(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176037
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】グラウト材料、グラウトモルタル組成物及び硬化体
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20221117BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20221117BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20221117BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/04 Z
C04B20/00 B
C04B22/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171559
(22)【出願日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2021082491
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】高木 聡史
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB01
4G112MB11
4G112PA03
4G112PB06
4G112PC09
(57)【要約】
【課題】水和熱、乾燥収縮を低減し、かつ、減水剤を過多とせずに充填性を高めたグラウト材料、グラウトモルタル組成物及び硬化体を提供すること。
【解決手段】セメント、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、細骨材A、細骨材Bを含有するグラウト材料であって、前記細骨材Aの粒子径が1.2mm未満であって、平均粒子径が0.4~0.8mmであり、前記細骨材Bの粒子径が1.2~10mmの範囲であって、平均粒子径が2~9mmであり、前記細骨材Aと前記細骨材Bの質量比(細骨材A/細骨材B)が50~200%であり、安息角が40~55°であるグラウト材料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、細骨材A、細骨材Bを含有するグラウト材料であって、
前記細骨材Aの粒子径が1.2mm未満であって、平均粒子径が0.4~0.8mmであり、前記細骨材Bの粒子径が1.2~10mmの範囲であって、平均粒子径が2~9mmであり、前記細骨材Aと前記細骨材Bの質量比(細骨材A/細骨材B)が50~200%であり、
安息角が40~55°であるグラウト材料。
【請求項2】
前記膨張材は、テルネサイトを含有し、
前記テルネサイトの含有量は、前記膨張材100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下である、請求項1に記載のグラウト材料。
【請求項3】
前記細骨材Aは、JIS A1121「ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験」による粗粒率の低下が70%以上100%以下である、請求項1又は2に記載のグラウト材料。
【請求項4】
前記細骨材Aの化学成分は、CaOの割合が85質量%以上、SiO2の割合が0.2質量%以上14質量%以下、K2Oの割合が40質量ppm以上3,000質量ppm以下、SO3の割合が40質量ppm以上3,000質量ppm以下であり、
前記細骨材Bの化学成分は、SiO2の割合が75質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のグラウト材料。
【請求項5】
前記細骨材Aの化学成分は、Fe2O3の割合が0.1質量%以上3.0質量%以下、Al2O3の割合が0.1質量%以上3.0質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のグラウト材料。
【請求項6】
前記細骨材Aの含有割合は、前記セメント100質量部に対して、50質量部以上300質量部以下であって、前記細骨材Bの含有割合は、前記セメント100質量部に対して、50質量部以上300質量部以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のグラウト材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のグラウト材料と水とを含有する、グラウトモルタル組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のグラウトモルタル組成物を用いてなる、硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるグラウト材料、グラウトモルタル組成物、及びグラウトモルタル組成物を用いてなる硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
グラウト材料は、モルタル、コンクリートの作業性や充填性を改善し、グラウト工事を円滑に行うために使用されている。
主な用途としては、地下構造物の施工、橋梁支承部の据付け、各種機械類の据付け、耐震補強における壁、柱の間隙充填等であり、構造物の間隙を充填して一体化するために、(1)充填箇所および充填方法等に応じた所要の流動性、(2)充填後にブリーディング、沈下および空隙を発生させない無収縮性、(3)構造物の使用条件に応じた所要の各種強度などが要求される(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
セメント硬化体は、セメントの水和又は乾燥に伴って体積が減少することから、ひび割れが発生したり、既存構造体との付着性能が低下したりする危険性がある。ひび割れの発生は美観を損ねるばかりか、構造物の安定性、防水性及び水密性に悪影響を与える危険性がある。
そのため、セメントの収縮を補償し、ひび割れ発生抑制や、構造体との付着性能を保持する目的で、使用される膨張材としては、例えば、3CaO・3Al2O3・CaSO4(アウイン)、CaSO4及びCaOを主成分とするカルシウムサルホアルミネート系(アウイン系膨張材)、遊離石灰を主成分とする石灰系(石灰系膨張材)のほか、遊離石灰-水硬性物質-セッコウ類を含有してなる膨張材等がある。
【0004】
セメント、膨張材の他、特定の減水剤を組み合せることにより、温度依存性が少なく、流動性・充填性保持効果が著しく高く、長期に亘り強度増進効果を付与したグラウト材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、優れた流動性、泡発生の抑制、最適な長さ変化率、体積膨張率を保持した高強度グラウト材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、従来の膨張材を含有するグラウト材料は、品質保証期間を超えて貯蔵すると外部より浸入してくる水分、特に高温時での流動性の保持効果及び膨張性能が低下してしまう危険性があった。また、マスコンクリートの様な比較的大きな部位へ施工した場合、水和熱が大きく、乾燥収縮ひび割れが発生することや、充填性を高めるために減水剤が過多となって、グラウト材が固液分離する危険性があった。
そこで、水和熱、乾燥収縮を低減し、かつ、減水剤を過多とせずに充填性を高めたいといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3894780号公報
【特許文献2】国際公開第2007/029399パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】新セメント・コンクリート用混和材料、304-307頁、笠井芳夫・坂井悦郎著、技術書院、平成19年1月15発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水和熱、乾燥収縮を低減し、かつ、減水剤を過多とせずに充填性を高めたグラウト材料、グラウトモルタル組成物及び硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明者らは、上記課題を解決すべく、種々の努力を重ねた結果、特定の細骨材を組み合わせて調製したグラウト材料が、水和熱、乾燥収縮が小さく、さらに充填性を向上させることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]セメント、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、細骨材A、細骨材Bを含有するグラウト材料であって、前記細骨材Aの粒子径が1.2mm未満であって、平均粒子径が0.4~0.8mmであり、前記細骨材Bの粒子径が1.2~10mmの範囲であって、平均粒子径が2~9mmであり、前記細骨材Aと前記細骨材Bの質量比(細骨材A/細骨材B)が50~200%であり、安息角が40~55°であるグラウト材料。
[2]前記膨張材は、テルネサイトを含有し、前記テルネサイトの含有量は、前記膨張材100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下である、上記[1]に記載のグラウト材料。
[3]前記細骨材Aは、JIS A1121「ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験」による粗粒率の低下が70%以上100%以下である、上記[1]又は[2]に記載のグラウト材料。
[4]前記細骨材Aの化学成分は、CaOの割合が85質量%以上、SiO2の割合が0.2質量%以上14質量%以下、K2Oの割合が40質量ppm以上3,000質量ppm以下、SO3の割合が40質量ppm以上3,000質量ppm以下であり、前記細骨材Bの化学成分は、SiO2の割合が75質量%以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のグラウト材料。
[5]前記細骨材Aの化学成分は、Fe2O3の割合が0.1質量%以上3.0質量%以下、Al2O3の割合が0.1質量%以上3.0質量%以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のグラウト材料。
[6]前記細骨材Aの含有割合は、前記セメント100質量部に対して、50質量部以上300質量部以下であって、前記細骨材Bの含有割合は、前記セメント100質量部に対して、50質量部以上300質量部以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のグラウト材料。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のグラウト材料と水とを含有する、グラウトモルタル組成物。
[8]上記[7]に記載のグラウトモルタル組成物を用いてなる、硬化体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水和熱、乾燥収縮を低減し、かつ、減水剤を過多とせずに充填性を高めたグラウト材料、グラウトモルタル組成物及び硬化体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書における部や%は特に規定しない限り質量基準である。
また、本明細書でいうグラウトモルタルとは、粗骨材のないペースト、細骨材を含有するモルタルを総称するものである。
【0012】
本発明のグラウト材料は、セメント、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、細骨材A、細骨材Bを含有するグラウト材料であって、前記細骨材Aの粒子径が1.2mm未満であって、平均粒子径が0.4~0.8mmであり、前記細骨材Bの粒子径が1.2~10mmの範囲であって、平均粒子径が2~9mmであり、前記細骨材Aと前記細骨材Bの質量比(細骨材A/細骨材B)が50~200%であり、安息角が40~55°であるグラウト材料である。
本発明者らは、細骨材に着目し、安息角、および、特定の粒子径の細骨材2種類の比率がグラウト材料の充填性に影響することを突き止めた。本発明は、かかる知見に基づき完成したものである。
すなわち、グラウト材料の安息角が40°未満、または、55°を超える、または、細骨材Aの平均粒子径が0.4mm未満、または、0.8mmを超える、または、細骨材Bの平均粒子径が2mm未満、または、9mmを超える、または、前記細骨材Aと前記細骨材Bの質量比(細骨材A/細骨材B)が50%未満、または、200%を超えると充填性が低くなってしまう。
【0013】
<安息角>
本発明のグラウト材料の安息角は、40~55°である。安息角がこの範囲であると充填性が向上する。以上の観点から、安息角は42~50°であることが好ましく、43~49°であることがより好ましく、45~48°であることがさらに好ましい。
グラウト材料の安息角は、例えば、グラウト材料に含まれるセメント、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、細骨材A、細骨材Bなどの粒子径、割合を変えることで調整することができる。特に、本発明のグラウト材料の主な成分であるセメントおよび細骨材の粒子径による影響が大きく、粒子径が小さいほど安息角は小さくなる傾向がある。例えば、細骨材Aを20~40質量%、細骨材Bを20~60質量%、セメントの粒子径として5~20μmのものを10~40質量%含有させることで安息角40~55°のグラウト材が得られる。また、使用する材料に応じてセメントとして、より微細なものを用いることでグラウト材の安息角を調整することが可能である。さらに膨張材についても、添加量が多い場合には、その粒子径によって、安息角を調整することができ、本発明の効果を奏する範囲とすることが可能である。
なお、安息角は、測定試料を漏斗を使って、φ80mmのテーブルへ自然落下させて、形成した粉体の山の角度を測定することで得た。
【0014】
<細骨材>
本発明のグラウト材料は、2種類の細骨材を有し、一方の細骨材(細骨材A)は、粒子径が1.2mm未満の粒子である。細骨材Aの粒子径がこの範囲であると、充填性が向上する。以上の観点から、細骨材Aの粒子径は1.1mm以下であることが好ましく、粒子径は1.0mm以下であることがさらに好ましい。また、細骨材Aは、平均粒子径が0.4~0.8mmである。細骨材Aの平均粒子径がこの範囲であると、充填性が向上する。以上の観点から、細骨材Aの平均粒子径は、0.5~0.8mmであることが好ましく、平均粒子径は、0.6~0.8mmであることがさらに好ましい。
また、本発明のグラウト材料が有する他の細骨材(細骨材B)は、粒子径が1.2~10mmの範囲の粒子であって、平均粒子径は2~9mmである。細骨材Bの粒子径が上記範囲であると、細骨材Aとのバランスがとれ、上記好適な安息角が得られやすい。以上の観点から、細骨材Bの粒子径は1.2~8mmの範囲であることが好ましく、1.2~6mmの範囲であることがさらに好ましい。
また、細骨材Bの平均粒子径が上記範囲であると、細骨材Aとのバランスがとれ、上記好適な安息角が得られ、本発明の効果が達成される。以上の観点から、平均粒子径は3~7mmであることがより好ましく、4~5mmであることがさらに好ましい。
さらに、前記細骨材Aと前記細骨材Bの質量比(細骨材A/細骨材B)は、50~200%である。当該質量比がこの範囲であることで、本発明の効果が達成される。以上の観点から、細骨材Aと細骨材Bの質量比は、70~180%であることがより好ましく、90~160%であることがさらに好ましい。なお、ここで質量比は、細骨材Aの質量を細骨材Bの質量で除した結果をパーセント表示にしたものである。
また、粒子径、および、平均粒子径はふるい分け法による重量通過百分率から求めた。
【0015】
<セメント>
本発明で使用するセメントとは、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、低熱および中庸熱等の各種セメント、これらのセメントに、高炉スラグやフライアッシュやシリカフュームなどを混合した各種混合セメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)、市販されている微粒子セメントなどが挙げられ、各種セメントや各種混合セメントを微粉末化して使用することも可能である。また、通常セメントに使用されている成分(例えば石膏等)量を増減して調整されたものも使用可能である。
本発明では、水和熱、乾燥収縮、充填性の観点から、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントを選定することが好ましい。
【0016】
本発明で使用するセメントは、製造コストや強度発現性の観点から、セメントのブレーン比表面積値は、2,500cm2/g以上7,000cm2/g以下であることが好ましく、2,750cm2/g以上6,000cm2/g以下であることがより好ましく、3,000cm2/g以上4,500cm2/g以下であることがさらに好ましい。
ブレーン比表面積値は、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に準拠して求められる。
【0017】
<膨張材>
本発明で使用する膨張材は、特に限定されるものではなく、膨張性水和物を生成させ、ブリーディングを抑制するものであれば、いかなるものでも使用可能である。
膨張材としては、遊離石灰、遊離マグネシア、カルシウムフェライト、エトリンガイト系、石灰系、エトリンガイト-石灰複合系を含むものが知られ、特に限定されるものではないが、長期安定性の観点から、遊離石灰を含むものが好ましい。遊離石灰を含むものとしては、例えば、遊離石灰-無水セッコウ系、遊離石灰-水硬性化合物系、ならびに、遊離石灰-水硬性化合物-無水セッコウ系などが挙げられる。
【0018】
本発明で使用する膨張材は、テルネサイトを含有することが好ましい。テルネサイトは、5CaO・2SiO2・SO3で表される鉱物であり、水硬反応を促進する。又、テルネサイト自体はほとんど反応しないためフィラーのような役割を果たして、流動性保持性を良好にすると推定される。そのため、高温時でも流動性の保持効果を維持することができる。
テルネサイトの含有量は、膨張材100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上18質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましい。テルネサイトの含有量が上記範囲内であることで、硬化促進と流動性保持性をともに良好にすることができる。
【0019】
本発明では、膨張性能が良好なことから、遊離石灰-水硬性化合物-無水セッコウ系を用いることが好ましく、特に遊離石灰含有量が40質量%を超えるものが好ましい。
ここで、水硬性化合物としては、例えば、アウイン、カルシウムフェライト、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムシリケート、カルシウムアルミネートなどの1種または2種以上が挙げられる。本発明では、膨張材としては、市販の膨張材や静的破砕材が利用できる。
膨張材や静的破砕材は各社より市販されており、その代表例としては、例えば、デンカ社製「デンカCSA♯20」、「デンカパワーCSA」、太平洋マテリアル社製「エクスパン」、「ハイパーエクスパン」、「N-EX」、「ブライスター」やこれらの粉砕品などが挙げられる。
【0020】
本発明で使用する膨張材の粒度は、特に限定されるものではないが、ブレーン比表面積値で2,000cm2/g以上25,000cm2/g以下の範囲のものが好ましく、2,200cm2/g以上15,000cm2/g以下のものがより好ましく、2,400cm2/g以上10,000cm2/g以下のものがさらに好ましい。膨張材のブレーン比表面積値が上記下限値以上であることで、ブリーディングを抑制することができる。また、膨張材のブレーン比表面積値が上記上限値以下であることで、十分な膨張性を得ることができる。
【0021】
本発明で使用する膨張材の含有割合は、セメント100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下が好ましく、1質量部以上18質量部以下がより好ましく、2質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。膨張材の含有割合が上記下限値以上であることで、ひび割れ抑制効果を得やすくなる。一方、膨張材の含有割合が上記上限値以下であることで、強度発現性が良好となる。膨張材の含有割合が上記範囲内であることで、本発明の効果を満たすグラウト材料、即ち、低い水和熱、乾燥収縮、および、充填性に優れるグラウト材料とすることが容易になる。
【0022】
<ガス発泡物質>
本発明で使用するガス発泡物質とは、グラウトモルタル組成物を施工した後、まだ固まらない状態のグラウト材料がブリーディングによる沈下や収縮するのを抑止する目的で用いるものをいう。本発明で使用するガス発泡物質としては、水と混練後に気体を発生するものであればよく、特に限定されるものではない。
【0023】
ガス発泡物質としては、植物油及び鉱物油等の油状物質が挙げられる。また、ガス発泡物質としては、ステアリン酸で表面処理した燐片状のアルミニウム粉末、及びアトマイズ製法で製造したアルミニウム粉末等の粉末物質が挙げられる。また、ガス発泡物質としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物及びヒドラジン誘導体等のアルカリ雰囲気下で窒素ガスを発泡する窒素ガス発泡物質が挙げられる。また、ガス発泡物質としては、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム及び過炭酸アンモニウムなどの過炭酸塩、過ホウ酸ナトリウムや過ホウ酸カリウム等の過ホウ酸塩、過マンガン酸ナトリウム及び過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩、並びに、過酸化水素等の過酸化物質が挙げられる。
本発明で使用するガス発泡物質としては、沈下抑制効果が大きいことから、ステアリン酸等で表面処理したアルミニウム粉末を用いることが好ましい。
【0024】
本発明で使用するガス発泡物質として使用し得る窒素ガス発泡物質は、グラウト材料中に含まれるセメントが、水と共に練混ぜた際に生成するアルカリとの反応により、窒素ガスを発生する化合物を含有するものであり、一酸化炭素、二酸化炭素、及びアンモニアなどのガスを副生してもよい。
本発明で使用する窒素ガス発泡物質としては、構造物と一体化させるために、また、まだ固まらない状態のグラウトモルタルが沈下や収縮するのを抑止するために、さらには、乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性を向上させるために使用できるものであれば特に限定されるものではない。
【0025】
ガス発泡物質の含有割合は、セメント100質量部に対して、0.0001質量部以上1質量部以下が好ましく、0.0005質量部以上0.5質量部以下がより好ましく、0.001質量部以上0.2質量部以下がさらに好ましい。ガス発泡物質の含有割合が上記下限値以上であることで、充分な初期膨張効果を付与することができる。また、ガス発泡物質の含有割合が上記上限値以下であることで、強度発現性が良好となる。
【0026】
<減水剤>
本発明で使用する減水剤は、各材料の分散を助けるとともに、練り上がったグラウトモルタルの流動性を付与する役割を担う。
【0027】
本発明で使用する減水剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ナフタレン系減水剤、メラミン系減水剤、アミノスルホン酸系減水剤、及びポリカルボン酸系減水剤が挙げられ、本発明ではこれら減水剤のうちの一種又は二種以上が使用可能である。
減水剤の具体例としては、例えば、ナフタレン系減水剤としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP-9シリーズ」、花王社製商品名「マイティ2000シリーズ」、及び日本製紙社製商品名「サンフローHS-100」などが挙げられる。メラミン系減水剤としては、日本シーカ社製商品名「シーカメント1000シリーズ」及び日本製紙社製商品名「サンフローHS-40」などが挙げられる。アミノスルホン酸系減水剤としては、藤沢薬品工業社製商品名「パリックFP-200シリーズ」などが挙げられる。ポリカルボン酸系減水剤としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP-8シリーズ」、グレースケミカルズ社製商品名「ダーレックススーパー100PHX」、及び竹本油脂社製商品名「チューポールHP-8シリーズ」、「チューポールHP-11シリーズ」などが挙げられる。
減水剤には粉末状のものも存在する。具体的には、ナフタレン系減水剤としては、花王社製商品名「マイティ100」、三洋化成工業社製商品名「三洋レベロンP」、及び第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」などが挙げられる。メラミン系減水剤としては、BASFポゾリス社製「メルメントF10M」などが挙げられる。ポリカルボン酸系減水剤としては、例えば、花王社製商品名「CAD9000P」などが挙げられる。
【0028】
減水剤の含有割合は、セメント100質量部に対して、固形分換算で0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上4質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上3.5質量部以下がさらに好ましい。減水剤の含有割合が上記下限値以上であることで、十分な流動性を得ることができる。また、減水剤の含有割合が上記上限値以下であることで、材料分離を抑制することができる。
【0029】
<細骨材A>
本発明で使用する細骨材Aの化学成分は、CaOの割合が85質量%以上、SiO2の割合が0.2質量%以上14質量%以下であることが好ましい。細骨材Aの化学成分として、CaOの割合及びSiO2の割合が上記範囲内であることで、低い水和熱、乾燥収縮、および、充填性に優れるグラウト材料が得られる。
CaOの割合は、87質量%以上であることが好ましく、89質量%以上であることがより好ましく、91質量%以上であることがさらに好ましい。CaOの割合の上限は、特に限定されないが、99質量%以下であることが好ましく、98.5質量%以下であることがより好ましい。
SiO2の割合は、0.25質量%以上13質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上11質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
細骨材Aの化学成分を上記範囲内及び後述範囲内にするために、珪砂、方解石、変成岩であるスカポライト、火成岩である石英、カリ長石等を混合させて調製する。化学成分は、本発明の範囲に入るよう、蛍光X線回折で確認しながら、各岩を混合し調整する。なお、本発明で使用する細骨材Aの化学成分は、酸化物換算で計算したものである。
【0030】
本発明で使用する細骨材Aは、化学成分として、K2O、SO3、Fe2O3、Al2O3を含有することが好ましい。細骨材AがK2O、SO3、Fe2O3、Al2O3を含有することで、低い水和熱、乾燥収縮、および、充填性に寄与することができる。
K2Oの割合は、40質量ppm以上3,000質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以上2,500質量ppm以下であることがより好ましく、60質量ppm以上2,250質量ppm以下であることがさらに好ましく、70質量ppm以上2,000質量ppm以下であることがよりさらに好ましい。
SO3の割合は、40質量ppm以上3,000質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以上2,500質量ppm以下であることがより好ましく、60質量ppm以上2,250質量ppm以下であることがさらに好ましく、70質量ppm以上2,000質量ppm以下であることがよりさらに好ましい。
Fe2O3の割合は、0.1質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.13質量%以上2.5質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
Al2O3の割合は、0.1質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.13質量%以上2.5質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明で使用する細骨材Aは、JIS A1121「ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験」による粗粒率の低下が70%以上100%以下であることが好ましく、75%以上99%以下であることがより好ましく、80%以上98%以下であることがさらに好ましく、85%以上97%以下であることがよりさらに好ましい。細骨材Aの粗粒率の低下が上記下限値以上であることで、充填性を向上させることができる。また、細骨材の粗粒率の低下が上記上限値以下であることで、充填性を向上させることができる。なお、本明細書において「細骨材の粗粒率」とは、ふるい分けを行った結果より求まる値であって、細骨材の大きさの概略値を示す指数をいう。また、本明細書において「細骨材の粗粒率の低下」とは、ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験の試験前の粗粒率と試験後の粗粒率を対比し、試験後の粗粒率の低下した割合をいう。
細骨材の粗粒率の低下を上記範囲内にするために、珪砂、方解石、変成岩であるスカポライト、火成岩である石英、カリ長石等を混合させて調製する。細骨材の粗粒率の低下は、本発明の範囲に入るよう、ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験で確認しながら、各岩を混合し調整する。
細骨材の粗粒率の低下が上記範囲内であれば、細骨材の産地や原産は特に限定されるものではない。
【0032】
細骨材Aの含有割合は、セメント100質量部に対して、50質量部以上300質量部以下であることが好ましく、75質量部以上250質量部以下であることがより好ましく、150質量部以上230質量部以下であることがさらに好ましい。細骨材Aの含有割合が上記下限値以上であることで、発熱量を低減することができ、収縮を抑制し、ひび割れを抑制することができる。また、細骨材の含有割合が上記上限値以下であることで、充填性に優れるグラウト材料を得ることができる。
【0033】
<細骨材B>
本発明で使用する細骨材Bの化学成分は、SiO2の割合が75質量%以上であることが好ましい。細骨材Bの化学成分として、SiO2の割合が75質量%以上であることで、低い水和熱、乾燥収縮、および、充填性に優れるグラウト材料が得られる。
SiO2の割合は、上記観点から、78質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
細骨材Bの化学成分を上記範囲内及び後述範囲内にするために、珪砂、方解石、変成岩であるスカポライト、火成岩である石英、カリ長石等を混合させて調製する。化学成分は、本発明の範囲に入るよう、蛍光X線回折で確認しながら、各岩を混合し調整する。なお、本発明で使用する細骨材Bの化学成分は、酸化物換算で計算したものである。
【0034】
細骨材Bの含有割合は、セメント100質量部に対して、50質量部以上300質量部以下であることが好ましく、70質量部以上280質量部以下であることがより好ましく、90質量部以上250質量部以下であることがさらに好ましい。細骨材Bの含有割合が上記下限値以上であることで、発熱量を低減することができ、収縮を抑制し、ひび割れを抑制することができる。また、細骨材の含有割合が上記上限値以下であることで、充填性に優れるグラウト材料を得ることができる。
【0035】
<シリカ質微粉末>
本発明のグラウト材料は、セメント、膨張材、ガス発泡物質、減水剤、細骨材A、細骨材Bとともに、強度発現性の改善や耐酸性の向上、可使時間の確保に加えて、寸法安定性を良好にする観点から、シリカ質微粉末を含有させることが可能である。
【0036】
シリカ質微粉末としては、高炉水砕スラグ微粉末等の潜在水硬性物質、フライアッシュや、シリカフュームなどのポゾラン物質を挙げることができ、中でも、シリカフュームが好ましい。
シリカフュームの種類は限定されるものではないが、流動性の観点から、不純物としてZrO2を10%以下含有するシリカフュームや、酸性シリカフュームの使用がより好ましい。酸性シリカフュームとは、シリカフューム1gを純水100ccに入れて攪拌した時の上澄み液のpHが5.0以下の酸性を示すものをいう。
【0037】
シリカ質微粉末の粉末度は特に限定されるものではないが、通常、高炉水砕スラグ微粉末とフライアッシュは、ブレーン値で3,000cm2/g以上9,000cm2/g以下の範囲にあることが好ましく、シリカフュームは、BET比表面積で2万cm2/g以上30万cm2/g以下の範囲にあることが好ましい。
【0038】
シリカ質微粉末の含有割合は、セメント100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましく、2質量部以上15質量部以下がより好ましく、3質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。シリカ質微粉末の含有割合が上記下限値以上であることで、強度発現性の改善、耐酸性の向上、可使時間の確保、及び寸法安定性を良好にすることができる。また、シリカ質微粉末の含有割合が上記上限値以下であることで、流動性を向上させ、鉄筋との付着力、防錆効果を向上させることができる。
【0039】
本発明では、性能に悪影響を与えない範囲で、凝結調整剤、AE剤、防錆剤、撥水剤、抗菌剤、着色剤、防凍剤、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、及びパルプスラッジ焼却灰等の混和材料、消泡剤、増粘剤、収縮低減剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、炭素繊維、及びワラストナイト繊維等の繊維物質、ポリマー、ベントナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0040】
本発明のグラウト材料において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
混合装置としては、既存のいかなる装置、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
【0041】
<グラウトモルタル組成物>
本発明のグラウトモルタル組成物は、既述の本発明のグラウト材料と水とを含有するものであり、グラウト材料と水とを混錬してなる。
本発明の練り混ぜ水量は、使用する目的・用途や各材料の含有割合によって変化するため特に限定されるものではないが、グラウト材料100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下であることが好ましく、7質量部以上65質量部以下であることがより好ましく、9質量部以上60質量部以下であることがさらに好ましい。練り混ぜ水量が上記下限値以上であることで、流動性の低下を抑制し、発熱量が極めて大きくなることを抑制することができる。また、練り混ぜ水量が上記上限値以下であることで、強度発現性を確保することができる。
【0042】
本発明において、グラウト材料と水との練り混ぜ方法は特に限定されるものではないが、回転数が900rpm以上のハンドミキサ、通常の高速グラウトミキサ、又は二軸型の強制ミキサを使用することが好ましい。
【0043】
ハンドミキサや高速グラウトミキサでの練り混ぜは、例えば、ペール缶等の容器やミキサにあらかじめ所定の水を入れ、その後ミキサを回転させながらグラウト材料を投入し、3分以上練り混ぜることが好ましい。また、強制ミキサでの練り混ぜは、例えば、あらかじめグラウト材料をミキサに投入し、ミキサを回転させながら所定の水を投入し、少なくとも4分以上練り混ぜることが好ましい。練り混ぜ時間が所定時間未満では、練り不足のため適切なグラウトモルタルの流動性が得られない場合がある。
【0044】
<硬化体>
練り混ぜられたグラウトモルタル組成物は、通常、手動式注入ガン、ダイヤフラム式手押しポンプ、あるいは、スクイズ式等のモルタルポンプにより施工箇所まで圧送し、充填施工されることで、本発明のグラウトモルタル組成物を用いてなる硬化体となる。
【実施例0045】
以下、本発明の実験例に基づいて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
実験例1(No.1-1~1-9)
セメント100質量部に対して、膨張材12.0質量部、ガス発泡物質0.0025質量部、減水剤1.5質量部、細骨材(A+B)300質量部を含有するように調製し、グラウト材料を得た。
得られたグラウト材料100質量部に対して、水15質量部で混練しグラウトモルタル組成物を調製した。
調製したグラウトモルタル組成物の簡易断熱温度上昇、乾燥収縮、充填性を測定した。結果を表1に併記する。なお、乾燥収縮は長さ変化で表した。数値の絶対値が大きいほど乾燥収縮が大きいことを意味する。
【0047】
<使用材料>
・セメント:試製セメント(セメント工場の調合原料及び化学成分の調整に各種市販の純薬を用い、SO3量の調整には純薬の無水せっこうを用いた。)、塩素量1.5質量%ppm、ブレーン値3,450cm2/g
・膨張材:CaO原料、Al2O3原料、SiO2原料、CaSO4原料を配合し、混合粉砕した後1,200℃で焼成してクリンカを合成し、ボールミルを用いてブレーン比表面積で3,000cm2/gに粉砕して、作製した。なお、テルネサイトの鉱物組成は蛍光X線から求めた化学組成と粉末X線回折の同定結果に基づいて計算により求めた。膨張材100質量部に含まれるテルネサイトの含有量を表1に示す。
・ガス発泡物質:ステアリン酸で表面処理した燐片状のアルミニウム粉末、市販品
・凝結調整剤:試薬1級のクエン酸25部と試薬1級の炭酸カリウム75部の混合物
・減水剤:ナフタレン系減水剤、市販品(第一工業製薬社製「セルフロ-110P」)
・水:水道水
・細骨材A、B:表1に示す細骨材を用いて試験をした。細骨材の化学成分の測定は、蛍光X線分析により行った。また、化学成分の調製のため、珪砂(愛知県産)、方解石(CaCO3)、変成岩であるスカポライト((Na,Ca,K)4Al4Si9O24(Cl,CO3,SO4))、火成岩である石英(SiO2)、カリ長石(KAlSi3O8)を混合して、化学成分を調製した。
なお、平均粒子径は、上述の通りふるい分け法による重量通過百分率から求めた値である。
【0048】
<測定項目>
・簡易断熱温度上昇:2Lの簡易ポットにて、練混ぜ直後からの最大温度を測定した。
・長さ変化(乾燥収縮):JIS A 6202に準拠し、材齢28日の長さ変化を測定した。
・静置フロー:JIS R 5201に準拠し、練混ぜ直後と15分後と30分後に測定した。
・充填率性:1200×1200mmの型枠中央に1000×1000mmのアクリル板を高さ100mmの位置に固定した。間隙部の奥にホースノズルを入れ、手前に引きながらコンクリートを充填し、充填後、空隙量を測定した。
【0049】
【0050】
表1の結果より、特定の粒子径の細骨材2種類を特定の比率で含有した、特定の安息角のグラウト材を用いることで水和熱、乾燥収縮を低減し、充填性を高めることができることが確認できた。
【0051】
実験例2(No.1-3、No.2-1~2-4)
表2に示す細骨材を配合してグラウトモルタル組成物を調製したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。膨張材中のテルネサイトは膨張材100質量部中5質量部のものを使用した。
ロサンゼルス試験機による細骨材のすりへり試験は、まず、ロサンゼルス試験機に細骨材Aを5kgと鉄球6個を投入する。鉄球の平均直径は約46.8mmとし、1個の質量は390~445gとする。次いで、ロサンゼルス試験機を500回転(毎分30回転)させた。次いで、篩目の寸法が5mm、2.5mm、1.2mm、0.6mm、0.3mm、0.15mmの金属製網ふるいを用いて、ロサンゼルス試験機から採取した細骨材のふるい分けを行った。ロサンゼルス試験機へ投入前の細骨材Aの粗粒率(R1)と、ロサンゼルス試験機へ投入後の細骨材Aの粗粒率(R2)を対比し、試験後の粗粒率の低下を以下の式により算出した。なお、粗粒率R1及びR2は、JIS A 1102に準拠して計算した。
粗粒率の低下=R2/R1
なお、No.2-1~2-4で用いたグラウト材料としては、No.1-3と同様の組成のものを用いた。すなわち、細骨材A及び細骨材Bの粒子径、平均粒子径、細骨材A/細骨材B(質量比)、安息角は1-3と同様である。
【0052】
【0053】
表2の結果より、特定の粒子径の細骨材2種類を特定の比率で含有し、特定の化学成分、粗粒率の低下が特定範囲である細骨材を含有した、特定の安息角のグラウト材にを用いることで水和熱、乾燥収縮を低減し、充填性を高めることができることが確認できた。
【0054】
実験例3(No.1-3、No.3-1~3-4)
表3に示す細骨材を配合してグラウトモルタル組成物を調製したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
なお、No.3-1~3-4で用いたグラウト材料としては、No.1-3と同様の組成のものを用いた。すなわち、細骨材A及び細骨材Bの粒子径、平均粒子径、細骨材A/細骨材B(質量比)、安息角は1-3と同様である。
【0055】
【0056】
表3の結果より、特定の粒子径および特定の化学成分の細骨材2種類を特定の比率で含有した、特定の安息角のグラウト材を用いることで水和熱、乾燥収縮を低減し、充填性を高めることができることが確認できた。
本発明のグラウト材料は、特定の細骨材を組み合わせて調製したグラウト材料であって、水和熱、乾燥収縮を低減し、充填性を高めることができるグラウトモルタル組成物を与えるものである。したがって、このグラウトモルタル組成物は、橋脚の鋼板巻き立て工法、大型しゅう座の充填工法、補強鉄筋の定着材、その他の間隙充填、コンクリートの断面修復、セルフレベリング床材等、並びに、土木・建築用途等、広範囲に利用できる。