(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017630
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】走行機体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
B62D 55/084 20060101AFI20220119BHJP
B62D 55/06 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B62D55/084
B62D55/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120279
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】397008775
【氏名又は名称】有限会社曽田農機設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】曽田 清
(57)【要約】 (修正有)
【課題】右一対のクローラ式走行装置と、機体本体と、左右のクローラ式走行装置をそれぞれ着脱可能に機体本体側に取り付ける取付部と、を備え、その構造を複雑化させることなく、前後の重量バランスを変更することが可能な走行機体及びその使用方法を提供する。
【解決手段】左右一対のクローラ式走行装置2は、その重心が前後一方寄りである偏重部に偏り、左右のクローラ式走行装置は、互いの偏重部が同一の方向に向けられた状態で、機体本体1側にそれぞれ取り付けられ、機体本体の左右の一方側に着脱可能に取り付けることできるクローラ式走行装置を、前後を反転させて他方側にも着脱可能に取り付けることができるとともに、前記他方側に着脱可能に取り付けることできるクローラ式走行装置を、前後を反転させて前記一方側にも着脱可能に取り付けることができる構造を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走する走行機体であって、
前後一方寄りである偏重部に重心が偏った左右一対のクローラ式走行装置と、
機体本体と、
左右のクローラ式走行装置をそれぞれ着脱可能に機体本体側に取り付ける取付部と、を備え、
左右のクローラ式走行装置は、互いの偏重部が同一の方向に向けられた状態で、機体本体側にそれぞれ取り付けられ、
機体本体の左右の一方側に着脱可能に取り付けることできるクローラ式走行装置を、前後を反転させて他方側にも着脱可能に取り付けることができるとともに、前記他方側に着脱可能に取り付けることできるクローラ式走行装置を、前後を反転させて前記一方側にも着脱可能に取り付けることができる構造を有する
ことを特徴とする走行機体。
【請求項2】
前記取付部は、左右のクローラ式走行装置を前記機体本体にまとめて取り付ける単一の取付フレームであり、
前記取付フレームは、左右のクローラ式走行装置がそれぞれ着脱可能に装着される被装着部を有し、
被装着部に装着され且つ左右一方側に配置されていたクローラ式走行装置を、取り外し、前後を反転させ、左右他方側に配置し、被装着部に装着するとともに、
被装着部に装着され且つ前記他方側に配置されていたクローラ式走行装置を、取り外し、前後を反転させ、前記一方側に配置し、被装着部に装着することが可能な構造を有する
請求項1に記載の走行機体。
【請求項3】
前記取付部は、左右のクローラ式走行装置を前記機体本体にまとめて取り付ける単一の取付フレームであり、
前記取付フレームは、前記機体本体に着脱可能に装着する装着部を有し、
機体本体から装着部を取り外した取付フレームを、前後を反転させた状態で、再び、該装着部によって機体本体に装着することができる構造を有する
請求項1又は2の何れかに記載の走行機体。
【請求項4】
自走する走行機体の使用方法であって、
前後の重量バランスが前後一方寄りである偏重部に偏るように構成された左右一対のクローラ式走行装置の夫々が、該偏重部を互いに同一方向に向けた状態で、取付部により機体本体側に着脱可能に取り付けられた走行機体について、
左右のクローラ式走行装置を機体本体からそれぞれ取り外する工程と、
取り外した左右のクローラ式走行装置の左右一方側のクローラ式走行装置を、前後を反転させた状態で、取付部により機体本体の左右他方側に着脱可能に取り付ける工程と、
前記他方側のクローラ式走行装置を、前後を反対させた状態で、取付部により機体本体の前記一方側に着脱可能に取り付ける工程と、を有する
ことを特徴とする走行機体の使用方法。
【請求項5】
自走する走行機体の使用方法であって、
前後の重量バランスが前後一方寄りである偏重部に偏るように構成された左右一対のクローラ式走行装置の夫々が、該偏重部を互いに同一方向に向けた状態で、単一の取付フレームにより機体本体側に着脱可能に取り付けられた走行機体について、
左右のクローラ式走行装置の夫々が取り付けられた取付フレームを機体本体から取り外する工程と、
該取付フレームを前後を反転させて機体本体に再び装着する工程と、を有する
ことを特徴とする走行機体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走する走行機体及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対のクローラ式走行装置と、機体本体と、左右のクローラ式走行装置をそれぞれ着脱可能に機体本体側に取り付ける取付部と、を備え、取付部は、左右のクローラ式走行装置が、機体本体に、前後位置調整可能に取り付けられるように構成された走行機体が公知になっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
上記文献の走行機体は、走行環境に応じて前後の重量バランスを変更することができるため、利便性が高くなる一方で、その前後位置を調整するための機構を別途設けることが必須になるため、全体の構造が複雑化し、製造コストが高くなるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、右一対のクローラ式走行装置と、機体本体と、左右のクローラ式走行装置をそれぞれ着脱可能に機体本体側に取り付ける取付部と、を備え、その構造を複雑化させることなく、前後の重量バランスを変更することが可能な走行機体及びその使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の走行機体は、自走する走行機体であって、前後一方寄りである偏重部に重心が偏った左右一対のクローラ式走行装置と、機体本体と、左右のクローラ式走行装置をそれぞれ着脱可能に機体本体側に取り付ける取付部と、を備え、左右のクローラ式走行装置は、互いの偏重部が同一の方向に向けられた状態で、機体本体側にそれぞれ取り付けられ、機体本体の左右の一方側に着脱可能に取り付けることできるクローラ式走行装置を、前後を反転させて他方側にも着脱可能に取り付けることができるとともに、前記他方側に着脱可能に取り付けることできるクローラ式走行装置を、前後を反転させて前記一方側にも着脱可能に取り付けることができる構造を有することを特徴とする。
【0007】
前記取付部は、左右のクローラ式走行装置を前記機体本体にまとめて取り付ける単一の取付フレームであり、前記取付フレームは、左右のクローラ式走行装置がそれぞれ着脱可能に装着される被装着部を有し、被装着部に装着され且つ左右一方側に配置されていたクローラ式走行装置を、取り外し、前後を反転させ、左右他方側に配置し、被装着部に装着するとともに、被装着部に装着され且つ前記他方側に配置されていたクローラ式走行装置を、取り外し、前後を反転させ、前記一方側に配置し、被装着部に装着することが可能な構造を有するものとしてもよい。
【0008】
前記取付部は、左右のクローラ式走行装置を前記機体本体にまとめて取り付ける単一の取付フレームであり、前記取付フレームは、前記機体本体に着脱可能に装着する装着部を有し、機体本体から装着部を取り外した取付フレームを、前後を反転させた状態で、再び、該装着部によって機体本体に装着することができる構造を有するものとしてもよい。
【0009】
また、本発明の走行機体の使用方法は、自走する走行機体の使用方法であって、前後の重量バランスが前後一方寄りである偏重部に偏るように構成された左右一対のクローラ式走行装置の夫々が、該偏重部を互いに同一方向に向けた状態で、取付部により機体本体側に着脱可能に取り付けられた走行機体について、左右のクローラ式走行装置を機体本体からそれぞれ取り外する工程と、取り外した左右のクローラ式走行装置の左右一方側のクローラ式走行装置を、前後を反転させた状態で、取付部により機体本体の左右他方側に着脱可能に取り付ける工程と、前記他方側のクローラ式走行装置を、前後を反対させた状態で、取付部により機体本体の前記一方側に着脱可能に取り付ける工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
自走する走行機体の使用方法であって、前後の重量バランスが前後一方寄りである偏重部に偏るように構成された左右一対のクローラ式走行装置の夫々が、該偏重部を互いに同一方向に向けた状態で、単一の取付フレームにより機体本体側に着脱可能に取り付けられた走行機体について、左右のクローラ式走行装置の夫々が取り付けられた取付フレームを機体本体から取り外する工程と、該取付フレームを前後を反転させて機体本体に再び装着する工程と、を有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、左右一対のクローラ式走行装置の夫々について、その前後の方向を反転させるとともに、機体本体に対する左右位置を相互に入れ換えることによって、機械的な構造を複雑化させることなく、前後の重量バランスを変更することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】機体本体を走行装置に取り付ける構成を示す背面図である。
【
図6】(A)乃至(D)はバランス切換作業における複数の工程を時系列に従って順次示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1,
図2は、本発明を適用した走行機体の側面図及び斜視図である。図示する走行機体は、機体本体1と、左右一対のクローラ式走行装置(以下、単に「走行装置」)2,2と、機体本体1を走行装置2に取り付けて支持させる単一の取付フレーム(取付部)3とを備えている。この走行機体は、電動式の自走車であって且つリモコンによる遠隔操作も可能であり、機体本体1の上面側に荷物を載置させて運搬車として利用することも可能であるとともに、その上面側や前側や後側に草刈機等の作業機を連結して作業車両として利用することも可能である。
【0014】
機体本体1は、方形環状に成形された金属製のメインフレーム4と、メインフレーム4から前方に延出された金属製の前方フレーム6と、メインフレーム4から後方に延出された金属製の後方フレーム7と、メインフレーム4上に支持されて固定された金属製の載置プレート8とを有している。
【0015】
メインフレーム4は、前後方向に延びる左右一対の縦パイプ9,9と、左右の縦パイプ9,9の前端部間及び後端部間にそれぞれ架設して固定された前後一対の横パイプ11,11とを有している。
【0016】
前方フレーム6は、平面視で後方が開放されたコの字状に成形されている。前方フレーム6の中途部及び前部が前方斜め上方に延びるように、該中途部及び前部が後部に対して側面視で上方に屈曲している。この前方フレーム6の左右の後端部を、それぞれメインフレーム4の左右の縦パイプ9,9の開放された前端側に挿入した状態で、着脱可能にボルト固定している。
【0017】
後方フレーム7は、平面視で前方が開放されたコの字状に成形されている。後方フレーム7の中途部及び後部が後方斜め上方に延びるように、該中途部及び後部が前部に対して側面視で上方に屈曲している。この後方フレーム7の左右の前端部を、それぞれメインフレーム4の左右の縦パイプ9,9の開放された後端側に挿入した状態で、着脱可能にボルト固定している。
【0018】
載置プレート8は、その左右幅が、メインフレーム4、前方フレーム6及び後方フレーム7よりも狭く、その前後長が、後方フレーム6の後端側から前方フレーム7の前端側に至る範囲をカバーする長さに設定されている。この載置プレート8の上面側に、荷物等を載せて運搬させてもよいし、或いは各種の作業機を搭載してもよい。
【0019】
載置プレート8の前後中途部は、フラットな水平面状に成形されて前後の横プレート11,11に下支え支持されるフラット部12になる。載置プレート8の前部は、前方フレーム6の傾斜に沿って前方斜め上方に傾斜する前方傾斜部13になる。載置プレート8の後部は、後方フレーム7の傾斜に沿って後方斜め上方に傾斜する後方傾斜部14になる。
【0020】
載置プレート8は、そのフラット部12の左右の縁側には、下方に突出する被装着部16,16がそれぞれ一体的に形成されている。各被装着部16は、その厚みが左右方向に向けられ且つ前後方向に長い板状に成形されている。この左右の被装着部16,16に、取付フレーム3を介して、左右の走行装置2,2をそれぞれ取り付ける。
【0021】
この載置プレート8の後端部(後方傾斜部14の後端部)は、下方に屈曲されて操作部8aを構成している。この操作部8aは、水平な板状に成形され、その上面側には走行中の走行機体を緊急停止させる緊急停止スイッチ17等の各種操作具が設置されている。
【0022】
この載置プレート8の後部の下面側には、走行制御を含む各種制御を行うマイコン等の制御部と、各部に電力を供給するバッテリとがユニット化されたメインユニット18が取り付け固定されている。このメインユニット18には、リモコン等の遠隔操作具からの電波を受信する受信ユニットや、情報端末との間で通信を行う通信ユニットも、必要に応じて設置される。
【0023】
次に、
図1乃至
図4に基づいて走行装置の構成を詳述する。
【0024】
図3,
図4は、走行装置の斜視図及び底断面図である。各走行装置2は、その左右内側の側部の一部又は全部(図示する例では、大部分)を構成するように鉛直に立ち上がって前後方向に延びる板状の走行フレーム19と、その左右外側の側部の一部又は全部(図示する例では、主張部分)を構成するように前記走行フレーム19と平行又は略平行に対向する板状のサブフレーム21と、走行フレーム19とサブフレーム21との間における前後一方寄り部分(図示する例では前寄り部分)に回転駆動可能に支持される駆動輪22と、他方寄り部分(図示する例では後寄り部分)に遊転状態で支持された遊動輪23と、駆動輪22及び遊動輪23に外側から掛け回される側面視で環状をなすクローラ24と、クローラ24に内周面側から接して該クローラ24のテンションを維持する転輪26とを有している。
【0025】
駆動輪22は、インナー式且つ電動式のモータ(動力源)27の外周面に装着固定されたスプロケットである。モータ27における本体27aから左右両側方に同一軸心状に突出形成された支持軸27b,27bは、走行フレーム19及びサブフレーム21にそれぞれ取り付け固定され、モータ27を駆動させると、本体27aが該本体27aに外装された駆動輪22と共に一体で回転駆動される。該構造によれば、左右の支持軸27b,27bの軸心上に駆動輪22の回転軸が形成される。
【0026】
なお、本例では、走行装置2に動力源を内装する例について説明したが、これに限定されるものではなく、機体本体1に搭載されたエンジンやモータ等の動力源からの動力を、駆動輪22に伝動するような構成を採用してもよい。
【0027】
遊動輪23は、走行フレーム19及びサブフレーム21の間に支持された支持軸28の軸回りに回転自在に支持されている。すなわち、この支持軸28の軸心上に遊動輪23の回転軸が形成される。本例では、支持軸28が走行フレーム19とサブフレーム21との間に架設固定され、この支持軸28に遊動輪23が遊転状態で取り付け支持されているが、この構成に限定されるものではなく、支持軸28に遊動輪23を取り付け固定し、この支持軸28を、回転自在に走行フレーム19及びサブフレーム21に支持してもよい。
【0028】
走行フレーム19は、駆動輪22、遊動輪23及び転輪26を片持ち支持可能なように、サブフレーム21よりも高い強度を有する金属製の板状部材である。この走行フレーム19は、その外周縁が側面視でクローラ24の内周面に沿う長円形をなし、その全部又は一部(図示する例では全部)がクローラ24の前記環状の内周側に収容される位置に配置されている。これを言換えると、走行フレーム19は、底断面視でクローラ24の左右幅方向の端部よりも内側寄りに配置されている。
【0029】
この走行フレーム19の外周縁と、クローラ24の前記環状の内周との間には、所定の隙間S1が形成されている。この隙間S1の間隔は20mm程度に設定され、これによって、走行装置2の内部への異物の混入を防止しつつ、クローラ24の走行駆動の妨げにならないように、走行装置2が構成される。
【0030】
サブフレーム21は、モータ27の片側の支持軸27bの端部と、支持軸28の端部とに着脱可能に固定される。この板状のサブフレーム19は、走行装置2の左右外側の側部をカバーするカバー体として機能し、その外周縁が走行フレーム19と同様に側面視でクローラ24の内周面に沿う長円形に成形されている。このサブフレーム21の全部又は一部(図示する例では全部)がクローラ24の前記環状の内周側に収容される位置に配置されている。これを言換えると、サブフレーム21は、底断面視でクローラ24の左右幅方向の端部よりも内側寄りに配置されている。ちなみに、
図1及び
図2に示す通り、このサブフレーム21は、取り外して省略できる。
【0031】
このサブフレーム21の外周縁と、クローラ24の前記環状の内周との間には、所定の隙間S2が形成されている。この隙間S2の間隔は20mm程度に設定され、これによって、走行装置2の内部への異物の混入を防止しつつ、クローラ24の走行駆動の妨げにならないように、走行装置2が構成される。
【0032】
転輪26は、支持軸28に上下揺動可能に支持された支持アーム29に回転自在に(遊転状態で)支持されている。この支持アーム29は、支持軸28から駆動輪22側に延出された状態で該支持軸28を支点に上下揺動するように支持され、走行フレーム19の内側の面に近接又は接触する位置に配置されている。
【0033】
この支持アーム29は、その延出側の端部に転輪26が支持され、その中途部には走行フレーム19側に突出した左右方向の位置決めピン31が一体的に形成されている。一方、走行フレーム19には、側面視で、支持アーム29の上下揺動時における位置決めピン31の移動軌跡に沿う円弧状の位置決め孔19aが穿設されている。
【0034】
位置決めピン31は、位置決め孔19aに挿通され、位置決め孔19aの円弧形状の範囲内の任意の一点で、解除可能に固定される。この位置決めピン31の位置決め孔19aへの固定位置に選択によって、クローラ24に付与するテンションを調整する。通常であれば、支持アーム29を弾性付勢する弾性部材等によって、クローラ24にテンションを付与するが、上述の構成によれば、この弾性部材を省略することが可能になる。
【0035】
ちなみに、この位置決め孔19aは上下の対称位置にそれぞれ形成され、この一対の位置決め孔19a,19aの何れに位置決めピン31を挿通させるのかを選択することによって、転輪26がクローラ24の環状の内周における上側部分と下側部分との何れに接触させるのかを選ぶことが可能になる。
【0036】
以上のように構成される走行装置2によれば、その重心が前後一方寄りに位置する状態になる。具体的に説明すると、走行装置2において、その重心が位置する前後一方側の部分を偏重部2aとし、この偏重部2aには、駆動輪22及び該駆動輪22を回転駆動させるモータ27がユニット化された状態で配置されている。
【0037】
次に、
図1乃至5に基づいて取付フレーム3の構成を説明する。
【0038】
図5は機体本体を走行装置に取り付ける構成を示す背面図である。取付フレーム3は、本例では、左右の走行装置2,2がまとめて装着されるように1つ設けられている。左右の走行装置2,2の夫々を単一の取付フレーム3に着脱可能に装着して固定するとともに、該取付フレーム3を機体本体1に着脱可能に装着して固定することによって、左右の走行装置2,2が機体本体1側にそれぞれ取り付けられる。
【0039】
このため、取付フレーム3は、機体本体1に装着される金属製のフレームである装着フレーム(装着部)33と、走行装置2が装着される金属製のフレームである被装着フレーム(被装着部)32,32と、を一体的に有している。
【0040】
前記被装着フレーム32,32は、左右方向に形成された筒状部材であって且つ前後に並列された一対のパイプフレームである。一方、被装着フレーム33は、前後のパイプフレーム32,32に掛渡されるように両パイプフレーム32,32上に載置され且つ該パイプフレーム32に溶接等で固定される水平な板状部材である。
【0041】
装着フレーム33の左右夫々の縁部には、垂直に立ち上がったリブ状の取付片34,34が一体的に形成されている。左右の取付片34,34は、機体本体1の上述した左右の被装着部16,16の間に嵌め込まれ、ボルト36によって着脱可能に固定される。
【0042】
このため、装着部16及び取付片34はボルト36を挿通させる挿通孔34aが穿設され、特に、取付片34側の挿通孔34aは、取付フレーム3を機体本体1に装着して固定する際の前後位置を調整可能なように長孔によって構成されている。この前後の位置調整によって、取付フレーム3側に固定される左右の走行装置2,2が、機体本体1に対して、前後位置調整可能に構成される。
【0043】
すなわち、図示しない前記挿通孔を有する被装着部16,16と、前記長孔34aを有する左右の取付片34,34と、ボルト36とは、左右の走行装置2,2を機体本体1に前後位置調整可能に取り付けることを可能とする前後位置調整機構を構成している。言い換えると、走行機体には、走行装置2,2の機体本体1に対する前後位置を調整する前後位置調整機構が設けられている。ちなみに、この挿通孔34aは、取付片34毎に複数(図示する例では2つ)設けられている。
【0044】
一方、各走行装置2は、前後の被装着フレーム32,32への装着固定(取り付け固定)を可能とする装着フレーム37と、該装着フレーム37を走行フレーム19の外面に一体的に固定する固定部材38とを一体的に有している。
【0045】
装着フレーム37は、棒状部材を曲げ形成することによって全体が前後対称な形状に成形され、具体的には、側面視でU字状をなした固定部37bと、固定部37bの前後の上端部から左右内側にそれぞれ延びる前後一対の挿通部37a,37aとを一体で有している。
【0046】
固定部37bは固定部材38によって走行フレーム19に固定される。前後の挿入部37a,37aの間隔は上述した前後のパイプフレーム32,32の間隔と同一又は略同一に設定され、且つ、該挿通部37aの外周面はパイプフレーム32の内周面に嵌合して挿入可能なように形成されている。
【0047】
そして、この前後の挿入部37a,37aの外周面を、前後のパイプフレーム32,32の内周面にそれぞれ挿入して固定することによって、走行装置2の走行フレーム19が取付フレーム3に装着して固定される。
【0048】
挿入部37aをパイプフレーム32,32に挿入して固定する位置(挿入量)は、該パイプフレーム32,32の外周面から径方向内側に挿入されるボルト39によって、無段階又は複数段階で調整可能に構成されおり、この調整によって、左右の走行装置2,2の間隔を変更することが可能になる。すなわち、本走行機体には、左右の走行装置2,2の間の距離を変更可能とする左右幅変更機構が設けられている。
【0049】
ちなみに、走行機体は、取付フレーム3の左右にそれぞれ装着されているクローラ式走行装置2,2を、取り外し、その後、互いの配置位置を交換するとともに水平に半周分だけ左右に回動させることにより、その前後を反転させ、該取付フレーム3の被装着フレーム32,32に再び装着することが可能な構造を有している。
【0050】
そして、
図1乃至
図5に示す例では、左右の夫々の走行装置2,2は、その偏重部2a,2aを同一方向である前側に向けた姿勢で、単一の取付フレーム3に装着されているため、上述のようにして、前後を反転させ、左右位置を入れ換える作業(以下、「バランス切換作業」)を行った場合、左右の夫々の走行装置2,2の偏重部2a,2aが前側に位置した状態から後ろ側に位置した状態に切り換えられる。
【0051】
このため、例えば、
図1乃至
図5に示す状態の走行機体に対して、バランス切換作業を1回行った場合、該走行機体の全体の重心が前後一方側(上述した例では後方)に移動し、さらに、該走行機体に対して、もう1回バランス切換作業を行った場合、この走行機体の全体の重心が前後他方側(上述した例では前方)に移動し、再び、
図1乃至
図5に示す重量バランスに戻る。
【0052】
なお、このようなバランス切換作業を可能とする走行機体の構造は、具体的には、各走行装置2の前後対称な形状を有する装着フレーム37と、該装着フレーム37の前後一対の挿入部37a,37aと、この前後の挿入部37a,37aをそれぞれ嵌合して挿入可能な内径を有する前後一対のパイプフレーム32,32と、前後の夫々の挿入部37a,37aを対応するパイプフレーム32,32に挿入する際に互いの挿入量を同一又は略同一に設定できる構造と、前後のパイプフレーム32,32の間の間隔と、装着フレーム37の前後の挿入部32a,32aの間の間隔とを同一又は略同一に設定した配置構成等とによって実現される。
【0053】
次に、走行機体の使用方法の一種であるバランス切換作業について、さらに詳細する。
【0054】
図6(A)乃至(D)はバランス切換作業における複数の工程を時系列に従って順次示している。バランス切換作業は、最初に行う第1工程と、第1工程後に行う第2工程と、第2工程後に行う第3工程とを有している。
【0055】
第1工程は、左右の夫々の走行装置2,2の偏重部2a,2aが共に前側に位置した状態(同図(A)に示す状態)の走行機体に対して、被装着フレーム32,32(機体本体1)の左右一方側(図示する例では右側)から走行装置2を取り外すとともに(同図(B)参照)、被装着フレーム32,32(機体本体1)の左右他方側(図示する例では左側)から走行装置2を取り外す作業を行う分解工程である。
【0056】
第2工程は、取り外された左右一方側(図示する例では右側)の走行装置2を、被装着フレーム32,32(機体本体1)における左右他方側(図示する例では左側)に嵌合状態で挿入して固定することにより、装着する作業を行う一方側組立工程であり(同図(C)参照)、第3工程は、取り外された前記他方の走行装置2を、被装着フレーム32,32(機体本体1)における前記一方側に嵌合状態で挿入して固定することにより、装着する作業を行う他方側組立工程である(同図(D)参照)。
【0057】
以上のように構成される走行機体及びその使用方法によれば、上述した前後位置調整機構を省略したシンプルな走行機体についても、バランス切換作業によって、その全体の重心の前後一方側に変更することが可能になる。言い換えると、コストを抑えつつ、前後の重量バランスを変更することが可能になる。
【0058】
なお、取付フレーム3は、左右の走行装置2,2毎に個別に設けてもよい。また、被装着フレーム32,32は、上述した例では、左右の走行機体2,2で兼用しているが、左右の走行機体2,2毎に個別に設けてもよい。
【0059】
また、前記バランス切換作業を、左右の夫々の走行装置2,2が取り付けられた取付フレーム3を機体本体1の被装着部16,16から取り外して分離する分離工程と、分離工程の後、機体本体1から分離された取付フレーム3を、半周分水平回動させることにより前後を反転させ、この状態で、機体本体1の被装着部16、16に再び装着する組立工程と、から構成してもよい。これによってバランス切換作業を簡略化させることが可能になる。
【符号の説明】
【0060】
1 機体本体
2a 偏重部
2 クローラ式走行装置
3 取付フレーム(取付部)
32 被装着フレーム(被装着部)
33 装着フレーム(装着部)