(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175928
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 27/00 20060101AFI20221117BHJP
A01D 25/00 20060101ALI20221117BHJP
A01D 33/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A01D27/00
A01D25/00
A01D33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082710
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭
(72)【発明者】
【氏名】木下 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】森園 吉一
(72)【発明者】
【氏名】秋元 賢佑
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉村 達也
(72)【発明者】
【氏名】崎山 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】丸山 義貴
(72)【発明者】
【氏名】岩切 雅也
【テーマコード(参考)】
2B072
【Fターム(参考)】
2B072AA03
2B072BA02
2B072CA12
2B072DA01
2B072DA05
2B072DA12
2B072GA11
(57)【要約】
【課題】オペレータの作業負荷を軽減すると共に、作物の収穫漏れや傷の発生を抑制できる収穫機を提供する。
【解決手段】収穫機は、機体Xと、機体を走行させる走行装置5と、圃場の作物を収穫する収穫装置Yと、圃場の作物を撮影して画像を生成する撮影装置40と、画像における作物の位置を特定する位置特定部と、特定された作物の位置に基づいて走行基準線を設定する走行基準線設定部と、設定された走行基準線に沿って機体Xが走行するように走行装置を制御する走行制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体を走行させる走行装置と、
圃場の作物を収穫する収穫装置と、
圃場の作物を撮影して画像を生成する撮影装置と、
前記画像における作物の位置を特定する位置特定部と、
特定された作物の位置に基づいて走行基準線を設定する走行基準線設定部と、
設定された前記走行基準線に沿って前記機体が走行するように前記走行装置を制御する走行制御部と、を備える収穫機。
【請求項2】
前記位置特定部は、前記画像における画素の輝度に基づいて作物の位置を特定する請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記位置特定部は、前記画像における画素の色に基づいて作物の位置を特定する請求項1又は2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記位置特定部は、前記画像における作物の小径部位の位置を作物の位置として特定する請求項1から3のいずれか1項に記載の収穫機。
【請求項5】
前記撮影装置は、撮影視野における温度分布を計測可能であり、
前記位置特定部は、前記画像に示される前記温度分布に基づいて作物の位置を特定する請求項1から4のいずれか1項に記載の収穫機。
【請求項6】
前記走行基準線設定部は、複数の作物の列の中間に前記走行基準線を設定する請求項1から5のいずれか1項に記載の収穫機。
【請求項7】
前記走行基準線設定部は、作物の列に重なるように前記走行基準線を設定する請求項1から5のいずれか1項に記載の収穫機。
【請求項8】
前記撮影装置は、前記収穫装置における上部の右端部分又は左端部分に、前記収穫装置の前方の作物を撮影可能な姿勢にて配置されている請求項1から7のいずれか1項に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歩行型の玉ねぎ収穫機が記載されている。この玉ねぎ収穫機は、エンジンからの動力により駆動される左右一対の駆動後輪を備える。操舵は、操縦ハンドルを保持するオペレータにより行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の収穫機では、オペレータが操舵を行なう必要があるため、オペレータの作業負荷が大きい。また、オペレータが操舵を誤った場合、作物の収穫漏れが発生したり、作物に傷をつけてしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、オペレータの作業負荷を軽減すると共に、作物の収穫漏れや傷の発生を抑制できる収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明の収穫機は、機体と、前記機体を走行させる走行装置と、圃場の作物を収穫する収穫装置と、圃場の作物を撮影して画像を生成する撮影装置と、前記画像における作物の位置を特定する位置特定部と、特定された作物の位置に基づいて走行基準線を設定する走行基準線設定部と、設定された前記走行基準線に沿って前記機体が走行するように前記走行装置を制御する走行制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、走行基準線が設定され、走行基準線に沿って機体が走行するように走行装置が制御されるので、オペレータの作業負荷が軽減され、作物の収穫漏れや傷の発生が抑制される。
【0008】
本発明において、前記位置特定部は、前記画像における画素の輝度に基づいて作物の位置を特定すると好適である。
【0009】
土やマルチ(圃場に敷設されるシート状部材)が黒色や濃茶色であるのに対し、収穫機が収穫する作物は白色や緑色、橙色などであるから、撮影された画像において作物に対応する画素は輝度が高くなる。本構成によれば、画像における画素の輝度に基づいて作物の位置が特定されるので、作物の位置を容易且つ確実に特定することができる。
【0010】
本発明において、前記位置特定部は、前記画像における画素の色に基づいて作物の位置を特定すると好適である。
【0011】
土やマルチ(圃場に敷設されるシート状部材)が黒色や濃茶色であるのに対し、収穫機が収穫する作物は白色や緑色、橙色などであるから、撮影された画像において作物に対応する画素を色により特定することが可能である。本構成によれば、画像における画素の色に基づいて作物の位置が特定されるので、作物の位置を容易且つ確実に特定することができる。
【0012】
本発明において、前記位置特定部は、前記画像における作物の小径部位の位置を作物の位置として特定すると好適である。
【0013】
収穫される作物において、地上に露出した部分には、実や根などの比較的大径な部位と、茎などの比較的小径な部位とがある。本構成によれば、画像における作物の小径部位の位置が作物の位置として特定されるので、作物の位置の誤差が低減され、走行基準線が更に適切に設定される。
【0014】
本発明において、前記撮影装置は、撮影視野における温度分布を計測可能であり、前記位置特定部は、前記画像に示される前記温度分布に基づいて作物の位置を特定すると好適である。
【0015】
収穫される作物の温度が、周囲の地面やマルチ表面と異なる場合がある。例えば、地面やマルチが日射により高温になるため、作物の温度が地面やマルチより低くなる場合がある。例えば、一部が作物の一部が地中に埋まっていることにより作物の温度が地面やマルチの表面より高くなる場合がある。本構成によれば、温度分布に基づいて作物の位置が特定されるので、作物の位置を容易且つ確実に特定することができる。
【0016】
本発明において、前記走行基準線設定部は、複数の作物の列の中間に前記走行基準線を設定すると好適である。
【0017】
本構成によれば、複数の作物の列の中間に走行基準線が設定されるので、複数列の作物を確実に収穫することができる。
【0018】
本発明において、前記走行基準線設定部は、作物の列に重なるように前記走行基準線を設定すると好適である。
【0019】
本構成によれば、作物の列に重なるように走行基準線が設定されるので、その列の作物を確実に収穫することができる。
【0020】
本発明において、前記撮影装置は、前記収穫装置における上部の右端部分又は左端部分に、前記収穫装置の前方の作物を撮影可能な姿勢にて配置されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、圃場の作物を斜め上から撮影することができ、作物の位置の特定および走行基準線の設定を確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】玉ねぎ収穫機の制御の態様を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る収穫機の実施の形態である歩行型の玉ねぎ収穫機について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
なお、以下の説明においては、図中に示される矢印FRの方向を「前」、矢印BKの方向を「後」、矢印RHの方向を「右」、矢印LHの方向を「左」、矢印UPの方向を「上」、矢印DWの方向を「下」とする。
【0025】
玉ねぎ収穫機の機体Xは、ミッションケース1、エンジン2、車軸ケース3、伝動ケース4、左右の後輪5、左右の支持フレーム6、及び前輪7を備える。
【0026】
ミッションケース1にエンジン2が支持される。ミッションケース1から右および左に延出された車軸ケース3および伝動ケース4に右および左の後輪5が支持される。前方に延出された右および左の支持フレーム6の右の支持フレーム6に、前輪7が支持される。前輪7の車軸は、U字形の軸支部20に回転可能な状態で軸支される。軸支部20は、前輪シャフト21が連結される。前輪シャフト21は、前輪支持筒22に内嵌され、前輪支持筒22から突出する長さが可変な状態で支持される。前輪支持筒22は支持フレーム6に支持される。
【0027】
また、玉ねぎ収穫機の機体Xは、操縦ハンドル8及び調整ハンドル9を備える。機体Xの後方に操縦ハンドル8が延出される。操縦ハンドル8に備えられた調整ハンドル9により、右の支持フレーム6に対する前輪7の高さを調節することができる。調整ハンドル9の操作により、前輪支持筒22から突出する前輪シャフト21の長さが調整され、これにより、支持フレーム6に対する前輪7の高さが調節される。また、調整ハンドル9により右の支持フレーム6に対する前輪7の高さを調節することによって、機体Xの前後方向の姿勢(傾斜)を調節することができる。
【0028】
また、玉ねぎ収穫機は、圃場の作物を収穫する収穫装置Yとして、茎葉引き上げ装置10、掻き上げ装置11、引き上げ装置12、右および左の土崩し体13、搬送装置14、切断装置15および放出装置16を備える。収穫装置Yは、右および左の支持フレーム6の前部に支持される。エンジン2の動力により、右および左の後輪5、茎葉引き上げ装置10、掻き上げ装置11、引き上げ装置12、右および左の土崩し体13、搬送装置14、切断装置15および放出装置16が駆動される。右および左の後輪5は、機体Xを走行させる走行装置である。
【0029】
本実施形態では、玉ねぎ収穫機は、茎葉引き上げ装置10として、左装置10A、中装置10B、右装置10C、及び外装置10Dを備える。
【0030】
図1,
図2に示すように、圃場に、畝間A1を挟んで複数の畝Aが形成され、一つの畝Aに4条の玉ねぎW(作物)が作付けされる。
【0031】
玉ねぎ収穫機は、前輪7および後輪5を畝間A1に接地させて畝Aを跨ぐ状態で機体が進行する。玉ねぎ収穫機は、畝Aの4条の玉ねぎW(作物の一例)のうち、機体の進行方向に向かって右の2条の玉ねぎWを収穫する。
【0032】
図1,
図2に示すように、機体Xの進行に伴って、右および左の土崩し体13は、畝Aに作付けされた玉ねぎWの下側の畝Aの土中を進行しながら土を崩し、玉ねぎWが畝Aから引き上げられ易くなる状態を作り出す。引き上げ装置12は、畝Aに作付けされた玉ねぎWの茎葉Waを挟持して玉ねぎWを畝Aから上方に引き上げる。引き上げられた玉ねぎWの茎葉Waにおいて引き上げ装置12よりも下側の部分は、切断装置15に切断され、茎葉Waが切断された玉ねぎWは畝Aに落とされていく。
【0033】
この後、作物回収車によって畝Aの玉ねぎWを回収したり、作業者が畝Aの玉ねぎWを回収したりする。
【0034】
本実施形態では、玉ねぎ収穫機は、圃場の作物を撮影して画像を生成する撮影装置40を備える。本実施形態では、撮影装置40は、カラー画像を生成するカメラである。撮影装置40が、白黒画像を生成するカメラであってもよい。撮影装置40は、経時的に撮影を実行し、生成した画像を制御装置80(
図3)へ送信する。撮影装置40が画像として静止画を生成してもよいし、動画を生成してもよい。以下、撮影装置40が生成した画像を「撮影画像」と称する。
【0035】
撮影装置40は、収穫装置Yにおける上部の右端部分に、収穫装置Yの前方の作物を撮影可能な姿勢にて配置されている。詳しくは、撮影装置40は、茎葉引き上げ装置10としての外装置10Dの上部に、レンズの光軸が左斜め下を向く姿勢にて、配置されている。
【0036】
図3に、左右の後輪5への駆動力伝達の態様が示されている。エンジン2からの動力が、ミッションケース1の内部の変速装置1aにより変速されて、左右の操向クラッチ1bを介して左右の後輪5へ伝達される。
図1に示されるように、左右の操向クラッチレバー8aが、操縦ハンドル8に設けられている。左右の操向クラッチレバー8aは、左右の操向クラッチ1bに接続されている。
【0037】
右の操向クラッチレバー8aが操作されると、右の操向クラッチ1bが切断され、右の後輪5への駆動力の伝達が停止する。これにより、機体Xは右旋回する。左の操向クラッチレバー8aが操作されると、左の操向クラッチ1bが切断され、左の後輪5への駆動力の伝達が停止する。これにより、機体Xは左旋回する。以上のようにして、玉ねぎ収穫機の機体Xの旋回がオペレータにより操向クラッチレバー8aを用いて制御される。
【0038】
左右の操向クラッチ1bに、アクチュエータ1cが接続されている。アクチュエータ1cは、後述する制御装置80に制御されて、左右の操向クラッチ1bを入切する。従って、玉ねぎ収穫機の機体Xの旋回が制御装置80によりアクチュエータ1cを用いて制御され得る。アクチュエータ1cは、例えば電動モータや油圧シリンダ、エアシリンダ等である。アクチュエータ1cが、操向クラッチ1bと操向クラッチレバー8aとを接続する操作ワイヤを操作するよう構成されてもよい。
【0039】
玉ねぎ収穫機は、制御装置80を備える。制御装置80は、所謂ECUであって、後述する機能部に対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。すなわち、制御装置80は、プログラムを記憶した一次的ではない(non-transitory)記録媒体を備える。
【0040】
図3に示されるように、制御装置80は、機能部として、位置特定部81、走行基準線設定部82、及び走行制御部83を備える。
【0041】
位置特定部81は、撮影装置40が生成した撮影画像における作物の位置を特定する。詳しくは、位置特定部81は、撮影画像を解析して、撮影画像における作物に対応する領域を特定し、当該領域の全部、一部、又は当該領域に含まれる点を、撮影画像における作物の位置として特定する。例えば、位置特定部81は、特定した領域の中央を、撮影画像における作物の位置として特定する。
【0042】
図4に、撮影装置40が生成した撮影画像の一例が示されている。撮影画像における玉ねぎの位置が、点Pとして特定されている。図示例では、4条の玉ねぎのうち右側の2条の玉ねぎの位置が特定されている。位置特定部81が、撮影画像中の全ての玉ねぎの位置を特定するよう構成されてもよい。
【0043】
例えば、位置特定部81は、撮影画像における画素の輝度に基づいて作物の位置を特定する。撮影装置40が生成する撮影画像が白黒画像である場合を説明する。白色である玉ねぎに対応する画素は、緑色である葉部及び濃茶色である土壌に対応する画素よりも輝度が高い。所定の閾値よりも輝度が高い画素を抽出することにより、玉ねぎに対応する領域を特定することが可能である。位置特定部81が、更に他の手法(形状認識など)を用いて玉ねぎに対応する画素を抽出するよう構成されてもよい。
【0044】
位置特定部81が、撮影画像における画素の色に基づいて作物の位置を特定するよう構成されてもよい。撮影装置40が生成する撮影画像がカラー画像である場合を説明する。撮影画像において、白色の画素は玉ねぎに対応し、緑色の画素は葉部に対応し、濃茶色の画素は土壌に対応する。白色の画素を抽出することにより、玉ねぎに対応する領域を特定することが可能である。位置特定部81が、更に他の手法(形状認識など)を用いて玉ねぎに対応する画素を抽出するよう構成されてもよい。
【0045】
位置特定部81は、特定した玉ねぎに対応する領域の内部の点を、作物の位置として特定する。図示例では、略円形の領域の中央の点Pが、作物の位置として特定されている。
【0046】
走行基準線設定部82は、位置特定部81により特定された作物の位置に基づいて走行基準線を設定する。
図4の例では、走行基準線Lが、横に並ぶ2つの点Pの中点Mを通るように設定されている。すなわち本実施形態では、走行基準線設定部82は、複数の作物の列の中間に走行基準線を設定する。
【0047】
走行基準線は、他の位置、他の形態に設定されてもよい。例えば、走行基準線が、横に並ぶ2つの点Pの間を通る滑らかな曲線に設定されてもよい。
【0048】
走行制御部83は、走行基準線設定部82により設定された走行基準線に沿って機体Xが走行するように走行装置を制御する。本実施形態では、走行制御部83は、アクチュエータ1cを動作させて操向クラッチ1bを入切することにより、左右の後輪5の駆動を制御する。
【0049】
走行制御部83による機体Xの走行制御は、例えば以下の態様により行なわれる。走行制御部83が、撮影画像における基準位置からの走行基準線の左右ズレを算出し、算出した左右ズレに応じて機体Xの走行を制御する。基準位置とは、作物を適切に収穫可能な位置に収穫機があるときの、撮影画像における走行基準線の位置である。例えば、茎葉引き上げ装置10の中装置10Bが2条の玉ねぎの間に位置しているとき、収穫機は作物を適切に収穫可能な位置にあるといえる。このとき、撮影装置40の視野(画角)が固定されている限り、特定された作物の位置に基づいて設定された走行基準線は、撮影画像において所定の位置に位置するはずである。例えば、
図4に示されるように、撮影画像において走行基準線Lが中装置10Bに重なるように位置する。走行基準線が基準位置よりも右(または左)に位置する場合、機体Xが過度に左(または右)に位置していることになる。その場合、機体Xを右旋回(または左旋回)させることにより、撮影画像において走行基準線が基準位置に近づく。
【0050】
すなわち、走行制御部83は、撮影画像において走行基準線Lが基準位置よりも右(または左)に位置することに応じて、機体Xを右(または左)に旋回させる。詳しくは、走行制御部83は、算出した左右ズレが右(または左)へのズレである場合に、機体Xを右(または左)に旋回させる。このような制御を実行することにより、走行制御部83は、設定された走行基準線に沿って機体Xが走行するように走行装置を制御することができる。
【0051】
走行制御部83による機体Xの走行制御が、以下の態様により行なわれてもよい。走行制御部83が、撮影画像における機体Xの所定部位に対応する位置(以下「機体対応位置」と称する。)を特定する。例えば、走行制御部83が、撮影画像における茎葉引き上げ装置10の中装置10Bの先端の位置を画像解析により特定する。走行制御部83が、走行基準線Lからの機体対応位置の左右ズレを算出し、算出した左右ズレに応じて機体Xの走行を制御する。走行制御部83は、算出した左右ズレが右(または左)へのズレである場合に、機体Xを左(または右)に旋回させる。このような制御を実行することにより、走行制御部83は、設定された走行基準線に沿って機体Xが走行するように走行装置を制御することができる。
【0052】
〔他の実施形態〕
(1)
図5に、撮影装置40が生成した撮影画像の他の例が示されている。この例では、作物は人参であり、収穫機は人参収穫機である。図示例では、撮影画像における人参の位置が、点Pとして特定されている。詳しくは、撮影画像における人参の小径部位の位置が、点Pとして特定されている。小径部位は、作物における比較的小径な部位であって、例えば人参の茎である。図示例では、人参の茎の根元が作物の位置として特定されている。このように、位置特定部81が、撮影画像における作物の小径部位の位置を作物の位置として特定するように構成されてもよい。人参や大根の場合、小径部位は茎であり、大径部位(地上に露出した部分における比較的大径な部位)は根の上部(肩部)である。玉ねぎの場合、小径部位は葉茎の根元であり、大径部位は葉部(実)である。画像における小径部位の特定は、輝度や色により作物として特定された領域に対する、形状認識や幅算出などを行なうことにより実行される。
【0053】
走行基準線設定部82が、作物の列に重なるように走行基準線を設定するように構成されてもよい。
図5の例では、走行基準線Lが、作物の小径部位に特定された点Pを通るように設定されている。すなわち、走行基準線Lが、作物(人参)の列に重なるように設定されている。
【0054】
(2)撮影装置40が、撮影視野における温度分布を計測可能な装置であってもよい。位置特定部81が、撮影装置40が生成した撮影画像に示される温度分布に基づいて作物の位置を特定するように構成されてもよい。例えば、位置特定部81が、撮影画像において所定の閾値よりも温度が低い画素(または高い画素)を抽出することにより、作物に対応する領域を特定し、当該領域の内部の点を作物の位置として特定するよう構成されてもよい。
【0055】
(3)収穫機が、他の形態の走行装置を備えてもよい。例えば、収穫機がクローラ走行装置を備えてもよい。
【0056】
(4)収穫機の旋回の制御が、他の形態により行なわれてもよい。例えば、アクチュエータにより走行装置の向きを変えることにより、旋回の制御が行なわれてもよい。左右の走行装置の駆動速度を異ならせることにより、旋回の制御が行なわれてもよい。
【0057】
(5)撮影装置40が異なる位置に設けられてもよい。例えば、撮影装置40が、収穫装置Yにおける上部の左端部分に配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、玉ねぎ収穫機の他、野菜収穫機、果実収穫機、人参収穫機、大根収穫機など、様々な形態の収穫機に適用可能である。また本発明は、歩行型の収穫機だけでなく、オペレータが搭乗する乗用型収穫機や、その他の形態の収穫機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
5 :後輪(走行装置)
40 :撮影装置
81 :位置特定部
82 :走行基準線設定部
83 :走行制御部
L :走行基準線
X :機体
Y :収穫装置