(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176105
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】下痢、便祕または過敏性腸症候群を治療又は予防する組成物を製造するためのβ-1-4-グルカンから形成される繊維の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/717 20060101AFI20221117BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20221117BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20221117BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20221117BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221117BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20221117BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K31/717
A61P1/12
A61P1/10
A61P1/00
A61K9/20
A61K35/74 D
A61K35/74 A
A61K35/741
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069182
(22)【出願日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】110117272
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522159587
【氏名又は名称】陳 昭誠
【氏名又は名称原語表記】CHEN,Chaocheng
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】陳 昭誠
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC16
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA72
4C086ZA73
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC31
4C087BC32
4C087BC40
4C087BC45
4C087BC46
4C087BC47
4C087CA10
4C087CA14
4C087MA02
4C087MA35
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA72
4C087ZA73
(57)【要約】 (修正有)
【課題】下痢、便秘または過敏性腸症候群を治療または予防するための組成物を提供する。
【解決手段】下痢、便秘または過敏性腸症候群を治療または予防するための組成物を製造するためのβ-1-4-グルカンから形成される繊維の使用が提供される。繊維は、15~35nmの直径及び1.5~3.5μmの長さを有する。また、β-1-4-グルカンから形成される繊維で下痢、便秘または過敏性腸症候群を治療または予防するための方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下痢、便祕または過敏性腸症候群を治療または予防する組成物を製造するためのβ-1-4-グルカンから形成される繊維の使用であって、繊維は、15~35nmの直径及び1.5~3.5μmの長さを有する、使用。
【請求項2】
前記過敏性腸症候群は便秘型過敏性腸症候群、下痢型過敏性腸症候群、混合型過敏性腸症候群又は分類不能型過敏性腸症候群である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記繊維の長さ対直径の比は60~150である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物は、一日1~4回の投与量で、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要がある個体に投与され、前記組成物の1回ごとの投与量は0.02~0.12gの前記繊維を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物は凍結錠剤の形式で前記個体に投与される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物は、前記β-1-4-グルカンから形成される繊維と液体媒体からなる形式で前記個体に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記液体媒体は水である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物の総重量で、前記繊維の含有量は0.2重量%~1.2重量%である、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物は、0.1mLの水を含み、また、OD620は0.25を超え、1.25以下である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記OD620は0.4~1.22である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記繊維は、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、サルシナ属(Sarcina)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)からなる群から選ばれる少なくとも一つの細菌の発酵により形成されるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記細菌は、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、グルコンアセトバクター・ハンセニイ(Gluconacetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)及びグルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物は、有機物栄養分、プロバイオティクス、薬物、調味剤、分散剤、湿潤剤、潤滑剤、増粘剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、抗菌剤及び着色剤からなる群のうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物は、経口投与により、必要のある個体に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
必要のある個体にβ-1-4-グルカンから形成される繊維を投与し、前記繊維は、15~35nmの直径及び1.5~3.5μmの長さを有する、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する医薬を製造するための方法。
【請求項16】
前記過敏性腸症候群は、便祕型過敏性腸症候群、下痢型過敏性腸症候群、混合型過敏性腸症候群又は分類不能型過敏性腸症候群である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維の長さ対直径の比は60~150である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記繊維は、一日1~4回の方式で、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要がある個体に投与され、1回ごとに0.02~0.12gの前記繊維が投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維は組成物に含まれ、前記個体に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は凍結錠剤の形式で前記個体に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物はβ-1-4-グルカンから形成される繊維と液体媒体からなる形式で前記個体に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記液体媒体は水である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物の総重量で、前記繊維の含有量は0.2重量%~1.2重量%である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物は、0.1mLの水を含み、また、OD620は0.25を超え、1.25以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記OD620は0.4~1.22である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記繊維は、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、サルシナ属(Sarcina)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)からなる群から選ばれる少なくとも一つの細菌の発酵により形成されるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記細菌は、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、グルコンアセトバクター・ハンセニイ(Gluconacetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)及びグルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)からなる群のうちの少なくとも一つである、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物は、有機物栄養分、プロバイオティクス、薬物、食物繊維、調味剤、分散剤、湿潤剤、潤滑剤、増粘剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、抗菌剤及び着色剤からなる群のうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記繊維は、経口投与により、必要のある個体に投与される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、下痢、便祕または過敏性腸症候群を治療または予防する組成物に関し、特に、下痢、便祕または過敏性腸症候群を治療又は予防する組成物を製造するためのβ-1-4-グルカンから形成される繊維の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過敏性大腸症候群は、過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome、IBS)とも言われ、腸機能変化、下痢、便秘又はその組み合わせを伴う腹痛及び不快の繰り返しのような消化管機能性腸失調を指し、症状は、通常、長期的であり、数ヶ月間または数年間にわたって続けることはよくある。下痢又は便祕の状態によって、下痢型(IBS with diarrhea、IBS-D)、便秘型(IBS with constipation、IBS-C)、混合型(mixed IBS、IBS-M)及び分類不能型(unsubtyped IBS、IBS-U)等の四つの型態に区別できる。過敏性腸症候群はよく見られる機能性消化管疾患ではあるが、その原因は未だに不明である。過敏性腸症候群の患者は、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満、過剰の鼓腸、脹大、継続的な排便の促し、排泄しようとする緊迫感、失禁、排便不完全な感じ、腸の運動を伴う緊張感、硬い又はコロコロ便、あるいは腸の運動のない多種の症状を体験したことはあり得る。臨床で過敏性腸症候群を治療、軽減又は予防できる薬物又は輔助剤は便量増加剤(食物繊維など)、止瀉薬、下剤、抗腸けいれん薬、セロトニン促進剤又は拮抗薬、抗うつ薬、選択性セロトニン回收抑制剤、抗生物質や乳酸細菌等を含む。しかしながら、今までの各薬物又は輔助剤の過敏性腸症候群に対する作用メカニズムは不明であり、また、その効果も限られており、さらにその多くは副作用もある。例えば、三環系抗うつ薬は過敏性腸症候群の症状を軽減し、痛みを軽減することができるが、過眠症と便祕等の副作用がある。5-ヒドロキシトリプタミン3(5-hydroxytryptamine type 3、5-HT3)受容体拮抗薬とするアロセトロン(alosetron)は、腸管の運動を低減し、腸管の痛みを軽減することはできるが、厳重な便祕と虚血性腸炎等の副作用がある。リナクロチド(linaclotide)及びルビプロストン(lubiprostone)は、便秘型過敏性腸症候群を治療することができるが、下痢という副作用がある。したがって、今知られている各種の薬物又は輔助剤を使用する際に、病人における副作用に対する許容性を慎重に判断し、かつ病人の実際情況に応じて投与量を制御又は調整しなければならないので、臨床ではたくさんの不便がある。
【0003】
今まで過敏性腸症候群に対する薬物は患者にいくつかの副作用を生じるので、過敏性腸症候群という問題を対応するとき、逆にほかの不快な症状が発生し、また、医者が診断や治療する際に、薬物の病人に対する副作用のせいで、配薬の組み合わせ及び投与量の制御を考量するためにより時間をかかる。したがって、過敏性腸症候群を安全かつ有効的に治療、軽減又は予防できる薬物の開発が求められている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、下痢、便祕または過敏性腸症候群を治療または予防する組成物を製造するためのβ-1-4-グルカンから形成される繊維の使用を提供する。繊維は、15~35nmの直径及び1.5~3.5μmの長さを有する。
【0005】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、過敏性腸症候群は、便祕型過敏性腸症候群(IBS-C)、下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)、混合型過敏性腸症候群(IBS-M)、又は分類不能型過敏性腸症候群(IBS-U)である。
【0006】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、繊維の長さ対直径の比は60~150である。
【0007】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、組成物は、一日1~4回の投与量で、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要がある個体に投与され、組成物の1回ごとの投与量は、0.02~0.12gの繊維を含む。
【0008】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、組成物は、β-1-4-グルカンから形成される繊維と液体媒体からなる形式で個体に投与され、あるいは、組成物は、凍結錠剤の形式で個体に投与されてもよい。
【0009】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、前記液体媒体は水である。
【0010】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、組成物の総重量で、繊維の含有量は0.2重量%~1.2重量%である。
【0011】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、組成物は、0.1mLの水を含み、また、OD620は0.25を超え、1.25以下であり、例えば0.4~1.22の間である。
【0012】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、繊維は、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、サルシナ属(Sarcina)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)からなる群から選ばれる少なくとも一つの細菌の発酵により形成されるものである。
【0013】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、細菌は、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、グルコンアセトバクター・ハンセニイ(Gluconacetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)及びグルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)からなる群のうちの少なくとも一つである。
【0014】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、組成物は、有機物栄養分、プロバイオティクス、薬物、食物繊維、調味剤、分散剤、湿潤剤、潤滑剤、増粘剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、抗菌剤及び着色剤からなる群のうちの少なくとも一つをさらに含む。
【0015】
本開示の使用の少なくとも一つの実施態様において、組成物は、経口投与により、必要のある個体に投与される。
【0016】
本開示は、必要のある個体にβ-1-4-グルカンから形成される繊維を投与し、前記繊維は、15~35nmの直径及び1.5~3.5μmの長さを有する、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する医薬を製造するための方法をさらに提供する。
【0017】
本開示の方法の少なくとも一つの実施態様において、繊維は組成物に含まれ、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要のある個体へ投与される。
【0018】
本開示の方法の少なくとも一つの実施態様において、組成物は、β-1-4-グルカンから形成される繊維と液体媒体からなる形式で個体に投与され、あるいは、組成物は、凍結錠剤の形式で個体に投与されてもよい。
【0019】
本開示の方法の少なくとも一つの実施態様において、液体媒体は水である。
【0020】
本開示は、β-1-4-グルカンから形成される繊維を含み、前記繊維は、15~35nmの直径及び1.5~3.5μmの長さを有する、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する凍結錠剤をさらに提供する。
【0021】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、過敏性腸症候群は、便祕型過敏性腸症候群(IBS-C)、下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)、混合型過敏性腸症候群(IBS-M)、又は分類不能型過敏性腸症候群(IBS-U)である。
【0022】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、繊維の長さ対直径の比は60~150である。
【0023】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、繊維は、一日1~4回の方式で、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要がある個体に投与され、1回ごとに0.02~0.12gの繊維が投与される。
【0024】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、組成物の総重量で、繊維の含有量は0.2重量%~1.2重量%である。
【0025】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、組成物は、0.1mLの水を含み、また、OD620は0.25を超え、1.25以下であり、例えば0.4~1.22の間である。
【0026】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、繊維は、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、サルシナ属(Sarcina)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)からなる群から選ばれる少なくとも一つの細菌の発酵により形成されるものである。
【0027】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、細菌は、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、グルコンアセトバクター・ハンセニイ(Gluconacetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)及びグルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)からなる群のうちの少なくとも一つである。
【0028】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、組成物は、有機物栄養分、プロバイオティクス、薬物、食物繊維、調味剤、分散剤、湿潤剤、潤滑剤、増粘剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、抗菌剤及び着色剤からなる群のうちの少なくとも一つをさらに含む。
【0029】
本開示の方法、組成物及び凍結錠剤の少なくとも一つの実施態様において、繊維は、経口投与により、必要のある個体に投与される。
【0030】
本開示は、β-1-4-グルカンから形成される繊維より、下痢、便祕及び過敏性腸症候群等による不快を有効的に治療、改善、軽減又は予防し、優れた効果を有し、かつ副作用はほとんどない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施形態を特定の具体的な実施態様により説明するが、当業者は、本開示の開示範囲および効果を本明細書の記載内容により容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に記載されている実施態様は、本開示を限定するためのものではなく、例示された各技術的特徴又は考案はお互いに組み合わせることができ、また、本発明は、他の異なる実施態様によって行うかまたは適用することができ、本明細書における各詳細説明は、さまざまな観点や適用に基づいて、本開示の精神から逸脱しない限り、異なる修飾および変更を行うことができる。
【0032】
本明細書に記載されている特定の要素を「含む」、「含有する」又は「有する」場合、別途で説明がある場合を除き、他の素子、組成、構造、領域、部位、装置、システム、工程又は連結関係等の要素をさらに含んでもよく、それら他の要素を排除することはない。
【0033】
本明細書に別途で明確に説明がある場合を除き、本明細書に記載されている単数形式「一」及び「当該」はその複数形式も含む。また、本明細書に記載されている「又は」と「及び/又は」はお互いに交換使用してもよい。
【0034】
本明細書に記載されている数値範囲は、包括的であり、組み合わせることが可能であり、本明細書に記載されている数値範囲内に入る任意の値のいずれも、最小値または最大値として、サブ範囲などを導き出すことができる。例えば、「15~35nmの直径」という数値範囲は、最小値である15nmと最大値である35nmとの間のいずれかのサブ範囲、例えば:15~30nm、16~35nm、及び22~28nm等のサブ範囲を含むと理解するべし。また、ある数値が本明細書に記載されている各範囲内(例えば最大値と最小値との間)に入る場合、本開示の範囲内に含まれるとみなすべし。
【0035】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、β-1-4-グルカンから形成される繊維は15~35nmの直径を有し、例えば約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm又は約35nmの直径を有する。いくつの実施態様において、本開示の繊維は、1.5~3.5μmの長さを有し、例えば約1.5μm、約1.6μm、約1.7μm、約1.8μm、約1.9μm、約2.0μm、約2.1μm、約2.2μm、約2.3μm、約2.4μm、約2.5μm、約2.6μm、約2.7μm、約2.8μm、約2.9μm、約3.0μm、約3.1μm、約3.2μm、約3.3μm、約3.4μm又は約3.5μmの長さを有する。本開示のいくつの実施態様において、繊維の直徑は15~35nmの間にあり、また、繊維の平均長さは1.5~3.5μmの間にある。本開示の少なくとも一つの実施態様において、繊維の直徑はいずれも15~35nmである。
【0036】
本開示において、β-1-4-グルカンから形成される繊維は、下痢、便祕または過敏性腸症候群を治療または予防する組成物を製造するための用途があり、必要のある個体にβ-1-4-グルカンから形成される繊維を投与することを含む過敏性腸症候群の治療又は予防に使用してもよい。いくつの実施態様において、本開示の組成物は医薬組成物であってもよく、また、これに限らない。本開示のいくつの実施態様において、過敏性腸症候群は下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)、便祕型過敏性腸症候群(IBS-C)、混合型過敏性腸症候群(IBS-M)又は分類不能型過敏性腸症候群(IBS-U)であってもよい。
【0037】
少なくとも一つの実施態様において、本開示のβ-1-4-グルカンから形成される繊維又はその組成物は凍結錠剤の形態を呈し、凍結乾燥処理を経て形成された剤型、例えば乾躁された錠剤の形態を呈することを含む。本開示のいくつの実施態様において、低温凍結、低温低圧空気吸引、及び脱着の少なくとも一つの工程で処理することにより、全体的に製品の安定度を向上させ、変質し難くなり、製造された繊維の優れた再水和性によって、使用者が便利で速やかに使用できる。本開示のいくつの実施態様において、低温凍結、低温低圧空気吸引、及び脱着の処理工程をこの順で経てもよいが、処理工程の順番はこれに限らなく、製造しようとする繊維の特性によって適宜に調整してもよいことを理解すべし。本開示のいくつの実施態様において、β-1-4-グルカンから形成される繊維又はその組成物は液体媒体を含まず、例えば凍結乾燥処理工程で製造された乾燥粉末の形態を呈するものである。
【0038】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要がある個体に、β-1-4-グルカンから形成される繊維又はその組成物を、直接的に経口投与、例えば凍結錠剤又は乾燥粉末の形態で経口投与することができるが、これに限らない。本開示のいくつの実施態様において、繊維は、口内のだ液により崩壊され、嚥下することで消化管に入られる。
【0039】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要がある個体に前記凍結錠剤又は乾燥粉末を投与する際に、選択的に凍結錠剤又は乾燥粉末と液体媒体とを予めに混合し、液体媒体及び繊維を含む組成物とすることができる。いくつの実施態様において、本開示の液体媒体を含む組成物を経口投与する時、組成物は液態を呈するので、良好な流動性を有し、個体に飲みやすくなれるとともに、個体が噎せる可能性を防ぐこともできる。本開示のいくつの実施態様において、液体媒体は、例えば水、ジュース、お茶等の食用できる液体を含んでもよいが、これに限らない。本開示のいくつの実施態様において、製造で得られた組成物は液体媒体を含んでいるので、個体が本開示の組成物を使用する前に、本開示で製造された繊維と液体媒体を予めに混合する必要がない。
【0040】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、組成物の總重量で、繊維の含有量は0.2重量%~1.2重量%の間にあることにより、その分散速度を向上させてもよい。例えば、繊維の含有量は約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%又は約1.2重量%であってもよい。本開示のいくつの実施態様において、繊維の含有量は0.2重量%未満である場合、繊維は十分なヒドロキシ基が提供できないので、ある程度で液体媒体の表面張力に影響を及ぼす恐れがある。本開示のいくつの実施態様において、繊維の含有量は0.2重量%未満である場合、液体媒体と繊維とは、凝集力の影響によって凝集し、分層という現象が発生し、混合にとっては不利である。
【0041】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、組成物中の繊維の含有量が約0.25重量%である場合、単回又は多段階で液体媒体を添加する方式で、例えば製造された繊維、その凍結錠剤又は乾燥粉末と水又は他の液体媒体とを混合し、繊維を液体組成物に形成させ、凍結錠剤又は乾燥粉末を崩解して液体組成物に形成させてもよい。本開示のいくつの実施態様において、予め微量な水又は他の液体媒体を添加し、繊維、凍結錠剤又は乾燥粉末を濃厚液体に形成させ、そして水又は液体媒体をさらに添加し、さらに流動性のよりよい液体に希釈させてもよい。例えば、本開示のいくつの実施態様において、繊維は、第一段階で形成される濃厚液体中の含有量は約1.0重量%であってもよく、そして一回又は複数回で水又は液体媒体を添加した後、繊維の含有量を0.1重量%~0.5重量%の間に、例えば0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%、0.35重量%、0.4重量%、0.45重量%又は0.5重量%にさせてもよい。
【0042】
少なくとも一つの実施態様において、本開示で製造された繊維の長さ対直径の比は60~150の間に、例えば60、65、66、67、68、69、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、141、142、143、144、145又は150であってもよい。
【0043】
少なくとも一つの実施態様において、本開示で製造された繊維と水を混合して形成された液体組成物はパラフィルム(Parafilm、Bemis社、PM996)の表面と約95゜~110゜未満、例えば95.5゜、96゜、96.5゜、97゜、97.5゜、98゜、98.5゜、99゜、99.5゜、100゜、100.5゜、101゜、101.5゜、102゜、102.5゜、103゜、103.5゜、104゜、104.5゜、105゜、105.5゜、106゜、106.5゜、107゜、107.5゜、108゜、108.5゜、109゜又は109.5゜の接触角を形成してもよい。
【0044】
少なくとも一つの実施態様において、本開示の0.2重量%~1.2重量%の繊維及び0.1mL水を含む組成物は、620nm(nm)波長で測定された光学密度値(OD620)は0.25~1.25の間にある。本開示のいくつの実施態様において、OD620の下限値は0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.33、0.35、0.37、0.39、0.4、0.41、0.43、0.45、0.5、0.6、0.7又は0.8であってもよい。本開示のいくつの実施態様において、OD620の上限値は1.25、1.24、1.23、1.22、1.21、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6又は0.5であってもよい。本開示のいくつの実施態様において、前記OD620の数値は例えば0.295、0.335、0.435、0.53、0.54、0.55、0.65、0.75、0.76、0.78、0.85、0.88、0.93、0.96、0.98、1.05、1.08、1.13、1.14、1.19、1.215又は1.225であってもよい。
【0045】
少なくとも一つの実施態様において、本開示の繊維は、一つ又は複数種の微生物で形成されるバイオセルロース(biocellulose)からフィブリル化処理を経て得られるものであり、当該バイオセルロースは、D-グルコース同士をβ(1→4)グリコシド結合の形式で連接してなってもよいので、β-1-4-グルカンに属する。本開示のいくつの実施態様において、植物セルロースとは異なり、バイオセルロースの方はより高い純度がある。
【0046】
少なくとも一つの実施態様において、本開示の微生物は細菌であってもよく、細菌培養及び発酵の方式により当該バイオセルロースを製造されてもよい。いくつの実施態様において、本開示の細菌は、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、サルシナ属(Sarcina)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)又はその任意の組み合わせから選ばれる少なくとも一つの細菌であってもよい。いくつの実施態様において、本開示の細菌は、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、グルコンアセトバクター・ハンセニイ(Gluconacetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)及びグルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)からなる群から選ばれる少なくとも一つ細菌である。本開示のいくつの実施態様において、グルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)をバイオセルロースの生産に選択して用いられてもよいが、これに限らない。本開示のいくつの実施態様において、単一細菌種又は複数の細菌種を選択してバイオセルロースの生産に用いられ、実際の要求に応じて調整することができ、その制限はない。
【0047】
本開示の繊維を製造するバイオセルロースを提供するために、予め培養液のある容器を用意して、前記単一細菌種又は複数の細菌種を静置の方式で、培養液のある容器中に24~96時間(例えば24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間)培養し、培養液中の細菌濃度の吸光度(波長は620nm)を0.005~0.01の間の範囲に、例えば約0.005、約0.006、約0.007、約0.008、約0.009又は約0.01に制御される。本開示のいくつの実施態様において、培養液のpH値は酸性環境に制御され、0.5~6.5の間のpH値を含み、例えば約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0又は約6.5に制御される。本開示のいくつの実施態様において、培養液中の微生物の濃度範囲は102~105個/mL、例えば約1×102個/mL、約5×102個/mL、約1×103個/mL、約5×103個/mL、約1×104個/mL、約5×104個/mL又は約1×105個/mLに制御される。本開示のいくつの実施態様において、培養の温度は25℃~30℃の間に制御され、例えば約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃又は約30℃に制御されてもよい。本開示のいくつの実施態様において、前記培養液中の細菌濃度の吸光度、培養液のpH値、培養液中の微生物の濃度範囲、培養の温度又はその任意の組み合わせを選択することで本開示の微生物の培養を制御することができる。
【0048】
本明細書に使用されるように、前記の「静置培養」とは、細菌を培養液の表面(すなわち気液界面)でノンウーブンの方式により層状の繊維膜を形成させることである。また、静置培養に使用される容器は、培養面積が広く、かつ扁平状の容器であってもよく、容器の高さが比較的に低いことにより、細菌の酸素消費量を制御し、さらにバイオセルロースの直径を調整する。本開示のいくつの実施態様において、合成繊維膜において、表面バイオセルロースによって形成された網状構造の密度は、繊維膜の内部における網状構造の密度より大きいかつ緻密であるため、前記の静置培養および培養条件によれば、その後の織り合わされたバイオセルロースの分離には有利である。
【0049】
本明細書に使用されるように、前記の「繊維膜」とは、複数のバイオセルロースが織り合わされた複数層網状構造を有する層状物である。本開示のいくつの実施態様において、繊維膜の厚さは、20~30μmの間であってもよく、例えば約20μm、約22μm、約24μm、約25μm、約26μm、約28μm又は約30μmであってもよい。本開示のいくつの実施態様において、単位面積繊維膜あたりのバイオセルロースの量は0.001~0.002g/cm2の間であり、例えば約0.0011g/cm2、約0.0012g/cm2、約0.0013g/cm2、約0.0015g/cm2、約0.0017g/cm2、約0.0018g/cm2又は約0.0019g/cm2である。本開示のいくつの実施態様において、繊維膜中のバイオセルロースの直径は15~100nmの間に、例えば約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm又は100nmである。
【0050】
少なくとも一つの実施態様において、前記培養液中の成分は、炭素源、窒素源及びゲル支持物を含んでもよく、炭素源はマンニトール、グルコース、糖蜜等の糖類又は糖アルコール類の少なくとも一つを含んでもよい。窒素源はペプトン、酵母エキストラクト又はその組み合わせを含んでもよい。ゲル支持物は寒天から選ばれでもよく、また、これに限らない。本開示のいくつの実施態様において、培養液は寒天、炭素源、ペプトン及び酵母エキストラクトを含んでもよく、炭素源、ペプトン及び酵母エキストラクトの重量比は5:1:1~4:1:1であってもよい。
【0051】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、繊維膜の製造は、グルコンアセトバクター属の細菌を、マンニトール、ペプトン、酵母エキストラクト及び寒天を含む培養液に静置発酵して形成されてもよく、製造された繊維膜は、85%を超える含水量、例えば90%を超え、92%を超え又は95%を超える含水量を有する。
【0052】
下痢、便祕または過敏性腸症候群を治療または予防する組成物を製造できる繊維を得るために、少なくとも一つの実施態様において、さらに当該繊維膜にフィブリル化処理を施し、そのフィブリル化処理は、当該繊維膜を均質粉砕して分散液を製造すること、さらに当該分散液中でお互いに織り合わせたバイオセルロースを膨潤処理すること、及び膨潤処理されたバイオセルロースを機械的研磨することを含む。
【0053】
本明細書に使用されるように、前記の「均質粉砕」とは、繊維膜と溶液とを混合した後、せん断力を持つ固定した外部刀および鋸歯状の回転可能な内部刀からなる均質化装置で粉砕処理を行うことにより、分散液を得ることである。
【0054】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、当該分散液を前記均質粉砕処理された後、さらに当該分散液へ他の添加剤を添加し、当該分散液中でお互いに織り合わせたバイオセルロースを膨潤処理してもよい。本開示において、添加された添加剤は、当該分野における慣用の他の添加剤をさらに含んでもよく、これに限らない。
【0055】
本明細書に使用されるように、前記の「膨潤処理」とは、処理液を当該分散液中でお互いに織り合わせたバイオセルロースの内部まで滲透させることにより、セルロースの間の水素結合の作用を低下させことを含み、また、バイオセルロースに過剰な加水分解作用を示すことなく、続いての機械的研磨処理の過程におけるエネルギー消費を低下させることができる。本開示のいくつの実施態様において、機械的研磨のせん断力と組み合わせによる相乗作用で、バイオセルロースのグリコシド結合を切断し、バイオセルロースをフィブリル化させ、そのセルロースの比表面積を増加させ、より多くのヒドロキシ基を露出させ、前記バイオセルロースの親水性および生体適合性を向上させる。
【0056】
少なくとも一つの実施態様において、本開示の処理液は、アルカリ溶液、無機塩溶液およびイオン液体水溶液からなる群から選ばれる少なくとも一つであってもよい。本開示のいくつの実施態様において、アルカリ溶液を形成するアルカリは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。本開示のいくつの実施態様において、無機鹽は、尿素、塩化亜鉛、チオ尿素、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであってもよい。本開示のいくつの実施態様において、イオン液体は、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(1-allyl-3-methylimidazolium chloride、[AMIm]Cl)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(1-butyl-3-methylimidazolium chloride、[BMIm]Cl)、1-アリル-3-メチルアセテタート(1-allyl-3-methylimidazolium acetate、[AMIm]Ac)、1-ブチル-3-メチルイミダゾールアセテタート(1-butyl-3-methylimidazolium acetate、[BMIm]Ac)、塩化リチウム/ジメチルスルホキシド(LiCl/DMSO)、N-アルキルピリジン類及びジアルキルイミダゾール類からなる群から選ばれる少なくとも一つであってもよい。
【0057】
本明細書に使用されるように、前記の「機械的研磨」とは、分散液にさらに水を添加して希釈させた後、横型ボールミル装置で研磨処理を行い、当該分散液中でお互いに織り合わせたバイオセルロースをフィブリル化させ、15~35nmの直径及び1.5~3.5μmの長さを有する繊維を形成させることを含み、その中、機械的研磨に用いられるバイオセルロースの含有量範囲は、分散液の總重量の約0.1重量%~約0.5重量%の間を占め、例えば約0.15重量%、約0.2重量%、約0.25重量%、約0.3重量%、約0.35重量%、約0.4重量%又は約0.45重量%を占める。その後、公知の方法で膨潤かつ機械的研磨処理された分散液を、中和及び塩取りを含み、例えば半透膜透析分離を利用して分散液中の塩類を分離する純化処理により、望まれる繊維を取得する。
【0058】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、研磨された後のバイオセルロースは、比表面積が高いため、セルロースの間の静電気効果、ファンデルワールス力または水素結合の作用力がより顕著になり、凝集が発生しやすく恐れがある。そのため、いくつの実施態様において、本開示は、機械的研磨した後、研磨した分散液を超音波振動の方式で処理し、バイオセルロースの凝集体を解離させることをさらに含んでもよく、そして実際の必要に応じて選択的に凍結乾燥を行ってもよい。
【0059】
少なくとも一つの実施態様において、本開示の組成物は、β-1-4-グルカンから形成される繊維及び他の物質を含んでもよく、また、当該繊維は凍結錠剤又は乾燥粉末の形式で呈し、他の物質と組成物を形成してもよい。いくつの実施態様において、本開示の組成物は、有機物栄養分、プロバイオティクス、薬物、食物繊維、調味剤、分散剤、湿潤剤、潤滑剤、増粘剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、抗菌剤及び着色剤からなる群のうちの少なくとも一つをさらに含んでもよく、また、本開示の繊維と前記各成分との間にマイナスな影響が生じない。いくつの実施態様において、本開示の繊維は、前述の成分との相乗効果(synergy)を生み出すことがでる。
【0060】
少なくとも一つの実施態様において、本開示の有機物栄養分は、前記微生物を静置培養するときの培養液から抽出されたエキストラクトを含む。本開示のいくつの実施態様において、調味剤は甘味料及び/又は香料を含む。本開示のいくつの実施態様において、プロバイオティクスはエンテロコッカス属(Enterococcus)、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、ラクトコッカスラクチス属(Lactococcus lactis)、リューコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、バゴコッカス属(Vagococcus)、テトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)、アトポビウム属(Atopobium)、ワイセラ属(Weissella)、アビオトロフィア属(Abiotrophia)、グラニュリカテラ属(Granulicatella)、オエノコッカス属(Oenococcus)、パララクトバチルス属(Paralactobacillus)等の細菌とサッカロマイセス・ブラウディ菌(Saccharomyces boulardii)及びその任意の組み合わせを含む。本開示のいくつの実施態様において、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(Bifidobacterium lactis)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)及びその任意の組み合わせから選択してもよい。
【0061】
【0062】
本開示のいくつの実施態様において、症状が間もなく発生することを予見できる時、又は症状の発生する前に、β-1-4-グルカンから形成される繊維又は形成される繊維を含む組成物を投与し、予めに防止及び保護する効果を到達する。例えば、本開示の組成物は、一日1~3回の投与量で下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要がある個体に投与してもよく、また、凍結錠剤の1回ごとの投与量は0.02~0.12gの繊維を含む。本開示のいくつの実施態様において、β-1-4-グルカンから形成される繊維を直接的に投与する際に、一日1~4回の方式で、下痢、便祕又は過敏性腸症候群を治療又は予防する必要がある個体に投与し、また、1回ごとに0.02~0.12gの繊維が投与される。
【0063】
本開示のいくつの実施態様において、症状の発生時又は発生後でβ-1-4-グルカンから形成される繊維又は形成される繊維を含む組成物を投与することで、症状を軽減してもよい。本開示のいくつの実施態様において、投与の方式は上記の通りである。
【0064】
本開示の少なくとも一つの実施態様において、一日二回、1~12時間の間隔で、β-1-4-グルカンから形成される繊維又は形成される繊維を含む組成物を経口投与してもよく、例えば1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間又は12時間の間隔で、前記症状を治療又は軽減してもよい。本開示のいくつの実施態様において、食事前、食事後又は寝る前にβ-1-4-グルカンから形成される繊維又は形成される繊維を含む組成物を投与してもよい。一つの実施態様において、一日三回、4~8時間の間隔で、β-1-4-グルカンから形成される繊維又は形成される繊維を含む組成物を経口投与してもよい。必要に応じて、3回を超える量で投与し、例えば4回を投与することで、より明確な症状軽減を得ることを図ってもよい。
【0065】
本開示は、下記の実施例でさらにその詳細を説明する。しかしながら、それらの実施例は本開示の範囲を制限する意図はない。
【0066】
試験対象
【0067】
年齢が21~50歳の、性別を拘らず、継続的な消化管不調がある対象が募集され、医者にローマIV基準(Rome IV criteria)により過敏性腸症候群と診断された患者を試験対象として入選させた。
【0068】
ローマIV基準において、器官部位に基づき、機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders、FGIDs)を分類する:
A.食道障害
A1. 機能性胸やけ。A2.機能性心窩部灼熱。A3.逆流性過敏症。A4.球症状。A5.機能性嚥下困難
B. 胃十二指腸障害
B1. 機能性ディスペプシア。B1a. 食後愁訴症候群(PDS)。B1b. 心窩部痛症候群(EPS)。B2. あい気。B2a. 過剰胃上あい気。B2b. 過剰胃あい気。B3. 悪心と嘔吐。B3a. 慢性悪心嘔吐症候群(CNVS)。B3b. 週期性嘔吐症候群(CVS)。B3c. カンナビノイド嘔吐症候群(CHS)。B4. 反芻症候群
C. 腸障害
C1. 過敏性腸症候群(IBS)。便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)。下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)。混合型過敏性腸症候群(IBS-M)。分類不能型過敏性腸症候群(IBS-U)
C2. 機能性便秘。C3. 機能性下痢。C4. 機能性腹部鼓腸/膨満。C5. 非特異性機能性腸障害。C6. アヘン類薬物による便秘
D. 中樞介在性消化管疼痛
D1. 中樞介在性腹痛症候群(CAPS)。D2. 麻酔性腸症候群(NBS)/アヘン類薬物による消化管痛覚過敏症
E. 胆嚢とオッディ括約筋障害
E1. 胆管疼痛。E1a. 機能性胆嚢障害。E1b. 機能性胆管オッディ括約筋障害。E2. 機能性膵オッディ括約筋障害
F. 肛門障害
F1.便失禁。F2. 機能性肛門直腸痛。F2a. 肛門挙筋症候群。F2b. 非特異性機能性肛門直腸痛。F2c. けいれん性肛門直腸痛。F3. 機能性排便障害。F3a. 便排出力不十分。F3b. 排便協調障害
【0069】
医者が、患者の消化管不調は過敏性腸症候群であるか否かについては、その症状は少なくとも6ヶ月前から始まり、また、最近3ヶ月内で平均的に毎週少なくとも一日に腹痛が繰り返し起こることに基づいて評価し、かつ、以下の二つ又はそれ以上の標準に関連があり:排便にかかわり、排便の頻度変化にかかわり、糞便の形態変化にかかわり、また、他の器質性疾患を排除した後(例えば病歴、薬歴、理学検査、糞便検査、採血検査、内視鏡検査、X線等の方法で他の疾患を排除した後)、要件を符合する場合、過敏性腸症候群と診断する。
【0070】
過敏性腸症候群の分類は、ブリストル便形状スケール(Bristol stool form scale、BSFSと略称する)で便の軟硬度で下記のように区別する:
便祕型過敏性腸症候群(IBS-C):≧25%の便は硬便であり、且つ<25%は軟便であるもの、
下痢型過敏性腸症候群(IBS-D):≧25%の便は軟便であり、且つ<25%は硬便であるもの、
混合型過敏性腸症候群(IBS-M):≧25%の便は軟便であり、且つ≧25%は硬便であるもの、及び
分類不能型過敏性腸症候群(IBS-U):以上三種類に分類できないもの。
【0071】
患者の中、他の要素で観察に影響を及ぼさないために、過敏性腸症候群のみに罹った方を優先入選対象とした。
【0072】
実施例1
【0073】
試験方法
【0074】
患者に、0.2重量%β-1-4-グルカンから形成される繊維を含み、かつ残量は水である10mLの組成物を、毎日昼食と夕食の前に、それぞれ、一回分経口投与した。
【0075】
患者は、試験終了後、7点バランス尺度(7-point balanced scale)で下記の質問について回答し:「試験を受ける前と比較して、IBS症状の軽減レベルをどう評価するか。例えば下痢、腹痛、鼓腸、継続的な排便の促し及び排便頻度、軟便の比率、便の粘稠度、便排出不全及び他のIBS症状の軽減レベルはどれくらいか。」、患者の回答によりβ-1-4-グルカンから形成される繊維の症状に対する軽減効果を評価する。
7点バランス尺度:
・顕著軽減
・中度軽減
・やや軽減
・変わらず
・やや厳重
・中度厳重
・顕著厳重
その中、顕著軽減、中度軽減及びやや軽減と回答した場合、有効と評価する。
【0076】
案例1
【0077】
47歳の男性で、下痢型過敏性腸症候群を罹っており、毎日3~4回の下痢があった。患者は、三日間の試験を受けており、試験終了後、7点バランス尺度で前記質問を回答した場合、顕著軽減を示し、試験期間内で下痢は発生しなかったと報告し、また、試験終了後の翌日にも下痢しないと報告した。優れた効果があった。
【0078】
案例2
【0079】
26歳の女性で、便祕型過敏性腸症候群を罹っており、医者による軟便剤処方を投与しても約3~5日で一回排便の状態が継続していた。患者は7日間の試験を受けており、試験終了後、7点バランス尺度で前記質問を回答した場合、結果として症状は顕著軽減を示し、試験期間では毎日朝晩で一回ずつ排便でき、試験後の翌日にも順調に排便できると反応した。
【0080】
実施例2
【0081】
試験方法
【0082】
患者に、症状の発生する前に又は間もなく発生することを予見する前に、0.2重量%β-1-4-グルカンから形成される繊維を含み、かつ残量は水である10mLの組成物を一回分経口投与した。患者は、試験終了後、7点バランス尺度で前記実施例1と同じ質問を回答し、患者の回答によりβ-1-4-グルカンから形成される繊維の症状に対する軽減効果を評価する。
【0083】
案例3
【0084】
34歳の女性、分類不能型過敏性腸症候群を罹っており、常にストレスにより腹痛したことがあった。患者は、腹痛症状の発生する時、前記組成物を経口投与し、少なくとも1時間後で前記質問を回答した。結果として腹痛症状は顕著軽減を示し、また、腹痛症状は経口投与した後の5~10分間内で軽減したと報告した。
【0085】
案例4
【0086】
36歳の女性、分類不能型過敏性腸症候群を罹っており、常にストレスにより腹痛したことがあった。患者は、腹痛症状の発生する時、前記組成物を経口投与し、少なくとも1時間後で前記質問を回答した。結果として腹痛症状は同じく顕著軽減を示し、また、腹痛症状は経口投与した後の5~10分間内で軽減したと報告した。
【0087】
案例5
【0088】
36歳の男性、分類不能型過敏性腸症候群を罹っており、症状は6年続いており、特にビールを飲んだ翌日に下痢がある。患者は、毎回飲酒の15~20分間前に、前記組成物を予めに経口投与してから飲酒する。患者は、飲酒後の少なくとも翌日で前記質問を回答した場合、結果として症状は顕著軽減を示し、すなわち下痢はなかったと示した。患者はさらなる試験をし続けて、飲酒を少なくとも5回で、毎回の間隔は少なくとも3~6日である場合、いずれも下痢症状は顕著軽減し、飲酒後の翌日に下痢はなかったと報告した。
【0089】
実施例3
【0090】
50歳の男性、下痢型過敏性腸症候群を罹っており、下痢症状は毎日発生し、特にストレスを感じた時の下痢症状はより激しくなった。患者は三日間の試験を受けており、毎日で症状の発生する時及び寝る前に、それぞれ、一回分の前記組合物を経口投与し、併せて二回分を経口投与した。試験終了後、7点バランス尺度で前記質問を回答した場合、結果として症状は顕著軽減を示し、また、試験終了後の4日において下痢はなかった。患者の引継ぎの報告により、試験終了後の五日目で下痢症状は再発したが、前記方式で毎日二回分の前記組合物を経口投与し続けた場合、下痢はなかった。