該動物のトリミングの良否に関するラベルとを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の画像とし、出力をその動物のトリミングの良否判定とする学習済みモデルであることが好ましい。トリミング判定は、好ましくは、カットスタイルの判定の後に行われ、出力としては、カットスタイルの判定とともに、そのカットスタイルの良否判定や採点結果を出力する。トリミング結果判定手段は、例えば、後述する実施形態の判定手段(学習済みモデル)11と同様に構成される。
トリミングの良否とは、例えば、トリミングが上手く行っている、上手く行っていないという判定結果であり、具体的な判定基準の例として、左右対称のトリミングとなっているか/いないか、アウトラインが取れているか/取れていないか、部位ごとにメリハリがあるか/ないか、カット面が揃っているか/揃っていないか、といった基準が挙げられる。ここで挙げた例はいずれも前者が良い例であり、後者が悪い例である。その他、立体的なトリミングとなっているか/なっていないか、バランス良く配置されたカットになっているか/いないか、平面部と平面部のつながりが滑らかに揃っているか/いないか、といった基準も挙げられる。また、トリミングの判定基準として、例えば、一般社団法人全日本動物専門教育協会のトリミング競技規定などの判定基準を用いることもできる。
図8に、(A)ラインが取れている例の画像/(B)ラインが取れていない例の画像を例示する。また、
図9に、(A)カット面が揃っている例の画像/(B)カット面が揃っていない例の画像を例示する。また、
図10に、(A)左右のバランスが取れている例の画像/(B)バランスが取れていない例の画像を例示する。
【0024】
動物の画像に対して、個々の判定基準ごとにスコアをつけてもよいし、これらの判定基準を総合してスコアを付けたり、「良」か「不良」の判定をつけてもよい。すなわち、教師データとして用いる各々の画像に対して、上記判定基準に応じたスコアをタグ付けしたり、良否に応じたタグ付けをして、教師データとすることができる。トリミングの良否判断は、例えば、トリミングについての熟練者や、トリミング競技会等での採点法について知見のある者が行うことができる。
【0025】
[出力]
判定手段は、入力情報として、動物の画像を受け付けると、上記学習済みモデルによって、当該動物のカットスタイルの種類についての判定を行う。
出力の形式は特に限定されず、例えば、パソコンの画面上において、「ライオンカット」、「サマーカット」のように、カットスタイルの種類を表示する方法や、「この子のカットスタイルは、ライオンカットである確率が70%、サマーカットである確率が20%」というように、複数のカットスタイルの種類を提示したり、カットスタイルの種類とともに、確率も併せて表示する、といった表示をすることで判定を出力することができる。
本発明のカットスタイル判定システムは、判定手段から判定結果を受信し、判定結果を出力する出力手段を別途有していてもよい。
【0026】
以下、本発明のカットスタイル判定システムの一実施態様を
図5を参照しながら説明する。
【0027】
図5中、端末40は、利用者が利用する端末である。利用者としては、例えば、自分が飼育しているペットのカットスタイルの種類を知りたい飼育者や、顧客のペットのカットスタイルの種類を知り、顧客との話題づくりをしたい業者である。端末40は、例えばパーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などが挙げられる。端末40は、CPUなどの処理部、ハードディスク、ROMあるいはRAMなどの記憶部、液晶パネルなどの表示部、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力部、ネットワークアダプタなどの通信部などを含んで構成される。
【0028】
利用者は、端末40から、サーバにアクセスし、動物の画像(写真)、及び、当該動物の種類、品種、性別、体重などの情報を入力、送信する。カットスタイルの種類の判定にあたっては、トリミングを受けた後、被毛が伸びる前であることが好ましい。例えば、トリミングから1ヶ月以内に撮影された画像が好ましく、2週間以内のものがより好ましく、1週間以内のものがさらに好ましい。また、利用者が、本カットスタイル判定システム利用時に、その場でスマートフォンのカメラを使って対象となる動物の写真や動画を撮影し、それを入力、送信するという態様であってもよい。例えば、利用者は、端末40の画面上に表示される指示に従って対象となる動物の顔写真を撮影し、適切な写真が撮れたらそれをサーバに送信する。このとき、サーバが、別途、画像判定プログラムからなる写真撮影補助手段を備え、写真撮影補助手段が、動物の顔全体が撮像されていること、動物の顔の正面からの写真であるといった、カットスタイル判定に好適な写真であるかどうかを判定し、その判定結果をインターフェースや端末を通じて利用者に伝達するという構成を備えていてもよい。
また、利用者は、端末40がサーバにアクセスすることによって、サーバにおけるカットスタイル判定の結果を受信することができる。
【0029】
本実施形態においては、サーバはコンピュータによって構成されるが、本発明にかかる機能を有する限りにおいて、どのような装置であってもよい。サーバは、クラウド上にあるサーバであってもよい。
【0030】
記憶部10は、例えばROM、RAMあるいはハードディスクなどから構成される。記憶部10には、サーバの各部を動作させるための情報処理プログラムが記憶され、特に、判定手段(学習済みモデル)11が記憶される。
【0031】
判定手段(学習済みモデル)11は、利用者が入力した対象となる動物の画像を入力とし、当該画像に含まれる動物のカットスタイルの種類判定を出力するものである。本実施形態における判定手段(学習済みモデル)11は、例えばディープニューラルネットワーク又は畳み込みニューラルネットワークを含んで構成される。
【0032】
処理演算部20は、記憶部に記憶された判定手段(学習済みモデル)11を用いて、カットスタイル判定を実行する。
【0033】
インターフェース部(通信部)30は、受付手段31と出力手段32を備え、利用者の端末から、動物の画像やその他の情報を受け付け、利用者の端末に対して、カットスタイルの種類判定の結果を出力する。
【0034】
本実施形態のカットスタイル判定システムにより、利用者は、ペットの写真や動画などをサーバにアップロードすることで、簡便にペットのカットスタイルの種類の判定を得ることができる。
【0035】
本実施形態では、判定手段や受付手段がサーバに格納され、利用者の端末とインターネットやLAN等の接続手段で接続される態様を説明したが、本発明はこれに限定されず、判定手段、受付手段、インターフェース部が一つのサーバや装置内に格納される態様や、利用者が利用する端末を別途必要としない態様等であってもよい。
【0036】
本発明のカットスタイル判定システムの一実施態様に基づくカットスタイル判定のフローチャートを
図6に示す。利用者が、受付手段に、対象となる動物の種類、品種等の基本情報を入力するとともに、当該動物の画像をアップロードする(ステップS1)。サーバの処理演算部は、判定手段(学習済みモデル)を用いて、アップロードされた画像から、その動物のカットスタイルの種類を判定する(ステップS2)。出力手段は、導き出された判定結果を画面に表示するなどして出力し、ユーザに提示する(ステップS3)。
【0037】
<他の実施態様>
本発明の他の実施態様として、動物の画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類を判定する判定手段と、を備えるカットスタイル判定システムであって、前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類に関するラベルとを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の画像とし、出力をその動物のカットスタイルの種類判定とする学習済みモデルであることを特徴とするカットスタイル判定システムが挙げられる。
この実施態様は、学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類に関するラベルとを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の画像とし、出力をその動物のカットスタイルの種類判定とする学習済みモデルであることを特徴とするものである。その他の点は上記と同様である。
【0038】
<カットスタイル判定方法>
本発明のカットスタイル判定方法は、動物の画像を用意するステップと、前記画像を学習済みモデルに入力し、コンピュータが前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の画像からその動物のカットスタイル判定を出力するステップと、を有するカットスタイル判定方法であって、前記学習済みモデルが、動物の画像と、該動物のカットスタイルの種類との関係を学習した学習済みモデルであることを特徴とするものである。
【0039】
また、本発明の別の態様のカットスタイル判定方法は、動物の画像を用意するステップと、前記画像を学習済みモデルに入力し、コンピュータが前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の画像からその動物のカットスタイルの種類判定を出力するステップと、を有するカットスタイル判定方法であって、前記学習済みモデルが、動物の画像とその動物のカットスタイルの種類に関するラベルとを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の画像とし、出力をその動物のカットスタイルの種類判定とする学習済みモデルであることを特徴とするものである。
【0040】
動物の画像、学習済みモデルについては、上記本発明のカットスタイル判定システムと同様である。
【実施例0041】
[実施例1]
ベアカット(一例として
図3(A)の画像)、アフロカット(一例として
図3(B)の画像)、きのこカット(一例として
図3(C)の画像)又は顔バリカンカット(一例として
図3(D)の画像)が施されたトイプードルの顔写真を用意した。これらの顔写真は、頭部全体を含む画像となるようにトリミング処理(切り出し加工)を行ったものである。
これらの顔写真を用いて、ディープラーニングを行い、学習済みモデルを生成した。教師データとして使用した顔写真は、それぞれのカットごとに60枚ずつであった。
各画像に、ベアカットであれば「0」、アフロカットであれば「1」、きのこカットであれば「2」、顔バリカンカットであれば「3」のタグをつけて学習に用いた。
学習方法は、人工知能(ニューラルネットワーク)としてMobileNetを使用した転移学習であり、機械学習ライブラリ(Deep Learningライブラリ)として、Pytorchを用いた。
また、学習途中での評価を行うためのデータとして、各カットにつき35枚のトイプードルの顔写真を用いた。学習途中での評価結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
次に、得られた学習済みモデルを用いて、上記教師データや検証データに用いた写真とは別のトイプードルの写真を各カットにつき57枚ずつを用意して検証を行った。正答率は93.4%であった。
結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
[実施例2]
シュナカット(一例として
図4(A)の画像)、ベアカット(一例として
図4(B)の画像)、又はモヒカンカット(一例として
図4(C)の画像)が施されたミニチュアシュナウザーの顔写真を用意した。これらの顔写真は、頭部全体を含む画像となるようにトリミング処理(切り出し加工)を行ったものである。
これらの顔写真を用いて、ディープラーニングを行い、学習済みモデルを生成した。教師データとして使用した顔写真は、それぞれのカットごとに60枚ずつであった。
各画像に、シュナカットであれば「0」、ベアカットであれば「1」、モヒカンカットであれば「2」のタグをつけて学習に用いた。
学習方法は、人工知能(ニューラルネットワーク)としてMobileNetを使用した転移学習であり、機械学習ライブラリ(Deep Learningライブラリ)として、Pytorchを用いた。
また、学習途中での評価を行うためのデータとして、各カットにつき35枚のミニチュアシュナウザーの顔写真を用いた。学習途中での評価結果を表3に示す。
【0046】
【0047】
次に、得られた学習済みモデルを用いて、上記教師データや検証データに用いた写真とは別のミニチュアシュナウザーの写真を各カットにつき55枚ずつを用意して検証を行った。正答率は89.7%であった。
結果を表4に示す。
【0048】