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特開2022-176144第2のホログラフィック光学素子を形成するための露光装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176144
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】第2のホログラフィック光学素子を形成するための露光装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/04 20060101AFI20221117BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G03H1/04
G02B5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022077962
(22)【出願日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】10 2021 204 872.2
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ペーターセン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト・フィース
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ビルム
【テーマコード(参考)】
2H249
2K008
【Fターム(参考)】
2H249CA01
2H249CA08
2H249CA09
2H249CA15
2H249CA30
2K008AA14
2K008BB04
2K008DD12
2K008GG01
2K008HH01
2K008HH19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複雑な多重波面型HOEの記録を可能にする。
【解決手段】第1のホログラフィック光学素子1bを含む露光装置8aであって、第1のホログラフィック光学素子が第1、第2の部分領域10c及び10dを有する。露光装置は、第1の感光性物質70aと、第1の波長の第1の光波65、第2の波長の第1の光波を生成するため、及び第2の光波85を生成するためのライトユニット100とを含む。ライトユニットは、第1の光波を第1のホログラフィック素子の第1及び第2の部分領域に照射する。第1の感光性物質は、第1の感光性物質の第3の部分領域90において、偏向された第1の光波の第1の部分波71aが偏向された第2の部分波71bと重複するように、配置される。ライトユニットは、第1の感光性物質の第3の部分領域において、第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、第2の光波を第1の感光性物質に照射する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に第2のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)を作製するための露光装置(8a、8b、8c、8d)であって、
少なくとも第1の部分領域(10a、10c、11a、12a、13a、14a)及び第2の部分領域(10b、10d、11b、12b、13b、14b)を有し、前記第1の部分領域(10a、10c、11a、12a、13a、14a)が少なくとも第1の回折格子(20a)を、前記第2の部分領域(10b、10d、11b、12b、13b、14b)が少なくとも第2の回折格子(20b)を有する、第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)と、
第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)、特に第1の感光膜と、
少なくとも第1の波長の第1の光波(65、66)及び/又は第2の波長第1の光波(68)を生成するため、及び少なくとも第1の波長の第2の光波(84、85)及び/又は第2の波長の第2の光波(86)を生成するためのライトユニット(100、101)と、を含む露光装置(8a、8b、8c、8d)であり、
前記ライトユニット(100、101)は、生成された前記第1の光波(65、66)を前記第1のホログラフィック素子(1a、1b、1c、1f)の前記少なくとも第1の部分領域(10a、10c、11a、12a、13a、14a)及び第2の部分領域(10b、10d、11b、12b、13b、14b)に照射するように構成されており、
前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)は、前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)の少なくとも第3の部分領域(90、91、93a)において、前記第1の回折格子(20a)によって偏向された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の第1の部分波(71a、72a、77a)が前記第2の回折格子(20b)によって偏向された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の第2の部分波(71b、72b、78a)と重複するように、前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)に対して配置されており、
前記ライトユニット(100、101)は、前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)の前記少なくとも第3の部分領域(90、91、93a)において、前記第1の光波の前記第1の部分波(71a、72a、77a)及び前記第2の部分波(71b、72b、78a)が前記第2の光波(85)と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、生成された前記第1の波長の前記第2の光波(84、85)及び/又は前記第2の波長の前記第2の光波(86)を前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)に照射するように構成されている、露光装置(8a、8b、8c、8d)。
【請求項2】
前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)は透過ホログラムであり、
前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)は、前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)の少なくとも前記第3の部分領域(90、91、93a)、特に前面(9a)において、前記第1の回折格子(20a)によって偏向された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の前記第1の部分波(71、71b、77a)が前記第2の回折格子(20b)によって偏向された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の前記第2の部分波(71b、72b、78a)と重複するように、前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)に対して配置されており、
前記ライトユニット(100、101)は、前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)の前記少なくとも第3の部分領域(90、91、93a)において、前記第1の部分波(71、72a、77a)及び前記第2の部分波(71b、72b、78a)が前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第2の光波(84、85)と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、生成された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第2の光波(84、95)を前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)の裏面(9b)に照射するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置(8a、8b、8c、8d)。
【請求項3】
前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)が第4の部分領域及び第5の部分領域をさらに有し、
前記第4の部分領域が少なくとも第3の回折格子を、前記第5の部分領域が少なくとも第4の回折格子を有し、前記部分領域が矩形状に、特に2×2配列として配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置(8a、8b、8c、8d)。
【請求項4】
前記第1の回折格子(20a)及び/又は前記第2の回折格子(20b)がホログラフィック格子、特にホログラフィック格子平面を有し、
前記格子が移動可能に配置されており、
前記ホログラフィック格子の表面法線が特に互いに対して位置に依存した角度を有する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の露光装置(8a、8b、8c、8d)。
【請求項5】
前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)が、前記第1の部分領域(10a、10c、11a、12a、13a、14a)内に少なくとも第1のホーゲル(30、31、33)及び第2のホーゲル(32、34)を有し、
前記第1のホーゲル(30、31、33)が少なくとも2つの、特に互いに異なる回折格子を有し、前記第2のホーゲル(32、34)が少なくとも2つの、特に互いに異なる回折格子を有する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の露光装置(8a、8b、8c、8d)。
【請求項6】
前記第1のホログラフィック素子(1a、1b、1c、1f)が、前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)、特に感光性樹脂から形成されている、前記第1の感光性物質とは異なる第2の感光性物質(7a、7b、7c、7d、7e)、特にハロゲン化銀から形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の露光装置(8a、8b、8c、8d)。
【請求項7】
前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)及び前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)が基本的に互いに平行に配置されている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の露光装置(8a、8b、8c、8d)。
【請求項8】
第2のホログラフィック光学素子の作製方法であって、
少なくとも第1の部分領域(10a、10c、11a、12a、13a、14a)及び第2の部分領域(10b、10d、11b、12b、13b、14b)を有し、前記第1の部分領域(10a、10c、11a、12a、13a、14a)が少なくとも第1の回折格子(20a)を、前記第2の部分領域(10b、10d、11b、12b、13b、14b)が少なくとも第2の回折格子(20b)を有する、少なくとも第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)を準備するステップ(110)と、
第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)、特に感光膜を準備するステップ(120)と、
少なくとも第1の波長の第1の光波(65、66)及び/又は第2の波長の第1の光波(68)を前記第1のホログラフィック素子(1a、1b、1c、1f)の前記少なくとも第1の部分領域(10a、10c、11a、12a、13a、14a)及び第2の部分領域(10b、10d、11b、12b、13b、14b)に照射するステップ(150)であって、前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)が、前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)の少なくとも第3の部分領域(90、91、93a)において、前記第1の回折格子(20a)によって偏向された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の第1の部分波(71a、72a、77a)が前記第2の回折格子(20b)によって偏向された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の第2の部分波(71b、72b、78a)と重複するように、前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)に対して配置されている、ステップ(150)と、
前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)の前記少なくとも第3の部分領域(90、91、93a)において、前記第1の部分波(71a、72a、77a)及び前記第2の部分波(71b、72b、78a)が前記第1の波長の第2の光波(84、85)及び/又は前記第2の波長の第2の光波(86)と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、少なくとも前記第1の波長(84、85)の前記第2の光波及び/又は前記第2の波長の前記第2の光波(86)を前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)に照射するステップ(160)と、を含む方法。
【請求項9】
前記第1の回折格子によって偏向された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の前記第1の部分波(71a、72a、77a)が、第1の集光領域(88a)、特に第1の焦点において交差し、
前記第2の回折格子(20b)によって偏向された前記第1の波長及び/又は前記第2の波長(20b)の前記第1の光波の前記第2の部分波(71b、72b、78a)が、第2の集光領域(88b)、特に焦点において交差する、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の波長の前記第2の光波(84、85)及び/又は前記第2の波長の前記第2の光波(86)が、第3の集光領域(37a)、特に焦点へ向かう方向に延び、
前記集光領域(37a、88a、88b)が、共通の面、特に前面(9a)又は裏面(9b)上に前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)に対向して配置されている、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の第3の部分波(82a)が伝搬方向を変えずに前記第1の回折格子(20a)を通過し、前記第1の波長及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波の第4の部分波が伝搬方向を変えずに前記第2の回折格子(20b)を通過し、前記第3の部分波(82a)及び前記第4の部分波が前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)を通り過ぎるように放射されるように、前記第1の波長の前記第1の光波(65、66)及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波(68)を前記第1のホログラフィック素子(1a、1b、1c、1f)の前記少なくとも第1の部分領域(10a、10c、11a、12a、13a、14a)及び第2の部分領域(10b、10d、11b、12b、13b、14b)に照射するステップ(130)、を特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の波長の前記第1の光波(65、66)及び/又は前記第2の波長の前記第1の光波(68)の入射角度(79a)が拡大されるように、前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)が前記第1の感光性物質(70a、70b、70c、70d)に対して回転される、特に傾けられる、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)、特に前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)の前記回折格子が、デジタルに、特に少なくとも1つの空間光変調器を用いて形成、特に照射される、ことを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)、特に前記第1のホログラフィック光学素子(1a、1b、1c、1f)の前記回折格子が、少なくとも第6及び第7の部分領域を備えた少なくとも1つの別の第3のホログラフィック光学素子を用いて特に照射される、ことを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に第2のホログラフィック光学素子を作製するための露光装置に関する。さらに、本発明は第2のホログラフィック光学素子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック光学素子(HOE)は、例えばヘッドアップディスプレイへの適用で知られている。この場合、例えば文献DE102011075884A1に記載されるように、光を偏向させるためにホログラムを車両のインストルメントパネルに配置されていてもよい。この場合、ホログラムの支持体として、例えばガラス体が使用されてもよい。
【0003】
文献DE102017218544A1には、ホログラムを記録するための露光装置が記載されている。この場合、ホログラムは空間光変調器(SLM)を用いてデジタルに生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE102011075884A1
【特許文献2】DE102017218544A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を端緒として、本発明の基礎をなす課題は、複雑な多重波面型HOEの記録を可能にする露光装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、請求項1による、特に第2のホログラフィック光学素子を作製するための露光装置が提示される。加えて、請求項9による第2のホログラフィック素子の作製方法が提示される。
【0007】
特に第2のホログラフィック素子を作製又は記録するように構成されている露光装置は、まず第一に、少なくとも第1の部分領域及び第2の部分領域を備えた少なくとも第1のホログラフィック光学素子を含む。この場合、第1の部分領域は少なくとも第1の回折格子を、第2の部分領域は少なくとも第2の回折格子を有する。この場合、第2の部分領域は、特に第1の部分領域に対して異なる位置に配置されている。特に第1及び第2の部分領域は、隣接して第1のホログラフィック光学素子に配置されている。これに関連して、第1及び第2の部分領域の間にも空き空間が形成されていてもよい。代替的に、第1及び第2の部分領域は、特に部分的に重複するように互いに対して配置されている。露光装置は、特に第1の感光膜として形成されている第1の感光性物質をさらに有する。第1のホログラフィック光学素子及び/又は感光性物質は、特に露光装置の支持基板によって支持される。この支持基板は、特に少なくとも部分的に透明なガラス板である。その他、露光装置は、少なくとも第1の波長の第1の光波を生成するため、及び少なくとも第1の波長の第2の光波を生成するためのライトユニットを有する。第1の波長の光波は、特に赤色光波である。この代替として、ライトユニットは、単色的に少なくとも第2の波長の第1の光波及び少なくとも第2の波長の第2の光波を生成するように構成されている。第2の波長の光波は、特に緑色光波である。この代替として、ライトユニットは、多色的に少なくとも第1の波長及び第2の波長の第1の光波並びに少なくとも第1の波長及び第2の波長の第2の光波を生成するように構成されていてもよい。この場合、第1及び第2の波長の第1の光波とは、特に互いに重なり合い、それによって異なる波長を有する波面を生じさせる第1及び第2の波長の個々の光波のことである。ライトユニットは、例えば、λ=640nmの波長を有する赤色レーザー波を生成するための第1のレーザー生成部と、λ=520nmの波長を有する緑色レーザー波を生成するための第2のレーザー生成部とを含む。ライトユニットは、生成された第1の光波を第1のホログラフィック素子の少なくとも第1及び第2の部分領域に照射するように機能する。この場合、第1の感光性物質は、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1の回折格子によって偏向された第1の波長の第1の光波の第1の部分波と第2の回折格子によって偏向された第1の波長の第1の光波の第2の部分波とが重複するように、第1のホログラフィック光学素子に対して配置されている。この状況は、ライトユニットが単に第1の波長の第1の光波を生成するように構成されている場合にのみ生じる。第1の波長の第1の光波の第1の部分波及び第1の波長の第1の光波の第2の部分波とは、第1及び第2の回折格子によって偏向される光波のことである。すなわち、第1の波長の第1の光波は、偏向によって複数の異なる部分波に分割される。この代替として、第1の感光性物質は、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1の回折格子によって偏向された第2の波長の第1の光波の第1の部分波と第2の回折格子によって偏向された第2の波長の第1の光波の第2の部分波とが重複するように、第1のホログラフィック光学素子に対して配置されている。この状況は、ライトユニットが単に第2の波長の第1の光波を生成するように構成されている場合にのみ生じる。第2の波長の第1の光波の第1の部分波及び第2の波長の第1の光波の第2の部分波とは、第1及び第2の回折格子によって偏向される光波のことである。さらに、この代替として、第1の感光性物質は、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1の回折格子によって偏向された第1の波長及び第2の波長の第1の光波の第1の部分波と第2の回折格子によって偏向された第1の波長及び第2の波長の第1の光波の第2の部分波とが重複するように、第1のホログラフィック光学素子に対して配置されている。この状況は、ライトユニットが第1及び第2の波長の第1の光波を生成するように構成されている場合に生じる。特に、第1の回折格子は第1の波長の第1の光波を偏向するように構成されており、第2の回折格子は第2の波長の第1の光波を意図的に偏向するように構成されている。加えて、ライトユニットは、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1の光波の第1及び第2の部分波が第2の光波と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、生成された第1及び/又は第2の波長の第2の光波を感光性物質に照射するように構成されている。第1及び第2の部分波がそれぞれ同じ波長の第2の光波と干渉することによって、互いに異なる回折格子が第3の部分領域に形成される。したがって、空間(幾何学的)多重化とも呼ばれる、複数のホログラム構造を同時に第2のホログラフィック光学素子の同じ部分領域に形成することが可能になる。加えて、異なる波長の部分波が第3の部分領域の同じ位置で、同様に異なる波長を有する第2の光波と干渉すれば、いわゆるスペクトル多重化も起こり得る。その場合、このように形成された回折格子は、様々な波長/色に対して対応するように有効である。このように発生する様々なホログラム構造は、例えば、再び入射する光を様々な方向に偏向させ、それによって多種多様な視覚機能を発揮することができる。したがって、作製されたホログラムを、ヘッドアップディスプレイ、ホログラムレンズ又はホログラフィックフィルター、及び蛍光診断法(Lab-on-Chip)用の偏向器において使用することができる。
【0008】
好適には、第1のホログラフィック光学素子は透過ホログラムである。これに関連して、第1の感光性物質は、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域、特に前面において、第1の回折格子によって偏向された第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第1の部分波が第2の回折格子によって偏向された第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第2の部分波と重複するように、第1のホログラフィック光学素子に対して配置されている。この場合、ライトユニットは、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1及び第2の部分波が第2の光波と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、生成された第1の波長及び/又は第2の波長の第2の光波を感光性物質の裏面に照射するように構成されている。このように発生する第2のホログラフィック素子は、例えばスマートグラス用の網膜スキャンに適用可能な反射ホログラムとして相応に形成される。感光性物質の第3の部分領域における幾何学的多重化によって光波が同じ位置で様々な方向に偏向され得、それによって、例えばスマートグラスの複数のアイボックスが形成され得る。
【0009】
好ましくは、第1のホログラフィック光学素子は、第4の部分領域及び第5の部分領域をさらに有する。この場合、第4の部分領域は少なくとも第3の回折格子を、第5の部分領域は少なくとも第4の回折格子を有する。これらの部分領域は矩形状に配置されている。特に、これらの部分領域は2×2配列として第1のホログラフィック素子に配置されている。これによって、例えばスマートグラス用の網膜スキャンに関連して、スマートグラス利用者のためにそれぞれ2つの互いに重なり合って配置されたアイボックスを生じさせるという利点が得られる。したがって、スマートグラス利用者のために視界が最大化され得る。
【0010】
好適には、第1及び/又は第2の回折格子のホログラフィック格子、特にホログラフィック格子平面は移動可能に配置されている。つまり、ホログラフィック格子の表面法線は全てが基本的に互いに平行に延びるのではなく、互いに対して位置に依存した角度を有し、ホログラフィック格子が、凹面鏡又はレンズの場合のように、原則的に互いに異なる、特に互いに対して傾斜して配置された平面に配置されている。好ましくは、ホログラフィック格子は、これに関連して、閉鎖的な数学的記述に従う回折特性ではなく、例えば自由曲面光学系のように個々に定義されている回折特性を有する。
【0011】
好ましくは、第1のホログラフィック光学素子は、第1の部分領域内に少なくとも第1のホーゲル及び第2のホーゲルを有する。この場合、ホーゲルとは、例えばSLMを用いてデジタルに第1のホログラフィック光学素子に記録された、個別の明確に定義された部分ホログラムである。この場合、第1のホーゲルは、少なくとも2つの、特に互いに異なる回折格子を有する。同様に、第2のホーゲルは、少なくとも2つの、互いに異なる回折格子を有する。したがって、1つの部分領域が複数の視覚機能を実現し、それによって、例えば、形成された第2のホログラフィック素子において重複する第3の部分領域及び全体として到達可能な角度範囲が拡大されるという可能性が生じる。
【0012】
好適には、第1のホログラフィック素子は、第1の感光性物質とは異なる第2の感光性物質から形成されている。好ましくは、第1の感光性物質は感光性樹脂として、第2の感光性物質はハロゲン化銀として形成されている。したがって、例えば、第1のホログラフィック光学素子は狭い帯域幅を有し得、それによって、形成される第2のホログラフィック光学素子の光学的品質が高められる。第2のホログラフィック光学素子の透明度も上述の材料選択によって高めることができる。好適には、第1のホログラフィック光学素子は、これに関連して、第2の感光性物質の第2の厚さ、特に第2の材料厚とは異なる第1の厚さ、特に第1の材料厚を有する。
【0013】
本発明のさらなる主題は、第2のホログラフィック光学素子の作製方法である。この場合、まず、少なくとも第1の部分領域及び第2の部分領域を有する少なくとも第1のホログラフィック光学素子が準備される。第1の部分領域は少なくとも第1の回折格子を、第2の部分領域は少なくとも第2の回折格子を有する。さらに、第1の感光性物質、特に第1の感光膜が準備される。これに続くステップでは、少なくとも第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波が第1のホログラフィック素子の少なくとも第1及び第2の部分領域に照射される。この場合、第1の感光性物質は、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1の回折格子によって偏向された第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第1の部分波が第2の回折格子によって偏向された第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第2の部分波と重複するように、第1のホログラフィック光学素子に対して配置されている。さらに、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1及び第2の部分波が第2の光波と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、特に先行するステップと同時に、少なくとも第1の波長及び/又は第2の波長の第2の光波が第1の感光性物質に照射される。
【0014】
好適には、第1の回折格子によって偏向された第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第1の部分波が第1の集光領域、特に第1の焦点において交差する。この第1の集光領域、特に第1の焦点は、形成された第2のホログラフィック光学素子を用いた網膜スキャンの際に、スマートグラス利用者の第1の焦点となり得る。好適には、第2の回折格子によって偏向された第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第2の部分波が第2の集光領域、特に焦点において交差する。この第2の集光領域、特に第2の焦点は、形成された第2のホログラフィック光学素子を用いた網膜スキャンの際に、スマートグラス利用者の第2の焦点となり得る。好ましくは、第1の波長の第2の光波は、第3の集光領域、特に焦点へ向かう方向に延びている。全ての集光領域は、第1の感光性物質に対して共通の面、特に前面又は裏面に配置されている。形成された第2のホログラフィック光学素子が第3の集光領域を起点として第2の光波によって照射又は走査されると、スマートグラスに適用するための、2つの並んで配置されたアイボックス及び焦点を備えたHOEが発生する。
【0015】
好ましくは、第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波は、伝搬方向を変えずに第1の回折格子を通過する第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第3の部分波と伝搬方向を変えずに第2の回折格子を通過する第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第4の部分波とが第1の感光性物質を通り過ぎるように照射されるように、第1のホログラフィック素子の少なくとも第1及び第2の部分領域に照射される。この場合、第3及び第4の部分波は、非意図的に回折格子によって偏向されない第1の光波の一部を表す。すなわち、第1及び/又は第2の波長の第1の光波は、偏向によって複数の異なる部分波に分割される。したがって、第1の感光性物質に衝突してそこで第2の光波と干渉する第3及び/又は第4の部分波によって、妨害ホログラムの発生が防止あるいは抑制される。さらにこれに関連して、好ましくは、第1のホログラフィック光学素子は、第1の光波の入射角度が拡大されるように、第1の感光性物質に対して回転される、特に傾けられるように構成されている。この場合、入射角度とは、第1の光波と第1のホログラフィック光学素子の表面との間の角度のことである。入射角度が拡大され、したがって第1の光波が比較的水平に入射することによって、偏向されていない光波の一部が第1の感光性物質を通り過ぎるように照射されることがより確実になる。
【0016】
好ましくは、第1のホログラフィック光学素子、特に第1のホログラフィック光学素子の回折格子はデジタルに形成される。特に、第1のホログラフィック光学素子は、少なくとも1つの空間光変調器を用いて照射される。デジタルホログラフィーは、一般に空間光変調器(SLM)による変調を用いた適応可能な記録波面によって、その多用途性において大きな利点を有している。これは、記録波面の変調によって様々な記録状況を実現することができるからである。この場合、少なくとも1つの光路における少なくとも1つのSLMは、複数の位相面の重畳が可能となるように操作されてもよい。これは、複数の見かけの光源を同時に形成することと同等であり、これによって到達可能な角度範囲を拡大することができる。また、HOEの同時のデジタル記録によって、時系列の記録より高い総合効率が達成される。その上、時系列の記録と比べてHOEに発生する妨害因子が少ない。この代替として、第1のホログラフィック光学素子、特に第1のホログラフィック光学素子の回折格子は、少なくとも第6及び第7の部分領域を備えた少なくとも1つの別の第3のホログラフィック光学素子によって形成される。この場合、第6及び第7の部分領域は、特に複数の互いに異なる回折格子を備えているので、入射光を複数の異なる方向に偏向させることができる。このような複数のステップからなるプロセスによって、例えば、第1のステップにおいて幾何学的多重化が可能になる。次に、この幾何学的多重化が目標波長のそれぞれについて行われる。第2のステップでは、このように形成された補助HOEを使用することによって、さらに目標HOEにおけるスペクトル多重化も行われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1のホログラフィック光学素子を示す図である。
図2図2aは第1のホログラフィック光学素子の第2の実施形態の記録を示す図である。図2bは露光装置の第1の実施形態を示す図である。
図3図3aは第1のホログラフィック光学素子の第3の実施形態の記録を示す図である。図3bは露光装置の第2の実施形態を示す図である。
図4】第1のホログラフィック光学素子の第4の実施形態の記録を示す図である。
図5】第1のホログラフィック光学素子の第5の実施形態の記録を示す図である。
図6a】第1のホログラフィック光学素子の第6の実施形態の記録を示す図である。
図6b】露光装置の第3の実施形態を示す図である。
図7】露光装置の第4の実施形態を示す図である。
図8】第2のホログラフィック光学素子の作製方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、第1のホログラフィック光学素子1aの第1の実施形態の断面図としての側面図で概略的に示す。この場合、第1のホログラフィック光学素子1aは、第1の部分領域10a及び第2の部分領域10bを有する。この場合、第1の部分領域10aは第1の回折格子20aを、第2の部分領域10bは第2の回折格子20bを有する。それぞれの部分領域10a、10bは、第1のホログラフィック光学素子1aのこの第1の実施形態では複数のホーゲル30を備えている。各ホーゲル30もさらに少なくとも1つの回折格子を有する。この場合、回折格子は特に第1及び/又は第2の回折格子20a又は20bである。この場合、ホーゲル30は、例えばSLMを用いてデジタルに第1のホログラフィック光学素子1aに記録された、個別の明確に定義された部分ホログラムを表す。
【0019】
第1及び/又は第2の回折格子は、特にホログラフィック格子平面として形成されているホログラフィック格子を有する。これらの格子は移動可能に配置されていてもよい。つまり、ホログラフィック格子のここでは不図示の表面法線が特に互いに対して位置に依存した角度を有する。言い換えれば、各格子が異なる主面上を有する。ホログラフィック格子は、これに関連して、閉鎖的な数学的記述に従う回折特性ではなく、例えば自由曲面光学系のように個々に定義される回折特性を有してもよい。
【0020】
図2aは、第1のホログラフィック光学素子の第2の実施形態の記録を概略的に側面図で示す。この場合、第2の感光性物質7aの第1の部分領域10cが同時に第1の波長の第1の光波50bと第1の波長の第4の光波50aとによって照射される。第1の波長の第1の光波50bは水平方向40bに第2の感光性物質7aの表面に照射され、第1の波長の第4の光波50aは傾斜方向40aに第2の感光性物質7aの表面に照射される。この場合、第2の感光性物質7aは、ここでは不図示の第1の透明な支持基板によって支持される第2の感光膜である。両方の光波50a、50bは、光波50a、50bが干渉し、透過性の第1の回折格子が第1の部分領域10cに形成されるように、第2の感光性物質7aの前面から第1の部分領域10cに照射される。これに続くステップでは、第2の感光性物質7aの第2の部分領域10dが同時に第1の波長の第1の光波50dと第1の波長の第4の光波50cとによって照射される。第1の波長の第1の光波50dは水平方向40dに第2の感光性物質7aの表面に照射され、第1の波長の第4の光波50cは傾斜方向40cに第2の感光性物質7aの表面に照射される。ここでも、両方の光波50c、50dは、光波50c、50dが干渉し、透過性の第2の回折格子が第2の部分領域10dに形成されるように、第2の感光性物質7aの前面から第2の部分領域10dに照射される。
【0021】
この第1の実施例では、形成された第1のホログラフィック光学素子は、ずらされた平面に、したがってこの図には示されていない、第3の回折格子を備えた第4の部分領域及び第4の回折格子を備えた第5の部分領域をさらに備えている。4つの部分領域は第2の感光性物質7aの表面に矩形状に、特に2×2配列として間隔を空けて配置されている。
【0022】
図2bは、先の図2aで記録されていた第1のホログラフィック光学素子1bを含む露光装置8aの第1の実施形態を示す。露光装置8aは、ここでは第1の感光膜として形成されている第1の感光性物質70aをさらに含む。この場合、第1の感光膜は、ここでは不図示の第2の透明な支持基板によって支持される。露光装置8aは、少なくとも第1の波長の第1の光波65及び第1の波長の第2の光波85を生成するためのライトユニット100をさらに有する。ライトユニット100は、第1の光波65を第1のホログラフィック光学素子1bの第1及び第2の部分領域10c、10dに照射するように構成されている。第1の光波65は、本実施形態では、水平方向60に第1及び第2の部分領域10c、10dに照射される。この場合、第1のホログラフィック光学素子1b及び第1の感光性物質70aは、基本的に互いに平行に配置されている。第1の感光性物質70aは、第1の感光性物質70aの第3の部分領域90において、第1の回折格子によって偏向された第1の波長の第1の光波65の第1の部分波71aと第2の回折格子によって偏向された第1の波長の第1の光波65の第2の部分波71bとが重複するように、第1のホログラフィック光学素子1bに対して配置されている。ライトユニット100はさらに、第1の感光性物質70aの第3の部分領域90において、第1の光波65の第1及び第2の部分波71a、71bが第2の光波85と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、生成された第1の波長の第2の光波85を第1の感光性物質70aに照射するように構成されている。
【0023】
露光装置8aのこの第1の実施例では、第1の感光性物質70aは、第1の感光性物質の前面9aの第3の部分領域90において、第1の回折格子によって偏向された第1の波長の第1の光波65の第1の部分波71aと第2の回折格子によって偏向された第1の波長の第1の光波65の第2の部分波71bとが重複するように、第1のホログラフィック光学素子1bに対して配置されている。ライトユニット100はここでも、第1の感光性物質70aの第3の部分領域90において、第1及び第2の部分波71a、71bが第2の光波85と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、生成された第1の波長の第2の光波85を第1の感光性物質70aの裏面9bに照射するように構成されている。この場合、形成された第2のホログラフィック光学素子は反射ホログラムとして形成されている。
【0024】
これに対して、第3の部分領域90に隣接する部分領域95a、95bでは、部分波71a、71bの重複が生じず、部分領域95aでは単に部分波71aが第2の光波85と干渉し、部分領域95bでは単に部分波71bが第2の光波85と干渉する。
【0025】
本実施例では、第1のホログラフィック光学素子1bは、第1の感光性物質70aとは異なる第2の感光性物質7aから形成されている。特に、第1の感光性物質70aは感光性樹脂として、第2の感光性物質7aはハロゲン化銀として形成されている。
【0026】
光強度が大きく低減されたさらなる第3及び第4の部分波75a、75bは、第1及び第2の部分領域10c、10dの回折格子を非意図に伝搬方向を変えずに通過する。
第1の波長の第1の光波65は、第1の波長の第1の光波65の第1の部分波71aが第1の集光領域88a、特に第1の焦点において交差するように第1の回折格子によって偏向される。さらに、第1の波長の第1の光波65は、第1の波長の第1の光波65の第2の部分波71bが第2の集光領域88b、特に第1の焦点において交差するように第2の回折格子によって偏向される。本実施例では、第1の波長の第2の光波85は、第2の光波85が実質的に第3の集光領域37a、特に焦点へ向かう方向80に延びるように、ライトユニット100によって第1の感光性物質70aの表面に照射される。集光領域37a、71a、71bは全て第1の感光性物質の前面9aへ向かう方向に向けられている。形成が完了した第2のホログラフィック光学素子をスマートグラスの一方のレンズ上に配置して第3の集光領域37aを起点として網膜スキャンによって走査すれば、第1及び第2の部分領域10c、10dの領域にスマートグラス利用者のための焦点88a、88bを有する2つのアイボックスが生じるであろう。2×2配列の配置によって合計4つのアイボックスさえ生じるであろう。
【0027】
図3aは、第1のホログラフィック光学素子の第3の実施形態の記録を概略的に側面図で示す。この場合、第2の感光性物質7bの2つの部分領域11a、11bが、図2aの実施形態とは異なり、複数の異なる波長の光波によって照射される。第1の部分領域11aが第1の波長の別の光波51b及び第1の波長の別の光波51aで照射される一方、第2の部分領域はそれに続いて第2の波長の別の光波51d及び第2の波長の別の光波51cで照射される。第1の波長の光波は特に赤色光波であり、第2の波長の光波は特に青色光波である。
【0028】
図3bは、図3aに記録された第1のホログラフィック光学素子1cが使用される露光装置8bの第2の実施形態を概略的に示す。図3aの実施形態とは異なり、第1のホログラフィック光学素子1cの第1及び第2の部分領域11a、11bは、ライトユニット101によって同時に第1の波長及び第2の波長の第1の光波68によって水平方向62に照射される。第1の感光性物質70bは、第1の感光性物質70bの少なくとも第3の部分領域91において、第1の回折格子によって偏向された第1の波長及び第2の波長の第1の光波の第1の部分波72aが第2の回折格子によって偏向された第1の波長及び第2の波長の第1の光波の第2の部分波72bと重複するように、第1のホログラフィック光学素子1cに対して配置されている。ライトユニット101は、第1の感光性物質70bの第3の部分領域91において、第1の光波の第1の部分波72a及び第2の部分波72bが第2の光波86と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、生成された第1及び第2の波長の第2の光波86を第1の感光性物質70bに照射するように構成されている。したがって、第3の部分領域91では、スペクトル多重化とも呼ばれる幾何学的多重化が生じる。
【0029】
第3の部分領域91に隣接する部分領域96aでは、単に第1の部分波72aが第2の光波86と干渉する。第3の部分領域91に隣接するさらなる部分領域96bでは、単に第2の部分波72aが第2の光波86と干渉する。
【0030】
光強度が大きく低減されたさらなる部分波56a、56bは、第1及び第2の部分領域11a、11bの回折格子を非意図的に伝搬方向を変えずに通過する。
図4は、第1のホログラフィック光学素子の第4の実施形態の記録を概略的に側面図で示す。この場合、これまでの実施形態とは異なり、第2の感光性物質7eの部分領域12aが第1の時点において、それぞれ方向42a、42bからの第1の波長の別の光波52b及び第1の波長の別の光波52aによって照射される。したがって、ここでは不図示の第1の回折格子が第1の部分領域12aの第1のホーゲル31に形成される。第1の時点に続く第2の時点において、第1の部分領域12aが再びそれぞれ方向42c、42dからの第1の波長の別の光波52b及び第1の波長の別の光波52aによって照射される。したがって、ここでは不図示の第6の回折格子が第1の部分領域12aの第1のホーゲル31に隣接する第2のホーゲル32に形成される。このように形成された隣接するホーゲル31、32の異なる回折格子によって、形成が完了した第1のホログラフィック光学素子を用いて到達可能な角度範囲が広げられ得る。
【0031】
図5は、第1のホログラフィック光学素子の記録のさらなる可能性を概略的に示す。この場合、ここでは感光膜として形成されている第2の感光性物質7cの第1の部分領域13aが同時に第1の波長の複数の光波によって照射される。この場合、第1の時点において、第1の部分領域13aが、水平方向43bからの第1の波長の別の光波53b及び傾斜方向43aからの第1の波長の別の光波53aによって照射される。これらの光波53a、53bは第2の感光性物質7cの表面上で水平方向43cからの第1の波長の別の光波53cと干渉する。したがって、同時に複数の異なる回折格子が第1の部分領域13aに形成される。特に、これによって、個々のホーゲルも複数の異なる回折格子を有し得る。
【0032】
さらに、第2の感光性物質7cの第2の部分領域13bが同時に第1の波長の複数の光波によって照射される。この場合、第1の時点に続く第2の時点において、第2の部分領域13bが、水平方向43eからの第1の波長の第16の光波53e及び傾斜方向43dからの第1の波長の別の光波53dによって照射される。これらの光波53d、53eは第2の感光性物質7cの表面上で水平方向43fからの第1の波長の別の光波53fと干渉する。
【0033】
図6aは、第1のホログラフィック光学素子の形成の別の実施形態を概略的に断面図で示す。この場合、第1の時点において、第2の感光性物質7dが、傾斜方向44cから第1の波長の別の光波54cによって照射され、第1の部分領域14aにおいて、対向する傾斜方向44aから第2の感光性物質7dの表面に入射する第1の波長の別の光波54aとの干渉が生じる。したがって、第1の回折格子を備えた第1のホーゲル33が形成される。第1の時点に続く第2の時点において、第1の部分領域14aがさらに傾斜方向44dから第1の波長の別の光波54dによって照射される。この場合、方向44c、44dは互いに平行に延びている。第1の部分領域14aでは、別の光波54dが、対向する傾斜方向54bから第2の感光性物質7dの表面に入射する第1の波長の別の光波54bと干渉する。したがって、第1のホーゲル33に隣接する、別の回折格子を備えた第2のホーゲル34が形成される。
【0034】
図6bには、図6aの形成が完了した第1のホログラフィック光学素子1fが使用される露光装置8cの別の実施形態が示されている。この場合、第1のホログラフィック光学素子1fの第1の部分領域14a及び第2の部分領域14bは傾斜方向63からの第1の波長の第1の光波66によって照射される。この場合、入射する第1の波長の第1の光波の方向63は第1のホログラフィック光学素子の記録方向44c、44dに対応する。したがって、非意図的に伝搬方向を変えずに部分領域14a、14bを通過する第1の波長の第1の光波の第3及び第4の部分波82aは、ここでは第1のホログラフィック光学素子70cに対して平行に配置されている第1の感光性物質70cを通り過ぎるように放射される。これによって、第1の感光性物質70c上に妨害ホログラムが形成されることが防止される。
【0035】
さらにここでも、第1の感光性物質70cは、第1の感光性物質70cの第3の部分領域93aにおいて、第1の回折格子によって偏向された第1の波長の第1の光波の第1の部分波77aと第2の回折格子によって偏向された第1の波長の第1の光波の第2の部分波78aと重複するように、第1のホログラフィック光学素子1fに対して配置されている。ここでは不図示のライトユニットは、第1の感光性物質70cの第3の部分領域93aにおいて、第1の光波の第1及び第2の部分波77a、78aが第2の光波84と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、第1の波長の第2の光線84を傾斜方向83から第1の感光性物質70cに照射するように構成されている。
【0036】
図7は、露光装置8dの第4の実施形態を概略的に断面図で示す。この場合、図6bの実施形態とは異なり、第1のホログラフィック光学素子1fは、第1の波長の第1の光波66の入射角度79aが図6bと比べて拡大されるように、第1の感光性物質70dに対して回転され、特に傾けられている。第1のホログラフィック光学素子1fがこのように反時計回りに回転されることによって、第1の波長の第1の光波66の入射角度79a、及び第1の部分波77a及び第2の部分波78aの反射角度又は入射角度79bも同様に大きくすることができる。したがって、入射する第1の波長の光波66の直径が偏向時に追加的に拡大又は縮小されることがない。その上、第1の光学要素の収差が低減される。
【0037】
図8は第2のホログラフィック光学素子の作製方法をフローチャートの形で示す。この場合、まずステップ110において少なくとも第1のホログラフィック光学素子が準備される。この場合、第1のホログラフィック光学素子は少なくとも第1の部分領域及び第2の部分領域を有する。第1の部分領域は少なくとも第1の回折格子を、第2の部分領域は少なくとも第2の回折格子を有する。第1のホログラフィック光学素子は特にデジタルに形成される。このために、第1のホログラフィック光学素子の第2の感光性物質を照射し、それによって第1のホログラフィック光学素子の回折格子を形成する少なくとも1つの空間光変調器が使用される。この他の選択肢として、特に第1のホログラフィック光学素子が、少なくとも第6及び第7の部分領域を備えた少なくとも1つの別の第3のホログラフィック光学素子によって形成される。
【0038】
ステップ110に続くステップ120において、感光性物質、特に感光膜が準備される。ステップ120に続くステップ150において、少なくとも第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波が、ライトユニットを用いて第1のホログラフィック素子の少なくとも第1及び第2の部分領域に照射される。この場合、感光性物質は、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1の回折格子によって偏向された第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第1の部分波が第2の回折格子によって偏向された第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第2の部分波と重複するように、第1のホログラフィック光学素子に対して配置されている。特にステップ150と同時に行われる後続のステップ160において、第1の感光性物質の少なくとも第3の部分領域において、第1及び第2の部分波が第2の光波と干渉することによって第2のホログラフィック光学素子が形成されるように、少なくとも第1の波長及び/又は第2の波長の第2の光波が感光性物質に照射される。
【0039】
ステップ120に続く任意的なステップ130では、伝搬方向を変えずに第1の回折格子を通過する第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第3の部分波と、伝搬方向を変えずに第2の回折格子を通過する第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波の第4の部分波とが感光性物質を通り過ぎるように照射されるように、第1の波長及び/又は第2の波長の第1の光波が第1のホログラフィック素子の第1及び第2の部分領域に照射される。ステップ130に続くさらなる任意的なステップ140では、第1の光波の入射角度が拡大されるように第1のホログラフィック光学素子が感光性物質に対して回転される、特に傾けられる。
【符号の説明】
【0040】
1a、1b、1c、1f 第1/第2のホログラフィック光学素子
8a、8b、8c、8d 露光装置
10a、10c、11a、12a、13a、14a 第1の部分領域
10b、10d、11b、12b、13b、14b 第2の部分領域
20a 第1の回折格子
20b 第2の回折格子
65、66 第1の波長の第1の光波
84、85 第1の波長の第2の光波
68 第2の波長の第1の光波
86 第2の波長の第2の光波
70a、70b、70c、70d 第1の感光性物質
71a、72a、77a 第1の部分波
71b、72b、78a 第2の部分波
90、91、93a 第3の部分領域
100、101 ライトユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
【外国語明細書】