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特開2022-176148固形化粧料及び固形化粧料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176148
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】固形化粧料及び固形化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20221117BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20221117BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/04
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078068
(22)【出願日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2021081079
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】篠田 知明
(72)【発明者】
【氏名】江澤 あやめ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB152
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB322
4C083AB362
4C083AB372
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC662
4C083AC792
4C083AC812
4C083AC842
4C083AC852
4C083AC862
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD492
4C083AD662
4C083BB21
4C083BB26
4C083CC11
4C083CC13
4C083CC14
4C083DD11
4C083DD21
4C083DD28
4C083DD30
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】従来にない特徴的な外観を有する固形化粧料を提供すること。
【解決手段】本発明は、表面の面積の40%以上が、光輝性粉体が付着された粗面であり、前記粗面が、溝部と、前記溝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されており、前記面状部の平均面積が、80,000μm以下であり、且つ、前記光輝性粉体の平均粒径が、50μm以上300μm以下である、固形化粧料を提供する。また、本発明は、成形型によって形成された粗面を有する成形品の、前記粗面に光輝性粉体を付着させることを含む、固形化粧料の製造方法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の面積の40%以上が、光輝性粉体が付着された粗面であり、
前記粗面が、溝部と、前記溝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されており、
前記面状部の平均面積が、80,000μm以下であり、且つ、
前記光輝性粉体の平均粒径が、50μm以上300μm以下である、
固形化粧料。
【請求項2】
前記多数の面状部が、規則的又は不規則的に配置されている、請求項1に記載の固形化粧料。
【請求項3】
前記面状部の形状が、幾何学的形状又は不規則形状である、請求項1又は2に記載の固形化粧料。
【請求項4】
前記溝部の深さが、10μm以上400μm以下である、請求項1又は2に記載の固形化粧料。
【請求項5】
前記溝部の幅が、10μm以上400μm以下である、請求項1又は2に記載の固形化粧料。
【請求項6】
前記溝部の深さに対する、前記光輝性粉体の平均粒径の比が、0.40以上1.60以下である、請求項1又は2に記載の固形化粧料。
【請求項7】
前記固形化粧料が、油性固形化粧料である、請求項1又は2に記載の固形化粧料。
【請求項8】
成形型によって形成された粗面を有する成形品の、前記粗面に光輝性粉体を付着させることを含み、
前記成形型において、
成形材料と接する面の面積の40%以上が粗面であり、
前記成形型の前記粗面が、畝部と、前記畝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されており、
前記面状部の平均面積が、80,000μm以下であり、且つ、
前記光輝性粉体の平均粒径が、50μm以上300μm以下である、
固形化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化粧料及び固形化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光沢を有する粉体を用いて固形化粧料の外観に特徴をもたせる技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、パール光沢を有する粉体の1種又は2種以上が表面に固着していることを特徴とする油性固形化粧料が記載されている。当該油性固形化粧料は、外観が独特の光沢を有しアイキャッチ効果に優れる旨が開示されている。特許文献2には、シラン化合物又はシラザン化合物で表面処理した光沢を呈する粉末を含有する、固形化粧料の表面を加飾するための加飾用粉末組成物が記載されている。当該加飾用粉末組成物は、光沢を呈する粉末により表面を美麗な外観に装飾した固形化粧料を得るための加飾用粉末組成物である旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-212719号公報
【特許文献2】国際公開第2017/073263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり光沢を有する粉体を用いて固形化粧料の外観に特徴をもたせる技術は種々提案されている。しかしながら、固形化粧料の外観に新しい特徴を付与できる技術が求められている。
そこで、本発明は、従来にない特徴的な外観を有する固形化粧料を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
表面の面積の40%以上が、光輝性粉体が付着された粗面であり、
前記粗面が、溝部と、前記溝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されており、
前記面状部の平均面積が、80,000μm以下であり、且つ、
前記光輝性粉体の平均粒径が、50μm以上300μm以下である、
固形化粧料を提供する。
前記多数の面状部は、規則的又は不規則的に配置されていてよい。
前記面状部の形状は、幾何学的形状又は不規則形状であってよい。
前記溝部の深さは、10μm以上400μm以下であってよい。
前記溝部の幅は、10μm以上400μm以下であってよい。
前記溝部の深さに対する、前記光輝性粉体の平均粒径の比は、0.40以上1.60以下であってよい。
前記固形化粧料は、油性固形化粧料であってよい。
また、本発明は、
成形型によって形成された粗面を有する成形品の、前記粗面に光輝性粉体を付着させることを含み、
前記成形型において、
成形材料と接する面の面積の40%以上が粗面であり、
前記成形型の前記粗面が、畝部と、前記畝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されており、
前記面状部の平均面積が、80,000μm以下であり、且つ、
前記光輝性粉体の平均粒径が、50μm以上300μm以下である、
固形化粧料の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、従来にない特徴的な外観を有する固形化粧料が提供される。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】固形化粧料の一例であるスティック状口紅を示す外観写真である。
図2】粗面の形態が格子である場合の溝部と面状部とを示す模式図である。
図3】形態がランダムである粗面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0009】
<1.本発明の概要>
【0010】
光輝性粉体が表面に付着された従来の固形化粧料の中には、平滑な表面に光輝性粉体が一様に付着され、金属の表面のように一様な光沢感を呈するものが存在する。このような金属光沢感に変化を加えるために、光輝性粉体の付着量又はサイズを調整した従来品も存在する。本発明者らは、これらのような従来の固形化粧料とは異なる特徴的な外観を有する固形化粧料を得るために、検討を行った。その結果、本発明者らは、光輝性粉体が付着された特定の粗面を有し、当該光輝性粉体の平均粒径が特定の数値範囲内である固形化粧料が、従来にない特徴的な外観を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
上記固形化粧料は、上記粗面を有することにより、表面に凹凸を有するウール生地のような、独特なふんわり感のある外観を呈する。また、上記固形化粧料において、上記光輝性粉体は粗面に付着されているため、平滑面に付着されている場合と比較して多様な向きで当該粗面上に存在している。そのため、当該粗面上の光輝性粉体は、様々な方向から光を受けて輝きを放つ。これにより、上記固形化粧料は、独特の煌びやかな外観を呈する。本発明に係る固形化粧料が呈するこれらの特徴的な外観は、従来品にない、新規な外観である。また、本発明に係る固形化粧料は、化粧料として許容されうる外観審美性を有するものである。すなわち、当該固形化粧料が呈する上記特徴的な外観は、審美性の喪失を招くものではない。なお、本明細書において「外観審美性」とは、人が見て感じる外観の美しさを意味する。
【0012】
図1は、本発明に係る固形化粧料の一例であるスティック状口紅を示す外観写真である。図1において、Aは上記粗面の部分を示し、Bは上記粗面以外の部分を示す。Aの部分は、粗面が凹凸のあるウール生地のような独特のふんわり感を呈しており、且つ、光輝性粉体が独特の煌びやかな輝きを放っている。一方、Bの部分は、光輝性粉体が一様に付着されており、金属光沢感が強い。
【0013】
以下、本発明に係る固形化粧料、及び本発明に係る固形化粧料の製造方法について、詳細に説明する。
【0014】
<2.固形化粧料>
【0015】
(1)表面形状
【0016】
本発明の一実施形態に係る固形化粧料は、表面の面積の40%以上が、光輝性粉体が付着された粗面である。すなわち、当該固形化粧料の表面において当該粗面の面積割合は40%以上である。粗面の面積割合が40%未満であると、従来品にない特徴的な外観を呈することが難しい場合がある。
【0017】
上記固形化粧料において、上記表面の面積の、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、90%以上、又は100%が、上記粗面である。すなわち、上記表面において、上記粗面の面積割合は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、90%以上、又は100%である。粗面の面積割合が高いことによって、固形化粧料の外観審美性が向上されうる。
【0018】
上記固形化粧料において、上記粗面の面積割合が100%未満である場合、粗面以外の部分の表面の形態は、特に限定されない。例えば、当該粗面以外の表面は、平滑面であってもよく、凹凸を備える面であってもよい。例えば、当該粗面以外の表面に、光輝性粉体が付着されていてもよく、付着されていなくてもよい。
【0019】
本実施形態の固形化粧料において、上記粗面は、溝部と、当該溝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されている。以下、溝部及び面状部について順に説明する。
【0020】
(1-1)溝部
【0021】
溝部は、上記固形化粧料の粗面に存在する細長いくぼみである。溝部の幅方向の断面形状は、例えば、矩形状、台形状、U字状、又はV字状などであってよく、好ましくは矩形状である。
【0022】
溝部の深さの下限値は、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらにより好ましくは50μm以上、特に好ましくは80μm以上である。溝部の深さの上限値は、好ましくは400μm以下、より好ましくは350μm以下、さらにより好ましくは300μm以下、特に好ましくは250μm以下、200μm以下、又は150μm以下である。このように溝部の深さが過度に深くないことによって、光輝性粉体全体が溝部の内側に入り込んで光輝性粉体の輝きが視認されにくくなることを防止できる。そのため、溝部の深さの上限値がこのような数値範囲であることは、外観の煌びやかさの向上に寄与しうる。
【0023】
上記溝部の深さの数値範囲の好ましい上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよい。溝部の深さは、好ましくは10μm以上400μm以下、より好ましくは30μm以上350μm以下、さらにより好ましくは50μm以上300μm以下、特に好ましくは50μm以上250μm以下、50μm以上200μm以下、50μm以上150μm以下、又は80μm以上150μm以下である。
【0024】
上記溝部の深さは、溝部における開口部から溝部の最深部の深さまでの距離である。当該溝部の深さは、固形化粧料の表面に形成された粗面中の溝部の深さを測定して得られた値でありうる。下記「3.固形化粧料の製造方法」において説明するように、固形化粧料が成形型によって形成されたものであり、固形化粧料の溝部が当該成形型の畝部によって形成されたものである場合、固形化粧料の溝部の深さは、当該成形型の畝部の高さを測定して得られた値であってもよい。
【0025】
溝部の幅の下限値は、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらにより好ましくは50μm以上、特に好ましくは80μm以上である。溝部の幅の上限値は、好ましくは400μm以下、より好ましくは350μm以下、さらにより好ましくは300μm以下、特に好ましくは250μm以下、200μm以下、又は150μm以下である。このように溝部の幅が過度に広くないことによって、粗面の表面があらくなり過ぎることを防止できる。そのため、溝部の幅の上限値がこのような数値範囲であることは、凹凸のあるウール生地のような独特なふんわり感を呈する外観をより好ましいものとすることに寄与しうる。
【0026】
上記溝部の幅の数値範囲の好ましい上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよい。溝部の深さは、好ましくは10μm以上400μm以下、より好ましくは30μm以上350μm以下、さらにより好ましくは50μm以上300μm以下、特に好ましくは50μm以上250μm以下、50μm以上200μm以下、50μm以上150μm以下、又は80μm以上150μm以下である。
【0027】
上記溝部の幅は、溝部における幅方向に沿った最大の長さである。当該溝部の幅は、固形化粧料の表面に形成された粗面中の溝部の幅を測定して得られた値でありうる。下記「3.固形化粧料の製造方法」において説明するように、固形化粧料が成形型によって形成されたものであり、固形化粧料の溝部が当該成形型の畝部によって形成されたものである場合、固形化粧料の溝部の幅は、当該成形型の畝部の幅を測定して得られた値であってもよい。固形化粧料の溝部の幅又は成形型の畝部の幅は、例えば、マイクロスコープを用いて溝部又は畝部の画像を撮影し、画像解析ソフト(例えばイメージJ)を用いて当該画像を解析することによって測定されうる。
【0028】
(1-2)面状部
【0029】
上記粗面において、面状部は、上記溝部によって囲まれた部分である。当該面状部は、面状の部分を有していればよい。当該面状部は、例えば、平面状、傾斜面状、曲面状(例えば円弧面状及び湾曲面状)、又は波面形状などであってよく、製造容易性の観点からは好ましくは平面状である。
【0030】
上記面状部の形状は、好ましくは幾何学的形状又は不規則形状である。当該幾何学的形状は、より好ましくは矩形状、さらにより好ましくは正方形状である。なお、本明細書において「面状部の形状」とは、面状部の面の真上から見た場合の形状を意味する。本明細書において「幾何学的形状」とは、幾何学的な形状用語、又は形態比喩によって表される形状を意味する。幾何学的な形状用語によって表される形状としては、例えば、円形状、楕円形状、半円形状、三角形状、正三角形状、二等辺三角形状、直角三角形状、正方形状、矩形状、台形状、平行四辺形状、ひし形状、五角形状、及び六角形状などが挙げられるが、これらに限定されない。形態比喩によって表される形状としては、例えば、星形状、ハート形状、及び三日月形状などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において「不規則形状」とは、上記幾何学的形状に該当しない形状を意味する。
【0031】
上記で述べたとおり、上記粗面は、溝部と、当該溝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されている。粗面を形成する多数の面状部は、全て同一形状であってもよく、一部又は全部が異なる形状であってもよい。すなわち、当該多数の面状部は、様々な形態であってよい。当該形態としては、例えば、全て正方形状からなるもの、正方形状と円形状とからなるもの、正方形状と不規則形状とからなるもの、及び、正方形状と円形状と不規則形状とからなるもの、などが挙げられるが、これらに限定されない。当該多数の面状部は、好ましくは、全て同一の幾何学的形状、又は全て不規則形状である。これにより、外観審美性がより良好な固形化粧料が得られうる。上記多数の面状部が全て不規則形状である場合、当該全ての不規則形状は、全て同一の不規則形状であってもよいが、好ましくは一部又は全部が異なる不規則形状である。
【0032】
上記多数の面状部は、好ましくは、規則的又は不規則的に配置されている。当該多数の面状部が幾何学的形状の面状部を含む場合、当該幾何学的形状の面状部は、好ましくは規則的に配置されている。当該多数の面状部が不規則形状の面状部を含む場合、当該不規則形状の面状部は、好ましくは不規則的に配置されている。より好ましい実施形態において、当該多数の面状部は、全て同一の幾何学的形状であり且つ全て規則的に配置されている。また、より好ましい実施形態において、当該多数の面状部は、全て不規則形状であり且つ全て不規則的に配置されている。面状部の形状と配置がこのような組合せであることにより、外観審美性がより良好な固形化粧料が得られうる。
【0033】
本実施形態の固形化粧料において、上記面状部の平均面積は、80,000μm以下である。面状部の平均面積が80,000μm超であると、凹凸のあるウール生地のような独特なふんわり感のある外観を呈することが困難な場合ある。面状部の平均面積の上限値は、好ましくは60,000μm以下、より好ましくは40,000μm以下、さらにより好ましくは30,000μm以下、特に好ましくは25,000μm以下である。外観審美性がより良好な固形化粧料を得るために、このような平均面積が好ましい。面状部の平均面積の下限値は、好ましくは2500μm以上、より好ましくは5000μm以上、さらにより好ましくは10,000μm以上、特に好ましくは15,000μm以上、又は20,000μm以上である。面状部の平均面積がこのような数値範囲であることによって、面状部に付着される光輝性粉体の量の調整が容易になり、光輝性粉体が適度に付着した固形化粧料が得られ易くなる。
【0034】
上記面状部の平均面積は、10個の面状部の面積の平均値、すなわち10個の面状部の面積を算術平均した値でありうる。固形化粧料における1個の面状部の面積は、固形化粧料の面状部に関する情報(例えば、一辺の長さ、半径、及び角度など)を用いて算出されうる。下記「3.固形化粧料の製造方法」において説明するように、固形化粧料が成形型によって形成されたものであり、固形化粧料の面状部が当該成形型の面状部によって形成されたものである場合、上記固形化粧料における1個の面状部の面積は、成形型の面状部に関する情報(例えば、一辺の長さ、半径、及び角度など)を用いて算出されてもよい。面状部に関する情報から面積を算出することが困難である場合(例えば、面状部の形状が複雑である場合)、1個の面状部の面積は、画像解析ソフトを用いて算出されてよい。画像解析ソフトを用いた面積の算出、及び平均面積の算出は、具体的には次の手順によって行われうる。まず、固形化粧料又は成形型における1個又は複数個の面状部を、マイクロスコープによって撮影し、当該面状部の画像を取得する。次に、画像解析ソフト(例えばイメージJ)を用いて、当該画像中の1個の面状部を図形で囲み、囲んだ部分のピクセル数から1個の面状部の面積を算出する。同様にして合計10個の面状部について面積を算出し、これらの面積の値を算術平均する。これにより、面状部の平均面積が算出される。
【0035】
上記面状部の周縁部(面状部の面を真上から見た場合における面状部と溝部との境界)を構成する線分の長さは、上記面状部の平均面積が80,000μm以下となるように、当業者により適宜調整されてよい。例えば、多数の面状部の形状が全て同一の正方形状である場合、当該面状部の周縁部を構成する線分の一辺(すなわち正方形の一辺)の長さは、約282.8μm以下となるように調整されてよい。
【0036】
(2)光輝性粉体
【0037】
本実施形態の固形化粧料において、上記粗面には光輝性粉体が付着されている。当該光輝性粉体の表面は、例えば着色剤によって被覆されていてよい。すなわち、当該光輝性粉体は、例えば、表面が着色剤によって被覆されている、着色剤被覆光輝性粉体であってよい。
【0038】
上記光輝性粉体(着色剤被覆光輝性粉体を含む)は、表面が光を受けることによって輝く粉体であり、当技術分野において既知の粉体であってよい。当該光輝性粉体(着色剤被覆光輝性粉体を含む)としては、例えば、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄・黒酸化鉄被覆雲母チタン、コンジョウ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン被覆雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、金属末被覆雲母チタン、金属末被覆合成金雲母、ガラス末、酸化チタン被覆ガラスフレーク、金属末被覆ガラス末、アルミニウムフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、酸化鉄・シリカ被覆アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ゴニオクロマティック光沢顔料、魚鱗箔、金粉、及び銀粉などが挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態の固形化粧料において用いられる光輝性粉体は、上記既知の光輝性粉体のうちの1つ又は2つ以上の組合せであってよい。
【0039】
上記光輝性粉体の形状は、既知の形状であってよく、例えば、薄片状、球状、紡錘形状、又は針状などであってよい。当該光輝性粉体の形状は、好ましくは薄片状である。これにより、より煌びやかな外観を呈する固形化粧料が得られうる。
【0040】
上記光輝性粉体の平均粒径は、50μm以上300μm以下である。光輝性粉体の平均粒径が50μm未満であると、独特の煌びやかな外観が得られにくい場合がある。光輝性粉体の平均粒径が300μm超であると、外観審美性が非常に悪くなる場合がある。光輝性粉体の平均粒径の下限値は、好ましくは60μm以上、より好ましくは70μm以上である。光輝性粉体の平均粒径の上限値は、好ましくは250μm以下、より好ましくは230μm以下、さらにより好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下、100μm以下、又は90μm以下である。外観審美性がより良好な固形化粧料を得るために、このような平均粒径が好ましい。
【0041】
上記光輝性粉体の平均粒径の数値範囲について、好ましい上限値及び下限値は、上記で述べたうちからそれぞれ選択されてよい。光輝性粉体の平均粒径は、好ましくは50μm以上250μm以下、より好ましくは60μm以上230μm以下、さらにより好ましくは60μm以上200μm以下、特に好ましくは60μm以上150μm以下、60μm以上100μm以下、又は70μm以上90μm以下である。
【0042】
上記光輝性粉体の平均粒径は、製造メーカーの公称値でありうる。当該公称値が存在しない場合(例えば、市販入手可能な光輝性粉体ではない場合)、又は、当該公称値が不明である場合などにおいては、当該光輝性粉体の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用い、水中分散状態で測定された平均値(積算体積50%の平均粒径値)でありうる。
【0043】
本実施形態の固形化粧料において、溝部の深さに対する光輝性粉体の平均粒径の比(光輝性粉体の平均粒径/溝部の深さ)は、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上、さらにより好ましくは0.60以上である。このように光輝性粉体の平均粒径が溝部の深さに対して過度に小さくないことによって、光輝性粉体全体が溝部の内側に入り込んで光輝性粉体の輝きが視認されにくくなることを防止できる。そのため、上記比の下限値がこのような数値範囲であることは、外観の煌びやかさの向上に寄与しうる。上記溝部の深さに対する光輝性粉体の平均粒径の比は、好ましくは1.60以下、より好ましくは1.40以下、さらにより好ましくは1.20以下、特に好ましくは1.00以下である。このように光輝性粉体の平均粒径が溝部の深さに対して過度に大きくないことによって、光輝性粉体が溝部の内側にも適度に付着されて、光輝性粉体の向きがより多様化されうる。そのため、固形化粧料が呈する独特の煌びやかな輝きがより際立ったものとなりうる。
【0044】
上記溝部の深さに対する光輝性粉体の平均粒径の比について、数値範囲の好ましい上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよい。上記溝部の深さに対する光輝性粉体の平均粒径の比は、好ましくは0.40以上1.60以下、より好ましくは0.50以上1.40以下、さらにより好ましくは0.50以上1.20以下、特に好ましくは0.60以上1.00以下である。
【0045】
(3)種類
【0046】
本実施形態に係る固形化粧料の種類は、例えば、油性固形化粧料、水系固形化粧料、乳化固形化粧料、又は粉末固形化粧料などであってよい。本実施形態に係る固形化粧料は、好ましくは油性固形化粧料である。当該油性固形化粧料は、連続相が油相であり、室温(25℃)において流動性を有さない化粧料である。当該油性固形化粧料は、例えば、口紅、リップクリーム、唇用下地、ほほ紅、アイカラー、又はファンデーションなどのメイクアップ用油性固形化粧料であってよい。当該油性固形化粧料は、好ましくは、口紅、リップクリーム、及び唇用下地などを含む口唇用油性固形化粧料であり、さらに好ましくは口紅である。
【0047】
(4)形状
【0048】
本実施形態に係る固形化粧料の形状は、固形化粧料の種類に応じて、当業者によって適宜選択されてよい。例えば、当該固形化粧料が口唇用油性固形化粧料である場合、当該口唇用油性固形化粧料の形状は、例えば、スティック状、又は、ジャー容器若しくはパレット容器などの容器に充填された形状であってよい。下記「3.固形化粧料の製造方法」において説明するように、例えば当該固形化粧料の製造方法において成形型が用いられる場合、上記口唇用油性固形化粧料の形状は、好ましくはスティック状である。
【0049】
(5)原料
【0050】
本実施形態に係る固形化粧料の原料は、例えば、当該固形化粧料の種類、用途及び形状などに応じて、当業者によって適宜選択されてよい。当該原料は、当技術分野において既知の原料であってよい。本実施形態に係る固形化粧料が、例えば油性固形化粧料、水系固形化粧料、又は乳化固形化粧料である場合、当該固形化粧料は、原料を固形化させるために好ましくはゲル化剤を含む。
【0051】
<3.固形化粧料の製造方法>
【0052】
本発明の一実施形態に係る固形化粧料の製造方法は、上記「2.固形化粧料」において述べた固形化粧料を得るための製造方法である。すなわち、本実施形態の製造方法によって得られる固形化粧料は、上記「2.固形化粧料」において説明したとおりであり、その説明が本実施形態にも当てはまる。
【0053】
本実施形態の製造方法は、固形化粧料の表面に上記粗面を形成することを含む。当該粗面を形成する方法としては、例えば、粗面を有する成形型を用いる方法、粗面を有するプレス型を用いる方法、及び固形化粧料の表面を切削する方法などが挙げられる。粗面を有する成形型を用いる方法は、例えば、流動性を有する原料を当該成形型に充填した後に固化させて固形化粧料を得る製造方法において採用されうる。粗面を有するプレス型を用いる方法は、例えば、原料を容器に充填した後にプレス型によって容器内の原料を圧縮成形して固形化粧料を得る製造方法において採用されうる。
【0054】
本実施形態の製造方法において、上記粗面を形成する方法は、好ましくは上記成形型を用いる方法である。成形型を用いる方法は、製造効率の向上及び不良品発生率の低減に寄与しうる。
【0055】
本実施形態の製造方法によって得られる固形化粧料は、上記「2.固形化粧料」において説明したとおり、粗面に光輝性粉体が付着されている。光輝性粉体が付着された粗面を得る方法としては、例えば、粗面形成後に当該粗面に光輝性粉体を付着させる方法、及び、固形化粧料の原料に光輝性粉体を配合し、原料を固化して、固形化粧料の粗面に当該光輝性粉体が付着(露出)された状態となるようにする方法などが挙げられる。原料に光輝性粉体を配合する後者の方法は、多量の光輝性粉体を必要とし、且つ、粗面に付着(露出)された光輝性粉体の量を調整することが難しい場合がある。そのため、上記光輝性粉体が付着された粗面を得る方法は、好ましくは、粗面形成後に粗面に光輝性粉体を付着させる前者の方法である。
【0056】
以下、好ましい実施形態の1つとして、成形型を用いて粗面が形成された成形品を得ること、及び、当該成形品の粗面に光輝性粉体を付着させること、を含む製造方法を例に挙げて説明する。すなわち、以下において説明する好ましい製造方法は、成形型によって形成された粗面を有する成形品の、当該粗面に光輝性粉体を付着させることを含む、固形化粧料の製造方法である。
【0057】
成形型によって形成された粗面を有する成形品は、固形化粧料の原料を粗面を有する成形型に充填し、固化して成形した後に、当該成形型を離脱させることによって得られうる。すなわち、上記製造方法は、固形化粧料の原料を粗面を有する成形型に充填する工程、当該原料を固化して成形する工程、及び当該成形型を離脱させて粗面を有する成形品を得る工程を含んでよい。これらの工程は、当技術分野において既知の手段によって行われてよい。これらの工程は、例えば、固形化粧料の原料を加熱溶解して混合した後に粗面を有する成形型に充填する工程、当該原料を冷却固化して成形する工程、及び、成形された原料に保持容器を取り付け、成形型を取り外して成形品を得る工程、であってよい。
【0058】
上記成形型は、成形材料と接する面の面積の40%以上が粗面である。これにより、表面の面積の40%以上が粗面である固形化粧料が得られうる。なお、本明細書において「成形材料」とは、成形型で成形されるために用いられる、固形化粧料の原料の混合物である。
【0059】
上記成形型の粗面は、畝部と、当該畝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されている。これにより、溝部と、当該溝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されている粗面を有する固形化粧料が得られうる。すなわち、成形型の畝部の形状は、固形化粧料の溝部の形状に対応する。また、当該成形型において、面状部の平均面積は、80,000μm以下である。これにより、面状部の平均面積が80,000μm以下である固形化粧料が得られうる。
【0060】
上述のように、成形型の表面形状は、固形化粧料の表面形状に対応する。そのため、本実施形態の製造方法において、成形型の好ましい表面形状は、上記「2.固形化粧料」の「(1)表面形状」において説明した好ましい表面形状と同様でありうる。
【0061】
上記成形型の材質は、固形化粧料の形状及び種類などに応じて当業者によって適宜選択されてよい。当該成形型は、例えば、金属製、弾性を有しない樹脂製、又は弾性を有する樹脂製などであってよい。例えば、本実施形態の製造方法によって得られる固形化粧料がスティック状の油性固形化粧料である場合、当該成形型は、好ましくは弾性を有する樹脂製(特にはゴム製)である。弾性を有する樹脂製(特にはゴム製)の成形型を用いることが、スティック状の油性固形化粧料の製造において、製造効率の向上と不良品発生率の低減に寄与しうる。
【0062】
上記製造方法において、上記成形品の粗面に光輝性粉体を付着させることは、当技術分野において既知の方法によって行われてよい。当該製造方法において用いられる光輝性粉体は、例えば、光輝性粉体単独であってもよく、光輝性粉体を含む粉体組成物であってもよく、又は、当該粉体組成物を溶剤若しくは液状油剤に分散させたスラリーであってもよい。上記成形品の粗面に光輝性粉体を付着させる方法としては、例えば、上記粉体組成物又は上記スラリーに成形品を浸漬させた後、余分に付着した光輝性粉体をエアーブラシによって取り除く方法、上記粉体組成物又は上記スラリーを成形品の粗面に噴霧する方法、及び、閉空間内において光輝性粉体を含む気流を作り、当該気流によって成形品の粗面に光輝性粉体を付着させる方法、などが挙げられる。当該閉空間内において気流を作る方法としては、例えば、コンプレッサーなどによって発生させた高圧空気を利用する方法、及び、真空ポンプなどによって閉空間内を減圧する方法などが挙げられる。
【0063】
本実施形態の製造方法において用いられる光輝性粉体の特徴は、上記「2.固形化粧料」の「(2)光輝性粉体」において説明したとおりであり、その説明が本実施形態にも当てはまる。
【実施例0064】
以下で実施例を参照して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
<固形化粧料の製造>
【0066】
下記の成形材料及び光輝性粉体を用い、下記の製造手順にしたがって、実施例1~16及び比較例1~5の固形化粧料(スティック状口紅)を製造した。
【0067】
[成形材料]
全ての実施例及び比較例において、スティック状口紅の成形材料として、下記表1に示されるNo.1~No.17の成分を用いた。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1に示されるNo.3~9、11、及び12の各成分の詳細は、以下のとおりであった。
No.3:コスモール43V(日清オイリオグループ社製)
No.4:Sフェイス IS-1009P(阪本薬品工業社製)
No.5:KF-56A(信越化学工業社製)
No.6:PLANDOOL-S(日本製化社製)
No.7:精製ポリブテンHV-100F(S)(日本ナチュラルプロダクツ社製)
No.8:CIREBELLE 108(CIREBELLE社製)
No.9:LIPWAX A-4(日本ナチュラルプロダクツ社製)
No.11:AEROSIL R976-S(日本アエロジル社製)
No.12:TOSPEARL 150KA(MOMENTIVE社製)
【0070】
[光輝性粉体]
実施例1~16及び比較例1~5において、下記光輝性粉体を用いた。
実施例8:酸化チタン被覆合成金雲母(HELIOS R300R、トピー工業社製)、平均粒径225μm(製造メーカー公称値)
比較例1:酸化チタン被覆マイカ(チミロンスーパーレッド、メルク社製)、平均粒径35μm(製造メーカー公称値)
比較例2:酸化チタン被覆ガラスフレーク(マイクログラス メタシャイン MT5600RR、日本板硝子社製)、平均粒径600μm(製造メーカー公称値)
上記以外の実施例及び比較例:酸化チタン被覆ガラスフレーク(マイクログラス メタシャイン MT1080RR、日本板硝子社製)、平均粒径80μm(製造メーカー公称値)
【0071】
[製造手順]
スティック状口紅の製造手順は、下記I~Vのとおりであった。なお、下記IIIにおいては、各実施例及び比較例ごとに、適した粗面形状を有するゴム製の成形型を用いた。
【0072】
I:上記表1に示されるNo.1~No.10の成分を100℃~110℃にて加熱し、溶解させた。
II:上記表1に示されるNo.11~No.17の成分を上記Iに加えて、均一になるように混合した。
III:上記IIを90℃に加熱して、粗面を有する成形型に流し込み、25℃に冷却して固化させた。
IV:上記IIIの成形型を取り外し、得られた成形品に、口紅用保持容器をセットした。
V:コンプレッサーを用いて発生させた高圧空気を利用して、閉空間内に光輝性粉体を含む気流を作り、当該閉空間内において上記IVの成形品の表面に光輝性粉体を付着させた。これにより、スティック状口紅を得た。
【0073】
得られたスティック状口紅の特徴、すなわち、溝部の深さ(単位:μm)、粗面の形態(格子又はランダム)、溝部の幅(単位:μm)、面状部の一辺の長さ(単位:μm、粗面の形態が格子の場合のみ)、面状部の平均面積(単位:μm)、粗面の面積割合(%)、溝部の深さに対する光輝性粉体の平均粒径の比(光輝性粉体の平均粒径/溝部の深さ)を、下記表2及び3に示す。
【0074】
なお、上記「粗面の形態」において「格子」とは、粗面を形成する多数の面状部が、全て正方形状であり且つ全て規則的に配置されていることを意味する。図2は、粗面の形態が格子である場合の溝部と面状部とを示す模式図である。図2において、白色部分が面状部を示し、白色部分以外が溝部を示す。また、上記「粗面の形態」において「ランダム」とは、粗面を形成する多数の面状部が、全て不規則形状であり且つ全て不規則的に配置されていることを意味する。図3は、形態がランダムである粗面の一例を示す図である。
【0075】
<固形化粧料の評価>
【0076】
10名の専門パネルが、実施例1~16及び比較例1~5の固形化粧料(スティック状口紅)の評価を行った。具体的には、各専門パネルが、下記評価項目A~Cについて、下記絶対評価基準にしたがって評点を付けた。パネル全員の評点の平均値を算出し、下記4段階判定基準にしたがって当該平均値を4段階で判定した。得られた判定結果を、各実施例及び比較例の固形化粧料の評価とした。
【0077】
[評価項目]
A:外観審美性
B:金属光沢感のなさ
C:光輝性粉体の適度な付着感
【0078】
[絶対評価基準]
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
【0079】
[4段階判定基準]
(判定):(評点の平均値)
◎:5点超
○:3.5点超5点以下
△:2点超3.5点以下
×:2点以下
【0080】
上記「B:金属光沢感がなさ」の評価項目においては、金属光沢感がないスティック状口紅が、金属光沢感があるものよりも良好と評価された。例えば、金属光沢感が非常に強い固形化粧料は、「B:金属光沢感がなさ」において「非常に悪い」(0点)と評価される対象となりうる。
【0081】
上記「C:光輝性粉体の適度な付着感」の評価項目においては、光輝性粉体の付着量が適量であるスティック状口紅が良好と評価された。例えば、光輝性粉体の付着量が非常に多い又は非常に少ないスティック状口紅は、「C:光輝性粉体の適度な付着感」において「非常に悪い」(0点)と評価される対象となりうる。
【0082】
実施例1~16及び比較例1~5のスティック状口紅の評価結果を、下記表2及び3に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
実施例1~16のスティック状口紅は、表面に凹凸を有するウール生地のような独特なふんわり感と独特な煌びやかさのある外観を呈しており、従来にない特徴的な外観を有する口紅であった。実施例2及び13のスティック状口紅は、全ての評価項目において高く評価された。
【0086】
比較例1~5のスティック状口紅は、いずれも外観審美性が悪く、化粧料に求められる最低水準の外観審美性を有しないものであった。具体的には、光輝性粉体の平均粒径が35μmである比較例1、及び平均粒径が600μmである比較例2は、外観審美性が悪かった。また、平均粒径が35μmである比較例1は金属光沢感が強く、平均粒径が600μmである比較例2は光輝性粉体の付着感が悪かった。面状部の平均面積が90,000μmである比較例3及び4は、外観審美性が悪かった。粗面の面積割合が30%である比較例5は、外観審美性が悪く、金属光沢感が強く、且つ光輝性粉体の付着感が悪かった。
【0087】
実施例17:油性リップバーム
(成分) (%)
(1)水添ポリイソブテン ※1 35
(2)リンゴ酸ジイソステアリル 残量
(3)エチルヘキサン酸セチル 20
(4)パルミチン酸デキストリン ※2 10
(5)トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 1
(6)ジブチルヒドロキシトルエン 0.01
(7)ジプロピレングリコール 0.5
(8)ポリエチレン 0.1
(9)メチルポリシロキサン ※4 1
(10)シリカ ※3 1
(11)水酸化アルミニウム 0.001
(12)炭酸カルシウム 0.5
(13)香料 0.5
(14)二酸化チタン(平均粒子径0.25μm) ※5 0.1
(15)硫酸バリウム(板状、平均粒子径8μm) 0.02
(16)赤色202号 0.5
(17)黄色4号 0.4
(18)ベンガラ 0.2
(19)黒色酸化鉄 0.1
※1:パールリーム18(日油社製)
※2:レオパールKL(千葉製粉社製)
※3:AEROSIL R300(日本アエロジル社製)
※4:KF-96-6CS(信越化学工業社製)
※5:シリコーン2%処理
【0088】
(製造方法)
A:成分(1)~(4)を100℃に加熱し、混合溶解した。
B:Aに成分(5)~(19)を加え、均一に混合分散した。
C:Bを脱泡後、粗面を有する成形型に流し込み、25℃に冷却して固化させた。
D:Cの成形型を取り外し、得られた成形品をジャー容器にセットした。
E:コンプレッサーを用いて発生させた高圧空気を利用して、閉空間内に光輝性粉体を含む気流を作り、当該閉空間内においてDの成形品の表面に光輝性粉体を付着させ、油性リップバームを得た。当該光輝性粉体は、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末(オーロラフレーク レッド0.01、角八魚鱗箔社製)、平均粒径150μm(製造メーカー公称値)であった。
【0089】
実施例17の油性リップバームは、外観審美性、金属光沢感のなさ、光輝性粉体の適度な付着感のすべてに優れるものであった。なお、溝部の深さは200μmであり、粗面の形態は格子状であり、溝部の幅は100μmであり、面状部の一辺の長さは150μmであり、面状部の平均面積は22,500μmであり、粗面の面積割合は40%であり、光輝性粉体の平均粒径/溝部の深さは0.75であった。
【0090】
実施例18:油性リップスティック
(成分) (%)
(1)ジブチルラウロイルグルタミド※6 6
(2)ジブチルエチルへキサノイルグルタミド※7 5
(3)デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10 30
(4)オクチルドデカノール 10
(5)リンゴ酸ジイソステアリル 20
(6)流動パラフィン 残量
(7)煙霧状シリル化シリカ※8 5
(8)フェノキシエタノール 0.5
※6:アミノ酸系ゲル化剤GP-1(味の素社製)
※7:アミノ酸系ゲル化剤EB-21(味の素社製)
※8:AEROSIL R-976S(日本アエロジル社製)
【0091】
(製造方法)
A:成分(1)~(8)を140℃に加熱し、均一に溶解した。
B:Aを粗面を有する成形型に流し込み、25℃に冷却して固化させた。
C:Bの成形型を取り外し、得られた成形品に、口紅用保持容器をセットした。
D:コンプレッサーを用いて発生させた高圧空気を利用して、閉空間内に光輝性粉体を含む気流を作り、当該閉空間内においてCの成形品の表面に光輝性粉体を付着させ、油性リップスティックを得た。当該光輝性粉体は、酸化チタン被覆ガラスフレーク(マイクログラス メタシャイン MT1120RR、日本板硝子社製)、平均粒径120μm(製造メーカー公称値)であった。
【0092】
実施例18の油性リップスティックは、外観審美性、金属光沢感のなさ、光輝性粉体の適度な付着感のすべてに優れるものであった。なお、溝部の深さは150μmであり、粗面の形態はランダム状であり、溝部の幅は100μmであり、面状部の平均面積は25,000μmであり、粗面の面積割合は100%であり、光輝性粉体の平均粒径/溝部の深さは0.80であった。
【0093】
実施例19:アイシャドウ
(成分) (%)
(1)タルク 残量
(2)ポリメタクリル酸メチル 2
(3)ホウケイ酸(Ca/Al) 3
(4)ヘキシレングリコール 0.05
(5)クロルフェネシン 0.3
(6)マイカ 35
(7)二酸化チタン(平均粒子径0.25μm) 10
(8)酸化亜鉛(六角板状、平均粒子径1μm) 2
(9)黒色酸化鉄 0.6
(10)赤色202号 0.3
(11)赤色226号 0.3
(12)リンゴ酸ジイソステアリル 8
(13)セスキステアリン酸ソルビタン 2
(14)ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸
/ロジン酸)ジペンタエリスリチル 2
(15)水添ポリイソブテン※9 1
(16)メチルポリシロキサン(25℃動粘度20CS) 8
(17)香料 0.5
※9:IPソルベント1620MU(出光興産社製)
【0094】
(製造方法)
A.成分(1)~(11)を均一に混合した。
B.成分(12)~(17)を70℃で均一に混合した。
C.AにBを加え均一に混合した。
D.Cを化粧料基材とし、化粧料基材100質量部に対し、水添ポリイソブテン20質量部を添加して混合混錬し、金皿容器に充填し、粗面を有するプレス機にて圧縮しながら水添ポリイソブテンを除去した。
E:得られた成形品を70℃で8時間乾燥させた。
F:コンプレッサーを用いて発生させた高圧空気を利用して、閉空間内に光輝性粉体を含む気流を作り、当該閉空間内においてEの成形品の表面に光輝性粉体を付着させ、アイシャドウを得た。当該光輝性粉体は、酸化チタン被覆ガラスフレーク(マイクログラス メタシャイン MT1200RG、日本板硝子社製)、平均粒径200μm(製造メーカー公称値)であった。
【0095】
実施例19のアイシャドウは、外観審美性、金属光沢感のなさ、光輝性粉体の適度な付着感のすべてに優れるものであった。なお、溝部の深さは200μmであり、粗面の形態はランダム状であり、溝部の幅は100μmであり、面状部の平均面積は25,000μmであり、粗面の面積割合は80%であり、光輝性粉体の平均粒径/溝部の深さは1.00であった。
【0096】
実施例20:アイシャドウ
(成分) (%)
(1)タルク 40
(2)合成フルオロフロゴパイト 15
(3)球状シリカ(無孔質、平均粒子径5μm) 5
(4)セルロース末 1.5
(5)窒化ホウ素(平均粒子径9μm) 1.5
(6)トコフェロール 0.05
(7)カプリリルグリコール 0.2
(8)ペンチレングリコール 0.3
(9)ステアリン酸亜鉛 0.5
(10)粉末状合成ワックス 1
(11)酸化亜鉛(六角板状、平均粒子径0.3μm) 2
(12)ラウリン酸亜鉛処理マイカ 残量
(13)二酸化チタン(平均粒子径0.25μm)※10 2
(14)赤色202号 1
(15)赤色226号 1
(16)黒色酸化鉄 1
(17)流動パラフィン 5
(18)メチルポリシロキサン(25℃動粘度10CS) 5
※10:水酸化Al2%処理
【0097】
(製造方法)
A:成分(1)~(16)を均一に混合した。
B:成分(17)~(18)をAに加え均一に混合した。
C:Bを室温で粉砕した。
D:Cを樹脂皿に充填し、粗面を有する金型にて圧縮成型した。
E:コンプレッサーを用いて発生させた高圧空気を利用して、閉空間内に光輝性粉体を含む気流を作り、当該閉空間内においてDの成形品の表面に光輝性粉体を付着させ、アイシャドウを得た。当該光輝性粉体は、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末(アルミフレーク レッド 0.15mm、角八魚鱗箔社製)、平均粒径150μm(製造メーカー公称値)であった。
【0098】
実施例20のアイシャドウは、外観審美性、金属光沢感のなさ、光輝性粉体の適度な付着感のすべてに優れるものであった。なお、溝部の深さは150μmであり、粗面の形態は格子状であり、溝部の幅は100μmであり、面状部の一辺の長さは150μmであり、面状部の平均面積は22,500μmであり、粗面の面積割合は90%であり、光輝性粉体の平均粒径/溝部の深さは1.00であった。
【0099】
なお、本発明は以下の構成をとることもできる。
[1]
表面の面積の40%以上が、光輝性粉体が付着された粗面であり、
前記粗面が、溝部と、前記溝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されており、
前記面状部の平均面積が、80,000μm以下であり、且つ、
前記光輝性粉体の平均粒径が、50μm以上300μm以下である、
固形化粧料。
[2]
前記多数の面状部が、規則的又は不規則的に配置されている、[1]に記載の固形化粧料。
[3]
前記面状部の形状が、幾何学的形状又は不規則形状である、[1]又は[2]に記載の固形化粧料。
[4]
前記溝部の深さが、10μm以上400μm以下である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の固形化粧料。
[5]
前記溝部の幅が、10μm以上400μm以下である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の固形化粧料。
[6]
前記溝部の深さに対する、前記光輝性粉体の平均粒径の比が、0.40以上1.60以下である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の固形化粧料。
[7]
前記固形化粧料が、油性固形化粧料である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の固形化粧料。
[8]
成形型によって形成された粗面を有する成形品の、前記粗面に光輝性粉体を付着させることを含み、
前記成形型において、
成形材料と接する面の面積の40%以上が粗面であり、
前記成形型の前記粗面が、畝部と、前記畝部によって囲まれた多数の面状部と、によって形成されており、
前記面状部の平均面積が、80,000μm以下であり、且つ、
前記光輝性粉体の平均粒径が、50μm以上300μm以下である、
固形化粧料の製造方法。
図1
図2
図3