(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176061
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】整流装置、塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20221117BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221117BHJP
B05C 3/00 20060101ALI20221117BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221117BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20221117BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221117BHJP
F15D 1/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
B05C3/00
B05D7/00 K
B05D1/28
B05D3/00 B
B05D3/00 C
F15D1/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008126
(22)【出願日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2021080893
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 章彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆彰
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC56
4D075AC62
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075BB16X
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA03
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4D075DA20
4D075DB01
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4D075DC16
4D075DC19
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4D075EB19
4D075EB38
4D075EB43
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC30
4D075EC33
4F040AA07
4F040AB06
4F040BA49
4F040CC02
4F040CC08
4F041AA05
4F041AA13
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA32
4F041BA34
4F041BA59
4F042AA03
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA15
4F042BA27
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB20
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、第1案内壁に沿って流れる流体と第2案内壁に沿って流れる流体が合流する位置での流れの乱れが抑制される整流装置を得る。
【解決手段】整流装置は、環状の第1流路43を形成する第1流路部材42と、第1流路43の上流側で全周に亘って第1流路43と繋がる第2流路45を形成する第2流路部材44と、第2流路部材44に設けられた流入部46と、第2流路45内における流入部46から周方向に離れた位置に設けられ、第2流路45を周方向の一方に向けて流れる塗布液Lを第1流路43側に案内する第1案内壁50Aと、第2流路45内において第1案内壁50Aと周方向に隣接して設けられ、第2流路45を周方向の他方に向けて流れる塗布液Lを第1流路43側に案内すると共に第1案内壁50Aと交差する方向に配置された第2案内壁50Bと、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周壁と外周壁との間に軸方向に流体が流れる環状の第1流路を形成する第1流路部材と、
前記流体の流れ方向において前記第1流路の上流側に設けられ、全周に亘って前記第1流路と繋がる第2流路を内周壁と外周壁の間に形成する第2流路部材と、
前記第2流路部材に設けられ、前記第2流路における軸方向で前記第1流路と離れた周方向の一部分に流体を流入する流入部と、
前記第2流路内における前記流入部から周方向に離れた位置に設けられ、前記第2流路を周方向の一方に向けて流れる流体を前記第1流路側に案内する第1案内壁と、
前記第2流路内において前記第1案内壁と周方向に隣接して設けられ、前記第2流路を周方向の他方に向けて流れる流体を前記第1流路側に案内すると共に前記第1案内壁と交差する方向に配置された第2案内壁と、
を有する整流装置。
【請求項2】
前記第1案内壁と前記第2案内壁とが繋がる連結端と、前記連結端側から前記流入部の最下端までの高さの1/4における前記第1案内壁の点と前記第2案内壁の点とを結んだ線とのなす角度は、40°以下とされている請求項1に記載の整流装置。
【請求項3】
前記第1案内壁と前記第2案内壁とが繋がる連結端と、前記連結端側から前記流入部の最下端までの高さの1/4における前記第1案内壁の点と前記第2案内壁の点とを結んだ線とのなす角度は、10°以下とされている請求項2に記載の整流装置。
【請求項4】
前記流入部は、1つ設けられると共に、前記第1案内壁と前記第2案内壁はそれぞれ1つ設けられており、
前記流入部から流入され、かつ前記第2流路を周方向の一方に向けて流れる流体が前記第1案内壁に案内され、
前記流入部から流入され、かつ前記第2流路を周方向の他方に向けて流れる流体が前記第2案内壁に案内される構成とされている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の整流装置。
【請求項5】
前記流入部は、2つ以上設けられると共に、前記第1案内壁と前記第2案内壁は複数の前記流入部に一つずつ設けられており、
隣り合う一方の前記流入部から流入され、かつ前記第2流路を周方向の一方に向けて流れる流体が前記第1案内壁に案内され、
一方の前記流入部と隣り合う他の前記流入部から流入され、かつ前記第2流路を周方向の他方に向けて流れる流体が前記第1案内壁と隣接する前記第2案内壁に案内される構成とされている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の整流装置。
【請求項6】
前記第1流路部材及び前記第2流路部材における前記内周壁を構成する円筒状の内筒と、
前記内筒の外周面に一体的に形成され、前記第1案内壁及び前記第2案内壁が前記内筒の半径方向外側に突出する構成とされた突出部と、
前記内筒が挿入され、内周面に前記突出部が接触すると共に前記第1流路部材及び前記第2流路部材における前記外周壁を構成する円筒状の外筒と、
を有する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の整流装置。
【請求項7】
前記外筒に前記流入部を備える請求項6に記載の整流装置。
【請求項8】
前記流体が円筒体に塗布される塗布液とされた請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の整流装置と、
前記整流装置の前記第1流路における前記塗布液の流れ方向下流側に設けられ、上部開口部と下部開口部とを備え、前記塗布液が保持される塗布液保持部であって、前記上部開口部と前記下部開口部に前記円筒体を貫通させ、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させることにより、前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する前記塗布液保持部と、
を有する塗布装置。
【請求項9】
請求項8に記載の塗布装置を用いて塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記流入部から前記塗布液を流入し、前記第2流路を周方向の一方に向けて流れる前記塗布液を前記第1案内壁に沿って前記第1流路側に案内すると共に、前記流入部から前記塗布液を流入し、前記第2流路を周方向の他方に向けて流れる前記塗布液を前記第2案内壁に沿って前記第1流路側に案内し、前記第1流路に合流した前記塗布液を前記塗布液保持部に供給する工程と、
前記円筒体を前記塗布液保持部に対して上下方向上方側に相対移動させ、前記塗布液保持部から前記塗布液を前記円筒体の外周面に塗布する工程と、
を有する塗布方法。
【請求項10】
前記円筒体は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである請求項9に記載の塗布方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法であって、
前記円筒体は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、
前記塗布液は、感光材料を含有している感光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流装置、塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、外周面円筒形の被塗布体を連続的にその長手方向に移動する過程において、その周囲を環状に取り囲み、前記被塗布体の外周面に対して塗布液を塗布するものであって、さらに環状の液溜まり室と、この液溜まり室内の一部に対して外部から塗布液を供給する供給口と、前記液溜まり室の内方に開口するスリットとを有する環状塗布装置において、前記液溜り室内の一部同士を繋ぐバイパス路を設けるとともに、その中間に塗布液圧送手段を配設した感光体の製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、第1案内壁に沿って流れる流体と第2案内壁に沿って流れる流体が合流する位置での流れの乱れが抑制される整流装置、塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係る整流装置は、内周壁と外周壁との間に軸方向に流体が流れる環状の第1流路を形成する第1流路部材と、前記流体の流れ方向において前記第1流路の上流側に設けられ、全周に亘って前記第1流路と繋がる第2流路を内周壁と外周壁の間に形成する第2流路部材と、前記第2流路部材に設けられ、前記第2流路における軸方向で前記第1流路と離れた周方向の一部分に流体を流入する流入部と、前記第2流路内における前記流入部から周方向に離れた位置に設けられ、前記第2流路を周方向の一方に向けて流れる流体を前記第1流路側に案内する第1案内壁と、前記第2流路内において前記第1案内壁と周方向に隣接して設けられ、前記第2流路を周方向の他方に向けて流れる流体を前記第1流路側に案内すると共に前記第1案内壁と交差する方向に配置された第2案内壁と、を有する。
【0006】
第2態様に係る整流装置は、第1態様に記載の整流装置において、前記第1案内壁と前記第2案内壁とが繋がる連結端と、前記連結端側から前記流入部の最下端までの高さの1/4における前記第1案内壁の点と前記第2案内壁の点とを結んだ線とのなす角度は、40°以下とされている。
【0007】
第3態様に係る整流装置は、第2態様に記載の整流装置において、前記第1案内壁と前記第2案内壁とが繋がる連結端と、前記連結端側から前記流入部の最下端までの高さの1/4における前記第1案内壁の点と前記第2案内壁の点とを結んだ線とのなす角度は、10°以下とされている。
【0008】
第4態様に係る整流装置は、第1態様から第3態様までのいずれか1つの態様に記載の整流装置において、前記流入部は、1つ設けられると共に、前記第1案内壁と前記第2案内壁はそれぞれ1つ設けられており、前記流入部から流入され、かつ前記第2流路を周方向の一方に向けて流れる流体が前記第1案内壁に案内され、前記流入部から流入され、かつ前記第2流路を周方向の他方に向けて流れる流体が前記第2案内壁に案内される構成とされている。
【0009】
第5態様に係る整流装置は、第1態様から第3態様までのいずれか1つの態様に記載の整流装置において、前記流入部は、2つ以上設けられると共に、前記第1案内壁と前記第2案内壁は複数の前記流入部に一つずつ設けられており、隣り合う一方の前記流入部から流入され、かつ前記第2流路を周方向の一方に向けて流れる流体が前記第1案内壁に案内され、一方の前記流入部と隣り合う他の前記流入部から流入され、かつ前記第2流路を周方向の他方に向けて流れる流体が前記第1案内壁と隣接する前記第2案内壁に案内される構成とされている。
【0010】
第6態様に係る整流装置は、第1態様から第5態様までのいずれか1つの態様に記載の整流装置において、前記第1流路部材及び前記第2流路部材における前記内周壁を構成する円筒状の内筒と、前記内筒の外周面に一体的に形成され、前記第1案内壁及び前記第2案内壁が前記内筒の半径方向外側に突出する構成とされた突出部と、前記内筒が挿入され、内周面に前記突出部が接触すると共に前記第1流路部材及び前記第2流路部材における前記外周壁を構成する円筒状の外筒と、を有する。
【0011】
第7態様に係る整流装置は、第6態様に記載の整流装置において、前記外筒に前記流入部を備える。
【0012】
第8態様に係る塗布装置は、前記流体が円筒体に塗布される塗布液とされた第1態様から第7態様までのいずれか1つの態様に記載の整流装置と、前記整流装置の前記第1流路における前記塗布液の流れ方向下流側に設けられ、上部開口部と下部開口部とを備え、前記塗布液が保持される塗布液保持部であって、前記上部開口部と前記下部開口部に前記円筒体を貫通させ、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させることにより、前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する前記塗布液保持部と、を有する。
【0013】
第9態様に係る塗布方法は、第8態様に記載の塗布装置を用いて塗布液を塗布する塗布方法であって、前記流入部から前記塗布液を流入し、前記第2流路を周方向の一方に向けて流れる前記塗布液を前記第1案内壁に沿って前記第1流路側に案内すると共に、前記流入部から前記塗布液を流入し、前記第2流路を周方向の他方に向けて流れる前記塗布液を前記第2案内壁に沿って前記第1流路側に案内し、前記第1流路に合流した前記塗布液を前記塗布液保持部に供給する工程と、前記円筒体を前記塗布液保持部に対して上下方向上方側に相対移動させ、前記塗布液保持部から前記塗布液を前記円筒体の外周面に塗布する工程と、を有する。
【0014】
第10態様に係る塗布方法は、第9態様に記載の塗布方法において、前記円筒体は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである。
【0015】
第11態様に係る感光体の製造方法は、第9態様又は第10態様に記載の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法であって、前記円筒体は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、前記塗布液は、感光材料を含有している。
【発明の効果】
【0016】
第1態様に係る整流装置によれば、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、第1案内壁に沿って流れる流体と第2案内壁に沿って流れる流体が合流する位置での流体の流れの乱れが抑制される。
【0017】
第2態様に係る整流装置によれば、第1案内壁と第2案内壁とが繋がる連結端と、連結端側から流入部の最下端までの高さの1/4における第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ線とのなす角度が40°より大きい場合と比較して、流体が合流する位置での流体の流れの乱れが抑制される。
【0018】
第3態様に係る整流装置によれば、第1案内壁と第2案内壁とが繋がる連結端と、連結端側から流入部の最下端までの高さの1/4における第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ線とのなす角度が10°より大きい場合と比較して、流体が合流する位置での流体の流れの乱れが抑制される。
【0019】
第4態様に係る整流装置によれば、流入部が1つ設けられている構成において、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、第1案内壁に沿って流れる流体と第2案内壁に沿って流れる流体が合流する位置での流体の流れの乱れが抑制される。
【0020】
第5態様に係る整流装置によれば、流入部が2つ以上設けられている構成において、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、第1案内壁に沿って流れる流体と第2案内壁に沿って流れる流体が合流する位置での流体の流れの乱れが抑制される。
【0021】
第6態様に係る整流装置によれば、内筒と外筒との間に第1案内壁と第2案内壁とを別々に形成する場合と比較して、整流装置の作成が容易となる。
【0022】
第7態様に係る整流装置によれば、外筒以外の部分に流入部を設ける場合と比較して、整流装置の作成が容易となる。
【0023】
第8態様に係る塗布装置によれば、塗布液保持部を設けた構成において、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、円筒体の外周面の塗膜の欠陥の発生が抑制される。
【0024】
第9態様に係る塗布方法によれば、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、円筒体の外周面の塗膜の欠陥の発生が抑制される。
【0025】
第10態様に係る塗布方法によれば、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、円筒状部材又は無端ベルト状部材の塗膜の欠陥の発生が抑制される。
【0026】
第11態様に係る感光体の製造方法によれば、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、感光体の外周面における塗膜の欠陥の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る整流装置を備えた塗布装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る整流装置を備えた塗布装置に用いられる塗布液保持部の一部を拡大した状態で示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る整流装置を構成する内筒及び外筒を示す分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る整流装置に用いられる第1案内壁と第2案内壁とが繋がる連結端付近を示す正面図である。
【
図5】(A)は、塗布装置の塗布液保持部に円筒体を挿入する前の状態を示す構成図であり、(B)は、塗布装置の塗布液保持部に円筒体を挿入して下降させた状態を示す構成図であり、(C)は、塗布液保持部に対して円筒体を上下方向上側に移動させる途中の状態を示す構成図である。
【
図6】(A)は、円筒体の外周面に塗布液による塗膜が形成された円筒体の一部を示す側面図であり、(B)は、(A)中の5B-5B線に沿った断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る整流装置を示す概略側面図である。
【
図8】第1比較例に係る塗布装置の主要部を示す断面図である。
【
図9】第1比較例に係る塗布装置において、塗布液が合流する状態を示す模式的な平面図である。
【
図10】第1比較例に係る塗布装置において、塗布液が合流する状態を示す模式的な斜視図である。
【
図11】第2比較例に係る塗布装置の主要部を示す断面図である。
【
図12】第2比較例に係る塗布装置において、塗布液が合流する状態を示す模式的な平面図である。
【
図13】第2比較例に係る塗布装置において、塗布液が合流する状態を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の技術を実施するための形態について説明する。以下の説明では、図面において適宜示される矢印UPで示す方向を装置上下方向上方側とする。
【0029】
〔第1実施形態〕
<塗布装置の全体構成>
図1には、第1実施形態に係る整流装置40を備えた塗布装置10の一例が断面図にて示されている。
【0030】
図1に示されるように、塗布装置10は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する装置である。塗布装置10は、塗布液Lが保持される塗布液保持部12と、塗布液保持部12に対して塗布液Lの流れ方向上流側に配置されて塗布液Lの流れを整える整流装置40と、を備えている。また、塗布装置10は、塗布液保持部12側から流下した塗布液Lを収容する容器14と、容器14の内部の塗布液Lを塗布液保持部12に循環させる循環部16と、を備えている。さらに、塗布装置10は、塗布液保持部12を支持する筒状の筐体20を備えている。ここで、塗布液Lは、流体の一例である。
【0031】
(円筒体)
円筒体100は、例えば、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものである。円筒体100を構成する円筒状部材又は無端ベルト状部材は、例えば、電子写真用の感光体基体などである。また、例えば、円筒体100として、電子写真用の感光体基体を用いる場合、塗布液Lは、感光材料を含有している液体などが用いられる。本実施形態では、塗布装置10により、円筒体100を構成する円筒状部材又は無端ベルト状部材に塗布液Lが塗布される。塗布液Lとして、感光材料を含有している液体を用いることで、電子写真用の感光体を製造することができる。
【0032】
(筐体)
図1に示されるように、筐体20は、円筒状の部材で構成されており、筐体20の軸方向が上下方向となるように配置されている。一例として、例えば、筐体20は、上下方向に沿って配置された円筒部20Aを備えている。
【0033】
円筒部20Aの上端部には、半径方向内側に延びた上壁部21Bを備えており、上壁部21Bには、円形の開口21Cが形成されている。開口21Cの内径は、円筒体100の外径よりも大きい。上壁部21Bの開口21Cには、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0034】
(塗布液保持部)
図1及び
図2に示されるように、塗布液保持部12は、循環部16から供給される塗布液Lを保持する機能を有する。塗布液保持部12は、整流装置40の上部から上下方向上側に連続して設けられている。塗布液保持部12は、ケース24を備えている。ケース24は、円筒部24Aと、円筒部24Aの上端部から半径方向内側に屈曲された上壁部24Bと、円筒部24Aの下部側に設けられたブロック部24Cと、を備えている。
【0035】
円筒部24Aは、軸方向が上下方向となるように配置されている。上壁部24Bには、円形状の上部開口部25が設けられている(
図2参照)。上部開口部25の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。上壁部24Bの上部開口部25には、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0036】
ブロック部24Cは、筒状とされており、円筒部24Aの半径方向内側に配置された筒状の壁部26Bを備えている。ブロック部24Cの壁部26Bは、整流装置40の後述する内周壁40Aに繋がっている。壁部26Bの内面には、半径方向内側に向かって上り勾配となるように配置された傾斜部27が形成されている。傾斜部27の上端部には、円形状の下部開口部28が設けられている。下部開口部28の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。また、下部開口部28の内径は、上部開口部25の内径の内径よりも小さい。ブロック部24Cにおける壁部26Bの下部開口部28には、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0037】
塗布液保持部12は、図示しない支持部により筐体20の内部の上下方向上部側に支持されている。
【0038】
ケース24は、円筒部24Aと上壁部24Bとブロック部24Cとを備えることで、ブロック部24Cの上方側が半径方向内側に開口している。ブロック部24Cの上部には、設置面30が設けられており、設置面30には、環状体32が相対変位可能に配置されている。設置面30は、平面状とされており、水平方向に沿って配置されている。
【0039】
ケース24の内部には、円筒部24Aとブロック部24Cとの間、及び円筒部24Aと環状体32との間に、塗布液Lが流れる流路34が設けられている。
【0040】
塗布液保持部12における上部開口部25と下部開口部28には、円筒体100が貫通され、円筒体100は、塗布液保持部12に対して上下方向に相対移動する構成とされている(
図9参照)。設置面30は、円筒体100の相対移動の方向と交差する方向に配置されている。
【0041】
環状体32の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。一例として、環状体32の内径は、下部開口部28の内径よりも小さい。環状体32は、設置面30に配置された状態で、環状体32の内部に円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。一例として、環状体32は、ブロック部24Cの上部の設置面30に塗布液Lが介在された状態で配置されている。環状体32は、設置面30に塗布液Lが介在された状態で設置面30に対して可動(本実施形態では摺動)可能とされている。本実施形態では、環状体32を直接駆動する駆動部は設けられておらず、環状体32が自律的に設置面30に対して相対的に摺動するようになっている。
【0042】
図2に示されるように、塗布液保持部12における上壁部24Bの上部開口部25と環状体32との間には、周方向に沿ってスリット状の吐出部36が設けられている。吐出部36から塗布液Lが吐出される。吐出部36から吐出された塗布液Lは、上部開口部25から上壁部24Bの上面側に流れてオーバーフローすると共に、環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間を下方側に流れる(
図1参照)。すなわち、環状体32は、円筒体100との相対移動に伴って塗布液保持部12で保持されている塗布液Lが上方から流入して下方から流出する構成とされている。
【0043】
塗布装置10では、円筒体100を塗布液保持部12に対して上下方向上方側に相対移動させることで、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布されるようになっている(
図5(B)及び
図5(C)参照)。塗布液保持部12では、円筒体100の外周面100Aと環状体32の内周面32Aとの間に塗布液Lが流れることで、塗布液Lが流れる圧力により、環状体32が設置面30に対して相対変位する。このとき、円筒体100の外周面100Aと環状体32の内周面32Aとの隙間が周方向に沿って均一になるように、環状体32は、設置面30に対して相対変位するようになっている。
【0044】
図2に示されるように、環状体32の内周面32Aには、上部側に配置されると共に上部開口部25側から下り勾配となる傾斜面33Aと、傾斜面33Aの下端部から上下方向に沿って真直ぐに配置されたストレート部33Bとが設けられている。
【0045】
図5には、塗布装置10の塗布液保持部12により円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する方法の一例が示されている。
図5(A)に示されるように、塗布液保持部12の上方側から円筒体100を軸方向に沿って挿入し、下方(矢印A方向)に円筒体100を移動させる。
図5(B)に示されるように、円筒体100をさらに矢印A方向に下降させると共に、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給することで、塗布液保持部12の環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間に塗布液Lを充填させていく。そして、円筒体100が最下部に到達することで、円筒体100の軸方向の上端部が塗布液保持部12と対向する位置に配置される。
【0046】
その後、
図5(C)に示されるように、円筒体100を塗布液保持部12に対して上方(矢印B方向)に移動させる。このとき、塗布液Lが塗布液保持部12の上方からオーバーフローするように吐出部36から塗布液Lを吐出させる。これにより、塗布液Lが下部開口部28から下方に流出し、上部開口部25より上方に位置する円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布されることで、円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成される(
図6(B)参照)。なお、
図5は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する方法の一例であり、塗布方法は変更可能である。
【0047】
図6(A)に示されるように、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布される過程では、円筒体100の外周面100Aに塗布された塗布液Lが円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する。
【0048】
また、
図1に示されるように、塗布装置10では、筐体20の内部における塗布液保持部12の下方側には、壁部150が設けられている。壁部150には、円筒体100が貫通する開口部150Aが設けられている。また、壁部150の斜め方向の下端部には、筐体20の内壁面と隣接する位置に配置された孔部150Bが設けられている。これにより、壁部150の孔部150Bから筐体20の内壁面を伝って塗布液Lが流下し、塗布液Lは容器14に回収される。
【0049】
(整流装置の全体構成)
図1及び
図3に示されるように、整流装置40は、塗布液Lの流れ方向における塗布液保持部12の上流側に配置されており、塗布液Lの流れを整えて塗布液保持部12に流入させる機能を有する。本実施形態では、整流装置40は、塗布液保持部12の上下方向下部側に塗布液保持部12と連続して設けられている。
【0050】
図3に示されるように、整流装置40は、第1流路部材42と、塗布液Lの流れ方向における第1流路部材42の上流側に設けられた第2流路部材44と、を備えている。整流装置40は、第2流路部材44に設けられて塗布液Lが流入される流入部46を備えている。整流装置40は、内周壁40Aと、内周壁40Aの外側に配置される外周壁40Bと、を備えている。なお、塗布液Lの流れ方向の上流側又は下流側は、「塗布液Lの流れ方向」を省略して、単に「上流側」又は「下流側」という場合がある。
【0051】
(第1流路部材)
図3に示されるように、第1流路部材42は、上下方向上部側に配置されており、第1流路部材42の上部は塗布液保持部12(
図1参照)に繋がっている。内周壁40A及び外周壁40Bの上部側は、第1流路部材42の一部を構成している。第1流路部材42は、内周壁40Aと外周壁40Bとの間に形成されると共に軸方向に塗布液Lが流れる環状の第1流路43を備えている。すなわち、第1流路部材42の第1流路43における塗布液Lの流れ方向下流側に塗布液保持部12が設けられており、環状の第1流路43と塗布液保持部12における環状の流路34(
図1参照)とは軸方向に繋がっている。
【0052】
(第2流路部材及び流入部)
図3に示されるように、第2流路部材44は、第1流路部材42の上下方向下部側に連続して配置されている。すなわち、第2流路部材44は、第1流路部材42の上下方向下部側に繋がっている。内周壁40A及び外周壁40Bの下部側は、第2流路部材44の一部を構成している。第2流路部材44は、内周壁40Aと外周壁40Bの間に形成されると共に全周に亘って第1流路43と繋がる第2流路45を備えている。第2流路45は、塗布液Lの流れ方向において第1流路43の上流側に設けられている。
【0053】
第2流路部材44は、内周壁40Aの外周面から半径方向外側に突出する突出部48を備えている。突出部48の一部は、流入部46の下方側に配置されている。流入部46は、第2流路45における軸方向で第1流路43と離れた周方向の一部分に設けられており、流入部46から第2流路45に塗布液Lが流入される。一例として、流入部46は、円筒状の管体とされており、管体の軸方向の一端部が外周壁40Bに接続されている。
【0054】
第2流路部材44は、流入部46から周方向の一方に向けて配置された底壁部48Aを備えている。底壁部48Aの上方に第2流路45が形成されている。本実施形態では、底壁部48Aは、突出部48の上部に形成されると共に内周壁40Aから半径方向外側に向けて延びており、第2流路45の周方向の一部の底を成している。底壁部48Aは、流入部46から周方向の一方に向けて上り勾配となるように配置されている。一例として、底壁部48Aは、水平方向に対する傾斜角度を変化させるように湾曲して形成されている。本実施形態では、底壁部48Aの少なくとも上部側は、流入部46から離れるほど水平方向に対する傾斜角度が増している。これにより、流入部46から流入された塗布液Lは、底壁部48Aの上方の第2流路45を周方向の一方(矢印C1方向)に向けて流れる構成とされている。
【0055】
第2流路45内における流入部46から周方向に離れた位置には、第2流路45を周方向の一方(矢印C1方向)に向けて流れる塗布液Lを第1流路43側に案内する第1案内壁50Aが設けられている。第1案内壁50Aは、底壁部48Aの上端部の一部を構成しており、塗布液Lの流れ方向における下流側端部に配置されている。
【0056】
第2流路部材44は、流入部46から周方向の他方に向けて配置された底壁部48Bを備えており、底壁部48Bの上方に第2流路45が形成されている。本実施形態では、底壁部48Bは、突出部48の上部に形成されると共に内周壁40Aから半径方向外側に向けて延びており、第2流路45の周方向の一部の底を成している。底壁部48Bは、流入部46から周方向の他方に向けて上り勾配となるように配置されている。一例として、底壁部48Bは、水平方向に対する傾斜角度を変化させるように湾曲して形成されている。本実施形態では、底壁部48Bの少なくとも上部側は、流入部46から離れるほど水平方向に対する傾斜角度が増している。例えば、底壁部48Bは、底壁部48Aと整流装置40の軸方向と直交する方向に対称となるように形成されている。これにより、流入部46から流入された塗布液Lは、底壁部48Bの上方の第2流路45を周方向の他方(矢印C2方向)に向けて流れる構成とされている。
【0057】
第2流路45内における流入部46から周方向に離れた位置には、第2流路45を周方向の他方(矢印C2方向)に向けて流れる塗布液Lを第1流路43側に案内する第2案内壁50Bが設けられている。第2案内壁50Bは、底壁部48Bの上端部の一部を構成しており、塗布液Lの流れ方向における下流側端部に配置されている。第2案内壁50Bは、第2流路45内において第1案内壁50Aと周方向に隣接して設けられている。第2案内壁50Bは、第1案内壁50Aと交差する方向に配置されている。
【0058】
すなわち、整流装置40では、流入部46は、1つ設けられると共に、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bはそれぞれ1つ設けられている。整流装置40では、流入部46から流入され、かつ第2流路45を周方向の一方(矢印C1方向)に向けて流れる塗布液Lが第1案内壁50Aに案内される。また、整流装置40では、流入部46から流入され、かつ第2流路45を周方向の他方(矢印C2方向)に向けて流れる塗布液Lが第2案内壁50Bに案内される。
【0059】
第1案内壁50A及び第2案内壁50Bにおける塗布液Lの流れ方向下流側の端部は、塗布液Lが合流する合流部50とされている。合流部50には、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bとが繋がる連結端50Cが設けられている。連結端50Cは、R2.5mmより小さいR形状とされている(
図4参照)。整流装置40では、第2流路45を周方向の一方(矢印C1方向)に向けて流れる塗布液Lと、第2流路45を周方向の他方(矢印C2方向)に向けて流れる塗布液Lとは、合流部50で合流する。本実施形態では、整流装置40の軸方向に対して直交する方向から見て、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bとは交差する方向に配置されると共に、上方側に凸状となるように配置されている。連結端50Cは、第2流路部材44の周方向において、流入部46の180°位置に設けられている。
【0060】
図4に示されるように、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bとが繋がる連結端50Cと、連結端50C側から流入部46の最下端までの高さHの1/4における位置での第1案内壁50Aの点Xと第2案内壁50Bの点X’とを結んだ線51A、51Bとのなす角度をθとする。すなわち、この角度θは、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bとが繋がる連結端50Cと、連結端50C側から流入部46の最下端までの高さHの1/4の高さだけ下方の位置での第1案内壁50Aの点Xと第2案内壁50Bの点X’とを結んだ線51A、51Bのなす角度である。このとき、角度θは、40°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましく、10°以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、角度θは、例えば、10°に設定されている。
【0061】
図3に示されるように、整流装置40は、一例として、内周壁40Aを構成する円筒状の内筒52と、内筒52の外周面に一体的に形成された突出部48と、を備えている。さらに、整流装置40は、内筒52が挿入されると共に外周壁40Bを構成する円筒状の外筒54を備えている。突出部48の上部には、第1案内壁50A及び第2案内壁50Bが設けられている。すなわち、第1案内壁50A及び第2案内壁50Bは、内筒52の半径方向外側に突出している。本実施形態では、整流装置40の製造時に、突出部48が一体的に形成された内筒52を外筒54に挿入する。外筒54に内筒52が挿入された状態で、外筒54の内周面に突出部48が接触する。突出部48の外面と外筒54の内面とを接合することで、整流装置40が製造される。これにより、内筒52と外筒54との間に第1流路部材42の第1流路43が形成され、内筒52と外筒54との間に第2流路部材44の第2流路45が形成される。整流装置40は、外筒54に形成された流入部46を備えている。一例として、円筒状の流入部46の軸方向の一端が外筒54に接続されている。
【0062】
(容器)
図1に示されるように、容器14は、筐体20の上下方向下部に設けられている。一例として、容器14は、筐体20の円筒部20Aの下端部に繋がっている。
【0063】
容器14は、円筒部20Aと繋がる円筒部14Aと、円筒部14Aの下部に配置されると共に底面が谷型に窪んだ凹部14Bと、を備えている。本実施形態では、凹部14Bの底面は、下側に向かって内径が徐々に縮小された逆円錐状に窪んだ形状とされている。
【0064】
凹部14Bは、円筒部14A側から半径方向の中心部に向かって下り勾配となるように傾斜した底面を備えており、凹部14Bの中心部が最下部とされている。容器14の凹部14Bには、塗布液保持部12側から流下した塗布液Lが溜まるようになっている。一例として、塗布液Lの液面L1は、凹部14Bの上部側に位置している。
【0065】
(循環部)
図1に示されるように、循環部16は、容器14の内部の塗布液Lを整流装置40に供給する供給管60と、供給管60の途中に設けられたポンプ62と、を備えている。ポンプ62は、供給管60の塗布液Lを容器14側から整流装置40側に移送する。
【0066】
供給管60における塗布液Lの流れ方向の上流側端部60Aは、容器14の下部に接続されている。本実施形態では、供給管60の上流側端部60Aは、凹部14Bの最下部である中心部に接続されている。また、供給管60における塗布液Lの流れ方向の下流側端部60Bは、筐体20を貫通し、整流装置40の流入部46に接続されている。これにより、供給管60を流れる塗布液Lは、流入部46から整流装置40の内部の第2流路45に導入される。そして、整流装置40の第2流路45から第1流路43を介して塗布液保持部12の流路34に供給される。
【0067】
また、供給管60の途中には、塗布液Lの流れ方向におけるポンプ62の下流側に、塗布液Lの粘度を測定する粘度測定部66が設けられている。さらに、供給管60の途中には、塗布液Lの流れ方向における粘度測定部66の上流側に、塗布液Lに含まれる異物を除去するフィルタ68が設けられている。
【0068】
塗布装置10では、循環部16のポンプ62を駆動することで、容器14内の塗布液Lが供給管60を通って整流装置40に供給される。そして、整流装置40により塗布液Lが塗布液保持部12に供給される。塗布液保持部12では、塗布液Lが円筒体100の外周面100Aに塗布され、円筒体100の外周面100Aを伝って流下した塗布液Lは、容器14内に回収される。そして、容器14内の塗布液Lは、供給管60を通って整流装置40に供給される。このため、循環部16により、容器14内の塗布液Lが整流装置40を介して塗布液保持部12に循環されるようになっている。
【0069】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0070】
塗布装置10では、整流装置40と、整流装置40の第1流路43における塗布液Lの流れ方向下流側に設けられた塗布液保持部12とが設けられている。塗布液保持部12は、上部開口部25と下部開口部28とを備えると共に塗布液Lを保持している。塗布液保持部12では、上部開口部25と下部開口部28に円筒体100を貫通させ、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させることにより、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する。
【0071】
より具体的には、
図5(A)に示されるように、塗布液保持部12の上方側から円筒体100を矢印A方向に挿入する。
図5(B)に示されるように、円筒体100を矢印A方向に下降させると共に、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給することで、塗布液保持部12の環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間に塗布液Lを充填させていく。そして、円筒体100を最下部に到達させる。
【0072】
その後、
図5(C)に示されるように、円筒体100を塗布液保持部12に対して上方(矢印B方向)に移動させると共に、塗布液Lが上方からオーバーフローするように吐出部36から塗布液Lを吐出させる。これにより、塗布液Lが下部開口部28から下方に流出し、上部開口部25より上方に位置する円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布される。これにより、円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成される(
図6(B)参照)。
【0073】
また、整流装置40は、塗布液Lの流れ方向における塗布液保持部12の上流側に設けられている(
図1参照)。
図3に示されるように、整流装置40は、内周壁40Aと外周壁40Bとの間に軸方向に塗布液Lが流れる環状の第1流路43を形成する第1流路部材42を備えている。また、整流装置40は、塗布液Lの流れ方向において第1流路43の上流側に設けられた第2流路部材44を備えている。第2流路部材44には、全周に亘って第1流路34と繋がる第2流路45が内周壁40Aと外周壁40Bの間に形成されている。また、第2流路部材44には、第2流路45における軸方向で第1流路43と離れた周方向の一部分に塗布液Lを流入する流入部46が設けられている。
【0074】
また、整流装置40は、第2流路45内における流入部46から周方向に離れた位置に設けられた第1案内壁50Aを備えている。第1案内壁50Aによって、第2流路45を周方向の一方(矢印C1方向)に向けて流れる塗布液Lが第1流路43側に案内される。さらに、整流装置40は、第2流路45内において第1案内壁50Aと周方向に隣接して設けられた第2案内壁50Bを備えており、第2案内壁50Bは、第1案内壁50Aと交差する方向に配置されている。第2案内壁50Bによって、第2流路45を周方向の他方(矢印C2方向)に向けて流れる塗布液Lが第1流路43側に案内される。
【0075】
整流装置40では、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bとが交差する方向に配置されている。これにより、合流部50では、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bとが繋がる連結端50C付近で、第1案内壁50Aに沿って矢印C1方向に流れる塗布液Lと、第2案内壁50Bに沿って矢印C2方向に流れる塗布液Lとが、スムーズに合流する。すなわち、第1案内壁50Aに沿って矢印C1方向に流れる塗布液Lの流線と、第2案内壁50Bに沿って矢印C2方向に流れる塗布液Lの流線とが、平行に近い状態で合流する。このため、第1案内壁50Aに沿って流れる塗布液Lと第2案内壁50Bに沿って流れる塗布液Lとの衝突が抑制され、連結端50Cの下流側の第1流路43で塗布液Lの渦が発生することが抑制される。
【0076】
このため、整流装置40では、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、第1案内壁50Aに沿って流れる塗布液Lと第2案内壁50Bに沿って流れる塗布液Lが合流する位置での塗布液Lの流れの乱れが抑制される。したがって、整流装置40から塗布液保持部12に供給される塗布液Lの流れが安定化し、塗布液保持部12の吐出部36の周方向において、塗布液Lの流速のばらつきを抑制することができる。
【0077】
ここで、
図8~
図10を用いて、第1比較例の塗布装置200について説明する。
【0078】
図8に示されるように、塗布装置200は、塗布液保持部202を備えている。塗布液保持部202は、ケース204を備えている。ケース204は、円筒部24Aと、上壁部24Bと、ブロック部24Cと、を備えている。さらに、ケース204は、円筒部24Aの下端部とブロック部24Cの下端部とを繋ぐ底壁部204Aを備えている。円筒部24Aとブロック部24Cとの間には、円筒部24Aの全周に亘って形成されると共に軸方向に塗布液Lが流れる流路206が形成されている。流路206は、底壁部204Aの上方側に設けられている。
【0079】
また、円筒部24Aの上下方向下端部における周方向の一部には、塗布液Lを流入する筒状の流入部208が接続されている。流入部208の下流側端部は、円筒部24Aの上下方向下端部における底壁部204Aの上側に接続されている。底壁部204Aは、平面状とされており、円筒部24Aの周方向に沿って水平に形成されている。塗布装置200では、流入部208から塗布液Lが流路206に流入される。
【0080】
塗布装置200では、流入部208が接続された位置に、円筒部24Aの周方向に沿って配置された平面状の底壁部204Aが形成されている。これにより、
図9及び
図10に示されるように、流入部208から流路206に流入された塗布液Lは、周方向の一方を矢印D1に示すように底壁部204Aに沿って流れ、周方向の他方を矢印D2に示すように底壁部204Aに沿って流れる。このため、流路206を矢印D1方向に流れた塗布液Lと矢印D2方向に流れた塗布液Lは、流入部208の反対側の位置210で衝突し、塗布液Lの流速が乱れ、塗布液Lの渦などが発生する可能性がある。このため、粒子が分散する塗布液Lでは、粒子の凝集が発生するという懸念がある。
【0081】
また、
図11~
図13を用いて、第2比較例の塗布装置220について説明する。
【0082】
図11に示されるように、塗布装置220は、塗布液保持部222を備えている。塗布液保持部222は、円筒部24Aの軸方向の下部の周方向における反対側の位置に2つの流入部224、226を備えている。塗布装置220における流入部224、226以外の構成は、塗布装置200と同様である。
【0083】
塗布装置220では、流入部224、226が接続された位置に、円筒部24Aの周方向に沿って配置された平面状の底壁部204Aが形成されている。これにより、
図12及び
図13に示されるように、流入部224から流路206に流入された塗布液Lは、周方向の一方を矢印E1に示すように底壁部204Aに沿って流れ、周方向の他方を矢印E2に示すように底壁部204Aに沿って流れる。また、流入部226から流路206に流入された塗布液Lは、周方向の一方を矢印E3に示すように底壁部204Aに沿って流れ、周方向の他方を矢印E4に示すように底壁部204Aに沿って流れる。このため、流入部224から流路206に流入された塗布液Lと、流入部226から流路206に流入された塗布液Lとは、流路206の周方向の途中の2箇所の位置330、332で衝突し、塗布液Lの流速が乱れ、塗布液Lの渦などが発生する可能性がある。このため、粒子が分散する塗布液Lでは、粒子の凝集が発生するという懸念がある。
【0084】
これに対して、本実施形態の整流装置40では、第1案内壁50Aに沿って矢印C1方向に流れる塗布液Lの流線と第2案内壁50Bに沿って矢印C1方向に流れる塗布液Lの流線とが平行に近い状態で合流するため、塗布液Lの衝突が抑制される。このため、塗布液Lの流速の乱れが抑制され、連結端50Cの下流側の第1流路43で塗布液Lの渦の発生が抑制される。したがって、粒子が分散する塗布液Lでも、粒子の凝集が抑制される。
【0085】
また、整流装置40では、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bとが繋がる連結端50Cと、連結端50C側から流入部46の最下端までの高さHの1/4における位置での第1案内壁50Aの点Xと第2案内壁50Bの点X’とを結んだ線51A、51Bとのなす角度θは、40°以下とされている。このため、整流装置40では、第1案内壁と第2案内壁とが繋がる連結端と、連結端50C側から流入部46の最下端までの高さHの1/4の高さだけ下方の位置での第1案内壁の点Xと第2案内壁の点X’とを結んだ線51A、51Bとのなす角度が40°より大きい場合と比較して、塗布液Lが合流する位置での塗布液Lの流れの乱れが抑制される。
【0086】
また、整流装置40では、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bとが繋がる連結端50Cと、連結端50C側から流入部46の最下端までの高さHの1/4における位置での第1案内壁50Aの点Xと第2案内壁50Bの点X’とを結んだ線51A、51Bとのなす角度θは、10°以下とされている。このため、整流装置40では、第1案内壁と第2案内壁とが繋がる連結端と、連結端50C側から流入部46の最下端までの高さHの1/4の高さだけ下方の位置での第1案内壁の点Xと第2案内壁の点X’とを結んだ線51A、51Bとのなす角度が10°より大きい場合と比較して、塗布液Lが合流する位置での塗布液Lの流れの乱れが抑制される。
【0087】
また、整流装置40では、流入部46は、1つ設けられると共に、第1案内壁50Aと第2案内壁50Bはそれぞれ1つ設けられている。整流装置40では、流入部46から流入され、かつ第2流路45を周方向の一方(矢印C1方向)に向けて流れる塗布液Lが第1案内壁50Aに案内される。また、整流装置40では、流入部46から流入され、かつ第2流路45を周方向の他方(矢印C2方向)に向けて流れる塗布液Lが第2案内壁50Bに案内される。このため、整流装置40では、流入部が1つ設けられている構成において、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、第1案内壁50Aに沿って流れる塗布液Lと第2案内壁50Bに沿って流れる塗布液Lが合流する位置での塗布液Lの流れの乱れが抑制される。
【0088】
また、整流装置40は、内周壁40Aを構成する円筒状の内筒52と、内筒52の外周面に一体的に形成された突出部48と、内筒52が挿入されると共に外周壁40Bを構成する円筒状の外筒54と、を備えている。突出部48には、第1案内壁50A及び第2案内壁50Bが形成されており、第1案内壁50A及び第2案内壁50Bは、内筒52の半径方向外側に突出している。そして、外筒54に内筒52が挿入された状態で、外筒54の内周面に突出部48が接触している。このため、整流装置40では、内筒と外筒との間に第1案内壁と第2案内壁とを別々に形成する場合と比較して、整流装置40の作成が容易となる。
【0089】
また、整流装置40は、外筒54に流入部46を備えている。このため、整流装置40では、外筒以外の部分に流入部を設ける場合と比較して、整流装置40の作成が容易となる。
【0090】
また、塗布装置10は、整流装置40と、整流装置40の第1流路43における塗布液Lの流れ方向下流側に設けられた塗布液保持部12と、を備えている。塗布液保持部12は、上部開口部25と下部開口部28に円筒体100を貫通させ、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させることにより、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する。塗布装置10では、整流装置40から塗布液保持部12に供給される塗布液Lの流れが安定化し、塗布液保持部12の吐出部36の周方向において、塗布液Lの流速のばらつきが抑制される。
【0091】
このため、塗布装置10では、塗布液保持部を設けた構成において、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の欠陥の発生が抑制される。
【0092】
また、塗布装置10を用いて塗布液Lを塗布する塗布方法は、流入部46から塗布液Lを流入し、第2流路45を周方向の一方(矢印C1方向)に向けて流れる塗布液Lを第1案内壁50Aに沿って第1流路43側に案内すると共に、流入部46から塗布液Lを流入し、第2流路45を周方向の他方(矢印C2方向)に向けて流れる塗布液Lを第2案内壁50Bに沿って第1流路43側に案内し、第1流路43に合流した塗布液Lを塗布液保持部12に供給する工程を備えている。また、塗布装置10を用いて塗布液Lを塗布する塗布方法は、円筒体100を塗布液保持部12に対して上下方向上方側に相対移動させ、塗布液保持部12から塗布液Lを円筒体100の外周面100Aに塗布する工程を備えている。このため、塗布方法では、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の欠陥の発生が抑制される。
【0093】
また、塗布装置10を用いて塗布液を塗布する塗布方法では、円筒体100は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである。このため、塗布方法では、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面100Aの塗膜の欠陥の発生が抑制される。
【0094】
また、上記の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法では、円筒体100は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、塗布液Lは、感光材料を含有している。このため、感光体の製造方法によれば、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、感光体の外周面における塗膜の欠陥の発生が抑制される。
【0095】
〔第2実施形態〕
次に、
図7を用いて、第2実施形態の整流装置120について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0096】
図7に示されるように、整流装置120は、第1流路部材42と、塗布液Lの流れ方向における第1流路部材42の上流側に配置された第2流路部材122と、を備えている。第2流路部材122には、外周壁40Bの周方向における反対側に2つの流入部124、126が設けられている。第2流路部材122では、流入部124、126から第2流路45に塗布液Lが流入される。また、第2流路部材122では、第1案内壁130Aと第2案内壁130Bは、複数(本実施形態では2つ)の流入部124、126に一つずつ設けられている。
【0097】
すなわち、外周壁40Bの周方向における流入部124と流入部126との間にそれぞれ合流部130が設けられている。
図7では、構成を分かりやすくするため、
図7中の手前側の合流部130のみを図示し、
図7中の奥側の合流部130を省略している。合流部130には、第2流路45を周方向の一方(矢印C3方向)に向けて流れる塗布液Lを案内する第1案内壁130Aと、第2流路45を周方向の他方(矢印C4方向)に向けて流れる塗布液Lを案内する第2案内壁130Bとが設けられている。合流部130では、第1案内壁130Aと第2案内壁130Bとは隣接して配置されており、第1案内壁130Aと第2案内壁130Bとが繋がる連結端130Cが設けられている。第2案内壁130Bは、第1案内壁130Aと交差する方向に配置されている。連結端130Cは、第2流路部材122の周方向において、流入部124と流入部126から90°位置に設けられている。
【0098】
第1案内壁130Aと第2案内壁130Bとが繋がる連結端130Cと、連結端130C側から流入部46の最下端までの高さHの1/4における位置での第1案内壁130Aの点と第2案内壁130Bの点とを結んだ線とのなす角度θは、40°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましく、10°以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、角度θは、例えば、10°に設定されている。
【0099】
第2流路部材122には、隣り合う一方の流入部124から流入され、かつ第2流路45を周方向の一方(矢印C3方向)に向けて流れる塗布液Lが第1案内壁130Aに案内される。また、流入部124と隣り合う他の流入部126から流入され、第2流路45を周方向の他方(矢印C4方向)に向けて流れる塗布液Lが第2案内壁130Bに案内される。そして、塗布液Lは第1案内壁130Aと第2案内壁130Bとが繋がる連結端130Cで合流される。整流装置120のその他の構成は、第1実施形態の整流装置40と同様のである。
【0100】
上記の整流装置120では、第1実施形態の整流装置40と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0101】
また、整流装置120では、第2流路部材122には、2つの流入部124、126が設けられており、第1案内壁130Aと第2案内壁130Bは、2つの流入部124、126に一つずつ設けられている。このため、整流装置120では、流入部が2つ以上設けられている構成において、第2流路における第1流路と反対側の閉止端部が軸直角面に沿う平面状の場合と比較して、第1案内壁130Aに沿って流れる塗布液Lと第2案内壁130Bに沿って流れる塗布液Lが合流する位置での塗布液Lの流れの乱れが抑制される。
【0102】
〔補足説明〕
上記第1~第2実施形態において、整流装置を構成する各部材の構成は、塗布液Lの流れを整えることができる構成であれば、変更可能である。第1案内壁と第2案内壁の形状は、第1案内壁と第2案内壁とが交差する構成であれば変更可能である。例えば、第1案内壁と第2案内壁が直線状でもよい。また、第1実施形態では、突出部48が内筒52に設けられているが、突出部が外筒に設けられている構成でもよい。また、突出部が内筒及び外筒と別部材であってもよい。また、流入部が3つ設けられており、隣り合う流入部の間にそれぞれ合流部が設けられている構成でもよい。
【0103】
上記第1~第2実施形態において、塗布液保持部12の各部材の構成は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布できる構成であれば、変更可能である。
【0104】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【実施例0105】
以下、本開示の塗布装置及び塗布方法を実施例により更に具体的に説明するが、本開示の塗布装置及び塗布方法はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
まず、第1実施例として、環状体における傾斜面の鉛直方向に対する角度を変えて円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布し、塗膜の膜厚ムラを評価した。
【0107】
[実施例1]
< 塗布液の作成>
(金属酸化物微粒子Aの調製)
酸化亜鉛:(平均粒子径70μm:テイカ社製試作品)100重量部をトルエン450重量部及びメタノール50重量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM 603:信越化学社製)0.25重量部を添加し、サンドグラインダーミルにて1時間分散した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、150 ℃で2時間焼き付けを行ったのち室温まで冷却し、解砕して表面処理酸化亜鉛を得た。
【0108】
(塗布液の作製)
金属酸化物微粒子A33重量部、ブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)6重量部及びメチルエチルケトン25重量部を30分間混合した後、ブチラール樹脂(BM-1、積水化学社製)5重量部、シリコーンボール( トスパール145、東芝シリコーン社製)3重量部及びレベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0 .01重量部を上記の混合液に添加し、サンドミルにて2時間の分散処理を行い、塗布液Lを得た。
【0109】
上記塗布液Lの粘度は、粘度計として「RE500H 」型粘度計(東機記産業株式会社製)を用いて、標準コーン(1 °3 4 ′)、25 ℃ 、ずり速度100s-1の条件で、100mPa・sであった。
【0110】
(塗布)
円筒体100としてφ84×340mm のアルミパイプを用い、
図1に示す塗布装置及び上記の塗布液Lを用いて塗布を行った。塗布液保持部12には毎分0.4L 、上部開口部25より下方の円筒体100へは毎分0.4Lの塗布液Lを常時循環供給した。そして、塗布液Lを常時循環供給しながら、円筒体100の内面上部を図示しない把持部で把持し、鉛直上方より毎分500mmの一定速度で塗布液保持部に設けられた上部開口部25を貫通させた。円筒体100が最下点に到達するまでには、塗布液Lは塗布液保持部12を満たしてオーバーフロー状態となった。
【0111】
次いで円筒体100を毎分250mmの一定速度で引き上げて円筒体100の外周面100Aに塗膜102(塗布膜)を形成した。円筒体100が上部開口部25を上下する間、上部開口部25より下方の円筒体100の外周面100Aは上部開口部25に設けられたスリット状の吐出部36より吐出された塗布液Lによって全周が覆われて、重力によって円筒体100の外周面100Aより流れ落ちていった。円筒体100に塗布液Lを塗布したサンプル(円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成されたもの)は、170℃ 、40分熱風乾燥した。
【0112】
また、整流装置には、
図3等に示す整流装置40を用いた。整流装置の合流部における連結端と、連結端側から流入部の最下端までの高さの1/4における第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θを3°に設定した。本開示の実施例において、連結端側から流入部の最下端までの高さHの1/4における第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θは、第1案内壁と第2案内壁とが繋がる連結端から、連結端から流入口の最下端までの高さHの1/4の高さだけ下方の位置での第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θである。角度θを3°に設定した場合は、第1案内壁に沿って流れる塗布液Lの流速のベクトル方向と、第2案内壁に沿って流れる塗布液Lの流速のベクトル方向が同じである。合流部における円筒体100の外周面100Aの塗膜品質への影響は、自動表面検査機を用い、単位面積当たりの塗膜の欠陥検出数(塗膜の濃度差で検出)で評価した。円筒体100の外周面100Aの塗膜品質の評価結果を表1に示した。
【0113】
[実施例2]
整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θを5°に設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0114】
[実施例3]
整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θを10°に設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0115】
[実施例4]
整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θを20°に設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0116】
[実施例5]
整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θを30°に設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0117】
[実施例6]
整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θを40°に設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0118】
[実施例7]
整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θを50°に設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0119】
[実施例8]
整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θを60°に設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0120】
[比較例1]
図10のように整流装置を設けない構成とし、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った(角度θは測定できない)。
【0121】
円筒体100の外周面100Aの塗膜の欠陥検出数は、1個以下の場合は極めて良好で「◎」とし、2個以上7個以下の場合は良好で「〇」とし、8個以上35個以下の場合は欠陥検出数がやや多い点で「△」とし、36個以上の場合は不良で「×」とした。
【0122】
円筒体100の外周面100Aの塗膜品質の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0123】
表1に示されるように、整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線のなす角度θが60°以下の場合は、比較例1の整流装置を設けない構成と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜の欠陥検出数が少ないことが確認できた。また、整流装置の合流部における連結端と、上記の第1案内壁の点と第2案内壁の点とを結んだ2つの線とのなす角度θが40°以下の場合は、円筒体100の外周面100Aの塗膜の欠陥検出数がかなり少なくなることが確認できた。