(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176014
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】紫外線を使用した空気殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20221117BHJP
F24F 8/22 20210101ALI20221117BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20221117BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61L9/20
F24F8/22
F24F8/80 212
F24F8/80 234
A61L9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021104450
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】305009371
【氏名又は名称】アイクォーク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】立石 憲治
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 裕敏
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180AA16
4C180CC03
4C180DD03
4C180DD09
4C180EA34X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コンパクトでありながら、空気流路の圧損を抑えつつ、外気の吸気孔と排気孔からの紫外線漏れを抑制できる構造の除菌装置を提供する。
【解決手段】本体ケース1内の空洞4の中間部分に隔壁8を設けて第1区画室10と第2区画室11に区分けし、この隔壁8の下部分を貫通して2つの区画室間の通風路を構成する風洞体16を配置し、さらにこの風洞体16の中央部分に、風洞体16の長さ方向に沿って紫外線照射用棒状発光体を装着し、第1区画室10の上部寄りに外気を導入する吸気孔6を設けるとともに、第2区画室11の上部寄りに紫外線照射後の空気を導出する排気孔を設けることにより、棒状発光体と吸気孔6および排気孔との距離を十分確保し紫外線漏れを抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース(1)内の空洞(4)の中間部分に隔壁(8,9)を設けて第1区画室10と第2区画室11に区分けし、
この隔壁(8,9)の下部分を貫通して2つの区画室(10,11)間の通風路(17)を構成する風洞体(16)を配置し、
さらにこの風洞体(16)の中央部分に、風洞体(16)の長さ方向に沿って紫外線照射用棒状発光体(18)を装着し、
第1区画室(10)の上部寄りに外気を導入する吸気孔(6)を設けるとともに、
第2区画室(11)の上部寄りに紫外線照射後の空気を導出する排気孔(14)を設けたことを特徴とする除菌装置。
【請求項2】
風洞体(16)の内面に、紫外線により励起される光触媒体を備える請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
棒状発光体(18)の発光面(19)を風洞体(16)の開口端部(20,21)よりも内側に配置し、吸気孔(6)と排気孔(14)は風洞体(16)の開口端部(20,21)よりも内寄りに配置した請求項1または2に記載の除菌装置。
【請求項4】
風洞体(16)の開口端部(20,21)と対向する区画室壁に遮光性を付与した請求項1~3に記載の除菌装置。
【請求項5】
風洞体(16)の開口端部(20,21)と対向する区画室壁に、紫外線を可視光線に変換する発光ピース(26)を設けるとともに、本体ケース1の発光ピース配置部分に透光性を付与した請求項1~4に記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本体内部に棒状光源体(紫外線ランプ等)を設置し、外気を本体内に吸入して紫外線により殺菌を行った後に本体外に排出する空気殺菌装置において、空気流の抵抗を増加させることなく紫外線が本体外に漏れにくいようにした構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線の中でも紫外線は殺菌線として空気浄化装置に使用される。しかし、この紫外線は人体に対して皮膚の炎症を起こし、視力障害の原因となるなど有害に影響することが知られているが、紫外線は不可視光線であるため肉眼で照射状態を確認することが出来ず、人体に照射しないように封じ込めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4-45720公報(第4欄3行~14行、第1図)
【特許文献2】特許第6832032号公報(段落番号0021~0024、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1の構造がある。この構造は一般的な構造であり、扁平の箱型ケーシング紫外線放射ランプLと空気流入口2、空気流出口3が直列方向に配列され、空気流通路を構成している。このため空気流入口2と空気流出口3は、紫外線照射ランプLの端部に隣接して取り付けられており、紫外線照射ランプLの端部からの光線はルーバーから漏れ出やすい構造となっている。
【0005】
この紫外線は利用者にとっては有害性を持っているため、この構造においては、紫外線がそれぞれの開口部から外部に漏れやすく利用者を危険に晒すことになる。
【0006】
特許文献2の空気浄化装置30は、ダクト部31の一方端部に吸入口32が、他方端部に排出口33が設けられ、その間に紫外線ランプ50がダクト部31の長手方向に沿って直列上に配置されており、特許文献1と同様の構成となっている。吸入口32と排出口33は、遮光板34,35を備えているが、特許文献1と同じようにルーバー間の開口を通してあるいはルーバー面に反射して紫外線の漏出が生じる。
そこで光漏れを防止するための様々な工夫が要求されている。
【0007】
しかも特許文献1および2のような直列配置構造では筐体の長さが長くなるため、コンパクト性が損なわれる。
特に飛沫感染の場合は、飛沫発生直後に回収、殺菌し、エアロゾル拡散を防止することが好ましく、このためには出来るだけ身近な場所に殺菌装置を設置する必要があり、様々な生活シーンの中で邪魔にならないコンパクト性と紫外線を直視しない構造が求められる。しかしコンパクト性を重視すると空気流の抵抗が増加する傾向にあり、また身近に設置すると紫外線漏れに晒される機会が増える。
そこで安全性を損なう光漏れを抑制でき、しかも流路抵抗の低い構造を実現することが求められている。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、コンパクトでありながら、空気流路の圧損を抑えつつ、外気の吸気孔と排気孔からの紫外線漏れを抑制できる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の殺菌装置は上記目的を達成するために、本体ケース内の空洞の中間部分に隔壁を設けて第1区画室と第2区画室に区分けし、この第1区画室と第2区画室の下部寄りの隔壁を貫通して2つの区画室間の通風路を構成する風洞体を配置し、さらにこの風洞体の中央部分に、風洞体の長さ方向に沿って紫外線照射用棒状発光体を装着し、第1区画室の上部寄りに外気を導入する吸気孔を設けるとともに、第2区画室の上部寄りに紫外線照射後の空気を導出する排気孔を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隔壁により区画された第1区画室と第2区画室の下部寄りに、紫外線照射用棒状発光体を配置し、上部寄りに外気と連通する吸気孔と排気孔を設けたので、発光体の紫外線は直進するのに対し、吸気孔から導入された空気流は、区画室の下部寄りに配置された風洞体へ曲流して風洞体内を通過し、通過後、再度曲流して上部寄りの排気孔から排気されることになり、直線性の紫外線と変形自在な空気流のそれぞれの特性を活用して、両者の進路方向を異ならせることができ、吸気孔および排気孔を通して直接発光体を見ることはなく、また直進する紫外線が外部に漏れ出ることを抑制できる。
【0011】
また本発明によれば、風洞体の内面に、紫外線により励起される光触媒体を備えることにより、紫外線による直接殺菌に加え、分解殺菌を行うことができる。
【0012】
さらに、棒状発光体の発光面を風洞体の開口端部よりも内側に配置し、吸気孔と排気孔は風洞体の開口端部よりも内寄りに配置することにより、吸気孔と排気孔は紫外線の進行方向の後方に位置することになり、吸気孔と排気孔から紫外線を直視することを防止できるとともに、本体ケースサイズをコンパクトにすることが出来る。
【0013】
しかも風洞体の開口端部と対向する区画室壁に遮光性を付与することにより、本体ケース素材が透過性を持っていても紫外線の漏出を抑制することができる。
【0014】
また本発明によれば、風洞体の開口端部と対向する区画室壁に、紫外線を可視光線に変換する発光ピースを設けるとともに、本体ケースの発光ピース配置部分に透光性を付与することにより、風洞体の開口端部から放射される紫外線を可視光線に変換することができるため、発光体の作動状況を本体ケース外部から確認することができ、その発光度合いで発光体の劣化レベルや寿命を把握することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図1のA-A垂直方向断面図で吸気孔と風洞体の位置関係を示す。
【
図4】
図1のB-B水平方向断面図で空気流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および
図2において、略箱型本体ケース1は前ケース2と後ケース3を結合し、その内部に空洞4を形成している。
さらに空洞4の中間部分には、前ケース2及び後ケース3の内面から突合せ状に隔壁8,9を突設し、空洞4を第1区画室10と第2区画室11の2室に区画している。隔壁8、9の突合せ部分にはスポンジやゴムなどのシール材12を取付け、その弾力性を利用して両室10,11間の気密性を保って区画している。
【0017】
第1区画室10側には、前ケース2の前面5の左上部に外気を導入する吸気孔6を形成し、その内面側に吸気用ファン7を取付け、外面側には、圧力損失を上げずにPM2.5レベルの塵埃等を粘着捕捉する粘着剤を塗布した不織布製の吸気フィルタ13が装着されている。
【0018】
第2区画室11側には、後ケース3の背面右上部寄りに排気孔14が開設され、着脱自在な排気フィルタ15で覆っている。この排気フィルタ15は、吸気フィルタ13よりも微細な通気孔が形成されている。この装置は吸気側で大きめのホコリを回収し、排気側でより小さいハウスダストやPM0.1のようなサブミクロンダストを回収する構造となっている。一般的には、吸気フィルタをHEPAフィルタレベルの高性能フィルタを使用し、排気側はフィルタを設けない構成であるが、本実施例では、吸・排気フィルタに捕捉サイズに差を設け、紫外線や光触媒機能を積極的に活用し、殺菌や分解後の異物が排出されにくいように構成している。
【0019】
第1区画室10と第2区画室11との間は、隔壁8,9の下寄り部分を貫通する風洞体16が貫通し、両室10,11間の通風路17を構成している。風洞体16の中央部分には風洞体16の長さ方向に沿って紫外線照射用棒状発光体18が配置されている。
棒状発光体18は、冷陰極管のような長管ランプのようなものだけでなく、複数の紫外線発光LEDを棒状に配設したものでも良い。
棒状発光体18の発光面19は、
図4に破線で示すように風洞体16の吸気側開口端部20(
図4にEで示す)及び排気側開口端部21(
図4にFで示す)よりも内側に配置することにより、発光した紫外線が、第1区画室10内や第2区画室11内に収納された様々な形状の部品表面で乱反射して、吸気孔6や排気孔14に到達し装置外に漏光することを抑制し安全性を確保している。
【0020】
吸気用ファン7は、外気を吸気孔6から第1区画室10内に取込む方向に送風を行う。吸気された空気は、
図4に示すように、風洞体16の内部の通風路17を通過して他方の第2区画室11へ移動し、排気孔14から本体ケース1の外部に放出される。吸気孔6と排気孔14は少なくとも90°望ましくは180°方向の面を変えて設置されており、排出された空気が再び吸気孔6に再還流しないように配置している。
【0021】
また、
図2および
図3に示すように、吸気孔6は第1区画室10の上部寄りに、排気孔14は第2区画室の上部寄りにそれぞれ配置することにより
、区画室10,11の下寄りに配置された風洞体16との間に充分な距離を置くことができ、吸気孔6や排気孔14から直視し難くなり、また紫外線漏光が抑制できる。
【0022】
風洞体16内部には、棒状発光体18が絶縁保持体22および固定金具23により風洞体16の断面中央部に装着されている。具体的には
図3に示すように固定金具23は
で固定され、絶縁保持体22を挟持している。これに対し、風洞体16はその一部から延設したフランジ30を、前ケース2の内壁から突設した支柱31にねじ固定している。
この構成により、棒状発光体18を前ケース2に直接固定することになり、比較的重量のある棒状発光体を、風洞体16を介して固定する場合に比べて強固に固定することができる。しかも形状の大きい風洞体16に重量がかからなくなり、板厚の薄い反射素材を採用でき、全体を軽量化することができる。
棒状発光体18と風洞体16内面で構成される空間により通風路17が構成されている。さらに風洞体16の内面には、二酸化チタンのような光触媒体24が塗布されている。
【0023】
本装置が作動開始すると棒状発光体18が点灯して紫外線を放射すると同時に、
図4に示すように吸気用ファン7が駆動して吸気孔6から取り込まれた空気が、風洞体16に向けて曲流しながら降下し、風洞体16に流れ込み、破線矢印方向Gに通風路17を通過する。その際に、空気には強い紫外線が照射されて空気中のウイルスや細菌等を不活化する。さらに棒状発光体18から発光される紫外線により光触媒体24が励起されて空気中の有機物を酸化分解する。
風洞体16を通過した空気は、ファン7からの風圧により上昇しながら再度曲流して排気孔14から外部に排気される。
【0024】
なお、
図4に示すように吸気孔6や排気孔14を、風洞体16の吸気側開口端部20および排気側開口端部21よりいずれも内寄りに配置することにより、風洞体16の内部に収納されている棒状発光体18を吸気孔6や排気孔14から直視できない位置関係としている。
【0025】
本装置で使用する棒状発光体18の代表例である波長253.7μm等の短波長紫外線は、人体(目や皮膚等)に対して有害であるため本体ケース外部への漏出を十分に避ける必要がある。棒状発光体18から発生した紫外線は風洞体16の両端面から180度以内の放射角度で照射される。
【0026】
紫外線照射力が強い装置の場合は、本体ケース1の内部の照射範囲内に、紫外線を透過したり反射したりしにくい遮光性材を配置する。例えば
図2に示すものでは紫外線透過を阻止するゴムシートや光を吸収するシート材を区画室10,11の内壁に貼付けたり遮光塗料を塗布するような遮光性材25を用いる。
【0027】
また、棒状発光体18には寿命があり時間の経過とともに光量が低下するので定期的な交換が必要になる。光量の低下を確認する手段として例えば、風洞体16の開口端部と対向する区画室壁付近に、紫外線により発光する発光ピース26を設置する。
発光ピース26は、その一部を本体ケース1内外に貫通露出させ、紫外線を可視光線に変換することにより、本体ケース1の外部から視覚的に紫外線の発生状況を確認する事ができる。
【符号の説明】
【符号の説明】
【0028】
1 本体ケース
2 前ケース
3 後ケース
4 空洞
5 前面
6 吸気孔
7 吸気用ファン
8 隔壁
9 隔壁
10 第1区画室
11 第2区画室
12 シール材
13 吸気フィルタ
14 排気孔
15 排気フィルタ
16 風洞体
17 通風路
18 紫外線照射用棒状発光体
19 発光面
20 吸気側開口端部
21 排気側開口端部
22 絶縁保持体
23 固定金具
24 光触媒体
25 遮光性材
26 発光ピース
27 突起
28 逃げ孔
29 ネジ
30 フランジ
31 支柱