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特開2022-176216ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する非架橋性共重合体の発泡性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176216
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する非架橋性共重合体の発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20221117BHJP
   B29C 44/02 20060101ALI20221117BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20221117BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEZ
B29C44/02
B29C44/00 D
B29C44/36
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022143946
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2019542514の分割
【原出願日】2018-02-08
(31)【優先権主張番号】1751046
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コケッ,クリオ
(72)【発明者】
【氏名】シュミネ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナグ,フランスワ
(72)【発明者】
【氏名】デイレユ,イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ピオ,クエンティン
(57)【要約】
【課題】下記(1)~(3)の1つまたは複数の有利な特性を有する低密度のポリマー発泡体を提供する:
(1)低応力下での弾性エネルギー回復能が高く、
(2)圧縮残留変形が低く、
(3)圧縮疲労(強度が高い。
【解決手段】本発明は、ガスを封入した独立気泡を有するポリマーマトリックスの形をした非架橋性の発泡性組成物であって、上記マトリックスが発泡性組成物の総重量に対して、90~99.9重量%の少なくとも1種のブロックコポリマーと、0.01~10重量%の金属炭酸塩とを含むハードブロックとソフトブロックとを有するコポリマーから成ることを特徴とする非架橋性発泡性組成物に関する。本発明はさらに、この発泡性組成物の製造方法と、この発泡性組成物のスポーツシューズの底、ボール、手袋、プロテクター、レールパッド、自動車部品、建設材料、電気・電子機器、オーディオ機器、遮音および/または断熱材料および制振部品での使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを含む独立気泡を含むポリマーマトリックスの形態である非架橋性ハード-ソフトブロックコポリマー発泡体組成物であって、前記マトリックスが、前記発泡体組成物の総質量に対して:
- 90から99.9質量%の少なくとも1種のブロックコポリマー;及び
- 0.01から10質量%の金属炭酸塩
を含む、非架橋性ハード-ソフトブロックコポリマー発泡体組成物。
【請求項2】
前記ガスが、CO2、H2O、N2及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のブロックコポリマーが、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリアミドブロック、ポリウレタンブロック、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種のブロックを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
- 前記コポリマー中の前記ハードブロックが200から2000g/モルの数平均分子量を有し;
- 前記コポリマー中の前記ソフトブロックが800から2500g/モルの数平均分子量を有し;
- 前記コポリマー中の前記ソフトブロックに対する前記ハードブロックの重量比が0.1から2である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のコポリマーがポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記コポリマー中の前記ポリアミドブロックが、以下のポリアミド単位:11、12、6、6.10、6.12、10.10、10.12およびこれらの組み合わせの少なくとも1つを含むブロックである、請求項5に記載の発泡体組成物。
【請求項7】
前記コポリマーの前記ポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコール又はポリテトラメチレングリコールのブロックである、請求項5又は6に記載の発泡体組成物。
【請求項8】
0.1から50質量%の、好ましくはエチレンビニルアセテートコポリマー、エチレン-アクリレートコポリマー、及びエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーから選択される1種又は複数の添加剤、並びに/又は0.1から10質量%の、核形成剤から選択される添加剤、特に無機充填剤、例えばタルクをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の発泡体組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の発泡体組成物から構成される、物品。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物を有する発泡体から構成される少なくとも1つの要素を含む、物品。
【請求項11】
スポーツシューズのソール、バルーン、ボール、手袋、個人用保護装置、レールのソール(ダンピングパッド)、自動車部品、ベビーカー部品、ホイール、ハンドル、シート部材、子供用カーシート部材、建設部品、電気又は電子機器部品、オーディオ機器部品、遮音材及び/又は断熱に使用される部品、例えば輸送車両により生み出される衝撃を吸収又は振動を減衰するように設計された部品、タイヤ等のソフトライドホイール、並びにこれらの物品の組み合わせを含む任意の物品から選択される、請求項9又は10に記載の物品。
【請求項12】
- (a)90から99.5質量%、好ましくは95から99質量%、好ましくは95から98質量%の請求項1から7のいずれか一項に規定のブロックコポリマー;
- (b)0.5から10質量%、好ましくは1から5質量%、好ましくは2から5質量%の金属炭酸水素塩並びに少なくとも1種の以下から選択される成分:
- 2から10個の炭素原子及び少なくとも2個のカルボキシル基を含むポリカルボン酸;
- 前記酸の金属塩;
- 前記ポリカルボン酸のエステルであって、前記カルボキシル基の少なくとも一つが1から6個の炭素原子を含むアルコールでエステル化されている、ポリカルボン酸のエステル;及び
- これらの混合物
を含む発泡剤;
を含む発泡性ブロックを有するコポリマー組成物であって、
前記質量パーセントは前記発泡性組成物の総質量に対するものである、発泡性ブロックを有するコポリマー組成物。
【請求項13】
前記発泡剤はアルカリ金属炭酸水素塩及びクエン酸又はその塩を含む、請求項12に記載の発泡性コポリマー組成物。
【請求項14】
ガスを含み、90から250℃の範囲に含まれる温度で発泡する熱可塑性カプセルを組成物の総質量に対して0.5から20質量%さらに含む、発泡性ブロックコポリマー組成物であって、前記カプセルは、発泡体中で発泡前に8から20μmの範囲に含まれる平均D50サイズを有し、発泡後に30から130μmの範囲に含まれる平均D50サイズを有する、請求項12又は13に記載の発泡性ブロックコポリマー組成物。
【請求項15】
組成物の総質量に対して0.1から10質量%、好ましくは0.1から3質量%の、少なくとも一種の物理的発泡剤、好ましくは二窒素、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、及びこれらの混合物から選択される物理的発泡剤をさらに含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の発泡性ブロックコポリマー組成物。
【請求項16】
組成物の総質量に対して10から50質量%の、ゼオライト及び/又はアルカリ土類金属酸化物を含む乾燥剤をさらに含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の発泡性ブロックコポリマー組成物。
【請求項17】
- 請求項12から16のいずれか一項に記載の発泡性組成物を提供する工程;
- 前記ポリマーが溶融し前記発泡剤が分解して、溶融したポリマー中にCO2、H2O及び/又はN2がガスの形態で分散するような温度まで前記組成物を加熱する工程;
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の発泡体を製造する方法。
【請求項18】
前記発泡性組成物をモールド内に注入する工程を含み、
- 前記モールド内への前記発泡性組成物の注入時に;
及び/又は
- 前記モールドの型開きにより
その加熱が達成された時に前記組成物の発泡が実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記発泡性組成物を押出し、直接押出機の出口で、発泡剤の分解による前記組成物の発泡を誘導する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
反応器内で前記発泡性組成物を加熱する工程(「バッチ」法)を含み、圧力及び/又は温度スイングに熱力学的不安定性を生じさせることが可能であり、これにより前記組成物の発泡をもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
特に加熱工程において、溶融したコポリマー並びに化学的発泡剤及び任意選択で1種又は複数の添加剤を混合する工程をさらに含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも一種の物理的発泡剤が前記発泡性組成物にさらに添加され、前記物理的発泡剤は好ましくは二窒素、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、及びこれらの混合物から選択される、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ガス注入装置を一切使用しないことを特徴とする、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体から作られる発泡体と、その製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用品の分野、例えばスポーツシューズのソールやソール部品、手袋、ラケット、ゴルフボール、スポーツ用プロテクション部品(ベスト、ヘルメットインナーパーツ等)、遮蔽材料の分野、特に遮音材および/または断熱材では種々のポリマー発泡体が使用されている。
【0003】
これらの用途では、軽量で、反発力があり、圧縮永久歪みが少なく、耐反復衝撃能力に優れ、元の形状に戻る能力に優れるといった物理的特性のセットが要求される。
【0004】
[特許文献1](欧州特許第EP0405227号)および[特許文献2](欧州特許第EP0402883号)には種々のポリマーから作られた発泡体とその靴底製造での使用が記載されている。
【0005】
[特許文献3](欧州特許第EP1650255号)にはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーから得られる架橋性の発泡体が記載されている。
【0006】
しかし、この架橋性発泡体には製造プロセスに大きな欠点、すなわち、製造時間が一般に長くなり、製造が不連続(バッチ)モードになり、一般に望ましくない化学物質を取り扱う必要があるという欠点がある。しかも、架橋した発泡体のリサイクルは困難である。
【0007】
[特許文献4](国際公開第WO2013/148841号公報)にはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーを含む種々のポリマーの二層押出成形方法が開示されている。
[特許文献5](国際公開第WO2015/052265号公報)には熱可塑性エラストマーポリマーから熱可塑性発泡粒子を製造する方法が開示されている。
【0008】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する共重合体から作られた発泡体粒子はZotefoam社からZOTEK(登録商標)PEBAとして市販されている。しかし、この発泡体粒子には上記の欠点があり、また、製品の耐久性が低い。
【0009】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)または酢酸ビニルコポリマー(EVA)から作られた発泡体も多数存在する。これらのフォーム(発泡体)の欠点は使用温度範囲が比較的狭く、耐久性が低い点にある。さらに、その製造プロセスも制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第EP0405227号公報
【特許文献2】欧州特許第EP0402883号公報
【特許文献3】欧州特許第EP1650255号公報
【特許文献4】国際公開第WO2013/148841号公報
【特許文献5】国際公開第WO2015/052265号公報
【特許文献6】フランス特許第FR0950637号公報
【特許文献7】フランス特許第FR0856752号公報
【特許文献8】フランス特許第FR095063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、下記(1)~(3)の1つまたは複数の有利な特性を有する低密度のポリマー発泡体を提供するというニーズがある:
(1)低応力下での弾性エネルギー回復能(capacite elevee a restituer de l'energie elastique)が高く、
(2)圧縮残留変形(deformation remanente en compression)が低く、
(3)圧縮疲労(fatigue en compression)強度が高い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、これらの有利な特性を得るために、非架橋性の共重合体の発泡体、特に下記特性によって特徴づけられるPEBAの発泡体を開発した:
(1)密度が800kg/m3以下、好ましくは600kg/m3以下、好ましくは500kg/m3以下、好ましくは400kg/m3以下、好ましくは300kg/m3以下、理想的には200kg/m3以下、
(2)気泡(細孔)寸法が均質:各気泡内径の差(気泡寸法μm)が30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、
(3)気泡寸法がガス注入による物理的発泡で得たものより小さく、
(4)発泡部品の外側表面が滑らか。
気泡寸法は走査電子顕微鏡(SEM)を用いて発泡部品で測定する。
【0013】
本発明の発泡気泡のD50は30~130μmの範囲内であるのが有利である。発泡気泡のD50とは試験した気泡の集団をちょうど半分に分ける寸法値に対応すする。換言すれば、D50が130μm以下である本発明発泡体の気泡では、気泡の50%が130μm以下のサイズを有する。D50はISO規格9276-パート1~6:「粒径分析の結果の表現」に従って測定することができる。本明細書ではFEI社のSEM「Quants250」とフトウェア(Fraunhofer)とを使用して発泡体の気泡寸法の分布を求め、それからD50を推定した。
【0014】
本発明の対象は、ガスを含む独立細孔又は気泡を含むポリマーマトリックスの形態であることを特徴とする、非架橋性ハード-ソフトブロックコポリマーの発泡体であって、上記マトリックスが、発泡体組成物(又はマトリックス)の総重量に対して、
90~99.9重量%の少なくとも1種のブロックコポリマーと、
ISO規格11358:2011に従って熱重量(TG)分析によって測定した0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、好ましくは0.5~5重量%、好ましくは0.7~5重量%の金属炭酸塩と、
を含む、非架橋性ハード-ソフトブロックコポリマーの発泡体に関する。
【0015】
上記ガスはCO2、H2O、N2およびこれらの混合物から選択される少なくとも一つの化合物を含むのが有利である。
【0016】
上記の少なくとも1種のブロックコポリマーはポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリアミドブロック、ポリウレタンブロックおよびこれらの混合物から選択される少なくとも一つのブロックを含むのが有利である。
【0017】
本発明組成物では下記であるのが好ましい:
(1)コポリマーのハードブロックが200~2000g/モルの数平均分子量を有し、
(2)コポリマーのソフトブロックが800~2500g/モルの数平均分子量を有し、
(3)コポリマーのポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比は0.1~2である。
【0018】
コポリマーはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーを含むのが有利である。コポリマーのポリアミドブロックはポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12のブロックおよびこれらの混合物であるのが好ましい。コポリマーのポリエーテルブロックはポリエチレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールのブロックであるのが好ましい。
【0019】
本発明の発泡体組成物の密度は800kg/m3以下、好ましくは700kg/m3以下、好ましくは600kg/m3以下、好ましくは500kg/m3以下、好ましくは400kg/m3以下、好ましくは300kg/m3以下、例えば200kg/m3以下であるのが有利である。
【0020】
本発明の発泡体組成物は、(本発明のブロック共重合体とは異なる)1種または複数の他のポリマー、好ましくはエチレンとビニルアセテートとの共重合体、エチレンとアクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体から選択されるポリマーをさらに0.1~50重量%含むのが有利である。
【0021】
本発明はさらに他の対象は下記にある:
(1)本発明による組成物を有する発泡体で作られた物品、または
(2)本発明による組成物を有する発泡体で作られた任意の要素。
【0022】
本発明の対象は特に、スポーツ靴の底、ボール、バルーン、手袋、個人用プロテクター、靴底(クッションパッド)、レール底材料、自動車部品、ベビーカー、ホイール、ハンドル、シート部材、子供用カーシート部品、コンポーネント、電気および/または電子機器、オーディオ機器、防音および/または断熱材料、衝撃および/または振動減衰部品、輸送手段、ホイール、メンテナンスを必要としないタイヤのような可撓性部品およびこれらの混合物を含む任意の物品から選択された物品にある。
【0023】
本発明のさらに他の対象は、下記(a)と(b)を含む発泡性ブロックコポリマー組成物にある:
(a)90~99.5重量%、好ましくは95~99重量%、好ましくは95~98重量%の本発明に規定のブロックコポリマー、
(b)0.5~10重量%、好ましくは1~5重量%、好ましくは2~5重量%の金属炭酸水素塩及び下記の中から選択される少なくとも一つの成分を含む発泡剤:
(1)2~10個の炭素原子と少なくとも2つのカルボキシル基とを有するポリカルボン酸、
(2)上記酸の金属塩、
(3)カルボキシル基の少なくとも一つが1~6個の炭素原子を有するアルコールでエステル化されている上記ポリカルボン酸のエステル、
(4)これらの混合物。
上記の重量パーセントは発泡性組成物の総重量に対するものである。
【0024】
発泡剤はアルカリ金属炭酸水素塩およびクエン酸またはその塩を含むのが有利である。
【0025】
本発明の特定の実施形態では、発泡性ブロックコポリマー組成物は、組成物の総重量に対して0.5~20質量%のガスを封入した熱可塑性カプセル(この熱可塑性カプセルは90~250℃の範囲の温度の作用で膨張する)をさらに含む。このカプセルの膨張前の平均粒径D50は8~20μm、発泡体中で膨張した後の平均粒径D50は30~130μmの範囲である。
【0026】
本発明の発泡性ブロックコポリマー組成物はさらに、ゼオライトおよび/またはアルカリ土類金属酸化物を含む乾燥剤を10~50重量%含むのが有利である。
【0027】
本発明のさらに他の対象は、以下の工程を含む本発明発泡体の製造方法にある:
(1)本発明の発泡性組成物を用意し、
(2)ポリマーが溶融し、発泡剤が分解する温度に上記組成物を加熱して、CO、ΗΟおよび/またはN、好ましくはCOおよびΗΟがガスの形で溶融ポリマー中に分散させる。
【0028】
本発明方法はさらに、加熱工程中に、溶融した共重合体と化学発泡剤との混合物、場合によっては1種または複数の添加剤との混合物を含むのが有利である。
【0029】
本発明方法は本発明組成物の射出工程を含むのが有利である。すなわち、上記コポリマーと化学的発泡剤との混合物を金型中に射出し、加熱後の混合物(本発明組成物)の発泡を下記で実行する:
1)金型中ヘの射出中(ショートショット技術)、
および/または
2)型開き時(コアバック技術)
【0030】
上記実施形態の代替方法または補足法では、本発明方法は上記発泡性組成物を押出し、押出機の出力で発泡剤の分解によって組成物を直接発泡させる工程を含む。
【0031】
本発明方法のさらに別の実施形態では、上記発泡性組成物を反応器中で加熱する(バッチ方式)。この場合、必要に応じて圧力および/または温度を変化させて熱力学的不安定状態にして上記組成物の発泡を誘導する。
【0032】
本発明の特定実施形態では、混合工程中に(組成物の総重量に対して)少なくとも0.1~10重量%、好ましくは0.1~3重量%の物理的発泡剤を添加する。この物理的発泡剤は窒素ガス、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボンおよびこれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0033】
分子状窒素N2、二酸化炭素CO2のような物理的発泡剤はガスの形態をしている。これらのガスは溶融した共重合体中に高圧下で溶解される。系を減圧することで気泡の核生成と成長が起こり、気泡構造(cellular structure)ができる。
【0034】
さらに別の実施形態では、超臨界状態のCO2(気体と液体の間の中間状態の組成物流体)を本発明組成物と組み合わせて使用する。本発明の好ましい実施形態では、ガスの射出装置を使用しない。従って、ブロックコポリマーを製造するのに使用される既存の実装機構を改造せずにそのまま用いることができる。
【0035】
本発明は従来技術の欠点を克服することができる。特に、低応力負荷下での弾性エネルギーを回復する高い能力(une capacite elevee a restituer de l'energie elastique lors de sollicitations sous faible contrainte)、低い圧縮永久ひずみ(deformation remanente en compression)、及び圧縮疲労に対する高い耐性(fatigue en compression)のうちの1つまたは複数の有利な特性を有する低密度のポリマー発泡体を提供することができる。
【0036】
これらの特性は、広い温度範囲、好ましくは-20℃~50℃さらには-30℃~80℃で得られるという利点がある。これは、非架橋ブロックコポリマーを使用したことで達成され、好ましくは、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックの使用によって達成され、特に特定の分子量の範囲のポリアミドブロックとポリエーテルブロック、並びにポリアミドブロックとポリエーテルブロックの間のブロック間の重量比の特定の範囲によってそれぞれ特徴付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明が下記の説明に限定されるものではない。
【0038】
本発明ではブロック共重合体を使用する。
本発明のブロック共重合体は、ハードまたは剛性のブロックまたはセグメント(熱可塑性の挙動をする)と、ソフトまたは可撓性のブロックまたはセグメント(エラストマーの挙動をする)とを交互に有するエラストマー性熱可塑性ポリマー(TPE)を意味する。例えば、ポリアミドブロックはポリマーの使用温度よりも高い融点(Tf)またはガラス転移温度(Tg)を有するいわゆるリジッドなセグメントであり、ポリエーテルブロックはポリマーの使用温度より低いTfまたはTgを有するいわゆる可撓性セグメントである。
【0039】
より正確には、「ソフト」ブロックは低いガラス転移温度(Tg)を有するブロックであり、ガラス転移温度が低いとはガラス転移温度Tgが15℃以下、好ましくは0℃以下、好ましくは-15℃以下、好ましくは-30℃以下、さらには-50℃以下であることを意味する。
【0040】
本発明では、共重合体中の可撓性またはソフトブロックはポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリシロキサンブロック、例えばポリジメチルシロキサンまたはPDMSブロック、ポリオレフィンブロック、ポリカーボネートブロックおよびこれらの混合物から選択されるものを意味する。ソフトブロックに関しては[特許文献6](フランス特許第0950637号公報)の第33頁3行~第28頁第23行目に記載されている。例えば、ポリエーテルブロックはポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(1,2-プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3-プロピレングリコール)(PO3G)、ポリ(テトラメチレングリコール)(PTMG)およびこれらのコポリマーまたはブレンドから選択される。
【0041】
ハードブロックはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルまたはこれらのポリマーの混合物をベースにしたものにすることができる。これらのブロックは[特許文献7](フランス特許第0856752号公報)に記載されている。ハードブロックはポリアミド(PAと略記)をベースにしたものが好ましい。ポリアミドブロックはホモポリアミドまたはコポリアミドにすることができる。本発明組成物で使用可能なポリアミドブロックとしては[特許文献8](フランス特許第FR095063号公報)の第27頁第18行目~第31頁第14行目に定義のものが挙げられる。
【0042】
上記の少なくとも一種のブロックコポリマーは、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリアミドブロック、ポリウレタンブロックおよびこれらの混合物から選択される少なくとも1つのブロックを含むのが有利である。ハードブロックとソフトブロックとを有する共重合体の例としては(a)ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとの共重合体(COPEまたはコポリエーテルエステルと呼ばれる)、(b)ポリウレタンブロックコポリマーとポリエーテルブロックとの共重合体(熱可塑性ポリウレタン、TPUと略称)、(c)ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの共重合体(IUPACでPEBAと呼ばれ、ポリエーテルブロックアミドとも呼ばれる)を挙げることができる。
【0043】
上記の少なくとも一種のブロックコポリマーはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含む共重合体(PEBA)であるのが好ましい。このPEBAは反応性末端を有するポリアミドブロックと反応性末端を有するポリエーテルブロックとの縮重合、例えば、下記の重縮合で得られる:
1)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
2)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック(これは例えばα、ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化と水素化で得られる、ポリエーテルジオールと呼ばれる)
3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオール(この特定の場合に得られる製品がポリエーテルエステルアミド)
【0044】
ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックは例えばポリアミド先駆物質をジカルボン酸連鎖制限剤の存在下で縮合して得られる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えばポリアミド先駆物質をジアミン連鎖制限剤の存在下で縮合して得られる。下記の三種類のポリアミドブロックを使用するのが有利である。
【0045】
第一のタイプでは、ポリアミドブロックは4~20個の炭素原子、好ましくは6~18個の炭素原子を有するジカルボン酸と脂肪族または芳香族のジアミン、特に2~20個の炭素原子、好ましくは6~14個の炭素原子を有するジアミンとの縮合で得られる。ジカルボン酸の例としては1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ブタン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、さらには脂肪酸ダイマーを挙げることができる。ジアミンの例としてはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレン、ドデカメチレン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)の各異性体、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、2,2-ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、パラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジン(PIP)を挙げることができる。
【0046】
ポリアミドブロックとしてはPA4.12、PA4.14、PA4.18、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA6.18、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA10.14およびPA10.18を使用するのが有利である。PAX.Yという表記で、Xはジアミン残基に由来する炭素原子の数を表し、Yは二酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0047】
第二のタイプでは、ポリアミドブロックは一つまたは複数のα、ωアミノカルボン酸および/または4~12個の炭素原子を有するカルボン酸またはジアミンの存在下での6~12個の炭素原子を有する一つまたは複数のラクタムの縮合で得られる。ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。α、ω-アミノカルボン酸の例としてはアミノカプロン酸、アミノ-7-アミノヘプタン酸、アミノ-11-ウンデカン酸およびアミノ-12-ドデカン酸を挙げることができる。
【0048】
第二のタイプのポリアミドブロックはPA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)またはPA-6(ポリカプロラクタム)のブロックであるのが有利である。表記PA XにおいてXはアミノ酸残基の炭素原子の数を表す。
【0049】
第三のタイプでは、ポリアミドブロックは少なくとも1種のα、ω-アミノカルボン酸(またはラクタム)の縮合、少なくとも1種のジアミンと少なくとも一種のジカルボン酸の縮合で得られる。この場合、ポリアミドブロックPAはジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下での下記の重縮合で得られる:
1)X個の炭素原子を有するまたは直鎖脂肪族または芳香族ジアミン、
2)Y個の炭素原子を有するジカルボン酸、
3)Z個の炭素原子を有するラクタムおよびα、ω-アミノカルボン酸およびX1個の炭素原子を有する少なくとも1つのジアミンとY1個の炭素原子を有する少なくとも一つのジカルボン酸との等モル混合物から選択されるコモノマー{Z}(ただし、(XI、Y1)(X、Y)とは異なる)、(ここで、コモノマー{Z}はポリアミド前駆体モノマーに対して50重量%以下、好ましくは20%重量%以下、好ましくは10重量%以下の比率で導入される)
【0050】
連鎖制限剤のジカルボン酸はY個の炭素原子を有し、ジアミンの化学量論に対して過剰に導入するのが有利である。
【0051】
この第三のタイプの変形例では、ポリアミドブロックが6~12個の炭素原子を有する少なくとも二つのα、ω-アミノカルボン酸または少なくとも2つのラクタムの縮合、または、同じ数の炭素原子を有していない一つのラクタムと一つのアミノカルボン酸の縮合で得られる。この縮合は必要に応じて連鎖制限の存在下で行う。脂肪族のα、ω-アミノカルボン酸の例としてはアミノカプロン酸、アミノ-7-ヘプタン酸、アミノ-11-ウンデカン酸、アミノ-12-ドデカン酸を挙げることができる。ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。脂肪族ジアミンの例としてはヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。脂環式二酸ジアミンの例としては1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を挙げることができる。脂肪族二酸の例としてはブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、脂肪酸ダイマーを挙げることができる。この脂肪酸ダイマーのダイマー含有量は少なくとも98%であるのが好ましく、水素化されているのが好ましい。その例としては"CRODA社から「PRIPOL」の名称で市販のもの、BASF社から「EMPOL」の名称で市販のもの、または、OLEON社から「Radiacid」の名称で市販のもの、およびポリオキシアルキレンα、ω-二酸が挙げられる。芳香族二酸の例としてはテレフタル酸(T)およびイソフタル酸(I)を挙げることができる。脂環式ジアミンの例としてはビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンの各異性体(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、2-2-ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-プロパン(BMACP)およびパラ-アミノジシクロ-ヘキシルメタン(PACM)を挙げることができる。一般的に使用されている他のジアミンはイソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジンである。
【0052】
第三のタイプのポリアミドブロックの例としては以下のものが挙げられる:
(1)PA6.6/6(ここで、6.6はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6はカプロラクタムの縮合で得られる単位を表す)
(2)PA6.6/6.10/11/12(ここで、6.6は、アジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6.10はセバシン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、11はアミノウンデカン酸の縮合で得られる単位を表し、12はラウリルラクタムの縮合で得られる単位を表す)
【0053】
コポリアミドを表すPA X/Y、PA X/Y/Z等の表記で、X、Y、Z等は関連する上記のホモポリアミド単位を表す。
【0054】
本発明に用いられる共重合体のポリアミドブロックは、ポリアミドブロックのPA6、PA11、PA12、PA5.4、PA5.9、PA5.10、PA5.12、PA5.13、PA5.14、PA5.16、PA5.18、PA5.36、PA6.4、PA6.9、PA6.10、PA6.12、PA6.13、PA6.14、PA6.16、PA6.18、PA6.36、PA10.4、PA10.9、PA10.10、PA10.12、PA10.13、PA10.14、PA10.16、PA10.18、PA10.36、PA10.T、PA12.4、PA12.9、PA12.10、PA12.12、PA12.13、PA12.14、PA12.16、PA12.18、PA12.36、PA12.Tまたはこれらの混合物またはコポリマーであるのが有利であり、ポリアミドブロックPA6、PA11、PA12、PA6.10、PA10.10、PA10.12またはこれらの混合物またはコポリマーを含むのが好ましい。
【0055】
ポリエーテルブロックはアルキレンオキシド.n単位から構成される。特に、ポリエーテルブロックはPEG(ポリエチレングリコール)ブロックすなわちエチレンオキシド単位および/またはPPG(プロピレングリコール)ブロックすなわちプロピレンオキシド単位および/またはP03G(ポリトリメチレングリコール)ブロックすなわちポリトリメチレンエーテルグリコール単位および/またはPTMGブロックすなわちテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフランとも呼ばれる)にすることができる。PEBAコポリマーはその鎖中に複数のタイプのポリエーテルを含むことができ、コポリエーテルはブロックでもランダムでもよい。
【0056】
また、ビスフェノール、例えばビスフェノールAのエトキシル化で得られるブロックを使用することもできる。その例は欧州特許第EP613919に記載されている。
【0057】
また、ポリエーテルブロックはエトキシ化第一級アミンで構成することもできる。このエトキシル化第一級アミンの例としては下記の式の化合物を挙げることができる:
【0058】
【化1】
【0059】
(ここで、mとnは1~20の整数、xは8~18の整数である)
この化合物は例えばCECA社からNORAMOX(登録商標)の名称で市販され、CLARIANT社からGENAMIN(登録商標)の名称で市販されている。
【0060】
ソフトなポリエーテルブロックはNH2鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックを含むことができ、このブロックはポリエーテルジオールとしても知られるα、ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化によって得ることができる。特に、ジェファーミン(Jeffamine)またはエラストミン(Elastamin)の名称で市販の製品を使用することができる(例えば、Huntsman社からJeffamine(登録商標)D400、D2000、ED2003、XTJ542の名称で市販のもの、また、日本特許第JP2004346274号公報、日本特許第JP2004352794号公報、欧州特許第EP1482011号公報にも記載)
【0061】
ポリエーテルジオールブロックはそのまま使用するか、カルボン酸末端を有するポリアミドブロックと縮合して使用するか、アミン化してジアミンポリエーテルに変換し、カルボン酸末端基を有するポリアミドブロックと縮合する。PAブロックとPEブロックとのエステル結合を有するPEBAコポリマーの二段階製造方法の一般的方法は例えばフランス特許第FR2846332号公報二記載されている。PAブロックとPEブロックとの間のアミド結合を有する本発明のPEBAコポリマーを調製するための一般的な方法も公知で、例えば欧州特許第EP1482011号公報に記載されている。また、ポリエーテルブロックをポリアミド先駆物質および連鎖制限剤の二酸と混合してランダムに分布した単位を有ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーを製造することもできる(一段階プロセス)。
【0062】
本明細書でPEBAと記載したものには、アルケマ社arkemaのPEBAX(登録商標)、Evonik社から市販のVestamid(登録商標)、EMS社から市販の Grilamid(登録商標)、三洋から市販のPelestat(登録商標)タイプのPEBAおよびその他のサプライヤーの他のPEBAが含まれる。
【0063】
上記のブロックコポリマーが一般的に少なくとも一つのポリアミドブロックと少なくとも一つのポリエーテルブロックとを含む場合、本発明は本明細書に記載のブロック(このブロックはポリアミドブロックとポリエーテルの少なくとも1つを含む)の中から選択される2つ、3つ、4つ(またはそれ以上)の異なるブロックを含むコポリマーの全てのアロイをカバーする。
【0064】
例えば、本発明のブロック共重合体は、複数の上記ブロックの縮合で得られる3つの異なるブロック(または「トリブロック」)を含むセグメント化ブロック共重合体であってもよい。このトリブロックはコポリエーテルエステルアミドおよびコポリエーテルアミドウレタンから選択するのが好ましい。
【0065】
本発明で特に好ましいPEBAコポリマーはPA12-PEG、PA6-PEG、PA6/12-PEG、PA11-PEG、PA12-PTMG、PA6-PTMG、PA6/12-PTMG、PA11-PTMG、PAl2-PEG/PPG、PA6-PEG/PPG、PA6/12-PEG/PPG、PA11-PEG/PPG、PA11/PO3G、PA6.10/PO3Gおよび/またはPA10.10/PO3Gである。
【0066】
本発明の発泡体は上記のブロックコポリマーを含み、このような共重合体を単独で使用するのが好ましい。しかし、2つ以上のブロックコポリマー、特に複数の上記PEBAを含む混合物を使用することもできる。
【0067】
本発明の共重合体、例えばPEBA中の剛性ブロック、例えばポリアミドブロックの数平均分子量は200~2000g/モルの範囲であり、ソフトブロック、例えばポリエーテルブロックの数平均分子量は800~2500g/モルの範囲である。
【0068】
数平均分子量は連鎖停止剤の含有量によって決めることができる。数平均分子量は下記の式を用いて計算することができる:
Mn=(nモノマー/n連鎖停止剤)×M繰返単位+M連鎖停止剤
モノマー=モノマーのモル数
連鎖停止剤=過剰二酸のモル数
繰返単位=繰返し単位の分子量
連鎖停止剤=過剰二酸の分子量
【0069】
本発明では、共重合体のソフトブロック(PEBAの場合にはポリエーテル)に対するハードブロック(PEBAの場合には例えばポリアミド)の重量比は0.1~2である。
【0070】
この質量比はハードブロック、特にポリアミドの数平均分子量をソフトブロック、特にPEBAの場合にはポリエーテルの数平均分子量で割ることによって計算することができる。
【0071】
本発明の特定実施形態ではこの比は0.1~0.2または0.2~0.3または0.3~0.4または0.4~0.5または0.5~0.6または0.6~0.7または0.7~0.8または0.8~0.9または0.9~1または1~1.1または1.1~1.2または1.2~1.3または1.3~1.4または1.4~1.5または1.5~1.6または1.6~1.7または1.7~1.8または1.8~1.9または1.9~2である。
【0072】
本発明で用いられる共重合体のISO規格868:2003に従って測定したショアD硬度は40ショアD以下、好ましくは35ショアD以下であるのが好ましい。
【0073】
上記のブロック共重合体、特にポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するブロック共重合体は、発泡体を形成するために架橋工程なしに使用される。本発明の発泡体は、上記のブロック共重合体を溶融状態で発泡剤または化学的発泡剤と混合し、次いで発泡工程が行なって形成される。
【0074】
本発明の一実施形態では、上記のようにして形成された発泡体が上記共重合体(又は共重合体の混合物が使用される場合には複数の共重合体)と、発泡剤若しくは化学発泡剤の分解生成物から本質的になる、又はからなり、後者は発泡体気泡に存在するのではなく、マトリックス中に分散している。
【0075】
上記のブロック共重合体、特にポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するブロック共重合体は種々の添加剤と組み合わせることができる。添加剤の例はエチレンと酢酸ビニル(EVA)との共重合体(例えば、アルケマ社からEvatane(登録商標)の名称で市販のもの)、エチレンとアクリレートとの共重合体、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、例えばアルケマ社からLotry(登録商標)の名称で市販のものである。これらの添加剤を使用することで発泡体の硬度、外観および取扱い易さを調整することができる。
【0076】
これらの添加剤は本発明組成物の総重量に対して5~30重量%、好ましく、0.1~50重量%の含有量で添加することができる。
【0077】
本発明組成物は核形成剤、特に無機充填剤、例えばタルクのよう添加剤をさらに含むことができる。その含有率は本発明組成物の総重量に対して0.1~10重量%、好ましくは0.1~3重量%にするのが好ましい。
【0078】
本発明組成物では、化学発泡剤を物理的発泡剤と組み合わせて使用することができる。物理的発泡剤の例は窒素ガス、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン(飽和または不飽和)である。例えばブタンまたはペンタンを使用することができる。この場合、物理的発泡剤は液体状態または超臨界形態で発泡性共重合体組成物と混合され、発泡工程中に気相に変換される。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の発泡性共重合体組成物は金型中に射出される。組成物の発泡は金型中への射出中または型開き時に行われる。これら2つの技術を使用するか、それらを組み合わせて使用することで複雑な形状を有する三次元発泡物品を直接製造することができる。
【0080】
これらの技術は、先行技術のように発泡粒子の一部を溶融するプロセスに比べて実施するのが比較的簡単な技術である。すなわち、先行技術のように発泡性ポリマー顆粒を金型に充填し、その後に発泡体構造を破壊せずに粒子を融合して機械的強度を有する部品にするのは複雑な操作である。
【0081】
その他の有用な発泡技術は「バッチ」発泡法と発泡押出法である。
【0082】
本発明に従って製造された発泡体は50~800kg/m3の密度、好ましくは100~600kg/m3の密度を有する。密度の制御は製造プロセスのパラメータを調整することで達成できる。
【0083】
本発明の発泡体はISO規格8307:2007に従って測定した反発弾性が55%以上であるのが有利である。
【0084】
本発明の発泡体はISO規格7214:2012に従って測定した圧縮下残留変形が10%以下、好ましくは8%以下であるのが有利である。
【0085】
本発明の発泡体は優れた疲労抵抗特性とクッション性とを有しているのが有利である。
【0086】
本発明の発泡体はスポーツ用品を製造するために使用することができる。例えばスポーツシューズのソール、スキーブーツ、ミッドソール、インソールまたはソールの機能構成要素、ソールの各種部分(例えばヒールアーチ)の挿入物、靴上部構造の補強または甲成分挿入物、プロテクターで使用することができる。
【0087】
本発明の発泡体はさらに、ボール、スポーツ手袋(例えばサッカー手袋)、ゴルフボールの部品、ラケット、保護アイテム(ジャケット、ヘルメット内部要素、芯材・・・)を作るのにも使用できる。
【0088】
本発明の発泡体は、機器に要求される通常の特性に加えて、耐衝撃特性、耐振動特性および耐騒音特性をさらに与えることができる。従って、本発明の発泡体はスポーツシューズのソール(またはクッションパット)、摺動レール、輸送業およびまたは自動車産業における各種部品、ベビーカー用部品、例えばホイール、ハンドル、シート材料、子供用自動車シート、電気・電子機器およびオーディオ機器の部品、絶縁機器、特に遮音および/または断熱材料の製造で使用でき、さらに、輸送用車輌の衝撃および/または振動の吸収材料、メンテナンスを必要としないソフトライドホイール、例えばタイヤの部品、建設用部材、製造工業用部品の製造で使用できる。
【0089】
本発明の発泡部品の利点は容易にリサイクルができることにある。例えば、(必要に応じて断片に切断し後に)脱気口を備えた押出機で溶融することで容易にリサイクルができる。
【実施例0090】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものでとない。実施例では、特に断りのない限り、全ての百分率および部は重量で表される。
試験組成物(実施例及び比較例)で使用したPEBA(アルケマ社のPebax(登録標章))コポリマーは、下記の表に記載されている特徴を有する。
【0091】
【表1】
【0092】
試験組成物で使用した化学発泡剤は以下のとおり:
(1)ACM1:クエン酸と炭酸水素ナトリウム(NaHCO)をベースにした混合物(Clariant社のHydrocerol(登録標章)シリーズの製品)。
(2)ACM2:クエン酸と炭酸水素ナトリウム(NaHCO)をベースにした混合物で、ミクロスフェアを含む混合物(Clariant社のHydrocerol(登録標章)シリーズの製品)。
【0093】
「浸漬」測定法を使用した、ISO規格1183に準拠したプレート押出及び密度試験
【表2】
【0094】
プレートは、実施例1及び2の2つの本発明による組成物から押し出される。これらの2つの組成物は、押出による転換(conversion)に対して非常に高い適性を示すことが見出された。得られた発泡体プレートは、均一で滑らかでシームレスな表面外観を有し、明確なエッジ(distinct edges)と、発泡体マトリックス内の細孔又は気泡の均一な分布を有する。
【0095】
本発明による発泡体中の気泡の分布及びサイズの両方におけるこの均一性は、以下の構成によって得られることが分かった:
(1)本発明による発泡性組成物において使用される金属炭酸塩をベースとする発泡剤の少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%の含有量、及び
(2)ISO規格11358:2011に従ってATGで測定した、得られた発泡体のマトリックス中に残存する金属炭酸塩の含有量が、発泡体組成物の総質量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%に相当すること。
【0096】
得られた部品は、800kg/m3以下の密度を有する。
【0097】
「浸漬」測定法を使用した、ISO規格1183に準拠したプレート注入及び密度試験
【表3】
【0098】
実施例3~6における本発明による発泡性組成物の、従来の注入法による使用により、密度が600kg/m3未満、さらには500kg/m3の高精細度の柔軟な発泡体部品を、ガス注入工程なしで得ることができる。
本発明の柔軟な発泡体ピースにおいて、気泡(発泡体の細孔)はサイズが均一であり、細孔(又は独立気泡)の内径との間の差は、30%を超えない。
【0099】
本発明による実施例1~6で得られた発泡体は、ISO規格8307:2007に従って、55%を超える反発弾性を有する。さらに、この発泡体は、ISO規格7214:2012に従って、10%未満の圧縮永久歪みを有する。
【0100】
本発明に従って得られる発泡体は、その制御され、均一な構造とその機械的特性、特に疲労抵抗及び減衰を特徴とし、スポーツ、個人用保護装置、遮音および/または断熱材料、並びに特に輸送関連の振動を減衰するように設計された部品の製造での使用に適している。
【外国語明細書】