IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一文機工株式会社の特許一覧

特開2022-176012コンデンサ放電型溶接装置及びスタッド溶接部の形成方法
<>
  • 特開-コンデンサ放電型溶接装置及びスタッド溶接部の形成方法 図1
  • 特開-コンデンサ放電型溶接装置及びスタッド溶接部の形成方法 図2
  • 特開-コンデンサ放電型溶接装置及びスタッド溶接部の形成方法 図3
  • 特開-コンデンサ放電型溶接装置及びスタッド溶接部の形成方法 図4
  • 特開-コンデンサ放電型溶接装置及びスタッド溶接部の形成方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176012
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】コンデンサ放電型溶接装置及びスタッド溶接部の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/20 20060101AFI20221117BHJP
   B23K 9/073 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B23K9/20 G
B23K9/20 F
B23K9/073 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021103643
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】594077367
【氏名又は名称】一文機工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 文一郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 朋紀
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA13
4E082BA01
(57)【要約】
【課題】溶接1サイクル毎にスタッドを1本ずつ溶接ガンのチャックに装填する作業が不要になるとともに、通電部材の接触部に付着したスパークによる汚れを速やかに、かつ効果的に除去できるコンデンサ放電型溶接装置を提供する。
【解決手段】溶接装置1は、ピン状のスタッド60複数本分以上の長さを有する線材8を引き出し可能に貯線する貯線部7と、線材8の先端8aの近傍に設けられ、線材8とコンデンサ31とを電気的に接続する通電部材40とを備え、通電部材40は、弾性力によって線材8に圧接しつつ、貯線部7から引き出される線材8と摺動接触する接触部42を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン状のスタッド複数本分以上の長さを有する線材の先端と母材との間に、コンデンサから出力される溶接電流によるアーク放電を生じさせて前記線材の先端を前記母材に溶接するコンデンサ放電型溶接装置であって、
前記線材を引き出し可能に貯線する貯線部と、
前記線材の被溶接部側の先端近傍に設けられ、前記線材の前記先端近傍と前記コンデンサとを電気的に接続する通電部材と、
を備え、
前記通電部材は、弾性力によって前記線材に圧接する接触部を有し、
前記接触部は、前記貯線部から引き出される線材と摺動接触することを特徴とするコンデンサ放電型溶接装置。
【請求項2】
前記通電部材は、前記線材を通過可能に保持することを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ放電型溶接装置。
【請求項3】
前記通電部材は、前記貯線部から引き出される線材が通過する筒状部を有し、
前記接触部は、前記筒状部内で前記線材に圧接し、
前記線材は、前記接触部と、前記接触部と対向する、前記筒状部の面部とで挟持されることを特徴とする請求項2に記載のコンデンサ放電型溶接装置。
【請求項4】
ピン状のスタッド複数本分以上の長さを有する線材を準備する工程と、
前記線材の被溶接部側の先端近傍に設けた通電部材を介して前記線材の前記先端と母材との間に、コンデンサからスイッチング手段を介して出力される溶接電流によるアーク放電を生じさせて前記線材の前記先端を前記母材に溶接する工程と、
前記母材に溶接された前記線材を所望のスタッド長に切断する工程と、
を備えたことを特徴とするスタッド溶接部の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母材にピン状のスタッドが溶接された溶接部を形成するのに好適なコンデンサ放電型溶接装置及びスタッド溶接部の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンデンサ放電(CD)型スタッド溶接装置として、ダクトやパネル材等の母材に断熱材や防音材等の被覆材を保持させるために、母材にピン状のスタッド(以下、「ピン状のスタッド」を単に「スタッド」とも称す。)を溶接するものが知られている。
【0003】
このコンデンサ放電型スタッド溶接装置は、溶接ガンの先端部に設けたチャックにピン状のスタッドを装填し、母材にスタッドの先端を圧接した後、母材とスタッドの先端との間にコンデンサから出力される溶接電流によるアーク放電を生じさせることで、母材の表面とスタッドの先端の両方を溶融しつつ、母材の表面にスタッドの先端を押し付けて瞬時に溶接するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-216947号公報
【特許文献2】特開平10-328838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたコンデンサ放電型スタッド溶接装置にあっては、スタッドを1本溶接する(溶接1サイクル)毎に溶接作業者が人手でスタッドを1本ずつ溶接ガンのチャックに装填しなければならず、このようなスタッドの装填作業が面倒であった。また、母材との接触面積を小さくしてアーク放電の発生を容易にするため、スタッドの先端が尖鋭化されている場合があり、スタッドの装填作業に注意を要していた。
【0006】
さらに、コンデンサから出力される溶接電流が大電流のため、溶接電流の通電によってチャックとスタッドとの間でスパークが発生し、電気的な接触部にスパークによって生じた焼け等の汚れが付着することがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために案出されたものであり、溶接1サイクル毎にスタッドを1本ずつ溶接ガンのチャックに装填する作業が不要になるとともに、電気的な接触部に付着したスパークによる汚れを速やかに、かつ、効果的に除去できるコンデンサ放電型溶接装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、溶接1サイクル毎にスタッドを1本ずつ溶接ガンのチャックに装填する作業が不要になるスタッド溶接部の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のコンデンサ放電型溶接装置は、
ピン状のスタッド複数本分以上の長さを有する線材の先端と母材との間に、コンデンサから出力される溶接電流によるアーク放電を生じさせて前記線材の先端を前記母材に溶接するコンデンサ放電型溶接装置であって、
前記線材を引き出し可能に貯線する貯線部と、
前記線材の被溶接部側の先端近傍に設けられ、前記線材の前記先端近傍と前記コンデンサとを電気的に接続する通電部材と、
を備え、
前記通電部材は、弾性力によって前記線材に圧接する接触部を有し、
前記接触部は、前記貯線部から引き出される線材と摺動接触することを特徴とする。
【0009】
本発明のコンデンサ放電型溶接装置によれば、ピン状のスタッド複数本分以上の長さを有する線材の先端を母材に溶接した後、母材に溶接された線材を所望のスタッド長に切断することで、母材に所望の長さのピン状のスタッドが溶接された溶接部が形成されるため、溶接1サイクル毎にスタッドを1本ずつ溶接ガンのチャックに装填する作業が不要になる。
【0010】
また、通電部材の接触部は、弾性力によって線材に圧接し、貯線部から引き出される線材と摺動接触するため、通電部材の接触部に付着したスパークによる汚れを速やかに除去できるとともに、1回の線材引き出し時に通過する線材が引き出し長さの全長にわたって接触部と摺動接触するため、スパークによる汚れを効果的に除去できる。
【0011】
本発明のコンデンサ放電型溶接装置においては、前記通電部材は、前記線材を通過可能に保持するように構成してもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、部品点数の削減を図ることができる。
【0013】
本発明のコンデンサ放電型溶接装置においては、前記通電部材は、前記貯線部から引き出される線材が通過する筒状部を有し、
前記接触部は、前記筒状部内で前記線材に圧接し
前記筒状部に挿通された線材は、前記接触部と、前記接触部と対向する、前記筒状部の面部とで挟持されるように構成してもよい。
【0014】
このような構成とすることにより、線材がより確実に保持されるとともに、線材とコンデンサとの間の電気的な接続をより確実に行うことができる。
【0015】
本発明のスタッド溶接部の形成方法は、
ピン状のスタッド複数本分以上の長さを有する線材を準備する工程と、
前記線材の被溶接部側の先端近傍に設けた通電部材を介して前記線材の前記先端と母材との間に、コンデンサからスイッチング手段を介して出力される溶接電流によるアーク放電を生じさせて前記線材の前記先端を前記母材に溶接する工程と、
前記母材に溶接された前記線材を所望のスタッド長に切断する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明のスタッド溶接部の形成方法によれば、ピン状のスタッド複数本分以上の長さを有する線材の先端を母材に溶接した後、母材に溶接された線材を所望のスタッド長に切断することで、母材に所望の長さのピン状のスタッドが溶接された溶接部が形成されるため、溶接1サイクル毎にスタッドを1本ずつ溶接ガンのチャックに装填する作業が不要になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコンデンサ放電型溶接装置によれば、溶接1サイクル毎にスタッドを1本ずつ溶接ガンのチャックに装填する作業が不要になるとともに、通電部材の接触部に付着したスパークによる汚れを速やかに、かつ、効果的に除去できる。
また、本発明のスタッド溶接部の形成方法によれば、溶接1サイクル毎にスタッドを1本ずつ溶接ガンのチャックに装填する作業が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るコンデンサ放電型溶接装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
図2】通電部材の模式的な断面図である。
図3】通電部材の角筒部内に線材が挿通された状態を示す模式的な断面図である。
図4】通電部材の角筒部内に線材が挿通された状態を示す模式的な平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るコンデンサ放電型溶接装置を用いたスタッド溶接部の形成方法の一例を示す模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンデンサ放電型溶接装置(以下、「溶接装置」とも称す。)1は、被溶接部材である線材8を保持するとともに、母材10に溶接電流を給電する溶接ガン2と、この溶接ガン2に溶接電流を出力する装置本体(電源装置)3とを備えており、溶接ガン2は、ガンケーブル4、制御ケーブル5及びアースケーブル6を介して装置本体3に接続されている。なお、線材8の詳細については後述する。
【0020】
溶接ガン2は、円筒状のハウジング21と、このハウジング21の後端側下部に一体的に設けられたグリップ22とを備えており、このグリップ22には、装置本体3に溶接電流の出力を指令するトリガースイッチ23が設けられている。また、このトリガースイッチ23には制御ケーブル5が接続されている。
【0021】
ハウジング21の後端には、貯線部を構成する線材カートリッジ7が着脱自在に取り付けられており、この線材カートリッジ7には、被溶接部材である線材8が引き出し可能に密に巻かれて収容されている。
【0022】
線材8は、例えば、外周にネジ部のない直径1.6mmの真鍮製で、長さ約40mmのピン状のスタッド50本分程度の長さを有しており、線材カートリッジ7から引き出された後、ハウジング21内を通過してハウジング21の先端から外部に引き出されるように構成されている。なお、線材8の直径や材質等は、本実施形態のものに限定されるものではなく、母材との溶接適合性等を考慮して任意に決定できる。また、線材8として外周にネジ部のある線材を用いてもよい。
【0023】
溶接ガン2のハウジング21の先端には、溶接時に母材10に圧接して母材10と電気的に接続される棒状電極20が取り付けられている。この棒状電極20は、軸方向に進退可能で、かつ、圧縮コイルスプリング(不図示)の弾性力によって図中左方向に加圧されて、その先端が母材10に圧接するように構成されている。また、棒状電極20は、装置本体(電源装置)3に設けたコンデンサ31の正極側にガンケーブル4を介して接続されている。なお、溶接ガン2に設けた棒状電極20に替えて、ガンケーブル4の先端に導電性のクリップ(不図示)を取り付け、このクリップを母材10に取り付けて母材10との電気的な接続を図るように構成してもよい。
【0024】
溶接ガン2のハウジング21の内部には、線材カートリッジ7から引き出された線材8が通過する円筒状の筒体24が、軸方向に往復動可能に配置されている。
【0025】
ハウジング21内の先端部には、筒体24の左端と当接するリング状のストッパー25が設けられており、また、ハウジング21内の後端部には、リング状のスプリング受け部材26が設けられている。
【0026】
筒体24の右端とスプリング受け部材26との間には、圧縮コイルスプリング(以下、「スプリング」と称す。)27が設けられており、筒体24がスプリング受け部材26の方向に移動すると、スプリング27が圧縮され、これによって生じたスプリング27の弾性力によって筒体24がストッパー25の方向に加圧されるように構成されている。
【0027】
筒体24内の先端部には通電部材40が取り付けられている。この通電部材40は、溶接ガン2の先端部で線材8を通過可能に保持するとともに、線材8の被溶接部側の先端8aの近傍と装置本体3に設けたコンデンサ31の負極側とを電気的に接続するもので、コンデンサ31の負極側にアースケーブル6を介して接続されている。なお、通電部材40の詳細については後述する。
【0028】
また、筒体24内の後端部にはチャック機構50が取り付けられている。このチャック機構50は、線材8が図中右方向(溶接ガン2の後端方向)に通過しようとすると、楔による保持力で線材8の通過を阻止し、線材8が図中左方向(溶接ガン2の先端方向)に通過するときは、楔による保持力が解除されて線材8の通過を許容するように構成されている。
【0029】
このようなチャック機構50を筒体24内に取り付けることにより、線材8の先端8aを母材10に軸方向に押し付けて、溶接ガン2の外部に引き出されている線材8の一部を溶接ガン2内に押し込むと、チャック機構50の楔による保持力で線材8の図中右方向(溶接ガン2の後端方向)通過が阻止されているため、筒体24が後退してスプリング27を圧縮する。
【0030】
スプリング27の圧縮により生じた弾性力によって、筒体24は、図中左方向(溶接ガン2の先端方向)に加圧されるが、線材8は筒体24内に取り付けたチャック機構50の楔による保持力で保持されているため、線材8は筒体24を介して図中左方向(溶接ガン2の先端方向)に加圧されて、線材8の先端8aが母材10に圧接するように構成されている。
【0031】
装置本体3は、溶接電流の出力に必要な電荷を蓄積するコンデンサ31と、このコンデンサ31を充電する二次電池の直流電源32と、コンデンサ31に蓄積された電荷の放電を制御するサイリスタ等のスイッチング手段33とを備えて構成されており、溶接作業者がトリガースイッチ23をON操作すると、スイッチング手段33が閉成し、コンデンサ31に蓄積された電荷が放電されて、スイッチング手段33を介して溶接ガン2の棒状電極20に溶接電流が出力されるように構成されている。
【0032】
なお、溶接ガン2と装置本体3とを別体とせずに、装置本体3の構成を溶接ガン2に組み込んで一体化してもよく、また、直流電源32の二次電池に替えて商用電源を直流に変換して使用してもよい。
【0033】
次に、図2乃至図4に基づいて、通電部材40について説明する。
通電部材40は、上述したように溶接ガン2の先端部で線材8を通過可能に保持するとともに、線材8の先端8aの近傍と装置本体3に設けたコンデンサ31の負極側とを電気的に接続するもので、線材8が通過する矩形の角筒部41と、この角筒部41の内部において弾性力によって線材8に圧接する接触部42とを備えて構成されている。通電部材40は、例えば、板厚が一定で弾性変形可能な導電性の金属板材を打ち抜き加工した後に曲げ加工して形成されている。
【0034】
角筒部41は、下面部41aと、下面部41aの左右両側縁から略直角に起立する一対の第1側面部41b及び第2側面部41cと、第1側面部41bの上端縁と第2側面部41cの上端縁とを繋ぐ上面部41dとで構成されている。
【0035】
接触部42は、角筒部41の下面部41aの入口部41X側から延出した一定幅の金属板材を、出口部41Yの方向へ弧状に湾曲して折り返すことで形成された斜面状をなし、この弧状に湾曲した折り返し部分が第1の弾性変形部43を構成している。
【0036】
また、接触部42の先端部は、角筒部41内において、入口部41Xの方向に向けて弧状に湾曲して下方へ折り返されており、この弧状に湾曲した折り返し部分が第2の弾性変形部44を構成している。
【0037】
図3及び図4に示すように、通電部材40の角筒部41内に線材8が挿通されると、接触部42が線材8によって押し下げられ、この押し下げによって第1の弾性変形部43及び第2の弾性変形部44が弾性変形して、接触部42に線材8に圧接する方向の弾性力が生じる。この弾性力によって接触部42が線材8の下端に圧接するとともに、線材8が押し上げられて、線材8の上端が、接触部42と対向する、角筒部41の上面部41dに圧接するように構成されている。
【0038】
以上の構成において、通電部材40の角筒部41内に挿通された線材8は、接触部42と上面部41dとで挟持されて通過可能に保持されており、線材8の先端8a及び棒状電極20の先端を母材10に軸方向に押し付けて、トリガースイッチ23をON操作すると、装置本体3から出力される溶接電流が溶接ガン2の棒状電極20を介して母材10に給電されて、母材10と線材8の先端8aとの間にアーク放電が生じる。このアーク放電により母材10の表面とスタッド8の先端8aの両方が溶融し、母材10の表面に圧接された線材8の先端8aが母材10に瞬時に溶接される。
【0039】
また、線材8との電気的な接触部となる接触部42及び上面部41dは、線材カートリッジ7からの線材引き出し時に通過する線材8と摺動接触するため、溶接電流の通電によって接触部42や上面部41dに付着したスパークによる焼け等の汚れを速やかに除去できるとともに、1回の線材引き出し時に通過する線材8が、引き出し長さの全長にわたって接触部42及び上面部41dと摺動接触するため、スパークによる汚れを効果的に除去できる。
【0040】
次に、図1及び図5に基づいて、溶接装置1を用いたスタッド溶接部の形成方法の一例について説明する。なお、図5においては、溶接ガン2の先端に設けた棒状電極20は不図示とする。
[I]線材圧接工程
溶接作業者が溶接ガン2のグリップ22を握って線材8の先端8a及び棒状電極20の先端を母材10に軸方向に押し付ける(図5(a))。
線材8の先端8aを母材10に軸方向に押し付けると、上述したように、スプリング27の弾性力で線材8の先端8aが母材10に軸方向に圧接する。また、上述したように、棒状電極20の先端も母材10に軸方向に圧接する。
【0041】
[II]線材溶接工程
線材8の先端8a及び棒状電極20の先端が母材10に圧接した状態で、溶接作業者がトリガースイッチ23をON操作する(図5(b))。
トリガースイッチ23をON操作すると、図1に示す装置本体3から溶接ガン2に溶接電流が出力される。この溶接電流は、溶接ガン2の棒状電極20を介して母材10に給電され、母材10と線材8の先端8aとの間にアーク放電が生じる。このアーク放電により母材10の表面とスタッド8の先端8aの両方が溶融し、母材10の表面に圧接された線材8の先端8aが母材10に瞬時に溶接される。
【0042】
[III]線材引き出し工程
線材8の先端8aが母材10に溶接された状態で、溶接作業者が溶接ガン2を溶接時([II]線材溶接工程時)の位置から軸方向に所定距離L(例えば、約40mm)後退させる(図5(c))。
溶接ガン2を軸方向に所定距離L後退させると、溶接ガン2の先端から線材8が長さL(例えば、約40mm)引き出される。また、図2乃至図4に示す通電部材40において、溶接電流の通電時に線材8との電気的な接触部となった接触部42及び上面部41dは、上記の線材引き出し時に通過する線材8の引き出し長さLの全長にわたって摺動接触するため、接触部42や上面部41dに付着したスパークによる焼け等の汚れは、次回の線材溶接工程の前に速やかに、かつ、効果的に除去される。
【0043】
なお、溶接ガン2にアクチュエータで駆動する線材引き出し装置を取り付け、上記の[II]線材溶接工程の終了後に線材カートリッジ7から所定の長さの線材8が自動的に引き出されて、溶接ガン2の先端から送出するように構成してもよい。
【0044】
[IV]線材切断工程
線材8を母材10の表面から所定の長さ(例えば、約40mm)に刃部材70で切断する(図5(d))。
線材8を切断すると、母材10に溶接された線材8と溶接ガン2側の線材8とが分離され、母材10の表面に所定の長さ(例えば、約40mm)のスタッド60が溶接された溶接部100が形成される(図5(e))。
【0045】
線材8の切断は、溶接作業者が刃部材70を備えた切断具を用いて行ってもよく、また、アクチュエータで刃部材70が駆動する線材切断装置を溶接ガン2に取り付け、上記の[III]線材引き出し工程の終了後に線材8が所定の長さに自動的に切断されるように構成してもよい。なお、線材8の切断にあたっては、スタッド60の先端60aや溶接ガン2側の線材8の先端8bを尖鋭化するため、例えば、線材8を斜めに切断することが望ましい。
【0046】
以上の[I]線材圧接工程から[IV]線材切断工程を順に行うことで、母材10に所定の長さのスタッド60が溶接された溶接部100が形成され、また、[I]線材圧接工程から[IV]線材切断工程を複数回繰り返し行うことで、母材10に複数本のスタッド60が溶接された溶接部100が形成される。
【0047】
なお、溶接ガン2から引き出す線材8の長さや線材8の切断長(スタッド60の長さ)は、例えば、母材10がダクトやパネル材等の場合、これを被覆する断熱材や防音材等の被覆材の厚さ等に応じて任意に決定できる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る溶接装置1によれば、スタッド60複数本分以上の長さを有する線材8の先端8aを母材10に溶接した後、母材10に溶接された線材8を所望のスタッド長に切断することで、母材10に所望の長さのスタッド60が溶接された溶接部100が形成されるため、溶接1サイクル毎にスタッド60を1本ずつ溶接ガンのチャックに装填する作業が不要になる。
【0049】
また、溶接電流の通電によって通電部材40の接触部42や上面部41dに付着したスパークによる汚れは、線材引き出し時に通過する線材8との摺動接触により、速やかに除去できるとともに、1回の線材引き出し時に通過する線材8が引き出し長さLの全長にわたって接触部42及び上面部41dと摺動接触するため、スパークによる汚れを効果的に除去できる。
【0050】
また、溶接ガン2から引き出す線材8の長さや線材8の切断長(スタッド60の長さ)を溶接毎に変更することができるため、母材10に異なる長さのスタッド60が溶接された溶接部100を容易に形成することができる。
【0051】
上記の実施形態においては、コンデンサ31の正極側を棒状電極20に接続する一方、コンデンサ31の負極側を通電部材40を介して線材8の先端8aの近傍に接続するものを例示したが、線材8や母材10の材質等により、コンデンサ31の正極側を通電部材40を介して線材8の先端8aの近傍に接続する一方、コンデンサ31の負極側を棒状電極20に接続するように構成してもよい。
【0052】
また、上記の実施形態においては、線材8の先端8aを母材10に圧接した後に溶接電流を通電するものを例示したが、線材8の先端8aを母材10から所定長引き離してセットし、その後、線材8の先端8aを母材10に向かって移動させ、線材8の先端8aが母材10に接触した瞬間に溶接電流が通電するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ダクトやパネル材等の母材に、断熱材や防音材等の被覆材を保持するピン状のスタッドが溶接された溶接部を連続的に形成する技術として好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 溶接装置
2 溶接ガン
3 装置本体(電源装置)
7 線材カートリッジ
8 線材(被溶接部材)
8a 先端
10 母材
31 コンデンサ
40 通電部材
41 角筒部
42 接触部
60 スタッド
70 刃部材
100 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5