(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176055
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】CO2転換装置
(51)【国際特許分類】
C07C 29/152 20060101AFI20221117BHJP
C01B 39/38 20060101ALI20221117BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20221117BHJP
C07C 43/04 20060101ALI20221117BHJP
C07C 41/09 20060101ALI20221117BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20221117BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20221117BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20221117BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20221117BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
C07C29/152
C01B39/38
C07C31/04
C07C43/04 D
C07C41/09
B01D53/22
B01D71/02 500
B01D69/10
B01D69/12
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213383
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2021081995の分割
【原出願日】2021-05-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・ 産業技術総合開発機構、 新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業/(バイオマス)「バイオエタノール濃縮用脱エタノール膜及びその性能を発揮できる高効率システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】514213202
【氏名又は名称】イーセップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【復代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤村 健一
【テーマコード(参考)】
4D006
4G073
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA28
4D006KA01
4D006KA72
4D006KB30
4D006MA02
4D006MA09
4D006MA40
4D006MB04
4D006MB14
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4D006PB32
4D006PB65
4D006PB66
4D006PB67
4D006PB68
4D006PC80
4G073BA01
4G073BD15
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4G073FF01
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4G073UB40
4H006AA02
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4H006AC29
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4H006BA71
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4H006BE20
4H006BE40
4H006BE41
4H006DA12
4H006DA25
4H006FE11
4H006GN24
4H006GP01
4H039CA60
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素と水素からメタノールとジメチルエーテル混合物に高収率で転換することができる製造システムを提供する。
【解決手段】
CO2と水素を原料として反応させメタノールあるいはジメチルエーテルに転換させるCO
2転換装置であって、メタノール合成触媒とメタノール転化触媒が分離膜を隔て配置され、分離膜を介して高圧側に配置したメタノール合成触媒によりCO
2と水素からメタノールと水を生成させ、次いでCO
2と水素を含む反応系から、生成したメタノールと水を分離膜により選択的に膜透過させ、分離膜を介して低圧側に配置したメタノール転化触媒によってメタノールとジメチルエーテルと水の混合物を得ることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2と水素を原料として反応させメタノールとジメチルエーテルに転換させるCO2転換装置であって、
メタノール合成触媒とメタノール転化触媒と分離膜を備え、
前記メタノール合成触媒と前記メタノール転化触媒は前記分離膜を隔て配置され、
前記分離膜を介して高圧側に配置した前記メタノール合成触媒によりCO2と水素からメタノールと水を生成させ、次いでCO2と水素を含む反応系から、生成したメタノールと水を前記分離膜により選択的に膜透過させ、前記分離膜を介して低圧側に配置した前記メタノール転化触媒によってメタノールとジメチルエーテルと水の混合物を得ることを特徴とする、CO2転換装置。
【請求項2】
前記分離膜はSi/Al比10~20のZSM-5型ゼオライト膜であり、ゼオライト骨格中のAlの交換カチオンサイトに、CO2や水素に対してメタノール及び水を選択的に吸着する金属カチオンが固定されていることを特徴とする、請求項目1記載のCO2転換装置。
【請求項3】
前記分離膜を支持する支持体を備え、前記支持体は気孔率25~55%の多孔質α-アルミナ基材であることを特徴とする、請求項1、2のいずれか一項記載のCO2転換装置。
【請求項4】
原料としてCO2と水素に一酸化炭素を加えた、請求項1~3のいずれか一項記載のCO2転換装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のCO2転換装置を用いた、オレフィン、ガソリン製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化酸素(CO2)と水素を反応させメタノール(MeOH)あるいはジメチルエーテル(DME)に転換させるCO2転換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2050年でのカーボンニュートラル達成を目指し、2020年を境に、世界的にカーボンニュートラルに向けたグリーン技術開発投資が加速し、自動車から化学、環境、エネルギーなど殆どの分野で、その事業環境は一変した。天然ガスや石炭などの化石資源ではなく、カーボンニュートラルとなる再生可能なバイオマス由来、あるいは回収されたCO2を原料とする化学品や燃料の新規合成方法の開発や改良が急務となった。以下の反応に示すように、従来の化石資源由来の原料では一酸化炭素(CO)と水素の混合ガスである合成ガスを経由した合成(式1)がメインであったが、CO2を原料とする場合、特に式2~4を考慮する必要がある。
CO + 2 H2 ⇔ MeOH (発熱反応) (式1)
CO2 + H2 ⇔ CO +H2O (吸熱反応) (式2)
CO2 + 3H2 ⇔ MeOH + H2O (発熱反応) (式3)
2 MeOH ⇔ DME + H2O (発熱反応) (式4)
1/2 n DME → (CH2)n + 1/2 n H2O (発熱反応、n は2以上) (式5)
式1~4までは平衡反応であるが、式5は平衡の制約は受けない。そのため一旦DMEまで転換できれば、C2以上のオレフィンやガソリンへの転換技術は、既存技術が利用できる。式5によりDMEがオレフィンやガソリン等に転換されると式4でMeOHからのDME転換が促進される。そのため、CO2からMeOHとDMEの混合物を得るまでの工程が、現状のボトルネック工程と判断される。
【0003】
例えば特許文献1には、排熱を高効率利用して、CO2回収装置も備えたメタノールを経由してガソリン又はジメチルエーテルを製造する方法が開示されている。一方で、使用する原料は天然ガスであり、CO2を多く含むバイオマス由来、あるいは回収されたCO2を原料とする場合には、そのままの適用は困難である。
【0004】
特許文献2では、CO2と水素を反応させメタノールを経由して炭素数2以上の炭化水素を製造する方法が記載されている。しかしCO2転化率が20%程度と低く、更なる改良が必要である。
【0005】
特許文献3では、CO2の転化率向上のため、メタノール合成触媒とメタノール転化触媒を複合させた新規触媒を開発し、CO2と水素を含む混合ガスから炭素数2以上の炭化水素を製造する方法が記載されている。
しかしCO2転化による生成物の65%以上はCOであり、目的とする炭素数2以上の炭化水素の収率は10%未満と低い。
【0006】
非特許文献1、2では、CO2と水素を原料とする反応系から、分離膜により水のみを選択的に膜透過させることで、式3のMeOH生成及び式4のDME生成を促進させることで、CO2転化率83%、DME収率54.5%と大幅な性能向上を報告している。一方で、MeOHとDMEを合算しても収率は60%程度であり、実用化を見据えると更なる性能向上は必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5863421号
【特許文献2】特開2015―44926
【特許文献3】特許第6338218号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Li et al., Science 367, 667-671 (2020).
【非特許文献2】Li et al., J. Mater.Che.A, 9, 2678-2682 (2021).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
CO2を原料とする化学品や燃料の合成については、その合成工程で多量のエネルギーを消費してしまうことはカーボンニュートラルの観点からは本末転倒であり、より一層の省エネ化、高効率化が必要である。
CO2からMeOHとDMEの混合物を得るまでのボトルネック工程についても、CO2転化率で90%以上、MeOHとDMEの合算した収率で80%以上、望ましくは90%以上の収率が達成可能なシステムの設計・開発が必須である。
【0010】
本発明の目的は、CO2と水素からメタノールとジメチルエーテル混合物に望ましくはほぼ90%以上の高収率で転換することができる製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、CO2と水素を原料として反応させメタノールあるいはジメチルエーテルに転換させるCO2転換装置であって、メタノール合成触媒とメタノール転化触媒と分離膜を備え、前記メタノール合成触媒と前記メタノール転化触媒は前記分離膜を隔て配置され、前記分離膜を介して高圧側に配置した前記メタノール合成触媒によりCO2と水素からメタノールと水を生成させ、次いでCO2と水素を含む反応系から、生成したメタノールと水を前記分離膜により選択的に膜透過させ、前記分離膜を介して低圧側に配置した前記メタノール転化触媒によってメタノールとジメチルエーテルと水の混合物を得ることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載のCO2転換装置であって、前記分離膜がSi/Al比10~20のZSM-5型ゼオライト膜であり、ゼオライト骨格中のAlの交換カチオンサイトに、CO2や水素に対してメタノール及び水を選択的に吸着する金属カチオンが固定されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1、2のいずれか一項記載のCO2転換装置であって、前記メタノール合成触媒とメタノール転化触媒を隔てている分離膜の支持体が、気孔率25~55%の多孔質α-アルミナ基材であることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか一項記載のCO2転換装置であって、原料としてCO2と水素に一酸化炭素を加えたことを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明は、オレフィン、ガソリン製造システムであって、請求項1~4のいずれか一項記載のCO2転換装置を用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、分離膜を透過したメタノールがDMEに転換されることで膜を介したメタノール分圧差が増大しメタノール透過が促進され、その結果式3及び式4によるCO2→MeOH→DMEへの転換反応も促進され、CO2原料からでも目的物(MeOH+DME)の単流収率を90%程度以上まで向上することができるという効果を奏する。
【0017】
請求項2の発明によれば、CO2と水素を含む混合ガスから、メタノールと水をおよそ当モルで200~300℃の反応系から選択的に膜透過させることができるとともに、高い膜耐久性を兼ね合わせることができるという効果を奏する。
【0018】
請求項3の発明によれば、分離膜の支持体が高い耐圧性と断熱性を兼ね備え、メタノール合成触媒層の温度を220~280℃に維持しつつも、式4の反応により発生した熱によって、後段のメタノール転化触媒層以降の工程の温度をより高温状態に維持することができるという効果を奏する。式5に示したDMEからオレフィンやガソリンを合成する反応温度は一般に300℃~450℃であり、式4のMeOHからDMEへの転化によりした反応熱により、外部熱エネルギーを投入することなくMeOHとDMEの混合ガスを300℃程度まで予熱することができるという効果を奏する。
【0019】
請求項4の発明によれば、原料としてCO2と水素に一酸化炭素を加えることにより目的物(MeOH+DME)の単流収率をより高めるという効果を奏する。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項1~4のいずれか一項記載のCO2転換装置を用いることにより、ボトルネックとなる工程での(MeOH+DME)の単流収率を高めて、オレフィン、ガソリン製造システムの生産効率をあげるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のCO
2転換装置の実施形態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
図1を参照すると、本発明のCO
2転換装置は、主としてCO
2と水素の混合ガス(或いはさらにCOを加えたもの)を原料とし、CO2と水素を反応させ(或いはCOと水素を反応させ)メタノールあるいはジメチルエーテルに転換させるCO
2転換装置1であって、メタノール合成触媒3とメタノール転化触媒4を、支持体5に支持された分離膜2を隔て配置している。分離膜2を介して3~7MPaの高圧側に配置したメタノール合成触媒2によりCO
2と水素からメタノール(MeOH)と水(H
2O)を生成させ、次いでCO
2と水素を含む220~280℃の反応系から、生成したメタノールと水を分離膜2により選択的に膜透過させ、0.5MPa以下の低圧側に配置したメタノール転化触媒4によって250~400℃にてメタノールとジメチルエーテルと水の混合物(MeOH,DME, H
2O)を得て、反応器出口ガス2より排出される。排出された混合物は例えばオレフィンやガソリンへの更なる転換がなされる。なお、低圧側に反応で得られた混合物用の空間を図示したが、高圧側にも間隙があって原料ガスを通す形、或いは本発明のCO
2転換装置をモジュール筐体に入れてその筐体とCO
2転換装置の間に原料ガスを通す形にしてもよい。また、ここでは図示していないが、稼働するためにはCO
2と水素の混合ガスを原料に供給する装置や圧力調整装置、温度制御装置等が必要である。
【0024】
ここで、メタノール合成触媒3としては銅―亜鉛系触媒などの公知の触媒を用いることができ、一般的な最適稼働条件は3~7MPa、220~280℃の範囲である。またメタノール転化触媒5としては、アルミノシリケート型ゼオライト系触媒などの公知の触媒を用いることができ、0.5MPa以下、250~400℃の範囲でMeOHからDMEへ転換できる。なお、本発明のCO2転換装置は、オレフィンやガソリンを製造するためのオレフィン、ガソリン製造システムに用いることができる。そのため、オレフィンやガソリンへの更なる転換を想定すると、触媒劣化を緩和するため、MeOH・DME・水の混合物として得ることが望ましい。MeOHから一気にDME→ガソリンと変換すると急激な発熱により局所的にホットスポットを形成し、触媒劣化を加速する。そのためオレフィンやガソリンに転換する前に、ある程度MeOHからDMEへ転換し、反応熱を制御・調整することが望ましい。ここで、オレフィンへの転換ではH-SAPO型ゼオライト触媒、ガソリンへの転換ではH-ZSM-5型ゼオライト触媒など、公知の触媒を用いることができ、その作動温度は300~450℃である。そのため、MeOHからDMEへの転換時に発生する反応熱により、外部熱エネルギーを投入することなくMeOHとDMEの混合ガスを300℃以上まで予熱することが望ましい。また水分については触媒上への炭素析出を抑制する効果がある一方で、450℃以上の高温になると触媒劣化の原因となるため、必要に応じて分離膜により水蒸気のみを分離・除去し、その水分濃度を調整することもできる。メタノール転化触媒5については、固定層として配置する方法に加え、触媒再生を容易にするために、流動層として配置することもできる。メタノール合成触媒3についても、粉状にして充填する或いはスラリーにして焼結する等使い方に応じて適宜選択して配置する。
【0025】
ここで、本発明で用いる分離膜2としては、耐久性に優れたゼオライト膜を用いることができる。膜耐久性及びメタノール・水透過分離性能の観点から、ゼオライト骨格中のAlの交換カチオンサイトに、CO2や水素に対してメタノール及び水を選択的に吸着するLi、Na、Kなどの金属カチオンが固定されている、Si/Al比10~20のZSM-5型ゼオライト膜であることが望ましい。Si/Al比が低すぎると膜耐久性が乏しく、Si/Al比が高すぎるとCO2や水素に対してメタノール及び水の分離選択性が発現しない。またゼオライト骨格中のAlの交換カチオンサイトに金属カチオンが固定されていない場合も、CO2や水素に対してメタノール及び水の分離選択性が発現しない。CO2や水素に対するメタノール及び水の分離選択性としては、50以上のものが望ましく、それよりも分離選択性が低い場合は原料ガスとなるCO2や水素の漏洩が大きくなり過ぎ、所定の効果を得ることは困難となる。また非特許文献1、2で用いられているA型ゼオライト膜については、水は透過させるがメタノールはほとんど膜透過させないこと、及び膜耐久性が十分ではないため、本発明で用いる分離膜としては不適である。例えばゼオライト骨格中のAlの交換カチオンサイトにNaカチオンを固定したSi/Al比10~20のZSM-5型ゼオライト膜によって、200~300℃の高温条件において、CO2や水素に対するメタノール及び水の分離選択性として50以上であり、かつ10-7[mol/(m2 s Pa)]以上のメタノール及び水の透過度を得ることができる。
【0026】
本発明で用いる分離膜2の支持体5としては、耐圧性に加え、断熱性に優れた気孔率45~55%の多孔質α-アルミナ基材が好ましい。気孔率が25%未満であると耐圧性に優れる一方で、断熱性及び膜透過性が必要以上に低下する。また気孔率が55%よりも大きくなると、耐圧性が低下して膜を介した圧力差で分離膜2が破損する懸念が生じる。本発明のCO2転換装置では、メタノール合成触媒層の温度を220~280℃に維持しつつも、式4の反応により発生した熱によって、後段のメタノール転化触媒層以降の工程の温度をより高温状態に維持することを特徴としている。式5に示したDMEからオレフィンやガソリンを合成する反応温度は一般に300℃~450℃であり、断熱性に優れた分離膜の支持体を用いることで、式4のMeOHからDMEへの転化によりした反応熱により、外部熱エネルギーを投入することなくMeOHとDMEの混合ガスを300℃程度まで予熱することができるという効果を奏する。熱伝導性の高いSiC等の一般的に利用される支持体は、メタノール合成触媒層とメタノール転化触媒層の温度差を維持することが困難であるため、本発明の分離膜2の支持体としては不適である。また支持体の形状としては管状のものが一般的であり、耐久性及び経済性の観点から、直径1~1.6 cm、長さ40~120cmの範囲のものが好ましい。支持体を管状のものとするとき、本発明のCO
2転換装置の基本部分も管状となり、
図1の概要図は菅の中心軸を含む長さ方向の断面の上部であり、低圧側は菅の内部である。
【0027】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0028】
供給ガス組成(CO、CO
2、及びH
2)、膜透過度(H
2、CO、CO
2、H
2O、MeOH、DME)、触媒配置(MeOH転化触媒、MeOH合成触媒)、高圧側運転条件(温度、圧力)及び低圧側運転条件(温度、圧力)を変動させ、転化率及び反応器出口ガス1(残留物)と反応器出口ガス2(目的物)のカーボンバランスを、プロセスシミュレーションにより算出した。当該シミュレーターでは、対象分離工程を1万~100億個に分割し、各分割セルにおける反応量及び膜透過量を逐次計算により算出した。解析前提条件としては、解析処理のため迅速化(簡略化)のため、流れ方向に対して等温・等圧条件にて解析を行った。分離膜の膜面積は45m
2に固定し、触媒量は各対象分離工程に対して平衡に到達する十分量にて解析した。供給ガス組成、膜透過度、触媒配置、運転条件を表1、解析結果を表2にそれぞれ示す。
【表1】
【表2】
【0029】
実施例1~10は、
図1に示す本発明のCO
2転換システムの実施形態において、目的物であるMeOH+DMEの収率を90%程度達成することができる条件を抜粋したものである。
比較例1~3は実施例1~3においてそれぞれ分離膜を用いずにMeOH合成触媒とMeOH転化触媒を同一雰囲気化に配置した場合であり、原料ガス中のCO
2濃度が高くなるにつれ、目的物であるMeOH+DMEの収率は大幅に低下した。
比較例4~6は非特許文献1、2で用いられている手法の最適化に対応し、比較例1~3において脱水膜を設置することで、分離膜により水のみを選択的に膜透過させることで、式3のMeOH生成及び式4のDME生成の促進を試みた。比較例1~3と比べるとMeOH+DMEの収率は大幅に向上したが、比較例4の供給ガスがCO
2と水素のみでCO を含まない原料(以下、CO
2原料と言う)の場合は理想的な条件でもMeOH+DMEの収率は81.3%までしか到達せず、実施例1~3の性能に及ばなかった。
比較例7~9は比較例4~6からメタノールと水の膜透過量の割合を変化させたもので
あり、メタノール透過度を10倍に増大することで、目的物であるMeOH+DMEの収率も向上
した。ただし、比較例7のCO
2原料の場合は理想的な条件でもMeOH+DMEの収率は82.3%までしか到達せず、実施例1~3の性能には及ばなかった。
比較例10~12は比較例4~6からメタノールと水の膜透過量の割合を変化させたものであり、メタノール透過度を100倍に増大することで、目的物であるMeOH+DMEの収率も向上した。ただしCO
2原料の場合は理想的な条件でもMeOH+DMEの収率は85.7%までしか到達せず、実施例1~3の性能には及ばなかった。
比較例13~15は実施例1~3においてMeOH転化触媒を高圧側にも配置した場合である。触媒を追加しているにもかかわらず、CO
2原料の場合は理想的な条件でもMeOH+DMEの収率は86.8%までしか到達せず、実施例1~3の性能には及ばなかった。
比較例16~18は実施例1~3からメタノールと水の膜透過量の割合を変化させたも
のであり、メタノール透過度を1/10に低下させることで、目的物であるMeOH+DMEの収率も大幅に低下した。例えばCO
2原料の場合はMeOH+DMEの収率は43.0%まで低下した。
比較例19~21は実施例1~3からメタノールと水の膜透過量の割合を変化させたものであり、メタノール透過度を1/2に低下させる代わりに水透過度を1.5倍にした。その結果、CO2原料の場合はMeOH+DMEの収率は75.4%まで低下するなど、実施例1~3の性能には及ばなかった。
比較例22は実施例1において、メタノール・水に対する水素、CO、CO
2の膜透過度をそれぞれ5倍にし、例えばメタノール・水に対する水素の分離選択性を20まで低下させた(実施例1のメタノール・水に対する水素の分離選択性は100)。
その結果、CO
2原料の場合はMeOH+DMEの収率で78.7%まで低下した。
比較例23は実施例1において、メタノール・水に対する水素、CO、CO
2の膜透過度をそれぞれ10倍にし、例えばメタノール・水に対する水素の分離選択性を10まで低下させた。
その結果、CO
2原料の場合はMeOH+DMEの収率で66.2%まで低下した。
以上の実施例と比較例の結果から、CO
2原料の場合の実施例においてMeOH+DMEの収率を90%程度以上とすることができ、本発明のCO
2転換装置の実施形態の有用性が確認された。なお、COを容易に供給できる場合においては、実施例2,3に示すように原料ガスに加えてより高い収率を得ることができる。
実施例1~10は、
図1に示す本発明のCO
2転換システムの実施形態において、目的物であるMeOH+DMEの収率を90%程度達成することができる条件を抜粋したものである。
比較例1~3は実施例1~3においてそれぞれ分離膜を用いずにMeOH合成触媒とMeOH転化触媒を同一雰囲気化に配置した場合であり、原料ガス中のCO
2濃度が高くなるにつれ、目的物であるMeOH+DMEの収率は大幅に低下した。
比較例4~6は非特許文献1、2で用いられている手法の最適化に対応し、比較例1~3において脱水膜を設置することで、分離膜により水のみを選択的に膜透過させることで、式3のMeOH生成及び式4のDME生成の促進を試みた。比較例1~3と比べるとMeOH+DMEの収率は大幅に向上したが、比較例4の供給ガスがCO
2と水素のみでCO を含まない原料(以下、CO
2原料と言う)の場合は理想的な条件でもMeOH+DMEの収率は81.3%までしか到達せず、実施例1~3の性能に及ばなかった。
比較例7~9は比較例4~6からメタノールと水の膜透過量の割合を変化させたもので
あり、メタノール透過度を10倍に増大することで、目的物であるMeOH+DMEの収率も向上
した。ただし、比較例7のCO
2原料の場合は理想的な条件でもMeOH+DMEの収率は82.3%までしか到達せず、実施例1~3の性能には及ばなかった。
比較例10~12は比較例4~6からメタノールと水の膜透過量の割合を変化させたものであり、メタノール透過度を100倍に増大することで、目的物であるMeOH+DMEの収率も向上した。ただしCO
2原料の場合は理想的な条件でもMeOH+DMEの収率は85.7%までしか到達せず、実施例1~3の性能には及ばなかった。
参考例13~15は実施例1~3においてMeOH転化触媒を高圧側にも配置した場合である。触媒を追加しているにもかかわらず、CO
2原料の場合は理想的な条件でもMeOH+DMEの収率は86.8%までしか到達せず、実施例1~3の性能には及ばなかった。
比較例16~18は実施例1~3からメタノールと水の膜透過量の割合を変化させたも
のであり、メタノール透過度を1/10に低下させることで、目的物であるMeOH+DMEの収率も大幅に低下した。例えばCO
2原料の場合はMeOH+DMEの収率は43.0%まで低下した。
比較例19~21は実施例1~3からメタノールと水の膜透過量の割合を変化させたものであり、メタノール透過度を1/2に低下させる代わりに水透過度を1.5倍にした。その結果、CO2原料の場合はMeOH+DMEの収率は75.4%まで低下するなど、実施例1~3の性能には及ばなかった。
比較例22は実施例1において、メタノール・水に対する水素、CO、CO
2の膜透過度をそれぞれ5倍にし、例えばメタノール・水に対する水素の分離選択性を20まで低下させた(実施例1のメタノール・水に対する水素の分離選択性は100)。
その結果、CO
2原料の場合はMeOH+DMEの収率で78.7%まで低下した。
比較例23は実施例1において、メタノール・水に対する水素、CO、CO
2の膜透過度をそれぞれ10倍にし、例えばメタノール・水に対する水素の分離選択性を10まで低下させた。
その結果、CO
2原料の場合はMeOH+DMEの収率で66.2%まで低下した。
以上の実施例と比較例の結果から、CO
2原料の場合の実施例においてMeOH+DMEの収率を90%程度以上とすることができ、本発明のCO
2転換装置の実施形態の有用性が確認された。なお、COを容易に供給できる場合においては、実施例2,3に示すように原料ガスに加えてより高い収率を得ることができる。