(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176091
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】抗微生物組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 31/04 20060101AFI20221117BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20221117BHJP
A01N 31/06 20060101ALI20221117BHJP
A01N 31/08 20060101ALI20221117BHJP
A01N 35/06 20060101ALI20221117BHJP
A01N 43/16 20060101ALI20221117BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20221117BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A01N31/04
A01N59/16 A
A01N31/06
A01N31/08
A01N35/06
A01N43/16 C
A01P1/00
A01N59/16 Z
A01N25/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061902
(22)【出願日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】110117184
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522133200
【氏名又は名称】浩河未来実業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】特許業務法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】幸田 望希
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA00
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB10
4H011BB18
4H011BC10
4H011DA13
4H011DC05
4H011DC11
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗微生物組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】前記抗微生物組成物は、複数の光触媒粒子、1又は複数種の金属粒子、1又は複数種の芳香化合物及び溶媒を含む。前記金属粒子及び前記芳香化合物は、前記光触媒粒子に結合される。前記溶媒は水である。前記抗微生物組成物は、微生物の成長を有効に抑制することができると同時に、身体の健康に害を及ぼさず、また、様々な物に吹き付けることができると同時に、前記物に破損を引き起こさない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光触媒粒子と、
前記光触媒粒子に結合される1又は複数種の芳香化合物と、
前記光触媒粒子に結合される1又は複数種の金属粒子と、
溶媒と、を含み、
前記溶媒は水である抗微生物組成物。
【請求項2】
前記光触媒粒子の前記抗微生物組成物における含有量は、1~10重量%である請求項1に記載の抗微生物組成物。
【請求項3】
前記光触媒粒子は、酸化チタン、酸化すず、酸化タングステン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化レニウム及び酸化ジルコニウムのいずれか1つからなる光触媒粒子を1又は複数種含む請求項1に記載の抗微生物組成物。
【請求項4】
前記金属粒子の前記抗微生物組成物における濃度は、100~1000ppmである請求項1に記載の抗微生物組成物。
【請求項5】
前記金属粒子は、銀、銅及び白金のいずれか1つからなる金属粒子を1又は複数種含む請求項1に記載の抗微生物組成物。
【請求項6】
前記光触媒粒子は長径15~20nm、短径6~10nmの楕円体であり、前記金属粒子は粒径が1~5nmの球形である請求項1に記載の抗微生物組成物。
【請求項7】
光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物を水中に加えて混合液を形成するステップと、
酸性溶液を前記混合液に加えて、前記光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物を完全に溶解して、前記混合液を透明溶液にするステップと、
還元剤及びアルカリ性溶液を前記透明溶液に加えるステップであって、前記還元剤は、金属イオン化合物の1又は複数種の金属イオンを1又は複数種の金属粒子に還元し、前記アルカリ性溶液は、光触媒前駆体に光触媒中間生成物を形成させ、さらに前記金属粒子と前記芳香化合物とは、前記光触媒中間生成物に結合されるステップと、
前記透明溶液の下層に堆積した前記光触媒中間生成物及び水を含有する粘稠状溶液を取り出すステップと、
前記粘稠状溶液中の前記酸性溶液及び前記アルカリ性溶液に由来する帯電イオンを除去して、前記粘稠状溶液のpH値を6~8にするステップと、
水を粘稠状溶液に加え、70~85℃で、50~150rpmで前記光触媒中間生成物が結晶して光触媒粒子を形成するまで攪拌して1~10重量%の光触媒粒子を含有する抗微生物組成物を形成するステップと、
を含む抗微生物組成物の製造方法。
【請求項8】
前記光触媒前駆体はアセチルアセトンチタンであり、前記光触媒中間生成物は酸化チタンであり、前記光触媒粒子は酸化チタン結晶であり、前記金属イオン化合物は硝酸銀であり、且つ前記金属粒子は銀粒子である請求項7に記載の抗微生物組成物の製造方法。
【請求項9】
前記酸性溶液は塩化水素であり、前記還元剤はビタミンCであり、前記アルカリ性溶液はアンモニア水である請求項8に記載の抗微生物組成物の製造方法。
【請求項10】
前記光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物を水中に加えて混合液を形成するステップの前に、植物から前記芳香化合物を抽出するステップをさらに含む請求項7に記載の抗微生物組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物組成物の技術分野に関し、特に光触媒を含有する抗微生物組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生活レベルの向上に伴い、生活環境の清潔度に対する要請も日増しに高まりつつあり、抗微生物材料の発展を牽引している。しかしながら、従来の抗微生物組成物は通常、身体の健康に害を及ぼす恐れのある抗微生物化学剤、有機溶媒及び人工フレーバー等の添加物を含む。また、微生物の成長を抑制する効果を強化するため、従来の抗微生物組成物の多くは、酸性又はアルカリ性に設計され、特定の材料から作られた物に破損を引き起こす。このため使用者は、随意に従来の抗微生物組成物を様々な物に塗布し又は吹き付けることができない。このため、微生物の成長を有効に抑制することができると同時に、身体の健康に害を及ぼさず、また、様々な物に吹き付けることができると同時に、当前記物に破損を引き起こすことのない新規抗微生物組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、微生物の成長を有効に抑制することができると同時に、身体の健康に害を及ぼさず、また、様々な物に吹き付けることができると同時に、当前記物に破損を引き起こすことのない新規抗微生物組成物の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の問題を解決するため、本発明は、複数の光触媒粒子、1又は複数種の金属粒子、1又は複数種の芳香化合物及び溶媒を含む抗微生物組成物を提供する。前記金属粒子及び前記芳香化合物は、前記光触媒粒子に結合される。前記溶媒は、水である。
【0005】
一実施例において、前記光触媒粒子の前記抗微生物組成物中における含有量は、1~10重量%であってよい。前記光触媒粒子は、酸化チタン、酸化すず、酸化タングステン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化レニウム及び酸化ジルコニウムのいずれか1つからなる光触媒粒子を1又は複数種含んでよい。
【0006】
一実施例において、前記金属粒子の前記抗微生物組成物中における濃度は、100~1000ppmであってよい。前記金属粒子は、銀、銅及び白金のいずれか1つからなる金属粒子を1又は複数種含んでよい。
【0007】
一実施例において、前記光触媒粒子は、長径15~20nm、短径6~10nmの楕円体であり、前記金属粒子は、粒径が1~5nmの球形である。
【0008】
本発明はさらに、抗微生物組成物の製造方法を提供し、光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物を水中に加えて混合液を形成するステップと、酸性溶液を前記混合液に加えて、前記光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物を完全に溶解し、それにより前記混合液を透明溶液にするステップと、還元剤及びアルカリ性溶液を前記透明溶液に加えるステップであって、還元剤は、金属イオン化合物の1又は複数種の金属イオンを1又は複数種の金属粒子に還元し、前記アルカリ性溶液は、光触媒前駆体に光触媒中間生成物を形成させ、さらに前記金属粒子と前記芳香化合物とは、前記光触媒中間生成物に結合されるステップと、前記透明溶液の下層に堆積した前記光触媒中間生成物及び水を含有する粘稠状溶液を取り出すステップと、前記粘稠状溶液中の前記酸性溶液及び前記アルカリ性溶液に由来する帯電イオンを除去して、前記粘稠状溶液のpH値を6~8にするステップと、水を前記粘稠状溶液に加え、70~85℃で、50~150rpmで前記光触媒中間生成物が結晶して光触媒粒子を形成するまで攪拌して、1~10重量%の光触媒粒子を含有する抗微生物組成物を形成するステップとを含む。
【0009】
一実施例において、前記光触媒前駆体は、アセチルアセトンチタンであり、前記光触媒中間生成物は、酸化チタンであり、前記光触媒粒子は、酸化チタン結晶であり、前記金属イオン化合物は、硝酸銀であり、且つ前記金属粒子は、銀粒子である。
【0010】
一実施例において、前記酸性溶液は、塩化水素であり、前記還元剤は、ビタミンCであり、アルカリ性溶液は、アンモニア水である。
【0011】
一実施例において、前記光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物を水中に加えて混合液を形成するステップの前に、前記抗微生物組成物の製造方法は、植物から前記芳香化合物を抽出するステップをさらに含む。
【0012】
本発明が提供する抗微生物組成物において、抗微生物活性成分は、金属粒子及び芳香化合物を結合した光触媒粒子であり、且つ溶媒は、水である。前記抗微生物活性成分は、微生物の成長を有効に抑制することができる。また、前記光触媒粒子、金属粒子、植物から抽出された芳香化合物及び水そのもの並びにその組合せは、すべて身体の健康に害を及ぼすことはない。また、前記抗微生物組成物のpHは、6~8であり、このため、いかなる材料から作られた物品に対しても破損を引き起こすこともなく、使用者は随意に前記抗微生物組成物を様々な物に吹き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の実施例の抗微生物組成物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、複数の光触媒粒子11と、1又は複数種の金属粒子13と、1又は複数種の芳香化合物15と、溶媒20とを含む抗微生物組成物100を提供する(
図1を参照)。前記金属粒子13は、ファンデルワールス力の作用で、前記光触媒粒子11に結合される。前記芳香化合物15は、その官能基を介して前記光触媒粒子11に結合される。前記溶媒20は、水である。前記金属粒子13及び前記芳香化合物15を結合した前記光触媒粒子11は、前記抗微生物組成物100中に均等に分散する。
【0015】
一実施例において、前記光触媒粒子の前記抗微生物組成物中における含有量は、1~10重量%であってよい。前記光触媒粒子11は、長径15~20nm、短径6~10nmの楕円体であってよい。球状の光触媒粒子と比べて、楕円体状を呈する光触媒粒子11の表面積は大きく、このため、より強い酸化力を有する。前記光触媒粒子は、酸化チタン、酸化すず、酸化タングステン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化レニウム及び酸化ジルコニウムのいずれか1つからなる光触媒粒子を1又は複数種含んでよいが、これらに限られない。前記光触媒粒子11の材料は、ナノ粒子を形成した後、光(可視光又は紫外光)により励起された場合、酸素又は水分をヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical、OH-)及びスーパーオキシドアニオン(superoxide anion、O2-)等のラジカルに酸化又は還元することができる半導体材料であればよい。これらのラジカルは、強酸化力を有し、細菌及びカビ等の微生物の構造を破壊することができる。言い換えれば、前記光触媒粒子11は、抗菌及び防カビ等の抗微生物の効果を有する。さらに、前記光触媒粒子11は、高い化学安定性を有し、且つ有害物質を放出することはない。特定の実施例において、前記光触媒粒子11は、酸化チタンのアナターゼ型(anatase)結晶であり、「光合成チタン」とも呼ばれる。
【0016】
一実施例において、前記金属粒子の前記抗微生物組成物における濃度は、100~1000ppmであってよい。前記金属粒子13は、粒径が1~5nmの球形であってよい。前記金属粒子は、1又は複数種の、銀、銅及び白金のいずれか1つからなる金属粒子を含んでよい。前記金属粒子13は、銀、銅及び白金のいずれか1つからなる金属粒子を1又は複数種含んでよいが、これらに限られない。前記金属粒子13の材料は、抗微生物効果を有する金属イオンを放出することができる材料であればよい。前記金属イオンは、細胞壁合成を妨害し、細胞膜を破壊し、タンパク質合成を抑制し、及び/又は核酸合成を妨害することにより、細菌及びカビ等の微生物を破壊することができる。言い換えれば、前記金属粒子13は、抗菌及び防カビ等の抗微生物効果を有する。さらに、前記金属粒子13は、高い化学的安定性及び高い安全性を有する。
【0017】
一実施例において、前記芳香化合物15は、クスノキ等の植物から抽出したものであるが、これに限られない。前記芳香化合物15は、抗菌及び/又は防カビ効果を有する化合物を含んでよい。前記芳香化合物15は、前記抗微生物組成物100全体に好ましい香りを持たせる。前記芳香化合物15は、下記の化合物、1,4-シネオール(1,4-cineole)、1,8-シネオール(1,8-cineole)、フェンコン(fenchone)、フェンコール(fenchole)、リナロール(linalool)、カンファー(camphor)、1-テルピネオール(1-terpineol)、α-テルピネオール(α-terpineol)、α-ジヒドロテルピネオール(α-dihydoro-terpineol)、γ-テルピネオール(γ-terpineol)、テルピネン-4-オール(terpinen-4-ol)、エンド-ボルネオール(endo-borneol)、m-イソプロピルフェノール(m-isopropylphenol)、シトロネロール(citronellol)及びミルタノール(myrtanol)のうちの1又は複数を含んでよい。
【0018】
本発明はさらに、抗微生物組成物100の製造方法を提供し、(1)光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物15を水中に加えて混合液を形成するステップと、(2)酸性溶液を前記混合液に加えて、前記光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物15を完全に溶解させて、前記混合液を透明溶液にするステップと、(3)還元剤及びアルカリ性溶液を前記透明溶液に加えるステップであって、前記還元剤は、金属イオン化合物の1又は複数種の金属イオンを1又は複数種の金属粒子13に還元し、前記アルカリ性溶液は、光触媒前駆体に光触媒中間生成物を形成させ、且つ前記金属粒子13と前記芳香化合物15とは、前記光触媒中間生成物に結合されるステップと、(4)前記透明溶液の下層に堆積した前記光触媒中間生成物及び水を含有する粘稠状溶液を取り出すステップと、(5)前記粘稠状溶液中の前記酸性溶液及び前記アルカリ性溶液に由来する帯電イオンを除去して、前記粘稠状溶液のpH値を6~8にするステップと、(6)水を粘稠状溶液に加え、70~85℃で、50~150rpmで前記光触媒中間生成物が結晶して光触媒粒子11を形成するまで撹拌し、さらに1~10重量%の光触媒粒子11を含有する抗微生物組成物100を形成するステップと、を含む。
【0019】
一実施例において、前記光触媒前駆体は、アセチルアセトンチタンである。前記光触媒中間生成物は、酸化チタンである。前記光触媒粒子は、酸化チタン結晶である。前記金属イオン化合物は、硝酸銀である。前記金属粒子は、銀粒子である。前記酸性溶液は、塩化水素であってよい。前記還元剤は、ビタミンCであってよい。前記アルカリ性溶液は、アンモニア水であってよい。
【0020】
一実施例において、前記光触媒前駆体、金属イオン化合物及び芳香化合物を水中に加えて混合液を形成するステップの前に、前記抗微生物組成物の製造方法は、植物から前記芳香化合物を抽出するステップをさらに含む。
【0021】
本発明が提供する抗微生物組成物100において、抗微生物活性成分は、金属粒子13及び芳香化合物15を結合した光触媒粒子11であり、且つ溶媒20は、水である。前記抗微生物活性成分は、微生物の成長を有効に抑制することができる。また、前記光触媒粒子11、金属粒子13、植物から抽出した芳香化合物15及び溶媒20そのもの並びにその組合せは、すべて身体の健康に害を及ぼすことはなく、前記抗微生物組成物100は、身体の健康に害を及ぼす恐れのある抗微生物化学剤、有機溶媒及び人工フレーバー等の添加物を含まない。また、前記抗微生物組成物100のpHは、6~8であり、このため、いかなる材料から作られた物品にも破損を引き起こさず、使用者は随意に前記抗微生物組成物100を様々な物に吹き付けることができる。
【0022】
本発明の抗微生物組成物100の微生物の生長を抑制する面におけるすぐれた機能を検証するため、以下では具体的な実施例を挙げて抗菌実験及び防カビ実験を行う。
[具体的実施例の調製]
【0023】
ステップ1:ヒノキから芳香化合物を抽出する。具体的には、水蒸留(Water Distillation)及び蒸気蒸留(Steam Distillation)を交互に使用することでヒノキを蒸留して、ヒノキ蒸留液を得る。蒸留に用いた水の電気伝導率は、約20μs/cmである。前記ヒノキ蒸留液は、油層及び水層を含む。前記ヒノキ蒸留液中の水層を取り出して、後続のステップを行う。前記ヒノキ蒸留液中の水層は、下記の親水性芳香化合物、すなわち、1,4-シネオール、1,8-シネオール、フェンコン、フェンコール、リナロール、カンファー、1-テルピネオール、α-テルピネオール、α-ジヒドロテルピネオール、γーテルピネオール、テルピネン‐4-オール、エンド-ボルネオール、m-イソプロピルフェノール、シトロネロール及びミルタノールを含む。ステップ1は省略し、代わりに市販のヒノキから抽出した親水性芳香化合物を用いて後続のステップを行ってもよい。
【0024】
ステップ2:145gのアセチルアセトンチタン、2.5gの硝酸銀及び1kgのヒノキ蒸留液の水層並びに2kgの水を反応槽に加えて、混合液を形成する。
【0025】
ステップ3:1Mの塩化水素を約10cc/minの速度で反応槽に加え続けて、前記混合液のpH値を1~3に維持すると同時に、300~500rpmの回転速度でアセチルアセトンチタン及び硝酸銀が完全に溶解するまで撹拌し、それにより前記混合液を透明溶液にする。
【0026】
ステップ4:5gのビタミンCを反応槽に加え、300~500rpmの回転速度で攪拌し続け、硝酸銀中の銀イオンを銀粒子に還元する。
【0027】
ステップ5:15Mのアンモニア水を約10cc/minの速度で反応槽に加え続け、前記透明溶液のpH値を9~10に維持すると同時に、300~500rpmの回転速度でアセチルアセトンチタンが白色の酸化チタンを形成するまで攪拌し、前記ヒノキから抽出した親水性芳香化合物と前記銀粒子とは、前記酸化チタンに結合する。具体的には、前記銀粒子は、ファンデルワールス力の作用で酸化チタン中のチタン原子と結合する。前記芳香化合物は、その官能基を介して酸化チタンに結合する。アンモニア水を加える時間及び多寡により銀イオンの還元を停止し、それにより銀粒子の大きさを制御することができる。
【0028】
ステップ6:1~2日静置した後、前記反応槽下層に堆積した約1~1.2kgの白色粘稠状溶液を取り出す。前記白色粘稠状溶液は、銀粒子及び芳香化合物を結合した酸化チタン並びに水を含む。
【0029】
ステップ7:超音波で前記粘稠状溶液を60分間振動させ、銀粒子及び芳香化合物が結合されている酸化チタンを水中に均等に分散させ、それにより前記粘稠状溶液を均相溶液にする。このステップは、省略してもよい。
【0030】
ステップ8:核グレード交換樹脂で前記均相溶液中の塩化水素に由来する塩素イオン(Cl-)及びアンモニア水に由来するアンモニアイオン(NH4+)を除去して、前記粘稠状溶液のpH値を6~8にする。
【0031】
ステップ9:フィルタープレートで前記均相溶液中の核グレード樹脂を濾出した。具体的には、前記フィルタープレートの空洞寸法は、銀粒子及び芳香化合物が結合されている酸化チタンの寸法より大きく且つ核グレード樹脂の寸法より小さい。前記フィルタープレートで前記均相溶液を濾過する際に、前記核グレード樹脂は、前記フィルタープレート上に残留し、銀粒子及び芳香化合物が結合されている酸化チタン並びに水は、前記フィルタープレートを通ってpH値が6~8の均相溶液を得る。
【0032】
ステップ10:前記pH値が6~8の均相溶液を攪拌槽中に加え、20μs/cmの純水を前記均相溶液の総重量が10kgになるまで加え、70~85℃の常圧で、50~150rpmの回転速度で、酸化チタンが結晶して光触媒粒子を形成するまで攪拌し、前記均相溶液に約1重量%の光触媒粒子(酸化チタン結晶)、約100ppmの銀粒子、前述のヒノキの親水性芳香化合物及び水を含有する抗微生物組成物を形成させる。前記抗微生物組成物のpH値は、7.5である。前記光触媒粒子(酸化チタン結晶)は、16~18nmの長径及び8~10nmの短径を有する楕円体である。前記銀粒子は、1~2nmの粒径を有する球形である。前記銀粒子は、ファンデルワールス力の作用で光触媒粒子(酸化チタン結晶)中のチタン原子と結合する。前記芳香化合物は、その官能基を介して光触媒粒子に結合される。
[抗細菌実験]
【0033】
前述の具体的実施例の抗微生物組成物をSGS台湾検験科技股ふん有限公司(SGS Taiwan Limited)に送付し、米国のPharmacopeia Microbiological Testsの<51>抗菌性効力試験(Antimicrobial Effectiveness Testing)で検査した。検査結果は、表1を参照。
【表1】
【0034】
滅菌率R<1%の場合、明確な抗菌効果はないことを表す。前述の具体的実施例の抗微生物組成物の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)に対する滅菌率Rは、すべて99.9%を超えている。これからわかるように、前述の具体的実施例の抗微生物組成物は、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)及びグラム陰性菌(大腸菌及びクレブシエラ・ニューモニエ)のいずれも対しても、すぐれた抗細菌効果を有する。
[抗真菌実験]
【0035】
前述の具体的実施例の抗微生物組成物を台湾検験科技股ふん有限公司に送付し、米国のPharmacopeia Microbiological Testsの<51>Antimicrobial Effectiveness Testingで検査した。検査結果は、表2に示す通りである。
【表2】
【0036】
滅菌率R<1%の場合、明確な抗真菌効果はないことを表す。前述の具体的実施例の抗微生物組成物のカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及び黒麹菌(Aspergillus brasilienis)に対する滅菌率Rは、すべて99.9%を超えている。これからわかるように、前述の具体的実施例の抗微生物組成物は、さまざまな形態の真菌に対してすべてすぐれた抗真菌効果を有する。
【0037】
以上で述べたものは、本発明の実施例にすぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。本発明の原則内で行われたいかなる修正、等価置換及び改良等も、すべて本発明の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0038】
11 光触媒粒子
13 金属粒子
15 芳香化合物
20 溶媒
100 抗微生物組成物