(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176112
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】歯質の脱ミネラル化を検出する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/24 20060101AFI20221117BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20221117BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20221117BHJP
G01N 21/45 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61B1/24
A61B1/00 511
A61B1/00 513
A61C19/04 Z
G01N21/45 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071209
(22)【出願日】2022-04-23
(31)【優先権主張番号】21173564.2
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】キーンレ,アルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ノーゼルファー,シュテッフェン
【テーマコード(参考)】
2G059
4C052
4C161
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059AA06
2G059BB12
2G059CC03
2G059CC16
2G059EE02
2G059EE07
2G059EE11
2G059FF02
2G059GG06
2G059GG09
2G059HH02
2G059JJ13
2G059JJ18
2G059JJ19
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM10
4C052NN15
4C161AA08
4C161HH54
4C161WW17
(57)【要約】
【課題】齲蝕症状の際に発生し得るような脱ミネラル化に該当する歯質の領域を判定する方法を得る。
【解決手段】構造化された光パターンを歯質に照射し(S101);歯質の体積から放出された光パターンの光強度を検出し(S102);検出された光強度に基づいて歯質の脱ミネラル化を判定する(S103)ステップを有してなる歯質の脱ミネラル化を検出する方法である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯質(101)の脱ミネラル化を検出する方法であって:
構造化された光パターン(103)を歯質(101)に照射し(S101);
歯質(101)の体積から放出された光パターン(103)の光強度および/または強度の振幅(Rsfd)を検出し(S102);
検出された光強度に基づいて歯質(101)の脱ミネラル化を判定する(S103)、
ステップを有してなる方法。
【請求項2】
放出された光強度の蛍光遷移を検出するか、および/または放出された光強度の弾力的な分散を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
照射される構造化された光パターンがストライプパターン、ドットパターン、格子パターン、および/または周期性構造を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
異なった空間周波数を有する複数の構造化された光パターンが歯質(101)に照射される、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
それぞれ異なった光波長を有する複数の構造化された光パターンが歯質(101)に照射される、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
照射される光パターン(103)と放出される光パターン(103)の間の位相シフト(φsfd)にも追加的に基づいて歯質(101)の脱ミネラル化が判定される、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
強度の振幅(Rsfd)と位相シフト(φsfd)が一面領域にわたって空間分解して判定され、脱ミネラル化が空間分解して定量化されるか、または前記面領域に基づいて判定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
検出された光強度に基づいて、脱ミネラル化およびそれの層厚がモデルを使用して判定される、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
光パターン(103)が照射される方向(107-1)と光パターンの光強度が測定される方向(107-2)の間の角度が0°ないし45°である、請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
反射されたおよび/または放出された光パターン(103)に基づいて追加的に歯質(101)の空間ジオメトリが判定される、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
それぞれ異なった空間周波数を有する複数の反射されたおよび/または放出された光パターン(103)から、モデルを使用して歯質(101)の空間ジオメトリが判定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
歯質(101)の脱ミネラル化を検出する歯科装置(100)であって:
構造化された光パターン(103)を歯質(101)に照射する投射装置(109)と;
歯質(101)の体積から放出された光パターン(103)の光強度および/または強度の振幅(Rsfd)を検出する検出装置(111)と;
検出された光強度に基づいて歯質(101)の脱ミネラル化を判定する判定装置(113)を有してなる装置。
【請求項13】
投射装置(109)が複数スペクトルの放射源を有するデジタル投射機を備える、請求項12に記載の歯科装置(100)。
【請求項14】
検出装置(111)が電子カメラを備える、請求項12または13に記載の歯科装置(100)。
【請求項15】
判定装置(113)が放出されたおよび/または反射された光パターン(103)に基づいて歯質(101)の空間ジオメトリを判定するように構成される、請求項12ないし14のいずれか記載の歯科装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯質の脱ミネラル化を検出する光学式の方法および歯質の脱ミネラル化を検出する歯科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、齲蝕は、純粋に視覚的、または例えばレントゲン撮影あるいは齲食病変の自己蛍光等の技術的な補助手段を使用して診断される。視覚的に実行する齲蝕の診断は処置する歯科医師の経験に依存するため、標準化あるいは質的安定性の観点において理想的でなく、客観的に定量化することができない。加えて、資料を使用して歯の変色を定量的に早期検出することも不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の技術的な課題は、齲蝕症状の際に発生し得るような脱ミネラル化に該当する歯質の領域を判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題は、独立請求項の対象によって解決される。技術的に好適な実施形態が、従属請求項、発明の詳細な説明、ならびに添付図面の対象である。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、構造化された光パターンを歯質に照射し;歯質の体積から放出された光パターンの光強度および/または強度の振幅を検出し;歯質の体積から放出された光パターンの光強度を検出し;検出された光強度に基づいて歯質の脱ミネラル化を判定するステップを有してなる、歯質の脱ミネラル化を検出する方法によって、上記の技術的な課題が解決される。この方法によって、歯質内の形態的あるいは化学的変化の早期の画像化を達成することができる。追加的に、強度の振幅および/または位相の復調を実行することができる。この方法において、さらに歯表面で反射した光強度を検出することができる。この方法によれば、脱ミネラル化を客観化可能および定量化可能にすることができ、早期化および高感度化が達成される。加えて、深さ感応性も達成され、そのことによって歯質の体積内における脱ミネラル化を判定することができる。得られたデータセットの比較可能化と標準化によって、初期齲蝕の診断の定量化可能性が達成される。それを客観的な方式で記録化することができる。
【0006】
この方法の技術的に好適な実施形態において、放出された光強度の蛍光遷移および/または放出された光強度の弾力的な分散が検出される。反射された光強度の蛍光遷移および/または反射された光強度の弾力的な分散を検出することもできる。それによって例えば、脱ミネラル化を高い精度で判定し得るという技術的な利点が達成される。
【0007】
この方法の別の好適な実施形態において、照射される構造化された光パターンがストライプパターン、ドットパターン、格子パターン、および/または周期性構造を有する。それによって例えば、歯質内の変化を高速かつ正確に検出できるという技術的な利点が達成される。
【0008】
この方法の別の技術的に好適な実施形態において、異なった空間周波数を有する複数の構造化された光パターンが歯質に照射される。それによって例えば、正弦波パターン等の入射される光パターンの空間周波数の最適化によって、測定すべき深さ領域の感度が最大化されて深さ分解が実行されるという技術的な利点が達成される。
【0009】
この方法の別の技術的に好適な実施形態において、それぞれ異なった光波長を有する複数の構造化された光パターンが歯質に照射される。それによって例えば、歯質の異なった深さから脱ミネラル化に関するデータを取得することができ、さらに形状に関する情報を追加的に判定し得るという技術的な利点が達成される。
【0010】
この方法の別の技術的に好適な実施形態において、追加的に、照射される光パターンと放出される光パターンの間の位相シフトにも基づいて歯質の脱ミネラル化が判定される。歯質の脱ミネラル化を、照射される光パターンと反射される光パターンの間の位相シフトに基づいて判定することもできる。それによって例えば、脱ミネラル化をより正確に判定することができるという技術的な利点が達成される。
【0011】
この方法の別の技術的に好適な実施形態において、強度の振幅と位相シフトが一面領域にわたって空間分解して判定され、脱ミネラル化が空間分解して定量化されるかまたは前記面領域に基づいて判定される。それによって例えば、特に歯質の表面にわたってより正確に脱ミネラル化を判定し得るという技術的な利点が達成される。
【0012】
この方法の別の技術的に好適な実施形態において、検出された光強度に基づいて、脱ミネラル化およびそれの層厚がモデルを使用して判定される。脱ミネラル化あるいは層厚は、検出された光強度に基づいてモデルを使用し、さらに例えば層状化されたジオメトリ用の放射伝達原理の解析方程式を使用して判定することができる。それによって例えば、脱ミネラル化を特徴付けるための定量的で従って比較可能な数値が得られるという技術的な利点が達成される。
【0013】
この方法の別の技術的に好適な実施形態において、光パターンが照射される方向と光パターンの光強度が測定される方向の間の角度が0°ないし45°である。それによって例えば、表面反射を防止あるいは削減して脱ミネラル化を極めて良好に検出し得るという技術的な利点が達成される。
【0014】
この方法の別の技術的に好適な実施形態において、反射されたおよび/または放出された光パターンに基づいて追加的に歯質の空間ジオメトリが判定される。それによって例えば、歯あるいは歯質の形状を追加的に測定し得るという技術的な利点が達成される。
【0015】
この方法の別の技術的に好適な実施形態において、それぞれ異なった空間周波数を有する複数の反射されたおよび/または放出された光パターンから、モデルを使用して歯質の空間ジオメトリが判定される。判定された空間ジオメトリを、歯質の脱ミネラル化をより正確に定量化するために使用することができる。それによって例えば、空間的形状の測定精度が高まるという技術的な利点が達成される。
【0016】
第2の態様によれば、構造化された光パターンを歯質に照射する投射装置と;歯質の体積から放出された光パターンの光強度および/または強度の振幅を検出する検出装置と;検出された光強度に基づいて歯質の脱ミネラル化を判定する判定装置とを有してなる、歯質の脱ミネラル化を検出する歯科装置によって、前述の技術的な課題が解決される。追加的に、表面で反射した光パターンの光強度を検出するように検出装置を構成することができる。
【0017】
この歯科装置の技術的に好適な実施形態において、投射装置が複数スペクトルの放射源を有するデジタル投射機を備える。そのことによって例えば、異なった構造を有する光パターン、あるいは空間分解して任意に変更可能な光強度を有する異なった波長の光パターンを照射し得るという技術的な利点が達成される。
【0018】
この歯科装置の別の技術的に好適な実施形態において、検出装置が電子カメラを備える。そのことによって例えば、光パターンを高速かつ効果的にデジタル検出し得るという技術的な利点が達成される。
【0019】
この歯科装置の別の技術的に好適な実施形態において、判定装置が放出されたおよび/または反射された光パターンに基づいて歯質の空間ジオメトリを判定するように構成される。そのことによって例えば、追加的に歯あるいは歯質の空間形状を検出し得るという技術的な利点が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】歯質に入射する際の異なった光パターンおよび位相シフトを概略的に示した説明図である。
【
図3】異なった光パターンが歯質に入射する際の多様にシミュレートされた断面状態を示した説明図である。
【
図4】歯質の脱ミネラル化を検出する方法のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、歯科装置100が概略的に示されている。歯科装置100は、歯の歯質101の脱ミネラル化を検出するように機能する。歯科装置100は、構造化された光パターン103を歯質101に照射する投射装置109を備える。投射装置109は、例えば液晶プロジェクタ、あるいはデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)を備えたDLPプロジェクタ(デジタル・ライト・プロセッシング)によって構成される。
【0022】
従って、適宜な光学系と光源によって、任意の色で任意の構造を有する光パターンを歯質101に投射することができ、例えばストライプパターン、ドットパターン、あるいは格子パターンで投射することができる。光パターン103は、可変の周期性構造を有することができる。しかしながら、一般的に適宜に構造化されたその他の光パターン103を使用することもできる。
【0023】
加えて、光パターンを変更することができ、従って異なった空間周波数あるいは異なった波長を有する複数の構造化された光パターンを前後して歯質101に照射することができる。複数スペクトルの照射によってこの方法の信頼性を高めることができる。歯質101中の構造的な変化の大きさが初期齲蝕において最初は小さいため、可能な限り高い感度を達成するために小さな波長、すなわち例えば青色光を使用することが好適である。
【0024】
構造化された光パターン103は、口腔内で歯の歯質101に衝突して歯質101内に進入し、歯質101の体積から放出される。その場合は、反射の法則を満たす指向性の反射と異なって、散乱性(無指向性)の光の反射に係る。光パターン103の一部が、歯質101の表面で反射されることも可能である。
【0025】
放出に際して照射された光パターン103の弾力的な分散が発生することが可能で、その場合に光の波長が変化せずに保持されるか、または光パターン103の波長が歯質101内における蛍光遷移によって変化する蛍光放射が発生する。蛍光は、光によって歯質が励起された直後の瞬間的な光の放射である。その場合、放射される光子は通常その前に吸収されたものよりも低エネルギーである。従って、その場合に非弾力性の分散に係る。
【0026】
光学検出装置111は、歯質101の体積から放出されたあるいは表面で反射された光パターン103の光強度を検出するように作用する。検出装置111は、例えばCCDアレーあるいはCMOSアレーを有するデジタルカメラを含み、そのデジタルカメラによって照射された光パターン103の撮影画像を取得することができる。光学検出装置111は、歯質101から放出されたおよび/または反射された光パターンを再現するデータセットを生成する。使用される空間周波数および光波長の数に応じて、測定を例えば数百ms実行することができる。光パターン103が照射される方向107-1と光パターン103の光強度が測定される方向107-2との間の角度は、例えば0°ないし45°であり得る。
【0027】
検出装置111内において、例えば弾力的な分散を抑制するフィルタを使用することによって、CCDあるいはCMOSカメラで蛍光が検出される。その場合、空間分解および深さ選択される蛍光の測定を、ポルフィリンの分布のようにして、歯質の体積中で実行することができ、そのことが初期齲蝕の追加的な特徴付けを可能にする。この場合、例えば青色光あるいは赤色光を有する光パターンが照射され、後方散乱された放射線が赤色あるいは赤外線領域において測定される。
【0028】
電子回路を有する判定装置113は、測定された光強度に基づいて歯質101の脱ミネラル化を判定するように作用する。そのため判定装置113は、例えばデジタルプロセッサとランダムアクセスメモリ(RAM)等のデジタルメモリを含む。それらによって、アルゴリズムを使用してデータセットを処理することができる。光パターン103が歯質101の体積中に進入することによって、その体積の特徴、例えば齲蝕の場合の脱ミネラル化等を検出することができる。その目的のために判定装置113は、例えば放出される光パターンの強度(強度の振幅)、波長シフト(蛍光)あるいは空間位相シフトを、照射された光パターン103と比較して判定する。それらの数値が健康な歯質101に対して得られるものと相違する場合に、脱ミネラル化を結論付けることができる。
【0029】
図2には、異なった光パターン103-1,...103-3とそれぞれ歯質101内に進入する際の位相シフトが示されている。均一な光パターン105の場合、参照構造を備えていないため、位相シフトは検出されない。
【0030】
光パターン103-1は、第1の空間周波数Fsfdを有する第1の光パターンである。この光パターンが歯質101に照射される。放出される光パターン103-1は、照射された光パターンに対して特定の位相シフトφと変化した強度の振幅Rsfdを有する。
【0031】
光パターン103-2は、第1の空間周波数Fsfdよりも高い第2の空間周波数Fsfdを有する第2の光パターンである。放出される光パターン103-2も、同様に照射された光パターンに対して特定の位相シフトφと変化した強度の振幅Rsfdを有する。
【0032】
光パターン103-3は、第1および第2の空間周波数Fsfdよりも高い第3の空間周波数Fsfdを有する第3の光パターンである。放出される光パターン103-3も、同様に照射された光パターンに対して特定の位相シフトφと変化した強度の振幅Rsfdを有する。図示された実施例において、光パターン103の空間周波数Fsfdが高くなるに従って強度の振幅Rsfdが低下し、また位相シフトφは光パターン103の空間周波数Fsfdが高くなるに従って増加する。
【0033】
歯質の脱ミネラル化度合に従って、空間周波数Fsfdに対する位相シフトφおよび強度の振幅Rsfdについて異なった数値が測定される。それらの数値が健康な歯質101に対して得られる基準値から相違している場合、歯質101の脱ミネラル化と病変を結論付けることができる。
【0034】
図3には、歯質101内のモデル化された病変に異なった光パターン103が進入した際の異なった断面状態が示されている。歯質101の異なった深さについて信号が図示されている。
【0035】
構造化された照射における放出された光の測定によって、放出された強度の振幅Rsfdと位相シフトφの空間分解された判定が可能になる。放出された強度の振幅Rsfdと位相シフトφは、病変の場合に一般的にその病変の光学的な特徴、吸収係数μa、散乱係数μs、散乱位相関数および屈折率nの影響を受け、特に光学伝達厚μs´*dの影響を受け、その際μs´は有効散乱係数に、またdは病変の厚みに相当する。
【0036】
より大きな厚みdを有する病変の場合、空間周波数Fsfdに対する放出された強度の振幅Rsfdと位相シフトφの別の曲線が示される。歯質101の光伝搬は、同様に歯質101の光学特性(吸収係数μa、散乱係数μs、散乱位相関数および屈折率)に依存する。散乱係数μsは、初期の脱ミネラル化によって健康なエナメル質に比べて高められる。多層媒体に対する放射伝達方程式に基づいた光伝搬のモデル化によって、厚みの判定が可能になる。
【0037】
空間周波数領域内における放出されたおよび反射された強度の振幅および位相シフトの定量的および空間分解された測定によって、放射伝達原理の解によるモデルを使用して、例えば有効散乱係数μs´および吸収係数μa等の、光伝搬に関して重要な数値を判定することができる。ここで、有効散乱係数μs´が脱ミネラル化の度合と相関し、吸収係数μaは歯の変色と相関する。両方のパラメータは、この方法によって測定および記録化することができる。
【0038】
図4には、歯質101の脱ミネラル化を検出する方法のブロック線図が示されている。ステップS101において、構造化された光パターン103が歯質101に照射される。ステップS102において、歯質101の体積から放出された光パターン103の光強度が検出される。ステップS103において、検出された光強度に基づいて歯質101の脱ミネラル化が判定される。そのため、放出された光強度と基準値との比較が実行される。光強度に加えて、照射された光パターンと放出された光パターンとの間の位相シフトφを判定することができる。この場合も、位相シフトφと基準値との比較を実行することができる。
【0039】
この方法によって、高感度、客観的、かつ定量的で三次元の歯質101の(脱)ミネラル化の度合の測定が実行される。そのため、歯質101の深さ(体積)からも情報が得られるように、例えばストライプ光線方法(構造化された照明画像)が拡張される。その場合、単色で構造化された、例えば青色のスペクトル領域の光パターンを、例えば異なった空間周波数の正弦波パターンで、歯質101に照射することができる。
【0040】
歯質101の体積から放出されたあるいは表面で反射された光がカメラによって捕捉される。データセットから適宜なアルゴリズムによって振幅および位相シフトを計算することができ、例えばN-位相投影あるいはフーリエに基づく復調によって計算することができる。能動照明による位相エンコードと組み合わせたカメラ光線の較正に基づいて、カメラ画像から歯のトポグラフィを計算することができる(三次元スキャン)。加えて、再現された三次元の歯のトポグラフィを使用して、容積式の強度較正を実行することができ、従って先に使用された位相図に加えて定量化可能な振幅図も形成することができる。そのため、照射された空間周波数、すなわちストライプ周波数に応じて、どの画像点においても放出されたおよび反射された強度の振幅を判定することができる。そのことは、微細構造に依存する歯質101の光学伝達関数に相当する。微細構造は光散乱を発生させ、また色基に加えて歯質101の変色を生じさせる。齲蝕に際して歯質101が細孔化するため、光散乱の変化によってそのことを証明することができる。微細構造の変化および深さは、モデルを使用し光学伝達関数に基づいて定量化することができる。
【0041】
前記のデータセットに基づいた脱ミネラル化の判定は、モデルを使用して、またはAI動作する方法に基づいて、または多変量分類方法に基づいて実行することができる。その方法のため、分類指標を作成するためにモデルを使用した光学伝達関数の計算が実行される。この方法は、放出された強度の振幅および歯質101の任意のジオメトリ上の反射の定量化可能な測定を可能にする。
【0042】
本発明の個々の実施形態に関連して説明および図示した全ての特徴を、多様な組み合わせで本発明の対象とすることができ、それによって同時に有効な利点が達成される。
【0043】
全ての方法ステップは、各方法ステップを実行するために適した装置を使用して実行することができる。対象である特徴によって実行される全ての機能は、この方法における方法ステップとすることができる。
【0044】
本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定義され、説明中に記述されたあるいは図示された特徴によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
100 歯科装置
101 歯質
103 光パターン
105 均一な照射
107 方向
109 投射装置
111 検出装置
113 判定装置