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特開2022-176067工具の形状検出装置および工具の形状検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176067
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】工具の形状検出装置および工具の形状検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20221117BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20221117BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G01B11/16 H
B23Q17/22 D
B23Q17/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019293
(22)【出願日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2021081558
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】室伏 勇
【テーマコード(参考)】
2F065
3C029
【Fターム(参考)】
2F065AA31
2F065AA35
2F065AA37
2F065AA53
2F065AA65
2F065CC10
2F065DD08
2F065FF01
2F065FF02
2F065FF04
2F065GG00
2F065HH13
2F065HH15
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065MM02
2F065PP12
2F065PP22
2F065QQ21
3C029AA24
3C029AA27
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】形状が未知である工具の形状を測定しさらに工具の形状の異常を検出することができる工具の形状検出装置を提供する。
【解決手段】工作機械2の主軸11に設置された工具12の形状検出装置1であって、工具12の形状を撮影するカメラ22と、カメラ22で撮影した工具のエッジ13上の複数の点で、これらの法線ベクトルをもとめる法線ベクトル取得部27と、法線ベクトル取得部27で取得した第1の複数の法線ベクトルと第2の複数の法線ベクトルとを比較する法線ベクトル比較部29と、法線ベクトル比較部29での比較の結果、第1の複数の法線ベクトルの値と第2の複数の法線ベクトルの値とが、所定の閾値よりも異なっているときに、工具12の形状が変化しているとの判断をする工具形状判断部3)とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸に設置された工具の形状検出装置であって、
前記工具の形状を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した工具のエッジ上の複数の点で、これらの特定ベクトルをもとめる特定ベクトル取得部と、
前記特定ベクトル取得部で取得した第1の複数の特定ベクトルと、前記特定ベクトル取得部で次に取得した第2の複数の特定ベクトルとを比較する特定ベクトル比較部と、
前記特定ベクトル比較部での比較の結果、前記第1の複数の特定ベクトルの値と前記第2の複数の特定ベクトルの値とが、所定の閾値よりも異なっているときに、前記工具の形状が変化しているとの判断をする工具形状判断部と、
を有し、前記特定ベクトルは、法線ベクトルもしくは接線ベクトルもしくは前記法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いている特定傾斜ベクトルである工具の形状検出装置。
【請求項2】
前記特定ベクトル取得部で取得した第1の複数の特定ベクトルは、前記工具の使用前における特定ベクトルであり、
前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得部と、
前記特定ベクトル取得部でもとめた第1の複数の特定ベクトルと、前記エッジ形状取得部でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得部と、
を有する請求項1に記載の工具の形状検出装置。
【請求項3】
工作機械の主軸に設置された工具の形状検出装置であって、
前記工具の形状を撮影するカメラと、
前記工具の使用前に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジ上の複数の点で、特定ベクトルをもとめる特定ベクトル取得部と、
前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得部と、
前記特定ベクトル取得部でもとめた特定ベクトルと、前記エッジ形状取得部でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得部と、
を有し、前記特定ベクトルは、法線ベクトルもしくは接線ベクトルもしくは前記法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いている特定傾斜ベクトルである工具の形状検出装置。
【請求項4】
工作機械の主軸に設置された工具の形状検出装置であって、
前記工具の形状を撮影するカメラと、
前記工具の使用前に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得部と、
前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジ上の複数の点で、特定ベクトルをもとめる特定ベクトル取得部と、
前記特定ベクトル取得部でもとめた特定ベクトルと、前記エッジ形状取得部でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得部と、
を有し、前記特定ベクトルは、法線ベクトルもしくは接線ベクトルもしくは前記法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いている特定傾斜ベクトルである工具の形状検出装置。
【請求項5】
工作機械の主軸に設置された工具の形状検出方法であって、
前記工具の形状を撮影するカメラで撮影した工具のエッジ上の複数の点で、これらの特定ベクトルをもとめる特定ベクトル取得段階と、
前記特定ベクトル取得段階で取得した第1の複数の特定ベクトルと、前記特定ベクトル取得段階で次に取得した第2の複数の特定ベクトルとを比較する特定ベクトル比較段階と、
前記特定ベクトル比較段階での比較の結果、第1の複数の特定ベクトルの値と前記第2の複数の特定ベクトルの値とが、所定の閾値よりも異なっているときに、前記工具の形状が変化しているとの判断をする工具形状判断段階と、
を有し、前記特定ベクトルは、法線ベクトルもしくは接線ベクトルもしくは前記法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いている特定傾斜ベクトルである工具の形状検出方法。
【請求項6】
前記特定ベクトル取得段階で取得した第1の複数の特定ベクトルは、前記工具の使用前における特定ベクトルであり、
前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得段階と、
前記特定ベクトル取得段階でもとめた第1の複数の特定ベクトルと、前記エッジ形状取得段階でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得段階と、
を有する請求項5に記載の工具の形状検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具の形状検出装置および工具の形状検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワークの超精密加工において装置(工作機械)の運動性能が向上したことにより、工具の形状精度が加工精度に占めるウェイトが大きくなっている。なお、工具の形状の測定は、たとえば、特許文献1で示す工具形状測定装置を用いてなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/090844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に工具の形状を測定する場合、測定器はどういう形状の工具を測定しているのか指定しておく必要がある。通常、定義(指定)できる工具の形状は、ボールエンドミルの形状、ラジアスエンドミルの形状、フラットエンドミルの形状等、市販されている工具の形状になる。
【0005】
ところで、形状が未知である特殊な形状の工具を用いてワークを加工することがあり、形状が未知である工具についても、この形状を測定しさらに形状の異常を検出したい場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、形状が未知である工具の形状を測定しさらに工具の形状の異常を検出することができる工具の形状検出装置および工具の形状検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、工作機械の主軸に設置された工具の形状検出装置であって、前記工具の形状を撮影するカメラと、前記カメラで撮影した工具のエッジ上の複数の点で、これらの特定ベクトルをもとめる特定ベクトル取得部と、前記特定ベクトル取得部で取得した第1の複数の特定ベクトルと、前記特定ベクトル取得部で次に取得した第2の複数の特定ベクトルとを比較する特定ベクトル比較部と、前記特定ベクトル比較部での比較の結果、前記第1の複数の特定ベクトルの値と前記第2の複数の特定ベクトルの値とが、所定の閾値よりも異なっているときに、前記工具の形状が変化しているとの判断をする工具形状判断部とを有し、前記特定ベクトルは、法線ベクトルもしくは接線ベクトルもしくは前記法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いている特定傾斜ベクトルである工具の形状検出装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記特定ベクトル取得部で取得した第1の複数の特定ベクトルは、前記工具の使用前における特定ベクトルであり、前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得部と、前記特定ベクトル取得部でもとめた第1の複数の特定ベクトルと、前記エッジ形状取得部でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得部とを有する請求項1に記載の工具の形状検出装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、工作機械の主軸に設置された工具の形状検出装置であって、前記工具の形状を撮影するカメラと、前記工具の使用前に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジ上の複数の点で、特定ベクトルをもとめる特定ベクトル取得部と、前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得部と前記特定ベクトル取得部でもとめた特定ベクトルと、前記エッジ形状取得部でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得部とを有し、前記特定ベクトルは、法線ベクトルもしくは接線ベクトルもしくは前記法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いている特定傾斜ベクトルである工具の形状検出装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、工作機械の主軸に設置された工具の形状検出装置であって、前記工具の形状を撮影するカメラと、前記工具の使用前に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得部と、前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジ上の複数の点で、特定ベクトルをもとめる特定ベクトル取得部と、前記特定ベクトル取得部でもとめた特定ベクトルと、前記エッジ形状取得部でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得部とを有し、前記特定ベクトルは、法線ベクトルもしくは接線ベクトルもしくは前記法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いている特定傾斜ベクトルである工具の形状検出装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、工作機械の主軸に設置された工具の形状検出方法であって、前記工具の形状を撮影するカメラで撮影した工具のエッジ上の複数の点で、これらの特定ベクトルをもとめる特定ベクトル取得段階と、前記特定ベクトル取得段階で取得した第1の複数の特定ベクトルと、前記特定ベクトル取得段階で次に取得した第2の複数の特定ベクトルとを比較する特定ベクトル比較段階と、前記特定ベクトル比較段階での比較の結果、第1の複数の特定ベクトルの値と前記第2の複数の特定ベクトルの値とが、所定の閾値よりも異なっているときに、前記工具の形状が変化しているとの判断をする工具形状判断段階とを有し、前記特定ベクトルは、法線ベクトルもしくは接線ベクトルもしくは前記法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いている特定傾斜ベクトルである工具の形状検出方法である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記特定ベクトル取得段階で取得した第1の複数の特定ベクトルは、前記工具の使用前における特定ベクトルであり、前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得段階と、前記特定ベクトル取得段階でもとめた第1の複数の特定ベクトルと、前記エッジ形状取得段階でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得段階とを有する請求項5に記載の工具の形状検出方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、形状が未知である工具の形状を測定しさらに工具の形状の異常を検出することができる工具の形状検出装置および工具の形状検出方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る工具の形状検出装置と、この工具の形状検出装置が設置されている工作機械の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る工具の形状検出装置の概略構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る工具の形状検出装置によって得られる工具のエッジと法線ベクトルを示す図である。
図4図3において、工具のエッジの一部とこの法線ベクトルを示す拡大図である。
図5】本発明の実施形態に係る工具の形状検出装置によって得られる使用前と使用後における工具のエッジと法線ベクトルを示す図である。
図6図5で示す法線ベクトルの成分を示す図である。
図7図5において、工具のエッジの一部とこの法線ベクトルを示す拡大図である。
図8】本発明の実施形態に係る工具の形状検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る工具の形状検出装置1(工具形状異常検出装置)1は、たとえば、図1で示すように工作機械2に設置されて使用されるものである。
【0016】
工作機械2は、ベッド18の上面にテーブル16、門型のコラム10を有し、コラム10のクロスレール8にはサドル6を介して主軸ヘッド4が支持されている。主軸ヘッド4には主軸11が支持されている。
【0017】
ここで、説明の便宜のために水平な所定の一方向をX方向(X軸方向)とし、X方向に対して直交する水平な所定の他の一方向をY方向(Y軸方向)とし、X方向とY方向とに対して直交する上下方向をZ方向(Z軸方向)とする。
【0018】
テーブル16はベッド18に対してX軸方向に移動可能である。サドル6はクロスレール8に沿ってY軸方向に移動可能である。主軸ヘッド4はサドル6に対してZ軸方向に移動可能である。
【0019】
これらの3軸を移動させることにより、テーブル16に載置されたワーク14に対して工具(たとえばエンドミル)12を3次元で移動させ、ワーク14を加工することが可能である。テーブル16の端には工具の形状検出装置1が設置されている。制御装置20は工作機械2と工具の形状検出装置1に接続され、工作機械2と工具の形状検出装置1を制御することができる。なお、制御装置20は、図示しないCPUとメモリとを備えて構成されている。
【0020】
図2は工具の形状検出装置1で工具12の形状を測定している図を示している。先に示した3軸により図2で示す位置まで工具12を移動させ、工具12の形状を測定する。工具の形状検出装置1は、カメラ22、照明装置24を含み、図2で示すように工具12は、カメラ22と照明装置24の間に位置した状態で工具12の形状が測定される。照明装置24からの光を工具12の後ろから当てて画像を撮影するため、工具12の形状が影として撮影される。
【0021】
カメラ22は高速シャッターを備えていて、工具12が数千回転/分で回転中でも静止画のような撮影が可能である。またカメラ22にはズームレンズが取り付けられていて、制御装置20で拡大率の制御が行うことができるようになっていてもよい。主軸11には図示しない回転角度センサが備わっていて、回転数や回転角度の位置決め等の制御を制御装置20で行うことができる。
【0022】
工具12が1万回転/分以上の回転数で回転する場合には、高速シャッターだけでの対応では難しい。この場合は照明装置24をストロボ機能付きとする。数μsecの短い発光時間のストロボを用いれば、回転中の工具12でも形状測定が可能である。なお、工具12の最大回転数は、12万回転/分程度に設定できる。
【0023】
工具12は、たとえば、金型のコアやキャビティの表面を切削加工で形成するときに使用されるものである。上記切削加工は、金型のコアやキャビティの表面を、たとえば最終仕上げ加工するためにされるものであり、上記切削加工によって、金型のコアやキャビティの表面が鏡面のようになる。エンドミル12の外径はたとえば1mm程度であり、切削加工をするときのエンドミル12の回転数は6万回転/分程度である。
【0024】
ところで、工具12の撮影によって、エンドミル12の最大外形の静止画像が得られるようになっている。この最大外形の箇所がエンドミル12の切れ刃になっており、切れ刃の形状がワーク14の加工面の形状に影響を与えるからである。また、工具12の撮影の詳細については、国際公開2020/090844号公報で示されている。
【0025】
工具の形状検出装置1として、国際公開2020/090844号公報に示されている工具形状測定装置が採用されている。工具の形状検出装置1は、工作機械(たとえば超精密加工機)2の主軸11に設置された工具(たとえば回転しているエンドミル等の切削工具)12の形状を検出するものである。
【0026】
工具の形状検出装置1は、図2で示すように、制御部25と工具12の形状を撮影するカメラ(デジタルカメラ)22とを備えて構成されている。制御部25は、たとえば、制御装置20の一部で構成されているが、制御部25が、制御装置20とは別個に設けられていてもよい。
【0027】
工具の形状検出装置1は、工作機械(精密加工機)2の主軸11に設置された工具12の形状を検出する装置である。工作機械2の主軸11に設置されている工具12は、所定の中心軸C1を中心にして回転するようになっている。そして、工具12が回転しつつワーク14の切削加工をするようになっている。
【0028】
また、工具の形状検出装置1は、図2で示すように、法線ベクトル取得部(特定ベクトル取得部)27と法線ベクトル比較部(特定ベクトル比較部)29と工具形状判断部31とを備えて構成されている。
【0029】
法線ベクトル取得部27は、カメラ22で撮影した工具12のエッジ(切れ刃の先端に相当する外周の部位;最大外形の縁)13上の複数の点で、これらの法線ベクトルをもとめるようになっている。工具12のエッジ13上の複数の点は、図3図4等に参照符号Pn―1、Pn、Pn+1、Pn+2・・・で示している。複数の法線ベクトルは、図3図4等に参照符号VPn―1、VPn、VPn+1、VPn+2・・・で示している。なお、工具12のエッジ13は、エッジ形状取得部33によってもとめられる。
【0030】
工具12のエッジ13上の複数の点は、お互いがたとえば一定のごく僅かな距離を隔ててエッジ13の延伸方向で順にならんでいる。上記一定のごく僅かな距離としては、カメラ22の撮像素子の画素のピッチ程度の距離を掲げることができる。上記一定のごく僅かな距離が画素のピッチよりも僅かに大きくなっていてもよい。
【0031】
なお、法線ベクトル取得部27で法線ベクトルをもとめることに代えて、法線ベクトルに対して一定の角度だけ傾いているベクトル(特定傾斜ベクトル)をもとめてもよい。すなわち、法線ベクトルに対して一定の角度で交差するベクトルをもとめてもよい。たとえば、法線ベクトルに対して直交する接線のベクトル(接線ベクトル)をもとめてもよい。ここで、法線ベクトル、特定傾斜ベクトル、接線ベクトルを特定ベクトルとする。また、法線ベクトル取得部で、工具12のエッジ13上の複数の点それぞれにおけるエッジ13の接線の傾き、もしくは、法線の傾きをもとめてもよい。
【0032】
法線ベクトル比較部29は、法線ベクトル取得部27で取得した第1の複数の法線ベクトルと、法線ベクトル取得部27で次に取得した第2の複数の法線ベクトルとを比較するようになっている。第1の複数の法線ベクトルは、たとえば工具12によるワーク14の切削加工前の複数の法線ベクトルであり、第2の複数の法線ベクトルは、たとえば工具12によるワーク14の切削加工後の複数の法線ベクトルである。
【0033】
工具形状判断部31は、法線ベクトル比較部29での比較の結果、第1の複数の法線ベクトルの値と第2の複数の法線ベクトルの値とが、所定の閾値よりも異なっているときに、工具12の形状が変化しているとの判断をするようになっている。
【0034】
ここで、法線ベクトル取得部27での法線ベクトルVPn―1、VPn、VPn+1、VPn+2・・・の取得について、図4を参照しつつ法線ベクトルVPn+1を例に掲げさらに詳しく説明する。
【0035】
まず、工具12のエッジ13上のお互いが隣接している2つの点Pnと点Pn+1とを結ぶ線分LAnをもとめる。また、工具12のエッジ13上のお互いが隣接している2つの点Pn+1と点Pn+2とを結ぶ線分LAn+1をもとめる。続いて、線分LAnとの交差角度がαn+1であり、線分LAnとの交差角度がβn+1であり、点Pn+1を始点とする法線ベクトルVPn+1をもとめる。法線ベクトルVPn+1は、工具12の中心側(回転中心軸C1側)に向かっている。また、交差角度がαn+1と交差角度がβn+1とはお互いが等しくなっている。
【0036】
その他の法線ベクトルも、法線ベクトルVPn+1と同様にして求められる。なお、複数の法線ベクトルVPn―1、VPn、VPn+1、VPn+2・・・は、お互いの絶対値(スカラー量)が等しくなっている。複数の法線ベクトルVPn―1、VPn、VPn+1、VPn+2・・・は、たとえば、単位ベクトルになっている。
【0037】
なお、最小二乗法等により、複数の点(点Pn等)から、線分LAn等に代えて、半直線を求め、法線ベクトルVPn等をもとめてもよい。すなわち、図4において、線分LAn+1に代えて、点Pn+2から斜め上(点Pn+1側)に延びる1つ目の半直線をもとめる。この半直線は、複数の点(たとえば2つの点Pn+1、Pn)から最小二乗法によってもとめられたものである。同様にして、点Pn+2から斜め下(点Pn+3側)に延びる2つ目の半直線をもとめる。続いて、1つ目の半直線との交差角度がαn+2であり、2つ目の半直線との交差角度がβn+2であり、点Pn+2を始点とする法線ベクトルVPn+2をもとめる。なお、交差角度αn+2と交差角度がβn+2とはお互いが等しくなっている。その他の法線ベクトルも、半直線を用いて同様にもとめる。
【0038】
次に、法線ベクトル比較部29での第1の複数の法線ベクトルと、第2の複数の法線ベクトルとの比較について、図5図6を参照しつつさらに詳しく説明する。図5に示す実線は、第1の複数の法線ベクトルに係る工具(使用前の工具)12のエッジ13を示している。図5に示す破線は、第2の複数の法線ベクトルに係る工具(使用後の工具)12のエッジ13aを示している。なお、図5では、破線13aの一部が実線13から離れており、破線13aの他の部位は、実線13と重なっている。
【0039】
第1の複数の法線ベクトルは、参照符号VPn、VPn+1、VPn+2、VPn+3、VPn+4・・・で示されており、第2の複数の法線ベクトルは、参照符号VQn、VQn+1、VQn+2、VQn+3、VQn+4・・・で示されている。第2の法線ベクトルVQn、VQn+1、VQn+2、VQn+3、VQn+4・・・は、第1の法線ベクトルと同様にしてもとめられ、また、第1の法線ベクトルと同様に、たとえば、単位ベクトルになっている。
【0040】
図6は、第1の複数の法線ベクトルVPn、VPn+1、VPn+2、VPn+3、VPn+4・・・それぞれの成分と、第2の複数の法線ベクトルルVQn、VQn+1、VQn+2、VQn+3、VQn+4・・・それぞれの成分とを表している。
【0041】
たとえば、法線ベクトルVPn+1の成分は、(Pan+1、Pbn+1)で表されており、法線ベクトルVQn+1の成分は、(Qan+1、Qbn+1)で表されている。
【0042】
法線ベクトル比較部29では、Pan+1/Pbn+1の値(法線ベクトルの方向)と、Qan+1/Qbn+1の値とを比較するようになっている。また、法線ベクトル比較部29では、他の法線ベクトルについても、同様な比較をするようになっている。たとえば、Pan/Pbnの値と、Qan/Qbnの値とを比較し、また、Pan+2/Pbn+2の値と、Qan+2/Qbn+2の値とを比較するようになっている。
【0043】
上記比較の結果、図5で示す点Pn+1の法線ベクトルVPn+1の値(Pan+1/Pbn+1)と、点Qn+1の法線ベクトルVQn+1の値(Qan+1/Qbn+1)とはお互いが一致している。 すなわち、点Pn+1の法線ベクトルVPn+1の値(Pan+1/Pbn+1)と、点Qn+1の法線ベクトルVQn+1の値(Qan+1/Qbn+1)との差が所定の閾よりも小さくなっている。
【0044】
一方、点Pn+2の法線ベクトルVPn+2の値(Pan+2/Pbn+2)と、点Qn+2の法線ベクトルVQn+2の値(Qan+2/Qbn+2)とはお互いが異なっている。すなわち、法線ベクトルVPn+2の値(Pan+2/Pbn+2)と、点Qn+2の法線ベクトルVQn+2の値(Qan+2/Qbn+2)との差が所定の閾よりも大きくなっている。
【0045】
同様な比較をすると、法線ベクトルVPn+3の値と法線ベクトルVQn+3の値とはお互いが異なっており、法線ベクトルVPn+4の値と法線ベクトルVQn+4の値とはお互いが異なっている。また、法線ベクトルVPn+5の値と法線ベクトルVQn+5の値とはお互いが異なっており、法線ベクトルVPn+6の値と法線ベクトルVQn+6の値とはお互いが一致している。
【0046】
そして、工具形状判断部31は、点Pn+2(点Qn+2)~点Pn+5(点Qn+5)の部位で、工具12の形状が変化しているとの判断をするようになっている。
【0047】
次に、工具12の摩耗量の検出について説明する。
【0048】
上述したように、法線ベクトル取得部27で取得した第1の複数の法線ベクトルは、工具12の使用前における法線ベクトルとなっている。また、工具の形状検出装置1は、エッジ形状取得部33と工具形状変化量取得部35とを備えて構成されている。
【0049】
エッジ形状取得部33は、工具12の使用後に、カメラ22で工具12を撮影して工具12のエッジ13をもとめるようになっている。なお、法線ベクトル取得部27は、上述したように、エッジ形状取得部33で取得した工具12のエッジ13上の複数の点とエッジ13とを用いて、法線ベクトルをもとめるようになっている。
【0050】
工具形状変化量取得部35は、法線ベクトル取得部27でもとめた第1の複数の法線ベクトルと、エッジ形状取得部33でもとめた工具12のエッジ13とを用いて、使用前の工具12の形状に対する使用後の工具12の形状の変化量をもとめるようになっている。なお、工具12の形状の変化量として、工具12の摩耗量、工具12の欠損部の欠損量等を掲げることができる。
【0051】
ここで、工具形状変化量取得部35によって、工具12の形状の変化量をもとめることについて図7を参照しつつさらに詳しく説明する。
【0052】
工具12の形状の変化量のもとめ方を、点Pn+2を例に掲げて説明する。まず、点Pn+2の法線ベクトルVPn+2をもとめる。続いて、点Pn+2を通り傾きが法線ベクトルVPn+2と一致している直線(点Pn+2を始点とする法線ベクトルVPn+2を含む直線の方程式)をもとめる。
【0053】
続いて、上記直線と、エッジ13aとの交点Qm+2をもとめ、点Pn+2と交点Qm+2とを結ぶ線分Ln+2の長さをもとめる。この線分Ln+2の長さの値が、点Pn+2のところにおける工具12の形状の変化量ということになる。同様にして、点Pn+3等の他の点についても、工具12の形状の変化量をもとめる。
【0054】
次に、工具の形状検出装置1の動作について図8を参照しつつ説明する。
【0055】
初期状態として、工具12が回転しており、図2で示すように、工具の形状検出装置1で工具12の形状が測定できるようになっている。
【0056】
上記初期状態で、制御装置20(制御部25)の制御の下、使用前の工具12をカメラ22で撮影し(S1)、法線ベクトル取得部27によってステップS1で撮影した工具12の法線ベクトルをもとめる(S3)。
【0057】
続いて、工具12を使用してワーク14に所定の切削加工を施し(S5)、ステップS55での使用をした後の工具12をカメラ22で撮影する(S7)。
【0058】
続いて、エッジ形状取得部33により、ステップS7で撮影した工具12のエッジ13をもとめ、法線ベクトル取得部27により、ステップS7で撮影した工具12の工具12の法線ベクトルをもとめる(S9)。
【0059】
続いて、ステップS3でもとめた工具12の法線ベクトルと、ステップS9でもとめた工具12の法線ベクトルと、法線ベクトル比較部29によって比較する(S11)。続いて、ステップS11での比較結果により、工具形状判断部31により工具12の形状が変化しているか否かを判断する(S13)。
【0060】
続いて、ステップS3でもとめた工具12の法線ベクトルと、ステップS9でもとめた工具12のエッジとのより、工具形状変化量取得部35で工具12の形状の変化量をもとめる(S15)。
【0061】
工具の形状検出装置1では、法線ベクトル取得部27で工具12のエッジ13上の複数の点で、これらの法線ベクトルをもとめ、法線ベクトル比較部29で、第1の複数の法線ベクトと第2の複数の法線ベクトルとを比較するようになっている。そして、第1の複数の法線ベクトルの値と第2の複数の法線ベクトルの値とが所定の閾値よりも異なっているときに、工具形状判断部31で工具12の形状が変化しているとの判断をするようになっている。
【0062】
これにより、形状が未知である工具12の形状を測定しさらに工具12の形状の異常を検出することができる。さらに、法線ベクトルを比較することで、使用の前後における工具12の形状が変化しているか否かを判断するので、単に使用の前後における工具12を撮影して工具12の形状を比較する場合に比べて、工具12の形状の変化を正確に検出することができる。
【0063】
ところで、上述した工具の形状検出装置1を、工作機械の主軸に設置された工具の形状検出装置であって、前記工具の形状を撮影するカメラと、前記工具の使用前に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジ上の複数の点で、法線ベクトルをもとめる法線ベクトル取得部と、前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得部と、前記法線ベクトル取得部でもとめた法線ベクトルと、前記エッジ形状取得部でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得部とを有する工具の形状検出装置として把握してもよい。
【0064】
この工具の形状検出装置1では、法線ベクトル取得部27で、使用前の工具12のエッジ13上の複数の点で法線ベクトルをもとめ、エッジ形状取得部33で、使用後の工具12のエッジ13aをもとめている。そして、法線ベクトル取得部27でもとめた法線ベクトルと、エッジ形状取得部33でもとめた工具12のエッジ13aとを用いて、工具形状変化量取得部35で、使用前の工具12の形状に対する使用後の工具12の形状の変化量をもとめるようになっている。
【0065】
これにより、使用による欠損や摩耗量および摩耗等が発生した工具12の部位を正確に検出することができる。
【0066】
また、上述した工具の形状検出装置1を、工作機械の主軸に設置された工具の形状検出装置であって、前記工具の形状を撮影するカメラと、前記工具の使用前に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得部と、前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジ上の複数の点で、法線ベクトルをもとめる法線ベクトル取得部と、前記法線ベクトル取得部でもとめた法線ベクトルと、前記エッジ形状取得部でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得部とを有する工具の形状検出装置として把握してもよい。
【0067】
また、上述した記載内容を、工具の形状検出方法として把握してもよい。
【0068】
すなわち、工作機械の主軸に設置された工具の形状検出方法であって、前記工具の形状を撮影するカメラで撮影した工具のエッジ上の複数の点で、これらの法線ベクトルをもとめる法線ベクトル取得段階と、前記法線ベクトル取得段階で取得した第1の複数の法線ベクトルと、前記法線ベクトル取得段階で次に取得した第2の複数の法線ベクトルとを比較する法線ベクトル比較段階と、前記法線ベクトル比較段階での比較の結果、第1の複数の法線ベクトルの値と前記第2の複数の法線ベクトルの値とが、所定の閾値よりも異なっているときに、前記工具の形状が変化しているとの判断をする工具形状判断段階とを有する工具の形状検出方法として把握してもよい。
【0069】
また、前記法線ベクトル取得段階で取得した第1の複数の法線ベクトルは、前記工具の使用前における法線ベクトルであり、前記工具の使用後に、前記カメラで前記工具を撮影して前記工具のエッジをもとめるエッジ形状取得段階と、前記法線ベクトル取得段階でもとめた第1の複数の法線ベクトルと、前記エッジ形状取得段階でもとめた前記工具のエッジとを用いて、前記使用前の工具の形状に対する前記使用後の工具の形状の変化量をもとめる工具形状変化量取得段階とを有する請求項5に記載の工具の形状検出方法として把握してもよい。
【0070】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 工具の形状検出装置
2 工作機械
11 主軸
12 工具
13、13a 工具のエッジ
22 カメラ
27 法線ベクトル取得部
29 法線ベクトル比較部
31 工具形状判断部
33 エッジ形状取得部
35 工具形状変化量取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8