(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176138
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ポリアミドイミドフィルムおよびそれを含む画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20221117BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20221117BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221117BHJP
【FI】
C08L79/08 C
C08G73/14
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077901
(22)【出願日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0061731
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ リ
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CM041
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GP00
4J002GQ00
4J043QB23
4J043QB26
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA06
4J043SA54
4J043SB01
4J043TA22
4J043TA26
4J043TB04
4J043UA022
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB022
4J043UB401
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043ZA51
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械的物性を維持しながらも、高い光透過率を満たして視野特性が顕著に改善され、低い屈折率、低い単位厚さ方向位相差(Rth)、低い黄色度、および低いヘイズなどを同時に満たして透明性および視認性などの光学的物性を顕著に向上させたポリアミドイミドフィルムを提供する。
【解決手段】ポリアミドイミドフィルムは、芳香族ジアミン、酸無水物、および芳香族二酸二塩化物から誘導されたポリアミドイミド樹脂と、無機ナノ粒子と、を含み、前記無機ナノ粒子の含量は、前記ポリアミドイミドフィルムの20~65wt%であり、前記ポリアミドイミドフィルムのASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン、酸無水物、および芳香族二酸二塩化物から誘導されたポリアミドイミド樹脂と、無機ナノ粒子と、を含むポリアミドイミドフィルムであって、
前記無機ナノ粒子の含量は、前記ポリアミドイミドフィルムの20~65wt%であり、
前記ポリアミドイミドフィルムのASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上である、ポリアミドイミドフィルム。
【請求項2】
前記無機ナノ粒子の平均直径は、50nm以下である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項3】
前記無機ナノ粒子の平均直径は、5~20nmである、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項4】
前記無機ナノ粒子の含量は、前記ポリアミドイミドフィルムの20~50wt%である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項5】
前記無機ナノ粒子は、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、およびチタン酸バリウムの中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項6】
前記無機ナノ粒子は、有機溶媒中での分散性を向上させるために表面処理されている、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項7】
前記芳香族ジアミンは、N,N’-[2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル]ビス[4-アミノベンズアミド](AB-TFMB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)、4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABA)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(6FAPB)、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項8】
前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド、イソフタロイルジクロライド、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸二塩化物、2,6-ナフタレンジカルボン酸二塩化物、および1,5-ナフタレンジカルボン酸二塩化物の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項9】
前記芳香族二酸二塩化物の含量は、前記酸無水物および芳香族二酸二塩化物の全体に対して50モル%を超過して含まれる、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項10】
前記酸無水物は、芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物を含む、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項11】
前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物であり、前記環状脂肪族二無水物は、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物である、請求項10に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項12】
前記環状脂肪族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BODA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物、および1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタン二無水物の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物である、請求項10または11に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項13】
前記ポリアミドイミドフィルムは、屈折率が1.63未満であり、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項14】
前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて測定されたヘイズが1.5%以下であり、ASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項15】
前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて測定されたヘイズが0.7%以下である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項16】
前記ポリアミドイミドフィルムは、Instron社のUTM 3365を用いて、50mm/minのエクステンション速度で測定されたモジュラスが5.0GPa以上である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム
【請求項17】
請求項1に記載のポリアミドイミドフィルムを含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリアミドイミドフィルムおよびそれを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリイミドは、機械的、熱的特性に優れており、回路およびデバイス形成用の絶縁基材分野をはじめとする多様な分野に適用されている。しかし、重合時に芳香族環の間に電荷移動錯体(Charge Transfer Complex)が形成されて褐色または黄色に着色され、それによる可視光線領域での透過率が低くなるため、ディスプレイ素材に適用し難いという点がある。
【0003】
かかるポリイミドを無色透明化する方法としては、ジアミン成分として脂環族ジアミンや脂肪族ジアミンを用いることで、分子内の電荷移動錯体の形成を抑制する方法が知られている。日本公開特許第2002-161136号には、ピロメリット酸二無水物などの芳香族酸二無水物とトランス-1,4-ジアミノシクロヘキサンとから形成されるポリイミド前駆体をイミド化することで得られるポリイミドが開示されているが、これは、高い透明度を示すものの、機械的物性が低下するという問題がある。
【0004】
また、ポリイミドの黄色の色を無色透明に転換するための方法として多様な官能性単量体を用いることが試みられているが、重合時に粘度が急激に上がるか、または精製が難しいなど、製造工程上の問題により接近が難しいという点があり、透明性を確保する代わりにポリイミド固有の優れた機械的物性が低下することを解決するのに不十分である。
【0005】
一方、ディスプレイ素材において、ディスプレイ用カバーガラスを高分子素材に代替しようとする研究が進められている中で、ポリイミドは、カバーガラスを代替できる素材として注目されている。
【0006】
そこで、カバーガラス代替素材を含む多様なディスプレイ素材分野に適用することができるように、低い屈折率によって高い光透過率、低い厚さ方向位相差(Rth)、低い黄色度、および低いヘイズ値などを同時に満たして卓越した光学特性を有し、かつ、固有の優れた機械的物性が低下しないようにすることで適用範囲をさらに広げることができるようにするポリイミドに対する技術開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第10-2014-0016199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、可視光線領域の全般にわたって高い光透過率を示すだけでなく、低い屈折率、低い厚さ方向位相差(Rth)、低い黄色度、および低いヘイズ値の物性を同時に満たして卓越した光学的物性を実現するとともに、高いモジュラスをはじめとする優れた機械的強度を実現することができる、ポリアミドイミドフィルムおよびそれを含む画像表示装置を提供しようとする。
【0009】
また、一実施形態は、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上を満たして、ウィンドウカバーフィルムに適用時に視野特性を顕著に改善することができる、ポリアミドイミドフィルムを提供しようとする。
【0010】
また、一実施形態は、屈折率が1.63未満を満たして、透明性が顕著に向上したポリアミドイミドフィルムを提供しようとする。
また、一実施形態は、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下、ヘイズが1.5%以下、およびASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である物性を同時に満たして、視認性などの光学的物性が顕著に向上したポリアミドイミドフィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、一態様は、芳香族ジアミン、酸無水物、および芳香族二酸二塩化物から誘導されたポリアミドイミド樹脂と、無機ナノ粒子と、を含むポリアミドイミドフィルムであって、
前記無機ナノ粒子の含量は、前記ポリアミドイミドフィルムの20~65wt%であり、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上である、ポリアミドイミドフィルムを提供する。
【0012】
一実施形態において、前記無機ナノ粒子の平均直径は、50nm以下であってもよく、より具体的には、5~20nmであってもよい。
一実施形態において、前記無機ナノ粒子の含量は、前記ポリアミドイミドフィルムの20~50wt%であってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記無機ナノ粒子は、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、およびチタン酸バリウムの中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。
一実施形態において、前記無機ナノ粒子は、有機溶媒中での分散性を向上させるために表面処理されてもよい。
【0014】
一実施形態において、前記芳香族ジアミンは、N,N’-[2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル]ビス[4-アミノベンズアミド](AB-TFMB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)、4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABA)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(6FAPB)、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。
【0015】
一実施形態において、前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド、イソフタロイルジクロライド、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸二塩化物、2,6-ナフタレンジカルボン酸二塩化物、および1,5-ナフタレンジカルボン酸二塩化物の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記芳香族二酸二塩化物の含量は、前記酸無水物および芳香族二酸二塩化物の全体に対して50モル%を超過して含まれてもよい。
一実施形態において、前記酸無水物は、芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物を含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物であり、前記環状脂肪族二無水物は、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物であってもよい。
【0018】
一実施形態において、前記環状脂肪族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BODA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物、および1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタン二無水物の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。
【0019】
一実施形態において、前記ポリアミドイミドフィルムは、屈折率が1.63未満であり、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下であってもよい。
【0020】
一実施形態において、前記ポリアミドイミドフィルムは、ヘイズが1.5%以下であり、ASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下であってもよい。
一実施形態において、前記ポリアミドイミドフィルムは、ヘイズが0.7%以下であってもよい。
【0021】
一実施形態において、前記ポリアミドイミドフィルムは、Instron社のUTM 3365を用いて、50mm/minのエクステンション速度で測定されたモジュラスが5.0GPa以上であってもよい。
他の一態様は、上述したポリアミドイミドフィルムを含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0022】
一実施形態は、ポリアミドイミドフィルムおよびそれを含む画像表示装置に関し、前記ポリアミドイミドフィルムは、可視光線領域の全般にわたって高い光透過率を示すだけでなく、低い屈折率、低い厚さ方向位相差(Rth)、低い黄色度、および低いヘイズ値の物性を同時に満たして卓越した光学的物性を実現するとともに、高いモジュラスをはじめとする優れた機械的強度を実現するという効果がある。
【0023】
また、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上を満たして、ウィンドウカバーフィルムに適用時に視野特性が顕著に改善されるという効果がある。
また、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、1.63未満の低い屈折率を満たして、透明性が顕著に向上するという効果がある。
【0024】
また、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下、ヘイズが1.5%以下、およびASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である物性を同時に満たして、視認性などの光学的物性が顕著に向上するという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムおよびそれを含む画像表示装置について詳しく説明する。
この際、他に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者の1人により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、実施形態を制限する意図ではない。また、明細書において、特に記載していない添加物の単位はwt%であってもよい。
【0026】
また、明細書および添付の請求範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
本明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0027】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「誘導された」とは、化合物の官能基のうち少なくともいずれか1つが変形されたことを意味し、具体的に、化合物の反応基および/または離脱基が反応に応じて変形または離脱した形態を含んでもよい。また、互いに異なる化合物から誘導された構造が互いに同一であれば、いずれか1つの化合物から誘導された構造は、他のいずれか1つの化合物から誘導されて同一の構造を有する場合も含んでもよい。
【0028】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、相対的に高分子量の分子をいい、その構造は、低分子量の分子から誘導された単位の多重繰り返しを含んでもよい。一態様において、重合体は、交互(alternating)共重合体、ブロック(block)共重合体、ランダム(random)共重合体、分岐(branched)共重合体、架橋(crosslinked)共重合体、またはこれらを全て含む共重合体(例えば、1種よりも多い単量体を含む共重合体)であってもよい。他の態様において、重合体は、単独重合体(homopolymer)(例えば、1種の単量体を含む共重合体)であってもよい。
【0029】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリイミド」は、イミド構造を含むものであって、「ポリイミド」または「ポリアミドイミド」を含む意味として用いられてもよい。
【0030】
従来のポリイミドは、高分子鎖のパッキング(polymer chain packing)が発生して電荷移動錯体(CTC:Charge transfer complex)構造を有することになり、このため、可視光線領域での透過率が低下するという問題があった。
【0031】
本発明の発明者らは、芳香族ジアミンと酸無水物、そして芳香族二酸二塩化物の組み合わせから誘導されたポリアミドイミド樹脂と、一定含量の無機ナノ粒子と、を含むポリアミドイミドフィルムが、驚くべきことに、可視光線領域の全般にわたって高い光透過率を示すだけでなく、低い屈折率、低い厚さ方向位相差(Rth)、低い黄色度、および低いヘイズ値の物性を同時に満たして卓越した光学的物性を実現可能であるとともに、高いモジュラスをはじめとする優れた機械的強度を維持可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0032】
具体的に、一態様は、優れた機械的、熱的、電気的特性を維持しながらも、光学特性を画期的に向上させ、ディスプレイを含む多様な分野に適用可能なポリアミドイミドフィルムを提供するために、芳香族ジアミン、酸無水物、および芳香族二酸二塩化物の組み合わせから誘導されたポリアミドイミド樹脂と、無機ナノ粒子と、を含むポリアミドイミドフィルムを提供することができる。
【0033】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムをより具体的に説明すれば次のとおりである。
一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、芳香族ジアミン、酸無水物、および芳香族二酸二塩化物から誘導されたポリアミドイミド樹脂と、無機ナノ粒子と、を含むものであって、
前記無機ナノ粒子の含量は、前記ポリアミドイミドフィルムの20~65wt%であり、前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上であってもよい。
【0034】
前記組成を満たすポリアミドイミドフィルムは、可視光線領域の全般にわたって高い光透過率を示すだけでなく、低い屈折率、低い厚さ方向位相差(Rth)、低い黄色度、および低いヘイズ値の物性を同時に満たして卓越した光学的物性を実現可能であるとともに、高いモジュラスをはじめとする優れた機械的強度を維持可能である。
【0035】
より具体的に、一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記無機ナノ粒子の含量は、前記ポリアミドイミドフィルムの20~50wt%、より具体的には、20~45wt%であってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0036】
無機ナノ粒子の含量が前記ポリアミドイミドフィルムの20wt%未満である場合には、ポリアミドイミドフィルムのASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が低下し、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nmを超過する高い数値を示すところ、視野特性が良くなく、レインボー現象および反射ムラなどが容易に観察されて視認性が低下する現象が現れるだけでなく、黄色度などの光学的物性も大幅に低下し得る。また、無機ナノ粒子の含量が前記ポリアミドイミドフィルムの65wt%を超過する場合には、ポリアミドイミドフィルムの黄色度およびヘイズなどの光学的物性が顕著に低下して十分な透明性を確保し難く、さらにはフィルム自体を形成できないという問題が発生し得る。
【0037】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記無機ナノ粒子は、球状の無機ナノ粒子および角ばった無定形の無機ナノ粒子から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。具体的に、前記無機ナノ粒子は、球状の無機ナノ粒子のみを含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。この際、前記「球状(spherical)」は、通常の意味で、表面が中心から実質的に等距離にある完全な球状だけでなく、角のない球状に近い丸い形状も含み、また、前記「角ばった無定形」は、粒子に角ばった形態であれば、その形態は特に制限されず、例えば、無定形、棒状、四面体、六面体および八面体などから選択される多面体形、および板状形などから選択されてもよい。
【0038】
また、一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記無機ナノ粒子は、ナノサイズの粒子であって、その大きさは、平均直径が50nm以下であってもよく、例えば30nm以下、例えば20nm以下であってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。より具体的に、前記無機ナノ粒子の大きさは、平均直径が5~50nm、より具体的には5~30nm、さらに具体的には5~20nmであってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0039】
無機ナノ粒子の平均直径が50nmを超過する場合には、それを含むポリアミドイミドフィルムは、光透過率が顕著に低くなり、黄色度およびヘイズなどの光学的物性が顕著に低下し、十分なフィルムの透明性を確保することが難しいという問題がある。したがって、無機ナノ粒子の大きさが前記範囲を満たす場合、それを含むポリアミドイミドフィルムの光学的物性および機械的物性がさらに向上することができるため好ましい。
【0040】
この際、前記平均直径の意味は、前記無機ナノ粒子が球状の無機ナノ粒子である場合にはその平均粒径を意味し、角ばった無定形の無機ナノ粒子である場合にはその最長の長さを意味するものであって、前記球状の無機ナノ粒子の平均粒径は、それぞれ無機ナノ粒子の粒径を測定し、小さい粒子から体積を累積する場合に総体積が50%に該当する粒径であるD50を意味し、前記角ばった無定形の無機ナノ粒子の最長の長さは、それぞれ無機ナノ粒子の大きさを測定し、小さい粒子から体積を累積する場合に総体積が50%に該当する大きさであるD50を意味する。
【0041】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムを形成する際に、加熱などの手段を介して前記ポリアミドイミド樹脂と前記無機ナノ粒子との間の架橋が誘導されて架橋結合が形成されてもよく、前記架橋結合は、前記無機ナノ粒子の全部または一部が架橋されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0042】
この際、前記無機ナノ粒子の含量が前記ポリアミドイミドフィルムの20~65wt%を満たす場合には、前記架橋結合がさらに円滑に形成されることができ、フィルムの機械的、熱的、電気的物性を低下させない範囲内で、前記架橋結合を介してフィルムの視認性および透明性などを向上させ、優れた光学特性を同時に実現することができる。特に、前記無機ナノ粒子の平均直径が50nm以下である場合には、前記架橋結合による効果をさらに高度に実現することができるため好ましい。
【0043】
また、一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記無機ナノ粒子の直径の最大、最小値は、前記平均直径の±20%、具体的には±10%、より具体的には 5%に該当する値であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0044】
その一例として、前記無機ナノ粒子の平均直径が50nmであり、その直径の最大、最小値が平均直径の±20%である場合には、前記無機ナノ粒子のそれぞれの直径は、40~60nmを満たしてもよく、平均直径が10nmであり、その直径の最大、最小値が平均直径の±10%である場合には、前記無機ナノ粒子それぞれの直径は、9~11nmを満たしてもよいが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
より具体的に、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上を満たして、ウィンドウカバーフィルムに適用時に顕著に改善された視野特性を発現することができるだけでなく、1.63未満の低い屈折率を満たすように屈折率の制御が可能であって透明性を顕著に向上させることができ、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下、ASTM D1003の規格に準じて測定されたヘイズが1.5%以下、およびASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である物性を同時に満たして光学的物性が顕著に向上し、優れた機械的、熱的、電気的特性も維持される非常に驚くべき効果を有することができる。
【0046】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記無機ナノ粒子は、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、およびチタン酸バリウムの中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。具体的に、前記無機ナノ粒子は、シリカであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0047】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記無機ナノ粒子は、有機溶媒に分散した形態で前記ポリアミドイミド樹脂と混合されてもよく、その分散性を向上させるために表面処理された物質であってもよい。有機溶媒に分散していない固形分形態の無機ナノ粒子を前記ポリアミドイミド樹脂と混合すると、これにより製造されるポリアミドイミドフィルム中に無機ナノ粒子が均一に分散し難く、よって、本発明が導き出そうとする光学的物性および機械的物性の実現が多少難しくなり得る。
【0048】
この際、前記有機溶媒は、その種類が大きく制限されず、一例として、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルホルムスルホキシド(DMSO)、アセトン、エチルアセテート、およびm-クレゾールなどから選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。具体的には、ジメチルアセトアミド(DMAc)であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記芳香族ジアミンは、フッ素置換基が導入されるかアミド構造が含まれた芳香族ジアミンであってもよく、例えば、N,N’-[2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル]ビス[4-アミノベンズアミド](AB-TFMB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)、4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABA)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(6FAPB)、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよく、より具体的には、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)であってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。これにより、フッ素置換基の電荷移動効果(Charge Transfer effect)でさらに優れた光学特性を付与することができ、アミド構造の水素結合を介してさらに優れた機械的特性をさらに高度に実現することができる。
【0050】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記芳香族二酸二塩化物は、高分子鎖中にアミド構造を形成するものであって、光学特性を低下させない範囲で、モジュラスを含む機械的物性を向上させることができる。
【0051】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド(terephthaloyl dichloride、TPC)、イソフタロイルジクロライド(isophthaloyl dichloride、IPC)、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド([1,1’-Biphenyl]-4,4’-dicarbonyl dichloride、BPC)、1,4-ナフタレンジカルボン酸二塩化物(1,4-naphthalene dicarboxylic dichloride)、2,6-ナフタレンジカルボン酸二塩化物(2,6-naphthalene dicarboxylic dichloride)、1,5-ナフタレンジカルボン酸二塩化物(1,5-naphthalene dicarboxylic dichloride)の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよく、例えば、2つ以上の混合物を用いる場合には、テレフタロイルジクロライドを含んでもよく、より具体的には、テレフタロイルジクロライド単独で用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0052】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記芳香族二酸二塩化物は、前記酸無水物および芳香族二酸二塩化物の全体に対して50モル%を超過して含まれてもよく、具体的には、50モル%超過~90モル%以下で含まれてもよく、例えば60~90モル%、例えば60~80モル%で含まれてもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0053】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記酸無水物は、芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物を含んでもよい。
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記芳香族二無水物は、大きく制限されるものではないが、一例として、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、およびビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよく、具体的に例を挙げると、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)を単独で用いてもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0054】
また、前記芳香族二無水物の含量は、本発明の目的を達成する限り制限されないが、その一例として、芳香族ジアミン100モルに対して40モル以下で共重合されてもよく、より具体的には、10~40モル、または10~30モルで共重合されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0055】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記環状脂肪族二無水物は、芳香族二無水物とは区分して用いられ、その種類は、本発明の目的を達成する限り特に限定されないが、一例として、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BODA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物、および1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタン二無水物の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよく、より具体的に例を挙げると、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を単独で用いてもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0056】
また、前記環状脂肪族二無水物の含量は、本発明の目的を達成する限り制限されないが、その一例として、芳香族ジアミン100モルに対して40モル以下で共重合されてもよく、より具体的には、5~40モルまたは5~30モルで共重合されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
上記のような特性を有する芳香族ジアミン、酸無水物、および芳香族二酸二塩化物から誘導されたポリアミドイミド樹脂と、前記一定含量の無機ナノ粒子と、を含むポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率がさらに向上し、さらに改善された視野特性を有することができる。また、屈折率をさらに低くしてフィルムの透明性をさらに顕著に向上させることができ、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下、ASTM D1003の規格に準じて測定されたヘイズが1.5%以下、およびASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である物性を同時に満たす特性がさらによく実現されることができ、光学的物性がさらに顕著に向上するだけでなく、モジュラスもさらに向上して優れた機械的物性を有することができる。
【0058】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上を満たして顕著に改善された視野特性を有することができ、1.63未満の低い屈折率を満たすように屈折率の制御が可能であって透明性を顕著に向上させることができ、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下、ASTM D1003の規格に準じて測定されたヘイズが1.5%以下、およびASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である物性を同時に満たすことができる。
【0059】
より具体的に、一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記ポリアミドイミドフィルムのASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率は、90%以上、より具体的には、91%以上、さらに具体的には、92%以上であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記範囲の高い光透過率を満たすことで、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、顕著に改善された視野特性を有し、ウィンドウカバーフィルムに適用時にさらに改善された視野特性を発現することができる。
【0060】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記ポリアミドイミドフィルムの屈折率は、1.63未満、例えば、1.60以下であってもよい。より具体的には、1.50~1.60であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記屈折率は、約23℃の温度で、約543nmの波長で測定された値であってもよい。前記範囲の低い屈折率を満たすことで、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、透明性が顕著に向上し、ディスプレイを含めて多様な分野に活用価値が高い。
【0061】
また、一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記ポリアミドイミドフィルムの厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)は、3500nm以下であってもよく、より具体的には、2000~3500nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記範囲の位相差を有することで、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、視認性および外観品質に顕著に優れたため、ディスプレイを含めて多様な分野に活用するのに非常に適した光学的物性を提供することができる。
【0062】
この際、厚さ方向位相差(Rth)とは、下記計算式1により導き出される波長550nmでの厚さ方向位相差値を意味する。
【0063】
【0064】
ここで、nxは、x方向への屈折率であり、nyは、y方向への屈折率であり、nzは、z方向への屈折率であり、dは、ポリアミドイミドフィルムの厚さ(μm)である。
【0065】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記ポリアミドイミドフィルムの黄色度は、2.5以下、または2.0以下であってもよく、ヘイズは、1.5%以下、または1.0%以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
したがって、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、上述したように、優れた光透過率および低い厚さ方向位相差(Rth)を満たすとともに、従来のポリイミド系フィルムに比べて低い黄色度およびヘイズ値を実現することができるため、光学的物性が驚くほど改善されるという長所を有する。
【0067】
また、一態様に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記ポリアミドイミドフィルムは、Instron社のUTM 3365を用いて、50mm/minのエクステンション速度で測定されたモジュラスが5.0GPa以上、6.0Gpa以上、5.0~10.0Gpa、または6.0~10.0Gpaであってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。前記範囲のモジュラス物性を満たすことで、一態様に係るポリアミドイミドフィルムは、光学的物性が顕著に改善可能であるとともに、フィルムの機械的物性も従来のポリイミド系フィルムに比べて全く低下しないということから、優れた機械的、熱的、電気的特性を同時に満たしてその活用価値がさらに高いという長所がある。
【0068】
他の態様は、前記ポリアミドイミドフィルムを含む画像表示装置を提供する。
この際、前記画面表示装置は、優れた光学的物性が求められる分野であれば特に制限されず、具体的に例を挙げると、液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などから選択されるいずれか1つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0069】
以下、一態様のポリアミドイミドフィルムの製造方法について例示する。
一例として、一態様に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法は、
(a)有機溶媒に芳香族ジアミンを溶解させた後、酸無水物と、芳香族二酸二塩化物を反応させてポリアミック酸樹脂組成物を製造するステップと、
(b)前記ポリアミック酸樹脂組成物をイミド化してポリアミドイミド樹脂を製造するステップと、
(c)前記ポリアミドイミド樹脂を含む溶液に無機ナノ粒子を添加してポリアミドイミド樹脂混合物溶液を製造するステップと、
(d)前記ポリアミドイミド樹脂混合物溶液を塗布し乾燥してポリアミドイミドフィルムを製造するステップと、を含んでもよい。
【0070】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法は、大きく制限されるものではないが、撹拌器、窒素注入装置、滴下装置、温度調節器、および冷却器が設けられた反応器を用いて行うことが好ましい。
【0071】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記(a)ポリアミック酸樹脂組成物を製造するステップは、一態様として、芳香族ジアミン、酸無水物、および芳香族二酸二塩化物を同時に重合してもよく、または、芳香族ジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させてアミン末端を有するオリゴマーを製造した後、前記オリゴマーと追加の芳香族ジアミンおよび二無水物を反応させて製造してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0072】
アミン末端を有するオリゴマーを製造した後、追加の芳香族ジアミンおよび二無水物を反応させる場合には、ブロック型ポリアミドイミド樹脂が製造されることができ、フィルムの機械的物性がさらに向上することができる。
【0073】
この際、前記アミン末端を有するオリゴマーを製造するステップは、反応器内で芳香族ジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させるステップと、得られたオリゴマーを精製し乾燥するステップを含んでもよい。この場合、前記芳香族ジアミンを前記芳香族二酸二塩化物に対して1.01~2のモル比で投入してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記アミン末端を有するオリゴマーの重量平均分子量は、例えば、1,000~3,000g/molであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0074】
また、前記オリゴマーと追加の芳香族ジアミンおよび二無水物を反応させるステップは、一態様として、反応器に有機溶媒を入れ、前記オリゴマー、芳香族ジアミン、および二無水物を投入して重合反応させてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0075】
前記ポリアミック酸樹脂組成物の製造時、芳香族ジアミンは、有機溶媒に単量体を一度に入れずに段階的に入れて反応させることが反応性を高めることができる。また、前記有機溶媒に先ず芳香族ジアミンを優先的に入れ、十分に溶解させることが好ましい。
【0076】
この際、用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルホルムスルホキシド(DMSO)、アセトン、エチルアセテート、およびm-クレゾールなどから選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。具体的には、ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0077】
前記(a)ステップは、不活性気体雰囲気下で重合反応を行うことがより好ましく、一例として、窒素またはアルゴンガスを反応器内に還流させつつ行ってもよい。また、反応温度範囲は、常温~80℃、具体的には20~80℃で行い、反応時間は、30分~24時間行ってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。前記(b)イミド化するステップは、(a)ステップで製造されたポリアミック酸樹脂組成物をイミド化してポリアミドイミド樹脂を得るステップであって、公知のイミド化法、例えば、熱イミド化法、化学イミド化法、熱イミド化法と化学イミド化法を並行して適用してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0078】
一態様に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、化学的イミド化は、製造されたポリアミック酸樹脂組成物を含む溶液にイミド化触媒および脱水剤の中から選択されたいずれか1つまたは2つ以上をさらに含ませて行ってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0079】
この際、脱水剤は、酢酸無水物(acetic anhydride)、フタル酸無水物(phthalic anhydride)、およびマレイン酸無水物(maleic anhydride)の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよく、イミド化触媒は、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)、およびβ-キノリン(β-quinoline)の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0080】
前記(c)ステップにおいて、前記無機ナノ粒子は、分散性を向上させるために、有機溶媒に無機ナノ粒子を投入し、超音波などの手段を介して分散した有機溶液状態で投入することがより好ましい。また、前記無機ナノ粒子の表面を改質した表面処理された無機ナノ粒子を投入することが、分散性を向上させる上でより好ましい。有機溶媒に分散していない固形分形態の無機ナノ粒子を直ちに添加すると、ポリアミドイミドフィルム中に無機ナノ粒子が均一に分散し難く、よって、本発明が導き出そうとする光学的物性および機械的物性の実現が多少難しくなり得る。
【0081】
この際、前記有機溶媒は、その種類が大きく制限されず、一例として、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルホルムスルホキシド(DMSO)、アセトン、エチルアセテート、およびm-クレゾールなどから選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。具体的には、ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0082】
前記(d)の前記ポリアミドイミド樹脂混合物溶液を塗布するステップは、塗布以後に熱処理するステップをさらに含んでもよい。前記熱処理ステップは、ガラス基板などの支持体上に前記ポリアミドイミド樹脂混合物溶液をキャスティングし熱処理してフィルムを成形するステップである。前記熱処理は、段階的に行われてもよく、具体的には、80~100℃で1分~2時間、100~200℃で1分~2時間、250~300℃で1分~2時間の間、段階的な熱処理して行われてもよく、より具体的には、各温度範囲に応じた段階別の熱処理は、30分~2時間行われてもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。この際、段階的な熱処理は、各段階に移動時に1~20℃/minの範囲で昇温させてもよい。また、熱処理は、別の真空オーブンで行われてもよく、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0083】
上記の製造方法により製造されたポリアミドイミドフィルムは、上述したように、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上を満たして視野特性を顕著に改善させることができ、1.63未満の低い屈折率を満たして透明性が顕著に向上することができ、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下、ヘイズが1.5%以下、およびASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である物性を同時に満たして光学的物性が顕著に向上するだけでなく、優れたフィルムの機械的、熱的、電気的特性も維持されるという非常に卓越した効果を有する。
【0084】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳しく説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳しく説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記の実施例および比較例により制限されるものではない。
【0085】
[物性の測定方法]
(1)屈折率
実施例および比較例で製造された厚さ50μmのフィルムを基準とし、温度23℃、543nm波長領域で、プリズムカプラー(Prism Coupler)(Metricon、2010)を用いて測定した。
【0086】
(2)光透過率
実施例および比較例で製造された厚さ50μmのフィルムを基準とし、ASTM D1003の規格に準じて、400~700nmの波長領域の全体において、分光光度計(Spectrophotometer)(Nippon Denshoku社、COH-400)を用いて測定した。
【0087】
(3)厚さ方向位相差(Rth)
実施例および比較例で製造された厚さ50μmのフィルムを基準とし、Axoscan(Axometrics社)を用いて、550nm波長に対して測定した。試料のスロー軸(slow axis)およびファースト軸(Fast axis)を含む2つの軸を回転軸とし、傾き角(tilt angle、0~45゜)に対する位相差傾向を基にソフトウエア上で計算されるRth値を測定した。
【0088】
(4)モジュラス
実施例および比較例で製造された厚さ50μm、長さ50mm、および幅10mmのフィルムを25℃で50mm/minで引っ張る条件で、Instron社のUTM 3365を用いて測定した。
【0089】
(5)ヘイズ(haze)
実施例および比較例で製造された厚さ50μmのフィルムを基準とし、ASTM D1003の規格に準じて、分光光度計(Spectrophotometer)(Nippon Denshoku社、COH-400)を用いて測定した。
【0090】
(6)黄色度(YI)
実施例および比較例で製造された厚さ50μmのフィルムを基準とし、ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Spectrophotometer)(Nippon Denshoku社、COH-400)を用いて測定した。
【0091】
[実施例1]
窒素雰囲気下で、反応器にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて十分に撹拌させた後、テレフタロイルジクロライド(TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。
その後、過量のメタノールを用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を50℃で6時間以上真空乾燥し、オリゴマーを得た。
【0092】
再び窒素雰囲気下で、反応器にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、前記オリゴマーと、追加の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて芳香族ジアミンを100モルとなるようにし、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)を順次投入し、40℃で12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体のモル比はTFMB:6FDA:CBDA:TPC=100:15:15:70となるように投入し、固形分含量が10wt%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。
【0093】
次いで、溶液にピリジン(Pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)をそれぞれ二無水物の総含量に対して2.5倍のモル比で順次投入し、60℃で12時間撹拌してポリアミドイミド樹脂を含む溶液を製造した。前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は210,000g/molであった。
【0094】
前記ポリアミドイミド樹脂を含む溶液にDMAcに分散処理されたシリカ粒子を投入し、ポリアミドイミド樹脂混合物溶液を得た。この際、シリカ粒子は、その含量がシリカ粒子の投入後の全体ポリアミドイミド樹脂混合物の固形分中の38wt%となるように添加され、シリカの平均直径は10nmであり、シリカの屈折率は1.45である。
【0095】
前記ポリアミドイミド樹脂混合物溶液をガラス基板上にアプリケータ(applicator)を用いて溶液キャスティングを行った。その後、乾燥オーブンにて90℃で30分間1次乾燥した後、N2条件の硬化オーブンにて300℃で30分間熱処理した後、常温で冷却させ、ガラス基板上に形成されたフィルムを基板から分離し、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0096】
[実施例2]
前記実施例1において、シリカ粒子の含量がポリアミドイミド樹脂混合物の固形分中の44wt%となるように添加することを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0097】
[実施例3]
前記実施例1において、シリカ粒子の含量がポリアミドイミド樹脂混合物の固形分中の23wt%となるように添加することを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0098】
[実施例4]
前記実施例1において、シリカ粒子の平均直径が35nmであることを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0099】
[実施例5]
前記実施例1において、シリカ粒子の含量がポリアミドイミド樹脂混合物の固形分中の52wt%となるように添加することを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0100】
[実施例6]
前記実施例1において、シリカ粒子の含量がポリアミドイミド樹脂混合物の固形分中の65wt%となるように添加することを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0101】
[比較例1]
窒素雰囲気下で、反応器にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて十分に撹拌させた後、テレフタロイルジクロライド(TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。
その後、過量のメタノールを用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を50℃で6時間以上真空乾燥し、オリゴマーを得た。
【0102】
再び窒素雰囲気下で、反応器にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、前記オリゴマーと、追加の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて芳香族ジアミンを100モルとなるようにし、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)を順次投入し、40℃で12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体のモル比はTFMB:6FDA:CBDA:TPC=100:15:15:70となるように投入し、固形分含量が10wt%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。
【0103】
次いで、溶液にピリジン(Pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)をそれぞれ二無水物の総含量に対して2.5倍のモル比で順次投入し、60℃で12時間撹拌してポリアミドイミド樹脂を含む溶液組成物を製造した。前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は210,000g/molであった。
【0104】
前記ポリアミドイミド樹脂を含む溶液をガラス基板上にアプリケータ(applicator)を用いて溶液キャスティングを行った。その後、乾燥オーブンにて90℃で30分間1次乾燥した後、N2条件の硬化オーブンにて300℃で30分間熱処理した後、常温で冷却させ、ガラス基板上に形成されたフィルムを基板から分離し、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0105】
[比較例2]
前記実施例1において、シリカ粒子の含量がポリアミドイミド樹脂混合物の固形分中の15wt%となるように添加することを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0106】
[比較例3]
前記実施例1において、シリカ粒子の含量がポリアミドイミド樹脂混合物の固形分中の75wt%となるように添加することを除いては、実施例1と同様に行い、この場合にはフィルムを得ることができなかった。
【0107】
[比較例4]
前記実施例1において、シリカ粒子の平均直径が62nmであることを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0108】
[比較例5]
前記実施例1において、シリカ粒子の平均直径が90nmであることを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0109】
[比較例6]
前記実施例1において、シリカ粒子の平均直径が90nmであり、シリカ粒子の含量がポリアミドイミド樹脂混合物の固形分中の44wt%となるように添加することを除いては、実施例1と同様に行い、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミドフィルムの物性を下記表1に示した。
【0110】
【0111】
前記表1に示すように、芳香族ジアミン、酸無水物、および芳香族二酸二塩化物から誘導されたポリアミドイミド樹脂と、無機ナノ粒子と、を含むポリアミドイミドフィルムであって、前記無機ナノ粒子が一態様において限定する大きさおよび含量範囲を満たす実施例1~6のポリアミドイミドフィルムの場合、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上を満たし、1.63未満の低い屈折率を満たし、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下、ヘイズが1.5%以下、およびASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である物性を同時に満たして光学的物性に顕著に優れることを確認した。
また、モジュラス(Gpa)も、いずれの実施例においても大きく低下しないため、機械的物性にも優れることを確認した。
【0112】
特に、無機ナノ粒子が含まれていない比較例1のポリアミドイミドフィルムの場合、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%未満として低い数値を示し、屈折率も実施例に比べて高くなり、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)も3500nmを超過する高い数値を示すところ、フィルムの透明性および視認性が大きく低下することを確認し、黄色度などの光学的物性が低下するだけでなく、機械的物性を示すモジュラス(Gpa)も顕著に低下することを確認した。
【0113】
また、無機ナノ粒子が一態様において限定している含量を下回って含まれる比較例2のポリアミドイミドフィルムの場合も、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%未満として低い数値を示し、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3500nmを超過する高い数値を示すところ、透明性および視認性が低下することを確認した。
【0114】
また、無機ナノ粒子が一態様において限定している含量を超過して含まれる比較例3の場合は、ポリアミドイミドフィルム自体が形成できないことを確認した。
【0115】
それのみならず、無機ナノ粒子の大きさが一態様において限定している大きさを超過する比較例5~7のポリアミドイミドフィルムの場合も、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%未満として低い数値を示し、さらには、黄色度が7.0以上、ヘイズも5.0%以上であって、光学的物性が非常に顕著に低下することを確認した。
【0116】
したがって、一実施形態により一定含量の無機ナノ粒子を含むポリアミドイミドフィルムが提供されることで、前記フィルムは、ASTM D1003の規格に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上を満たして視野特性を顕著に改善させることができ、1.63未満の低い屈折率を満たして透明性が顕著に向上することができ、厚さ50μmにおいて厚さ方向位相差(Rth)が3,500nm以下、ヘイズが1.5%以下、およびASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が2.5以下である物性を同時に満たして視認性などの光学的物性が顕著に向上するだけでなく、優れたフィルムの機械的、熱的、電気的特性も維持できることを確認した。
【0117】
以上、本発明においては特定の事項と限定された実施例によりポリアミドイミドフィルムおよびそれを含む画像表示装置を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0118】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。