(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176053
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 3/10 20060101AFI20221117BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221117BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221117BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20221117BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221117BHJP
G03G 5/00 20060101ALI20221117BHJP
G03G 5/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B05C3/10
B05C11/10
B05D7/00 K
B05D1/28
B05D3/00 C
B05D3/00 B
G03G5/00 101
G03G5/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202692
(22)【出願日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2021080892
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 章彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆彰
【テーマコード(参考)】
2H068
4D075
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
2H068AA54
2H068CA32
2H068EA18
4D075AC56
4D075AC62
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC93
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA15
4D075DA20
4D075DB01
4D075DB07
4D075DC16
4D075DC19
4D075EB44
4D075EC30
4F040AA04
4F040AB20
4F040CC02
4F040CC10
4F040CC14
4F040CC18
4F040CC20
4F042AA03
4F042AB00
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB20
4F042CB25
4F042CC09
4F042CC30
(57)【要約】
【課題】円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、円筒体の外周面の塗膜の泡欠陥の発生が抑制される塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法を得る。
【解決手段】塗布装置10は、上部開口部と下部開口部とを備え、塗布液Lが保持される塗布液保持部12であって、上部開口部と下部開口部に円筒体100を貫通させ、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させることにより、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する記塗布液保持部12と、流下した塗布液Lを収容する容器14と、容器14の内部の塗布液Lを塗布液保持部12に循環させる循環部16と、容器14内で塗布液Lの液面L1よりも上側に配置され、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを傾斜面18Aで受ける受け部材18と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口部と下部開口部とを備え、塗布液が保持される塗布液保持部であって、前記上部開口部と前記下部開口部に円筒体を貫通させ、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させることにより、前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する前記塗布液保持部と、
流下した前記塗布液を収容する容器と、
前記容器の内部の前記塗布液を前記塗布液保持部に循環させる循環部と、
前記容器内で前記塗布液の液面よりも上側に配置され、前記円筒体の外周面を伝って下方に流下する前記塗布液を傾斜面で受ける受け部材と、
を有する塗布装置。
【請求項2】
前記傾斜面は、平板状又は前記塗布液保持部の軸方向と直交する方向から見て直線状とされており、
前記傾斜面の鉛直方向に対する角度は、10°以上60°以下である請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記傾斜面の鉛直方向に対する角度は、15°以上45°以下である請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、曲面とされており、
前記円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の前記曲面の交点における接面と鉛直方向に対する角度は、10°以上60°以下である請求項1に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の前記曲面の交点における接面と鉛直方向に対する角度は、15°以上45°以下である請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記傾斜面は、鉛直方向に対して交差する一方向に下り勾配となるように傾斜している請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記傾斜面は、側面視にて中央部が突出する円錐状とされている請求項2又は請求項3に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記傾斜面は、側面視にて中央部が山型に突出する曲面部とされている請求項1に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の前記傾斜面の交点における接面と鉛直方向に対する角度は、10°以上60°以下である請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の塗布装置を用いて塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記円筒体を前記塗布液保持部に対して上下方向上方側に相対移動させ、前記塗布液保持部から前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する工程と、
前記円筒体の外周面を伝って下方に流下する前記塗布液を前記容器内の前記塗布液の液面よりも上側の前記受け部材における前記傾斜面で受け、前記塗布液を前記容器に収容する工程と、
前記容器の内部の前記塗布液を前記循環部により前記塗布液保持部に循環させる工程と、
を有する塗布方法。
【請求項11】
前記円筒体は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである請求項10に記載の塗布方法。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法であって、
前記円筒体は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、
前記塗布液は、感光材料を含有している感光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、円筒状基体をその円筒軸をほぼ鉛直に保持した状態で、塗布液に浸漬し、塗布液から外部に引き上げることにより前記円筒状基体の外表面に塗布液を塗布する塗布装置において、塗布液を収容しており前記円筒状基体が浸漬される塗工タンクと、少なくとも塗布液中の泡の発生を抑える脱泡タンクと塗布液を塗工タンクに循環させる循環タンクを有し、塗布液を循環タンクの下部から圧送ポンプで塗工タンク下部に送り込み,塗工タンク上縁部からオーバーフローさせて脱泡タンクに還流させ、脱泡タンクの下部から循環タンクの塗布液中に送り込む塗布液循環機構を備えるとともに脱泡タンクには塗布液の供給口を設けた塗布装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、円筒体の外周面の塗膜の泡欠陥の発生が抑制される塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係る塗布装置は、上部開口部と下部開口部とを備え、塗布液が保持される塗布液保持部であって、前記上部開口部と前記下部開口部に円筒体を貫通させ、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させることにより、前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する前記塗布液保持部と、流下した前記塗布液を収容する容器と、前記容器の内部の前記塗布液を前記塗布液保持部に循環させる循環部と、前記容器内で前記塗布液の液面よりも上側に配置され、前記円筒体の外周面を伝って下方に流下する前記塗布液を傾斜面で受ける受け部材と、を有する。
【0006】
第2態様に係る塗布装置は、第1態様に記載の塗布装置において、前記傾斜面は、平板状又は前記塗布液保持部の軸方向と直交する方向から見て直線状とされており、前記傾斜面の鉛直方向に対する角度は、10°以上60°以下である。
【0007】
第3態様に係る塗布装置は、第2態様に記載の塗布装置において、前記傾斜面の鉛直方向に対する角度は、15°以上45°以下である。
【0008】
第4態様に係る塗布装置は、第1態様に記載の塗布装置において、前記傾斜面は、曲面とされており、前記円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の前記曲面の交点における接面と鉛直方向に対する角度は、10°以上60°以下である。
【0009】
第5態様に係る塗布装置は、第4態様に記載の塗布装置において、前記円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の前記曲面の交点における接面と鉛直方向に対する角度は、15°以上45°以下である。
【0010】
第6態様に係る塗布装置は、第2態様から第5態様までのいずれか1つの態様に記載の塗布装置において、前記傾斜面は、鉛直方向に対して交差する一方向に下り勾配となるように傾斜している。
【0011】
第7態様に係る塗布装置は、第2態様又は第3態様に記載の塗布装置において、前記傾斜面は、側面視にて中央部が突出する円錐状とされている。
【0012】
第8態様に係る塗布装置は、第1態様に記載の塗布装置において、前記傾斜面は、側面視にて中央部が山型に突出する曲面部とされている。
【0013】
第9態様に係る塗布装置は、第8態様に記載の塗布装置において、前記円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の前記傾斜面の交点における接面と鉛直方向に対する角度は、10°以上60°以下である。
【0014】
第10態様に係る塗布方法は、第1態様から第9態様までのいずれか1つの態様に記載の塗布装置を用いて塗布液を塗布する塗布方法であって、前記円筒体を前記塗布液保持部に対して上下方向上方側に相対移動させ、前記塗布液保持部から前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する工程と、前記円筒体の外周面を伝って下方に流下する前記塗布液を前記容器内の前記塗布液の液面よりも上側の前記受け部材における前記傾斜面で受け、前記塗布液を前記容器に収容する工程と、前記容器の内部の前記塗布液を前記循環部により前記塗布液保持部に循環させる工程と、を有する。
【0015】
第11態様に係る塗布方法は、第10態様に記載の塗布方法において、前記円筒体は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである。
【0016】
第12態様に係る感光体の製造方法は、第10態様又は第11態様に記載の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法であって、前記円筒体は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、前記塗布液は、感光材料を含有している。
【発明の効果】
【0017】
第1態様に係る塗布装置によれば、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、円筒体の外周面の塗膜の泡欠陥の発生が抑制される。
【0018】
第2態様に係る塗布装置によれば、傾斜面の鉛直方向に対する角度が10°より小さい場合と比較して、受け部材で塗布液を受けたときの衝撃による発泡が抑制される。傾斜面の鉛直方向に対する角度が60°より大きい場合と比較して、受け部材で受けた塗布液が容器内の塗布液の液面に合流するときの発泡が抑制される。
【0019】
第3態様に係る塗布装置によれば、傾斜面の鉛直方向に対する角度が15°より小さい場合と比較して、受け部材で塗布液を受けたときの衝撃による発泡が抑制される。傾斜面の鉛直方向に対する角度が45°より大きい場合と比較して、受け部材で受けた塗布液が容器内の塗布液の液面に合流するときの発泡が抑制される。
【0020】
第4態様に係る塗布装置によれば、円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の曲面の交点における接面と鉛直方向に対する角度が10°より小さい場合と比較して、受け部材で塗布液を受けたときの衝撃による発泡が抑制される。円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の曲面の交点における接面と鉛直方向に対する角度が60°より大きい場合と比較して、受け部材で受けた塗布液が容器内の塗布液の液面に合流するときの発泡が抑制される。
【0021】
第5態様に係る塗布装置によれば、円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の曲面の交点における接面と鉛直方向に対する角度が15°より小さい場合と比較して、受け部材で塗布液を受けたときの衝撃による発泡が抑制される。円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の曲面の交点における接面と鉛直方向に対する角度が45°より大きい場合と比較して、受け部材で受けた塗布液が容器内の塗布液の液面に合流するときの発泡が抑制される。
【0022】
第6態様に係る塗布装置によれば、傾斜面が鉛直方向に対して交差する複数の方向に傾斜している場合と比較して、受け部材の構造が簡単になる。
【0023】
第7態様に係る塗布装置によれば、傾斜面が谷型に窪んだ形状である場合と比較して、円筒体の外周面から落下した塗布液が容器内の液面と接触しにくい。
【0024】
第8態様に係る塗布装置によれば、傾斜面が谷型に窪んだ形状である場合と比較して、円筒体の外周面から落下した塗布液が容器内の液面と接触しにくい。
【0025】
第9態様に係る塗布方法によれば、筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の傾斜面の交点における接面と鉛直方向に対する角度が10°より小さい場合と比較して、受け部材で塗布液を受けたときの衝撃による発泡が抑制される。円筒体の外周面に沿って下方側に延長した延長線の傾斜面の交点における接面と鉛直方向に対する角度が60°より大きい場合と比較して、受け部材で受けた塗布液が容器内の塗布液の液面に合流するときの発泡が抑制される。
【0026】
第10態様に係る塗布方法によれば、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、円筒体の外周面の塗膜の泡欠陥の発生が抑制される。
【0027】
第11態様に係る塗布方法によれば、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面の塗膜の泡欠陥の発生が抑制される。
【0028】
第12態様に係る感光体の製造方法によれば、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、感光体の外周面における塗膜の泡欠陥の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係る塗布装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る塗布装置に用いられる塗布液保持部の一部を拡大した状態で示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る塗布装置に用いられる塗布液を受ける受け部材及び容器の構成を示す斜視図である。
【
図4】(A)は、第1実施形態に係る塗布装置の塗布液保持部に円筒体を挿入する前の状態を示す構成図であり、(B)は、塗布装置の塗布液保持部に円筒体を挿入して下降させた状態を示す構成図であり、(C)は、塗布液保持部に対して円筒体を上下方向上側に移動させる途中の状態を示す構成図である。
【
図5】(A)は、円筒体の外周面に塗布液による塗膜が形成された円筒体の一部を示す側面図であり、(B)は、(A)中の5B-5B線に沿った断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る塗布装置に用いられる受け部材を拡大した状態で示す側面図である。
【
図7】第2実施形態に係る塗布装置に用いられる受け部材を拡大した状態で示す側面図である。
【
図8】第3実施形態に係る塗布装置に用いられる受け部材を拡大した状態で示す側面図である。
【
図9】第4実施形態に係る塗布装置に用いられる受け部材を拡大した状態で示す側面図である。
【
図10】比較例に係る塗布装置の容器の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の技術を実施するための形態について説明する。以下の説明では、図面において適宜示される矢印UPで示す方向を装置上下方向上方側とする。
【0031】
〔第1実施形態〕
<塗布装置の全体構成>
図1には、第1実施形態に係る塗布装置10の一例が断面図にて示されている。
【0032】
図1に示されるように、塗布装置10は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する装置である。塗布装置10は、塗布液Lが保持される塗布液保持部12と、塗布液保持部12側から流下した塗布液Lを収容する容器14と、を備えている。また、塗布装置10は、容器14の内部の塗布液Lを塗布液保持部12に循環させる循環部16と、円筒体100の外周面100Aを伝って流下する塗布液Lを受ける受け部材18と、を備えている。塗布装置10は、筒状の筐体20を備えている。塗布液保持部12は、筐体20の内部の上下方向上部側に支持されている。また、容器14は、筐体20の上下方向下部に設けられている。
【0033】
(円筒体)
円筒体100は、例えば、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものである。円筒体100を構成する円筒状部材又は無端ベルト状部材は、例えば、電子写真用の感光体基体などである。また、例えば、円筒体100として、電子写真用の感光体基体を用いる場合、塗布液Lは、感光材料を含有している液体などが用いられる。本実施形態では、塗布装置10により、円筒体100を構成する円筒状部材又は無端ベルト状部材に塗布液Lが塗布される。塗布液Lとして、感光材料を含有している液体を用いることで、電子写真用の感光体を製造することができる。
【0034】
(筐体)
図1に示されるように、筐体20は、円筒状の部材で構成されており、筐体20の軸方向が上下方向となるように配置されている。一例として、例えば、筐体20は、上下方向に沿って配置された円筒部20Aを備えている。
【0035】
円筒部20Aの上端部には、半径方向内側に延びた上壁部21Bを備えており、上壁部21Bには、円形の開口21Cが形成されている。開口21Cの内径は、円筒体100の外径よりも大きい。上壁部21Bの開口21Cには、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0036】
(塗布液保持部)
図1及び
図2に示されるように、塗布液保持部12は、筒状とされており、半径方向内側に塗布液Lを吐出する機能を有する。これにより、塗布液保持部12に挿通される円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布するようになっている。塗布液保持部12は、ケース24を備えている。ケース24は、円筒部24Aと、円筒部24Aの上端部から半径方向内側に屈曲された上壁部24Bと、円筒部24Aの下部側に設けられたブロック部24Cと、を備えている。
【0037】
円筒部24Aにおける半径方向の一方側の下部には、塗布液Lが流入される流入口24Eが設けられている。
【0038】
上壁部24Bには、円形状の上部開口部25が設けられている(
図2参照)。上部開口部25の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。上壁部24Bの上部開口部25には、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0039】
ブロック部24Cは、円筒部24Aの下端部と繋がる底壁部26Aと、底壁部26Aの半径方向内側端部から上方側に延びた筒状の内側壁部26Bと、を備えている。内側壁部26Bの上部側には、半径方向内側に向かって上り勾配となるように配置された傾斜部27が形成されている。内側壁部26Bの傾斜部27の上端部には、円形状の下部開口部28が設けられている。下部開口部28の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。また、下部開口部28の内径は、上部開口部25の内径の内径よりも小さい。ブロック部24Cの下部開口部28には、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0040】
塗布液保持部12は、図示しない支持部により筐体20の内部の上下方向上部側に支持されている。
【0041】
ケース24は、円筒部24Aと上壁部24Bとブロック部24Cとを備えることで、ブロック部24Cの上方側が半径方向内側に開口している。ケース24内におけるブロック部24Cの上方には、環状体32が設けられている。ブロック部24Cの上部には、環状体32が可動可能に配置される設置面30が設けられている。設置面30は、平面状とされており、水平方向に沿って配置されている。
【0042】
環状体32は、ケース24の半径方向内側の開口された部分に配置されている。環状体32の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。一例として、環状体32の内径は、下部開口部28の内径よりも小さい。環状体32の内周面32A側は、円筒体100が貫通する領域に露出している(
図2参照)。環状体32の内部には、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。一例として、環状体32は、設置面30に塗布液Lが介在された状態で配置されている。環状体32は、設置面30に対して相対的に可動(本実施形態では摺動)可能とされている。本実施形態では、環状体32を直接駆動する駆動部は設けられておらず、環状体32が自律的に設置面30に対して相対的に摺動するようになっている。
【0043】
一例として、環状体32の内周面32Aには、上部側に配置されると共に上部開口部25側から下り勾配となる傾斜面33Aと、傾斜面33Aの下端部から上下方向に沿って配置されたストレート部33Bとが設けられている(
図2参照)。
【0044】
ケース24の内部には、円筒部24Aとブロック部24Cとの間、及び円筒部24Aと環状体32との間に、塗布液Lが流れる流路34が設けられている。流路34における塗布液Lの流れ方向上流側の端部は、流入口24E(
図1参照)に繋がっている。塗布液保持部12には、上壁部24Bの上部開口部25と環状体32との間に周方向に沿ってスリット状の吐出部36が設けられており、吐出部36から塗布液Lが吐出される(
図2参照)。すなわち、吐出部36は、塗布液保持部12における円筒体100が貫通する領域と対向しており、円筒体100側に向かって塗布液Lが吐出される。吐出部36から吐出された塗布液Lは、上部開口部25から上壁部24Bの上面側にオーバーフローすると共に、環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間を下方側に流れるようになっている。
【0045】
この状態で、円筒体100を塗布液保持部12に対して上下方向上方側に相対移動させることで、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布されるようになっている(
図4(B)及び
図4(C)参照)。塗布液保持部12では、円筒体100の外周面100Aと環状体32の内周面32Aとの間に塗布液Lが流れることで、塗布液Lが流れる圧力により、環状体32が設置面30に対して相対的に可動する。このとき、円筒体100の外周面100Aと環状体32の内周面32Aとの隙間が周方向に沿って均一になるように、環状体32は、設置面30に対して相対的に可動するようになっている。
【0046】
図4には、塗布装置10の塗布液保持部12により円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する方法の一例が示されている。
図4(A)に示されるように、塗布液保持部12の上方側から円筒体100を軸方向に沿って挿入し、下方(矢印A方向)に円筒体100を移動させる。
図4(B)に示されるように、円筒体100をさらに矢印A方向に下降させると共に、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給することで、塗布液保持部12の環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間に塗布液Lを充填させていく。そして、円筒体100が最下部に到達することで、円筒体100の軸方向の上端部が塗布液保持部12と対向する位置に配置される。
【0047】
その後、
図4(C)に示されるように、円筒体100を塗布液保持部12に対して上方(矢印B方向)に移動させる。このとき、塗布液Lが上方からオーバーフローするように吐出部36から塗布液Lを吐出させる。これにより、塗布液Lが下部開口部28から下方に流出し、上部開口部25より上方に位置する円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布されることで、円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成される(
図5(B)参照)。なお、
図4は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する方法の一例であり、塗布方法は変更可能である。
【0048】
図5(A)に示されるように、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布される過程では、円筒体100の外周面100Aに塗布された塗布液Lが円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する。
【0049】
また、
図1に示されるように、塗布装置10では、筐体20の内部における塗布液保持部12の下方側には、壁部50が設けられている。壁部50には、円筒体100が貫通する開口部50Aが設けられている。また、壁部50の斜め方向の下端部には、筐体20の内壁面と隣接する位置に配置された孔部50Bが設けられている。これにより、壁部50の孔部50Bから筐体20の内壁面を伝って塗布液Lが流下し、塗布液Lは容器14に回収される。
【0050】
(容器)
図1に示されるように、容器14は、筐体20の円筒部20Aの下端部に繋がっている。容器14は、円筒部20Aと繋がる円筒部14Aと、円筒部14Aの下部に配置されると共に底面が谷型に窪んだ凹部14Bと、を備えている。本実施形態では、凹部14Bの底面は、下側に向かって内径が徐々に縮小された逆円錐状に窪んだ形状とされている。
【0051】
凹部14Bは、円筒部14A側から半径方向の中心部に向かって下り勾配となるように傾斜した底面を備えており、凹部14Bの中心部が最下部とされている。容器14の凹部14Bには、塗布液保持部12側から流下した塗布液Lが溜まるようになっている。一例として、塗布液Lの液面L1は、凹部14Bの上部側に位置している。
【0052】
(受け部材)
図1及び
図3に示されるように、受け部材18は、容器14内に設けられている。受け部材18は、中央部が上下方向上側に突出する円錐状の形状とされている。より具体的には、受け部材18は、凹部14Bの側から半径方向の中心部に向かって昇り勾配となる傾斜面18Aと、傾斜面18Aの上端部に形成された頂部18Bと、を備えている。受け部材18の軸方向と直交する方向において、受け部材18の最大部分の幅は、円筒体100の外径よりも大きい。これにより、受け部材18は、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを傾斜面18Aで受ける構成とされている。本実施形態では、傾斜面18Aの塗布液Lを受ける部分は、容器14内で塗布液Lの液面L1よりも上側に配置されている。このため、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lは、塗布液Lの液面L1に直接落下しないようになっている。
【0053】
本実施形態では、
図6に示されるように、傾斜面18Aは、塗布液保持部12の軸方向に対して直交する方向から見て(すなわち、側面視にて)、直線状とされている。一例として、受け部材18の傾斜面18Aは、
図6に示す左右方向において対称とされている。傾斜面18Aの鉛直方向に対する角度θ1は、10°以上60°以下が好ましく、12°以上52°以下がより好ましく、15°以上45°以下がさらに好ましい。例えば、傾斜面18Aの鉛直方向に対する角度θ1は、45°とされている。
【0054】
(循環部)
図1に示されるように、循環部16は、容器14の内部の塗布液Lを塗布液保持部12に供給する供給管60と、供給管60の途中に設けられたポンプ62と、を備えている。ポンプ62は、供給管60の塗布液Lを容器14側から塗布液保持部12側に移送する。
【0055】
供給管60における塗布液Lの流れ方向の上流側端部60Aは、容器14の下部に接続されている。本実施形態では、供給管60の上流側端部60Aは、凹部14Bの最下部である中心部に接続されている。また、供給管60における塗布液Lの流れ方向の下流側端部60Bは、筐体20を貫通し、塗布液保持部12の流入口24Eに接続されている。これにより、供給管60を流れる塗布液Lは、流入口24Eから流路34に供給される。なお、塗布液Lの流れ方向の上流側又は下流側は、「塗布液Lの流れ方向」を省略して、単に「上流側」又は「下流側」という場合がある。
【0056】
また、供給管60の途中には、塗布液Lの流れ方向におけるポンプ62の下流側に、塗布液Lに含まれる異物を除去するフィルタ68が設けられている。
【0057】
塗布装置10では、循環部16のポンプ62を駆動することで、容器14内の塗布液Lが供給管60を通って塗布液保持部12に供給される。塗布液保持部12では、塗布液Lが円筒体100の外周面100Aに塗布され、円筒体100の外周面100Aを伝って流下した塗布液Lは、受け部材18の傾斜面18Aに落下し、傾斜面18Aを流下して容器14内に回収される。そして、容器14内の塗布液Lは、供給管60を通って塗布液保持部12に供給される。このため、循環部16により、容器14内の塗布液Lが塗布液保持部12に循環されるようになっている。
【0058】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
塗布装置10では、上部開口部25と下部開口部28とを備えると共に塗布液Lが保持される塗布液保持部12が設けられている。塗布液保持部12では、上部開口部25と下部開口部28に円筒体100を貫通させ、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させることにより、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する。
【0060】
より具体的には、
図4(A)に示されるように、塗布液保持部12の上方側から円筒体100を矢印A方向に挿入する。
図4(B)に示されるように、円筒体100を矢印A方向に下降させると共に、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給することで、塗布液保持部12の環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間に塗布液Lを充填させていく。そして、円筒体100を最下部に到達させる。
【0061】
その後、
図4(C)に示されるように、円筒体100を塗布液保持部12に対して上方(矢印B方向)に移動させると共に、塗布液Lが上方からオーバーフローするように吐出部36から塗布液Lを吐出させる。これにより、塗布液Lが下部開口部28から下方に流出し、上部開口部25より上方に位置する円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布される。これにより、円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成される(
図5(B)参照)。
【0062】
塗布装置10は、塗布液保持部12側から流下した塗布液Lを収容する容器14と、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを傾斜面18Aで受ける受け部材18とが設けられている。受け部材18の傾斜面18Aにおける塗布液Lを受ける部分は、容器14内で塗布液Lの液面L1よりも上側に配置されている。これにより、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを傾斜面18Aで受け、塗布液Lが傾斜面18Aを伝って流下することで、塗布液Lが容器14に回収される(
図3参照)。
【0063】
さらに、塗布装置10では、容器14の内部の塗布液Lを塗布液保持部12に循環させる循環部16が設けられている。循環部16では、ポンプ62を駆動することで、容器14内の塗布液Lが供給管60を通って塗布液保持部12に供給される。
【0064】
上記の塗布装置10では、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを受け部材18の傾斜面18Aで受けている。そして、傾斜面18Aを伝って流下した塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1に合流するため、塗布液Lが発泡しにくい。これにより、塗布装置10では、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、容器14内の塗布液Lが発泡しにくくなる。したがって、循環部16により、容器14内の塗布液Lが供給管60を通って塗布液保持部12に供給されたときに、塗布液Lに泡が含まれていることが低減される。このため、塗布装置10では、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の泡欠陥の発生が抑制される。
【0065】
図10には、比較例の塗布装置200が示されている。
図10に示されるように、塗布装置200では、筐体20の下部に塗布液Lを収容する容器202が設けられている。容器202は、逆円錐状に形成された凹状部202Aを備えている。より具体的には、凹状部202Aは、下部側に向かって内径が徐々に縮小されるように形成された傾斜面203を備えており、中心部が最も低い位置となっている。すなわち、凹状部202Aは、傾斜面203が谷型に窪んだ形状とされている。凹状部202Aに溜まった塗布液Lの液面L1は、凹状部202Aの上部側に位置している。なお、容器202には、第1実施形態のような受け部材は設けられていない。
【0066】
塗布装置200では、円筒体100の外周面100Aを伝って流下した塗布液Lが容器202内に溜まった塗布液Lの液面L2に落下する。すなわち、円筒体100の外周面100Aを伝って流下した塗布液Lは、傾斜面203には直接落下しない構成とされている。このとき、落下した塗布液Lの液滴が塗布液Lの液面L2に当たったときの衝撃により、塗布液Lが発泡しやすくなる。これにより、塗布液Lの液面L2付近に泡210が発生する。このため、容器202内の塗布液Lを循環部により塗布液保持部に供給すると、塗布液Lに泡が含まれている場合がある。
【0067】
これに対して、第1実施形態の塗布装置10では、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを受け部材18の傾斜面18Aで受け、傾斜面18Aを流下させて容器14に回収する。これにより、傾斜面18Aを流下した塗布液Lが容器14内の塗布液Lと合流するときの衝撃が緩和され、容器14内の塗布液Lに泡が発生しにくい。このため、塗布装置10では、円筒体100の外周面100Aを伝って流下した塗布液Lを容器202内の塗布液Lの液面L1に落下させる場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の泡欠陥の発生が抑制される。
【0068】
また、塗布装置10では、傾斜面18Aは、塗布液保持部12の軸方向から直交する方向から見て直線状とされており、傾斜面18Aの鉛直方向に対する角度θ1は、10°以上60°以下である。このため、塗布装置10では、傾斜面の鉛直方向に対する角度が10°より小さい場合と比較して、受け部材18で塗布液Lを受けたときの衝撃による発泡が抑制される。また、傾斜面の鉛直方向に対する角度が60°より大きい場合と比較して、受け部材18で受けた塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1に合流するときの発泡が抑制される。
【0069】
また、塗布装置10では、傾斜面18Aの鉛直方向に対する角度θ1は、15°以上45°以下である。このため、塗布装置10では、傾斜面の鉛直方向に対する角度が15°より小さい場合と比較して、受け部材18で塗布液Lを受けたときの衝撃による発泡が抑制される。また、傾斜面の鉛直方向に対する角度が45°より大きい場合と比較して、受け部材18で受けた塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1に合流するときの発泡が抑制される。
【0070】
また、塗布装置10では、傾斜面18Aは、側面視にて中央部が突出する円錐状とされている。このため、塗布装置10では、傾斜面が谷型に窪んだ形状である場合と比較して、円筒体100の外周面100Aから落下した塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1と接触しにくい。
【0071】
また、塗布装置10を用いて塗布液を塗布する塗布方法では、円筒体100を塗布液保持部12に対して上下方向上方側に相対移動させ、塗布液保持部12から円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する工程を備えている。さらに、塗布方法では、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを容器14内の塗布液Lの液面L1よりも上側の受け部材18における傾斜面18Aで受け、塗布液Lを容器14に収容する工程を備えている。さらに、塗布方法では、容器14の内部の塗布液Lを循環部16により塗布液保持部12に循環させる工程を備えている。このため、塗布方法では、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の泡欠陥の発生が抑制される。
【0072】
また、塗布装置10を用いて塗布液を塗布する塗布方法では、円筒体100は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである。このため、塗布方法では、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面100Aの塗膜102の泡欠陥の発生が抑制される。
【0073】
また、上記の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法では、円筒体100は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、塗布液Lは、感光材料を含有している。このため、感光体の製造方法では、円筒体の外周面を伝って流下した塗布液を容器内の塗布液の液面に落下させる場合と比較して、感光体の外周面100Aにおける塗膜102の泡欠陥の発生が抑制される。
【0074】
〔第2実施形態〕
次に、
図7を用いて、第2実施形態の塗布装置120について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0075】
図7に示されるように、塗布装置120は、第1実施形態の塗布装置10の受け部材18に代えて、受け部材122を備えている。受け部材122は、平板状とされており、上面に鉛直方向に対して交差する傾斜面122Aを備えている。傾斜面122Aは、鉛直方向に対して交差する一方向に下り勾配となるように傾斜している。受け部材122が配置された状態において、受け部材122の鉛直方向と直交する方向の幅は、円筒体100の外径よりも大きい。これにより、受け部材122は、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを傾斜面122Aで受ける構成とされている。
【0076】
傾斜面122Aの鉛直方向に対する角度θ2は、10°以上60°以下が好ましく、12°以上52°以下がより好ましく、15°以上45°以下がさらに好ましい。例えば、傾斜面122Aの鉛直方向に対する角度θ2は、45°とされている。塗布装置120の他の構成は、第1実施形態の塗布装置10と同様である。
【0077】
上記の塗布装置120では、第1実施形態の塗布装置10と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0078】
また、塗布装置120では、傾斜面122Aは、鉛直方向に対して交差する一方向に下り勾配となるように傾斜している。このため、塗布装置120では、傾斜面が鉛直方向に対して交差する複数の方向に傾斜している場合と比較して、受け部材122の構造が簡単になる。
【0079】
〔第3実施形態〕
次に、
図8を用いて、第3実施形態の塗布装置130について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0080】
図8に示されるように、塗布装置130は、第1実施形態の塗布装置10の受け部材18に代えて、受け部材132を備えている。受け部材132は、湾曲した板状体であり、上面に傾斜面132Aを備えている。傾斜面132Aは、曲面の一例である。本実施形態では、傾斜面132Aは、上に凸状となるように形成された曲面とされている。受け部材132が配置された状態において、受け部材132の鉛直方向と直交する方向の幅は、円筒体100の外径よりも大きい。これにより、受け部材132は、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを傾斜面132Aで受ける構成とされている。
【0081】
例えば、円筒体100の外周面100Aに沿って下方側に延長した一の延長線134Aの傾斜面132Aの交点135Aにおける仮想の接面135を表示する。また、円筒体100の外周面100Aに沿って下方側に延長した他の延長線134Bの傾斜面132Aの交点136Aにおける仮想の接面136を表示する。
図8に示す接面135、136は、断面における接線と同義である。このとき、接面135と鉛直方向に対する角度θ31及び接面136と鉛直方向に対する角度θ32は、10°以上60°以下であることが好ましく、12°以上52°以下がより好ましく、15°以上45°以下がさらに好ましい。例えば、接面135と鉛直方向に対する角度θ31は、60°とされており、接面136と鉛直方向に対する角度θ32は、30°とされている。塗布装置130の他の構成は、第1実施形態の塗布装置10と同様である。
【0082】
上記の塗布装置130では、第1実施形態の塗布装置10と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0083】
また、塗布装置130では、接面135と鉛直方向に対する角度θ31及び接面136と鉛直方向に対する角度θ32は、10°以上60°以下である。このため、塗布装置130では、接面135と鉛直方向に対する角度θ31及び接面136と鉛直方向に対する角度θ32が10°より小さい場合と比較して、受け部材132で塗布液Lを受けたときの衝撃による発泡が抑制される。また、接面135と鉛直方向に対する角度θ31及び接面136と鉛直方向に対する角度θ32が60°より大きい場合と比較して、受け部材132で受けた塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1に合流するときの発泡が抑制される。
【0084】
また、図示を省略するが、塗布装置130では、接面135と鉛直方向に対する角度θ31及び接面136と鉛直方向に対する角度θ32は、15°以上45°以下であることが好ましい。この場合、塗布装置130では、接面135と鉛直方向に対する角度θ31及び接面136と鉛直方向に対する角度θ32が15°より小さい場合と比較して、受け部材132で塗布液Lを受けたときの衝撃による発泡が抑制される。また、接面135と鉛直方向に対する角度θ31及び接面136と鉛直方向に対する角度θ32が45°より大きい場合と比較して、受け部材132で受けた塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1に合流するときの発泡が抑制される。
【0085】
〔第4実施形態〕
次に、
図9を用いて、第4実施形態の塗布装置140について説明する。なお、前述した第1~第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0086】
図9に示されるように、塗布装置140は、第1実施形態の塗布装置10の受け部材18に代えて、受け部材142を備えている。受け部材142は、容器14の軸方向に対して直交する側面視にて、中央部が山型に突出する曲面部とされた傾斜面142Aを備えている。受け部材142は、傾斜面142Aの中央部に曲面部の最上部となる頂点142Bを備えている。
【0087】
受け部材142の鉛直方向と直交する方向の幅は、円筒体100の外径よりも大きい。これにより、受け部材142は、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lを傾斜面142Aで受ける構成とされている。
【0088】
例えば、円筒体100の外周面100Aに沿って下方側に延長した延長線144の傾斜面142Aの交点145Aにおける仮想の接面145を表示する。接面145は、断面における接線と同義である。このとき、接面145と鉛直方向に対する角度θ4は、10°以上60°以下であることが好ましく、12°以上52°以下がより好ましく、15°以上45°以下がさらに好ましい。例えば、接面145と鉛直方向に対する角度θ4は、20°とされている。塗布装置130の他の構成は、第1実施形態の塗布装置10と同様である。
【0089】
上記の塗布装置140では、第1実施形態の塗布装置10と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0090】
また、塗布装置140では、傾斜面142Aは、側面視にて中央部が山型に突出する曲面部とされている。このため、塗布装置140では、傾斜面が谷型に窪んだ形状である場合と比較して、円筒体100の外周面100Aから落下した塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1と接触しにくい。
【0091】
また、塗布装置140では、接面145と鉛直方向に対する角度θ4は、10°以上60°以下である。このため、塗布装置140では、接面145と鉛直方向に対する角度が10°より小さい場合と比較して、受け部材142で塗布液Lを受けたときの衝撃による発泡が抑制される。また、接面145と鉛直方向に対する角度が60°より大きい場合と比較して、受け部材142で受けた塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1に合流するときの発泡が抑制される。
【0092】
また、塗布装置140では、接面145と鉛直方向に対する角度θ4は、15°以上45°以下である。塗布装置140では、接面145と鉛直方向に対する角度θ4が15°より小さい場合と比較して、受け部材132で塗布液Lを受けたときの衝撃による発泡が抑制される。また、接面145と鉛直方向に対する角度θ4が45°より大きい場合と比較して、受け部材132で受けた塗布液Lが容器14内の塗布液Lの液面L1に合流するときの発泡が抑制される。
【0093】
〔補足説明〕
上記第1~第4実施形態において、円筒体100の外周面100Aを落下した塗布液Lを容器内の塗布液の液面よりも上方側の受け部材の傾斜面で受ける形状であれば、受け部材の形状は、変更可能である。
【0094】
上記第1~第4実施形態において、塗布液保持部12の各部材の構成は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布できる構成であれば、変更可能である。また、環状体32の形状も変更可能である。
【0095】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【実施例0096】
以下、本開示の塗布装置及び塗布方法を実施例により更に具体的に説明するが、本開示の塗布装置及び塗布方法はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0097】
[実施例1]
<塗布液の作製>
下記化1に示す式(CT-1)で表されるベンジジン化合物2.6質量部、及び下記化2に示す式(B-1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量:40,000)3質量部を、テトラヒドロフラン25質量部に溶解させて電荷輸送層形成用の塗布液Lを調製した。塗布液Lは、電子写真用の感光体を製造するための感光材料を含有した液体である。
【0098】
【0099】
【0100】
<塗布>
円筒体100としてφ84×340mmのアルミパイプを用い、
図1に示す塗布装置10及び上記の塗布液Lを用いることで、円筒体100への塗布液Lの塗布を行った。塗布装置10の容器14に設置した受け部材(表1の液受け部材)は、
図1に示す受け部材18を用いた。受け部材18の傾斜面18Aの鉛直方向に対する角度は、45°とした。
【0101】
塗布装置10の環状体32の内径は85.0mmである。塗布液保持部12には毎分0.4L、上部開口部25より下方の円筒体100へは毎分0.4Lの塗布液Lを常時循環供給した。このような条件で塗布液Lを常時循環供給しながら、円筒体100の内面上部を把持部(図示省略)で把持し、円筒体100を鉛直方向上方より下降させた。このとき、円筒体100は、鉛直方向上方より下方側に向かって、毎分500mmの一定速度で塗布液保持部12に設けられた上部開口部25を貫通させた。円筒体100が最下点に到達するまでには、塗布液Lは塗布液保持部12を満たしてオーバーフロー状態となった。
【0102】
次いで、円筒体100を毎分150mmの一定速度で引き上げることで、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lによる塗膜102を形成した。円筒体100が上部開口部25を上下する間、上部開口部25より下方の円筒体100の外周面100Aは上部開口部25に設けられたスリット状の吐出部36より吐出された塗布液Lによって全周が覆われて、重力によって円筒体100の外周面100Aより流れ落ちていった。円筒体100に塗布液Lを塗布したサンプル(円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成されたもの)は、135℃、40分熱風乾燥した。
【0103】
評価項目である円筒体100の塗膜102の泡欠陥は、マイクロスコープ画像で観察し、1本あたりのサイズ100μm以上の泡欠陥の個数により、下記(a)~(c)の基準で判定した。
(a)〇:泡欠陥の発生無し。
(b)△:泡欠陥が2個以下。
(c)×:泡欠陥が3個以上。
【0104】
[実施例2-4]
受け部材18(液受け部材)の傾斜面18Aの鉛直方向に対する角度を、表1に示す実施例2-4のとおり変更し、塗布液Lの塗布を行った。
【0105】
[比較例1-3]
受け部材18(液受け部材)の傾斜面18Aの鉛直方向に対する角度を、表1に示す比較例1-2のとおり変更し、塗布液Lの塗布を行った。また、比較例3では、容器14内に受け部材を設けずに、塗布液Lの塗布を行った。円筒体100の塗膜102の泡欠陥の発生状況を評価した結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
表1に示されるように、実施例2-4では、円筒体100の塗膜102に泡欠陥の発生がないことが確認できた。また、実施例2-4では、円筒体100の塗膜102に発生した泡欠陥の個数が2以下であることが確認できた。
【0108】
これに対し、比較例1-3では、円筒体100の塗膜102に発生した泡欠陥の個数が3個以上であることが確認された。比較例2では、受け部材18の傾斜面の鉛直方向に対する角度が大きい(傾斜面の水平方向に対する傾きが緩い)ため、落下した塗布液Lが受け部材に衝突する衝撃で発泡したと考えられる。一方、比較例1のように受け部材18の傾斜面の鉛直方向に対する角度が小さい(傾斜面の水平方向に対する傾きが急な)場合は、落下した塗布液Lが十分減速されずに液面に合流するため、十分に発泡を防止できなかったと考えられる。