IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大川原製作所の特許一覧 ▶ 株式会社タクマの特許一覧

特開2022-175968横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法
<>
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図1
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図2
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図3
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図4
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図5
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図6
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図7
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図8
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図9
  • 特開-横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175968
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/32 20060101AFI20221117BHJP
   F26B 3/24 20060101ALI20221117BHJP
   F26B 13/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F26B17/32 Q
F26B17/32 A
F26B3/24
F26B13/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082799
(22)【出願日】2021-05-14
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳身
(72)【発明者】
【氏名】三好 淳
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 遼
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 麻美
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 拓音
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥也
(72)【発明者】
【氏名】松村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広希
(72)【発明者】
【氏名】宮川 透
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩幹
(72)【発明者】
【氏名】渥美 幸也
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA06
3L113AB05
3L113AC05
3L113AC40
3L113AC48
3L113AC49
3L113AC58
3L113AC61
3L113AC68
3L113BA02
3L113BA37
3L113CB29
3L113CB34
3L113DA01
3L113DA07
(57)【要約】
【課題】 横型連続伝導伝熱式乾燥機の後段に、横型連続伝導伝熱式乾燥機から排出された乾燥品を燃料とする燃焼炉等が配された施設等において、横型連続伝導伝熱式乾燥機への被処理物の投入量を一定に保つことができる、新規な横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法の開発を技術課題とした。
【解決手段】 本体シェル10内に設置した温度センサ13により測定された被処理物Pの品温をもとに状態解説を行い、状態解説に応じたモード毎に予め設定された投入口101に、予め設定された量の被処理物Pを投入する運転を行い、本体シェル10への被処理物Pの単位時間当たりの投入量を一定に保つようにしたことを特徴として成る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱部材を具えた軸体を本体シェル内に配し、この軸体の内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、
前記本体シェル内に投入した被処理物を、本体シェル内に滞留させつつ前記軸体とともに回転する伝熱部材に接触させて被処理物の乾燥品を得る横型連続伝導伝熱式乾燥機において、
前記伝熱部材として、熱管束が具えられ、
また前記本体シェル上部の複数個所に投入口を形成するとともに、これら投入口の下方の本体シェル内に温度センサが設置され、
前記投入口の一つが、排出口付近に形成されていることを特徴とする横型連続伝導伝熱式乾燥機。
【請求項2】
伝熱部材を具えた軸体を本体シェル内に配し、この軸体の内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、
前記本体シェル内に投入した被処理物を、本体シェル内に滞留させつつ前記軸体とともに回転する伝熱部材に接触させて被処理物の乾燥品を得る横型連続伝導伝熱式乾燥機において、
前記伝熱部材は、軸体の長手方向に沿って具えられた複数のパドルであり、
また前記本体シェル上部の複数個所に投入口を形成するとともに、これら投入口の下方の本体シェル内に温度センサが設置され、
前記投入口の一つが排出口付近に形成されていることを特徴とする横型連続伝導伝熱式乾燥機。
【請求項3】
伝熱部材を具えた軸体を本体シェル内に配し、この軸体の内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、
前記本体シェル内に投入した被処理物を、本体シェル内に滞留させつつ前記軸体とともに回転する伝熱部材に接触させて被処理物の乾燥品を得る横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転において、
前記本体シェル上部の複数個所に投入口を形成するとともに、これら投入口の下方の本体シェル内に温度センサを設置し、
これら温度センサにより測定された被処理物の品温をもとに状態解説を行い、
得られた状態解説に応じたモード毎に、予め設定された投入口に、予め設定された量の被処理物を投入する運転を行い、
本体シェル内での被処理物の水分を過乾燥状態としつつ、
更に排出口付近に形成された投入口から被処理物を投入することにより、
本体シェルから排出される乾燥品の水分値を、横型連続伝導伝熱式乾燥機の後段に設置された設備の許容範囲内に変化させることにより、
本体シェルへの被処理物の単位時間当たりの投入量を一定に保つようにしたことを特徴とする横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項4】
前記予め設定された投入口に、予め設定された量の被処理物を投入するにあたっては、供給コンベヤまたはポンプによる所望の投入口への供給時間をタイマーにより設定することを特徴とする請求項3記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項5】
前記状態解説に応じたモードは、投入口直下の前後の温度を計測する投入口への投入割合を増減させ、
この増減に応じて、排出口付近に形成された投入口への投入量を増減させる設定が成されたものであることを特徴とする請求項3または4いずれか記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項6】
前記状態解説は、温度センサの検出値が当てはまる温度条件をもとに温度区分が決定され、この温度区分に対応して決定されるものであり、
各状態解説に応じて予めモードが設定されていることを特徴とする請求項3、4または5いずれか記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項7】
前記投入口の内、特定の投入口への供給量については、全てのモードにおいて同じ値とすることを特徴とする請求項3、4、5または6いずれか記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項8】
前記排出口付近に形成された投入口への供給量については、各モード内においては全て同じ値とすることを特徴とする請求項3、4、5、6または7いずれか記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項9】
前記横型連続伝導伝熱式乾燥機は、伝熱部材として、熱管束を具えた装置であることを特徴とする請求項3、4、5、6、7または8記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項10】
前記排出口付近に形成された投入口は、熱管束の終端部に設けられる鏡板の上方に形成されたものであることを特徴とする請求項9記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項11】
前記横型連続伝導伝熱式乾燥機は、伝熱部材として、軸体の長手方向に沿って複数のパドルを具えた装置であることを特徴とする請求項3、4、5、6、7または8いずれか記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は泥状・ケーク状・粉粒状等の材料の乾燥に好適な横型連続伝導伝熱式乾燥機に関するものであって、特に被処理物の投入量を一定に保つことのできる横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、環境保全の取り組みが盛んになってきており、企業等にあっては、生ごみ、食品加工残渣等の一般廃棄物や、下水汚泥等を乾燥・濃縮して、減量・腐敗防止を図ったうえで再資源化や処分を行っている。
【0003】
このような汚泥等の乾燥に供される装置の一つとして、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′がある。この装置は例えば図10に示すように、本体シェル10′内に多管式加熱管11′が具えられ、この多管式加熱管11′を、その内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、このものに被処理物Pを接触させて水分を蒸発させる装置である(例えば特許文献1参照)。
そして投入口101′から本体シェル10′内に供給された被処理物Pは、リフタ117′によって掻き上げられ、乾燥が進行しながら溢出口102′側に移動するものであり、乾燥品Dとなった状態で溢出口102′からダクト107′を経由して外部に排出されることとなる。
【0004】
このような横型連続伝導伝熱式乾燥機1′は、本体シェル10′の長手方向に沿って複数箇所に投入口101′(図10では投入口101a′~101e′の5箇所)が設けられており、各投入口101′への被処理物Pの投入配分を変更することにより、多管式加熱管11′に触れた状態で本体シェル10′内に滞留している被処理物Pの水分値を調整して、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′から排出される乾燥品Dの水分値を所定の値に保つ運転が行われている。
なお前記各投入口101′への被処理物Pの供給は、供給コンベヤ(図示省略)による送りと、供給コンベヤと投入口101′との間に設けられたダンパ(図示省略)の開閉操作によって行われるものであり、ダンパの開閉操作はタイマ設定にて行われている。
そしてこのタイマ設定については、オペレータが本体シェル10′内に設置された温度センサ(図示省略)からの情報を元に運転状態を確認し、設定値の変更を行っている。
【0005】
またこのようなタイマ設定の変更による運転中に乾燥不能となる事態が発生した場合は、オペレータが被処理物Pの投入量設定を下げて運転を継続しているが、見掛密度、水分変動等により総括伝熱係数が下がり、乾燥機内滞留品水分が上昇し、付着が生じて乾燥不能となった場合には、被処理物Pの投入を休止し、乾燥機内滞留品を加熱し、運転可能な水分まで乾燥させた後、再投入することが行われている。
【0006】
そしてこのような横型連続伝導伝熱式乾燥機1′の運転に際して、その後段に、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′から排出された乾燥品Dを燃料とする燃焼炉等が配される場合には、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′の運転状況に応じて、燃焼炉等の稼働率が低下してしまうこととなる。
【0007】
なお上述のような既存の横型連続伝導伝熱式乾燥機1′では、溢出口102′での被処理物Pのショートパス防止のため、溢出口102′より一定の距離(1000mm程度)離したところに最下流側の投入口101e′が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-331210
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような背景からなされたものであって、横型連続伝導伝熱式乾燥機の後段に、横型連続伝導伝熱式乾燥機から排出された乾燥品を燃料とする燃焼炉等が配された施設等において、乾燥品の水分を、後段設備の許容範囲内にて変化させ、横型連続伝導伝熱式乾燥機への被処理物の投入量を一定に保つことができる、新規な横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機は、伝熱部材を具えた軸体を本体シェル内に配し、この軸体の内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に投入した被処理物を、本体シェル内に滞留させつつ前記軸体とともに回転する伝熱部材に接触させて被処理物の乾燥品を得る横型連続伝導伝熱式乾燥機において、前記伝熱部材として、熱管束が具えられ、また前記本体シェル上部の複数個所に投入口を形成するとともに、これら投入口の下方の本体シェル内に温度センサが設置され、前記投入口の一つが、排出口付近に形成されていることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項2記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機は、伝熱部材を具えた軸体を本体シェル内に配し、この軸体の内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に投入した被処理物を、本体シェル内に滞留させつつ前記軸体とともに回転する伝熱部材に接触させて被処理物の乾燥品を得る横型連続伝導伝熱式乾燥機において、前記伝熱部材は、軸体の長手方向に沿って具えられた複数のパドルであり、また前記本体シェル上部の複数個所に投入口を形成するとともに、これら投入口の下方の本体シェル内に温度センサが設置され、前記投入口の一つが排出口付近に形成されていることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項3記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、伝熱部材を具えた軸体を本体シェル内に配し、この軸体の内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に投入した被処理物を、本体シェル内に滞留させつつ前記軸体とともに回転する伝熱部材に接触させて被処理物の乾燥品を得る横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転において、前記本体シェル上部の複数個所に投入口を形成するとともに、これら投入口の下方の本体シェル内に温度センサを設置し、これら温度センサにより測定された被処理物の品温をもとに状態解説を行い、得られた状態解説に応じたモード毎に、予め設定された投入口に、予め設定された量の被処理物を投入する運転を行い、本体シェル内での被処理物の水分を過乾燥状態としつつ、更に排出口付近に形成された投入口から被処理物を投入することにより、本体シェルから排出される乾燥品の水分値を、横型連続伝導伝熱式乾燥機の後段に設置された設備の許容範囲内に変化させることにより、本体シェルへの被処理物の単位時間当たりの投入量を一定に保つようにしたことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項4記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3記載の要件に加え、前記予め設定された投入口に、予め設定された量の被処理物を投入するにあたっては、供給コンベヤまたはポンプによる所望の投入口への供給時間をタイマーにより設定することを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項5載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3または4いずれか記載の要件に加え、前記状態解説に応じたモードは、投入口直下の前後の温度を計測する投入口への投入割合を増減させ、この増減に応じて、排出口付近に形成された投入口への投入量を増減させる設定が成されたものであることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項6記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3、4または5いずれか記載の要件に加え、前記状態解説は、温度センサの検出値が当てはまる温度条件をもとに温度区分が決定され、この温度区分に対応して決定されるものであり、各状態解説に応じて予めモードが設定されていることを特徴として成るものである。
【0016】
更にまた請求項7記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3、4、5または6いずれか記載の要件に加え、前記投入口の内、特定の投入口への供給量については、全てのモードにおいて同じ値とすることを特徴として成るものである。
【0017】
更にまた請求項8記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3、4、5、6または7いずれか記載の要件に加え、前記排出口付近に形成された投入口への供給量については、各モード内においては全て同じ値とすることを特徴として成るものである。
【0018】
更にまた請求項9記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3、4、5、6、7または8いずれか記載の要件に加え、前記横型連続伝導伝熱式乾燥機は、伝熱部材として熱管束を具えた装置であることを特徴として成るものである。
【0019】
更にまた請求項10記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、請求項9記載の要件に加え、前記排出口付近に形成された投入口は、熱管束の終端部に設けられる鏡板の上方に形成されたものであることを特徴として成るものである。
【0020】
更にまた請求項11記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3、4、5、6、7または8いずれか記載の要件に加え、前記横型連続伝導伝熱式乾燥機は、伝熱部材として、軸体の長手方向に沿って複数のパドルを具えた装置であることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0021】
まず請求項1記載の発明によれば、本体シェル内での被処理物の水分を過乾燥状態とすることにより、伝熱部材としての熱管束への被処理物の付着を確実に防止するとともに、乾燥品水分値を後段に設けられる機器の許容範囲内に変化させることにより、横型連続伝導伝熱式乾燥機への被処理物の投入量を一定に保つ運転が可能となり、後段に横型連続伝導伝熱式乾燥機から排出された乾燥品を燃料とする燃焼炉等が配された施設に、問題なく適用することができる。
また熱管束への被処理物の付着を確実に回避することができる。
【0022】
また請求項2記載の発明によれば、本体シェル内での被処理物の水分を過乾燥状態とすることにより、伝熱部材としてのパドルへの被処理物の付着を確実に防止するとともに、乾燥品水分値を後段に設けられる機器の許容範囲内に変化させることにより、横型連続伝導伝熱式乾燥機への被処理物の投入量を一定に保つ運転が可能となり、後段に横型連続伝導伝熱式乾燥機から排出された乾燥品を燃料とする燃焼炉等が配された施設に、問題なく適用することができる。
【0023】
また請求項3記載の発明によれば、本体シェル内での被処理物の水分を過乾燥状態とすることにより、伝熱部材への被処理物の付着を確実に防止するとともに、乾燥品水分値を後段に設けられる機器の許容範囲内に変化させることにより、横型連続伝導伝熱式乾燥機への被処理物の投入量を一定に保つことができ、後段に設けられる機器の運転に支障をきたしてしまうことを回避することができる。
【0024】
また請求項4記載の発明によれば、各投入口への被処理物に供給を、オペレータが変わった場合であっても常に適切なものとすることができる。
【0025】
また請求項5記載の発明によれば、例えば前方側から1~3番目の投入口への被処理物の投入割合を増減させるのに応じて、例えば最後方の投入口への被処理物の投入割合を増減させることにより、乾燥品水分値を所望の値に調節することができる。
【0026】
また請求項6記載の発明によれば、状態解説を細分化されたものとし、各状態解説に応じて予め設定されるモードを細分化されたものとして、状況に応じてより繊細な乾燥処理を実現することができる。
【0027】
更にまた請求項7、8記載の発明によれば、制御を過度に複雑化させることなく、横型連続伝導伝熱式乾燥機への被処理物の投入量を一定に保つことができる。
【0028】
更にまた請求項9記載の発明によれば、伝熱部材として熱管束を具えた横型連続伝導伝熱式乾燥機を、その後段に、横型連続伝導伝熱式乾燥機から排出された乾燥品を燃料とする燃焼炉等が配された施設に、問題なく適用することができる。
【0029】
更にまた請求項10記載の発明によれば、熱管束への被処理物の付着を確実に回避することができる。
【0030】
更にまた請求項11記載の発明によれば、伝熱部材としてパドルを具えた横型連続伝導伝熱式乾燥機を、その後段に、横型連続伝導伝熱式乾燥機から排出された乾燥品を燃料とする燃焼炉等が配された施設に、問題なく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機並びに燃焼炉を示す骨格図である。
図2】本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部破断して示す側面図である。
図3】投入口と本体シェル内に配される温度センサとの位置関係を説明するための縦断面図である。
図4】他の実施例で示す横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部破断して示す側面図である。
図5】他の実施例で示すパドルタイプの横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部破断して示す側面図及び横断面図である。
図6】温度条件を示す表である。
図7】モード、状態解説、温度区分及び各投入口への被処理物の投入量割合(%)を示した表である。
図8】モード、状態解説、温度区分及び各投入口への被処理物の投入量割合(%)を示した表である。
図9】モード、状態解説、温度区分及び各投入口への被処理物の投入量割合(%)を示した表である。
図10】既存の横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機並びにその運転方法の最良の形態は以下の実施例に示すとおりであるが、この実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0033】
以下、本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機1及び周辺機器について説明した後、その運転方法について説明する。
まず前記横型連続伝導伝熱式乾燥機1は、泥状・ケーク状・粉粒状等の被処理物Pの乾燥に好適な装置であって、被処理物Pに含まれる水分等の揮発分を蒸発させながら滞留させることにより乾燥品Dを得るための装置である。このものは図1~3に示すように、機枠F上に具えられた本体シェル10内に多管式加熱管11が具えられ、この多管式加熱管11を、その内部に加熱媒体たる蒸気を流すとともに回転させ、被処理物Pを本体シェル10内に滞留させつつ多管式加熱管11に接触させて乾燥を行う乾燥機である。
【0034】
前記本体シェル10は、一例として長楕円状の横断面を有する中空部材であり、投入口101、溢出口102、キャリヤガス口103、排気口104が形成される。
以下、本明細書においては、溢出口102側(図1~3中、右側)を「後」、「後方」と称し、その逆側を「前」、「前方」と称するものとする。
ここで前記投入口101は、本体シェル10上部の複数個所に形成されるものであり、一例として図2中、本体シェル10の前側上部に形成されるキャリヤガス口103の前方に第一の投入口101aが形成される。そしてキャリヤガス口103と、本体シェル10の後側上部に形成される排気口104との間に、第二の投入口101b、第三の投入口101c、第四の投入口101d及び第五の投入口101eが形成される。更に排気口104の後方に第六の投入口101fが形成される。
【0035】
またこの実施例では、前記第六の投入口101fは、後述する排出口107a付近、実質的には溢出口102付近であって、多管式加熱管11における後方側の鏡板112の上方に位置するように設置される。
なおこれら投入口101、キャリヤガス口103及び排気口104の設置個所並びに排気口104の数については、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更することができるものであり、この変更例については後ほど〔他の実施例〕において示すこととする。
【0036】
そして前記投入口101の上方には、一例としてトラフ120内にスクリュー121が設けられた供給コンベヤ12が配されるものであり、トラフ120の下部に形成される排出口122a~122fと、投入口101a~101fとが、供給管123a~123fによって接続される。
また供給管123a~123fのうち、供給管123b~123eには、その内部にダンパ124b~124eが具えられている。
そしてトラフ120上部に形成された投入口125から供給コンベヤ12に投入された被処理物Pは、ダンパ124b~124eが閉じられた状態で、スクリュー121が正転することにより、排出口122aから供給管123aを通じて投入口101aに投入され、ここから本体シェル10内に投入される。一方、ダンパ124b~124eが閉じられた状態で、スクリュー121が逆転することにより、被処理物Pは排出口122fから供給管123fを通じて投入口101fに投入され、ここから本体シェル10内に投入される。
なお投入口101b~101eのいずれかに被処理物Pを投入する場合には、ダンパ124b~124eのうちの所望のものを開放し、スクリュー121を適宜正逆転させることにより投入することができる。
なおスクリュー121の正転や逆転、ダンパ124b~124eの開閉動作は、図示はしないが、制御盤内の例えばプログラマブルロジックコントローラー(以下、PLCと略す)を用いて制御される。また、このPLC内に設定されるタイマー機能により、スクリュー121の正転や逆転の時間、ダンパ124b~124eの開閉動作時間が設定される。具体的なタイマーに設定される時間は、被処理物Pの供給量や供給コンベヤ12の仕様により変更して設定されるものである。また後述する被処理物Pの投入量の%表示は、各タイマーの時間設定により各投入口101a~101fから投入される被処理物Pの実質的な重量を%で表している。
【0037】
また前記本体シェル10及び多管式加熱管11は、水平な状態で機枠Fに設置されるか、または溢出口102側がいくぶん低くなるように傾斜して機枠Fに設置される。
更にまた前記本体シェル10は二重ジャケット構造とされ、投入口101a付近に形成される蒸気供給口105から、溢出口102の下方に形成されるドレン口106に至る蒸気の通過経路が形成されるものであり、本体シェル10内を昇温することができるような構成が採られている。なお、このような二重ジャケット構造に替えてトレース配管等を設置することもできる。
【0038】
また前記溢出口102は図2、3に示すように、本体シェル10に形成された方形の開口部を、下部から上部に向かって順に、幅十数cm程度の複数の板材102bで塞ぐことにより、所望の高さ寸法で形成することができるものである。
このような構成が採られることから、板材102bを高く積み上げれば、溢出口102の開口は上部に狭くしか開かないため、本体シェル10内の被処理物Pの滞留量が大きくなる。逆に板材102bが少なければ開口は広くなり、本体シェル10内の被処理物Pの滞留量は少なくなる。
【0039】
また前記溢出口102を覆うようにダクト107が外装されるものであり、このダクト107の下部に形成される排出口107aの前段にロータリーバルブ108が具えられる。もちろんこのロータリーバルブ108に替えて二重ダンパ排出装置等を具えるようにしてもよい。
【0040】
また前記多管式加熱管11は、複数のチューブを円筒状に配して成る伝熱部材としての熱管束116の両側部に鏡板112を具えるとともに、この鏡板112の中心に軸体113を具えて成り、前記機枠Fに具えた軸受ブロック114によって軸体113を回転可能に支持して成るものである。なお多管式加熱管11を回転させるための駆動装置として機枠Fに対してモータMが具えられる。
そして前記軸体113の両端にはロータリージョイント115(115a、115b)が取り付けられ、熱管束116と接続される。また軸体113と本体シェル10との間には、外気との遮断のためのシール機構が設けられている。
なお熱管束116の側周部には、複数のリフタ117及び適宜の角度を持たせた送り羽根118が取り付けられたアングル111が多数(この実施例では12本)具えられるものであり、これらによって被処理物Pは掻き上げられて前記熱管束116に接触するとともに投入口101側から溢出口102側に進むこととなる。
【0041】
更に本体シェル10の周面には、プローブ挿入管109a~109fが設けられるものであり、ここから本体シェル10内に、熱電対等の温度センサ13a~13fのプローブが挿入されて、本体シェル10内の各所における被処理物Pの温度を計測することができるように構成される。
なおこの実施例では、温度センサ13a及び温度センサ13bが、投入口101aの直下の前後位置に配されるようにした。また温度センサ13c及び温度センサ13dが、投入口101bの直下の前後位置に配されるようにした。
更にまた前記温度センサ13d及び温度センサ13eが、投入口101cの直下の前後位置に配されるようにした。
更にまた温度センサ13fが、投入口101eの直下と投入口101fの直下との間に配されるようにした。
【0042】
また図示は省略するが、横型連続伝導伝熱式乾燥機1には蒸気発生装置が併設されるものであり、U字形、直管形、ヘリカルコイル形等適宜の装置が適用される。そしてこの蒸気発生装置から前記横型連続伝導伝熱式乾燥機1におけるロータリージョイント115a及び蒸気供給口105に管路が接続される。
また、キャリヤガスがキャリヤガス口103より本体シェル10内に供給される。そして多管式加熱管11の加熱により被処理物Pから揮発する揮発成分は、前記キャリヤガスにより排気口104を経て本体シェル10外に運び去られる。キャリヤガスには、前記揮発成分の他に、被処理物Pから発生する微粉も含まれるため、排気口104以降のキャリアガスの流れる経路上に図示していない除塵装置を具えるようにしてもよい。
【0043】
そして投入口101に対して、被処理物Pを供給するための供給コンベヤ12が接続される。
なお、供給コンベヤ12とは別の態様として、汚泥を搬送可能なポンプ(以下、汚泥ポンプと称することがある)を適用することができる。詳しくは後述する投入口101a~101fに対して、それぞれに個別の汚泥ポンプを配管にて接続し、所定の汚泥ポンプを動作・停止させることで被処理物Pの供給・停止を行うようにできる。
もちろん汚泥ポンプを1台として、投入口101a~101fにそれぞれ分岐して接続する様に配管し、それぞれの配管経路に被処理物Pの供給・遮断が行える自動操作バルブを備えた態様としても構わない。
また前記排出口107aから排出された乾燥品Dの水分値を計測するための水分計( 不図示)が具えられる。
【0044】
更にまたこの実施例では図1に示すように、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の後段に、横型連続伝導伝熱式乾燥機1から排出された乾燥品Dを燃料とする燃焼炉2が配される。
なお燃焼炉2に投入される乾燥品Dの水分値の許容値は、概ね20~50%W.B.程度である。
【0045】
本発明の「横型連続伝導伝熱式乾燥機」並びに周辺機器は、一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置の作動態様と併せて本発明の「横型連続伝導伝熱式乾燥機」の運転方法について説明する。
【0046】
(1)乾燥機の準備
まず被処理物Pの投入に先立って、横型連続伝導伝熱式乾燥機1における多管式加熱管11及び本体シェル10を昇温しておくものであり、ロータリージョイント115a及び蒸気供給口105に加熱用蒸気を供給した後、モータMを起動して多管式加熱管11を回転させる。そしてロータリージョイント115aに供給された加熱用蒸気は熱管束116を通過しながら多管式加熱管11を昇温し、やがてドレンとなって他端側のロータリージョイント115bから外部に排出される。また蒸気供給口105に供給された加熱用蒸気は本体シェル10を昇温し、やがてドレンとなってドレン口106から外部に排出される。
なお、ロータリージョイント115b側の鏡板112内には図示していないサイホン管が具えられ、ロータリージョイント115bから排出されるドレンの流れる経路には図示していないスチームトラップが具えられる。また、ドレン口106から排出されるドレンの流れる経路にも図示していないスチームトラップが具えられる。
【0047】
(2)被処理物の乾燥
次いで投入口101に被処理物P(一例として70~80%W.B.)
を投入するものであり、このものは送り羽根118の作用によって投入口101側から溢出口102側に移動し、更にリフタ117によって掻き上げられて熱管束116等と接触し、この際、熱を受けて乾燥が進行するものである。このとき投入口101は多管式加熱管11の長手方向に沿って複数個所に形成されているため(投入口101a~101f)、多管式加熱管11の熱伝導面を有効に使用することができ、乾燥効率が高められる。なお鏡板112内は加熱用蒸気で満たされているため、鏡板112の表面部もまた被処理物Pの乾燥に有効に作用する。
また本体シェル10内に位置する被処理物Pを、中間製品P1とも称する。
そして乾燥が進んだ被処理物P(中間製品P1)は、通常、水分値約15%W.B.の乾燥品Dとなって溢出口102から流出し、排出口107aから外部に排出される。
【0048】
(3)中間製品の水分値の調節と乾燥品の水分値の調節
そして本発明では、従来の運転方法のように乾燥品Dの水分を一定に保つ運転ではなく、横型連続伝導伝熱式乾燥機1への被処理物Pの投入量を一定に保つことを重視した運転が行われる。
このため本発明では、被処理物P(中間製品P1)の送り及び乾燥品Dの排出を阻害する要因である、多管式加熱管11の伝熱面たる熱管束116への被処理物P(中間製品P1)の付着を防止するために、本体シェル10内における被処理物P(中間製品P1)の平均としての水分値を、付着が始まるとされる25%W.B.以下の過乾燥状態に保つような運転が行われるものである。
【0049】
具体的には、温度センサ13a~13eにより測定された被処理物P(中間製品P1)の品温をもとに「状態解説」(詳細については後述する)を行い、得られた「状態解説」に応じたモードに従い、予め設定された投入口101への被処理物Pの投入量を増減し、この増減に応じて第六の投入口101fの投入割合を増減させる運転を行うものである。
【0050】
そして本体シェル10内における熱管束116が位置する部位での被処理物P(中間製品P1)の水分値を過乾燥状態としつつ、溢出口102付近に形成された投入口101fから被処理物Pを投入することにより、本体シェル10内での付着を生じることなく、本体シェル10から排出される乾燥品Dの水分値を、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の後段に設置された燃焼炉2等の設備の許容範囲内(一例として20~50%W.B.)として排出可能であり、本体シェル10への被処理物Pの単位時間当たりの投入量を一定に保つようにするものである。
【0051】
ここで前記「状態解説」とは、本体シェル10内の長手方向に沿って分布する被処理物P(中間製品P1)の「温度条件」を解説するものであり、その基礎的情報として前記温度センサ13を「温度センサ13aと13b」、「温度センサ13cと13d」、「温度センサ13e」の3グループに分けて、これらグループ分けされた温度センサ13の検出値をもとに、被処理物P(中間製品P1)の「温度条件」を解説するようにしたものである。
ここで被処理物P(中間製品P1)の「温度条件」とは、「高温(H)」、「基準温度(N)」、「低温(L)」として分類されるものであり、一例として図6の表に示すように、「温度センサ13aと13b」では、T≧90℃に当てはまる場合を「高温(H)」、83℃<T<90℃に当てはまる場合を「基準温度(N)」、T≦83℃に当てはまる場合を「低温(L)」とした。そして「温度センサ13aと13b」の「温度条件」が「状態解説」で分類される各状態を判断(情報処理)する上での基礎的情報となる。
また「温度センサ13cと13d」では、T≧94℃に当てはまる場合を「高温(H)」、90℃<T<94℃に当てはまる場合を「基準温度(N)」、T≦90℃に当てはまる場合を「低温(L)」とした。そして「温度センサ13cと13d」の「温度条件」が「状態解説」で分類される各状態を判断(情報処理)する上での基礎的情報となる。
更にまた「温度センサ13e」では、T≧94℃に当てはまる場合を「高温(H)」、91℃<T<94℃に当てはまる場合を「基準温度(N)」、T≦91℃に当てはまる場合を「低温(L)」とした。そして「温度センサ13e」の「温度条件」が「状態解説」で分類される各状態を判断(情報処理)する上での基礎的情報となる。
【0052】
また前記「状態解説」を行うにあたって図7~9に示すように、「温度センサ13aと13b」及び「温度センサ13cと13d」については、前記「温度条件」をもとに決定される「温度区分」として、「共にH」、「一方がN、他方がN以上」、「少なくとも一方がL」の状態に分類される。
まず前記「共にH」とは、例えば温度センサ13aと13bの場合、いずれもが「温度条件」が「H」の状態であることを意味する。
また「一方がN、他方がN以上」とは、例えば温度センサ13aと13bの場合、いずれか一方が「N」の状態であり、もう一方が「N」または「H」の状態であることを意味する。
また「少なくとも一方がL」とは、少なくともいずれか一方が「L」の状態を意味する。
一方、「温度センサ13e」については、「温度条件」をもとに決定される「温度区分」として「H」、「N」、「L」の状態に分類される。
そしてこれら「温度区分」の組合せにより「状態解説」の各状態に分類される。
【0053】
そしてこの実施例では前記「状態解説」を、一例として図7~9に示すように、前記「状態解説」の判断材料の状態に応じて、「全て「H」 継続」、「全て「H」」、「二箇所「H」」、「一箇所「H」」、「基準状態」、「一箇所「H」、一箇所「L」」、「一箇所「L」」、「二箇所「L」」、「全て「L」」、「全て「L」 継続」として分類した。
より具体的に述べれば、例えば温度センサ13a、13bの温度区分が「共にH」であり、温度センサ13c、13dの温度区分が「共にH」であり、温度センサ13eが「NまたはL」である場合、「状態解説」は「2箇所H」に分類される。
【0054】
そしてこれらの各「状態解説」に対応して、モード(一例としてS継続、S、T、U、V、W、X、Y、Z、Z継続)が設定されるものであり、同一モードにおいては、温度区分が各パターンNо.で異なっていても、投入口101a~101eに投入される被処理物Pの合計は同じ値に設定されている。例えばUモードでは、投入口101a~101eに投入される被処理物Pの合計は、総投入量の86%となるように設定される。一方、投入口101fには、残りの被処理物P(総投入量の14%)が複数回に均等に分けられて投入される。
【0055】
(3-1)Vモード(基準状態)での運転
まず図8中、パターンNо.11は、「Vモード」(基準状態)での、投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量(%)を示したものである。
なお図7、8、9中においては、投入口101aを(a)と表記し、投入口101b~101fについても同様に(b)、(c)、(d)、(e)、(f)と表記した。
また「Vモード」では、横型連続伝導伝熱式乾燥機1への被処理物Pの投入量2920kg/h、被処理物Pの密度700kg/m3 、被処理物Pの水分値76%W.B.、1800sec/サイクルとした。
ここで1800sec/サイクルとは、図8中、パターンNо.11における例えば左端の投入口101aから右端の投入口101fに至るまでの一連の投入が1サイクルであり、この1サイクルに要する時間が1800secであることを意味する。
なお以下に詳しく述べるが、本実施例においては、Vモード以外の他のモードにおいても1サイクルの時間を1800secとした。もちろんモード毎に1サイクルの時間を設定変更することも可能である。
そして「Vモード」では、1サイクルで説明すれば、まず投入口101aに被処理物Pの17%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの3.2%を投入し、次いで投入口101dに被処理物Pの16%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの3.2%を投入し、次いで投入口101bに被処理物Pの20%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの3.2%を投入し、次いで投入口101eに被処理物Pの10%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの3.2%を投入し、次いで投入口101cに被処理物Pの21%を投入し、最後に投入口101fに被処理物Pの3.2%が投入される(合計100%)。
【0056】
そしてこのように投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量、順番を変化させることにより、排出口107aから排出される乾燥品Dの水分値は20~50%W.B.となるものの、この値は燃焼炉2の許容範囲内であり、本体シェル10への被処理物Pの単位時間当たりの投入量を2920kg/hと一定に保ったまま、乾燥品Dを途切れることなく燃焼炉2に供給(一例として1207kg/h)することが可能となる。
すなわちこの実施例では、水分値76%W.B.の被処理物Pを、横型連続伝導伝熱式乾燥機1における本体シェル10内に安定供給しながら、多管式加熱管11への付着が起きない過乾燥状態に被処理物P(中間製品P1)を維持して、20~50%W.B.の乾燥品Dとして燃焼炉2に安定供給することができる。
なお投入口101a~101fへの被処理物Pの投入順序については、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の構成や、被処理物Pの性状に応じて適宜変更されるものである。
【0057】
ここで本体シェル10内と被処理物P(中間製品P1)の関係について述べると、投入口101a~101cが設けられている本体シェル10内の範囲は、これらの投入口101a~101cに対応する形で設けられた温度センサ13a~13eの温度に応じて比較的ダイナミックに投入量を変化させることが可能な範囲であり、この下流側(溢出口102側)の範囲、すなわち投入口101d及び101eが設けられている範囲は、水分値を安定化させる目的で投入量を一定値に固定した範囲とすることが特に好ましい。
本実施例においては、モードに関らず、投入口101dへの投入は一例として16%、投入口101eへの投入は一例として10%に固定している。
【0058】
またここで特徴的であるのは、前述のダイナミックに投入量を変化させることが可能な範囲として、最も後方側であり排出口107a付近(実質的に溢出口102付近)に形成された投入口101fからの投入も含めることが可能な点である。
この投入口101fからの投入に関しては、投入口101f以外の投入口101a~101eから投入した後に必ず投入口101fからの投入を行い、投入口101fからの投入量は同じモード内においては常に同じ投入量とすることが、過度に制御を複雑化させることなく安定した水分の乾燥品Dを排出するのに特に好ましい。
これにより、横型連続伝導伝熱式乾燥機1への被処理物Pの投入量を一定に保つことができる。
【0059】
そして上述したVモード(基準状態)での運転を基準状態として、他のモードでは投入口101a、101b、101c、101fへの被処理物Pの投入量を増減するものである。もちろんこのアップダウン率については、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の構成や、被処理物Pの性状に応じて適宜変更されるものであるが、いずれのモードにおいても被処理物Pの全投入量は本実施例においては2620kg/hとされる。
なお、被処理物Pの物性や横型連続伝導伝熱式乾燥機1の構成によっては、Vモード時よりも本体シェル10内の中間製品P1の品温状態が高温と判断される例えばTモードであれば、Vモード時の全投入量よりも増加させた全投入量に設定変更しての制御を行うことも可能であり、あるいは、投入口101a、101b、101c、101fからの投入量だけを増加させるという設定変更も可能である。
逆にVモード時よりも品温状態が低温と判断される例えばXモードであれば、減少させた投入量に設定変更しての制御を行うことも可能であり、投入口101a、101b、101c、101fからの投入量だけを減少させるという設定変更も可能である。
【0060】
(3-2)S継続モードでの運転
次に図7に示すパターンNо.1、Nо.2は、「S継続モード」及び「Sモード」での、投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量(%)を示したものである。
そして「S継続モード」及び「Sモード」では、投入口101aに被処理物Pの19%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの2%を投入し、次いで投入口101dに被処理物Pの16%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの2%を投入し、次いで投入口101bに被処理物Pの22%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの2%を投入し、次いで投入口101eに被処理物Pの10%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの2%を投入し、次いで投入口101cに被処理物Pの23%を投入し、最後に投入口101fに被処理物Pの2%が投入される(合計100%)。
【0061】
そしてこのように投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量、順番を変化させることにより、排出口107aから排出される乾燥品Dの水分値は20~50%W.Bとなるものの、この値は燃焼炉2の許容範囲内であり、本体シェル10への被処理物Pの単位時間当たりの投入量を2920kg/hと一定に保ったまま、乾燥品Dを途切れることなく燃焼炉2に供給することが可能となる。
すなわちこの実施例でも、水分値76%W.B.の被処理物Pを、横型連続伝導伝熱式乾燥機1における本体シェル10内に安定供給しながら、多管式加熱管11への付着が起きない過乾燥状態に被処理物P(中間製品P1)を維持して、20~50%W.B.の乾燥品Dとして燃焼炉2に安定供給することができる。
【0062】
なお「S継続モード」と「Sモード」とでは、投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量(%)と、供給コンベヤ12の駆動時間または供給コンベヤ12の駆動時間及びダンパ124b~124eの開放時間、投入順序は全く同じであるが、「S継続モード」は温度センサ13a~13fの全ての温度がそれぞれに定められた所定温度を超える高温状態となった場合のモードであり、投入口101a~101eへの投入量と、被処理物Pの水分、乾燥品Dの水分から計算される蒸発量に見合った蒸気流量となるように、蒸気流量調整弁(不図示)が所定の低流量設定値に変更されて制御されるものである。
【0063】
(3-3)Tモードでの運転
また図7に示すパターンNо.3~Nо.7は「Tモード」での、投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量(%)を示したものである。
【0064】
そして一例として「温度センサ13aと13b」の温度区分「共にH」、「温度センサ13cと13d」の温度区分「共にH」、「温度センサ13e」の温度区分「NまたはL」となるパターンNо.3の「Tモード」では、投入口101aに被処理物Pの19%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの2.4%を投入し、次いで投入口101dに被処理物Pの16%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの2.4%を投入し、次いで投入口101bに被処理物Pの22%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの2.4%を投入し、次いで投入口101eに被処理物Pの10%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの2.4%を投入し、次いで投入口101cに被処理物Pの21%を投入し、最後に投入口101fに被処理物Pの2.4%が投入される(合計100%)。
【0065】
そしてこのように投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量、順番を変化させることにより、排出口107aから排出される乾燥品Dの水分値は20~50%W.Bとなるものの、この値は燃焼炉2の許容範囲内であり、本体シェル10への被処理物Pの単位時間当たりの投入量を2920kg/hと一定に保ったまま、乾燥品Dを途切れることなく燃焼炉2に供給することが可能となる。
すなわちこの実施例でも、水分値76%W.B.の被処理物Pを、横型連続伝導伝熱式乾燥機1における本体シェル10内に安定供給しながら、多管式加熱管11への付着が起きない過乾燥状態に被処理物P(中間製品P1)を維持して、20~50%W.B.の乾燥品Dとして燃焼炉2に安定供給することができる。
【0066】
(3-4)Z継続モードでの運転
また図9に示すパターンNо.27、Nо.28は、「Zモード」及び「Z継続モード」での、投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量(%)を示したものである。
そして「Zモード」及び「Z継続モード」では、投入口101aに被処理物Pの15%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの4.4%を投入し、次いで投入口101dに被処理物Pの16%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの4.4%を投入し、次いで投入口101bに被処理物Pの18%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの4.4%を投入し、次いで投入口101eに被処理物Pの10%を投入し、次いで投入口101fに被処理物Pの4.4%を投入し、次いで投入口101cに被処理物Pの19%を投入し、最後に投入口101fに被処理物Pの4.4%が投入される(合計100%)。
【0067】
そしてこのように投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量、順番を変化させることにより、排出口107aから排出される乾燥品Dの水分値は20~50%W.Bとなるものの、この値は燃焼炉2の許容範囲内であり、本体シェル10への被処理物Pの単位時間当たりの投入量を2920kg/hと一定に保ったまま、乾燥品Dを途切れることなく燃焼炉2に供給することが可能となる。
すなわちこの実施例でも、水分値76%W.B.の被処理物Pを、横型連続伝導伝熱式乾燥機1における本体シェル10内に安定供給しながら、多管式加熱管11への付着が起きない過乾燥状態に被処理物P(中間製品P1)を維持して、20~50%W.B.の乾燥品Dとして燃焼炉2に安定供給することができる。
【0068】
なお「Z継続モード」と「Zモード」とでは、投入口101a~101fへの被処理物Pの投入量(%)と、供給コンベヤ12の駆動時間または供給コンベヤ12の駆動時間及びダンパ124b~124eの開放時間、投入順序は全く同じであるが、「Z継続モード」においては、温度センサ13a~13fの全ての温度がそれぞれに定められた所定温度より低い低温状態となった場合のモードであり、投入口101a~101eへの投入量と、被処理物Pの水分、乾燥品Dの水分から計算される蒸発量に見合った蒸気流量となるように、蒸気の元圧を所定値まで上昇させる変更により制御されるものである。
【0069】
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、本発明の技術的思想の範囲内で以下に示すようは変更をすることも可能である。
まず横型連続伝導伝熱式乾燥機1の改変例について説明する
すなわち上記基本となる実施例では、第六の投入口101fは、多管式加熱管11における後方側の鏡板112の上方に位置するように設置されたが、図4に示すとともに図3中にも仮想線で示したように、投入口101fを、後方側の鏡板112の上方から若干前方にずれた位置に設置するようにしてもよい。
また図4に示すようにキャリヤガス口103を本体シェル10の後方側に設け、排気口104を本体シェル10の前方側に設けるようにしてもよい。
【0070】
また横型連続伝導伝熱式乾燥機1の形態としては、図5に示すように、伝熱部材として、軸体113の長手方向に沿って複数のパドル15を具えた、いわゆるパドルタイプの装置を採用することもできる。
この軸体113とパドル15は中空体であり、蒸気供給口105からの蒸気が軸体113を通じてパドル15内に供給されて被処理物Pを加熱するものである。
また、伝熱部材であるパドル15とは別の形態として、軸体113に連通する中空の円板も適用が可能である。
あるいはまた別の伝熱部材の形態の例として、軸体113に連通すると共に、軸体113の廻りにコイル状に設けたパイプを伝熱部材として利用する伝導伝熱乾燥機も適用が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 横型連続伝導伝熱式乾燥機
10 本体シェル
101 投入口
101a 投入口
101b 投入口
101c 投入口
101d 投入口
101e 投入口
101f 投入口
102 溢出口
102b 板材
103 キャリヤガス口
104 排気口
105 蒸気供給口
106 ドレン口
107 ダクト
107a 排出口
108 ロータリーバルブ
109a プローブ挿入管
109b プローブ挿入管
109c プローブ挿入管
109d プローブ挿入管
109e プローブ挿入管
109f プローブ挿入管
11 多管式加熱管
111 アングル
112 鏡板
113 軸体
114 軸受ブロック
115 ロータリージョイント
115a ロータリージョイント
115b ロータリージョイント
116 熱管束
117 リフタ
118 送り羽根
12 供給コンベヤ
120 トラフ
121 スクリュー
122a 排出口
122b 排出口
122c 排出口
122d 排出口
122e 排出口
122f 排出口
123a 供給管
123b 供給管
123c 供給管
123d 供給管
123e 供給管
123f 供給管
124b ダンパ
124c ダンパ
124d ダンパ
124e ダンパ
125 投入口
13 温度センサ
13a 温度センサ
13b 温度センサ
13c 温度センサ
13d 温度センサ
13e 温度センサ
13f 温度センサ
15 パドル
2 燃焼炉
D 乾燥品
F 機枠
P 被処理物
P1 中間製品
M モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10