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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176029
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】導電助剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20221117BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20221117BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C09K3/00 C
H01B1/20 Z
H01B1/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152272
(22)【出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2021081746
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 博樹
(72)【発明者】
【氏名】塚本 祥実
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301DA18
5G301DA19
5G301DA20
5G301DA25
5G301DA42
5G301DA43
5G301DA53
5G301DA57
5G301DA59
5G301DA60
5G301DD10
5G301DE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高分子バインダー法により形成される導電膜において、導電性フィラーの使用量を低減させることができる導電助剤を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるイオン結合性塩を含み、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物の導電性を向上させるために用いられる導電助剤。

式(1)中、nは、Qの原子価を表し、1又は2であり、Qn+は、1価金属イオン、2価金属イオン又は含窒素化合物イオンを表し、Tは、下記式(t-1)で表される硫酸エステルイオンを表す。

(Rは、置換されているかもしくは非置換のC数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換のC数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換のC数6~30のアリール基、又は置換されているかもしくは非置換のC数7~31のアリールアルキル基。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるイオン結合性塩を含み、
導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物の導電性を向上させるために用いられる導電助剤:
【化1】

上記式(1)中、
nは、Qの原子価を表し、1または2であり、
n+は、1価金属イオン、2価金属イオンまたは含窒素化合物イオン(ここで、含窒素化合物イオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよく、Siを含んでいてもよい)を表し、
は、下記式(t-1):
【化2】

上記式(t-1)中、
は、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、
は、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、sが2以上の場合、Aの種類はそれぞれ異なっていてもよく、
sは、0~50の整数である、
で表される硫酸エステルイオン、または、
下記式(t-2):
【化3】

上記式(t-2)中、
は、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、
は、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、
vは、0~50の整数である、
で表されるスルホン酸イオンである。
【請求項2】
前記Qn+は、1価金属イオンまたは含窒素化合物イオン(ここで、含窒素化合物イオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよく、Siを含んでいてもよい)である、請求項1に記載の導電助剤。
【請求項3】
前記Qn+は、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオン、およびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の含窒素化合物イオン(ここで、各含窒素化合物イオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよく、Siを含んでいてもよい)である、請求項1に記載の導電助剤。
【請求項4】
前記Qn+は、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオンまたは第3級アンモニウムイオンである、請求項1に記載の導電助剤。
【請求項5】
前記Qn+は、ヒドロキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピルまたはトリイソプロポキシシリルプロピル基が窒素原子に結合した構造を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電助剤。
【請求項6】
前記イオン結合性塩が、以下のいずれかの構造を有するものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電助剤。
【化4-1】

【化4-2】

【化4-3】

【化4-4】

【化4-5】
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の導電助剤と、導電性フィラーと、樹脂と、を含む、導電性樹脂組成物。
【請求項8】
前記導電性フィラーが、スズドープ酸化インジウム、リンドープ酸化スズ、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、黒鉛粒子、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラックおよび酸化チタンからなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂が、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂およびシリコーン樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項7または8に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物からなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、タッチパネル等で利用される導電膜は、導電性フィラー等の導電性材料をスパッタリング法や真空蒸着法によって製膜することにより製造されてきた。しかし、製造コストや環境負荷の面で問題があり、より簡易的な方法として高分子バインダー法が適用されてきている。
【0003】
例えば、高分子バインダー法が適用された例として、特許文献1には、導電性フィラー、分散安定剤、イオン液体、およびバインダーを含む透明導電膜形成用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-17070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高分子バインダー法で十分な性能を得るためには、バインダー(樹脂)に対して多量の導電性フィラーを使用する必要がある。そのため、高価な導電性フィラーを多量に配合するという点で依然としてコスト面に課題があり、また透明導電膜の場合は導電性フィラーを多量に使用することにより透明性が損なわれるという問題点があった。
【0006】
したがって、高分子バインダー法により製造される場合において、導電性フィラーの使用量を低減させるための手段が求められていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、高分子バインダー法により形成される導電膜において、導電性フィラーの使用量を低減させることができる新規な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を積み重ねた。その結果、驚くべきことに、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物に所定のイオン結合性塩が含まれることにより、当該導電性樹脂組成物の導電性が著しく向上することを見出した。言い換えれば、所定のイオン結合性塩が、導電性樹脂組成物に含有される導電性フィラーの導電性を向上させる導電助剤として機能しうることが見出されたのである。本発明者らは、この知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一形態によれば、下記式(1)で表されるイオン結合性塩を含み、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物の導電性を向上させるために用いられる導電助剤が提供される:
【0010】
【化1】
【0011】
上記式(1)中、
nは、Qの原子価を表し、1または2であり、 Qn+は、1価金属イオン、2価金属イオンまたは含窒素化合物イオン(ここで、含窒素化合物イオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよく、Siを含んでいてもよい)を表し、
は、下記式(t-1):
【0012】
【化2】
【0013】
上記式(t-1)中、
は、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、
は、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、sが2以上の場合、Aの種類はそれぞれ異なっていてもよく、
sは、0~50の整数である、
で表される硫酸エステルイオン、または、
下記式(t-2):
【0014】
【化3】
【0015】
上記式(t-2)中、
は、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、
は、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、
vは、0~50の整数である、
で表されるスルホン酸イオンである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高分子バインダー法により形成される導電膜において、導電性フィラーの使用量を低減させることができる新規な技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[導電助剤]
本発明の一形態は、下記式(1)で表されるイオン結合性塩を含み、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物の導電性を向上させるために用いられる導電助剤である。
【0018】
【化4】
【0019】
上記式(1)において、nは、Qの原子価を表し、1または2である。
【0020】
上記式(1)において、Qn+は、1価金属イオン、2価金属イオンまたは含窒素化合物イオン(ここで、含窒素化合物イオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよく、Siを含んでいてもよい)を表す。
【0021】
上記式(1)において、Tは、下記式(t-1):
【0022】
【化5】
【0023】
で表される硫酸エステルイオン、または、
下記式(t-2):
【0024】
【化6】
【0025】
で表されるスルホン酸イオンである。
【0026】
上記式(t-1)において、Rは、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、Aは、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、sが2以上の場合、Aの種類はそれぞれ異なっていてもよく、sは、0~50の整数である。
【0027】
上記式(t-2)において、Rは、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、Aは、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、vは、0~50の整数である。
【0028】
本発明において、「導電性樹脂組成物」に含まれる「樹脂」は、硬化していない状態(未硬化状態)のものであってもよいし、単量体として機能しうる樹脂の原料が硬化(重合)工程を経ることにより硬化した状態(硬化状態)のものであってもよい。これらのいずれの形態であっても、上記所定のイオン結合性塩は、導電性樹脂組成物に含有される導電性フィラーの導電性を向上させる導電助剤として機能しうるのである。
【0029】
上述したように、本発明の導電助剤は、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物の導電性を向上させることができる。このメカニズムの詳細は定かではないが、以下のように推測される。本発明において、導電性フィラーは、イオン結合性塩と樹脂とを含む導電性樹脂組成物中に良好に分散されている。これにより、当該導電性樹脂組成物からなる(未硬化状態または硬化状態の)塗膜において効率的な導電パスが形成されるものと思われる。
【0030】
本発明の導電助剤によれば、導電性樹脂組成物に含まれる導電性フィラーの使用量を低減することができ、例えば、樹脂100質量部に対して、導電性フィラーが200質量部以下(例えば、150質量部以下)であっても、良好な導電性を発揮できる。例えば、帯電防止領域の表面抵抗率を発揮する導電性樹脂組成物に本発明に係る導電助剤を含有させることにより、導電性樹脂組成物の導電性が向上し、静電防止領域の表面抵抗率が発揮できる導電性樹脂組成物となる。一例としては、1×10Ω/sqを超える表面抵抗率を有する塗膜を形成する導電性樹脂組成物に対して、本発明に係る導電助剤を添加することで、導電性樹脂組成物からなる塗膜の表面抵抗率は1×10~9.5×10Ω/sqへと低減することができる。なお、表面抵抗率の測定方法は、後述の実施例のとおりである。
【0031】
また、本発明に係る導電助剤は、導電性フィラーの分散性を向上させることにより、導電性樹脂組成物からなる塗膜の透明性も向上させることができる。
【0032】
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
【0033】
(カチオン Qn+
n+は、1価金属イオン、2価金属イオンまたは含窒素化合物イオンである。含窒素化合物イオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよいし、Siを含んでいてもよい。なお、以下では、Qn+を「カチオン」とも称する。
【0034】
1価金属イオンの例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。
【0035】
2価金属イオンの例としては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
【0036】
含窒素化合物イオンとしては、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオン、およびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である。アンモニウムイオンとしては、有機アンモニウムイオンも含まれる。
【0037】
上記含窒素化合物イオンは、ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有していてもよい。エチレン性不飽和結合を有する含窒素化合物イオンとしては、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するイミダゾリウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピリジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピロリジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピロリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピペリジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピラジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピリミジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するトリアゾリウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するトリアジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するキノリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するイソキノリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するインドリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するキノキサリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピペラジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するオキサゾリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するチアゾリニウムイオン、およびエチレン性不飽和結合を有するモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0038】
含窒素化合物イオンは、Siを含んでいてもよい。Siを含む含窒素化合物イオンとしては、Siを含むアンモニウムイオン、Siを含むイミダゾリウムイオン、Siを含むピリジニウムイオン、Siを含むピロリジニウムイオン、Siを含むピロリニウムイオン、Siを含むピペリジニウムイオン、Siを含むピラジニウムイオン、Siを含むピリミジニウムイオン、Siを含むトリアゾリウムイオン、Siを含むトリアジニウムイオン、Siを含むキノリニウムイオン、Siを含むイソキノリニウムイオン、Siを含むインドリニウムイオン、Siを含むキノキサリニウムイオン、Siを含むピペラジニウムイオン、Siを含むオキサゾリニウムイオン、Siを含むチアゾリニウムイオン、およびSiを含むモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0039】
上記含窒素化合物イオンの具体的な例は、特開2020-081905号公報の段落[0033]~[0056]に記載されたものと同様のものを挙げることができるが、入手容易性等の観点からは、上記化合物の中でも、有機アンモニウムイオンが特に好ましい。
【0040】
本発明において、Qn+は、1価のイオン、含窒素化合物イオン(ここで、含窒素化合物イオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよく、Siを含んでいてもよい)であるのが好ましい。すなわち、Qn+は、1価のイオン(好ましくはナトリウム)、(エチレン性不飽和結合を有する含窒素化合物イオン、Siを含む含窒素化合物イオン以外の)含窒素化合物イオン、エチレン性不飽和結合を有する含窒素化合物イオン、Siを含む含窒素化合物イオンであることが好ましい。また、Qn+は、1価のイオン(好ましくはナトリウム)、アンモニウムイオン(ここで、アンモニウムイオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよく、Siを含んでいてもよい)であることがより好ましく、有機アンモニウムイオン(ここで、有機アンモニウムイオンは、エチレン性不飽和結合を有していてもよく、Siを含んでいてもよい)であることが特に好ましい。
【0041】
n+が有機アンモニウムの場合、Qn+(アンモニウムイオン)は、「N+(R’)」で表される。ここで、R’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のヒドロキシアルキレン基、炭素数1~10のシリルアルキレン基、炭素数1~5のトリアルキルシリル基、炭素数1~5のトリアルコキシシリル基、トリアルキルシリルアルキレン基(ここで、アルキル基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)、トリアルコキシシリルアルキレン基(ここで、アルコキシ基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)、炭素数1~10の(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基または炭素数5~20のアリール基である。この場合、R’のうち1つは、炭素数1~10のヒドロキシアルキレン基、炭素数1~10のシリルアルキレン基、トリアルキルシリルアルキレン基(ここで、アルキル基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)、トリアルコキシシリルアルキレン基(ここで、アルコキシ基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)または炭素数1~10の(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基であるのが好ましく;R’のうち1つは炭素数1~10のヒドロキシアルキレン基、炭素数1~10のシリルアルキレン基、トリアルキルシリルアルキレン基(ここで、アルキル基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)、トリアルコキシシリルアルキレン基(ここで、アルコキシ基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)または炭素数1~10の(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基であり、残りのR’は水素原子または炭素数1~10のアルキル基であるのがより好ましい。
【0042】
なお、「N+(R’)」におけるR’が、炭素数1~10のシリルアルキレン基、炭素数1~5のトリアルキルシリル基、炭素数1~5のトリアルコキシシリル基、トリアルキルシリルアルキレン基(ここで、アルキル基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)、トリアルコキシシリルアルキレン基(ここで、アルコキシ基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)であると、Qn+が「Siを含む有機アンモニウムイオン」である場合に相当し、「N+(R’)」におけるR’が炭素数1~10の(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基であると、Qn+が「エチレン性不飽和結合を有する有機アンモニウムイオン」である場合に相当する。
【0043】
ここで、「N+(R’)」におけるR’が有しうるアルキル基は、直鎖、分岐または環状アルキル基であってよい。アルキレン基は、直鎖、分岐または環状アルキレン基であってよい。
【0044】
本明細書中、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル基および/またはメタクリロイルを示しており、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を示しており、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを示している。
【0045】
有機アンモニウムイオンのなかでも、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、モノプロピルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、モノブチルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、メチル(エチル)アンモニウムイオン、メチル(プロピル)アンモニウムイオン、メチル(ブチル)アンモニウムイオン、メチル(ペンチル)アンモニウムイオン、メチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、エチル(プロピル)アンモニウムイオン、エチル(ブチル)アンモニウムイオン、エチル(ペンチル)アンモニウムイオン、エチル(ヘキシル)アンモニウムイオンなどのアルキルアンモニウムイオン;モノベンジルアンモニウムイオン、(1-フェネチル)アンモニウムイオン、(2-フェネチル)アンモニウムイオン(別名:モノフェネチルアンモニウムイオン)、ジベンジルアンモニウムイオン、ビス(1-フェネチル)アンモニウムイオン、ビス(2-フェネチル)アンモニウムイオン(別名:ジフェネチルアンモニウムイオン)などの芳香族置換アルキルアンモニウムイオン;モノシクロペンチルアンモニウムイオン、ジシクロペンチルアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルアンモニウムイオン、ジシクロヘキシルアンモニウムイオン、モノシクロヘプチルアンモニウムイオン、ジシクロヘプチルアンモニウムイオンなどのシクロアルキルアンモニウムイオン;モノメタノールアンモニウムイオン、ジメタノールアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、モノ(n-プロパノール)アンモニウムイオン、ジ(n-プロパノール)アンモニウムイオン、モノイソプロパノールアンモニウムイオン、ジイソプロパノールアンモニウムイオン、モノブタノールアンモニウムイオン、ジブタノールアンモニウムイオン、モノペンタノールアンモニウムイオン、ジペンタノールアンモニウムイオン、トリペンタノールアンモニウムイオン、モノヘキサノールアンモニウムイオン、ジヘキサノールアンモニウムイオン、モノメチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジメチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノエタノールアンモニウムイオン(別名:N-エチルエタノールアンモニウムイオン)、ジエチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジエチルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノエチルモノブタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノブタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノペンタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノエタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノエタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノブタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノブタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノペンタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジブチルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノブチルモノブタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノブタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノペンタノールアンモニウムイオンなどのアルカノールアンモニウムイオンが好ましい。これら有機アンモニウムイオンは、入手容易性の観点から好ましい。なかでも、導電性樹脂組成物(塗膜)において良好な導電パスを形成させる観点から、アルカノールアンモニウムイオンを用いると好ましい。
【0046】
また、エチレン性不飽和結合を有する有機アンモニウムイオンとしては、モノメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、モノメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、モノエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、モノエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(2-イソシアノエチル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(2-シアノプロピル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(1,2-エポキシプロパン)アンモニウムイオンであるのが好ましい。エチレン性不飽和結合を有する有機アンモニウムイオンとしては、さらにより好ましくは、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオンであり、特に好ましくは、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオンである。
【0047】
また、上記有機アンモニウムイオンとしては、イオン結合性塩を調製する反応工程の簡略化の観点から、当該有機アンモニウムイオン中に含まれるアミノ基が1級、2級または3級であるものが好ましい。また、本発明の効果を得やすいという観点からは、2級または3級であるもの(すなわち、2級アンモニウムイオンまたは3級アンモニウムイオン)がより好ましく、2級アンモニウムイオンであるもの(すなわち、2級アンモニウムイオン)が特に好ましい。また、本発明の効果を得やすいという観点から、Qn+は、ヒドロキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基またはトリイソプロポキシシリルプロピル基が窒素原子に結合した構造を有するのが好ましく、よって、有機アンモニウムイオンが、ヒドロキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基またはトリイソプロポキシシリルプロピル基が窒素原子に結合した構造を有するのがより好ましい。
【0048】
また、一実施形態において、含窒素化合物イオンは、Siを含むアンモニウムイオンまたはイミニウムイオンである。含窒素化合物イオンは、Siを含むアンモニウムイオン(有機アンモニウムイオン)であるのが好ましい。Qn+がSiを含む含窒素化合物イオン(好ましくはSiを含むアンモニウムイオンまたはイミニウムイオン)の場合、導電性を向上し、かつ、耐水密着性に優れるという効果を有する。
【0049】
n+がSiを含むアンモニウムイオンまたはイミニウムイオンである場合、Siを含むアンモニウムイオンは、「N(R’)」で表され、イミニウムイオンは、「N(R’)=C(R’)」で表される。ここで、R’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のヒドロキシアルキレン基、炭素数1~10のシリルアルキレン基、炭素数1~5のトリアルキルシリル基、炭素数1~5のトリアルコキシシリル基、トリアルキルシリルアルキレン基(ここで、アルキル基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)、トリアルコキシシリルアルキレン基(ここで、アルコキシ基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)または炭素数5~20のアリール基であり、R’のうち1つは、炭素数1~10のシリルアルキレン基、炭素数1~5のトリアルキルシリル基、炭素数1~5のトリアルコキシシリル基、トリアルキルシリルアルキレン基(ここで、アルキル基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)またはトリアルコキシシリルアルキレン基(ここで、アルコキシ基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)である。Siを含むアンモニウムイオンの場合、炭素数1~5のトリアルキルシリル基、炭素数1~5のトリアルコキシシリル基、炭素数1~10のシリルアルキレン基、トリアルキルシリルアルキレン基(ここで、アルキル基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)およびトリアルコキシシリルアルキレン基(ここで、アルコキシ基は炭素数1~5であり、アルキレン基は炭素数1~10である)以外のR’としては、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であるのが好ましい。また、Qn+は、アンモニウムイオンおよびイミニウムイオンの両方を含んでいてもよい。Qn+がSiを含むアンモニウムイオンの場合、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基またはトリイソプロポキシシリルプロピル基が窒素原子に結合した構造を有するのが好ましい。
【0050】
ここで、「Siを含むアンモニウムイオンまたはイミニウムイオン」は、「アミノ基またはイミノ基を含有するシラン化合物に由来するカチオン」とも称することができる。上記アミノ基またはイミノ基を含有するシラン化合物(アミノ基またはイミノ基を含有するシラン化合物に由来するカチオン)の詳細は、特開2016-29041号公報の段落[0030]~[0066]を参照することができ、その開示内容はQn+がSiを含むアンモニウムイオンまたはイミニウムイオンの場合として本発明にも適用できる。なお、本発明においては、「アミノ基またはイミノ基を含有するシラン化合物に由来するカチオン」は、アミノ基またはイミノ基にプロトン等が付加して正に帯電している形態を意味する。
【0051】
Siを含むアンモニウムイオンとしては、N-(トリメチルシリル)ジエチルアンモニウムイオン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアンモニウムイオン、N-(トリエチルシリル)ジエチルアンモニウムイオン、N-(トリエチルシリル)ジメチルアンモニウムイオン、3-(トリメトキシシリル)-プロピルアンモニウムイオン、3-(トリエトキシシリル)-プロピルアンモニウムイオン、3-(トリイソプロポキシシリル)-プロピルアンモニウムイオン、3-(ジメトキシメチルシリル)-プロピルアンモニウムイオン、3-(ジエトキシメチルシリル)-プロピルアンモニウムイオン、N-フェニル-N-(3-(トリメトキシシリル)-プロピル)アンモニウムイオン、N-メチル-N-(3-(トリメトキシシリル)-プロピル)アンモニウムイオン、N-(2-アミノエチル)-N-(3-(トリメトキシシリル)-プロピル)アンモニウムイオン、N-(2-アミノエチル)-N-(3-(ジメトキシメチルシリル)-プロピル)アンモニウムイオン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアンモニウムイオン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0052】
n+がSiを含むアンモニウムイオンの場合、入手のしやすさから、当該アンモニウムイオン中に含まれるアミノ基が1級、2級または3級(すなわち、1級アンモニウムイオン、2級アンモニウムイオンまたは3級アンモニウムイオン)であるものが好ましい。
【0053】
(アニオン T
上記式(1)において、Tは、上記式(t-1)で示される硫酸エステルイオン、または式(t-2)で示されるスルホン酸イオンである。なお、以下では、Tを「アニオン」とも称する。これらアニオンは、界面活性剤としての構造を有することによって導電性フィラーの分散性が改善され、結果として、イオン結合性塩による導電性の向上に大きく寄与することができる。また、これらアニオンは、上記カチオンのカウンターアニオンとして、ハロゲンを含まない構造のカウンターアニオンを提供するため、ハロゲンを嫌う用途における使用に適している。以下、これらアニオンの構造について具体的に説明する。
【0054】
上記式(t-1)中のA、および式(t-2)中のAとしてそれぞれ示される、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。入手容易性の観点から、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
【0055】
上記式(t-1)中のR、および式(t-2)中のRとしてそれぞれ示される、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、3-メチルペンタン-2-イル基、3-メチルペンタン-3-イル基、4-メチルペンチル基、4-メチルペンタン-2-イル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、1-(n-プロピル)ブチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1-エチル-2,2-ジメチルプロピル基、n-オクチル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、2,4-ジメチルペンタン-3-イル基、1,1-ジメチルペンタン-1-イル基、2,2-ジメチルヘキサン-3-イル基、2,3-ジメチルヘキサン-2-イル基、2,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、2,5-ジメチルヘキサン-3-イル基、3,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、3,5-ジメチルヘキサン-3-イル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、2-メチルヘプタン-2-イル基、3-メチルヘプタン-3-イル基、4-メチルヘプタン-3-イル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチル-1-メチルペンチル基、1-エチル-4-メチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1-イソプロピル-1,2-ジメチルプロピル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、1-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1-(n-ブチル)ペンチル基、4-メチル-1-(n-プロピル)ペンチル基、1,5,5-トリメチルヘキシル基、1,1,5-トリメチルヘキシル基、2-メチルオクタン-3-イル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、1-エチルオクチル基、1-(n-ブチル)ヘキシル基、1,1-ジメチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、1-エチルノニル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、n-テトラデシル基、1-メチルトリデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基などの直鎖、分岐状のアルキル基が挙げられる。入手容易性や導電性樹脂組成物における導電性フィラーの分散性の観点から、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~14の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基が好ましく、2-エチルヘキシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、1,2-ビス(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)エチル基がより好ましく、トリデシル基、1,2-ビス(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)エチル基、2-エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0056】
置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基の例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基が挙げられる。入手容易性や導電性樹脂組成物における導電性フィラーの分散性の観点から、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~10のシクロアルキル基がより好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0057】
置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基の例としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基などが挙げられる。入手容易性や導電性樹脂組成物における導電性フィラーの分散性の観点から、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~18のアリール基が好ましく、フェニル基、ジメチルフェニル基(2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基等)、イソプロピルフェニル基(2-イソプロピルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基)、ドデシルフェニル基(2-ドデシルフェニル基、3-ドデシルフェニル基、4-ドデシルフェニル基)が特に好ましい。
【0058】
置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基の例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、2-(1-ナフチル)エチル基、2-(2-ナフチル)エチル基、3-(1-ナフチル)プロピル基、または3-(2-ナフチル)プロピル基などが挙げられる。
【0059】
入手容易性の観点からは、RおよびRは、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基であるとより好ましく、さらに、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~20のアリール基であると特に好ましい。さらに、入手容易性や粘度等の取り扱いの容易性等を考慮すると、好ましくは、n-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ジメチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ドデシルフェニル基である。
【0060】
上記式(t-1)中のs、および式(t-2)中のvは、二価の置換基-(OA)-および-(OA)-の数を表し、0~50の整数である。上記sおよびvは、粘度の低下などによる取扱い易さ等の観点から、それぞれ独立して、0~40の整数が好ましく、0~30の整数がより好ましい。ここで、sおよびvが、1以上であるとき、イオン結合性塩は、オキシアルキレン鎖を有する。
【0061】
式(t-1)で示される硫酸エステルイオンにおいては、上記sは、それぞれ独立して、1~40の整数が好ましく、2~30の整数がより好ましい。硫酸エステルイオンにおいて、本発明の効果をより向上させるために、sは、1以上であると好ましい。このように、イオン結合性塩がオキシアルキレン鎖を含んでいると、導電性の向上効果をさらに高めることができる。よって、硫酸エステルイオンにおいて、sは1以上であるとさらに好ましく、2以上であると特に好ましい。一方、オキシアルキレン鎖が長すぎる場合、高粘度となるため、ハンドリング性を考慮すると、sの上限は、50であると好ましく、40であるとより好ましく、30であると特に好ましい。
【0062】
式(t-2)で示されるスルホン酸イオンにおいては、上記vは、それぞれ独立して、0~20の整数が好ましく、0~10の整数がより好ましい。スルホン酸イオンにおいて、vが上記範囲であると、導電性の向上効果をさらに高めることができる。
【0063】
およびRにおける炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~31のアリールアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、p-トリルオキシ基などのアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基などのアシル基、メチルスルファニル基、tert-ブチルスルファニル基などのアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p-トリルスルファニル基などのアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基などのジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等のアリールアミノ基などの他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基などが挙げられる。ただし、場合によって存在する置換基は、置換される基と同じになることはない。例えば、アルキル基がアルキル基で置換されることはない。
【0064】
イオン結合性塩において、式(t-1)で示される硫酸エステルイオンまたは式(t-2)で示されるスルホン酸イオンは、その用途によって適宜選択される。
【0065】
(イオン結合性塩の具体例)
上記式(1)で示されるイオン結合性塩のより好ましい化合物としては、下記化学式(101)~(154)で表されるイオン結合性塩が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより得られやすいという観点から、イオン結合性塩としては、化学式(101)~(116)、(121)~(138)、(139)~(151)で表されるイオン結合性塩が好ましく、化学式(101)~(116)、(121)~(136)、(139)~(150)で表されるイオン結合性塩がより好ましく、化学式(102)、(106)、(110)、(114)、(121)、(123)、(125)、(127)、(129)、(139)で表されるイオン結合性塩が特に好ましい。なお、下記化学式(101)~(154)において、-C13、-C1327と記載されたアルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基を示す。
【0066】
【化7-1】
【0067】
【化7-2】
【0068】
【化7-3】
【0069】
【化7-4】
【0070】
【化7-5】
【0071】
【化7-6】
【0072】
【化7-7】
【0073】
[導電助剤の用途]
本発明に係る導電助剤は、上記式(1)で示されるイオン結合性塩を含み、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物の導電性を向上させるために用いられる。
【0074】
導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物の導電性を向上させる形態としては、例えば、導電性フィラーと、単量体として機能しうる樹脂とを含む導電膜形成用組成物にイオン結合性塩を共存させ、その後、硬化(重合)工程を経て得られる硬化状態の導電性樹脂組成物の導電性を向上させる形態である。なお、本明細書において、硬化状態の導電性樹脂組成物が硬化する前の状態の組成物を「導電膜形成用組成物」とも称する。ここで、式(1)で表されるイオン結合性塩において、Qn+がエチレン性不飽和結合を有する含窒素化合物イオンである場合、導電膜形成用組成物の硬化(重合)工程において、イオン結合性塩は単量体としての樹脂と共重合することができる。この場合、イオン結合性塩が導電性膜を形成するポリマーに固定化されるため、イオン結合性塩がブリードアウトしにくくなる、すなわち耐久性が向上する効果が発揮される。なお、「単量体としての樹脂」は、樹脂を構成するための単量体(単なるモノマー)であってもよいし、反応性基を有する樹脂(マクロモノマー)であってもよい。
【0075】
すなわち、本発明に係る導電性樹脂組成物において、樹脂は、樹脂を構成するための単量体に由来する構成単位を含んでいてもよく、樹脂を構成するための単量体に由来する構成単位とイオン結合性塩に由来する構成単位とを含んでいてもよい。
【0076】
導電性樹脂組成物における導電助剤(イオン結合性塩)の含有量は、用途により異なるため特に限定されないが、導電助剤は、例えば、導電性フィラー100質量部に対して、0.05質量部以上100質量部以下とすることが好ましく、0.1質量部以上70質量部以下とすることがより好ましく、0.3質量部以上50質量部以下とすることがさらに好ましく、0.5質量部以上30質量部以下とすることが特に好ましく、0.8質量部以上20質量部以下とすることが最も好ましい。上記範囲であれば、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物に対して十分な導電性が付与されると共に、導電性フィラーの使用量を低減することができ、経済的にも有利である。
【0077】
ここで、導電助剤は、一般的には導電性樹脂組成物における含有量が多いほど、導電性樹脂組成物の導電性が向上する傾向がある。本発明に係る導電助剤は、導電性樹脂組成物における含有量が少なくても十分な導電性を発揮することを見出し、さらには、導電性樹脂組成物における導電助剤の含有量が所定の範囲内である場合、導電性樹脂組成物の導電性がさらに向上することを見出した。すなわち、本発明に係る導電性樹脂組成物において、一実施形態では、導電性をより一層向上させるために、導電助剤の含有量は、導電性フィラー100質量部に対して、0.1質量部以上6質量部以下であるのが好ましく、0.2質量部以上2質量部以下であるのがより好ましい。上記範囲であることにより、導電助剤による導電性向上の効果がさらに発揮できる。
【0078】
また、本発明に係る導電助剤によれば、透明な導電性樹脂組成物を得ることができる。透明性を重視する場合には、導電性樹脂組成物における導電助剤の含有量を所定の範囲とすることにより、より一層、高い透明性が達成される。すなわち、本発明に係る導電性樹脂組成物において、一実施形態では、高い透明性を有するために、導電助剤の含有量は、導電性フィラー100質量部に対して、1.5質量部以上10質量部以下であるのが好ましく、2質量部以上8質量部以下であるのがより好ましい。
【0079】
導電性樹脂組成物に導電助剤等の添加剤が含まれると、その添加剤の影響により、導電性樹脂組成物が塗布される基材の性能を低減させることがある。一般的に樹脂は他の樹脂との密着性は優れているが、導電性樹脂組成物に含まれる添加剤により、例えば、基材(樹脂)と導電性樹脂組成物との密着性が低下することがありうる。本発明に係る導電助剤は、導電性樹脂組成物に含まれた場合であっても、基材(樹脂)に対する密着性を低減させることがなく、好適な密着性を維持することができる。基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、タルク含有の塩素化ポリプロピレン等の樹脂を用いた場合、本発明に係る導電助剤は、基材(樹脂)に対する影響を特に低減することができ、本発明に係る導電助剤を含む導電性樹脂組成物と基材(樹脂)との密着性を維持することができる。このような導電性樹脂組成物と基材との密着性は、例えば、実施例で評価した耐水密着性により評価することができる。
【0080】
以上のように、本発明に係る導電助剤が添加される対象である導電性樹脂組成物は、導電性フィラーおよび樹脂を含有するものである。以下では、導電性樹脂組成物(導電膜形成用組成物)の構成について説明する。
【0081】
[導電性フィラー]
本発明に係る導電性フィラーとしては、例えば、銀、銅、金、銀コート銅、バイメタル粉末、黒鉛粒子、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、またはその他の炭素同素体、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化鉄、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化インジウム、リンドープ酸化スズ(PTO)、酸化スズ(TO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、五酸化アンチモン等を挙げることができる。
【0082】
これらの中でも、イオン結合性塩による導電性向上効果の観点から、スズドープ酸化インジウム、リンドープ酸化スズ、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、黒鉛粒子、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、酸化チタンが好ましく、リンドープ酸化スズ、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化チタンがより好ましく、リンドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズがさらに好ましい。
【0083】
本発明に係る導電性フィラーの平均粒子径(体積平均一次粒子径)は、好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは1.0μm以下であり、さらに好ましくは0.2μm以下である。透明導電性材料の場合、導電性フィラーの平均粒子径が上記範囲であることにより、透明性が向上するという効果が発揮される。導電性フィラーの平均粒子径の下限は、特に制限されないが、実用上、0.1nm以上であるのが好ましい。なお、導電性フィラーの平均粒子径は、例えば、動的光散乱法により測定された値である。
【0084】
導電性樹脂組成物における導電性フィラーの含有量は、用途により異なるため特に限定されないが、例えば、樹脂100質量部に対して、5質量部以上500質量部以下とすることが好ましく、10質量部以上400質量部以下とすることがより好ましく、20質量部以上350質量部以下とすることがさらに好ましく、50質量部以上300質量部以下とすることが特に好ましく、100質量部以上250質量部以下とすることが最も好ましい。導電性フィラーが上記範囲内で含有される場合、導電助剤が導電性樹脂組成物の導電性をより一層向上させることができる。
【0085】
[樹脂]
導電性樹脂組成物は、樹脂を含む。本発明に係る導電性樹脂組成物は、具体的には、樹脂および導電助剤に導電性フィラーを分散させたものであり、導電性ペースト、導電性塗料、導電性接着剤、導電性インキ、導電性フィルム、導電性繊維、導電性ゴム(複写機のローラーなど)、産業包材(ICテープ、キャリアテープなど)、静電塗装用プライマー(特に自動車用部品等に用いられるもの)などを挙げることができる。このような導電性樹脂組成物は、例えば、導電性フィラーを、導電助剤および樹脂を構成するための単量体に分散させ、硬化工程を経ることにより製造することができる。
【0086】
樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール(PEG)樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリプロピレンオキサイド樹脂、多糖類系樹脂、その他の光重合性樹脂、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
これらの中でも、樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂およびシリコーン樹脂からなる群より選択される1種以上であるのが好ましい。
【0088】
本発明の一実施形態において、導電性樹脂組成物に含まれる樹脂としては、各種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合または共重合させてなる(メタ)アクリル樹脂が用いられる。
【0089】
上記樹脂の製造に用いられる単量体(すなわち、樹脂を構成するための単量体)としては、例えば、(メタ)アクリルモノマー、その他のモノマー、アミド基を有する不飽和エチレン性モノマー、ウレア基を有する不飽和エチレン性モノマー、イソシアネート基を有する不飽和エチレン性モノマー、ウレタン基を有する不飽和エチレン性モノマー等が挙げられる。
【0090】
単官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の炭素数1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0091】
多官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、デカンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0092】
その他のモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、(メタ)アクリル酸-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等の(メタ)アクリル酸塩;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン含有α,β-不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β-不飽和芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、2種以上併用することが好ましい。
【0093】
アミド基を有する不飽和エチレン性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0094】
ウレア基を有する不飽和エチレン性モノマーの例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルエチレンウレア、(メタ)アクリロイルオキシプロピルエチレンウレア等が挙げられる。イソシアネート基を有する不飽和エチレン性モノマーの例として、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。ウレタン基を有する不飽和エチレン性モノマーの例として、(メタ)アクリロイルオキシエチルカルバミン酸メチル、ウレタンアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、必要とされる導電特性に応じて適宜組み合わせて使用することができる。
【0095】
本発明に係る導電助剤は、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物に含有させることにより導電性樹脂組成物(導電性フィラー)の導電性を向上させることができる。例えば、本発明に係る導電助剤が化合物(102)、(106)、(110)、(114)、(123)、(129)、または(139)の場合、導電助剤は、導電性フィラーとしてアンチモンドープ酸化スズ、酸化チタンおよび導電性カーボンブラックから選択される1種以上と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、スチレン、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、およびウレタンアクリレートから選択される1種以上の単量体から構成される樹脂と、を含む導電性樹脂組成物と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0096】
[溶媒]
本発明に係る導電助剤が添加される対象である導電膜形成用組成物は、溶媒を含むことが好ましい。溶媒は、導電膜形成用組成物の粘度を調整し、導電膜形成用組成物を基材に塗布する際に塗布性を向上させる。導電膜形成用組成物が塗布され、硬化工程を経た後の導電性樹脂組成物においては、溶媒を含んでいてもよい。
【0097】
溶媒の種類は特に限定されないが、プロトン性極性溶媒、非プロトン性極性溶媒または非極性溶媒を含むことが好ましい。プロトン性極性溶媒としては、例えば、水;エチルアルコール、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール(1-ブタノール)、2-ブチルアルコール(2-ブタノール)、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶媒:酢酸;等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のモノアルキレングリコールエーテル系溶媒;ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のジアルキレングリコールエーテル系溶媒が挙げられる。非極性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンこれらの誘導体などが挙げられる。なお、水は、特に制限されず、工業用水、精製水、イオン交換水、超純水などいずれの水であってもよい。溶媒は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよく、水との混合溶媒としてもよい。
【0098】
これらのうち、導電性フィラーの分散性の観点から、エチルアルコール、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トルエン、キシレンが好ましく、2-ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレンがより好ましい。
【0099】
溶媒は、導電性樹脂組成物の成分により適宜選択することができるが、例えば、導電性フィラーとしてアンチモンドープ酸化スズを用いて、樹脂がジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから構成される場合、溶媒は2-ブタノールであるのが好ましい。また、例えば、導電性フィラーとして酸化チタンを用いて、樹脂がジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから構成される場合、溶媒は2-ブタノールまたはトルエンであるのが好ましく、トルエンであるのがより好ましい。例えば、導電性フィラーとしてアンチモンドープ酸化スズを用いて、樹脂が、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、スチレンおよびウレタンアクリレートから選択される2種以上より構成される場合、溶媒はプロピレングリコールモノメチルエーテルであるのが好ましい。例えば、導電性フィラーとしてアンチモンドープ酸化スズまたは導電性カーボンブラックを用いて、樹脂がアクリル樹脂の場合、溶媒は2-ブタノールまたはトルエンであるのが好ましく、トルエンであるのがより好ましい。
【0100】
[重合開始剤]
導電性樹脂組成物においては、熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤を使用することが好ましく、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。重合開始剤の添加量は、全単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部であることが好ましい。
【0101】
熱重合開始剤の例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノオエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメトルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;等が挙げられる。なお、これらの熱重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
光重合開始剤の例としては、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;オキシムエステル類;カチオン系光重合開始剤;分子内水素引抜型光重合開始剤;等が挙げられる。なお、これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
[その他の成分]
本発明に係る導電性樹脂組成物は、上述した導電性フィラーおよび樹脂に加えて、必要に応じて、従来公知の添加剤(以下、「その他の添加剤」)等を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ガラスフリット、金属アルコキシド、分散剤、粘度調製剤、表面調製剤、可塑剤、pH調整剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を挙げることができる。これらのその他の添加剤は、導電性樹脂組成物の使用用途に応じて適宜配合すればよい。
【0104】
ここで、本発明に係る導電助剤が添加される導電膜形成用組成物(導電性樹脂組成物)は、分散剤が添加されていてもよいが、分散剤が添加されていなくとも導電性樹脂組成物中に導電性フィラーを良好に分散することができる。これは、イオン結合性塩のアニオン部の構造が界面活性剤としての構造を有するため、導電助剤としてだけではなく、分散剤としても作用することが考えられる。すなわち、本発明に係る導電助剤を含む導電性樹脂組成物においては、分散剤を含有しなくても、導電性樹脂組成物中に導電性フィラーを良好に分散することができ、これにより、導電性樹脂組成物(塗膜)中に効率的な導電パスが形成されるものと推測される。
【0105】
上述のように、本発明に係る導電助剤が導電膜形成用組成物に添加されることにより、導電性フィラーを良好に分散でき、得られる導電性樹脂組成物の導電性を向上することができる。すなわち、導電助剤が導電性樹脂組成物に含まれることにより、導電性フィラーの導電性をより高く発現できる。したがって、導電性樹脂組成物において、導電性フィラーの使用量を低減することができる。よって、本発明に係る導電助剤によれば、高価な導電性フィラーの使用量が低減でき、製品価格を低廉にすることができるという利点も有する。
【0106】
本発明に係る導電助剤の使用形態は特に制限されない。例えば、導電性フィラーと樹脂を構成するための単量体と(必要に応じて溶媒と)を混合した後、導電助剤を添加して得られた分散液を導電膜形成用組成物としてもよいし、導電性フィラーを導電助剤に分散させた後(必要に応じて溶媒も含んでもよい)、当該分散液に樹脂を構成するための単量体を添加して導電膜形成用組成物としてもよいし、導電助剤と樹脂を構成するための単量体とを混合し(必要に応じて溶媒も含んでもよい)、当該混合液に導電性フィラーを分散させて導電膜形成用組成物としてもよいし、これらを適宜組み合わせた形態であっても構わない。
【0107】
また、導電性フィラーを分散させる方法は、特に限定されないが、例えば、ローラーミル、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、自転・公転ミキサー等を用いて導電性フィラーを分散させることができる。本発明の導電膜形成用組成物において、ローラーミル、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル等の粉砕機は、導電性フィラーの二次粒子を一次粒子まで粉砕することができるため、導電性フィラーの分散に好ましく用いることができる。
【0108】
[導電性塗膜]
本発明によれば、導電性樹脂組成物からなる導電性塗膜(以下、「塗膜」)も提供される。本発明に係る導電性樹脂組成物は、上述のように、本発明に係る導電助剤の効果が発揮されるものであるため、本発明に係る塗膜も導電助剤の効果が発揮され、高い導電性を有する。
【0109】
本発明に係る塗膜は、本発明に係る導電膜形成用組成物を基材上に塗布し、乾燥および重合することにより得られる。乾燥条件、重合条件は、特に制限されず、例えば溶液重合の場合は、重合温度は使用する重合開始剤の種類によって適宜設定することができるが、好ましくは50~120℃である。また、重合時間についても、特に制限されないが、好ましくは1~10時間である。
【0110】
紫外線を照射して重合する場合、照射光源としては、水銀ランプ(例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ)、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線の照射条件は、特に制限されないが、積算光量は100mJ/cm以上が好ましく、200mJ/cm以上がより好ましい。また、照射時間についても、特に制限されないが、好ましくは0.01~300秒である。
【0111】
[導電性塗布物]
本発明によれば、基材と、前記基材上に形成された本発明に係る導電性塗膜と、を有する塗布物も提供される。本発明に係る導電性塗膜は、上述のように、本発明に係る導電助剤の効果が発揮されるものであり、したがって、このような導電性塗膜を基材上に有する塗布物も、また本発明に係る導電助剤の効果を発揮することができる。
【0112】
導電性塗布物としては、具体的には、電極、配線、回路、導電性接合構造、導電性粘着テープ等を挙げることができる。塗膜の形状および厚さも特に制限されず、その用途によって所望の厚さを採用することができる。
【0113】
導電性塗膜が形成される基材については、金属、プラスチック(樹脂)などの有機物、セラミックス、ガラスなどの無機物、紙および木材など、その素材は特に限定されない。基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、タルク含有の塩素化ポリプロピレン等の樹脂を用いた場合、本発明に係る導電助剤は、基材(樹脂)に対する影響を特に低減でき、本発明に係る導電助剤を含む導電性樹脂組成物と基材(樹脂)との密着性を維持することができる。
【0114】
なお、本発明の導電膜形成用組成物を基材上に塗布して導電性塗膜を形成する方法としては、従来公知の塗布方法を特に限定することなく採用することができる。
【0115】
[成形体]
本発明によれば、本発明に係る導電性樹脂組成物からなる、成形体も提供される。本発明に係る導電性樹脂組成物は、上述のように、本発明に係る導電助剤の効果が発揮されるものであり、したがって、導電性樹脂組成物からなる成形体も、また本発明に係る導電助剤の効果を発揮することができる。導電性樹脂組成物からなる成形体の例としては、ディスプレイ、タッチパネル、帯電防止床、ICトレー、シリコンウエハケースなどが挙げられる。
【0116】
[導電性樹脂組成物の製造方法]
本発明に係る導電性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下の工程を含む製造方法により製造できる。
【0117】
一例として、本発明に係る導電性樹脂組成物の製造方法は、導電性フィラーおよび本発明に係るイオン結合性塩からなる導電助剤が分散されてなる分散液を調整する工程と;前記分散液と樹脂を構成するための単量体とを混合して導電膜形成用組成物を得る工程と;前記導電膜形成用組成物を硬化させて導電性樹脂組成物を得る工程と;を含む。
【実施例0118】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0119】
[合成例1:[MEM][EHDG-S]の合成;イオン結合性塩の合成]
ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名:2-エチルヘキシルジグリコール、略称:EHDG)150.0質量部にトルエン150.0質量部を加え、110℃に昇温した。これにスルファミン酸80.2質量部を加え3時間反応させた。反応後、過剰のスルファミン酸を濾別して、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:EHDG-SF;アンモニウムイオンはNH )のトルエン溶液を得た。
【0120】
上記で得られたEHDG-SFの50%トルエン溶液100.0質量部に、N-エチルエタノールアミン(日本乳化剤株式会社製、商品名:アミノアルコールMEM、略称:MEM)を21.2質量部加え、120℃で3時間反応させた。(EHDG-SFとMEMとのモル比は1:1.5)
反応終了後、トルエンおよび未反応のMEMを減圧留去し(温度:150℃、減圧度:1.33kPa(10mmHg))、目的とするイオン結合性塩(略称:[MEM][EHDG-S];化学式(102)で表される化合物)を61.2質量部得た。得られたイオン結合性塩は、常温(25℃)で液体であった。
【0121】
[合成例2:[MEM][N-1305-S]の合成;イオン結合性塩の合成]
従来公知の方法により合成したポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:1305-SF)517.4質量部に、N-モノエチルエタノールアミン(日本乳化剤株式会社製、商品名:アミノアルコールMEM、略称:MEM)93.6質量部を滴下した後、1時間反応させた。反応後、過剰のMEMを減圧留去して目的とするイオン結合性塩(略称:[MEM][N-1305-S]、化学式(106)で表される化合物)を589.5質量部得た。得られたイオン結合性塩は、常温(25℃)で液体であった。
【0122】
[合成例3:[MEM][Cum-SO]の合成;イオン結合性塩の合成]
クメンスルホン酸(o-,m-,p-クメンスルホン酸異性体混合物)(テイカ株式会社製、商品名:テイカトックス500、略称:Cum-SOH)199.3質量部にN-モノエチルエタノールアミン(日本乳化剤株式会社製、商品名:アミノアルコールMEM、略称:MEM)89.1質量部を滴下した後に1時間反応させて、目的とするイオン結合性塩(略称:[MEM][Cum-SO]、化学式(110)で表される化合物)を288.4質量部得た。得られたイオン結合性塩は常温(25℃)で液体であった。
【0123】
[合成例4:[MEM][DOSS]の合成;イオン結合性塩の合成]
ジオクチルフマレート200.0質量部、50%亜硫酸水素アンモニウム水溶液116.4質量部、メタノール37.0質量部、水15.6質量部をオートクレーブに仕込み、120℃に昇温して24時間反応させた。この時の最大圧力は0.25MPaであった。
【0124】
上記で得られたアンモニウムジオクチルスルフォサクシネート(略称:DOSS-NH)140.0質量部に、MEMを30.4質量部加えた(DOSS-NHとMEMとのモル比は1:1.5)。
【0125】
仕込み後、80℃で3時間反応させた。反応終了後、メタノール、水および未反応のMEMを減圧留去し(温度:125℃、減圧度:1.33kPa(10mmHg))、目的とするイオン結合性塩(略称:[MEM][DOSS]、化学式(114)で表される化合物)を115.0質量部得た。また、得られたイオン結合性塩は、常温(25℃)で液体であった。
【0126】
[合成例5:[Na][DOSS]の合成;イオン結合性塩の合成]
ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム塩のメタノール水溶液(日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール291-M、略称:N-291-M)100.0質量部を減圧留去し(温度:150℃、減圧度:1.33kPa(10mmHg))、目的とするイオン結合性塩(略称:[Na][DOSS]、化学式(120)で表される化合物)を65.0質量部得た。
【0127】
[合成例6:[2M-MA][707-S]の合成;イオン結合性塩の合成]
N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート(略称:2A-MA)185.3質量部に、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の30%水溶液(日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール707-SF、略称:N-707-SF)から水を減圧留去して得られたポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:707-SF)を920.1質量部添加した後、1時間反応させた。反応後、目的とするイオン結合性塩(略称:[2A-MA][707-S]、化学式(123)で表される化合物)を1088.4質量部得た。
【0128】
[合成例7:[2M-AA][130305-S]の合成;イオン結合性塩の合成]
トリデカノール200.4質量部に、水酸化カリウム2質量部を添加し、170℃まで昇温した後、1,2-ブチレンオキシド216.3質量部を1.0MPa以下の条件にて圧入し、10時間反応させた。その後さらに、エチレンオキシド220.3質量部を1.0MPa以下の条件にて圧入し、10時間反応させ、ポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル639質量部を得た。得られたポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル637質量部を110℃まで昇温し、スルファミン酸97.1質量部を加え、3時間反応させた。反応後、未反応のスルファミン酸を濾別し、ポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩([C1327-O-(BO)-(EO)-SO ][NH ])734.1質量部を得た。
【0129】
N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(略称:2M-AA)143.2質量部に、上記で合成したポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:130305-SF)を734.1質量部添加した後、50℃で1時間反応させた。反応後、目的とするイオン結合性塩(略称:[2M-AA][130305-S]、化学式(129)で表される化合物)を860.1質量部得た。
【0130】
[合成例8:[APM-Si][EHDG-S]の合成;イオン結合性塩の合成]
ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名:2-エチルヘキシルジグリコール、略称:EHDG)150.0質量部にトルエン150.0質量部を加え、110℃に昇温した。これにスルファミン酸80.2質量部を加え3時間反応させた。反応後、過剰のスルファミン酸を濾別して、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:EHDG-SF;アンモニウムイオンはNH )のトルエン溶液を得た。
【0131】
上記で得られたEHDG-SFの50%トルエン溶液100.0質量部に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM-903、略称:APM-Si)を42.7質量部加え、120℃で3時間反応させた。(EHDG-SFとAPM-Siモル比は1:1.5)。反応終了後、トルエンおよび未反応のAPM-Siを減圧留去し(温度:150℃、減圧度:1.33kPa(10mmHg))、目的とするイオン結合性塩(略称:[APM-Si][EHDG-S];化学式(139)で表される化合物)を72.3質量部得た。
【0132】
得られた[APM-Si][EHDG-S]のNMRスペクトルデータを下記に示す。H-NMR(CDCl、400MHz)δ0.65-0.75(t、2H)、0.83-0.90(m、6H)、1.27-1.42(m、8H)、1.47-1.53(m、1H)、1.77-1.86(m、2H)、2.96-3.05(m、2H)、3.30-3.36(m、2H)、3.56(s、11H)、3.62-3.65(t、2H)、3.73-3.75(t、2H)、4.25-4.28(t、2H)。
【0133】
[実施例1~14および比較例1~11]
導電性フィラーとしてのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)粉末(体積平均一次粒子径0.01~0.03μm;製品名「SN-100p」;石原産業株式会社製)またはリンドープ酸化スズ(PTO)(製品名「SP-2」;三菱マテリアル電子化成株式会社製)200部に対し、2部、5部または10部の表1~表3に記載の導電助剤、800部の溶媒としての2-ブタノール、および5800部のジルコニアビーズとなる割合で全成分を容器に入れ、湿式粉砕機で2時間練合した。なお、比較例11では、上記手順において、導電助剤を加えなかった。練合後、ジルコニアビーズを取り除いて、導電性フィラーを含む分散液を得た。この分散液に100部の樹脂としてのDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)と3部の重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとを加え、均一に溶解させることにより、実施例1~14および比較例1~11の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物をPET板(100mm×200mm、厚み1mm)上にWET膜厚50μmで塗布し、70℃の乾燥機にて1分間乾燥し、空気下で高圧水銀灯を用いて500mJ/cmの光を照射し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例1~14および比較例1~11の試験片を得た。
【0134】
[実施例15、17および比較例12、14]
ATO粉末またはPTO粉末150部に対し、導電助剤を加えないか、または1.5部の表4に記載の導電助剤を加える以外は、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、実施例15、17および比較例12、14の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物を、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、PET板(100mm×200mm、厚み1mm)に塗布し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例15、17および比較例12、14の試験片を得た。
【0135】
[実施例16、18および比較例13、15]
ATO粉末またはPTO粉末133部に対し、導電助剤を加えないか、または1.3部の表4に記載の導電助剤を加える以外は、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、実施例16、18および比較例13、15の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物を、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、PET板(100mm×200mm、厚み1mm)に塗布し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例16、18および比較例13、15の試験片を得た。
【0136】
なお、比較例の導電助剤として用いた[Na][EHDG-P]は、下記式で表される化合物であり、[トリメチルプロピルアンモニウム][TFSA]は、トリメチルプロピルアンモニウムとトリフルオロメタンスルホン酸との塩である。
【0137】
【化8】
【0138】
[比較例16~21]
表5に記載の量のATO粉末、および表5に記載の量の導電助剤(アセチルアセトンまたはフッ素系イオン液体(広栄化学株式会社製、IL-A2)のいずれか)を用いること以外は、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、比較例16~21の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物を、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、PET板(100mm×200mm、厚み1mm)に塗布し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する比較例16~21の試験片を得た。
【0139】
[実施例22~33]
表6または表7に記載の量のATO粉末と、表5に記載の量の導電助剤([MEM][EHDG-S]、[2M-MA][707-S]、[2M-AA][130305-S]または[APM-Si][EHDG-S]のいずれか)とを用いること以外は、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、実施例22~33の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物を、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、PET板(100mm×200mm、厚み1mm)に塗布し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例22~33の試験片を得た。
【0140】
[実施例34、35および比較例22、23]
ATO粉末200部に対し、樹脂をDPHAからDPHAおよびウレタンアクリレート(UN-350、根上工業株式会社製)の混合系(質量比;DPHA:ウレタンアクリレート=33:67)に変更し、溶媒を2-ブタノールからプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)に変更し、導電助剤を加えない、または表8に記載の量の導電助剤([MEM][EHDG-S]、[MEM][DOSS]またはジルコニア錯体のいずれか)を用いること以外は、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、実施例34、35および比較例22、23の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物を、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、PET板(100mm×200mm、厚み1mm)に塗布し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例34、35および比較例22、23の試験片を得た。
【0141】
[実施例36~38および比較例24~27]
(樹脂について)
まず、実施例36~38および比較例24~27の導電膜形成用組成物に用いる樹脂を準備した。
【0142】
アクリレート系樹脂(P1)の作製
冷却管、窒素導入管、温度計、テフロン半月攪拌翼を備えたフラスコに、トルエン300.0質量部、n-ブチルアクリレート(BA)70.0質量部、メチルメタクリレート(MMA)130.0質量部を仕込み、重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを3.0質量部添加し、90℃で3時間重合を行い固形分50%トルエン溶液の樹脂(P1)(質量比;BA:MMA=35:65)を得た。
【0143】
アクリレート・スチレン系樹脂(P2)の作製
メチルメタクリレート(MMA)の代わりにスチレン(St)130.0質量部を用いたことを除いては樹脂(P1)の作製と同様にして樹脂(P2)(質量比;BA:St=35:65)を得た。
【0144】
(樹脂組成物および試験片の作製)
ATO粉末200部に対し、導電助剤を加えないか、または2部の導電助剤([MEM][EHDG-S]、[MEM][DOSS]またはジルコニア錯体のいずれか)と、800部のプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、および5800部のジルコニアビーズとなる割合で全成分を容器に入れ、湿式粉砕機で2時間練合した。練合後、ジルコニアビーズを取り除いて、酸化ジルコニウム微粒子分散液を得た。この分散液に固形分で100部相当の上記で得られたアクリレート系樹脂(P1)またはアクリレート・スチレン系樹脂(P2)を加え、均一に溶解させることにより導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物をガラス板(100mm×200mm、厚み2mm、面取り加工品)上にWET膜厚50μmで塗布して110℃の乾燥機にて10分間乾燥し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例36~38および比較例24~27の試験片を得た。
【0145】
[実施例39および比較例28]
導電性フィラー(ATO粉末)を白色導電性材料(酸化チタンおよびアンチモンドープ酸化スズの混合系、体積平均一次粒子径:0.2~0.3μm、製品名:ET-500W;石原産業株式会社社製)に変更し、この導電性フィラー200部に対し、溶媒を2-ブタノールからトルエンに変更し、導電助剤を加えない、または表10に記載の量の導電助剤([MEM][EHDG-S])を用いること以外は、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、実施例39および比較例28の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物を、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、PET板(100mm×200mm、厚み1mm)に塗布し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例39および比較例28の試験片を得た。
【0146】
[実施例40、41および比較例29]
ATO粉末200部に対し、樹脂をDPHAからアクリル樹脂(アクリディックA-168;DIC株式会社)に変更し、溶媒を2-ブタノールからトルエンに変更し、導電助剤を加えない、または表11に記載の量の導電助剤([MEM][EHDG-S]または[MEM][DOSS]のいずれか)を用いること以外は、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、実施例40、41および比較例29の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物2mLをガラス板(100mm×200mm、厚み2mm、面取り加工品)上にWET膜厚50μmで塗布し、110℃の乾燥機にて10分間乾燥し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例40、41および比較例29の試験片を得た。
【0147】
[実施例42~44および比較例30、31]
導電性フィラー(ATO粉末)をカーボン(カーボンECP;ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製)に変更し、この導電性フィラーの表12に記載の量に対し、樹脂をDPHAからアクリル樹脂(アクリディックA-168;DIC株式会社製)に変更し、溶媒を2-ブタノールからトルエンに変更し、導電助剤を加えない、または表12に記載の量の導電助剤([MEM][EHDG-S]、[MEM][Cum-S]またはジルコニア錯体のいずれか)を用いること以外は、実施例1~14および比較例1~11と同様の手順で、実施例42~44および比較例30、31の導電膜形成用組成物を得た。得られた導電膜形成用組成物2mLをガラス板(100mm×200mm、厚み2mm、面取り加工品)上にWET膜厚50μmで塗布し、110℃の乾燥機にて10分間乾燥し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する実施例42~44および比較例30、31の試験片を得た。
【0148】
《評価》
[表面抵抗率]
JIS K 6911(2006)に準拠し、上記試験片(塗膜が形成された基材)の塗工面の表面抵抗率(Ω)を、高抵抗率計ハイレスターUP(三菱化学アナリテック社製)を用い、測定温度:25℃、湿度:50%RH、印加電圧:10Vで測定した。
【0149】
[水洗後の表面抵抗率]
表面抵抗率を測定した試験片に水道水を30秒間流水(約1L)させ、次いでイオン交換水ですすぎ、水滴を拭き取った後に110℃にて5分間乾燥させた。この工程を1回行った後の試験片の表面抵抗率を測定したことを除いては、上記と同様にして水洗後の表面抵抗率 [Ω/□]を測定した。
【0150】
[ヘイズ]
JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH-7000)を用いて、上記試験片(塗膜が形成された基材)のヘイズ値を測定した。
【0151】
[耐水密着性]
試験片(塗膜が形成された基材)を40℃の温水に24時間含侵させ、その後、試験片の塗工面に対して以下の手順に従ってクロスカットを行い、下記基準にしたがって評価を行った。
(1)試験片の塗膜が形成された面(塗膜面)において、基板まで到達する切り込みを1mm間隔で平行に11本入れた後、90°向きを変えて同様に切り込みを11本入れる;
(2)切込みを入れた塗膜面に約50mm付着するようにセロハン粘着テープを貼り付け、消しゴムでこすって塗膜にテープを付着させる;
(3)テープに付着させてから1~2分後にテープの端を持って塗膜面に直角に保ち、引きはがす;
(4)セロハン粘着テープを引き剥がされた塗膜面において、下記評価に従って評価を行う。
【0152】
評価基準:
○:切り込み格子100個の中、剥がされた格子の数が0~4個
×:切り込み格子100個の中、剥がされた格子の数が5個以上。
【0153】
実施例1~45および比較例1~31の試験片における表面抵抗率、水洗後の表面抵抗率、ヘイズ、耐水密着性の評価結果を下記の表1~表12示す。なお、表1~表12において、導電性樹脂組成物における「-」は、その化合物を含有していないことを意味し、塗膜評価における「-」はその評価を行っていないことを表す。
【0154】
[種々の基材に対する耐水密着性]
実施例9、12、28、31および比較例11、19で得られた導電性樹脂組成物を用いて、種々の基材における耐水密着性を評価した。具体的には、各導電性樹脂組成物を、PET板(100mm×200mm、厚み1mm)、タルク含有ポリプロピレン板(100mm×200mm、厚み3mm、ダイセルPP PT6N1;ダイセルミライズ)、ABS樹脂板(5mm×150mm、厚み1mm、ABSタフエースEAR-003;住友ベークライト株式会社)、アクリル板(透明)(75mm×150mm、厚み2mm、アクリライトL-001;三菱ケミカル株式会社)、アクリル板(黒)(75mm×150mm、厚み2mm、アクリライトL-502;三菱ケミカル株式会社)に塗布し、乾燥機で70℃1分間乾燥した後、空気下で高圧水銀灯を用いて500mJ/cmの光を照射し、導電性樹脂組成物からなる塗膜を有する試験片を得た。
【0155】
実施例9、12、28、31および比較例19、11の導電性樹脂組成物を用いて、種々の基材に塗布した場合の耐水密着性を10段階で評価した。具体的には、切り込み格子100個中の剥がれた格子の数を下記の評価基準に基づき評価した。表13には、実施例9、12、28、31および比較例19、11の導電性樹脂組成物による種々の基材に対する耐水密着性を10段階で評価した結果を示す。
【0156】
評価基準:
10:切り込み格子100個の中、剥がされた格子の数が0個
8 :切り込み格子100個の中、剥がされた格子の数が1~2個
6 :切り込み格子100個の中、剥がされた格子の数が3~4個
4 :切り込み格子100個の中、剥がされた格子の数が5~14個
2 :切り込み格子100個の中、剥がされた格子の数が15~30個
0 :切り込み格子100個の中、剥がされた格子の数が31個以上。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
【表8】
【0165】
【表9】
【0166】
【表10】
【0167】
【表11】
【0168】
【表12】
【0169】
【表13】
【0170】
上記評価により、本発明に係る所定のイオン結合性塩が添加されてなる導電性樹脂組成物からなる導電性塗膜(導電膜)は、優れた導電性を有していることが示された。一方、本発明における所定のイオン結合性塩を含まない比較例1~31では、十分な導電性が得られなかった。このように、本発明に係る所定のイオン結合性塩は、添加量が比較的少なくても、導電性フィラーおよび樹脂を含む導電性樹脂組成物に対して導電性を十分に付与できる(すなわち、導電助剤として有用である)ことがわかる。
【0171】
以上のように、本発明の導電助剤は、良好な導電性を導電性樹脂組成物に付与することができる。よって、本発明の導電助剤は、導電性ペースト、導電性塗料、導電性接着剤、導電性インキ、導電性フィルム、導電性繊維、導電性ゴム(複写機のローラーなど)、産業包材(ICテープ、キャリアテープなど)、静電塗装用プライマー(特に自動車用部品等に用いられるもの)などに用いられる導電性樹脂組成物に好適に用いられ、そのような導電性樹脂組成物を用いた成形体として、ディスプレイ、タッチパネル、帯電防止床、ICトレー、シリコンウエハケース等に好適に用いられることが示された。
【0172】
本出願は、2021年5月13日に出願された日本特許出願番号第2021-081746号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。