(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176315
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】調光部材、構造物、調光部材の配置方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20221117BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1335 510
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160827
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2017160517の分割
【原出願日】2017-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2016255199
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】石井 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】川島 朋也
(57)【要約】
【課題】、ゲストホスト方式による調光部材を使用する場合に、従来に比してより効果的に透光状態における透過光量を増やす。
【解決手段】調光部材1、101、201は、構造体20、30、120の外側から外光が入射する部位に配置され、入射した外光の遮光及び透過を調節する部材であり、当該調光部材1の外光が入射する側に配置される偏光部材8、102、208を備え、偏光部材8、102、208の吸収軸の方向が、構造体20、30の鉛直方向に対して18度以下の方向であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の外側から外光が入射する部位に配置され、入射した前記外光の遮光及び透過を調節する調光部材であって、
当該調光部材の前記外光が入射する側に配置される偏光部材を備え、
前記偏光部材の吸収軸の方向が、前記構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする調光部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光部材、構造物、調光部材の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、窓に貼り付けて外来光の透過を制御する調光部材(調光フィルム)に関する工夫が種々提案されている(特許文献1、2、3)。このような調光部材の1つに、液晶を利用したものがある。このような液晶を利用した調光部材は、透明電極を備えた透明フィルム材により液晶材料を挟持して液晶セルを製造し、その液晶セルを直線偏光板により挟持しており、液晶に印加する電界を変更して液晶の配向を変更することにより外来光の透過を制御する。
【0003】
このような調光部材では、液晶表示パネルに適用可能な各種の駆動方式を適用することができ、VA(Vertical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In-Plane-Switching)方式等の駆動方式を適用することができる。
【0004】
また、このような調光部材には、ゲストホスト方式の液晶を利用したものが提案されている(特許文献4、5)。このようなゲストホスト方式の液晶を有する液晶セルでは、液晶組成物と二色性色素組成物とがランダムに配向した状態と、いわゆるツイスト配向した状態とを電界の制御により変化させて透過光量を制御する。このようなゲストホスト方式の液晶を有する液晶セルでは、液晶セルの一方の面に直線偏光板を配置して、遮光状態の透過光量を低減することができる。
【0005】
特許文献6には、ゲストホスト方式による液晶セルを積層して液晶表示パネルを作製する構成が開示されている。
調光部材では、液晶表示パネルに適用される種々の構成を適用することができると考えられるものの、調光部材を車両の窓、建築物の窓等に配置する場合において、色味及び視野角特性を重視する場合、ゲストホスト方式の液晶を適用することが望ましい。
また、調光部材は、各種の構造体に適用して、太陽光等の外光の入射を必要とする部位に配置される場合がある。ここで、構造体とは、ビル、家屋等により代表される建築物や、自動車、列車等の車両、船舶、航空機により代表される移動体、室内等で使用されるパーテーション(仕切り板)等を光の透過を目的とした開口部を有するものをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03-47392号公報
【特許文献2】特開平08-184273号公報
【特許文献3】特開平11-94880号公報
【特許文献4】特開2013-139521号公報
【特許文献5】特開2012-31384号公報
【特許文献6】特開昭63-25629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような調光部材を移動体や、建築物等の構造体に使用する場合において、透過光量を一段と増やすことが望まれる。
本発明は、調光部材を使用する場合に、従来に比してより効果的に透光状態における透過光量を増やすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 構造体の外側から外光が入射する部位に配置され、入射した前記外光の遮光及び透過を調節する調光部材であって、
当該調光部材の前記外光が入射する側に配置される偏光部材を備え、
前記偏光部材の吸収軸の方向が、前記構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする調光部材。
【0010】
(2) (1)において、
前記偏光部材は、液晶組成物及び二色性色素組成物を有する液晶層であり、
前記液晶層は、その吸収軸の方向が前記構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする調光部材。
【0011】
(3) (1)又は(2)において、
前記偏光部材の前記外光が入射する側とは反対側に直線偏光板を備え、
前記直線偏光板の吸収軸の方向が、前記構造体の水平方向に対して10度以下の方向であること、
を特徴とする調光部材。
【0012】
(4) 外側から外光が入射する部位に、入射した前記外光の遮光及び透過を調節する調光部材が設けられた構造体であって、
前記調光部材は、
当該調光部材の前記外光が入射する側に配置される偏光部材を備え、
前記偏光部材の吸収軸の方向が、当該構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向により配置されること、
を特徴とする構造体。
【0013】
(5) (4)において、
前記偏光部材は、液晶組成物及び二色性色素組成物を有する液晶層であり、
前記液晶層の吸収軸の方向が、前記構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする構造体。
【0014】
(6) (5)において、
前記液晶層の前記外光の入射側とは逆側に偏光子を備え、
前記偏光子は、第2液晶組成物、第2二色性色素組成物を有する第2液晶層を備えること、
を特徴とする構造体。
【0015】
(7) (5)又は(6)において、
前記調光部材の遮光状態において、
少なくとも前記液晶層の前記外光の入射側における前記二色性色素組成物の長軸方向は、鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする構造体。
【0016】
(8) (4)又は(5)において、
前記偏光部材の前記外光が入射する側とは反対側に直線偏光板を備え、
前記直線偏光板の吸収軸の方向が、前記構造体の水平方向に対して10度以下の方向であること、
を特徴とする構造体。
【0017】
(9) 構造体の外側から外光が入射する部位に、入射した前記外光の遮光及び透過を調節する調光部材を配置する調光部材の配置方法であって、
前記調光部材は、
当該調光部材の前記外光が入射する側に配置される偏光部材を備え、
前記偏光部材の吸収軸の方向が、当該構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向により配置されること、
を特徴とする調光部材の配置方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、調光部材を使用する場合に、従来に比してより効果的に透光状態における透過光量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の調光フィルムの構成を説明する断面図である。
【
図2】第1実施形態の調光フィルムが配置された車両を説明する図である。
【
図3】調光フィルムの透光状態における透過率と二色性色素組成物の長軸方向の傾きとの関係を示す図である。
【
図4】第2実施形態の調光フィルムが配置された建築物を説明する図である。
【
図5】第3実施形態の調光フィルムの構成を説明する断面図である。
【
図6】第4実施形態の調光フィルムの構成を説明する断面図である。
【
図7】第4実施形態の調光フィルムが配置された車両を説明する図である。
【
図8】第5実施形態の調光フィルムの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
〔調光フィルム〕
図1は、第1実施形態の調光フィルムの構成を説明する断面図である。
本実施形態では、調光部材としてフィルム状の調光フィルムを適用する例で説明するが、これに限定されるものでない。
調光フィルム1は、液晶組成物への電界を変動させることにより透過する透過光量を制御する部材であり、本実施形態では、ゲストホスト方式による液晶セル4(偏光部材)により形成される。
【0021】
〔液晶セル〕
液晶セル4は、フィルム状の下側積層体5D及び上側積層体5Uにより液晶層8を挟持して構成される。
【0022】
〔下側積層体及び上側積層体〕
下側積層体5Dは、透明フィルム材による基材6に、透明電極11、スペーサ12、配向層13を配置して形成される。
上側積層体5Uは、透明フィルム材による基材15に、透明電極16、配向層17を配置して形成される。調光フィルム1は、この上側積層体5U及び下側積層体5Dに設けられた透明電極11、16の駆動により、液晶層8に設けられたゲストホスト液晶組成物8Aへの電界を変化させて、入射した光の透過率を制御することができる。
【0023】
〔基材〕
基材6、15は、この種のフィルム材に適用可能な種々の透明フィルム材を適用することができる。この実施形態において、基材6、15は、ポリカーボネートフィルムが適用されるものの、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム、TACフィルム等を適用してもよい。
【0024】
〔透明電極〕
透明電極11、16は、この種のフィルム材に適用される各種の電極材料を適用することができ、この実施形態ではITO(Indium Tin Oxide)による透明電極材により形成される。
【0025】
〔スペーサ〕
スペーサ12は、液晶層8の厚みを規定するために設けられ、各種の樹脂材料を広く適用することができる。本実施形態では、スペーサ12は、フォトレジストにより作製され、透明電極11が形成された基材6の上に、フォトレジストを塗工して露光、現像することにより作製される。
なお、スペーサ12は、上側積層体5Uに設けてもよく、上側積層体5U及び下側積層体5Dの双方に設けてもよい。また、スペーサ12は、配向層13の上に設けるようにしてもよい。更に、スペーサ12は、上述のフォトレジストに限定されるものでなく、例えば、ビーズスペーサを適用してもよい。
【0026】
〔配向層〕
配向層13、17は、ポリイミド樹脂層をラビング処理して作製される。なお、配向層13、17は、液晶層8に係る液晶材料に対して配向規制力を発現可能な各種の構成を適用することができ、いわゆる光配向層により作製してもよい。
なお、光配向層の材料には、光配向の手法を適用可能な各種の材料を適用することができるものの、例えば、一旦配向した後には、紫外線の照射によって配向が変化しない、例えば光二量化型の材料を使用することができる。この光二量化型の材料については、「M.Schadt, K.Schmitt, V. Kozinkov and V. Chigrinov : Jpn. J. Appl.Phys., 31, 2155 (1992)」、「M. Schadt, H. Seiberle and A. Schuster : Nature, 381, 212(1996)」等に開示されている。
【0027】
〔液晶層〕
液晶層8は、棒状に形成されたゲストホスト液晶組成物8A及び二色性色素組成物8Bによるゲストホスト液晶の溶液により形成され、この種の調光フィルム1に適用可能な各種の液晶層材料を広く適用することができる。
【0028】
調光フィルム1は、透明電極11、16への印加電圧の変更により液晶層8の電界が変化し、垂直配向と水平配向とでゲストホスト液晶組成物8Aの配向を変化させる。調光フィルム1は、このゲストホスト液晶組成物8Aの配向の変化に連動して、その長軸方向の向きが液晶層8の厚み方向と厚み方向と直交する方向とで変化する二色性色素組成物8Bにより入射光の透過を制御する。
【0029】
調光フィルム1は、ゲストホスト液晶組成物にいわゆるポジ型の液晶組成物を適用して、液晶層8への無電界時、ゲストホスト液晶組成物を垂直配向(調光フィルムの厚み方向に配向)させ、液晶層8の電界印加時にゲストホスト液晶組成物を水平配向(調光フィルムの厚み方向に直交する方向に配向)させ、これによりいわゆるノーマリーホワイトにより構成される。
なお、調光フィルム1は、ゲストホスト液晶組成物にいわゆるネガ型の液晶組成物を適用して、液晶層8への無電界時、ゲストホスト液晶組成物を水平配向させ、液晶層8の電界印加時にゲストホスト液晶組成物を垂直配向させ、これによりいわゆるノーマリーブラックにより構成されるようにしてもよい。
また、これらの水平配向時において液晶組成物を旋回させてもよく、これらによりVA方式、TN方式等、種々の駆動方式を広く適用することができる。
ここで、VA(Vertical Alignment)方式とは、無電界時、液晶層8の液晶分子は垂直配向し、これにより調光フィルム10は、入射光を遮光して遮光状態となる。また、TN(Twisted Nematic)方式とは、電界の印加により、液晶分子の配向を垂直方向(厚み方向)と水平ねじれ方向とで変化させ、光の旋光性を利用して透過光量を制御する方式である。
【0030】
〔シール材〕
調光フィルム1は、液晶層8を囲むように、シール材19が配置され、このシール材19により上側積層体5U、下側積層体5Dが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。
【0031】
上述の調光フィルム(調光部材)は、構造体の外側から太陽光等の外光が入射する部位に配置され、構造体内に入射する光量を制限するために用いられる。ここで、構造体とは、自動車、列車等の車両、船舶、航空機により代表される移動体や、ビル、家屋等により代表される建築物、室内等で使用されるパーテーション(仕切り板)等の光の透過を目的とした開口部を有するものをいう。
本実施形態では、調光フィルム1が構造体の一例である車両(乗用車)に配置される例で説明するが、これに限定されるものでなく、建築物等のその他の構造体に適用されるようにしてもよい。
【0032】
〔車両〕
図2は、第1実施形態の調光フィルムが配置された車両を説明する図である。
図2は、車両を鉛直上方から見た図である。
本実施形態の車両20は、乗用車であり、搭乗者が乗車している部位に向かって外光が入射する部位に調光フィルム1が配置される。
具体的には、車両20は、
図2に示すように、車内に光を入射させる部位として、フロントウインドウ21、リアウインドウ22、サイドウインドウ23が設けられており、本実施形態では、上述の調光フィルム1が複数のサイドウインドウ23に貼り付けられている。
なお、車両20は、乗用車に代えて、トラック、バス等の車両に適用してもよい。
【0033】
複数のサイドウインドウ23に配置された各調光フィルム1は、それぞれ個別に不図示の駆動用電源に接続され、個別に電圧が印加されるように構成されている。これにより車両20は、各サイドウインドウ23の透過光を個別に調整することができる。
【0034】
なお、調光フィルム1は、各サイドウインドウ23の車内側より粘着剤等に貼り付けて配置される。実用上十分な耐候性等の信頼性を確保することができる場合、車外側より貼り付けて配置されるようにしてもよい。また、これらウインドウを合わせガラスにより構成して、合わせガラスの中間材として調光フィルムを適用してもよい。
【0035】
ここで、調光フィルム1に設けられるゲストホスト方式の液晶層8は、二色性色素組成物8Bが基材の平面に対して水平方向に並んでいる遮光状態の場合、偏光板としての機能を有するが、二色性色素組成物が平面に対して少しでも傾斜している場合(調光フィルムが透光状態から中間調の状態までの場合)においても、偏光板としての機能を有する。
【0036】
各サイドウインドウに設けられた調光フィルム1は、車両20の鉛直方向(水平方向に垂直な方向)に対して液晶層8の吸収軸の方向が18度以下の方向に、より好ましくは、10度以下の方向になるように配置される。
ここで、液晶層8の吸収軸の方向とは、液晶層8の二色性色素が基材の平面に対して水平方向に並んだ状態(遮光状態)において、液晶層8の厚み方向に直交する面内における外光の入射側に位置する二色性色素組成物8Bの長軸方向をいう。より具体的には、液晶層8の吸収軸の方向とは、液晶層8の二色性色素が基材の平面に対して水平方向に並んだ状態(遮光状態)において液晶層8に直線偏光板を重ねた場合に、最も透過率が低くなる状態における直線偏光板の透過軸の方向と一致する方向をいう。
【0037】
図3は、調光フィルムの透光状態における透過率と二色性色素組成物8Bの長軸方向の傾きとの関係を示す図である。ここで、
図3中の縦軸は、調光フィルムの透過率を示し、横軸は、二色性色素組成物8Bの長軸方向の傾きを示す。
ここで、
図3は、調光フィルム1の一方向から直線偏光による計測光を入射し、調光フィルムの透光状態における透過率の変化を計測した計測結果である。この計測では、計測光を水平偏光とし、調光フィルム1を徐々に計測光に平行な軸周りに傾けて透過率を計測した。
図3に示す横軸は、調光フィルム1の入射面側における二色性色素組成物8Bの長軸方向の垂直(鉛直)方向に対する傾きを示すものである。
【0038】
なお、本計測に用いた液晶層8は、ゲストホスト方式の液晶(無電解時に遮光状態となるノーマリーブラック)を適用し、厚み9.0μmにより作製されている。また、電圧を印加することで水平配向状態から垂直配向状態にゲストホスト液晶組成物を駆動するようにし、ゲストホスト液晶組成物8Aの旋回角は、360度とした。
【0039】
この計測結果によれば、
図3に示すように、透光状態において、調光フィルム1は、入射光の偏光面に応じて透過率が変化することが確認される。
また、
図3の符号bに示すように、入射面側において、二色性色素組成物8Bの長軸方向が偏光面である場合に、最も透過率が低くなり、二色性色素組成物8Bの長軸方向が、水平方向(垂直方向に対して90度)である場合に、透過率が最も低くなることが分かる。
また、
図3の符号aに示すように、入射面側において、この水平方向と直交する方向が偏光面である場合に、最も透過率が高くなり、この直交する方向(鉛直方向)が、透過率が最も高くなることが分かる。
【0040】
ここで、車両20に到来する外光は、直射日光だけでなく、地面や、周囲の建造物により反射した反射光が含まれており、この反射光は垂直偏光成分に比して水平偏光成分が多く含まれている。
そのため、本実施形態のように、液晶層8の吸収軸の方向が、車両20の鉛直方向に対して18度以下の方向に配置すれば、18度より大きな角度に液晶層8の吸収軸の方向を配置する場合に比して、透光状態における透過光量を増やすことができる。また、好ましくは、液晶層8の吸収軸の方向を、車両20の鉛直方向に対して10度以下の方向に配置すれば、透光状態における透過光量をより増やすことができる。より好ましくは、液晶層8の吸収軸の方向を、車両20の鉛直方向に完全に一致するように配置すれば、透光状態における透過光量を更に効率よく増やすことができる。
ここで、液晶層8の吸収軸の方向を、車両の鉛直方向に対して18度以下とすれば調光フィルムの透過率の変化をほぼ一定にする(透過率の変化率(鉛直方向における透過率に対する透過率の変化率)が10%以下にする)ことができるが(
図3中の0~18度の範囲)、車両の鉛直方向に対して18度よりも大きくした場合、調光フィルムの透過率が低くなりすぎてしまうので望ましくない。また、液晶層8の吸収軸の方向を、車両の鉛直方向に対して10度以下とすれば調光フィルムの透過率の変化を更に一定に近づける(透過率の変化率(鉛直方向における透過率に対する透過率の変化率)が2%以下にする)ことができる。
これにより、本実施形態では、ゲストホスト方式による調光フィルムを使用する場合に、従来に比してより効果的に車内に外光を入射することができる。
【0041】
また、このように配置した場合、上述のように透光状態における透過光量の増加に伴い、視野角の変化による入射光量の変化も低減することができ、これにより十分な視野角特性を確保することができる。
【0042】
また、このために、少なくとも液晶層8の外光が入射する側では、透光状態における二色性色素組成物8Bの長軸方向を、鉛直方向に対して18度以下の方向に設定すれば、種々の駆動方式によりゲストホスト液晶組成物8Aを駆動して、ゲストホスト液晶組成物8Aが液晶層8の厚み方向で旋回している場合等にあっても、液晶層8の吸収軸の方向を、鉛直方向に対して18度以下の方向に設定することができる。
なお、液晶層8の吸収軸の方向は、鉛直方向に対して10度以下の方向であればより好ましく、この場合、液晶層8の外光の入射側では、遮光状態における二色性色素組成物8Bの長軸方向を鉛直方向に対して10度以下の方向にする必要がある。
【0043】
本実施形態の調光フィルム1は、上述したように、車両20のサイドウインドウ23に以下のようにして配置される。
また、調光フィルム1は、複数のサイドウインドウ23に対して、
図2中の矢印Bに示すように、液晶層8の吸収軸方向が車両20の上下方向(鉛直方向)であるようにして配置される。
【0044】
上述のように、車両20のサイドウインドウ23に調光フィルム1を配置することによって、調光フィルム1の透光状態において、車両20の外部から入射する光のうち、特に地面や、構造物に反射した反射光に多く含まれる水平偏光成分の光が吸収されてしまうのを低減することができ、車内への透過光量を効果的に増やすことができる。
なお、調光フィルム1は、サイドウインドウ23の何れか一か所又は複数個所に選択的に配置してもよく、また、フロントウインドウや、リアウインドウ、サンルーフ、サンバイザー等に配置するようにしてもよい。また、調光フィルム1は、上述のように、十分な視野角特性を確保しているので、乗用車のフロントウインドウやリアウインドウのように鉛直方向に対して傾斜したウインドウに対して貼付してもよい。
【0045】
(1)本実施形態では、ゲストホスト液晶組成物8A、2色性色素組成物8Bによる液晶層8を備えた調光フィルム1を、車両20(構造体)の鉛直方向に対して液晶層8の吸収軸が18度以下の方向になるように配置しているので、従来に比して、調光フィルム1の透光状態における透過光量をより効果的に増やすことができる。またこのように配置した場合、視野角の変化による入射光量の変化も低減することができ、これにより十分な視野角特性を確保することができる。
【0046】
(2)また、このとき、少なくとも液晶層8の外光が入射する側において、透光状態における二色性色素組成物8Bの長軸方向が、車両20(構造物)の鉛直方向に対して18度以下の方向であるので、ゲストホスト液晶組成物8Aが液晶層8の厚み方向で旋回している場合等であっても、より確実に調光フィルム1の透光状態における透過光量を増やすことができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態の調光フィルムが配置された建築物を説明する図である。
図4は、調光フィルムが配置された建築物の断面を示す図である。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
本実施形態では、調光フィルム1は、構造体として建築物30に配置されている。具体的には、調光フィルム1は、室内に外光が入射する部位となる建築物30の開口部である窓ガラス31に配置される。
なお、調光フィルム1は、ガラス、透明アクリル板等の透明板材を使用したドア等に配置するようにしてもよい。また、調光フィルム1は、実用上十分な耐候性等の信頼性を確保することができる場合、窓ガラス31の屋外側に貼り付けるようにしてもよく、また、合わせガラスの中間材に適用して配置するようにしてもよい。
【0048】
また、調光フィルム1は、液晶層8の吸収軸の方向が、建築物30の鉛直方向に対して18度以下の方向に、より好ましくは、10度以下の方向に、更に好ましくは、建築物30の鉛直方向に一致するようにして配置される。
そのため、調光フィルム1は、遮光状態において、少なくとも液晶層8の外光が入射する側(建築物30の外側)では、二色性色素組成物8Bの長軸方向が、建築物30の鉛直方向に対して18度以下の方向に、より好ましくは、10度以下の方向に、更に好ましくは、建築物30の鉛直方向に一致するようして配置される。
【0049】
これにより建築物30は、上述の第1実施形態と同様に、従来に比してより効果的に調光フィルム1の透光状態における透過光量を増やすことができる。またこのように配置した場合、視野角の変化による入射光量の変化も低減することができ、これにより十分な視野角特性を確保することができる。
【0050】
〔第3実施形態〕
図5は第3実施形態の調光フィルムの構成を説明する断面図である。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
この実施形態では、調光フィルム1に代えて、この調光フィルム41が、移動体や建築物等の構造体に適用される点を除いて、第1実施形態又は第2実施形態と同一に構成される。
【0051】
この調光フィルム41は、液晶セル4に偏光子42が積層される。
偏光子42は、液晶セル4と同一に構成され、遮光状態において、ゲストホスト液晶組成物48Aが一方向に水平配向するように駆動され、また透光状態において、ゲストホスト液晶組成物48Aが垂直配向するように駆動される。
ここで、偏光子42は、ゲストホスト液晶組成物48Aが一方向に水平配向した場合に、偏光子としての光学的機能を発揮することになる。
【0052】
調光フィルム41は、外光が入射する側(構造体の外側)に液晶セル4が位置し、構造体の内側に液晶セル42が位置するようにして配置される。また、少なくとも液晶層8の外光が入射する側では、二色性色素組成物8Bの長軸方向が、構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向になるようにして配置される。これにより、液晶セル4の液晶層8について、吸収軸の方向が鉛直方向に対して18度以下の方向になるようにして配置される。
【0053】
また、液晶セル48は、外光が入射する側の二色性色素組成物48Bの長軸方向が、液晶セル8の外光が出射する側(構造物の内側)に位置する二色性色素組成物8Bと直交するようにして配置される。
これにより、調光フィルム41では、遮光状態と透光状態とで、十分な光量の差を確保することができる。
【0054】
以上より、液晶セル4にゲストホスト液晶による偏光子42を積層して配置する場合でも、第1実施形態、第2実施形態と同一の効果を得ることができる。
【0055】
〔第4実施形態〕
〔調光フィルム〕
図6は、第4実施形態の調光フィルムの構成を説明する断面図である。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
調光フィルム101は、液晶組成物への電界を変動させることにより透過する透過光量を制御する部材であり、本実施形態では、
図6に示すように、直線偏光板102、103により液晶セル104を挟持して構成される。
【0056】
〔直線偏光板〕
直線偏光板102、103は、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素等を含浸させた後、延伸して直線偏光板としての光学的機能を果たす光学機能層が形成され、TAC(トリアセチルセルロース)等の透明フィルム材による基材により光学機能層を挟持して作製される。直線偏光板102、103は、クロスニコル配置により、アクリル系透明粘着樹脂等による接着剤層により液晶セル104に配置される。なお、直線偏光板102、103は、クロスニコル配置に代えてパラレルニコル配置により配置してもよい。
【0057】
〔液晶セル〕
液晶セル104は、フィルム状の下側積層体105D及び上側積層体105Uにより液晶層108を挟持して構成される。
【0058】
〔下側積層体、上側積層体〕
下側積層体105Dは、基材106に、透明電極111、スペーサ112及び配向層113を配置して形成される。
上側積層体105Uは、基材115に、透明電極116及び配向層117を配置して形成される。調光フィルム101は、この上側積層体105U及び下側積層体105Dに設けられた透明電極111、116の駆動により、液晶層108に設けられた液晶組成物への電界を変化させて、入射した光の透過率を変化させることができる。
【0059】
〔基材〕
基材106、115は、種々の透明フィルム材を適用することができるが、光学異方性の小さなフィルム材を適用することが望ましい。本実施形態において、基材106、115は、厚み100μmのポリカーボネートフィルムが適用されるが、種々の厚みのフィルム材を適用することができ、さらにはCOP(シクロオレフィンポリマー)フィルム等を適用してもよい。
【0060】
〔透明電極〕
透明電極111、116は、この種のフィルム材に適用される各種の電極材料を適用することができ、本実施形態ではITO(Indium Tin Oxide)による透明電極材により形成される。
【0061】
〔スペーサ〕
スペーサ112は、液晶層108の厚みを規定するために設けられ、各種の樹脂材料を広く適用することができる。本実施形態では、スペーサ112は、フォトレジストにより作製され、基材106上に作製された透明電極111上に、フォトレジストを塗工して露光、現像することにより作製される。
なお、スペーサ112は、上側積層体105Uに設けてもよく、上側積層体105U及び下側積層体105Dの双方に設けてもよい。また、スペーサ112は、配向層113の上に設けるようにしてもよい。更に、スペーサ112は、上述のフォトレジストに限定されるものでなく、例えば、ビーズスペーサを適用してもよい。
【0062】
〔配向層〕
配向層113、117は、光配向層により形成される。光配向層に適用可能な光配向材料は、光配向の手法を適用可能な各種の材料を広く適用することができるが、本実施形態では、例えば光二量化型の材料を使用する。光二量化型の材料については、「M.Schadt、 K.Schmitt、 V. Kozinkov and V. Chigrinov : Jpn. J. Appl.Phys.、 31、 2155 (1992)」、「M. Schadt、 H. Seiberle and A. Schuster : Nature、 381、 212(1996)」等に開示されている。
なお、配向層113、117は、光配向層に代えて、例えば、ポリイミド樹脂層をラビング処理により作製したり、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して作製したりしてもよい。
【0063】
〔液晶層〕
液晶層108は、この種の調光フィルム101に適用可能な各種の液晶層材料を広く適用することができる。具体的に、液晶層108には、例えば、メルク社製MLC2166等の液晶材料を適用することができる。本実施形態の液晶層108は、上述の第1実施形態の液晶層8と相違して、ゲストホスト方式でない、すなわち二色性色素組成物を含有していない液晶層である。
液晶セル104は、液晶層108を囲むように、シール材119が設けられている。液晶セル104は、このシール材119により上側積層体105U、下側積層体105Dが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。
シール材119は、例えば、エポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。
【0064】
調光フィルム101は、透明電極111、116に、所定周期で極性が切り替わる交流電圧が印加され、この交流電圧により液晶層108に電界が形成される。また、この電界により液晶層108に設けられた液晶分子の配向が制御され、液晶層108を透過する光の透過率が制御される。
【0065】
本実施形態の調光フィルム101における液晶層108の配向制御には、VA方式(Vertical Alignment、垂直配向型)が適用される。VA方式では、無電界時、液晶層8の液晶分子を垂直配向(液晶層の厚み方向に配向)し、これにより調光フィルム101は、入射光を遮光して遮光状態となる。また、電界の印加により、液晶層108の液晶分子が水平配向(液晶層の厚み方向に交差(直交)する方向に配向)し、これにより、調光フィルム101は、入射光を透過する透光状態となる。
【0066】
なお、VA方式に代えて、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式等、種々の駆動方式を適用してよい。
ここで、TN方式は、電界の印加により、液晶分子の配向を垂直方向と水平ねじれ方向とで変化させ、光の旋光性を利用して透過光量を制御する方式である。
また、IPS方式は、一方の基材に電極をまとめて作成し、この電極による電界により配向させた液晶分子を基板に対して横(水平)方向に回転させることにより透過光量を制御する方式である。
また液晶セル104は、光配向層のパターンニング等によりいわゆるマルチドメイン方式により液晶材料を駆動してもよく、さらにはシングルドメインにより駆動してもよい。
【0067】
〔車両〕
図7は、第4実施形態の調光フィルムが配置された車両を説明する図である。
図7は、車両を鉛直上方から見た図である。
本実施形態の車両120は、乗用車であり、搭乗者が乗車している部位に向かって外光が入射する部位に調光フィルム101が配置される。
具体的には、車両120は、
図7に示すように、車内に光を入射させる部位として、フロントウインドウ121、リアウインドウ122、サイドウインドウ123が設けられており、各ウインドウに調光フィルム101が貼り付けられて配置される。
なお、車両120は、乗用車に代えて、トラックや、バス等の車両に適用してもよい。
【0068】
フロントウインドウ121、リアウインドウ122、サイドウインドウ123に配置された各調光フィルム101は、それぞれ個別に不図示の駆動用電源に接続され、個別に電圧が印加されるように構成されている。これにより車両120は、各ウインドウ121、122、123の透過光を個別に調整することができる。
【0069】
ここで、本実施形態の調光フィルム101は、各ウインドウ121、122、123の車内側より粘着剤等に貼り付けて配置され、直線偏光板102(偏光部材)が、外光が入射する側に位置し、直線偏光板103が、外光が入射する側とは反対側(車内側)に位置する。
なお、実用上十分な耐候性等の信頼性を確保することができる場合、車外側から貼り付けて配置されるようにしてもよい。また、これらウインドウを合わせガラスにより構成して、合わせガラスの中間材として調光フィルムを適用してもよい。
【0070】
また、各調光フィルム101は、液晶セル104の車外側(外光の入射側)の直線偏光板102の吸収軸の方向が、車両120の鉛直方向に対して18度以下、より好ましくは10度以下となるように配置される。また、車内側(外光の入射側とは反対側)の直線偏光板103の吸収軸の方向が、車両120の水平方向に対して10度以下となるように配置される。
【0071】
本実施形態の調光フィルム101は、車両120の各ウインドウ121~123に以下のようにして配置される。
調光フィルム101は、車両120のフロントウインドウ121、リアウインドウ122においては、
図7中の矢印Aに示すように、車外側(外光の入射側)の直線偏光板102の吸収軸方向が鉛直方向になるようにして配置され、また、矢印Bに示すように、車内側(外光の入射側とは反対側)の直線偏光板103の吸収軸方向が車幅方向(水平方向)になるようにして配置される。
また、調光フィルム101は、サイドウインドウ123においては、
図7中の矢印Cに示すように、車外側の直線偏光板102の吸収軸方向が車両120の鉛直方向になるようにして配置され、また、矢印Dに示すように、車内側の直線偏光板103の吸収軸方向が車両120の前後方向(水平方向)になるようにして配置される。
なお、調光フィルム101は、フロントウインドウ121、リアウインドウ122、サイドウインドウ123の何れか一か所又は複数個所に選択的に配置されるようにしてもよく、また、サンルーフや、サンバイザー等に配置されるようにしてもよい。
【0072】
ここで、車両120に到来する外光は、上述したように、直射日光だけでなく、地面や、周囲の建造物により反射した反射光が含まれており、この反射光は垂直偏光成分に比して水平偏光成分が多く含まれている。
そのため、上述のように、車両120の各ウインドウに調光フィルム101の直線偏光板102の吸収軸の方向を鉛直方向に対して18度以下に配置することによって、調光フィルム101の透光状態において、車両120の外部から入射する光のうち、特に地面や、構造物に反射した反射光に多く含まれる水平偏光成分の光が、調光フィルム101の外光の入射側に配置される直線偏光板102により吸収されてしまうのを低減することができ、車内への透過光量を効果的に増やすことができる。
【0073】
また、車両120内において搭乗者(運転手)等が装着する偏光サングラスは、上述の反射光による眩しさをより効率よく防止する観点から、その吸収軸が水平方向となるように作製されている。
そのため、車外から入射する外光を、調光フィルム101を介して水平偏光により出射した場合、調光フィルム101からの出射光が偏光サングラスにより遮光されてしまい、調光フィルムが透光状態であるにも関わらず、偏光サングラスの装着している搭乗者は、車外を視認できなくなり、また、著しく車内が暗く感じてしまう場合がある。
【0074】
しかしながら、本実施形態のように、調光フィルム101の車内側の直線偏光板103の吸収軸の方向が、車両120の水平方向に対して10度以下となるように調光フィルム101を各ウインドウに配置することによって、透光状態において調光フィルム101を介して車内に入射する光をほぼ垂直偏光により出射することができる。これにより、調光フィルム101の透光状態において、偏光サングラスを装着していても、搭乗者が、調光フィルム101を通じて車外を視認することができるとともに、車内が暗く感じてしまうのを極力抑制することができる。
より好ましくは、調光フィルム101の車内側の直線偏光板の吸収軸の方向を、車両120の水平方向に一致させることにより、偏光サングラスにより遮光されてしまう光量を更に低減することができる。
仮に、調光フィルム101の車内側の直線偏光板103の吸収軸の方向が、車両120の水平方向に対して10度よりも大きい場合、調光フィルム101を介して車内に入射する光に水平偏光成分が増えてしまい、偏光サングラスにより遮光されてしまう光量が増加してしまい、偏光サングラスを通して車外が視認し難くなるので好ましくない。
【0075】
〔第5実施形態〕
図8は、第5実施形態の調光フィルムの構成を説明する図である。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
本実施形態の調光フィルム201は、液晶セル204(偏光部材)の一方の面にのみ直線偏光板203が設けられている点で、上述の第1実施形態の調光フィルム1と相違する。
すなわち、本実施形態の調光フィルム201の液晶セル204は、二色性色素208Bをゲストホスト型液晶分子208A内に混合し、ゲストホスト型液晶分子208Aの移動に伴い、二色性色素208Bを移動させることで、光の透遮光を制御するゲストホスト方式である。
【0076】
本実施形態の調光フィルム201は、上側積層体205Uと下側積層体205Dとによりゲストホスト方式の液晶層208を挟持した液晶セル204と、この液晶セル204の下側積層体205D側の面に配置された直線偏光板203とを備える。なお、上側積層体205U、下側積層体205D、液晶層208は、上述の各実施形態の上側積層体5U、下側積層体5D、液晶層8と同様である。
本実施形態では、この直線偏光板203が、車両などの移動体や、建築物等の構造体の内側(外光の入射側とは反対側)に位置し、また、液晶セル204が外光の入射側に位置するようにして、調光フィルム201が、構造体の外光が入射する部位に配置される。
【0077】
ここで、液晶セル204に設けられた液晶層208は、その吸収軸の方向が、構造体の水平方向に対して18度以下の方向に、より好ましくは、10度以下の方向になるように配置されている。
また、調光フィルム201の直線偏光板203は、その吸収軸の方向が、構造体の水平方向に対して10度以下の方向となるように配置されている。
【0078】
このように配置することによって、調光フィルム201の透光状態において、構造体の外部から入射する光のうち、特に地面や、構造物に反射した反射光に多く含まれる水平偏光成分の光が、調光フィルム201の外光の入射側に配置される液晶セル204により吸収されてしまうのを低減することができ、車内への透過光量を効果的に増やすことができる。
また、調光フィルム201の直線偏光板203によって、透光状態において調光フィルム101を介して車内に入射する光をほぼ垂直偏光により出射することができる。これにより、調光フィルム201の透光状態において、偏光サングラスを装着していても、構造体内に居る者が、調光フィルム201を通じて構造体の外側の景色等を視認することができるとともに、構造体内が暗く感じてしまうのを極力抑制することができる。
【0079】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
【0080】
上述の各実施形態において、調光部材としてフィルム状の調光フィルムを適用する例を示したが、これに限定されるものでない。例えば、基材にガラス板等を用いた、フィルムのような可撓性を有さない調光部材を上述の移動体や、建築物等の構造体に配置するようにしてもよい。この場合、調光部材を、車両のウインドウや、建築物の窓ガラスに貼付する代わりに、調光部材そのものを車両のウインドウや、建築物の窓ガラスの代わりに配置するようにしてもよい。
【0081】
上述の第3実施形態では、偏光子をゲストホスト方式の液晶セルにより構成される例について説明したが、これに限定されるものでなく、直線偏光板により構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1、31、41、101、201 調光フィルム
102 直線偏光板
103、203 直線偏光板
4、104、204 液晶セル
5U、105U、205U 上側積層体
5D、105D、205D 下側積層体
6、15、106、115、206、215 基材
8、108、208 液晶層
11、16、111、116、211、216 透明電極
12、112、212 スペーサ
13、17、113、117、213、217 配向層
19、119、219 シール材
20、120 車両
21、121 フロントウインドウ
22、122 リアウインドウ
23、123 サイドウインドウ
30 建築物
31 窓ガラス
42 偏光子
【手続補正書】
【提出日】2022-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の外側から外光が入射する部位に配置され、入射した前記外光の遮光及び透過を調節する調光部材であって、
当該調光部材の構成要素の中で最初に前記外光が入射する位置に配置される偏光部材を備え、
前記偏光部材の吸収軸の方向が、前記構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向であり、
前記偏光部材は、液晶組成物及び二色性色素組成物を有する液晶層であり、
前記液晶層は、その吸収軸の方向が前記構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする調光部材。
【請求項2】
外側から外光が入射する部位に、入射した前記外光の遮光及び透過を調節する調光部材が設けられた構造体であって、
前記調光部材は、前記調光部材の構成要素の中で最初に前記外光が入射する位置に配置される偏光部材を備え、
前記偏光部材の吸収軸の方向が、当該構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向により配置され、
前記偏光部材は、液晶組成物及び二色性色素組成物を有する液晶層であり、
前記液晶層の吸収軸の方向が、前記構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする構造体。
【請求項3】
前記調光部材の遮光状態において、
少なくとも前記液晶層の前記外光の入射側における前記二色性色素組成物の長軸方向は、鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
構造体の外側から外光が入射する部位に、入射した前記外光の遮光及び透過を調節する調光部材を配置する調光部材の配置方法であって、
前記調光部材は、前記調光部材の構成要素の中で最初に前記外光が入射する位置に配置される偏光部材を備え、
前記偏光部材の吸収軸の方向が、当該構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向により配置され、
前記偏光部材は、液晶組成物及び二色性色素組成物を有する液晶層であり、
前記液晶層の吸収軸の方向が、前記構造体の鉛直方向に対して18度以下の方向であること、
を特徴とする調光部材の配置方法。