(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176115
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】樹脂膜、その製造方法、樹脂組成物、ディスプレイおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221117BHJP
H04N 5/72 20060101ALI20221117BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221117BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
H04N5/72 Z
G09F9/00 338
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073029
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2021080840
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】芦部 友樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大地
(72)【発明者】
【氏名】弓場 智之
【テーマコード(参考)】
4F071
4J043
5C058
5G435
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC12
4F071AC19
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4J043QB15
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4J043RA35
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4J043ZB50
5C058AB05
5C058BA35
5G435AA03
5G435AA12
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】高透明性および高耐熱性を有し、かつCTEが低い樹脂膜を提供すること。
【解決手段】所定の化学構造で表される繰り返し単位を有する樹脂を含み、0.1%重量減少温度が470℃以上である、樹脂膜。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含み、0.1%重量減少温度が470℃以上である、樹脂膜。
【化1】
(化学式(1)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す。Bは炭素数2以上のジアミン残基を示す。ただし、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが、化学式(3)、(4)または(5)で表される構造のジアミンの残基である。
【化2】
化学式(3)および(4)中、αのうちの2つはアミノ基である。残りのα、およびβ、γならびにδは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。ただし、βが全て水素原子の場合と、γが全て水素原子の場合とを除く。nは1または2である。
化学式(5)中、Yは、直接結合、エーテル基、エステル基、アミド基、スルホニル基または炭素数1~20の炭化水素基である。Zは、それぞれ独立に、化学式(6)または(7)で表される構造である。
【化3】
化学式(6)および(7)中、αのうちの1つはアミノ基である。残りのαおよびεのうちの1つはYと結合する。残りのα、残りのεおよびβは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。nは1または2である。ただし、βが全て水素原子の場合を除く。)
【請求項2】
前記樹脂膜のCTEが30ppm/℃以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項3】
前記樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが化学式(4)または化学式(5)で表される構造を有するジアミンの残基であり、化学式(5)中、Zは化学式(7)で表される構造であり、化学式(4)および(7)中、nが1である、請求項1または2に記載の樹脂膜。
【請求項4】
前記樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが化学式(8)で表される構造のジアミンの残基である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂膜。
【化4】
(化学式(8)中、αおよびδは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。)
【請求項5】
前記樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Aが芳香族テトラカルボン酸残基である、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂膜。
【請求項6】
前記樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Aが化学式(9)で表される構造のテトラカルボン酸残基である、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂膜。
【化5】
【請求項7】
IR測定における波数1850cm-1を含むピークの高さ(H1)と波数1775cm-1を含むピークの高さ(H2)の比(H1/H2)が0.08以下である、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂膜。
【請求項8】
ディスプレイ基板として用いられる、請求項1~7のいずれかに記載の樹脂膜。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の樹脂膜を含む、ディスプレイ。
【請求項10】
化学式(2)で表される繰り返し単位を有する樹脂、および溶剤を含む樹脂組成物であって、当該樹脂組成物を塗布し、430℃で30分間焼成して得られる樹脂膜について、0.1%重量減少温度が470℃以上である、樹脂組成物。
【化6】
(化学式(2)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。ただし、樹脂に含まれる化学式(2)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが、化学式(3)、(4)または(5)で表される構造のジアミンの残基である。R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【化7】
化学式(3)および(4)中、αのうちの2つはアミノ基である。残りのα、およびβ、γならびにδは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。ただし、βが全て水素原子の場合と、γが全て水素原子の場合とを除く。nは1または2である。
化学式(5)中、Yは、直接結合、エーテル基、エステル基、アミド基、スルホニル基または炭素数1~20の炭化水素基である。Zは、それぞれ独立に、化学式(6)または(7)で表される構造である。
【化8】
化学式(6)および(7)中、αのうちの1つはアミノ基である。残りのαおよびεのうちの1つはYと結合する。残りのα、残りのεおよびβは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。nは1または2である。ただし、βが全て水素原子の場合を除く。)
【請求項11】
前記樹脂100質量部に対しイミド化促進剤を0.1質量部以上100質量部未満で含有する、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記イミド化促進剤が窒素原子を含む複素環化合物である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項10~12のいずれかに記載の樹脂組成物を支持体に塗布し、400℃~500℃で焼成する工程を含む、樹脂膜の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の樹脂膜の製造方法によって支持体上に樹脂膜を形成する工程と、前記樹脂膜上にディスプレイ素子を形成する工程と、前記支持体から前記樹脂膜を剥離する工程と、を含む、ディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂膜、その製造方法、樹脂組成物、ディスプレイおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、その優れた電気絶縁性、耐熱性、機械特性により、半導体、ディスプレイ用途といった、様々な電子デバイスの材料として使用されている。最近では、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、カラーフィルターなどのディスプレイの基板にポリイミド膜を用いることで、衝撃に強く、フレキシブルなディスプレイを製造することができる。
【0003】
電子デバイスに使用される材料は、デバイス製造における高温プロセスに耐える高い耐熱性が求められる。特に透明性を必要とする用途においては、耐熱性と透明性を両立可能な材料が求められる。また、樹脂膜の線熱膨張係数(以下、CTEと適宜いう)が高いと、樹脂膜を成膜した支持体の反りが大きくなり工程通過性が悪化するため、樹脂膜のCTEは低いことが求められる。
【0004】
例えば、特許文献1には高い耐熱性を有するポリイミドを基板として使用して、有機ELディスプレイを製造する例が開示されている。また、特許文献2には、ディスプレイの基板として適用可能な、ナフタレン骨格を有する高透明かつ低CTEのポリイミドフィルムの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/099183号
【特許文献2】国際公開第2014/162734号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたポリイミド樹脂膜では、樹脂膜の光透過率が不足しているため、透明性を必要とする用途に適用できないという課題があった。
【0007】
特許文献2に記載されたポリイミド樹脂膜では、電子デバイス製造時の高温プロセスに耐える耐熱性を有していないという課題があった。
【0008】
そこで本発明は、高透明性および高耐熱性を有し、かつCTEが低い樹脂膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、化学式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含み、0.1%重量減少温度(以下、Td0.1と適宜いう)が470℃以上である、樹脂膜である。
【0010】
【0011】
化学式(1)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す。Bは炭素数2以上のジアミン残基を示す。ただし、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが、化学式(3)、(4)または(5)で表される構造のジアミンの残基である。
【0012】
【0013】
化学式(3)および(4)中、αのうちの2つはアミノ基である。残りのα、およびβ、γならびにδは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。ただし、βが全て水素原子の場合と、γが全て水素原子の場合とを除く。nは1または2である。
【0014】
化学式(5)中、Yは、直接結合、エーテル基、エステル基、アミド基、スルホニル基または炭素数1~20の炭化水素基である。Zは、それぞれ独立に、化学式(6)または(7)で表される構造である。
【0015】
【0016】
化学式(6)および(7)中、αのうちの1つはアミノ基である。残りのαおよびεのうちの1つはYと結合する。残りのα、残りのεおよびβは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。nは1または2である。ただし、βが全て水素原子の場合を除く。
【0017】
また、本発明は、化学式(2)で表される繰り返し単位を有する樹脂、および溶剤を含む樹脂組成物であって、当該樹脂組成物を塗布し、430℃で30分間焼成して得られる樹脂膜について、Td0.1が470℃以上である、樹脂組成物である。
【0018】
【0019】
化学式(2)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。ただし、樹脂に含まれる化学式(2)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが、化学式(3)、(4)または(5)で表される構造のジアミンの残基である。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0020】
【0021】
化学式(3)および(4)中、αのうちの2つはアミノ基である。残りのα、およびβ、γならびにδは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。ただし、βが全て水素原子の場合と、γが全て水素原子の場合とを除く。nは1または2である。
【0022】
化学式(5)中、Yは、直接結合、エーテル基、エステル基、アミド基、スルホニル基または炭素数1~20の炭化水素基である。Zは、それぞれ独立に、化学式(6)または(7)で表される構造である。
【0023】
【0024】
化学式(6)および(7)中、αのうちの1つはアミノ基である。残りのαおよびεのうちの1つはYと結合する。残りのα、残りのεおよびβは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。nは1または2である。ただし、βが全て水素原子の場合を除く。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る樹脂膜は、Td0.1やガラス転移温度(以下、Tgと適宜いう)が高く耐熱性に優れ、かつ波長400nmの光透過率が高く透明性に優れる。したがって、透明性と耐熱性を必要とする用途に好適に用いることができる。またCTEが低いため、樹脂膜が形成された支持体の反りが抑制され、電子デバイス製造時の工程通過性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0027】
<樹脂膜>
本発明の実施の形態にかかる樹脂膜は、化学式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含み、Td0.1が470℃以上である、樹脂膜である。
【0028】
【0029】
化学式(1)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す。Bは炭素数2以上のジアミン残基を示す。ただし、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが、化学式(3)、(4)または(5)で表される構造のジアミンの残基である。
【0030】
【0031】
化学式(3)および(4)中、αのうちの2つはアミノ基である。残りのα、およびβ、γならびにδは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。ただし、βが全て水素原子の場合と、γが全て水素原子の場合とを除く。nは1または2である。
【0032】
化学式(5)中、Yは、直接結合、エーテル基、エステル基、アミド基、スルホニル基または炭素数1~20の炭化水素基である。Zは、それぞれ独立に、化学式(6)または(7)で表される構造である。
【0033】
【0034】
化学式(6)および(7)中、αのうちの1つはアミノ基である。残りのαおよびεのうちの1つはYと結合する。残りのα、残りのεおよびβは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。nは1または2である。ただし、βが全て水素原子の場合を除く。
【0035】
化学式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。
【0036】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、化学式(3)、(4)または(5)で表される構造のジアミンの残基を含む。これらの構造を含む樹脂膜は光透過率の高いものとなるため、透明性を必要とする用途に好適に用いることができる。
【0037】
上記構造を含むと樹脂膜の光透過率が高くなる理由は、以下の通り推定される。高耐熱性ポリイミドの多くは、最高被占軌道(以下、HOMOと適宜いう)がジアミン部位に偏在し、最低空軌道(以下、LUMOと適宜いう)が酸二無水物部位に偏在している。このジアミン部位から酸二無水物部位へのHOMO-LUMO遷移は電荷移動遷移であり、ポリイミドの着色の原因の一つである。
【0038】
化学式(3)および(6)で表される構造は、構造中のアミノ基がイミド結合を形成すると、イミド結合の酸素原子にとってβが立体障害となる。また、化学式(4)および(7)で表される構造は、構造中のアミノ基がイミド結合を形成すると、イミド結合の酸素原子にとって他のαが立体障害となる。したがって、これらの構造を含む樹脂膜は上述の立体障害によりイミド基とジアミン部位が同一平面に存在することができず、それらの2面角が大きくなる。このためHOMOからLUMOへの遷移が抑制され、着色が生じず光透過率が高くなると推定される。
【0039】
また、本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、Td0.1が470℃以上であるので、電子デバイスの製造における高温プロセスにおいて、樹脂膜からの発ガスに起因して、樹脂膜上に形成した膜が剥がれる膜浮き現象が生じるのを抑制することができる。樹脂膜のTd0.1は高温であるほど、電子デバイス製造のプロセス温度を高温化できるため好ましい。例えば、Td0.1は485℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることが更に好ましい。
【0040】
本発明におけるTd0.1は、熱重量測定装置を用いて測定する。この際、第1段階において、10℃/minという昇温レートで試料を150℃まで昇温し、第2段階において、10℃/minという降温レートで試料を室温まで空冷し、第3段階において、10℃/minという昇温レートで試料を昇温して求められる値とする。
【0041】
化学式(1)中、Aは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示すが、かかるテトラカルボン酸残基は、炭素数2~80の4価の炭化水素基であることが好ましい。また、Aは、水素および炭素を必須成分とし、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンから選ばれる1以上の原子を含む、炭素数2~80の4価の有機基であってもよい。この有機基に含まれるホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの各原子の数は、それぞれ独立に、20以下の範囲であることが好ましく、10以下の範囲であることがより好ましい。
【0042】
Aを与えるテトラカルボン酸としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、単環芳香族テトラカルボン酸化合物、ビフェニルテトラカルボン酸の各種異性体、ビス(ジカルボキシフェニル)化合物、ビス(ジカルボキシフェノキシフェニル)化合物、ナフタレンまたは縮合多環芳香族テトラカルボン酸の各種異性体、ビス(トリメリット酸モノエステル)化合物などの芳香族テトラカルボン酸や、脂環式テトラカルボン酸、鎖状脂肪族テトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸が挙げられる。
【0043】
芳香族テトラカルボン酸の例として、例えば、ピロメリット酸、化学式(9)で表される構造を有する3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0044】
【0045】
脂環式テトラカルボン酸の例として、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、化学式(33)、(34)または(35)で表される構造を有するテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0046】
【0047】
化学式(33)中、pは0~3の整数を表す。化学式(34)中、qは1~4の整数を表す。化学式(35)中、rは0~2の整数を表す。
【0048】
鎖状脂肪族テトラカルボン酸の例として、例えばブタンテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0049】
また、Aを与えるテトラカルボン酸の例として、国際公開第2017/099183号に記載のテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0050】
これらのテトラカルボン酸は、そのままの状態、あるいは酸無水物、活性エステルまたは活性アミドの状態でもAを与える原料として使用でき、また、これらを2種以上用いてもよい。
【0051】
より耐熱性の高い樹脂膜が得られる観点から、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Aが芳香族テトラカルボン酸残基であることが好ましい。また、低CTEの観点から、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上において、Aが化学式(9)で表される構造を有する3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基であることが特に好ましい。
【0052】
また、Aを与えるテトラカルボン酸としては、樹脂膜を製造する際の支持体に対する塗布性や、樹脂膜上に素子を形成する際の洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めるため、ジメチルシランジフタル酸、1,3-ビス(フタル酸)テトラメチルジシロキサンなどのケイ素含有テトラカルボン酸を用いてもよい。これらケイ素含有テトラカルボン酸を用いる場合、テトラカルボン酸全体の1~30モル%用いることが好ましい。
【0053】
前記のように例示したテトラカルボン酸において、テトラカルボン酸の残基に含まれる水素の一部は、メチル基、エチル基などの炭素数1~10の炭化水素基、トリフルオロメチル基などの炭素数1~10のフルオロアルキル基、F、Cl、Br、Iなどの基で置換されていてもよい。さらには、当該残基に含まれる水素の一部がOH、COOH、SO3H、CONH2、SO2NH2などの酸性基で置換されていると、樹脂前駆体のアルカリ水溶液に対する溶解性が向上することから、後述の感光性樹脂組成物として用いる場合に好ましい。
【0054】
化学式(1)中、Bは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示すが、かかるジアミン残基は、炭素数2~80の2価の炭化水素基であることが好ましい。また、Bは、水素および炭素を必須成分とし、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンから選ばれる1以上の原子を含む、炭素数2~80の2価の有機基であってもよい。この有機基に含まれるホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの各原子の数は、それぞれ独立に、20以下の範囲であることが好ましく、10以下の範囲であることがより好ましい。
【0055】
化学式(3)で表される構造のジアミンの例として、例えば、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレンジアミン、2,5-ジクロロ-1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノテレフタル酸などが挙げられる。
【0056】
化学式(4)で表される構造のジアミンの例として、例えば、1,4-ナフタレンジアミン、1,8-ナフタレンジアミン、1,4-アントラセンジアミン、1,5-アントラセンジアミン、1,8-アントラセンジアミン、9,10-アントラセンジアミン、化学式(8)で表される構造のジアミンなどが挙げられる。
【0057】
【0058】
化学式(8)中、αおよびδは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。
【0059】
化学式(8)で表されるジアミンの例として、例えば、1,5-ナフタレンジアミン、2-メチルナフタレン-1,5-ジアミン、4-メチルナフタレン-1,5-ジアミン、2,6-ジメチルナフタレン-1,5-ジアミン、1,5-ジアミノ-2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジアミノ-2-ナフタレンカルボン酸などが挙げられる。
【0060】
化学式(5)で表される構造のジアミンの例として、例えば、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、1,1’-ビナフタレン-4,4’-ジアミン、3,3’-ジメチル―1,1’-ビナフタレン-4,4’-ジアミン、4,4’ -オキシビス(ナフタレン-1-アミン)、4,4’ -メチレンビス(ナフタレン-1-アミン)、9,9’-ビアントラセン-10,10’-ジアミン、10,10’ -オキシビス(アントラセン-1-アミン)などが挙げられる。
【0061】
好ましくは、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが化学式(4)または化学式(5)で表される構造を有するジアミンの残基であり、化学式(5)中、Zは化学式(7)で表される構造であり、化学式(4)および(7)中、nが1である。Bがこれらの構造であれば、樹脂膜はTd0.1やTgが高く、耐熱性により優れたものとなりやすい。
【0062】
また、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bは、化学式(8)で表される構造のジアミンの残基であることがより好ましく、1,5-ジアミノナフタレン残基であることが特に好ましい。Bがこれらの構造であれば、樹脂膜は透明性と耐熱性により優れ、かつCTEがより低くなりやすい。
【0063】
また、低CTEの観点から、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の70モル%以上において、Bは、化学式(8)で表される構造のジアミンの残基であることが更に好ましい。
【0064】
その他のBを与えるジアミンとしては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、単環芳香族ジアミン化合物、ナフタレンまたは縮合多環芳香族ジアミン化合物、ビス(ジアミノフェニル)化合物またはそれらの各種誘導体、4,4’-ジアミノビフェニルまたはその各種誘導体、ビス(アミノフェノキシ)化合物、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)化合物、ビス(アミノベンゾイル)化合物、複素環含有ジアミン化合物、あるいはこれらのジアミン化合物に含まれる芳香環に結合する水素の一部を炭化水素やハロゲンで置換した化合物、などの芳香族ジアミンや、鎖状脂肪族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、などの脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0065】
芳香族ジアミンの例として、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニルなどが挙げられる。
【0066】
鎖状脂肪族ジアミンの例として、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0067】
脂環式ジアミンの例として、例えば、シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などが挙げられる。
【0068】
また、Bを与えるジアミンとして、国際公開第2017/099183号に記載のジアミンなどが挙げられる。
【0069】
これらのジアミンは、そのままの状態、あるいは対応するトリメチルシリル化ジアミンとしてもBを与えるジアミンとして使用でき、また、これらを2種以上用いてもよい。
【0070】
特に好ましいのは、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Aが芳香族テトラカルボン酸残基であり、Bが、化学式(8)で表される構造のジアミンの残基であることである。最も好ましくは、樹脂に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Aが化学式(9)で表される構造を有する3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基であり、Bが、1,5-ジアミノナフタレン残基であることである。AおよびBがこれらの構造であれば、耐熱性と透明性により優れ、かつCTEがより低い樹脂膜が得られやすい。
【0071】
また、Bを与えるジアミンとしては、樹脂膜を製造する際の支持体に対する塗布性や、樹脂膜上に素子を形成する際の洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めるために、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサンなどのケイ素含有ジアミンを用いてもよい。これらケイ素含有ジアミン化合物を用いる場合、ジアミン化合物全体の1~30モル%用いることが好ましい。
【0072】
前記のように例示したジアミン化合物において、ジアミン化合物に含まれる水素の一部は、メチル基、エチル基などの炭素数1~10の炭化水素基、トリフルオロメチル基などの炭素数1~10のフルオロアルキル基、F、Cl、Br、Iなどの基で置換されていてもよい。さらには、当該ジアミン化合物に含まれる水素の一部がOH、COOH、SO3H、CONH2、SO2NH2などの酸性基で置換されていると、樹脂前駆体のアルカリ水溶液に対する溶解性が向上することから、後述の感光性樹脂組成物として用いる場合に好ましい。
【0073】
上記樹脂に含まれるテトラカルボン酸残基のモル数を、当該樹脂に含まれるジアミン残基のモル数で除した値(以下、これを「除算値Ka」と称する)は、特に制限はないが、0.900以上1.100以下が好ましい。上記除算値Kaが上記範囲内であれば、ポリイミドの分子量が高くなるため、機械特性に優れた膜となりやすい。また、透明性の観点から、上記除算値Kaは1.000以上1.050以下であることがより好ましい。
【0074】
なお、除算値Kaは、1に近いほどジアミン残基とテトラカルボン酸残基のモル数が等モルに近づくため、化学式(1)で表される繰り返し単位の繰り返し数が大きくなりやすい。また、除算値Kaは1より小さいと化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー構造の末端がジアミンとなりやすく、1より大きいと化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー構造の末端がテトラカルボン酸となりやすい。
【0075】
本発明の実施の形態にかかる樹脂膜は、樹脂の末端が末端封止剤により封止されたものであってもよい。樹脂の末端が末端封止剤により封止されることで、透明性の高い樹脂膜となりやすい。
【0076】
樹脂の末端のモノマーがジアミン化合物である場合は、そのアミノ基を封止するために、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸クロリド化合物、モノカルボン酸活性エステル化合物、二炭酸ジアルキルエステルなどを末端封止剤として用いることができる。
【0077】
樹脂の末端のモノマーが酸二無水物である場合は、その酸無水物基を封止するために、モノアミン、モノアルコールなどを末端封止剤として用いることができる。
【0078】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、IR測定における波数1850cm-1を含むピークの高さ(H1)と波数1775cm-1を含むピークの高さ(H2)の比(H1/H2)が0.08以下であることが好ましい。IR測定における波数1775cm-1はイミド基に対応する波数であり、波数1850cm-1は酸無水物に対応する波数である。(H1/H2)は樹脂膜中のイミド基に対する酸無水物の存在量を示す指標といえる。(H1/H2)の値が0.08以下であれば、樹脂膜の着色の原因となりやすい末端構造が少なくなり、樹脂膜の黄色度(以下、適宜YIという)が低くなりやすいため好ましい。
【0079】
本発明におけるIR測定は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて行う。試料の形態や測定箇所に応じて、測定モードは透過法やATR法(全反射法)などを選ぶことができるが、特に限定されない。なお、H1およびH2は、各ピークの裾を結んだラインをベースラインとしたときのピーク高さとする。
【0080】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、特に限定されるものではないが、波長400nmの光透過率は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。また、樹脂膜のYIは20以下であることが好ましく、17以下であることがより好ましく、14以下であることが更に好ましい。上記光透過率および/またはYIがこれらの範囲を満たすと、樹脂膜は透明性により優れ、透明性を必要とする用途に好適に用いることができる。本発明において、樹脂膜の黄色度は、JIS K 7373:2006に準拠して求める。
【0081】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜の膜厚は、樹脂膜の機械特性の観点から、4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、6μm以上であることが更に好ましい。また、当該樹脂膜の膜厚は、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが更に好ましい。当該樹脂膜の膜厚が4μm以上40μm以下であれば、樹脂膜の機械特性が良好となる。また、より高い透明性が求められる用途においては、膜厚は0.5μm以上4μm以下であることも好ましく、1μm以上3μm以下であることもより好ましい。
【0082】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、CTEが30ppm以下であることが好ましい。CTEが30ppm以下であれば、樹脂膜を製膜した支持体の反りを抑制することができる。反りが大きいとデバイス製造時の支持体の搬送が困難となるため、樹脂膜のCTEはより小さい方が好ましい。例えば、樹脂膜のCTEは25ppm以下がより好ましく、20ppm以下が更に好ましく、15ppm以下が特に好ましい。
【0083】
本発明におけるCTEは、熱機械分析装置を用いて測定する。この際、第1段階において、5℃/minという昇温レートで試料を150℃まで昇温し、第2段階において、5℃/minという降温レートで試料を室温まで空冷し、第3段階において、5℃/minという昇温レートで試料を昇温して求められる値とする。
【0084】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、Tgは400℃以上であることが好ましい。Tgが400℃以上であれば、電子デバイスの製造における高温プロセスにおいて、樹脂膜に形成した膜に皺が生じるのを抑制することができる。樹脂膜のTgは高温であるほど、電子デバイス製造のプロセス温度を高温化できるため好ましい。例えば、Tgは415℃以上であることがより好ましく、430℃以上であることが更に好ましい。
【0085】
<樹脂組成物>
本発明の実施の形態にかかる樹脂組成物は、化学式(2)で表される繰り返し単位を有する樹脂、および溶剤を含む樹脂組成物であって、当該樹脂組成物を塗布し、430℃で30分間焼成して得られる樹脂膜について、0.1%重量減少温度が470℃以上である、樹脂組成物である。電子デバイスの製造において、高温プロセスに耐える耐熱性を有する樹脂膜を製造する条件として、通常、430℃以上の熱処理という条件が用いられる。したがって、430℃で30分間焼成して得られる樹脂膜のTd0.1が470℃以上となるような樹脂組成物が、高透明性および高耐熱性を有し、かつCTEが低い樹脂膜を提供する上で好ましい。
【0086】
【0087】
化学式(2)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。ただし、樹脂に含まれる化学式(2)で表される繰り返し単位中の50モル%以上において、Bが、化学式(3)、(4)または(5)で表される構造のジアミンの残基である。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0088】
【0089】
化学式(3)および(4)中、αのうちの2つはアミノ基である。残りのα、およびβ、γならびにδは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。ただし、βが全て水素原子の場合と、γが全て水素原子の場合とを除く。nは1または2である。
【0090】
化学式(5)中、Yは、直接結合、エーテル基、エステル基、アミド基、スルホニル基または炭素数1~20の炭化水素基である。Zは、それぞれ独立に、化学式(6)または(7)で表される構造である。
【0091】
【0092】
化学式(6)および(7)中、αのうちの1つはアミノ基である。残りのαおよびεのうちの1つはYと結合する。残りのα、残りのεおよびβは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基または炭素数1~10の炭化水素基である。nは1または2である。ただし、βが全て水素原子の場合を除く。
【0093】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、得られる樹脂膜のイミド基とジアミン部位の2面角が前述と同じ理由で大きくなり、前述の通り光透過率が高く透明性に優れた樹脂膜が得られる。
【0094】
また、本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、430℃で30分間焼成して得られる樹脂膜のTd0.1が470℃以上であるので、電子デバイスの製造における高温プロセスにおいて、樹脂膜からの発ガスに起因して、樹脂膜上に形成した膜が剥がれる膜浮き現象が生じるのを抑制することができる。樹脂膜のTd0.1は高温であるほど、電子デバイス製造のプロセス温度を高温化できるため好ましい。例えば、Td0.1は485℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることが更に好ましい。
【0095】
化学式(2)で表される繰り返し単位を有する樹脂は、加熱処理や化学的処理等により、化学式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂へと変換可能な樹脂である。以下、この様に化学式(2)で表される繰り返し単位を有する樹脂を「前駆体樹脂」と称する。また、前駆体樹脂を含む樹脂組成物を「前駆体樹脂組成物」と称する。前駆体樹脂としては、ポリイミド前駆体樹脂、ポリエーテルイミド前駆体樹脂、ポリアミドイミド前駆体樹脂等が挙げられる。
【0096】
化学式(2)中のAの具体例および好ましい例としては、前述した化学式(1)中のAの具体例および好ましい例として記載した構造が挙げられる。化学式(2)中のBの具体例および好ましい例としては、前述した化学式(1)中のBの具体例として記載した構造が挙げられる。
【0097】
また、前駆体樹脂に含まれるテトラカルボン酸残基のモル数を、当該樹脂に含まれるジアミン残基のモル数で除した値(以下、これを「除算値Kc」と称する)は、特に制限はないが、0.900以上1.100以下が好ましい。上記除算値Kcが上記範囲内であれば、ポリイミドの分子量が高くなるため、機械特性に優れた膜となりやすい。また、得られる樹脂膜の透明性の観点から、上記除算値Kaは1.000以上1.050以下であることがより好ましい。
【0098】
また、前駆体樹脂の末端は末端封止剤により封止されたものであってもよい。樹脂の末端のモノマーがジアミン化合物である場合は、そのアミノ基を封止するために、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸クロリド化合物、モノカルボン酸活性エステル化合物、二炭酸ジアルキルエステルなどを末端封止剤として用いることができる。 樹脂の末端のモノマーが酸二無水物である場合は、その酸無水物基を封止するために、モノアミン、モノアルコールなどを末端封止剤として用いることができる。
【0099】
前駆体樹脂組成物に含まれる溶媒は、前駆体樹脂を溶解するものであれば、特に制限なく使用可能である。このような溶媒として、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N‘-ジメチルプロピレン尿素、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテートなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類や、国際公開第2017/099183号に記載の溶媒などが挙げられる。前記溶媒としては、これらのうち何れかを単独で使用することもできれば、これらのうち2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0100】
前駆体樹脂組成物は、イミド化促進剤(i)を含んでも良い。この場合、前駆体樹脂100質量部に対しイミド化促進剤(i)を0.1質量部以上100質量部未満で含有することが好ましい。前駆体樹脂組成物の塗膜を焼成し樹脂膜を製造する場合、焼成中にイミド化反応と同時に解重合が起こることがある。この時、イミド化促進剤(i)を上記範囲で含むと、イミド化反応を促進し解重合を抑制できるため、分子量が高く末端量が少ない樹脂膜が得られやすい。このため、樹脂膜の着色の原因となり得る末端構造が少なくなり、樹脂膜のYIが低くなりやすいため好ましい。
【0101】
イミド化促進剤(i)としては、例えば窒素原子を含む複素環化合物(以下「含窒素複素環化合物」と適宜いう)、アミン系化合物、カルボン酸化合物、多価フェノール化合物などを用いることができる。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。なかでも、含窒素複素環化合物は樹脂膜中に残留しにくく耐熱性の高い樹脂膜が得られやすいため、好ましい。
【0102】
含窒素複素環化合物の例として、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、3-シアノイミダゾール、ベンズイミダゾール、ピリジン、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、4-ピリジンメタノール、N,N-ジメチルアミノピリジン、ニコチンアルデヒド、イソニコチンアルデヒド、ピコリンアルデヒド、ピコリンアルデヒドオキシム、ニコチンアルデヒドオキシム、イソニコチンアルデヒドオキシム、ピコリン酸エチル、ニコチン酸エチル、イソニコチン酸エチル、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2-ヒドロキシニコチン酸、2,2’-ジピリジル、4,4’-ジピリジル、3-メチルピリダジン、キノリン、イソキノリン、フェナントロリン、1,10-フェナントロリン、1,2,4-トリアゾールなどが挙げられる。
【0103】
アミン系化合物の例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジンなどが挙げられる。
【0104】
多価フェノール化合物の例として、3,5-ジヒドロキシアセトフェノン、3,5-ジヒドロキシ安息香酸メチル、ピロガロール、メチルガレート、エチルガレート、ナフタレン-1,6-ジオール等が挙げられる。
【0105】
カルボン酸化合物として、4-ヒドロキシフェニル酢酸、3-ヒドロキシ安息香酸、N-アセチルグリシン、N-ベンゾイルグリシンなどが挙げられる。
【0106】
前駆体樹脂組成物は、シラン化合物(h)を含んでも良い。シラン化合物(h)は化学式(40)で表される構造の化合物であることが好ましい。
【0107】
【0108】
化学式(40)中、R5およびR6は、それぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基を示す。mは1~4の整数を示す。
【0109】
前駆体樹脂組成物がシラン化合物(h)を含むと、前駆体樹脂組成物の焼成中に、シラン化合物(h)が縮合してシロキサン結合を形成する。したがって、焼成して得られる樹脂膜中にシロキサン部位が形成されるため、樹脂膜の光透過率をより向上させることができる。
【0110】
化学式(40)で表される構造の化合物の例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、2-ナフチルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリエトキシシラン、2-ナフチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、などがあげられる。
【0111】
シラン化合物(h)の含有量は、前駆体樹脂組成物100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましい。シラン化合物(h)の含有量が5質量部以上であれば樹脂膜の光透過率はより向上しやすい。100質量部以下であれば機械特性が良好な樹脂膜が得られやすい。
【0112】
また、前駆体樹脂組成物は、必要に応じて、光酸発生剤(a)、熱架橋剤(b)、熱酸発生剤(c)、フェノール性水酸基を含む化合物(d)、密着改良剤(e)、界面活性剤(f)、および無機粒子(g)から選ばれる少なくとも一つの添加剤を含んでも良い。これらの添加剤の具体例としては、例えば、国際公開第2017/099183号に記載のものを挙げることができる。
【0113】
前駆体樹脂組成物における前駆体樹脂の濃度は、前駆体樹脂組成物100質量部に対し、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0114】
前駆体樹脂組成物の粘度は20~20,000mPa・sが好ましく、50~10,000mPa・sがより好ましい。
【0115】
(前駆体樹脂組成物の製造方法)
次に、前駆体樹脂組成物を製造する方法について説明する。前駆体樹脂組成物の製造方法では、前駆体樹脂、必要に応じてイミド化促進剤(i)、シラン化合物(h)、光酸発生剤(a)、熱架橋剤(b)、熱酸発生剤(c)、フェノール性水酸基を含む化合物(d)、密着改良剤(e)、界面活性剤(f)、および無機粒子(g)などを溶媒に溶解または分散させる。これにより、前駆体樹脂組成物の一つであるワニスを得ることができる。
【0116】
なお、化学式(2)で表される繰り返し単位を有する前駆体樹脂は、既知の方法によって重合することができる。例えば、テトラカルボン酸、あるいは対応する酸二無水物、活性エステル、活性アミドなどを酸成分とし、ジアミンあるいは対応するトリメチルシリル化ジアミンなどをジアミン成分として、反応溶媒中で重合させることにより得ることができる。また、前駆体樹脂は、カルボキシ基がアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンと塩を形成したり、炭素数1~10の炭化水素基または炭素数1~10のアルキルシリル基でエステル化されたものであってもよい。
【0117】
反応溶媒としては、例えば、前述の前駆体樹脂組成物に含まれる溶媒の具体例として記載した溶媒などを単独、または2種以上混合して使用することができる。反応溶媒の使用量は、テトラカルボン酸およびジアミン化合物の合計量が、反応溶液の全体の0.1~50質量部となるように調整することが好ましい。また、反応温度は、-20℃~150℃であることが好ましく、0~100℃であることがより好ましい。さらに、反応時間は、0.1~24時間であることが好ましく、0.5~12時間であることがより好ましい。
【0118】
なお、前記の製造方法において、テトラカルボン酸として、対応する酸二無水物、活性エステル、活性アミドなども使用することもできる。また、ジアミン化合物は、対応するトリメチルシリル化ジアミンなどを使用することもできる。また、得られる樹脂のカルボキシ基はアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンと塩を形成したものでも、炭素数1~10の炭化水素基または炭素数1~10のアルキルシリル基でエステル化されたものであってもよい。
【0119】
得られた前駆体樹脂溶液は、そのまま本発明の実施の形態に係る前駆体樹脂組成物として使用してもよい。この場合、反応溶媒として前駆体樹脂組成物に使用する溶媒と同じものを用いたり、反応終了後に溶媒を添加したりすることで、前駆体樹脂を単離することなく目的の前駆体樹脂組成物を得ることができる。
【0120】
また、得られた前駆体樹脂は、更にアミド酸の繰り返し単位の一部をイミド化させたり、エステル化させたりしてもよい。この場合、前駆体樹脂の重合で得られた前駆体樹脂溶液をそのまま次の反応に用いてもよく、前駆体樹脂を単離したうえで、次の反応に用いてもよい。
【0121】
前駆体樹脂のエステル化反応およびイミド化反応においても、反応溶媒として前駆体樹脂組成物に使用する溶媒と同じものを用いたり、反応終了後に溶媒を添加したりすることで、前駆体樹脂を単離することなく、目的の前駆体樹脂組成物を得ることができる。
【0122】
(樹脂膜の製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る樹脂膜の製造方法について説明する。この樹脂膜の製造方法は、前述した前駆体樹脂組成物から本発明の実施の形態に係る樹脂膜を製造する方法の一例である。
【0123】
まず、本発明の実施の形態に係る前駆体樹脂組成物の一つであるワニスを支持体上に塗布する。支持体としては、シリコン、ガリウムヒ素などのウェハ基板、サファイアガラス、ソーダ石灰硝子、無アルカリガラスなどのガラス基板、ステンレス、銅などの金属基板あるいは金属箔、セラミックス基板、などが挙げられる。中でも、表面平滑性、加熱時の寸法安定性の観点から、無アルカリガラスが好ましい。
【0124】
ワニスの塗布方法としては、スピン塗布法、スリット塗布法、ディップ塗布法、スプレー塗布法、印刷法などが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。樹脂膜をディスプレイ用基板として用いる場合には、大型サイズの支持体上に塗布する必要があるため、特にスリット塗布法が好ましく用いられる。
【0125】
塗布後は、ワニスの塗膜を乾燥させることが一般的である。乾燥方法としては、減圧乾燥や加熱乾燥、あるいはこれらを組み合わせて用いることができる。減圧乾燥の方法としては、例えば、真空チャンバー内に塗膜を形成した支持体を置き、真空チャンバー内を減圧することで塗膜を乾燥するものが挙げられる。また、加熱乾燥の方法としては、ホットプレート、オーブン、赤外線などを使用して塗膜を乾燥するものが挙げられる。ホットプレートを用いる場合、プレート上に直接、もしくは、プレート上に設置したプロキシピン等の治具上に、塗膜を形成した支持体を保持して当該塗膜を加熱乾燥する。加熱温度は、ワニスに用いられる溶媒の種類や目的により様々であり、室温から180℃の範囲で1分間~数時間、加熱を行うことが好ましい。
【0126】
塗布対象の樹脂組成物に光酸発生剤(a)が含まれる場合、次に説明する方法により、乾燥後の塗膜からパターンを形成することができる。例えば、この方法では、塗膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。塗膜がポジ型の感光性を有する場合、この塗膜における露光部が現像液に溶解する。塗膜がネガ型の感光性を有する場合、この塗膜における露光部が硬化し、現像液に不溶化する。
【0127】
露光後、現像液を用いて、ポジ型の場合は露光部を除去し、また、ネガ型の場合は非露光部を除去することにより、塗膜に所望のパターンを形成する。現像液としては、ポジ型およびネガ型のいずれの場合も、テトラメチルアンモニウムなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また、場合によっては、これらのアルカリ水溶液に、N-メチル-2-ピロリドンなどの極性溶媒、アルコール類、エステル類、ケトン類などを単独あるいは複数種類組み合わせたものを添加してもよい。
【0128】
その後、支持体上の塗膜を加熱処理して樹脂膜を製造する加熱工程が行われる。この加熱工程では、370℃以上600℃以下、好ましくは400℃以上500℃以下の範囲、より好ましくは410℃以上480℃以下で塗膜を加熱処理して、この塗膜を焼成する。これにより、支持体上に樹脂膜を製造することができる。加熱工程における塗膜の加熱温度(焼成温度)が370℃以上であれば、イミド化が十分に進行し、機械特性に優れた樹脂膜が得られる。当該加熱温度が400℃以上であれば、耐熱性に優れた樹脂膜が得られる。また、当該加熱温度が500℃以下であれば、樹脂の熱分解を抑制し、透明性に優れた樹脂膜が得られる。
【0129】
以上の塗布工程および加熱工程などを経て得られた樹脂膜は、支持体から剥離して用いることができるし、あるいは、支持体から剥離せずに、そのまま用いることもできる。
【0130】
剥離方法の例としては、機械的な剥離方法、水に浸漬する方法、塩酸やフッ酸などの薬液に浸漬する方法、紫外光から赤外光の波長範囲のレーザー光を樹脂膜と支持体との界面に照射する方法などが挙げられる。特に、樹脂膜の上にデバイスを作成してから剥離を行う場合は、デバイスへ損傷を与えることなく剥離を行う必要があるため、紫外光のレーザーを用いた剥離が好ましい。
【0131】
なお、剥離を容易にするために、樹脂組成物を支持体へ塗布する前に、支持体に離型剤を塗布したり犠牲層を製膜したりしておいてもよい。離型剤としては、シリコーン系、フッ素系、芳香族高分子系、アルコキシシラン系等が挙げられる。犠牲層としては、金属膜、金属酸化物膜、アモルファスシリコン膜等が挙げられる。
【0132】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、有機ELディスプレイ用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、電子ペーパー用基板、μLEDディスプレイ用基板などのディスプレイ基板に好適に用いられ、特にフレキシブルディスプレイ基板に好適に用いられる。また、フレキシブルプリント基板、太陽電池用基板、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の絶縁層やスペーサー層、薄膜トランジスタ基板の平坦化膜、有機トランジスタの絶縁層、リチウムイオン二次電池の電極用バインダー、半導体用接着剤などに用いられる。
【0133】
(ディスプレイ)
次に、本発明の実施の形態に係るディスプレイについて説明する。本発明の実施の形態に係るディスプレイは、本発明の実施の形態に係る樹脂膜を含むものである。
【0134】
以下では、本発明の実施の形態に係るディスプレイを製造する方法を説明する。
【0135】
本発明の実施の形態に係るディスプレイの一構成例は、樹脂膜と、樹脂膜上に形成されたディスプレイ素子とを含む。
【0136】
樹脂膜は、本発明の実施の形態に係る樹脂膜であり、ディスプレイの基板として機能する。樹脂膜の上には、ディスプレイ素子が形成されている。
【0137】
このディスプレイの製造方法では、上述した樹脂膜の製造方法によって支持体上に樹脂膜を製造する膜製造工程と、この樹脂膜の上にディスプレイ素子を形成する工程と、上記支持体から樹脂膜を剥離する剥離工程とを含む。
【0138】
まず、前述の樹脂膜の製造方法に従って、本発明の実施の形態に係る樹脂膜を支持体上に製造する。
【0139】
必要に応じて樹脂膜上に無機膜を設けても良い。無機膜を設けることで外部から水分や酸素が樹脂膜を通過してディスプレイ素子の劣化を引き起こすのを防ぐことができる。前記無機膜としては、例えば、ケイ素酸化物(SiOx)、ケイ素窒化物(SiNy)、ケイ素酸窒化物(SiOxNy)などが挙げられる。これらは、単層、あるいは複数の種類を積層して用いることができる。これらの無機膜の成膜方法は、化学気相成長法(CVD)や物理気相成長法(PVD)などの蒸着法を用いて行われることが好ましい。これらの無機膜は、更に樹脂膜と無機膜を複数層交互に積層して用いることもできる。無機膜と積層する樹脂膜は本発明の実施の形態に係る樹脂膜であることが好ましい。また、支持体上に別の樹脂膜を形成し、該樹脂膜上に無機膜および本発明の実施の形態に係る樹脂膜を交互に積層して用いることもできる。
【0140】
つづいて、得られた樹脂膜または樹脂膜と無機膜の積層体上に、目的のディスプレイに応じたディスプレイ素子を形成する。例えば、ディスプレイが有機ELディスプレイである場合、ディスプレイ素子であるTFT、第一電極、発光素子、第二電極、封止膜を順に形成することにより、目的のディスプレイ素子として有機EL素子が形成される。ディスプレイが液晶ディスプレイである場合、画像駆動素子であるTFT、第一電極、第一配向膜を形成した第一基板と、第二電極、第二配向膜を形成した第二基板を用いて液晶セルを形成し、液晶を注入することにより、目的のディスプレイ素子として液晶表示素子が形成される。ディスプレイがカラーフィルターを含むディスプレイである場合、必要に応じてブラックマトリックスを形成した後、赤、緑、青などの着色画素を形成することにより、目的のディスプレイ素子としてカラーフィルター素子が形成される。ディスプレイがタッチパネルを含むディスプレイである場合、配線層と絶縁層とを形成することにより、目的のディスプレイ素子としてタッチパネル素子が形成される。
【0141】
最後に、支持体から樹脂膜を剥離し、剥離した樹脂膜(目的のディスプレイ素子が形成されたもの)を用いることにより、本発明の樹脂膜を含むディスプレイが得られる。支持体と樹脂膜の界面で剥離する方法には、レーザーを用いる方法、機械的な剥離方法、支持体をエッチングする方法などが挙げられる。レーザーを用いる方法では、ガラス基板などの支持体に対し、素子が形成されていない側からレーザーを照射することで、素子にダメージを与えることなく、剥離を行うことができる。また、剥離しやすくするためのプライマー層を、支持体との間に設けても構わない。
【実施例0142】
以下、実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例等によって限定されるものではない。まず、下記の実施例および比較例で行った測定、評価および試験等について説明する。なお、特に断らない限り、測定n数は1である。
【0143】
(第1項目:樹脂膜の光透過率の測定)
各実施例で得られた樹脂膜別に、樹脂膜とガラス基板との積層体を作製し、作製した積層体について、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、MultiSpec1500)を用い、波長400nmにおける樹脂膜の光透過率を測定した。
【0144】
(第2項目:樹脂膜のYIの測定)
各実施例で得られた樹脂膜別に、樹脂膜とガラス基板との積層体を作製し、作製した積層体について、分光ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HSP-150Vis)を用い、JIS K 7373:2006に準拠してYIを測定した。
【0145】
(第3項目:樹脂膜のTgおよびCTEの測定)
各実施例で得られた樹脂膜(試料)について、熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、EXSTAR6000TMA/SS6000)を用い、TgおよびCTEの測定を実施した。この際、第1段階において、5℃/minという昇温レートで試料を150℃まで昇温し、これにより、この試料の吸着水を除去した。続く第2段階において、5℃/minという降温レートで試料を室温まで空冷した。続く第3段階において、5℃/minという昇温レートで試料を昇温し、試料のTgおよびCTEを測定した。CTEは、第3段階の昇温過程の50℃~150℃の温度範囲で求めた。
【0146】
(第4項目:樹脂膜のTd0.1の測定)
各実施例で得られた樹脂膜(試料)について、熱重量測定装置(島津製作所社製、TGA-50)を用い、Td0.1の測定を実施した。この際、第1段階において、10℃/minという昇温レートで試料を150℃まで昇温し、これにより、この試料の吸着水を除去した。続く第2段階において、10℃/minという降温レートで試料を室温まで空冷した。続く第3段階において、10℃/minという昇温レートで試料のTd0.1を測定した。
【0147】
(第5項目:樹脂膜のIR測定)
各実施例で得られた樹脂膜(試料)について、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社製、FT/IR-4600)を用い、IR測定を行った。測定はATR法で実施し、ATR結晶はダイアモンド、入射角は45度とした。得られたIRスペクトルから、波数1850cm-1を含むピークの高さ(H1)と波数1775cm-1を含むピークの高さ(H2)の比(H1/H2)を算出した。
【0148】
(化合物)
実施例および比較例では、下記に示す化合物が適宜使用される。各化合物およびその略称は、以下に示す通りである。
DAN:1,5’-ジアミノナフタレン
DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン
PDA:p-フェニレンジアミン
DAE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
TFMB:2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル
DMPDA:2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン
DCPDA:2,5-ジクロロ-1,4-フェニレンジアミン
DADMB:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BPAF:9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸無水物
aBPDA:2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
4HPy:4-ヒドロキシピリジン
3HPy:3-ヒドロキシピリジン
1MeIm:1-メチルイミダゾール
NMP:N-メチル-2-ピロリドン。
【0149】
(合成例1)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(10.42g(65.9mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(19.58g(66.5mmol))を投入し、12時間攪拌した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0150】
(合成例2)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(10.42g(65.9mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(19.58g(66.5mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0151】
(合成例3)
4HPyの重量を0.15gに変更したこと以外は、合成例2と同様にして樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0152】
(合成例4)
4HPyの重量を0.015gに変更したこと以外は、合成例2と同様にして樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0153】
(合成例5)
4HPyの重量を15.00gに変更したこと以外は、合成例2と同様にして樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0154】
(合成例6)
4HPyを1MeImに変更したこと以外は、合成例2と同様にして樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0155】
(合成例7)
4HPyを3HPyに変更したこと以外は、合成例2と同様にして樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0156】
(合成例8)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(6.85g(43.3mmol))とDDS(4.68g(18.8mmo))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(18.47g(62.8mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0157】
(合成例9)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(9.55g(60.4mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(13.46g(45.7mmol))とBPAF(6.99g(15.2mmo))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0158】
(合成例10)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(10.06g(63.6mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、ODPA(19.93g(64.3mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0159】
(合成例11)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(8.01g(50.6mmol))とPDA(1.85g(17.1mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(20.14g(68.4mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0160】
(合成例12)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(9.28g(58.7mmol))とDAE(1.32g(6.6mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(19.40g(65.9mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0161】
(合成例13)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(4.48g(28.3mmol))とTFMB(8.86g(27.7mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(16.66g(56.6mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0162】
(合成例14)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(10.42g(65.9mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(14.68g(49.9mmol))とaBPDA(4.89g(16.6mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0163】
(合成例15)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらPDA(8.00g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(22.00g(74.8mmol))を投入し、12時間攪拌した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0164】
(合成例16)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらPDA(8.00g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(22.00g(74.8mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0165】
(合成例17)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらPDA(1.61g(14.9mmol))とDDS(10.92g(44.0mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(17.48g(59.4mmol))を投入し、12時間攪拌した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0166】
(合成例18)
PDA、DDS、BPDAの使用量をPDA(5.59g(51.7mmol))、DDS(4.11g(16.6mmol))、BPDA(20.29g(69.0mmol))にそれぞれ変更した以外は合成例17と同様にして樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0167】
(合成例19)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(2.87g(18.1mmol))とPDA(5.80g(53.7mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(21.33g(72.5mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0168】
(合成例20)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(2.29g(14.5mmol))とDDS(10.65g(42.9mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(17.06g(58.0mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0169】
(合成例21)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDAN(2.28g(14.4mmol))とCHDA(6.57g(57.5mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(21.16g(71.9mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0170】
(合成例22)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDMPDA(9.43g(69.2mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(20.57g(69.9mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0171】
(合成例23)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDCPDA(8.27g(46.7mmol))とPDA(2.09g(19.4mmo))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(19.64g(66.7mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0172】
(合成例24)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(170g)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、攪拌しながらDADMB(12.50g(58.9mmol))を投入し、溶解したことを確認した後、BPDA(17.50g(59.5mmol))を投入した。12時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、4HPy(3.00g)を添加した。NMPで希釈した後、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過して樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0173】
合成例1~24において各々得られた各樹脂組成物(ワニス)の組成について、表1および表2に示す。
【0174】
【0175】
【0176】
(実施例1)
スリット塗布装置(東レエンジニアリング社製)を用いて、縦350mm×横300mm×厚さ0.5mmの無アルカリガラス基板(AN-100、旭硝子社製)上に、合成例1の樹脂組成物(ワニス)をガラス基板の端から5mm内側のエリアに塗布した。つづいて、同じ装置により、40℃の温度で加熱真空乾燥を行った。最後に、ガスオーブン(INH-21CD 光洋サーモシステム社製)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)、430℃で30分加熱して、ガラス基板上に膜厚10μmの樹脂膜を形成した。得られた基板上の樹脂膜について、上記第1項目の方法によって樹脂膜の光透過率を、上記第2項目の方法によってYIを測定した。
【0177】
つづいて、ガラス基板に対し、樹脂膜が成膜されていない側からレーザー(波長:308nm)を照射し、樹脂膜との界面で剥離を行った。得られた樹脂膜について、上記第3項目の方法によってTgおよびCTEを測定し、上記第4項目の方法によってTd0.1を測定した。また、上記第5項目の方法によってIR測定を行い、波数1850cm-1を含むピークの高さ(H1)と波数1775cm-1を含むピークの高さ(H2)の比(H1/H2)を算出した。
【0178】
(実施例2~17および比較例1~9)
実施例2~17、比較例1~9では、表1および2に記載される合成例1~24の各樹脂組成物(ワニス)を用いて、実施例1と同様の評価を行った。
【0179】
比較例8では、加熱条件を430℃から350℃に変更した以外は、実施例1と同様の評価を行った。
【0180】
比較例9では、加熱条件を430℃から350℃に変更した以外は、実施例2と同様の評価を行った。
【0181】
実施例1~17および比較例1~9の各評価結果は、表3に示す。
【0182】
【0183】
(実施例101)
実施例2で得られたガラス基板上の樹脂膜の上にCVDによりSiO2、Si3N4の積層から成るガスバリア膜を成膜した。つづいてTFTを形成し、このTFTを覆う状態でSi3N4から成る絶縁膜を形成した。なお、TFT形成時の最高加熱温度は450℃とした。次に、この絶縁膜にコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線を形成した。
【0184】
さらに、配線の形成による凹凸を平坦化するために、平坦化膜を形成した。次に、得られた平坦化膜上に、ITOからなる第一電極を配線に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャントを用いたウエットエッチングによりパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジエチレングリコールモノブチルエーテルの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。剥離後の基板を水洗し、加熱脱水して平坦化膜付き電極基板を得た。次に、第一電極の周縁を覆う形状の絶縁膜を形成した。
【0185】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設けた。次いで、基板上方の全面にAl/Mgから成る第二電極を形成した。さらにCVDによりSiO2、Si3N4の積層から成る封止膜を形成した。最後にガラス基板に対し、樹脂膜が成膜されていない側からレーザー(波長:308nm)を照射し、樹脂膜との界面で剥離を行った。このときの照射エネルギーは、200mJ/cm2とした。
【0186】
以上のようにして、樹脂膜上に形成された有機EL表示装置が得られた。駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な発光を示した。
【0187】
(比較例101)
実施例2で得られたガラス基板上の樹脂膜を比較例3で得られたガラス基板上の樹脂膜に変更した以外は実施例101と同様の評価を行った。しかし、樹脂膜上にガスバリア膜を製膜する際に、ガラス基板の反りが大きくCVD装置内のステージに吸着させることができず、先の工程に進められなかった。
【0188】
(比較例102)
実施例2で得られたガラス基板上の樹脂膜を比較例4で得られたガラス基板上の樹脂膜に変更した以外は実施例101と同様の評価を行った。しかし、TFT形成時に450℃で加熱した際に、ガスバリア膜に皺が発生し、正常なTFTを形成することができなかった。
【0189】
(比較例103)
実施例2で得られたガラス基板上の樹脂膜を比較例9で得られたガラス基板上の樹脂膜に変更した以外は実施例101と同様の評価を行った。しかし、TFT形成時に450℃で加熱した際に、ガスバリア膜に膜浮きが生じ、正常なTFTを形成することができなかった。