(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176157
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】スパインに沿って延びるルーメンを有するカテーテルのための遠位アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022078684
(22)【出願日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】17/319,957
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ジョージ・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK12
4C160KK57
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】医療装置を提供すること。
【解決手段】本医療装置は、患者の体腔内に挿入するように構成された挿入チューブと、挿入チューブの遠位側に接続されるそれぞれの近位端部を有する複数のスパインを含む遠位アセンブリと、を含む。各スパインは、スパインの長さに沿って延在するリブと、リブの上に配設され、スパインに沿ってリブに平行に延びるルーメンを画定する柔軟ポリマースリーブと、スリーブ上に配設され、体腔内の組織に接触するように構成された1つ以上の電極と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
患者の体腔内への挿入用に構成された挿入チューブと、
長手方向軸に沿って延在する遠位アセンブリであって、前記挿入チューブの遠位側に接続されるそれぞれの近位端部を有する複数のスパインを備え、各スパインは、
前記長手方向軸の長さに沿って延在するリブ、及び
前記リブの上に配設され、前記リブの1つの側面上にのみ前記リブに平行に延びるルーメンを画定する柔軟ポリマースリーブ、を備える、遠位アセンブリと、を備える医療装置。
【請求項2】
前記柔軟ポリマースリーブ上に配設された1つ以上の電極を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スパインは、前記遠位アセンブリの遠位端部で接合されたそれぞれの遠位端部を含み、前記リブは、前記遠位アセンブリが前記体腔内に配備されるときに径方向外向きに湾曲するように構成され、それによって、前記電極は、前記体腔内の組織に接触する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
リブは、前記装置が前記体腔内に挿入されている間、前記スパインが前記挿入チューブの軸に沿って整列されるように、径方向内向きに折り畳まれるように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記挿入チューブは、前記患者の心臓の室への挿入用に構成された柔軟カテーテルを含み、前記電極は、前記室内の心筋組織に接触し、前記心筋組織に電気エネルギーを印加するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記リブは金属スラットを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記柔軟ポリマースリーブは熱可塑性エラストマーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記スパインの各々の前記ルーメンは、前記挿入チューブを通って延びる潅注マニホールドと流体連通しており、潅注出口は、前記電極の近傍で前記柔軟ポリマースリーブを通過して前記ルーメンに向かい、それによって、前記潅注マニホールドを通過する潅注流体は、前記潅注出口を通って前記ルーメンから流出する、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
各スパインは、前記ルーメンを通って延び、かつ前記電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続するワイヤを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記潅注出口は、各電極の周囲に配設された少なくとも2つの潅注出口を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記潅注出口のうちの少なくとも1つは、前記ポリマースリーブを通過し、また前記電極を通過する、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記潅注出口の各々は、前記長手方向軸に対して約45度~約135度の角度を付されている、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
医療デバイスを生産するための方法であって、
複数のスパインを、
各スパインについて、弾性リブに沿ってマンドレルを配置すること、
前記リブ及び前記マンドレルの上に柔軟ポリマースリーブを成形すること、並びに
前記スリーブを成形した後、前記スリーブが前記スパインの1つの側面に沿って前記リブに平行に延びるルーメンを含むように、前記マンドレルを除去すること、によって形成することと、
前記スパインの各々の前記スリーブに1つ以上の電極を固定することと、
前記スパインのそれぞれの近位端部を、患者の体腔に挿入するように構成された挿入チューブの遠位端部に一緒に接続することと、を含む方法。
【請求項14】
バスケットアセンブリを形成するように前記スパインのそれぞれの遠位端部を接合することを更に含み、前記デバイスが前記体腔内に配備されるときに前記リブが径方向外向きに湾曲し、それによって前記電極が前記体腔内の組織に接触する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
リブは、前記デバイスが前記体腔内に挿入されている間、前記スパインが前記挿入チューブの軸に沿って整列されるように、径方向内向きに折り畳まれるように構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記挿入チューブは、前記患者の心臓の室への挿入用に構成された柔軟カテーテルを含み、前記電極は、前記室内の心筋組織に接触し、前記心筋組織に電気エネルギーを印加するように構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記弾性リブは金属スラットを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記柔軟ポリマースリーブは熱可塑性エラストマーチューブを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記柔軟ポリマースリーブを成形することは、前記熱可塑性エラストマーチューブを前記リブ及び前記マンドレルの形状へと収縮させるのに十分な温度に、前記熱可塑性エラストマーチューブを加熱することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記挿入チューブを通って延びる潅注マニホールドに前記スパインの各々の前記ルーメンを結合することと、前記電極の近傍において前記柔軟ポリマースリーブを通って前記ルーメンに向かう潅注出口を形成することと、を更に含み、それによって、前記潅注マニホールドを通過する潅注流体が前記潅注出口を通って前記ルーメンから流出する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
ワイヤを前記ルーメンに通すことと、前記ワイヤを前記電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続することと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、侵襲的医療機器に関し、具体的には、体内の組織をアブレーションするための装置及びそのような装置を生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓不整脈は一般的に、催不整脈性の電気経路を遮断するために、心筋組織のアブレーションによって治療される。この目的のために、カテーテルが患者の血管系を通して心臓の室に挿入され、カテーテルの遠位端部にある電極が、アブレーションされる組織と接触される。場合によっては、組織を熱的にアブレーションするために、高電力無線周波数(radio-frequency、RF)電気エネルギーが電極に印加される。代替的に、不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)によって組織をアブレーションするために、高電圧パルスが電極に印加されてもよい。
【0003】
電気的アブレーションは、RF熱アブレーションによるものか、又はIREによるものかにかかわらず、過剰な熱を発生させ、それにより、アブレーション部位の内外の組織に付随的な損傷が引き起こされ得る。組織温度を低下させ、それによりこの種の損傷を軽減するために、電極のエリアは一般に、アブレーション処置中に潅注される。一部のカテーテルでは、潅注は、例えば、出願人によって所有され、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,475,450号に記載されているように、電極自体の小径穴を通じて適用される。
【0004】
一部のアブレーション処置では、バスケットカテーテルが使用され、ここでは複数の電極が、カテーテルの遠位端部にある拡張可能なバスケットアセンブリのスパインに沿って配列される。アブレーション中にそのようなバスケットアセンブリに潅注するための様々なスキームが記載されている。例えば、米国特許第7,955,299号には、少なくとも1つの流体送達ポートを有する内側流体送達チューブを収容する外側チューブを備えたバスケットカテーテルが記載されている。複数のスパインは各々、スパインの近位端部においては外側チューブに、スパインの遠位端部においては内側流体送達チューブに接続されている。内側流体送達チューブは、スパインを拡張するために第1の方向に、またスパインを折り畳むために第2の方向に移動されるように動作可能である。多孔質膜が、内側流体送達チューブの少なくとも一部分上に設けられる。シールが、多孔質膜の近位端部において、多孔質膜と外側チューブとの間、及び多孔質膜と内側流体送達チューブとの間に設けられるが、シールは、外側チューブへの流体侵入を防止しながら、バスケットカテーテルの複数のスパイン間に潅注するように構成されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に記載される本発明の実施形態は、体内の組織をアブレーションするための改善された装置、並びに、そのような装置を生産するための方法を提供する。
【0006】
したがって、本発明の実施形態によれば、患者の体腔内に挿入するように構成された挿入チューブと、挿入チューブの遠位側に接続されるそれぞれの近位端部を有する複数のスパインを含む遠位アセンブリと、を含む医療装置が提供される。各スパインは、スパインの長さに沿って延在するリブと、リブの上に配設され、スパインに沿ってリブに平行に延びるルーメンを画定する柔軟ポリマースリーブと、スリーブ上に配設され、体腔内の組織に接触するように構成された1つ以上の電極と、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、スパインは、遠位アセンブリの遠位端部で接合されたそれぞれの遠位端部を有し、リブは、遠位アセンブリが体腔内に配備されるときに径方向外向きに湾曲するように構成され、それによって、電極は、体腔内の組織に接触する。開示される実施形態では、リブは、装置が体腔内に挿入されている間、スパインが挿入チューブの軸に沿って整列されるように、径方向内向きに折り畳まれるように構成されている。それに加えて、あるいはそれに代わって、挿入チューブは、患者の心臓の室への挿入用に構成された柔軟カテーテルを含み、電極は、室内の心筋組織に接触し、心筋組織に電気エネルギーを印加するように構成されている。
【0008】
開示される実施形態では、リブは金属スラットを含む。それに加えて、あるいはそれに代わって、柔軟ポリマースリーブが熱可塑性エラストマーを含む。
【0009】
一実施形態では、スパインの各々のルーメンは、挿入チューブを通って延びる潅注マニホールドと流体連通しており、潅注出口は、電極の近傍で柔軟ポリマースリーブを通過してルーメンに向かい、それによって、潅注マニホールドを通過する潅注流体は、潅注出口を通ってルーメンから流出する。それに加えて、あるいはそれに代わって、各スパインは、ルーメンを通って延び、かつ電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続するワイヤを含む。
【0010】
本発明の実施形態によれば、医療デバイスを生産するための方法も提供される。この方法は、複数のスパインを、各スパインについて、弾性リブに沿ってマンドレルを配置することと、リブ及びマンドレルの上に柔軟ポリマースリーブを成形することと、によって形成することを含む。スリーブを成形した後、スリーブがスパインに沿ってリブに平行に延びるルーメンを含むように、マンドレルは除去される。1つ以上の電極が、スパインの各々のスリーブに固定される。スパインのそれぞれの近位端部が、患者の体腔内に挿入するように構成された挿入チューブの遠位端部に一緒に接続される。
【0011】
開示された実施形態では、柔軟ポリマースリーブは熱可塑性エラストマーチューブを含み、柔軟ポリマースリーブを成形することは、熱可塑性エラストマーチューブをリブ及びマンドレルの形状へと収縮させるのに十分な温度に、熱可塑性エラストマーチューブを加熱することを含む。
【0012】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による、心臓アブレーションのためのシステムを示す概略図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、折り畳み構成及び拡張構成にあるカテーテルバスケットアセンブリの概略側面図である。
【
図2B】本発明の実施形態による、折り畳み構成及び拡張構成にあるカテーテルバスケットアセンブリの概略側面図である。
【
図3】本発明の実施形態による、カテーテルバスケットアセンブリのスパインの概略側面図である。
【
図4】本発明の実施形態による、
図3のスパインの遠位部分の詳細を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態による、長手方向切断線に沿った
図4のスパインの一部分の概略断面図である。
【
図6】本発明の実施形態による、
図3のスパインの近位部分の詳細を示す概略断面図である。
【
図7】本発明の実施形態による、
図4のスパインの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
アブレーション部位の効率的かつ確実な冷却のために、潅注流体が電極の存在位置に特異的に標的化されることが望ましい。しかしながら、バスケットカテーテルでは、機械的な制約及び厳密なサイズの制限により、スパインに沿って潅注流体を電極に送達することが困難になる。例えば、バスケットアセンブリ内のマニホールドから電極に向かって潅注流体を噴霧することが可能であるが、このアプローチは、高い潅注流量を必要とし、更には組織の十分な冷却を達成しない場合がある。
【0015】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、カテーテルの遠位アセンブリのスパインに沿ってルーメンを形成するための方法、並びにそのようなルーメンを含んだアセンブリを提供することによって、この問題に対処する。ルーメンを有するスパインが、開示された様態において、実質的にスパインの寸法を増加させることなく、又はそれらの機械的特性を変更することなく、効率的かつ確実に形成され得る。そのようなルーメンは、スパインに沿った電極の存在位置に潅注流体を搬送するためだけでなく、追加的に又は代替的に、スパインに沿って電線をルーティングするなどの他の目的のためにも使用され得る。以下に記載される実施形態は、バスケットカテーテルに特異的に関するものであるが、本発明の原理は、マルチアームカテーテルなど、医療用プローブ用の他の種類の遠位アセンブリにも同様に適用され得る。
【0016】
開示される実施形態では、心臓カテーテルなどの医療用プローブの遠位アセンブリは、患者の体腔内に挿入するように構成された挿入チューブに対して遠位に接続されるそれぞれの近位端部を有する複数のスパインを備える。各スパインは、スパインの長さに沿って延在する、金属スラットなどのリブを備える。柔軟ポリマースリーブが、リブの上に配設され、スパンに沿ってリブに平行に延びるルーメンを画定する。ルーメンを創成するために、いくつかの実施形態では、マンドレルがリブと並んで配置され、スリーブがリブ及びマンドレルの上に配設され、次いでマンドレルが取り外され、その後、スリーブ内にルーメンが残る。1つ以上の電極が、体腔内の組織に接触するように、スリーブの上に外方に固定される。
【0017】
図1は、本発明の実施形態による、アブレーション処置で使用されるシステム20の概略図である。システム20の要素は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,California)製のCARTO(登録商標)システムの構成要素に基づくものであってよい。
【0018】
医師30は、患者28の血管系を通してカテーテル22を患者の心臓26の室の中へとナビゲートし、次いで、カテーテルの遠位端部にバスケットアセンブリ40(
図2A/Bに詳細に示される)を配備する。バスケットアセンブリ40の近位端部は挿入チューブ25の遠位端部に接続され、これを医師30が、カテーテル22の近位端部の近くでマニピュレータ32を使用して操縦する。バスケットアセンブリ40は、折り畳み構成においてシース23を通して挿入され、これが、患者28の血管系を通過して、アブレーション処置が実行されることになる心室の中に入る。心室に挿入されると、バスケットアセンブリ40が、シースから配備され、室内で拡張される。カテーテル22は、その近位端部において制御コンソール24に接続される。コンソール24上のディスプレイ27は、アブレーション処置の標的存在位置にバスケットアセンブリ40を位置決めする上で医師30を支援するために、バスケットアセンブリの存在位置を示すアイコンとともに、心室のマップ31又は他の画像を提示し得る。
【0019】
バスケットアセンブリ40が心臓26内に適切に配設及び位置決めされると、医師30は、コンソール24内の電気信号発生器38を作動させて、プロセッサ36の制御下でバスケットアセンブリ上の電極に電気エネルギー(IREパルス又はRF波形など)を印加する。電気エネルギーは、双極性モードにおいて、バスケットアセンブリ40上の電極対の間に、又は単極性モードにおいて、バスケットアセンブリ40上の電極と、別個の共通電極、例えば、患者の皮膚に適用される導電性バックパッチ41との間に適用され得る。アブレーション処置中、潅注ポンプ34が、食塩水溶液などの潅注流体を、挿入チューブ25を通してバスケットアセンブリ40に送達する。
【0020】
典型的には、カテーテル22は、バスケットアセンブリ40の位置(存在位置及び配向)を示す位置信号を出力する1つ以上の位置センサ(図示せず)を備える。例えば、バスケットアセンブリ40は、印加された磁場に応答して電気信号を出力する1つ以上の磁気センサを組み込み得る。プロセッサ36は、当該技術分野で知られており、例えば、上述のCARTOシステムに実装される技術を用いて、バスケットアセンブリ40の存在位置及び配向の座標を見つけるために、信号を受信及び処理する。それに代わって、あるいはそれに加えて、システム20は、バスケットアセンブリ40の座標を見けるために、他の位置感知技術を適用してもよい。例えば、プロセッサ36は、バスケットアセンブリ40上の電極と、患者28の胸部に適用される体表面電極39との間のインピーダンスを感知し得、また、同様に当該技術分野で知られている技術を用いて、インピーダンスを存在位置の座標に変換し得る。いずれの場合でも、プロセッサ36は、マップ31上にバスケットアセンブリ40の存在位置を表示する際に座標を使用する。
【0021】
それに代わって、本明細書に記載されるカテーテル22及びアブレーション技術は、位置感知の恩恵を受けることなく用いられ得る。そのような実施形態では、心臓26内のバスケットアセンブリ40の存在位置を確認するために、例えば、蛍光透視法及び/又は他の撮像技術が用いられ得る。
【0022】
図1に示されるシステム構成は、本発明の実施形態の動作を理解する際に概念を明確にするための例として提示されるものである。簡潔にするために、
図1は、システム20のうちの、バスケットアセンブリ40及びそのバスケットアセンブリを使用するアブレーション処置に特異的に関連する要素のみを示す。システムの残りの要素は、本発明の原理が、他の構成要素を使用して、他の医療治療システムにおいて実施され得ることは、当業者であれば同様に理解するであろうことは明らかであろう。全てのこのような代替的な実装は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0023】
図2A及び
図2Bは、本発明の代替的な実施形態による、それぞれ折り畳み構成及び拡張構成にあるバスケットアセンブリ40の概略側面図である。バスケットアセンブリ40は、遠位端部48と、近位端部50と、を有し、近位端部50は、挿入チューブ25の遠位端部52に接続される。バスケットアセンブリは複数のスパイン44を備え、それらの近位端部は近位端部50で接合され、またそれらの遠位端部は遠位端部48で接合される。1つ以上の電極54が、スパイン44の各々に外方に配設されている。スパイン44内の潅注出口56は、スパイン内を流れる潅注流体が、電極54の近傍で流出し、また組織に潅注することを可能にする。
【0024】
図2Aの折り畳み状態では、心臓26へのバスケットアセンブリ40の挿入を容易にするために、スパイン44は直線状であり、挿入チューブ25の長手方向軸42に平行に整列される。
図2Bの拡張状態では、スパイン44は径方向外向きに湾曲し、スパイン44上の電極54を心臓内の組織に接触させる。一実施形態では、スパイン44は、バスケットアセンブリ40の安定状態が
図2Aの折り畳み状態であるように生産される。この場合、バスケットアセンブリ40は、シースから押し出されると、好適なワイヤなどのプラー46を挿入チューブ25を通じて近位方向に引っ張ることによって拡張される。プラー46を解放することは、バスケットアセンブリ40をその折り畳み状態へと折り畳んで戻すことを可能にする。別の実施形態では、スパイン44は、バスケットアセンブリ40の安定状態が
図2Bの拡張状態となるように生産される。この場合、バスケットアセンブリ40は、シースから押し出されたときに拡張状態へと開放され、また、プラー46はプッシャーロッドと交換されて、シースが遠位に押されて直線状のスパインを包囲する前に、遠位方向に向かって移動し、スパイン44を直線状にしてもよい。
【0025】
図3及び
図4は、本発明の実施形態による、バスケットアセンブリ40内の1つの代表的なスパイン44の細部を概略的に示す。
図3は、スパイン44の側面図であり、
図4は、バスケットアセンブリの外部からある角度をなして見た、スパイン44(電極44なし)の絵図である。電極54は、
図3においては潅注出口56の間に示されているが、
図4からは視覚的に明確にするために省略されている。
【0026】
図3に示されるように、スパイン44内のルーメン62は、挿入チューブ25を通って延びるチューブを含んだ潅注マニホールド60と流体連通している。したがって、潅注マニホールド60を通して圧送される潅注流体は、潅注出口56を通してルーメン62から流出する。それに代わって、あるいはそれに加えて、前述のように、ルーメン62は、電極54に電気的に接続する電線70(
図7に示される)を含んでもよい。
【0027】
ここで
図5~及び
図7を参照すると、同図は、本発明の実施形態による、スパイン44の構造生産方法の詳細を概略的に示している。
図5は、長手方向切断線に沿った(明確にするために電極54なし)スパイン44の一部分の断面図であり、
図7は、スパインを通して径方向切断線に沿った断面図である。
図6は、潅注マニホールド60へのルーメン62の接続を含む、スパイン44の近位部分の細部を示す断面図である。
【0028】
スパイン44は、スパインの長さに沿って延びるリブ64を備え、リブは、スパインの平衡形状に対応する形状を有する。例示的な実施形態では、リブ64は、所望の湾曲又は直線平衡形状を有する、例えば、ニッケルチタンなどの生体適合性材料の長い薄い片などの比較的剛性のスラットを備える。リブ64は、互いに(例えば、平行又は非平行に)並ぶ、第1の表面64aと、反対側の表面64bと、を有する。
図7の実施形態は、主側面64a及び64bを伴う長方形の断面を示しているが、本発明は、スラット又はリブを画定するように一緒に(例えば、平行又は非平行に)延びる2つの主表面が形成され得る限り、そのような構成に限定されない。この実施形態のルーメン62は、
図7に示されるように、例えば、表面64aに沿って、リブ64の側面のうちの1つのみに沿って延びる。
【0029】
ルーメン62を形成するために、ルーメン62の形状をなすマンドレルがリブ64に沿って配置され、熱可塑性エラストマーチューブ又はスリーブ66がリブ64及びマンドレルの上に取り付けられる。一実施形態では、マンドレルは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など、高い溶融温度を有する柔軟な自己潤滑ポリマーから作製される。エラストマーチューブ又はスリーブ66は、Pebax(登録商標)ポリエーテルブロックアミド収縮チューブなどの好適な熱収縮特性を有する生体適合性材料を含む。エラストマースリーブ66はリブ64上に取り付けられ、アセンブリ全体は、エラストマーチューブ又はスリーブ66を下にあるリブ64及びマンドレルの形状へと収縮させるのに十分な温度に加熱され、それによって、
図7に示される種類のプロファイルを有するスリーブ66が形成される。それに代わって、リブ64は金型の中に配置されてもよく、また、スリーブ66を成形されたスパイン部材として形成するために、熱可塑性材料が金型と併せて使用されてもよい。エラストマースリーブ(又は成形部材)66内部のマンドレルが取り外され、リブ64とともにスリーブ66内にルーメン62が開放されたままにする。ルーメン62の遠位端部は、密閉して閉鎖されている。
【0030】
ルーメン62が潅注のために使用される場合、マニホールド60は、製造のプロセス中にルーメン62の近位端部に装着される。マニホールド60は、例えば、リブ64の近位端部に留め付けられたポリイミドチューブを含み、エラストマーチューブは、マニホールドの遠位端部の上に取り付けられている。エラストマーチューブを加熱すると、
図6に示すように、ルーメン62がマニホールド60と流体連通するように、マニホールド60の周りで収縮する。潅注出口56が創成されるように、スリーブ66を通してルーメン62に穿刺、ドリリング、又はレーザードリリングすることによって穴が形成される。1つ以上の電極54が、例えば、好適なエポキシ及び/又は機械的締結具を使用して、スリーブ66の外面上に取り付けられ、締結され、ワイヤ(図示せず)は、スパイン44に沿って、又はルーメン62を通して、電極と挿入チューブ25との間に延びる。潅注穴56はまた、電極54を通して、また柔軟スリーブ66を通して延在する穴を形成することによって、電極55自体に設けられ得るが、その結果、潅注流体は、ルーメン62(スリーブ66の)を通してマニホールド60を通って流れ、電極54の潅注穴56を通して流出する。
【0031】
潅注穴56は、リブ64に対して直角をなす必要はなく、リブ64(長手方向軸42)に対して約45度~又は135度で角度を付され得ることに留意されたい。
図5では、1つの出口穴56’(電極54上)が、身体組織との電極接触表面の周りに所望の潅注流れ模様が得られるように角度が付されていることが示されている。この特徴の他の並び替えも本発明の範囲に含まれる。例えば、スリーブ66上(電極54上ではない)の潅注穴56は全て、電極54に向かって噴霧するように角度を付されてもよいが、電極54上の潅注穴66はリブ64に対して直角をなし得る。それに代わって、スリーブ66上の潅注穴56のいくつかは、電極54から離れて角度を付され、他の潅注穴56’は、電極54に向かって角度を付されてもよい。電極54は、リブ64(又は軸42)に対して直角に流動するための電極54上のいくつかの穴56’と、長手方向軸42に対して角度βをなすいくつかの穴56’(
図5において56’及び軸42として参照される)と、を有するように構成され得る。
【0032】
電極54とルーメン62内に配設されたワイヤ又は導体とを電気的に接続する目的で、穴56’がスリーブ66を通して(電極54を通さず)形成されてもよいことに留意されたい。信号が電極54へと、また電極54から流れることを可能にするために、ルーメン62内に配設されたワイヤは、デバイスの近位ハンドルまで延在し得る。
【0033】
複数のスパイン44がこのように製作された後、それらのスパインは一緒にグループ化及び接合されて、
図2A/Bに示されるように挿入チューブ25の遠位端部に固定されるバスケットアセンブリ40を形成する。
【0034】
上に記載される実施形態は例として挙げたものであり、本発明は本明細書の上記で具体的に図示及び説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、前述の本明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0035】
〔実施の態様〕
(1) 医療装置であって、
患者の体腔内への挿入用に構成された挿入チューブと、
長手方向軸に沿って延在する遠位アセンブリであって、前記挿入チューブの遠位側に接続されるそれぞれの近位端部を有する複数のスパインを備え、各スパインは、
前記長手方向軸の長さに沿って延在するリブ、及び
前記リブの上に配設され、前記リブの1つの側面上にのみ前記リブに平行に延びるルーメンを画定する柔軟ポリマースリーブ、を備える、遠位アセンブリと、を備える医療装置。
(2) 前記柔軟ポリマースリーブ上に配設された1つ以上の電極を更に備える、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記スパインは、前記遠位アセンブリの遠位端部で接合されたそれぞれの遠位端部を含み、前記リブは、前記遠位アセンブリが前記体腔内に配備されるときに径方向外向きに湾曲するように構成され、それによって、前記電極は、前記体腔内の組織に接触する、実施態様2に記載の装置。
(4) リブは、前記装置が前記体腔内に挿入されている間、前記スパインが前記挿入チューブの軸に沿って整列されるように、径方向内向きに折り畳まれるように構成されている、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記挿入チューブは、前記患者の心臓の室への挿入用に構成された柔軟カテーテルを含み、前記電極は、前記室内の心筋組織に接触し、前記心筋組織に電気エネルギーを印加するように構成されている、実施態様2に記載の装置。
【0036】
(6) 前記リブは金属スラットを含む、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記柔軟ポリマースリーブは熱可塑性エラストマーを含む、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記スパインの各々の前記ルーメンは、前記挿入チューブを通って延びる潅注マニホールドと流体連通しており、潅注出口は、前記電極の近傍で前記柔軟ポリマースリーブを通過して前記ルーメンに向かい、それによって、前記潅注マニホールドを通過する潅注流体は、前記潅注出口を通って前記ルーメンから流出する、実施態様2に記載の装置。
(9) 各スパインは、前記ルーメンを通って延び、かつ前記電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続するワイヤを備える、実施態様2に記載の装置。
(10) 前記潅注出口は、各電極の周囲に配設された少なくとも2つの潅注出口を含む、実施態様8に記載の装置。
【0037】
(11) 前記潅注出口のうちの少なくとも1つは、前記ポリマースリーブを通過し、また前記電極を通過する、実施態様8に記載の装置。
(12) 前記潅注出口の各々は、前記長手方向軸に対して約45度~約135度の角度を付されている、実施態様10に記載の装置。
(13) 医療デバイスを生産するための方法であって、
複数のスパインを、
各スパインについて、弾性リブに沿ってマンドレルを配置すること、
前記リブ及び前記マンドレルの上に柔軟ポリマースリーブを成形すること、並びに
前記スリーブを成形した後、前記スリーブが前記スパインの1つの側面に沿って前記リブに平行に延びるルーメンを含むように、前記マンドレルを除去すること、によって形成することと、
前記スパインの各々の前記スリーブに1つ以上の電極を固定することと、
前記スパインのそれぞれの近位端部を、患者の体腔に挿入するように構成された挿入チューブの遠位端部に一緒に接続することと、を含む方法。
(14) バスケットアセンブリを形成するように前記スパインのそれぞれの遠位端部を接合することを更に含み、前記デバイスが前記体腔内に配備されるときに前記リブが径方向外向きに湾曲し、それによって前記電極が前記体腔内の組織に接触する、実施態様13に記載の方法。
(15) リブは、前記デバイスが前記体腔内に挿入されている間、前記スパインが前記挿入チューブの軸に沿って整列されるように、径方向内向きに折り畳まれるように構成されている、実施態様13に記載の方法。
【0038】
(16) 前記挿入チューブは、前記患者の心臓の室への挿入用に構成された柔軟カテーテルを含み、前記電極は、前記室内の心筋組織に接触し、前記心筋組織に電気エネルギーを印加するように構成されている、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記弾性リブは金属スラットを含む、実施態様13に記載の方法。
(18) 前記柔軟ポリマースリーブは熱可塑性エラストマーチューブを含む、実施態様13に記載の方法。
(19) 前記柔軟ポリマースリーブを成形することは、前記熱可塑性エラストマーチューブを前記リブ及び前記マンドレルの形状へと収縮させるのに十分な温度に、前記熱可塑性エラストマーチューブを加熱することを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記挿入チューブを通って延びる潅注マニホールドに前記スパインの各々の前記ルーメンを結合することと、前記電極の近傍において前記柔軟ポリマースリーブを通って前記ルーメンに向かう潅注出口を形成することと、を更に含み、それによって、前記潅注マニホールドを通過する潅注流体が前記潅注出口を通って前記ルーメンから流出する、実施態様13に記載の方法。
【0039】
(21) ワイヤを前記ルーメンに通すことと、前記ワイヤを前記電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続することと、を更に含む、実施態様13に記載の方法。
【外国語明細書】