(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175958
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】血液由来成長因子含有組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/18 20060101AFI20221117BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20221117BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221117BHJP
A61K 35/14 20150101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K38/18
A61K38/20
A61P17/02
A61P43/00 105
A61K35/14 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082782
(22)【出願日】2021-05-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】516143802
【氏名又は名称】セルソース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】裙本 理人
(72)【発明者】
【氏名】宮林 佑衣
(72)【発明者】
【氏名】大西 和夫
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA36
4C084DA13
4C084DA18
4C084DB52
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA05
4C087BB35
4C087CA21
4C087DA26
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB21
(57)【要約】
【課題】創傷治癒や組織再生に対してより効果的な血液由来成長因子含有組成物及び前記血液由来成長因子含有組成物の調製方法を提供する。
【解決手段】本発明のある形態は、哺乳類の血液から血液由来成長因子含有組成物を調製する方法である。
当該方法は、金属イオンとキレート錯体を形成し得る抗凝固剤を前記血液に添加する工程と、前記抗凝固剤が添加された前記血液からバフィーコート成分を含む多血小板血漿を分離する工程と、前記多血小板血漿を凍結融解して活性化させる工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の血液から調製された血液由来成長因子含有組成物であって、
成長因子VEGFの含有量が100pg/mL以上である血液由来成長因子含有組成物。
【請求項2】
抗炎症性サイトカインIL-1Raの含有量が100pg/mL以上である、請求項1記載の血液由来成長因子含有組成物。
【請求項3】
炎症性サイトカインIL-1β、IL-6及びTNF-αの含有量が、それぞれ、10pg/mL以下、10pg/mL以下及び20pg/mL以下である、請求項1又は2記載の血液由来成長因子含有組成物。
【請求項4】
成長因子VEGFの質量を基準とした、抗炎症性サイトカインIL-1Raの質量比が、1:1~50である、請求項1~3のいずれか1項記載の血液由来成長因子含有組成物。
【請求項5】
成長因子VEGFの質量を基準とした、炎症性サイトカインIL―1βの質量比が、1:0.001~0.05である、請求項1~4のいずれか1項記載の血液由来成長因子含有組成物。
【請求項6】
凍結乾燥状態にある、請求項1~5のいずれか1項記載の血液由来成長因子含有組成物。
【請求項7】
哺乳類の血液から血液由来成長因子含有組成物を調製する方法であって、
金属イオンとキレート錯体を形成し得る抗凝固剤を前記血液に添加する工程と、
前記抗凝固剤が添加された前記血液からバフィーコート成分を含む多血小板血漿を分離する工程と、
前記多血小板血漿を凍結融解して活性化させる工程と、
を含む方法。
【請求項8】
前記抗凝固剤が、クエン酸、EDTA、又はこれらの塩を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記血液から多血小板血漿を分離する工程が、
前記血液について100~1000G、1~30分による第1の遠心分離処理を施して血漿及びバフィーコートを含む上層部を回収すること;前記上層部について1000~2500G、1~30分による第2の遠心分離処理を施して血小板及びバフィーコート成分をペレット化すること;及び、上清を除去し、前記血小板及び前記バフィーコート成分を懸濁して多血小板血漿を得ること;を含む、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記上層部を回収する工程において、全液量の体積を基準として、回収する前記上層部の体積比が、1:0.1~0.5である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記上清を除去する工程において、ペレットの体積を基準として、体積比が1:1~10の体積量の上清を残しそれ以外を除去する、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記多血小板血漿を凍結融解して活性化させる工程が、-200℃~-20℃、10分以上の処理による凍結と、その後の20℃~50℃、10分以上の処理による融解により行われる、請求項7~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記多血小板血漿を分離する工程の前に、前記抗凝固剤を添加された血液を0~10℃で予冷蔵する工程を更に含む、請求項7~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
孔径0.2~1μmのフィルターを用いて、活性化された前記多血小板血漿を濾過処理する工程を更に含む、請求項7~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
活性化された前記多血小板血漿を凍結乾燥する工程を更に含む、請求項7~14のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液由来成長因子含有組成物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己の血液を遠心分離することで調製される血小板を濃縮した血漿、多血小板血漿(platelet rich plasma:以下、「PRP」とも呼ぶ)を用いる治療法がある。この多血小板血漿は、多種の成長因子を豊富に含む。これら成長因子が創傷治癒や組織再生に効果的な役割を果たすため、多血小板血漿は再生医療分野において有望な材料である(例えば、特許文献1)。
【0003】
PRPの調製には、血小板を活性化し、血小板に含まれる成長因子等を放出させる工程が含まれる。血小板の活性化には、血小板由来因子放出刺激物質、例えば、トロンビン、塩化カルシウムが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、創傷治癒や組織再生に対して効果的な血液由来成長因子含有組成物及び前記血液由来成長因子含有組成物の調製方法の提供を主課題とする。更には、本発明は、投与時の強い痛みを緩和可能な血液由来成長因子含有組成物及び前記血液由来成長因子含有組成物の調製方法の提供を副課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記主課題について鋭意研究した結果、特定の成長因子{血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:以下、「VEGF」とも呼ぶ)}及びその量に着目することが重要であることを見出した。更に、本発明者らは、原料及びプロセスの無数の組み合わせの中、特定の原料及びプロセス(キレート剤の使用、バフィーコート層を採取、凍結融解)を選択することで、前記特定の成長因子を所望量以上含有する血液由来成長因子含有組成物を調製することが可能であることを見出した。更に、本発明者らは、前記副課題についても鋭意研究した結果、所定サイズのフィルターで濾過処理も併せて実施することで、投与時の強い痛みを緩和可能な血液由来成長因子含有組成物を調製することができることを見出した。具体的には、下記発明である。
【0007】
すなわち、本発明によれば、
〔1〕 哺乳類の血液から調製された血液由来成長因子含有組成物であって、成長因子VEGFの含有量が100pg/mL以上である血液由来成長因子含有組成物;
〔2〕 抗炎症性サイトカイン:インターロイキン-1レセプターアンタゴニスト(Interleukin-1 receptor antagonist:以下、「IL-1Ra」とも呼ぶ)の含有量が100pg/mL以上である、前記〔1〕記載の血液由来成長因子含有組成物;
〔3〕 炎症性サイトカイン:インターロイキン-1β(Interleukin-1β:以下、「IL-1β」とも呼ぶ)、インターロイキン-6(Interleukin-6:以下、「IL-6」とも呼ぶ)、及び腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor-α:以下、「TNF-α」とも呼ぶ)の含有量が、それぞれ、10pg/mL以下、10pg/mL以下、20pg/mL以下である、前記〔1〕又は〔2〕記載の血液由来成長因子含有組成物;
〔4〕 成長因子VEGFの質量を基準した、抗炎症性サイトカインIL-1Raの質量比が、1:1~50である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の血液由来成長因子組成物;
〔5〕 成長因子VEGFの質量を基準した、炎症性サイトカインIL-1βの質量比が、1:0.001~0.05である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の血液由来成長因子組成物;
〔6〕 凍結乾燥状態にある、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の血液由来成長因子組成物;
〔7〕 哺乳類の血液から血液由来成長因子組成物を調製する方法であって、金属イオンとキレート錯体を形成し得る抗凝固剤を前記血液に添加する工程と、前記抗凝固剤が添加された前記血液からバフィーコート成分を含む多血小板血漿を分離する工程と、前記多血小板血漿を凍結融解して活性化させる工程と、を含む方法;
〔8〕 前記抗凝固剤が、クエン酸、EDTA、又はこれらの塩を含む、前記〔7〕記載の方法;
〔9〕 前記血液から多血小板血漿を分離する工程が、前記血液について100~1000G、1~30分による第1の遠心分離処理を施して血漿画分及びバフィーコートを含む上層部を回収すること;及び、前記上層部について1000~2500G、1~30分による第2の遠心分離処理を施して血小板及びバフィーコート成分をペレット化する;上清を除去し、前記血小板及び前記バフィーコート成分を懸濁して前記多血小板血漿を得ること;を含む、前記〔7〕又は〔8〕記載の方法;
〔10〕 前記上層部を回収する工程において、全液量の体積を基準として、回収する体積比が、1:0.1~0.5である、前記〔9〕記載の方法;
〔11〕 前記上清を除去する工程において、ペレットの体積を基準として、体積比が1:1~10の体積量の上清を残しそれ以外を除去する、前記〔9〕又は〔10〕記載の方法;
〔12〕 前記多血小板血漿を凍結融解して活性化させる工程が、-200℃~-20℃、10分以上の処理による凍結と、その後の20℃~50℃、10分以上の処理による融解により行われる、前記〔7〕~〔11〕のいずれかに記載の方法;
〔13〕 前記多血小板血漿を分離する工程の前に、前記抗凝固剤を添加された血液を0~10℃で予冷蔵する工程をさらに含む、前記〔7〕~〔12〕のいずれかに記載の方法;
〔14〕 活性化された前記多血小板血漿を、孔径0.2~1μmのフィルターを用いて、活性した前記多血小板血漿に濾過処理を施す工程を更に含む、前記〔7〕~〔13〕のいずれかに記載の方法;
〔15〕 活性化された前記多血小板血漿を凍結乾燥する工程を更に含む前記〔7〕~〔14〕のいずれかに記載の方法
が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、創傷治癒や組織再生に対して効果的な血液由来成長因子含有組成物及び前記血液由来成長因子含有組成物の調製方法を提供することができる。更には、本発明によれば、投与時の強い痛みを緩和可能な血液由来成長因子含有組成物及び前記血液由来成長因子含有組成物の調製方法をも提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例6~10の血液由来成長因子含有組成物における成長因子と抗炎症性サイトカインの量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。以下、本実施形態に係る血液由来成長因子含有組成物の調製方法を説明し、次いで、前記調製方法により得られる、本実施形態に係る血液由来成長因子含有組成物を説明する。
【0011】
≪血液由来成長因子含有組成物の調製方法≫
本実施形態に係る血液由来成長因子含有組成物の調製方法は、哺乳類の血液から血液由来成長因子組成物を調製する方法であって、金属イオンとキレート錯体を形成し得る抗凝固剤を前記血液に添加する工程(以下、「添加工程」とも呼ぶ)と、前記抗凝固剤が添加された前記血液からバフィーコート成分を含む多血小板血漿を分離する工程(以下、「分離工程」とも呼ぶ)と、前記多血小板血漿を凍結融解して活性化させる工程(以下、「凍結融解工程」とも呼ぶ)と、を少なくとも含む方法である。ここで、「哺乳類の血液」とは、成長因子が含有されていれば特に制限されず、好ましくはヒト由来である。また、前記「哺乳類の血液」は好ましくは自己由来である。以下、上述した各工程について詳述する。
【0012】
<添加工程>
本実施形態の方法においては、金属イオンとキレート錯体を形成する抗凝固剤が添加された血液を使用する。抗凝固剤は、採取された血液に後から添加してもよいが、予め抗凝固剤を含む採血管又は採血バッグ等の容器に血液を採取することが望ましい。
【0013】
金属イオンとキレート錯体を形成する抗凝固剤としては、金属イオン(例えばカルシウムイオン)とキレート錯体を形成する化合物、例えば、ポリカルボン酸及びその塩が挙げられる。ポリカルボン酸としては、クエン酸及びEDTA等が挙げられる。ポリカルボン酸塩としては、クエン酸2Na(クエン酸塩)、EDTA-2K、及びEDTA-2Na等のEDTA塩が挙げられる。
【0014】
抗凝固剤は、固体のまま添加してもよいが、当該抗凝固剤を純水などの溶媒(生理学的に許容されるものが好ましい)に溶解させた溶液として添加してもよい。全血に抗凝固剤を添加した後のもの(全血+抗凝固剤、又は全血+抗凝固剤溶液)における抗凝固剤最終濃度は、クエン酸2Naの場合には、好ましくは0.5~1.5質量%、さらに好ましくは0.8~1.0質量%であり、EDTA-2Kの場合には、好ましくは0.5~2.0mg/mL、さらに好ましくは1.1~1.7mg/mLであり、EDTA-2Naの場合には、好ましくは0.5~2.0mg/mL、さらに好ましくは1.0~1.5mg/mLである。
【0015】
<予冷蔵工程>
本実施形態の方法は、金属イオンとキレート錯体を形成する抗凝固剤が添加された血液から多血小板血漿を分離する工程の前に、抗凝固剤が添加された血液を予冷蔵する工程をさらに含んでもよい。血液を予冷蔵する工程における冷蔵温度は、例えば、0~10℃である。血液を予冷蔵する工程の工程時間は、例えば、0時間超72時間以下である。当該工程時間の下限値は、30分以上、1時間以上、2時間以上、4時間以上、8時間以上としてもよい。当該工程時間の上限値は、60時間以下、48時間以下、36時間以下、24時間以下としてもよい。
【0016】
<分離工程>
本実施形態の方法は、抗凝固剤が添加された血液からバフィーコート成分を含む多血小板血漿を分離する工程を含む。ここで、「バフィーコート」とは、血液を遠心分離したとき赤血球と血漿画分の中間にできる白血球を多く含んだ薄く白い層を指す。また、「バフィーコート成分を含む」とは、バフィーコートの少なくとも一部を含むことを意味する。
【0017】
この分離工程の間において、血液及び多血小板血漿の温度は、4~25℃に制御することが好ましい。
【0018】
血液(全血)から多血小板血漿を分離する手段に制限はなく、公知の任意の手段が使用可能である。通常は、血液について比較的低速度の第1の遠心分離処理を施して、赤血球を含む画分と、バフィーコートと、多血小板血漿(PRP)と、少血小板血漿(platelet poor plasma)とに分離して、多血小板血漿が得られる。ここで、分離工程は、比較的低速度の第1の遠心分離処理と比較的高速度の第2の遠心分離処理を含むことが好適である。第1の遠心分離処理及び第2の遠心分離処理は、それぞれ独立して複数回実行してもよい。または、比較的低速度の第1の遠心分離処理単独によって多血小板血漿及びバフィーコートを取得してもよい。以下、第1の遠心分離処理、第2の遠心分離処理並びに血小板及びバフィーコート成分の濃縮・純化処理を詳述する。
【0019】
(第1の遠心分離処理)
比較的低速度の第1の遠心分離処理は、100~1000G(通常の遠心分離器においては200~2000rpm程度に相当)の遠心分離である。回転条件は、150~750G、200~500Gとしてもよい。処理時間は、1~30分、5~20分、10~15分としてもよい。
【0020】
比較的低速度の第1の遠心分離処理後、血漿画分全て(多血小板血漿及び少血小板血漿)及びバフィーコートを含む上層部を回収する。
【0021】
前記上層部を回収する工程は、赤血球を含む画分を(例えば視認上)可能な限り含まないように、任意の体積量を回収できる。具体的には、例えば、全液量の体積を基準として、回収する前記上層部の体積比が好ましくは1:0.1~0.5であり、より好ましくは1:0.2~0.5であり、さらに好ましくは1:0.3~0.5である。
【0022】
(第2の遠心分離処理)
血小板及びバフィーコート成分が、第1の遠心分離処理後に回収した前記上層部について比較的高速度の第2の遠心分離処理によってペレット化される。
【0023】
比較的高速度の第2の遠心分離処理は、1000~2500G(通常の遠心分離器においては2000~5000rpm程度に相当)の遠心分離である。回転条件は、1100~2000G、1200~1500Gとしてもよい。処理時間は、1~30分、5~20分、10~15分としてもよい。
【0024】
(血小板及びバフィーコート成分の純化・濃縮処理)
第2の遠心分離処理により得られたものから上清を除去し、その後、懸濁させることで、血小板及びバフィーコート成分を純化・濃縮することができる。ここで、上清を除去する工程では、任意の体積量を除去できる。具体的には、例えば、ペレットの体積を基準として、体積比が好ましくは1:1~10であり、より好ましくは1:1~5であり、さらに好ましくは1:1~3の体積量の上清を残しそれ以外を除去できる。
【0025】
<凍結融解工程>
本工程によって、多血小板血漿が活性化され、多数の成長因子及び抗炎症性サイトカインが放出される。
【0026】
多血小板血漿を活性化する方法として、薬剤添加が知られている。多血小板血漿を活性化する薬剤としては、一般的には、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウムイオン源化合物が挙げられる。本実施形態の方法においては、薬剤添加によらず、凍結融解により、多血小板血漿の活性化を達成できる。このため、カルシウムイオン源化合物の使用を極力減らし、添加物を最小限にできる。
【0027】
多血小板血漿の凍結は、多血小板血漿を凍結が起こる低温に暴露することにより行うことができる。具体的には、多血小板血漿を、例えば、-10℃以下、-20℃以下、-100℃以下、又は-200℃以下、好ましくは-20℃~-200℃の温度条件下に置くことにより凍結させることができる。これは液体窒素との接触やフリーザー中での保存によって実行されてもよい。
【0028】
多血小板血漿を凍結して血小板を活性化する工程の時間は、特に制限はない。当該凍結する工程時間は、1分以上、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、30分以上としてもよい。他方、180分以下、150分以下、90分以下、60分以下、50分以下、40分以下、30分以下としてもよい。具体的には、例えば、多血小板血漿を含む容器を液体窒素中に1分以上浸漬することにより凍結を実施することができる。
【0029】
多血小板血漿の融解は、多血小板血漿を融解が起こる温度に暴露することにより行うことができる。具体的には、凍結した多血小板血漿を、例えば、20℃以上、25℃以上、又は30℃以上、かつ50℃以下、40℃以下、又は38℃以下、好ましくは20℃~50℃の温度条件下に置くことにより融解を行うことができる。多血小板血漿を融解して血小板を活性化する工程の時間は、特に制限はない。当該融解する工程時間の下限値は、1分以上、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、30分以上としてもよい。他方、当該融解する工程時間の上限値は、180分以下、150分以下、90分以下、60分以下、50分以下、40分以下、30分以下としてもよい。具体的には、例えば、多血小板血漿を含む容器を室温で10分~30分静置することにより血小板を活性化することができる。
【0030】
活性化させた多血小板血漿に溶媒を添加して、再懸濁してもよい。再懸濁させる溶媒は、生理学的に許容されるものであれば任意である。例えば、血漿、生理食塩水、緩衝生理食塩水{例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)}、リンゲル液(例えば乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液)などが挙げられる。なお、いずれの溶媒に再懸濁させたいずれの血小板再懸濁液も、本明細書においては『多血小板血漿』と表現する。また濃度調整や添加剤の配合などを目的として、この再懸濁液に上記溶媒をさらに添加してもよく、添加後の液も『多血小板血漿』と表現する。
【0031】
<細胞除去工程>
本実施形態の方法は、多血小板血漿から血液細胞を除去する工程をさらに含んでもよい。
【0032】
この細胞除去工程の間において、多血小板血漿は4~25℃に制御することが好ましい。
【0033】
多血小板血漿は血小板を含んでいる。また、本実施形態の方法によると、当該多血小板血漿は、バフィーコート由来の白血球も含む。さらに、当該多血小板血漿は僅かな量の赤血球を含む場合もある。
【0034】
血液細胞を除去する手段は、例えば、加熱処理、酸処理、フィルタリング処理等が挙げられる。これらのうち、成長因子の変性を招くリスクが小さいことからフィルタリング処理が好ましい。すなわち本工程は、フィルタリング処理によって多血小板血漿から血液細胞を除去する濾過処理工程であることが好ましい。
【0035】
フィルタリング処理に使用するフィルターは、血液細胞を除去できるものであれば制限はない。血液細胞の大きさは、血小板が約2μmで最も小さいため、例えば、孔径が1μm以下、0.7μm以下、0.5μm以下のメンブレンフィルターを使用することができる。なお、メンブレンフィルターの孔径の下限値に制限はないが過度に小さいものは目詰まりを起こすリスクが大きくなる。そのため、孔径は0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上が好ましい。通常市販されているメンブレンフィルターのうち、この範囲を満たすものとしては孔径が約0.2μmのメンブレンフィルターと孔径が約0.45μmのメンブレンフィルターがある。本実施形態においてはいずれも使用可能であり、孔径が約0.45μmのメンブレンフィルターが最適なメンブレンフィルターである。
【0036】
フィルタリング処理は、前述のフィルターが設けられた遠心分離用チューブを用いた遠心分離によって実行されてもよい。この際の遠心分離は、例えば、800~1800G(通常の遠心分離器においては1500~4000rpm程度に相当)の遠心分離である。工程時間は、例えば、1~30分、5~15分、10分である。
【0037】
この処理の結果、フィルターを通過した、血液細胞を実質的に含まない多血小板血漿を得ることができる。
【0038】
<凍結乾燥工程>
本実施形態の方法は、多血小板血漿を凍結乾燥する工程をさらに含んでもよい。
【0039】
凍結乾燥の手法は、従来周知のタンパク質の凍結乾燥手法であれば特に制限はない。
【0040】
凍結乾燥は、多血小板血漿を冷凍処理し、その後真空凍結乾燥処理を行う。
【0041】
冷凍処理において、多血小板血漿の温度又は環境温度が-60℃以下、-70℃以下、又は-80℃以下になるように調節される。これは液体窒素との接触やフリーザー中での保存によって実行されてもよい。
【0042】
冷凍処理の実行時間は一瞬でもよい。通常は、多血小板血漿全てが確実に冷凍されるように冷凍処理の上述温度において6~24時間に亘って実行される。すなわち冷凍処理の開始時刻から真空凍結乾燥処理の開始時刻のインターバルは0~24時間又は6~24時間でもよい。
【0043】
真空凍結乾燥処理の温度条件は、特に制限はない。当該温度条件の上限値は、-30℃以下、-35℃以下、-40℃以下、-45℃以下としてもよい。下限値に特に制限はないが、-80℃以上、-75℃以上、-70℃以上、-65℃以上、-55℃以上、-50℃以上としてもよい。
【0044】
真空凍結乾燥処理の気圧条件は、特に制限はない。当該気圧条件の上限値は、20Pa以下、18Pa以下、16Pa以下、15Pa以下としてもよい。下限値は0Pa以上であり、1Pa以上、2Pa以上、3Pa以上、4Pa以上、5Pa以上としてもよい。
【0045】
真空凍結乾燥処理を実行する時間は、特に制限はなく、液量に応じた時間を設定し得る。当該凍結乾燥処理時間の下限値は、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、5時間以上、6時間以上、7時間以上、8時間以上としてもよい。他方、上限値は、24時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、8時間以下としてもよい。
【0046】
真空凍結乾燥処理を実行する手段は特に制限はなく任意の手段が使用される。例えば、FDU-1110(東京理化器械株式会社製)を用いて実行してもよい。
【0047】
真空凍結乾燥処理を終えると、ほぼ完全に乾燥した粒状又は粉末状の多血小板血漿を得ることができる。
【0048】
≪血液由来成長因子含有組成物≫
本実施形態に係る血液由来成長因子含有組成物は、哺乳類の血液から調製された血液由来成長因子含有組成物であって、特定の成長因子の含有量が極めて高い血液由来成長因子含有組成物である。当該血液由来成長因子含有組成物は液体、半固体、又は乾燥固体であってもよい。以下、含有成分について詳述する。
【0049】
<成長因子>
(VEGF)
本実施形態による血液由来成長因子含有組成物は、成長因子VEGFの含有量が少なくとも90pg/mL以上であり、好ましくは100pg/mL以上であり、より好ましくは200pg/mL以上であり、さらに好ましくは300pg/mL以上である。上限値は、血液を採取した哺乳類の個体差によって変わるが、例えば10000pg/mLである。ここで、本明細書及び本特許請求の範囲における「pg/mL」は、濾過処理工程後の多血小板血漿における濃度であり、又は凍結乾燥工程後の多血小板血漿を、溶媒1mLあたり300mg融解した多血小板血漿における濃度である。VEGFは、血小板にも含まれるが、バフィーコートに多く含まれる成長因子である。VEGFは血管新生作用があり、VEGFを多く含む血液由来成長因子含有組成物は、より高い創傷治癒効果が期待できる。また、当該組成物の乾燥質量に対する、VEGFの含有量(pg/乾燥物1g)は、好ましくは300pg/g以上であり、より好ましくは700pg/g以上であり、さらに好ましくは1000pg/g以上である。上限値は、血液を採取した哺乳類の個体差によって変わるが、例えば30000pg/gである。ここで、当該組成物が乾燥形態でない場合には、当該組成物の乾燥質量は、下記乾燥条件にて当該組成物を乾燥させた後のものの質量である。
(乾燥条件)
FDU-1110(東京理化器械株式会社製)を用いて、5Pa、-45℃の条件下、16時間に亘って、乾燥対象の組成物に対して真空凍結乾燥処理を施す。
【0050】
(他の成長因子)
本実施形態による血液由来成長因子含有組成物は、他の成長因子を含んでもよい。成長因子の種類は、特に限定されないが、例えば、血小板由来成長因子(例えばPDGF-AB及びPDGF-BB)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子(例えばTGF-β)、インスリン様成長因子(IGF)、肝細胞成長因子(HGF)である。
【0051】
<抗炎症性サイトカイン>
(1L-1Ra)
本実施形態による血液由来成長因子含有組成物は、抗炎症性サイトカインIL-1Raを含んでもよい。IL-1Raの含有量は、好ましくは100pg/mL以上であり、より好ましくは150pg/mL以上であり、さらに好ましくは200pg/mL以上である。上限値は、血液を採取した哺乳類の個体差によって変わるが、例えば50000pg/mLである。IL-1Raは主に白血球に含まれる。IL-1Raは、炎症性サイトカインIL-1α及びIL-1βのアンタゴニストとして作用し、炎症を抑制する。また、当該組成物の乾燥質量に対する、抗炎症性サイトカインIL-1Raの含有量(pg/乾燥物1g)は、好ましくは300pg/g以上であり、より好ましくは450pg/g以上であり、さらに好ましくは600pg/g以上である。上限値は、血液を採取した哺乳類の個体差によって変わるが、例えば150000pg/gである。ここで、当該組成物が乾燥形態でない場合には、当該組成物の乾燥質量は上記乾燥条件にて当該組成物を乾燥させた後のものの質量である。
【0052】
<炎症性サイトカイン>
本実施形態による血液由来成長因子含有組成物は、炎症性サイトカインIL-1β、IL-6及びTNF-αを含んでもよい。IL-1β及びIL-6の含有量はそれぞれ独立に、好ましくは10pg/mL以下であり、より好ましくは9.5pg/mL以下であり、さらに好ましくは9.0pg/mL以下である。TNF-αの含有量は、好ましくは20pg/mL以下であり、より好ましくは19pg/mL以下であり、さらに好ましくは18pg/mL以下である。これらの炎症性サイトカインの過剰な発現は、関節リウマチなどの疾患発症を招くおそれがある。本実施形態による血液由来成長因子含有組成物に含まれる炎症性サイトカインは上記範囲のような低濃度にすることで、人体に投与してもこのような副作用を引き起こしにくい。
また、当該組成物の乾燥質量に対する、IL-1β及びIL-6及びの含有量(pg/乾燥物1g)はそれぞれ独立に、好ましくは30pg/g以下であり、より好ましくは28pg/g以下であり、さらに好ましくは27pg/g以下である。さらに、当該組成物の乾燥質量に対する、TNF-αの含有量(pg/乾燥物1g)は、好ましくは60pg/g以下であり、より好ましくは57pg/g以下であり、さらに好ましくは54pg/g以下である。ここで、当該組成物が乾燥形態でない場合には、当該組成物の乾燥質量は上記乾燥条件にて当該組成物を乾燥させた後のものの質量である。
【0053】
<成分比>
(成長因子と抗炎症性サイトカイン)
本実施形態による血液由来成長因子含有組成物は、好適には、成長因子と抗炎症性サイトカインをバランスよく含む。具体的には、成長因子VEGFの質量を基準した、抗炎症性サイトカインIL-1Raの質量比が、好ましくは1:1~50であり、より好ましくは1:1~15であり、さらに好ましくは1:1~10である。このような比率で成長因子と抗炎症性サイトカインを含む血液由来成長因子含有組成物は、創傷治癒効果と炎症抑制効果を併せ持つため、人体に投与したときにより高い治療効果を奏する。
【0054】
(成長因子と炎症性サイトカイン)
本実施形態による血液由来成長因子含有組成物は、好適には、成長因子を多く含みつつ、炎症性サイトカインをほとんど含まない。具体的には、成長因子VEGFの質量を基準した、炎症性サイトカインIL-1βの質量比が、好ましくは1:0.001~0.05であり、より好ましくは1:0.001~0.03であり、さらに好ましくは1:0.001~0.01である。このような比率で成長因子と炎症性サイトカインを含む血液由来成長因子含有組成物は、人体に投与したときに炎症を引き起こしにくく、高い治療効果を奏する。
【0055】
≪凍結乾燥品≫
本実施形態による血液由来成長因子含有組成物は、凍結乾燥状態にあってもよい。
【0056】
<成長因子>
(VEGF)
本実施形態による凍結乾燥状態にある血液由来成長因子含有組成物は、成長因子VEGFの含有量が好ましくは300pg/g以上であり、より好ましくは700pg/g以上であり、さらに好ましくは1000pg/g以上である。上限値は、血液を採取した哺乳類の個体差によって変わるが、例えば30000pg/gである。
【0057】
(他の成長因子)
本実施形態による凍結乾燥状態にある血液由来成長因子含有組成物は、他の成長因子を含んでもよい。成長因子の種類は、特に限定されないが、例えば、血小板由来成長因子(例えばPDGF-AB及びPDGF-BB)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子(例えばTGF-β)、インスリン様成長因子(IGF)、肝細胞成長因子(HGF)である。
【0058】
<抗炎症性サイトカイン>
(1L-1Ra)
本実施形態による凍結乾燥状態にある血液由来成長因子含有組成物は、抗炎症性サイトカインIL-1Raを含んでもよい。IL-1Raの含有量は、好ましくは300pg/g以上であり、より好ましくは450pg/g以上であり、さらに好ましくは600pg/g以上である。上限値は、血液を採取した哺乳類の個体差によって変わるが、例えば150000pg/gである。
【0059】
<炎症性サイトカイン>
本実施形態による血液由来成長因子含有組成物は、炎症性サイトカインIL-1β、IL-6及びTNF-αを含み得る。IL-1β及びIL-6の含有量はそれぞれ独立に、好ましくは30pg/g以下であり、より好ましくは28pg/g以下であり、さらに好ましくは27pg/g以下である。また、TNF-αの含有量(pg/乾燥物1g)は、好ましくは60pg/g以下であり、より好ましくは57pg/g以下であり、さらに好ましくは54pg/g以下である。
【0060】
<成分比>
本実施形態による凍結乾燥状態にある血液由来因子含有組成物は、好適には、成長因子と抗炎症性サイトカインをバランスよく含む。具体的には、成長因子VEGFの質量を基準した、抗炎症性サイトカインIL-1Raの質量比が、好ましくは1:1~50であり、より好ましくは1:1~15であり、さらに好ましくは1:1~10である。また、当該血液由来成長因子含有組成物は、好適には、成長因子を多く含みつつ、炎症性サイトカインをほとんど含まない。具体的には、成長因子VEGFの質量を基準した、炎症性サイトカインIL-1βの質量比が、好ましくは1:0.001~0.05であり、より好ましくは1:0.001~0.03であり、さらに好ましくは1:0.001~0.01である。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、バフィーコート成分を含む血液由来成分を簡便に回収することができ、成長因子が飛躍的に増大し、ひいては創傷治癒や組織再生効果を奏する血液由来成長因子含有組成物を調製できる。
【0062】
本実施形態による血液由来因子含有組成物は再生医療等に使用でき、特に、PRP療法等に使用できる。
【実施例0063】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1~5の作製)
男性5人からそれぞれ約34mLの全血をACD溶液入り採血管(BDバイキュアナ採血管 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社#364606)に適宜採取した。これらを恒温槽において4℃で一晩(約16時間)冷蔵保存した。保存後、第1の遠心分離処理{1200rpm(280G相当)、10分間、24℃}を行い、上清である血漿(15mL:全液量の体積を基準として、回収した体積比は1:0.4)を回収した。この血漿について第2の遠心分離処理{2680rpm(1400G相当)、10分間、24℃}を行い、ペレットと上清に分離した。分離後、ペレットの体積を基準として、体積比が1:2となる上清は残し、それ以外の上清(血漿)を除去した。残った上清によってペレットを懸濁させ、懸濁液(多血小板血漿)を得た。
【0065】
この多血小板血漿を、-60℃環境下に10分間暴露し凍結させた後、取り出して37℃に設定したドライバス中に15分間静置することにより融解させた。融解後、多血小板血漿の安定化のために、乳酸リンゲル液(扶桑薬品工業株式会社製)をそれぞれ6.5mL添加し、再懸濁した。
【0066】
これをシリンジに移し替え、孔径0.45μmのメンブレンフィルターによってフィルタリングした。このフィルタリングによって多血小板血漿は、フィルター上に残留する血小板などの細胞と、フィルターを通過した多血小板血漿とに分離された。当該多血小板血漿をバイアルに移して-60℃で冷凍処理を施し、同温度にて24時間凍結保存した。
【0067】
各バイアルについて、FDU-1110(東京理化器械株式会社製)を用いて、約5Pa、約-45℃の条件下、約16時間に亘って真空凍結乾燥処理を施した。こうして実施例1~5の試料を得た。
【0068】
(実施例6~10の作製)
男性1人から約85mLの全血をACD溶液入り採血管に採取し、5本に分注した。こうして検体6~10を得た。その後、検体7及び8は、冷蔵庫において4℃で、それぞれ約24時間及び約48時間に亘り冷蔵した。また、検体9及び10は、室温(25℃)で、それぞれ約24時間及び約48時間に亘り静置した。これら検体6~10について、実施例1~5と同様に、多血小板血漿を回収する工程、凍結融解し活性化する工程及び、凍結乾燥する工程を施し、実施例6~10の試料を得た。
【0069】
(各因子の測定)
実施例1~5の試料について乾燥物300mgに対して注射用水を1mL加え融解し、ELISA法によって成長因子、抗炎症性サイトカイン、及び炎症性サイトカインの量/濃度を解析した。その結果を表1に示す。VEGF、IL-1Ra、IL-1β、IL-6及びTNF-αの含有量はそれぞれ100pg/mL以上、100pg/mL以上、10pg/mL以下、10pg/mL以下及び20pg/mL以下であった。
また、これより算出された成長因子、抗炎症性サイトカイン、及び炎症性サイトカインの量/乾燥物(1g)の結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
実施例1~5の試料についての前記解析した結果に基づき、成長因子VEGFの量を基準としたときの各サイトカイン量比を表3に示す。
【0073】
【0074】
(予冷蔵による影響の確認)
実施例6~10の試料について、乾燥物300mgに対して注射用水を1mL加え融解し、ELISA法によって成長因子(VEGF)、抗炎症性サイトカイン(IL-1Ra)の量/濃度を解析した。採血後、予冷蔵を経ずに作製したもの(実施例6)を100%としたときの各サイトカイン量比を
図1に示す。4℃で24時間(実施例7)又は48時間(実施例8)予冷蔵した場合、各因子の含有量がIL-1Raは約500%、VEGFは約200%に増加していた。一方、予冷蔵に代えて、室温に24時間(実施例9)又は48時間(実施例10)静置した場合は、各因子の顕著な増加は確認されなかった。
前記多血小板血漿を凍結融解して活性化させる工程が、-200℃~-20℃、10分以上の処理による凍結と、その後の20℃~50℃、10分以上の処理による融解により行われる、請求項1又は2記載の方法。