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特開2022-175948自動フォーカス方法及び自動フォーカス装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175948
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】自動フォーカス方法及び自動フォーカス装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/53 20060101AFI20221117BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20221117BHJP
【FI】
G03B21/53
G02B7/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082743
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】513068816
【氏名又は名称】エスゼット ディージェイアイ テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SZ DJI TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】6F,HKUST SZ IER Bldg.NO.9 Yuexing 1st Rd.Hi-Tech Park(South),Nanshan District Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄒 帥
【テーマコード(参考)】
2H011
2H044
【Fターム(参考)】
2H011CA21
2H044DA01
2H044DB03
2H044DB07
2H044DC06
(57)【要約】
【課題】レンズ機構の姿勢に応じた重力の影響を考慮して最適化された駆動速度でオートフォーカスを行う自動フォーカス方法及び自動フォーカス装置を提供すること。
【解決手段】レンズ機構の姿勢に関する情報を取得するステップと、当該姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定するステップと、当該最大駆動速度によりフォーカス駆動を実行するステップと、を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ機構の自動フォーカス方法であって、
前記レンズ機構の姿勢に関する情報を取得するステップと、
前記姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定するステップと、
前記最大駆動速度により前記レンズ機構のフォーカス駆動を実行するステップと、
を有する、自動フォーカス方法。
【請求項2】
前記レンズ機構の姿勢に関する情報を取得するステップは、
前記レンズ機構内にあるセンサにより前記レンズ機構の姿勢に関する情報を検出するステップと、を含む、
請求項1に記載の自動フォーカス方法。
【請求項3】
前記レンズ機構の姿勢に関する情報を取得するステップは、
前記レンズ機構が固定されている撮像装置から前記姿勢に関する情報を取得するステップと、を含む、
請求項1に記載の自動フォーカス方法。
【請求項4】
前記姿勢に関する情報には前記レンズ機構の光軸と基準角度とのずれ量が含まれ、
前記レンズ機構には前記ずれ量及び重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度の関連性を示すテーブルが記憶され、
前記姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定するステップは、
前記テーブルに基づき前記ずれ量に応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定するステップと、を含む、
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の自動フォーカス方法。
【請求項5】
前記レンズ機構の姿勢の変更が検出された際に、前記最大駆動速度を前記変更後の姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた駆動速度に変更するステップと、含む、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の自動フォーカス方法。
【請求項6】
自動フォーカス装置であって、
レンズ機構と、処理部と、駆動部と、を有し、
前記処理部は、前記レンズ機構の姿勢に関する情報を取得し、前記姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定し、
前記最大駆動速度により前記レンズ機構のフォーカス駆動を実行する、
自動フォーカス装置。
【請求項7】
センサをさらに含み、
前記センサにより前記姿勢に関する情報を検出する、
請求項6に記載の自動フォーカス装置。
【請求項8】
通信部をさらに含み、
前記処理部は、通信部を通じて前記レンズ機構が固定されている撮像装置から前記姿勢に関する情報を取得する、
請求項6に記載の自動フォーカス装置。
【請求項9】
前記姿勢に関する情報には前記レンズ機構の光軸と基準角度とのずれ量が含まれ、
前記ずれ量及び重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度の関連性を示すテーブルが記憶されている記憶部をさらに有し、
前記処理部は、前記テーブルに基づき前記ずれ量に応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定する、
請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の自動フォーカス装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記レンズ機構の姿勢の変更が検出された際に、前記最大駆動速度を前記変更後の姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた駆動速度に変更する、
請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載の自動フォーカス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はレンズ機構の姿勢に応じた重力の影響を考慮し、駆動速度が最適化された自動フォーカス方法及び自動フォーカス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代における撮像装置において、自動フォーカス機能は広く普及し、位相差自動フォーカス、像面位相差自動フォーカス、コントラスト自動フォーカス並びにこれらの技術を混合したハイブリット式自動フォーカス等の技術の開発が進んでいる。特にスポーツ撮影、野鳥撮影などの動く被写体の撮影においては、より迅速且つ正確な自動フォーカスが求められ、限定されたハードウェア環境においてどのように自動フォーカス性能を向上させられるかが各メーカーの共通の課題となっている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2013-88647号公報)には、レンズ駆動用モータの低速駆動時における発熱を抑制するために、駆動指示速度が閾値よりも低速な場合に駆動と停止を小刻みに制御するレンズ及びレンズ駆動用モータが開示されている。また、特許文献2(特開2013-57746号公報)には、カメラ本体が静音となるように駆動速度を調節するレンズ鏡筒が開示されている。さらに、特許文献3(特開2006-317847号公報)には、レンズの内部構造の圧力のバラツキによって駆動速度を変えて消費電力の節約と合焦、ズームなどのスピードアップを図るレンズ駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-88647号公報
【特許文献2】特開2013-57746号公報
【特許文献3】特開2006-317847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動フォーカスにおいては、モータによりレンズ機構におけるフォーカスレンズ(またはレンズ群)を光軸上で移動させることにより焦点位置を調整する。このような駆動には様々な種類のモータが採用されるが、例えばステッピングモータを採用する場合、回転運動をボールねじなどにより直線運動に変換する。このとき、回転の駆動トルクが不足すると起こしフォーカスレンズ(またはレンズ群)を正常に駆動できないだけでなく、歯車が空転をするなどによりレンズ機構の故障を招くことがある。そのため、従来技術では安全上フォーカスレンズ(またはレンズ群)の駆動時にレンズ機構がどのような姿勢に置かれていても十分にレンズを駆動するに足りる駆動トルクを設定してフォーカスレンズの駆動を行うものであった。しかしながら、図1に示すように、モータ及びその駆動電圧が一定である場合において、駆動トルクと駆動速度はトレードオフの関係にあり、駆動トルクが上げるためにはモータの最大駆動速度を落とす必要がある。重力の影響を強く受ける姿勢(例えば光軸が垂直方向にある場合)と、重力の影響をあまり受けない姿勢(例えば光軸が水平方向にある場合)とでは、フォーカスレンズを駆動する際に必要とする駆動トルク(駆動力)が異なるが、従来技術は重力抵抗が小さい姿勢であっても、必要以上に高い駆動トルクが設定され、レンズ機構の姿勢に応じた最適な駆動速度を設定することができなかった。
【0006】
そこで、本開示は、以上の課題を鑑みて、レンズ機構の姿勢に応じた重力の影響を考慮し、最適化された駆動速度でフォーカスを行う自動フォーカス方法及び自動フォーカス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、レンズ機構の自動フォーカス方法であって、レンズ機構の姿勢に関する情報を取得するステップと、前記姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定するステップと、前記最大駆動速度により前記レンズ機構のフォーカス駆動を実行するステップと、を有する。
【0008】
レンズ機構の姿勢に関する情報を取得するステップは、レンズ機構内にあるセンサによりレンズ機構の姿勢に関する情報を検出するステップと、を含んでよい。
【0009】
レンズ機構の姿勢に関する情報を取得するステップは、レンズ機構が固定されている撮像装置からレンズ機構の姿勢に関する情報を取得するステップと、を含んでよい。
【0010】
姿勢に関する情報にはレンズ機構の光軸と基準角度とのずれ量が含まれ、レンズ機構にはずれ量及び重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度の関連性を示すテーブルが記憶され、前記姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定するステップは、前記テーブルに基づき前記ずれ量に応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定するステップと、を含んでよい。
【0011】
レンズ機構の姿勢の変更が検出された際に、最大駆動速度を変更後の姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた駆動速度に変更するステップと、含んでよい。
【0012】
一態様において、自動フォーカス装置であって、レンズ機構と、処理部と、駆動部と、を有し、 処理部は、レンズ機構の姿勢に関する情報を取得し、前記姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定し、前記最大駆動速度によりレンズ機構のフォーカス駆動を実行する。
【0013】
センサをさらに含み、センサにより姿勢に関する情報を検出してよい。
【0014】
通信部をさらに含み、処理部は、通信部を通じてレンズ機構が固定されている撮像装置から姿勢に関する情報を取得してよい。
【0015】
姿勢に関する情報にはレンズ機構の光軸と基準角度とのずれ量が含まれ、前記ずれ量及び重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度の関連性を示すテーブルが記憶されている記憶部をさらに有し、処理部は、前記テーブルに基づき前記ずれ量に応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定してよい
【0016】
処理部は、レンズ機構の姿勢の変更が検出された際に、最大駆動速度を変更後の姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた駆動速度に変更してよい。
【0017】
本開示における自動フォーカス方法および自動フォーカス装置によれば、レンズ機構の姿勢に応じた重力の影響を考慮して最適化された駆動速度でフォーカスを行うことができる。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本開示の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】模式的にモータの駆動トルクと駆動速度の関係を示す曲線図である。
図2】本開示における自動フォーカス装置を搭載した製品の一例を示す斜視図である。
図3】本開示における自動フォーカス装置を搭載したレンズ機構のブロック図である。
図4】本開示における自動フォーカス駆動を行うときのレンズ機構の動作を示す模式図である。
図5】本開示における自動フォーカス装置を搭載したレンズ機構の姿勢と重力抵抗の関係を示す説明図である。
図6】本開示における自動フォーカス方法の実施例を示すフロー図である。
図7】光軸と基準角度のずれ量と最大駆動速度の関係テーブルの模式図である。
図8】本開示における自動フォーカス方法の実施例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須とは限らない。
【0021】
特許請求の範囲、明細書、図面、及び要約書には、著作権による保護の対象となる事項が含まれる。著作権者は、これらの書類の何人による複製に対しても、特許庁のファイル又はレコードに表示される通りであれば異議を唱えない。但し、それ以外の場合、一切の著作権を留保する。
【0022】
図2は、本開示における自動フォーカス装置を搭載した製品の一例を示す斜視図である。本開示に係る自動フォーカス装置は、例えばカメラボディ1に取り付けられるレンズ機構2に搭載される、自動フォーカスを実現するためのハードウェア、ソフトウェア等のモジュールの集合である。説明の便宜のため、図2においてはカメラボディ1の具体例としてミラーレス一眼カメラを示しているが、本開示はこれに限らず、例えば一眼レフカメラ、スマートホン、タブレット端末、アクションカメラ、防犯カメラ、望遠鏡、顕微鏡、ジンバルカメラ、ドライブレコーダー、ドローンその他いかなる撮像装置であってよい。また、図2においては、レンズ機構2はカメラボディ1に脱着可能に取り付けられているが、カメラボディ1と一体型に構成されてよい。
【0023】
図3は、本開示における自動フォーカス装置を搭載したレンズ機構のブロック図である。図3に示すように、レンズ機構2は、例えば処理部20、駆動部21、記憶部22、通信部23、加速度センサ24、ジャイロセンサ25を備えてよい。なお、図3はレンズ機構2における本開示の自動フォーカス装置を模式的に記載しているにすぎず、実際はレンズ(又はレンズ群)、レンズ鏡筒、レンズ保持枠、絞り駆動機構、手ブレ補正機構、表示部、マウント等の他の構成を備えてよい。また、本開示において実施例によっては一部の構成を省略してもよく、例えば加速度センサ24及びジャイロセンサ25を択一的に備えてよいし、他の類型のセンサを備えてよい。
【0024】
処理部20は、レンズ機構2の各部の動作を統括して制御するための信号処理、他の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理及びデータの記憶処理を行う。処理部20はプロセッサ、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成されてよい。処理部20は本開示における各種処理(ステップ)を実行し、レンズ機構2の制御情報を生成する。なお、本開示では便宜上処理部20を一つの手段として説明するが、実際には処理部202は物理的に一つの手段により実現されるとは限らず、複数のプロセッサが共同で演算処理を行う構成であってよい。
【0025】
駆動部21は、例えばステッピングモータであり、図示しないフォーカスレンズ(またはレンズ群)を光軸方向に移動可能に保持するレンズ保持枠を制御することにより、レンズのフォーカス駆動を実行する。本実施例においては、駆動部21をステッピングモータとして説明するが、本発明はこれに限らず、例えば直流モータ、超音波モータ、リニアモータその他いかなる種類のモータであってよい。なお、本実施例では便宜上駆動部21を一つの手段として説明するが、実際には複数のモータが共同で一つまたは複数のフォーカスレンズ(またはレンズ群)を駆動してよい。
【0026】
記憶部22は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えばフラッシュメモリが好ましい。ただし、本開示はこれに限らず、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)その他いかなる形式のデータ格納機能を有する記憶媒体を選択してよい。
【0027】
通信部23は例えばレンズ機構2のマウント部にある電子接点であってよく、レンズ機構2とカメラボディ1との間の通信を行う。カメラボディ1からレンズ機構2に送信する情報は、例えばフォーカス制御信号、絞り制御信号、カメラボディ1の姿勢に関する情報等であってよいがこれらに限らない。また、レンズ機構2からカメラボディ1に送信する情報は、例えばレンズ機構2の最大絞り値、最小絞り値、焦点距離、フォーカス位置等の情報であってよいがこれらに限らない。
【0028】
加速度センサ24は、レンズ機構の移動速度が変化する時に発生する慣性力を検知し、加速度として電気信号で出力する。ジャイロセンサ25は、コリオリ力を利用してレンズ機構2の回転や向きの変化を角速度として検知し、電気信号で出力する。加速度センサ24とジャイロセンサ25は共同または単独でレンズ機構2の手ブレを検出したり、レンズ機構2の姿勢に関する情報を検出したりすることができる。ここにいうレンズ機構2の姿勢に関する情報は、例えばレンズ機構の光軸と基準角度とのずれ量であってよい。標準角度は例えば水平方向から上方に向かって90°(すなわち真上)であってよいがこれに限られない。
【0029】
図4は本開示における自動フォーカス駆動を行うときのレンズ機構の動作を示す模式図である。図4(A)に示す状態は、フォーカスレンズLが被写体Oの像を撮像素子Sの1点に結んでおり、被写体Oにピントが合っている状態である。その後、撮像素子Sから遠ざかった被写体O´の位置にピントを合わせるためには、図4(B)に示すように、フォーカスレンズL´を撮像素子Sに近づける必要がある。
【0030】
すなわち、ピント位置を近づけるためには、フォーカスレンズLを図4のMOD(Minimum Object Distance:最短撮影距離)方向に駆動し、撮像措置S(すなわち撮像素子側)から遠ざけていく必要があり、逆にピント位置を遠ざけるためには、フォーカスレンズLを図4のINF(Infinity:無限遠)方向に駆動し、撮像措置S(すなわち撮像素子側)に近づけていく必要がある。この原理から、以下においては撮像措置Sから遠ざかる方向を「MOD方向」とし、撮像措置Sに近づく方向を「INF方向」として説明する。
【0031】
なお、図4は説明の便宜のため一つのフォーカスレンズによりフォーカスを行う場合を示しているが、実際は複数のフォーカスレンズ又はレンズ群により構成してよい。
【0032】
図5は本開示における自動フォーカス装置を搭載したレンズ機構2の姿勢と重力抵抗の関係を示す説明図である。姿勢Aはレンズ機構2が真上を向いている(すなわち光軸が垂直になっている)状態を示す。このとき、フォーカスレンズをMOD方向(すなわち真上)に駆動すると、重力に逆らって移動するので、自動フォーカスに必要な駆動トルクは最大値となる。逆に、フォーカスレンズをINF方向(すなわち真下)に駆動する場合は重力に沿って移動するので、自動フォーカスに必要な駆動トルクは最小値となる。ところが、コントラスト自動フォーカスなどの方式を用いるときは、通常フォーカスレンズをMOD方向とINF方向の双方向の駆動が含まれているため、高い駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定する必要がある。このときの最大駆動速度は、例えば2000pps(pulse per second:パルス毎秒)であってよい。
【0033】
レンズ機構2が姿勢A1であるときは、フォーカスレンズをMOD方向(すなわち斜め上方)に駆動すると、重力の一部に逆らって移動することになる。逆に、フォーカスレンズをINF方向(すなわち斜め下方)に駆動する場合は重力の一部に沿って移動することになる。すなわち、姿勢A1における重量抵抗の影響は姿勢Aより小さく、必要な駆動トルクも小さい。図1に示すように、その駆動電圧が一定である場合において、駆動トルクと駆動速度はトレードオフの関係にあるため、姿勢A1の駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度は姿勢Aの場合より速く設定することができ、例えば2200ppsであってよい。
【0034】
同様に、レンズ機構2が姿勢A1より更に水平方向に傾斜した姿勢A2となったときは、自動フォーカスに必要な駆動トルクは姿勢A1における必要な駆動トルクより小さく、自動フォーカスの最大駆動速度は例えば2400pps(pulse per second:パルス毎秒)に設定することができる。そして、レンズ機構2が姿勢B(すなわち光軸が水平方向)であるときは、フォーカスレンズをMOD方向に駆動しても、INF方向に駆動しても、摩擦力がある程度増えることを勘案しても、総合的に見て重力抵抗の影響が最も少ないため、必要な駆動トルクは最小となり、これに応じた自動フォーカスの最大駆動速度は最大となり、例えば2600ppsであってよい。
【0035】
そして、レンズ機構2が水平方向を超えて下方に傾くにつれて、フォーカスレンズをINF方向に駆動する際の重力抵抗の影響が次第に高くなる。そしてレンズ機構2が姿勢Cとなったときは再度重力抵抗の影響が最大となり、このときの自動フォーカスの最大駆動速度は例えば姿勢Aと同様の2000ppsであってよい。
【0036】
以下、図6を用いて本開示における自動フォーカス装置の処理部20により実行される各種処理(ステップ)について説明する。なお、処理部20により実行される各種処理(ステップ)は本開示における自動フォーカス方法を構成してよい。
【0037】
まず、処理部20は、レンズ機構2の姿勢に関する情報を取得する(ステップS110)。レンズ機構2の姿勢に関する情報は、例えばレンズ機構2の光軸と基準角度とのずれ量であってよい。標準角度は、例えば水平方向から上方に向かって90°(すなわち真上)であってよいが本開示はこれに限らず、例えば水平方向その他いかなる基準であってよい。
【0038】
レンズ機構2の姿勢に関する情報は、例えばレンズ機構2内にあるセンサにより検出してもよい。ここにいうセンサとは、例えば加速度センサ24、ジャイロセンサ25のいずれか一方又は双方であってよいが、本開示はこれに限らず、レンズ機構2の姿勢を検出できるいかなる単一のセンサ又は複数のセンサの組み合わせであってよい。
【0039】
また、レンズ機構2は通常マウントを通じてカメラボディ1に固定されるため、カメラボディ1の姿勢からレンズ機構2の姿勢を算出することができる。そのため、レンズ機構2の姿勢に関する情報は、カメラボディ1側のセンサにより検出され、通信部23を通じて取得してよい。
【0040】
次に、処理部20は、レンズ機構2の姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を設定する(ステップS120)。図5に示すように、レンズ機構2の姿勢により重力抵抗の影響が変化し、必要な駆動トルク及び当該駆動トルクに応じた最大駆動速度が変化する。そのため、例えばあらかじめレンズ機構2内にある記憶部22に、図7のレンズ機構2の光軸と基準角度とのずれ量及び重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度の関連性を示すテーブルを記憶してよい。処理部20は、このテーブルを参照することにより、レンズ機構2の姿勢に関する情報であるレンズ機構2の光軸と基準角度とのずれ量に基づき、当該姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を確定することができる。
【0041】
第三に、処理部20は、ステップS120において設定された最大駆動速度によりレンズ機構2のフォーカス駆動を実行する(ステップS130)。具体的には、駆動部21を通じて最大駆動速度によりフォーカスレンズ保持枠を駆動し、一つ又は複数のフォーカスレンズ(又はレンズ群)を移動させる動作であってよい。
【0042】
従来の自動フォーカス装置においては、重力抵抗を考慮していなかったため、例えばレンズ機構2が図5に示す姿勢Bの状態であっても、最も安全な駆動トルクに基づいて最大駆動速度を設定していた(例えば2000pps)。本開示においては、重力抵抗が少ない姿勢Bにおいてはより高速な最大駆動速度を設定することができ(例えば2600pps)、自動フォーカス速度の向上が期待できる(例えば最大1.3倍)。また、この有利な効果はフォーカスレンズの質量が大きければ大きいほど顕著になる。
【0043】
図5の実施例においては、自動フォーカスを行うたびにステップS110~S130を実行するが、姿勢が変わらない状態で複数回の自動フォーカスを実行するときの効率をさらに向上せるために、図8を用いて本開示における自動フォーカス方法の好ましい実施例について説明する。
【0044】
まず、処理部20は、レンズ機構2の姿勢が変更されたか否かを随時検出する(ステップS210)。具体的には、レンズ機構2内にあるセンサによりレンズ機構2の姿勢の変更を検出してもよいし、通信部25を通じてレンズ機構2が固定されているカメラボディ1から姿勢変更の検出信号を取得してよい。なお、センサはレンズ機構2内にある加速度センサ24、ジャイロセンサ25のいずれか一方又は双方レンズであってよいが、本開示はこれに限らず、レンズ機構2の姿勢を検出できるいかなる単一のセンサ又は複数のセンサの組み合わせであってよい。
【0045】
レンズ機構2の姿勢に変更がないときは(ステップS210:「いいえ」)、重力抵抗の影響は変わらないため、最大駆動速度を変える必要がなく、引き続きレンズ機構の姿勢が変更されたか否かを検出する(ステップS210)。
【0046】
レンズ機構2の姿勢に変更があったときは(ステップS210:「はい」)、重力抵抗の影響最大駆動速度を変更後の姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた駆動速度に変更する(ステップS220)。なお、変更後の姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた最大駆動速度は、例えばステップS120と同様の方法で取得することができ、ここでは説明を割愛する。
【0047】
以上の好ましい実施例により、レンズ機構2の姿勢に変更があるときのみレンズ機構2の姿勢における重量抵抗に必要な駆動トルクに応じた自動フォーカスの最大駆動速度を再設定するため、自動フォーカスの効率を向上させると共に省電力を実現することができる。
【0048】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示に係る発明の技術的範囲は上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載からも明らかである。
【符号の説明】
【0049】
1 カメラボディ
2 レンズ機構
20 処理部
21 駆動部
22 記憶部
23 通信部
24 加速度センサ
25 ジャイロセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8