(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176182
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】香りサンプル送付用紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 27/00 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
B65D27/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116844
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2021082496の分割
【原出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】509282767
【氏名又は名称】エッセンス オブ ネイチャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(74)【代理人】
【識別番号】100165146
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 博喜
(74)【代理人】
【識別番号】100211281
【弁理士】
【氏名又は名称】大木下 香織
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢一
(57)【要約】
【課題】一枚の矩形上の用紙を折り曲げて、香料を含浸した香りサンプルの試香紙(匂い紙、ムエット、又は香料試験紙、等)を複数個収納して送付することができる、香りサンプル送付用紙の製造方法を提供する。
【解決手段】第1シート部1(第1内側面2、第1外側面3)、第2シート部4(第2内側面5、第2外側面6)及び第3シート部7(第3内側面8、第3外側面9)から構成されるシートSを3つ折りの形状とし、第3シート部7を折り曲げて第2内側面5と接着して袋部21を構成し、試香紙30を袋部21に挿入して、第1内側面2(第1外側面3)と第2内側面5(第2外側面6)とを接着することにより、複数の袋部を有する香りサンプル送付用紙を形成する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のシートを折り曲げて形成される香りサンプル送付用紙の製造方法であって、
前記シートに複数の折り曲げ線を形成して、前記シートを第1シート部、前記第1シート部と第2シート部の間の第1折り曲げ線、前記第2シート部、前記第2シート部と第3シート部の間の第2折り曲げ線及び前記第3シート部を形成するスジ押し工程と、
前記第3シート部の端部に、複数の連続した切り欠け形状の試香紙誘導口を形成する誘導口形成工程と、
再剥離性糊及び接着剤を塗布する接着剤塗布工程と
前記第3シート部を前記第2折り曲げ線で折り曲げて前記第2シート部に接着し袋部を形成する袋部形成工程と、を有することを特徴とする香りサンプル送付用紙の製造方法
【請求項2】
一枚のシートを折り曲げて形成される香りサンプル送付用紙の製造方法であって、
前記シートに複数の折り曲げ線を形成して、前記シートを第1シート部、前記第1シート部と第2シート部の間の第1折り曲げ線、前記第2シート部、前記第2シート部と第3シート部の間の第2折り曲げ線及び前記第3シート部を形成するスジ押し工程と、
前記第3シート部の端部に、複数の連続した切り欠け形状の試香紙誘導口を形成する誘導口形成工程と、
再剥離性糊及び接着剤を塗布する接着剤塗布工程と
前記第3シート部を前記第2折り曲げ線で折り曲げて前記第2シート部に接着し袋部を形成する袋部形成工程と、
香料を含浸した試香紙を前記袋部に挿入する挿入工程と、
前記シートを前記第1折り曲げ線で折り曲げて、前記第1シート部と、前記第2シート部及び前記第3シート部を折り畳んで接着する折り曲げ・接着工程と、を有することを特徴とする香りサンプル送付用紙の製造方法
【請求項3】
前記接着剤塗布工程は、前記第3シート部の折り曲げ線から試香紙誘導口の方向に向かって、接着剤を塗布することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の香りサンプル送付用紙の製造方法
【請求項4】
前記接着剤塗布工程は、前記シートを折り畳んだ時に前記第3シート部の試香紙誘導口と重なる前記第1シート部の位置に、再剥離性糊を塗布することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の香りサンプル送付用紙の製造方法
【請求項5】
前記袋部形成工程は、前記第3シート部を前記折り曲げ線で折り曲げて前記第2シート部に前記接着剤で接着し、前記試香紙誘導口を開口部とした連続した袋部を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の香りサンプル送付用紙の製造方法
【請求項6】
前記接着剤塗布工程は、前記袋部を形成した前記第2シート部と前記第3シート部を接合してできた面に対面する前記第1シート部の内側面全体に、再剥離性糊を塗布することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の香りサンプル送付用紙の製造方法
【請求項7】
前記折り曲げ・接着工程は、前記第1シート部と前記第2シート部とを前記第1折り曲げ線で折り曲げて、前記試香紙誘導口を前記第1シート部の前記再剥離性糊を塗布した部分で塞ぎ、且つ前記第1シート部と前記第2シート部を前記再剥離性糊で接着すること
を特徴とする請求項2に記載の香りサンプル送付用紙の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香りサンプル送付用紙の製造方法及び香りサンプル送付用紙に係り、更に詳しくは、一枚の矩形状の用紙を折り曲げて、香料を含浸した香りサンプルとなる試香紙(匂い紙、ムエット、又は香料試験紙、等)を複数個収納して送付することができる、香りサンプル送付用紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場には、香水や化粧品、柔軟剤やシャンプー等のトイレタリー商品、或いはアロマディフューザーやリードディフューザー等、香りの良さを訴求する商品や香り自体を販売する商品が多く存在する。これらの商品を通信販売する場合、顧客は購入前に商品の香りを確認したいものだが、売り手側が香りサンプルを提供するのが難しいという難点がある。
よって、これらの商品の販売前に何らかの形で顧客が商品の香りを確認できる方法を準備する必要がある。香水であれば、香水を少量入れたバイアル瓶を送付したり、化粧品やシャンプーであれば4方シールやパウチを称するアルミ蒸着の小袋に入れたサンプルを封書等で送るなどの方法を採れるが、アロマディフューザーやリードディフューザー等のように、用途が純粋に香りを嗅ぐだけの商品の場合に、ただ香りを確認して貰い、選んで貰うために何種類もの香りサンプルが入ったバイアル瓶やパウチで香りサンプルを送るという方法は、余りにもコスト高となり、且つ郵送費もかかるため非現実的であり、今まで採用されてこなかった。
【0003】
公知の香料提示用具として、複数の香料保持材収容部を有し、香料保持材収容部に香料保持材を挿入、抜出することで、複数の香料の提示が可能である。
香料保持材収容部2は、略扁平の袋状をなす部分であり、基部1に保持され、香料を揮散可能に保持する香料保持材H(匂い紙(ムエット、香料試験紙、又は試香紙とも呼ばれる))を挿入、抜出、及び表出可能な開口部3を有し、かつ、香料が漏れないよう香料不透過性材料で構成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された香料提示用具の構成では、基部1から香料保持材収容部2が独立して離間して設けられているため、香料保持材収容部2の部品が要求されることとなり、製造コストが増すだけでなく、香料保持材収容部2を基部1に接着して一体化させる製造工程も付加されるという不都合がある。
また、例えば、当該香料提示用具を顧客に送る際には、さらに送付に係る準備が必要となる。すなわち、香料保持材収容部2への香料保持材Hの挿入、別途封書及び説明書等の手配、これらの封書等への封入作業が別途必要となり、これらの準備作業は販売店側の負担となるものである。特許文献1では、これらの負担や、準備作業の削減についての考察はなされていない。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、本発明の他の目的は、一枚の矩形上の用紙を折り曲げて、熱溶着や糊接着して香料を含浸した香りサンプルとなる試香紙(匂い紙、ムエット、又は香料試験紙、等)を複数個収納する収納部を形成し、さらにはがきもしくは封筒等の形状に組立てられる一体化構成とすることで、部品点数の増加を回避し、構成の簡易化を通じて製造コストの低廉化を図ることができ、さらに送付に係る準備を簡易化することができる、香りサンプル送付用紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る香りサンプル送付用紙の製造方法は、一枚のシートを折り曲げて形成される香りサンプル送付用紙の製造方法であって、前記シートに複数の折り曲げ線を形成して、前記シートを第1シート部、前記第1シート部と第2シート部の間の第1折り曲げ線、前記第2シート部、前記第2シート部と第3シート部の間の第2折り曲げ線及び前記第3シート部を形成するスジ押し工程と、前記第3シート部の端部に、複数の連続した切り欠け形状の試香紙誘導口を形成する誘導口形成工程と、再剥離性糊及び接着剤を塗布する接着剤塗布工程と前記第3シート部を前記第2折り曲げ線で折り曲げて前記第2シート部に接着し袋部を形成する袋部形成工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る香りサンプル送付用紙の製造方法は、一枚のシートを折り曲げて形成される香りサンプル送付用紙の製造方法であって、前記シートに複数の折り曲げ線を形成して、前記シートを第1シート部、前記第1シート部と第2シート部の間の第1折り曲げ線、前記第2シート部、前記第2シート部と第3シート部の間の第2折り曲げ線及び前記第3シート部を形成するスジ押し工程と、前記第3シート部の端部に、複数の連続した切り欠け形状の試香紙誘導口を形成する誘導口形成工程と、再剥離性糊及び接着剤を塗布する接着剤塗布工程と前記第3シート部を前記第2折り曲げ線で折り曲げて前記第2シート部に接着し袋部を形成する袋部形成工程と、香料を含浸した試香紙を前記袋部に挿入する挿入工程と、前記シートを前記第1折り曲げ線で折り曲げて、前記第1シート部と、前記第2シート部及び前記第3シート部を折り畳んで接着する折り曲げ・接着工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る香りサンプル送付用紙の製造方法の前記接着剤塗布工程は、前記第3シート部の折り曲げ線から試香紙誘導口の方向に向かって、接着剤を塗布することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る香りサンプル送付用紙の製造方法の前記接着剤塗布工程は、前記シートを折り畳んだ時に前記第3シート部の試香紙誘導口と重なる前記第1シート部の位置に、再剥離性糊を塗布することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る香りサンプル送付用紙の製造方法の前記袋部形成工程は、前記第3シート部を前記折り曲げ線で折り曲げて前記第2シート部に前記接着剤で接着し、前記試香紙誘導口を開口部とした連続した袋部を形成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る香りサンプル送付用紙の製造方法の前記接着剤塗布工程は、前記袋部を形成した前記第2シート部と前記第3シート部を接合してできた面に対面する前記第1シート部の内側面全体に、再剥離性糊を塗布することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る香りサンプル送付用紙の製造方法の前記折り曲げ・接着工程は、前記第1シート部と前記第2シート部とを前記第1折り曲げ線で折り曲げて、前記試香紙誘導口を前記第1シート部の前記再剥離性糊を塗布した部分で塞ぎ、且つ前記第1シート部と前記第2シート部を前記再剥離性糊で接着することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る香りサンプル送付用紙は、一枚のシートを折り曲げて形成される香りサンプル送付用紙であって、前記シートに複数の折り曲げ線を形成して、前記シートを第1シート部、前記第1シート部と第2シート部の間の第1折り曲げ線、前記第2シート部、前記第2シート部と第3シート部の間の第2折り曲げ線及び前記第3シート部を有し、前記第3シート部の端部に切り欠いて形成された連続する試香紙誘導口と、前記第3シート部を前記折り曲げ線で折り曲げて前記第2シート部と前記第3シート部とを接着して形成された試香紙誘導口から試香紙を挿入する複数の連続した袋部と、を有する構成であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る香りサンプル送付用紙の前記袋部は、前記第3シート部の折り曲げ線から試香紙誘導口の方向に向かって袋状に形成され、複数の前記袋部が連続して設けられており、隣接する袋部とは接着剤によって仕切られることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る香りサンプル送付用紙の前記袋部は、前記シートを前記第1折り曲げ線で折り畳んだ時に、第1シート部に塗布された再剥離性糊によって前記試香紙誘導口が塞がれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一枚のシートに第1シート部、第2シート部及び第3シート部を形成して、折り曲げて香りサンプル送付用紙を製造する製造方法であるので、一枚のシートから容易に香りサンプル送付用紙を製造することができ、使用する材料、製造工程の削減を図ることができる。
【0018】
また、誘導口形成工程で、第3シート部の端部に、複数の連続した形状の試香紙誘導口を形成し、第2シート部と第3シート部を折り曲げて前記試香紙誘導口を開口部とした複数の連続した袋部を形成することにより、複数の試香紙(香りサンプル)を当該袋部に格納することができるので、使用する材料、製造工程の削減と、1枚の香りサンプル送付用紙で複数の試香紙(香りサンプル)を簡単に提供することができる。
【0019】
また、試香紙誘導口を、再剥離性糊を塗布してある前記第1シート部の一部分で覆うことで、香料が折り畳んだシートSの内側に漏れ出ることを防ぎ、折り畳んだシートSの内側で異なる香料が混じり合うことを防ぐことができる。
【0020】
また、前記試香紙誘導口を覆う前記第1シート部の前記再剥離性糊は、第1シート部と第2シート部との接着のための前記再剥離性糊を兼ねることにより、使用する材料、製造工程の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る香りサンプル送付用紙の製造処理フローを示す図。
【
図2】実施形態に係る香りサンプル送付用紙の折り曲げ方の説明を示す図。
【
図3】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートの切断工程を示す図。
【
図4】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートの折り曲げ線の生成を示す図。
【
図5】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートの試香紙誘導口の生成を示す図。
【
図6】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートへの接着剤の塗布を示す図。
【
図7】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートの袋部を作成する状態を示す図。
【
図8】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートの袋部を作成した状態を示す図。
【
図9】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートの説明記入部を作成した状態を示す図。
【
図10】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートへ試香紙を挿入する状態を示す図。
【
図11】実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートへ試香紙を挿入した状態を示す図。
【
図12】実施形態に係る香りサンプル送付用紙を折り曲げて接着する状態を示す図。
【
図13】実施形態に係る香りサンプル送付用紙を折り曲げて接着する状態の内部を示す断面図。
【
図14】実施形態に係る香りサンプル送付用紙を折り曲げ、貼り合わせた後の完成状態を示す図。
【
図15】他の実施形態に係る香りサンプル送付用紙のシートの袋部を作成する状態を示す図。
【
図16】他の複合的な実施形態2に係る香りサンプル送付用紙のシートの袋部を作成する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る香りサンプル送付用紙の製造方法について図面を参照しながら説明する。香りサンプル送付用紙のシートSは、
図2に示されるように、第1シート部1(第1内側面2、第1外側面3)、第2シート部4(第2内側面5、第2外側面6)及び第3シート部7(第3内側面8、第3外側面9)から構成されるシートSを3つ折りの形状とし、第3シート部7を折り曲げて第2内側面5と接着して袋部21を構成し、試香紙30を袋部21に挿入して、第1内側面2(第1外側面3)と第2内側面5(第2外側面6)とを接着することにより、3つ折りの形状で形成される。
各部材の詳細な構成を製造工程に沿って説明する。
図1乃至
図14は、本実施形態に係る香りサンプル送付用紙の製造工程について示す図である。
図1は実施形態に係る香りサンプル送付用紙の製造処理フローを示す図である。
【0023】
(1)シート切断工程
まず、シート切断工程は、
図3及び
図4に示されるように、シートSを、所定のサイズにカットする(
図1に示すステップS1)。
シートSをカットする辺Hは、一般的な官製はがきの長辺と同様の148mm程度、辺L(L1+L2+L3)は、長さが220~280mmの間に収まる矩形にカットする。なお、辺L1及びL2は一般的な官製はがきの短辺と同じ100mm程度、辺L3はL1及びL2より短ければよく、20~80mm程度が望ましい。
【0024】
シートSは、ガスバリア性の高いポリプロピレン(PP)等のフィルムを貼る(PP加工)のに適した適度な厚みの紙が好ましい。例えば、第1シート1と第2シート4を貼り合わせた後の坪量が官製はがき程度の坪量(約210g/m2)を有する紙を用いることが例示できる。
また、印刷会社が一般的に行う印刷工程で、第1内側面2、第1外側面3、第2内側面5に必要な印刷を施し、紙の両面全体もしくは両面の一部にPP貼り加工を施す。或いは、紙に代えて印刷を施した適度な厚みの樹脂製(ガスバリア性の高いPPが望ましい)シートでも良い。但し、PP加工するPPもしくは樹脂製シートの表面は、ペン書きが可能な艶消しのマット調であることが望ましい。
なお、樹脂はガスバリア性のあるポリ塩化ビニリデン(PVDC)、延伸ポリプロピレン(OPP)や延伸ナイロン(ONy)、アルミニウム箔(AL箔)、アルミ蒸着フィルム(ALVM)等が知られており、ポリプロピレン(PP)に代えていずれの素材を用いてもよい。
【0025】
(2)スジ押し工程
次に、スジ押し工程は、
図4に示されるように、ステップS1で切断したシートSに対して、シートSを折り曲げ易くするための、折り曲げ線を加工する(
図1に示すステップS2)。
シートSに対して、L1、L2及びL3のサイズを採寸し、L1、L2の境界位置に第1折り曲げ線11を、L2、L3の境界位置に第2折り曲げ線12を、それぞれスジ押し加工する。これにより、シートSは、第1シート部1(第1内側面2、第1外側面3)、第2シート部4(第2内側面5、第2外側面6)及び第3シート部7(第3内側面8、第3外側面9)の3つの部分に分けられる。スジ押し加工の方向は、
図2に示されるように、第1内側面2と第2内側面5が対面するように第1折り曲げ線11を谷折り方向に成形する。また、第2内側面5及び第3内側面8が対面するように第2折り曲げ線12を谷折り方向に成形する。
【0026】
なお、第1シート部1の第1内側面2は、再剥離性糊13A、13Bを塗布するため糊付け面であり、あらかじめ広告、説明等を印刷しておいてもよい。
第1シート部1の第1外側面3は、シートSを折り畳んだ時に、はがきの裏面を構成する。あらかじめ広告、説明等を印刷しておいてもよい。
第2シート部4の第2内側面5は、シートSを折り畳んだ時に、第1内側面2及び第3外側面9と接着されて、シートSの内側の一面を構成する。
第2シート部4の第2外側面6は、シートSを折り畳んだ時に、はがき表面の宛名面を構成する。切手を貼ったり、宛名、住所/居所を記入するスペースを有する。
第3シート部7の第3内側面8は、シートSを折り畳んだ時に、第2内側面5と接着されて、複数の袋部21の内側を構成する。
第3シート部7の第3外側面9は、シートSを折り畳んだ時に、第2内側面5と共に、第1内側面2と接着されて、複数の袋部21の外側とシートSの内側の一面を構成する。
【0027】
また、第1外側面3を宛名、住所/居所を記入する面として、第2外側面6を広告、説明等を印刷する面としてもよい。また、シートSを郵送しない場合は、第1外側面3及び第2外側面6の両面とも、広告、説明等を印刷する面としてもよい。
【0028】
(3)誘導口形成工程
次に、誘導口形成工程は、
図5に示されるように、第3シート部7の第2シート部4とは反対側の短辺部に、複数の連続した切り欠け形状の試香紙誘導口20を形成する加工をする(
図1に示すステップS3)。
試香紙誘導口20は、第3内側面8と第2内側面5を接着して成る袋部2に、試香紙30を挿入するための入り口である。試香紙誘導口20を設けることによって、試香紙30を袋部21に挿入する際に、入り口に試香紙30が引っかからず、スムーズに試香紙30を袋部21に挿入することができる。
【0029】
本実施例では試香紙誘導口20の切り欠け形状は、試香紙30を挿入し易いように半円形で形成している。しかし、試香紙誘導口20の切り欠け形状はこれに限定するものでは無く、三角形、半楕円形、矩形等、いずれの形状で形成してもよい。
また、本実施例に限定するものでは無く、試香紙誘導口20を第3内側面8の端部に設置する個数は、試香紙30を挿入する数によって任意の個数で良い。また、試香紙誘導口20のサイズも、使用する試香紙30の大きさに併せて、適宜なサイズで良い。また、任意の形状とサイズを混在させるような構成としてもよく、自由度の高い構成として良い。
【0030】
(4)接着剤塗布工程
次に接着剤塗布工程は、
図6に示されるように、第1内側面2と第2内側面5を接着するための再剥離性糊13A、13Bを第1内側面2の表面に塗布し、及び、第3内側面8と第2内側面5とを接着するための強接着剤23を、第3内側面8の表面に塗布する(
図1に示すステップS4)。
【0031】
先ず、第1内側面2に再剥離性糊13Aを塗布する工程を説明する。第1内側面2の4辺の縁部に、縁部から3mm~8mm程度の幅で再剥離性糊13Aを塗布する。なお、第1折り曲げ線11に沿った縁部は第2内側面5と連続しているため、再剥離性糊13Aの塗布を省略してもよい。本実施例では、省略して3辺の縁部に再剥離性糊13Aを塗布する例を示している。
【0032】
次に、再剥離性糊13Bを第1内側面2の略中央部に上端部と下端部を繋ぐ形で、10mm~15mm程度の幅で塗布する。再剥離性糊13Bは、折り畳んで第1内側面2を第2内側面5及び第3外側面9と接着する際に、試香紙誘導口20に重なり合う位置に塗布する(
図13を参照)。塗布された再剥離性糊13Bは、第1内側面2と第2内側面5及び第3外側面9を接着する用途と、袋部21の試香紙誘導口20を塞ぐ用途を兼ねる。
【0033】
なお、再剥離性糊13A、13Bを塗布後に、第1内側面2が不用意に第2内側面5に貼り着いたり、再剥離性糊13A、13Bに異物が付着することを防止するため、第1内側面2全体にセパレート紙(図示せず)や樹脂フィルム(図示せず)等を一時的に置くようにしてもよい。
【0034】
また、再剥離性糊13Bは第1内側面2の全面に塗布するようにしても良い(図示せず)。この場合、塗布された再剥離性糊13Bは、第1内側面2と第2内側面5及び第3外側面9の全面を接着する用途と、袋部21の試香紙誘導口20を塞ぐ用途を兼ねる。
【0035】
次に、
図6に示されるように、第3内側面8の表面に、第3内側面8と第2内側面5とを接着する為の強接着剤23を塗布する。強接着剤23は、第3内側面8と第2内側面5とを接着した箇所は再度剥がす必要がないので強力な接着力を有するもの、且つ、袋部21に格納された香料含侵部31の香料が漏れださないように、香料不透過性の素材を含む接着剤が望ましい。
【0036】
図6に示されるように、第3内側面8の第2折り曲げ線12側から試香紙誘導口20方向に向かって、袋部21の三方向を囲むようなコの字型に、強接着剤23を塗布する。この時、袋部21の幅BWは、試香紙30(
図10に示す)の幅TWより大きく設け、また、袋部21の長さBLは、試香紙30に含浸させた香料含侵部31の範囲全部が袋部21に格納されるように袋部21の範囲を確保して強接着剤23を塗布する。強接着剤23の塗布した範囲はコの字型が連続した櫛形に見えるように形成する。
【0037】
(5)袋部形成工程
次に袋部形成工程は、
図7に示されるように、第2折り曲げ線12でシートSの第3シート部7(第3内側面8、第3外側面9)の部分を折り曲げ、第2内側面5と第3内側面8とを強接着剤23で接着し、袋部21を形成する(
図1に示すステップS5)。
【0038】
図8に示されるように、第2内側面5と第3内側面8が接着されると、試香紙誘導口20が開口し、三方向が閉じられた袋部21が横方向に連続して形成される。隣接する袋部21と袋部21の間は、強接着剤23が仕切りの役割をする。これにより、隣接する試香紙30の香料含侵部31の香りが混合することを防ぐことができる。
この袋部21は、試香紙30を差し込む場所になる。袋部21の開口側には、試香紙誘導口20が半円状にカットされており、このカットされた場所が、試香紙30を差し込む場所であることを示すと同時に、試香紙30の誘導口になる。
【0039】
図9に示されるように、試香紙誘導口20の第3内側面8の先端部が第2内側面5と強接着剤23で接着してないが、これは試香紙30を袋部21に差し込む際に、この未接着部分をつまみ上げることで試香紙30を差込み易くするためである。また、この部分が強接着剤23で接着、溶着されていても良い。
【0040】
図9に示されるように、第2内側面5上の試香紙誘導口20と対になるスペースには、説明記入部15を設ける。説明記入部15は、各試香紙30に係る情報等を記入する。例えば、試香紙30に係る含侵させた香料の名称、効能等を記入すると好適である。
上記の(1)~(5)の工程により、シートSに袋部21を製造することができる。
【0041】
(6)挿入工程
次に、挿入工程は、
図10、
図11に示されるように、袋部21に試香紙30を挿入する(
図1に示すステップS6)。
試香紙30は、矩形、棒状等の薄くて細い板状の香りサンプル形状であり、一方の端部が香料を含浸させた香料含侵部31となる。試香紙30の素材は香料を着けても化学変化せず、香料の含浸性がよく、香りの保留性も高い素材であれば、紙片、繊維等、特に限定するものでは無い。試香紙30の香料含侵部31への香料含浸方法については、公知の製法で良い。
試香紙30は、試香紙誘導口20から袋部21に挿入し、香料を含浸させた香料含侵部31の全範囲が袋部21に格納されるように挿入する。
【0042】
(7)折り曲げ・接着工程
次に、折り曲げ・接着工程は、
図12に示されるように、第1折り曲げ線11でシートSの第1シート部1(第1内側面、第1外側面3)の部分を折り曲げ、第1内側面2と第2内側面5及び第3外側面9を再剥離性糊13A、13Bで接着する(
図1に示すステップS7)。
この時、
図13に示されるように、再剥離性糊13Bが、試香紙誘導口20に重なり合う構成になっている。再剥離性糊13Bが試香紙30挿入後の試香紙誘導口20の周囲を塞ぐことで、袋部21内の試香紙30(香料含侵部31)に含侵された香料が、試香紙誘導口20の隙間から折り畳んだシートSの内側に漏れ出ることを防ぎ、折り畳んだシートSの内側で異なる香料が混じり合うことを防ぐことができる。
【0043】
このように上記工程を経て完成した香りサンプル送付用紙の状態を
図14(A)及び(B)に示す(
図1に示すステップS8)。
図14(A)に示すシートSの第2外側面6は、はがき形状の表面であり、送付先の住所、宛名、切手等を記載する。また、
図14(B)に示すシートSの第1外側面3は、はがき形状の裏面であり、内容物の説明や広告等を印刷、記載等する。
【0044】
図14(A)(B)に示す完成したシートSを受取人が受け取った際に、シートSは第1内側面2と、第2内側面5と第3外側面9が貼り合わさった面とが再剥離性糊13A、13Bで接着された状態(俗に言うシークレットハガキ、もしくは圧着ハガキの状態)になっているが、再剥離性糊13A、13Bで弱く接着されている状態に過ぎないので、貼り合わさった部分を簡単に剥がすことができ、
図11(A)(B)の状態に戻すことができる。そして、試香紙誘導口20、袋部21から、試香紙30を取り出し、試香紙30の香料含侵部31に含侵された香りを嗅ぐことができる。
【0045】
なお、本発明の製造方法は、(1)シート切断工程乃至(5)袋部形成工程までの前半の工程と、(6)挿入工程及び(7)折り曲げ・接着工程の後半の工程に大別できるが、前半の工程と後半の工程を別の主体(作業者、工場等)が実施し製造して、
図14(A)(B)に示すシートSを完成させるようにしてもよい。
【0046】
本発明を実施するための最良の構成、方法、製造ステップなどは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0047】
例えば、本実施例では完成したシートSが官製はがきサイズであることを例として説明したが、形状やサイズを限定するものではない。完成したシートSが定形封筒、或いは郵送可能な様々な形状(矩形、多角形、円形、曲線を用いた形状)等、サイズを大型化、或いは小型化した設計でも良い。
【0048】
また、本実施例では、
図6、
図8に示されるように、試香紙誘導口20及び袋部21はすべて同じサイズであるが、縦横のサイズをそれぞれ変えて混在する構成にしてもよい。
また、試香紙誘導口20及び袋部21は辺L1及びL2に並行して構成されているが、試香紙30(香料含侵部31)に含侵された香料が混合しなければ、
図15(A)(B)に示すように、辺L1及びL2に対して直角方向に構成してもよく、また
図16に示すように、これらを混合したり、これらすべてを一度に実施しても良い。そのようにした場合、本香りサンプル用紙で、一度に提供もしくは送付できる香りの種類や数を増やすことができ、非常に便利である。さらには試香紙誘導口20及び袋部21を曲面、円形状に配置するように構成してもよい。
【0049】
また、強接着剤23を塗布する工程に代えて、この部分を熱溶着もしくは超音波溶着など他の溶着・接着方法で製造する構成にしても良い。袋部21から香料含侵部31に含侵された香料が漏れださない構造であれば良いのである。
【0050】
加えて、再剥離性糊13Bを塗布する代わりに、10mm~15mm程度の幅の再剥離性糊が付いたアルミ箔テープもしくはアルミ蒸着テープ等ガスバリア性のあるテープを、袋部21に試香紙30を挿入した後に貼るようにしても良い。更に、再剥離性糊13Aに代えて、通常の糊を点線状に塗布することでも良い。要は再剥離できる状態に維持できれば良いので、接着方法は問わない。
【符号の説明】
【0051】
S シート
1 第1シート部
2 第1内側面
3 第1外側面
4 第2シート部
5 第2内側面
6 第2外側面
7 第3シート部
8 第3内側面
9 第3外側面
11 第1折り曲げ線
12 第2折り曲げ線
13A、13B 再剥離性糊
15 説明記入部
20 試香紙誘導口
21 袋部
23 強接着剤
30 試香紙
31 香料含侵部