(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176359
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20221117BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221117BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221117BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
A61K38/17
C12N15/12
A61P19/02
C07K14/47 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161822
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2019543035の分割
【原出願日】2018-02-08
(31)【優先権主張番号】1702144.5
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518088967
【氏名又は名称】アネキシン ファーマシューティカルズ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】フロステゴード ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】フロステゴード アンナ
(72)【発明者】
【氏名】チャガラジャン ディヴィヤ
(57)【要約】
【課題】変形性関節症およびそれに関連する状態の予防または治療のための治療薬を提供する。
【解決手段】対象の1つ以上の関節におけるびらん性関節症(Erosive osteoarthritis)の予防又は治療の用途の予防薬又は治療薬であって、有効成分としてアネキシンA5タンパク質を含有する、予防薬又は治療薬。対象が当該関節又は各関節にびらん性関節症を有する、対象のびらん性関節症の治療の用途の予防薬又は治療薬。対象がびらん性関節症と診断されている、当該用途の予防薬又は治療薬。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の1つ以上の関節におけるびらん性関節症(Erosive osteoarthritis)の予防又は治療の用途の予防薬又は治療薬であって、有効成分としてアネキシンA5タンパク質を含有する、予防薬又は治療薬。
【請求項2】
前記対象が前記関節又は各関節にびらん性関節症を有する、請求項1に記載の前記対象のびらん性関節症の治療の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項3】
前記対象がびらん性関節症と診断されている、請求項1又は2に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項4】
前記関節が滑膜関節である、請求項1~3のいずれか1項に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項5】
前記滑膜関節が、平面関節、球窩関節、蝶番関節、車軸関節、顆状関節、及び鞍関節からなる一覧から選択される1つ以上の滑膜関節である、請求項4に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項6】
前記対象が幼若ではなく、かつ/又は前記対象が身体的成長を完了している、請求項1~5のいずれか1項に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項7】
前記対象がヒト、ウマ科(ウマを含む)、ウシ科、ラクダ、ブタ、ラマ、アルパカ、ヒツジ、ヤギ、イヌ科、ネコ科、ウサギ、又はげっ歯類などの哺乳類対象である、請求項1~6のいずれか1項に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項8】
前記対象がヒトである、請求項7に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項9】
前記対象が45歳以上である、請求項8に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項10】
前記対象がウマである、請求項9に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項11】
前記対象が5歳以上である、請求項10に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項12】
前記アネキシンA5タンパク質が、少なくとも1μg/mlの濃度で投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項13】
前記アネキシンA5タンパク質が、
a) ヒトアネキシンA5(N末端メチオニンを含むか又は含まない、配列番号1の配列からなるタンパク質)の配列を含む、又はそれからなるタンパク質、
b) ヒトアネキシンA5の哺乳動物相同分子種、
d) N末端メチオニンを含むか又は含まないヒトアネキシンA5、配列番号1と、95%もしくは99%超同一であるタンパク質である、アネキシンの機能的類似体又はバリアント、
e) a)、b)、及びd)のいずれかの生物学的に活性な断片、
f) a)、b)、d)、及びe)のいずれかからなる単量体、それらを含むかもしくはそれらからなる二量体、又はそれらを含む融合タンパク質、ならびに
g) a)、b)、d)、e)、及びf)のいずれかのPEG化バリアント、
のいずれかである、請求項1~12のいずれか一項に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項14】
前記アネキシンA5タンパク質が、薬学的に許容される組成物又は獣医学的に許容される組成物に製剤化されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項15】
前記アネキシンA5タンパク質又は組成物が1ml以上の体積で前記関節又は各関節に投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項16】
前記対象が、ライフスタイルの変更、投薬、及び手術のうちの1つ以上から選択される1つ以上の追加の治療と別個に、同時に、又は逐次的に、アネキシンA5タンパク質又は組成物によって治療される、請求項1~15のいずれか1項に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項17】
前記予防薬又は治療薬が前記関節又は各関節に投与される、請求項1に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項18】
前記関節又は各関節が、滑膜関節、半関節連結、及び不動結合連結からなる一覧から選択される、請求項17に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項19】
前記びらん性関節症の診断が、治療される関節又は各関節におけるものである、請求項3に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項20】
前記滑膜関節が、
肋椎関節、椎間関節、手根中央関節、手根中手指関節、中手間関節、仙腸関節、関節突起間関節、胸肋関節、距骨下関節、距踵関節、肩鎖関節;
脛骨足根骨関節、脛腓関節、肩関節、距踵舟関節、股関節;
足関節、肘関節、顎関節、指節間関節、後膝関節、膝関節;
環軸関節、環軸関節、近位橈骨関節、飛節、足根間関節、距踵舟関節、踵立方関節、遠位橈尺関節;
環椎後頭関節、橈骨手根関節、中足指節関節、手首関節、手根間関節、橈骨手根関節、中手指節関節;
母指手根中手関節、踵立方関節、及び胸鎖関節、
からなる一覧から選択される1つ以上の滑膜関節である、請求項5に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【請求項21】
前記アネキシンA5タンパク質又は組成物が10ml以下の体積で前記関節又は各関節に投与される、請求項15に記載の用途の予防薬又は治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性関節症およびそれに関連する状態の予防または治療のための新規の方法、使用、および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における明らかに先に公開された文献の列挙または考察は、必ずしもその文書が最新技術の一部であるか、または共通の一般的知識であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0003】
変形性関節症は、世界中の人々に蔓延している慢性の変性疾患であり、患者の関節に疼痛およびこわばりを引き起こす。この疾患の罹患率は、患者の治療費および個人の生産性の喪失のために、社会に大きな経済的負担をもたらす(Hiligsmann and Reginster 2013,Medicographia,35:197-202)。
【0004】
一般的に、変形性関節症は、関節の使用によって引き起こされる疾患であると考えられている(例えば、一般的な「消耗」)。このような変形性関節症の物理的因果関係は、なぜこの疾患が高齢者に一般的であるのかということ、およびなぜ一般的な危険因子が過体重であることおよび関節にストレスがかかる職業を持つことであるのかを説明している。しかしながら、いくつかの研究は、変形性関節症の発症と進行が炎症性の要素を有することを示している。これは、変形性関節症の病態生理学的原因が何であるかに関して医学の分野で継続的な論争を引き起こした(Uchoa de Rezende and Constantino de Campos 2013,Rev.Bras.Ortop.48(6):471-474)。
【0005】
変形性関節症は、ヒト対象が罹患するだけでなく、動物も罹患する病気である。例えば、ウマでは、変形性関節症が跛行の約60%の原因であると推定されている(Mcllwraith et al.,2012 Bone Joint Res.,1:297-309)。
【0006】
現在、変形性関節症に対する治療法は、ヒトまたは動物のいずれにも存在しない。患者には、症状を管理するための薬(たとえば、パラセタモールなどの鎮痛剤)、および場合によっては罹患した関節を置き換えるための手術(たとえば股関節置換術)が提供される。
【0007】
したがって、変形性関節症のための新規の予防的および治療的な処置に対する必要性がある。
【0008】
アネキシンA5は、他の性質の中でもとりわけホスファチジルセリンに結合するタンパク質である。それは再狭窄およびアテローム性動脈硬化症のような循環器疾患を治療するために治療的に有益であると一般に考えられている(WO2009/103977およびWO2005/099744)。
【0009】
これまでに、アネキシンA5が、変形性関節症を悪化させるプロセスに関与していることが研究により示唆されていた。健康な関節および組織において、軟骨細胞(具体的には、関節軟骨細胞)は、細胞外マトリックスの無機質化および石灰化の調節を含む、関節軟骨の細胞外マトリックスの生成、維持、リモデリング、および修復のための役割を有する。石灰化が起こらない関節の領域は、「無機質化制限部位」と呼ばれる。その正常組織内では、無機質化のプロセスは、軟骨の奥深くの分化した関節軟骨細胞によって行われる。軟骨細胞の分化およびそれに続く細胞外無機質化は、アネキシンA5を発現し、無機質化コンピテント小胞を放出する軟骨細胞によって媒介される。II型およびX型コラーゲンとの結合を介して、アネキシンA5は小胞を細胞外マトリックスに固定する。アネキシンA5はまた、小胞中にカルシウムイオン(Ca2+)チャネルを形成し、それらのイオンの急速な動きを可能にし、無機質化および石灰化のプロセスを開始する(Kim and Kirsch 2008,The Journal of Biological Chemistry,283(16):10310-10317)。
【0010】
変形性関節症の関節や組織では、細胞表面のアネキシンA5および細胞外小胞が媒介する軟骨細胞の分化および細胞外の無機質化が、軟骨の奥深くではなく、関節全体に起こることが、これまでに観察されていた。この異所性軟骨細胞の分化が、軟骨細胞の細胞死をもたらすと報告されている一方、軟骨細胞におけるアネキシンA5無機質化の上方制御された発現は、関節全体に不適切に生じる無機質沈着をもたらすと報告された。無機質化および石灰化は、その後の関節組織の炎症および破壊を引き起こし、それが変形性関節症の発症および進行への寄与に関与すると考えられている(Kirsch et al.,2000,Osteoarthritis and Cartilage,8:294-302)。
【0011】
したがって、アネキシンA5が変形性関節症と関連してこれまでに直接研究されていた限りにおいて、それは変形性関節症の進行に寄与すると考えられていた。
【0012】
驚くべきことに、この背景に対して、本発明者らは、アネキシンA5タンパク質が変形性関節症、特に炎症によって引き起こされる変形性関節症の予防または治療に使用できることをここで確認した。この研究はあらゆる対象の変形性関節症に適用可能であるが、本発明者らはそれがヒトとウマの両方の変形性関節症に特に適用可能であることを示す。
【0013】
したがって、本発明の目的は、変形性関節症およびそれに関連する状態の予防または治療のための治療薬を提供することである。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、アネキシンA5タンパク質が、変形性関節症およびそれに関連する1つ以上の状態の治療および予防に使用できるという本出願人の驚くべき発見に基づいている。
【0015】
第1の態様では、本発明は、対象の1つ以上の関節における変形性関節症、またはそれに関連する状態の予防または治療において使用するためのアネキシンA5タンパク質であって、
関節または各関節は、滑膜性連結、半関節連結、および不動結合連結からなる一覧から選択される、アネキシンA5タンパク質を提供する。
【0016】
第1の態様の代替的な実施形態において、本発明は、対象の1つ以上の関節における変形性関節症、またはそれに関連する状態の予防または治療のための方法であって、
関節または各関節は、滑膜性連結、半関節連結、および不動結合連結からなる一覧から選択され、
治療有効量のアネキシンA5タンパク質を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0017】
第1の態様の別の代替的な実施形態では、本発明は、対象の1つ以上の関節における変形性関節症またはそれに関連する状態の予防または治療のための医薬の製造におけるアネキシンA5タンパク質の使用であって、
関節または各関節は、滑膜性連結、半関節連結、および不動結合連結からなる一覧から選択される、アネキシンA5タンパク質の使用を提供する。
【0018】
第2の態様では、本発明は、対象における変形性関節症、またはそれに関連する状態の予防または治療において使用するためのアネキシンA5タンパク質を提供する。
【0019】
第2の態様の代替的な実施形態において、本発明は、対象における変形性関節症、またはそれに関連する状態の予防または治療のための方法であって、
治療有効量のアネキシンA5タンパク質を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0020】
第2の態様の別の代替的な実施形態では、本発明は、対象における変形性関節症またはそれに関連する状態の予防または治療のための医薬の製造におけるアネキシンA5タンパク質の使用を提供する。
【0021】
第3の態様において、本発明は、対象の関節における変形性関節症、またはそれに関連する状態の予防または治療において使用するためのアネキシンA5タンパク質であって、
関節または各関節に投与されるアネキシンA5タンパク質を提供する。
【0022】
第3の態様の代替的な実施形態において、本発明は、対象の関節における変形性関節症、またはそれに関連する状態の予防または治療のための方法であって、
アネキシンA5タンパク質が関節または各関節に投与され、
治療有効量のアネキシンA5タンパク質を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0023】
第3の態様の別の代替的な実施形態では、本発明は、対象の関節における変形性関節症またはそれに関連する状態の予防または治療のための医薬の製造におけるアネキシンA5タンパク質の使用であって、
アネキシンA5タンパク質が関節または各関節に投与される、アネキシンA5タンパク質の使用を提供する。
【0024】
第4の態様において、本発明は、対象の関節におけるびらん性変形性関節症、またはそれに関連する状態の予防または治療において使用するためのアネキシンA5タンパク質を提供する。
【0025】
第4の態様の代替的な実施形態において、本発明は、対象の関節におけるびらん性変形性関節症、またはそれに関連する状態の予防または治療のための方法であって、
治療有効量のアネキシンA5タンパク質を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0026】
第4の態様の別の代替的な実施形態では、本発明は、対象の関節におけるびらん性変形性関節症またはそれに関連する状態の予防または治療のための医薬の製造におけるアネキシンA5タンパク質の使用を提供する。
【0027】
一実施形態では、本発明の第1、第2または第4の態様によれば、アネキシンA5タンパク質を、任意選択で関節または各関節に投与することができる。
【0028】
一実施形態では、本発明の第2、第3、または第4の態様によれば、関節または各関節は、滑膜性連結、半関節連結、および不動結合連結からなる一覧から選択される。
【0029】
一実施形態では、本発明の第1、第2、または第3の態様によれば、変形性関節症は任意選択で、原発性変形性関節症または続発性変形性関節症であり得る。
【0030】
一実施形態では、本発明の第1、第2、または第3の態様によれば、原発性変形性関節症は任意選択で、全身性結節性変形性関節症またはびらん性変形性関節症であり得る。
【0031】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、対象は、関節または各関節に変形性関節症を有し得る。
【0032】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、対象は任意選択で、変形性関節症と診断され得、
任意選択で、変形性関節症の診断は、治療される関節または各関節におけるものである。
【0033】
本発明の前述の態様のいずれかによれば、任意選択で、滑膜性連結は、平面関節(例えば、肋椎関節、椎間関節、手根中央関節、手根中手指関節、中手間関節、仙腸関節、関節突起間関節、胸肋関節、距骨下関節(もしくは距踵関節)、または肩鎖関節);球関節(例えば、脛骨足根骨関節、脛腓関節、肩関節、距踵舟関節、または股関節);蝶番関節(例えば、足関節、肘関節、顎関節、指節間関節、後膝関節、または膝関節);車軸関節(例えば、環軸関節、環軸関節、近位橈骨関節、飛節、足根間関節、距踵舟関節、踵立方関節、または遠位橈尺関節);顆状関節(例えば、環椎後頭関節、橈骨手根関節、中足指節関節、手首関節、手根間関節、橈骨手根関節、または中手指節関節);および鞍関節(例えば、母指手根中手関節、踵立方関節、または胸鎖関節)からなる一覧から選択される1つ以上の滑膜性連結である。
【0034】
一実施形態では、本発明の前述の態様のうちのいずれかによれば、対象は任意選択で、年少者でなくてもよく、かつ/または予防または治療の時点で身体的成長を完了しているであろう。
【0035】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、対象は任意選択で、ヒト、ウマ科(ウマを含む)、ウシ科、ラクダ、ブタ、ラマ、アルパカ、ヒツジ、ヤギ、イヌ科、ネコ科、ウサギ、またはげっ歯類などからなる群から選択される哺乳動物などの哺乳類の対象であり得る。一つの好ましい選択肢において、対象はヒトである。別の好ましい選択肢において、対象はウマである。
【0036】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、対象はヒトであり、対象は、本出願において、以下の「発明を実施するための形態」のセクションDでさらに論じる年齢などの45歳以上の年齢であり得る。
【0037】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、対象はウマであり、対象は、本出願において、以下の「発明を実施するための形態」のセクションDでさらに論じる年齢などの5歳以上の年齢であり得る。
【0038】
一実施形態では、本発明の前述の態様のうちのいずれかによれば、アネキシンA5タンパク質は、少なくとも1μg/mlの濃度で投与され得る。
【0039】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、アネキシンA5タンパク質は、
a)ヒトアネキシンA5(任意選択で、N末端メチオニンを含むかまたは含まない、配列番号1の配列からなるタンパク質)の配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるタンパク質、
b)ヒトアネキシンA5の哺乳動物相同分子種、
c)a)またはb)の対立遺伝子または遺伝的バリアント、
d)N末端メチオニンを含むかまたは含まないヒトアネキシンA5、配列番号1と、50%、60%、70%、75%超、例えば80%、85%、90%超、またはさらにより好ましくは95%もしくは99%超同一であるタンパク質である、アネキシンの機能的類似体またはバリアント、
e)a)、b)、c)、またはd)のいずれかの生物学的に活性な断片、
f)a)、b)、c)、d)、またはe)のいずれかからなる単量体、それらを含むかもしくはそれらからなる二量体、またはそれらを含む融合タンパク質、ならびに
g)a)、b)、c)、d)、e)、またはf)のいずれかのPEG化バリアント、であり得る。
【0040】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、アネキシンA5タンパク質は、薬学的に許容される組成物または獣医学的に許容される組成物などの組成物に製剤化することができる。
【0041】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、アネキシンA5タンパク質または組成物は、1ml以上の体積で関節または各関節に投与することができ、
任意選択で、アネキシンA5タンパク質または組成物を10ml以下の体積で関節または各関節に投与することができる。
【0042】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかによれば、対象は、ライフスタイルの変更、投薬、および手術のうちの1つ以上から選択される1つ以上の追加の治療と別個に、同時に、または逐次的に、アネキシンA5タンパク質または組成物によって治療され得る。
【0043】
本発明のこれらおよび他の態様、ならびにそれに関連する実施形態および選択肢のさらなる詳細は、以下の発明を実施するための形態においてさらに論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】アネキシンA5タンパク質による治療で変形性関節症細胞の細胞生存率が増加することを示す。実験は、変形性関節症患者からの初代培養軟骨細胞培養物に対してフローサイトメトリーを使用して実施された。変形性関節症の関節の炎症は、TNFαの適用を通して細胞において模倣され、それは、TNFαが適用されなかった対照細胞(列1)と比較するとき、細胞生存率の減少をもたらした(列2)。TNFαに加えてアネキシンA5を適用すると細胞死が抑制され(列3)、対照に見られるレベルと同等の細胞生存率がもたらされる。
【
図2】アネキシンA5による治療でICAM1の発現が減少することを示す。実験は、変形性関節症患者からの初代培養軟骨細胞培養物に対してフローサイトメトリーを使用して実施された。変形性関節症の関節の炎症は、TNFαの適用を通して細胞において模倣され、それは、TNFαが適用されなかった対照細胞(列1)と比較するとき、ICAM1の表面発現を増加させた(列2)。TNFαに加えてアネキシンA5を適用すると、ICAM1の表面発現が減少した(列3)。
【
図3】アネキシンA5タンパク質による治療で変形性関節症細胞の細胞生存率が用量依存的に増加することを示す。実験は、変形性関節症患者からの初代培養軟骨細胞培養物に対してフローサイトメトリーを使用して実施された。変形性関節症の関節の炎症は、IL1-βの適用を通して細胞において模倣され、それは細胞生存率の低下をもたらした。これは、各実験についてIL1-βのみが適用された試料(図に印を付けた)についてのフローサイトメトリー曲線がy軸から最も遠い曲線であるようにシフトしている一方で、IL1-βが適用されていない対照細胞はグラフの中央にあるものとして図に示される。これらの曲線のこの特定の配置は、IL1-βが適用されたときに細胞死がより高いレベルで起こることを示している。対照曲線と3つの投与量すべてについてのアネキシンA5タンパク質曲線とは同一の位置にあるので、3つの投与量全てでアネキシンA5タンパク質を単独で適用すると、対照試料と比較して細胞死の増加を引き起こさないこともまた示された。最後に、IL1-βに加えてアネキシンA5を適用すると、用量依存的に細胞死を阻害し、20μgおよび5μgの投与量は、対照において観察されるのと同一のレベルの細胞生存率を示す。これは、20μgおよび5μg投与量のアネキシンA5についてのフローサイトメトリー曲線が、対照曲線およびアネキシンA5タンパク質単独曲線と一致して、グラフの中央にある(図に印を付けた)こととして示される。100ng投与量はまた、細胞死を抑制するが、より少ない程度であり、これは100ngフローサイトメトリー曲線(図に印を付けた)がグラフの中央とIL1-β単独曲線との間にあることから見ることができる。
【
図4】変形性関節症のマーカーRANKLの発現が、アネキシンA5タンパク質による処理で用量依存的に減少することを示す。実験は、変形性関節症患者からの初代培養軟骨細胞培養物に対してフローサイトメトリーを使用して実施された。変形性関節症の関節の炎症は、IL1-βの適用を通して細胞において模倣され、それはRANKL発現の増加をもたらした。これは、各実験についてIL1-βのみが適用された試料(図に印を付けた)についてのフローサイトメトリー曲線がy軸から最も遠い曲線であるようにシフトしている一方で、IL1-βが適用されていない対照細胞はグラフの中央にあるものとして図に示される。これらの曲線のこの特定の配置は、IL1-βが適用されたときにRANKLがより高度に発現することを示している。対照曲線と3つの投与量すべてについてのアネキシンA5タンパク質曲線とは同一の位置にあるので、3つの投与量全てでアネキシンA5タンパク質を単独で適用すると、対照試料と比較してRANKL発現の増加を引き起こさないこともまた示された。最後に、IL1-βに加えてアネキシンA5を適用すると、用量依存的にRANKL発現が減少し、20μgおよび5μgの投与量では、対照において観察されるのと同一のレベルにRANKL発現が戻る。これは、20μgおよび5μg投与量のアネキシンA5についてのフローサイトメトリー曲線が、対照曲線およびアネキシンA5タンパク質単独曲線と一致して、グラフの中央にある(図に印を付けた)こととして示される。100ng投与量はまた、RANKL発現を減少させるが、より少ない程度であり、これは100ngフローサイトメトリー曲線(図に印を付けた)がグラフの中央とIL1-β単独曲線との間にあることから見ることができる。
【
図5a】変形性関節症関連の炎症遺伝子であるIL-6およびCOX-2の発現が、アネキシンA5による処理で用量依存的に減少することを示す。実験は、変形性関節症患者からの初代培養軟骨細胞培養物に対して二段階qPCRによって実施された。変形性関節症の関節の炎症は、IL1-βの適用を通して細胞において模倣され、それは、IL1-βが適用されていない対照試料(
図5Aおよび5B、列1)と比較するとき、IL-6発現(
図5A、列5)およびCOX2発現(
図5B、列5)の増加をもたらした。全ての投与量でアネキシンA5タンパク質を単独で適用しても、IL6またはCOX2のいずれの発現も増加しなかった(
図5Aおよび5B、第1~4列)。IL1-βに加えてアネキシンA5を適用すると、IL-6およびCOX-2の遺伝子発現が用量依存的に減少する(
図5Aおよび5B、列5~8)。
【
図5b】変形性関節症関連の炎症遺伝子であるIL-6およびCOX-2の発現が、アネキシンA5による処理で用量依存的に減少することを示す。実験は、変形性関節症患者からの初代培養軟骨細胞培養物に対して二段階qPCRによって実施された。変形性関節症の関節の炎症は、IL1-βの適用を通して細胞において模倣され、それは、IL1-βが適用されていない対照試料(
図5Aおよび5B、列1)と比較するとき、IL-6発現(
図5A、列5)およびCOX2発現(
図5B、列5)の増加をもたらした。全ての投与量でアネキシンA5タンパク質を単独で適用しても、IL6またはCOX2のいずれの発現も増加しなかった(
図5Aおよび5B、第1~4列)。IL1-βに加えてアネキシンA5を適用すると、IL-6およびCOX-2の遺伝子発現が用量依存的に減少する(
図5Aおよび5B、列5~8)。
【0045】
定義
本明細書で使用されるとき、「アネキシンA5タンパク質」という用語は、以下の発明を実施するための形態のセクションCにおいてさらに定義される。それは任意選択で、アネキシンA5タンパク質を含む組成物の意味をさらに含む。上記組成物は、例えば、薬学的に許容される、または獣医学的に許容される組成物であり得る。
【0046】
「薬学的に許容される」組成物は、静脈内、皮下、または筋肉内注射などの注射による、ヒト対象などの対象への投与に安全である組成物であり得る。特定の実施形態では、薬学的に許容される組成物は、例えば関節腔への注射および/または関節の滑液への注射による、ヒト対象などの対象の関節への投与に安全である組成物であり得る。例えば、任意選択の一実施形態では、組成物はヒアルロン酸を含む。アネキシンA5タンパク質は、関節に安全に注射される量で関節に予防的または治療的有効量のアネキシンA5を送達するのに適した量および濃度で、関節腔および/または関節の滑液へと注射するために製剤化された薬学的に許容される組成物中に存在し得る。適切な体積は、当業者によって容易に決定され得、そして例示的な体積は、本出願のセクションEにおいて後述され、例えば、関節の種類および対象の性質(種、性別、年齢、サイズ、体重など)に応じて、0.1~40mLの範囲であり得る。
【0047】
「獣医学的に許容される」組成物は、注射、例えば静脈内、皮下、または筋肉内注射による、動物対象への投与に安全である組成物であり得る。特定の実施形態では、獣医学的に許容される組成物は、例えば関節腔への注射および/または関節の滑液への注射による、ウマ対象などの動物対象の関節への投与に安全である組成物であり得る。例えば、任意選択の一実施形態では、組成物はヒアルロン酸を含む。アネキシンA5タンパク質は、関節に安全に注射される量で関節に予防的または治療的有効量のアネキシンA5を送達するのに適した量および濃度で、関節腔および/または関節の滑液へと注射するために製剤化された獣医学的に許容される組成物中に存在し得る。適切な体積は、当業者によって容易に決定され得、そして例示的な体積は、本出願のセクションEにおいて後述され、例えば、関節の種類および対象の性質(種、性別、年齢、サイズ、体重など)に応じて、0.1~40mLの範囲であり得る。
【0048】
したがって、本発明による薬学的組成物または獣医学的組成物は、意図する投与経路および標準的な薬務に関して典型的に選択されるであろう、薬学的または獣医学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体と混合したアネキシンA5タンパク質を含み得る。組成物は、即時放出、遅延放出、または制御放出の適用の形態であり得る。製剤は、有効成分の1日用量もしくは単位、1日サブ用量もしくはその適切な割合を含む単位用量であり得る。
【0049】
「薬学的に許容される」、「薬理学的に許容される」、および「獣医学的に許容される」という語句は、例えばヒトなどの動物に適切に投与したときに、有害、アレルギー、または他の不都合な反応を引き起こさない組成物を指す。そのような薬学的組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990によって例示されるように、本開示に照らして当業者に公知である。さらに、動物(例えばヒト)投与の場合、製剤は無菌性、発熱性、一般的な安全性、および純度の基準、例えばFDA Office of Biological Standardsによって要求されるものを満たすべきであることが理解されよう。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される担体」および「獣医学的に許容される担体」には、当業者に公知であるように、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、賦形剤、崩壊剤、類似の物質など、およびそれらの組み合わせ)を含む。任意の従来の担体が活性成分と適合しない場合を除いて、治療用組成物または薬学的組成物におけるその使用が企図される。
【0051】
アネキシンA5タンパク質、またはアネキシンA5タンパク質を含む薬学的に許容される、もしくは獣医学的に許容される組成物は、例えば、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、もしくは皮下に投与されるか、または注入技術によって投与することができる。関節腔および/または関節の滑液への注射は、本発明の実施にとって特に重要であり得るが、これらの選択肢に限定されない。それらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含み得る滅菌水溶液の形態で使用され得る。水溶液は、必要に応じて好適に(好ましくはpH3~9に)緩衝されるべきである。滅菌条件下の好適な非経口用製剤の調製は、当業者には周知の標準的な薬学的技術によって容易に達成される。
【0052】
非経口投与に適した製剤には、典型には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を意図する受容者の血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性の滅菌注射溶液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量または複数用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアル内に提示されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時注射液および懸濁液は、以前に記載した種類の滅菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製され得る。
【0053】
一実施形態では、薬学的に許容される、または獣医学的に許容される組成物は、それがエンドトキシンを含まない、または実質的に含まない場合、注射に対して安全であると定義することができる。エンドトキシンは、グラム陰性菌の細胞外壁の主要な構成要素であり、リポ多糖という用語と同義でよく使用される。それは多糖(糖)鎖と、エンドトキシンで観察される毒性作用の原因であるリピドAとして知られている脂質部分からなる。多糖鎖は、異なる細菌間で高度に可変であり、エンドトキシンの血清型を決定し、そして脂質成分はまた、単一のエンドトキシン試料が数十から数百の異なる分子種を含み得るように高度に可変である。エンドトキシンは約10kDaの大きさであるが、最大1000kDaの大きな凝集体を形成することができる。エンドトキシンは典型的には治療用組成物中で有害かつ発熱性であり、規制当局は薬学的組成物中のエンドトキシンの許容レベルに厳密な制限を課している。したがって、本発明の第二の態様による組成物中のエンドトキシンのレベルを最小限にするべきであり、用量当たり100未満のエンドトキシン単位(EU)であり得、例えば90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、4、3、2、1未満、またはそれ以下のEU/用量であり得る。本発明の第2の態様による組成物中のエンドトキシンの濃度は、200EU/m3未満、例えば、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、4、3、2、1未満、またはそれ以下のEU/m3であり得る。リムルスアメーバ細胞アッセイ(LAL)法などのエンドトキシンレベルを測定するための方法は、当該技術分野において周知である。
【0054】
アネキシンA5タンパク質を含む組成物は、唯一の活性剤としてアネキシンA5タンパク質を任意選択で含んでもよい。例えば、アネキシンA5が、追加の治療効果を提供することができる1つ以上のさらなるタンパク質または非タンパク質薬剤と共に製剤化されているか、それとコンジュゲートされているか、またはそれと共に融合タンパク質として発現されている組成物を、任意選択で除外し得る。上記追加の治療効果は、変形性関節症と関連するか、または変形性関節症治療に関連しない治療効果と関連するもののいずれかであり得る。
【0055】
その他の定義
「治療」という用語は、医学の当業者によって理解されるだろう。本明細書で使用されるとき、「治療」という用語は、対象、特にヒトまたは他の哺乳動物(例えばウマなど)における状態(例えば、状態が変形性関節症である)の任意の治療を含むことができ、任意選択で、
(i)状態(例えば、変形性関節症)を抑制すること、すなわち、状態の進行の緩徐化、軽減、または阻止をすること、
(ii)状態(例えば、変形性関節症)を軽減すること、すなわち、その状態を有する対象においてその状態の後退を引き起こすこと、
(iii)状態(例えば、変形性関節症)を治癒すること、すなわち、その状態を有する対象を、その状態がもはや検出されない健康状態に戻すこと、の1つ以上を含む。
【0056】
「予防」という用語は、医学の当業者によって理解されるだろう。本明細書で使用されるとき、「予防」という用語は、対象、特にヒトまたは他の哺乳動物(例えばウマなど)における状態(例えば、状態が変形性関節症である)の任意の予防的治療を含むことができ、任意選択で、
(i)状態(例えば、変形性関節症)が対象(例えば、その状態に罹患する素因があるか、または発症する危険性があるが、それを有するとまだ診断されていない対象)で生じることを防ぐこと、すなわち対象がその状態を発症することを停止させること、
(ii)対象における状態(例えば、変形性関節症)の発症を遅らせること、すなわち対象の人生の後期まで対象が状態を発症するのを遅らせること、
(iii)対象における状態(例えば、変形性関節症)の発症を制限すること、例えば、対象がその状態によって影響を受ける程度を軽減すること、または
(iv)対象における状態(例えば、変形性関節症)の1つ以上の症状を予防すること、すなわち対象が状態の1つ以上の症状を発症するのを停止させること、の1つ以上を含む。
【0057】
「任意選択で」、「好ましくは」、「など」、「例えば」などの用語は、後に続く特徴、特性、事象、または状況が生じても生じなくてもよいこと、およびその説明が上記特徴、特性、事象、または状況が発生する場合とそれが発生しない場合とを含むことを意味する。誤解を避けるために、本発明のいくつかの実施形態では、「任意選択で」、「好ましくは」、「など」、「例えば」などの文脈で説明される任意の特徴、特性、事象、または状況などが、特許請求の範囲の記載から除外されることがある。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、本発明の治療が適用されるあらゆる生きているヒトまたは動物(ヒトおよびウマが特に重要である)の意味を含む。限定されないが、例示的な対象は、以下の発明を実施するための形態のセクションDにおいてさらに定義される。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「上昇した」という用語は、比較すると、物質(例えば、TNF-α(アルファ)またはIL1-β(ベータ)などのタンパク質)が、変形性関節症のない対象に存在する量と比較するとき、変形性関節症を有する対象においてより多く存在することを意味する。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「遠位」という用語は、アネキシンA5タンパク質の投与が、変形性関節症と診断された関節または各関節においてではないという意味を含む。
【0061】
「治療有効量」という用語は、変形性関節症および/またはそれに関連する状態の治療または予防に関連する臨床結果を含む有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な薬物、化合物、タンパク質(例えば、本明細書で定義されるアネキシンA5タンパク質)、または薬学的組成物の量を指す。有効量は1回以上の投与で投与することができる。本発明の目的のために、有効量の薬物、化合物、タンパク質(例えば、本明細書で定義されるアネキシンA5タンパク質)、薬学的組成物、または獣医学的組成物は、変形性関節症および/またはそれに関連する状態の治療、改善、強度の軽減、および/または予防に十分な量である。臨床の文脈で理解されるように、有効量の薬物、化合物、タンパク質(例えば、本明細書で定義されるアネキシンA5タンパク質)、または薬学的組成物は、本出願の他の箇所に記載されているものなどの別の薬物、化合物、タンパク質、または医薬品と組み合わせて(別個に、逐次的に、または同時になど)投与されるときに達成され得るまたはされ得ない。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療薬を投与することの文脈において考慮され得、そして単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と組み合わせて望ましい結果がもたらされ得るか、または達成される場合、有効量で与えられると考えられ得る。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、アネキシンA5タンパク質が、変形性関節症およびそれに関連する1つ以上の状態の予防および治療に使用できるという本出願人の驚くべき具現化に基づいている。
【0063】
A.変形性関節症
本発明は、変形性関節症およびそれに関連する1つ以上の状態の予防および治療に関する。
【0064】
変形性関節症は、主に関節の退行性疾患であり、軟骨の喪失および他の関節組織への形態学的損傷による疼痛を引き起こす可能性がある。
【0065】
したがって、一実施形態において、変形性関節症は、以下のうちの1つ以上によって特徴付けられ得る:関節における軟骨の喪失、関節の軟骨におけるコラーゲン線維の分解、関節の軟骨におけるコラーゲン線維の崩壊、関節の軟骨におけるプロテオグリカン含有量の減少、関節の含水量の増加、関節の滑膜の損傷、関節の滑膜の喪失、関節の滑膜の肥厚、関節の靭帯の損傷、関節の靭帯の肥厚、関節の半月板の損傷、関節の半月板の喪失、関節内の無機質化の増加、関節内の石灰化の増加、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)の死、細胞死、関節の骨成長(または骨棘)、関節腔狭小化、軟骨下硬化症(関節周囲の骨形成の増加)、軟骨下嚢胞形成、関節の腫脹、および関節の炎症。
【0066】
実施例のデータは、アネキシンA5タンパク質が、一般に変形性関節症の予防および治療に使用できることを実証しているが、それらのデータはアネキシンA5タンパク質が関節の炎症を特徴とする変形性関節症の治療および予防に特に有効であることを実証する。実施例において使用される変形性関節症表現型疾患モデルは、炎症誘発性サイトカインIL1-βおよびTNF-αの添加によって促進される。
【0067】
好ましくは、本発明は、関節の炎症を特徴とする変形性関節症の一形態の予防および治療に関する。
【0068】
好ましくは、関節の炎症は、関節内の組織の炎症、関節の軟骨の炎症、および関節の滑膜の炎症から選択される1つ以上である。
【0069】
好ましくは、軟骨は関節軟骨である。
【0070】
好ましい一実施形態では、本発明は、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)の細胞死などの細胞死を特徴とする変形性関節症の一形態の予防および治療に関する。
【0071】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)の細胞死などの関節の炎症および細胞死を特徴とする変形性関節症の一形態の予防および治療に関する。
【0072】
変形性関節症は、2つの一般的なカテゴリー:原発性変形性関節症と続発性変形性関節症に分類することができる。これら2つのカテゴリーの主な違いは、変形性関節症の根本的な原因である。しかしながら、結果として生じる原発性変形性関節症と続発性変形性関節症の両方の病態は類似している可能性がある。前述のように、一実施形態では、本発明は、場合によっては原発性変形性関節症または続発性変形性関節症である変形性関節症の予防および治療を対象とし得る。好ましくは、変形性関節症は原発性関節炎である。
【0073】
原発性変形性関節症(しばしば特発性変形性関節症とも呼ばれる)は、根本的な原因が明確に特定されていない変形性関節症であると一般に考えられている。それはしばしば付随する炎症を伴う、加齢および関節の「消耗」に起因して起こると考えられている。原発性変形性関節症の2つのサブセットは、全身性結節性変形性関節症またはびらん性変形性関節症である。前述のように、一実施形態では、本発明は、全身性結節性変形性関節症またはびらん性変形性関節症から任意選択で選択される原発性変形性関節症の予防および治療に関するものであり得る。
【0074】
全身性結節性変形性関節症は、変形性関節症の最も一般的な形態である。一部の患者では、一部の対象が遺伝的にそのような変形性関節症を発症する素因があることを示す家族研究のため、全身性結節性変形性関節症が遺伝的要素を有すると考えられている。
【0075】
びらん性変形性関節症は炎症性変形性関節症としても知られており、一般に、より攻撃的な形態の変形性関節症であると考えられている。
【0076】
前述のように、実施例は、アネキシンA5タンパク質が、びらん性変形性関節症などの関節の炎症を特徴とする変形性関節症の治療および予防に有効であることを実証している。
【0077】
好ましくは、本発明は、原発性びらん性変形性関節症の予防および治療に関する。
【0078】
続発性変形性関節症は、特定の疾患または特定の傷害などの根本的な原因に、より直接的に起因し得る変形性関節症である。そのようなものとして、続発性変形性関節症は、原発性変形性関節症と比較するとき、より若い年齢の対象に罹患することが多い。
【0079】
一実施形態では、本発明は、以下のうちの1つ以上によって引き起こされ得る続発性変形性関節症の予防および治療に関する:原因となる疾患、負傷、およびライフスタイル。
【0080】
好ましくは、原因となる疾患は、糖尿病、エーラース・ダンロス症候群、ヘモクロマトーシス、原因となる炎症性疾患、マルファン症候群、および関節感染症からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0081】
最も好ましくは、原因となる疾患は炎症性疾患である。
【0082】
好ましくは、原因となる炎症性疾患は、ペルテス病、ライム病、および変形性関節症ではない慢性関節炎(肋軟骨炎、痛風、関節リウマチ、または乾癬性関節炎など)からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0083】
好ましくは、損傷は、骨折、靭帯損傷、および先天性関節障害からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0084】
好ましくは、ライフスタイルは、体重超過、肥満、関節(単数または複数の関節)に大きな負担がかかる職業(アスリートなど)を持つことからなる一覧から選択される1つ以上である。
【0085】
非ヒトの対象(ウマなど)では、変形性関節症は、しばしば跛行として現れる。いくつかの実施形態では、本発明は、跛行を特徴とする変形性関節症の予防および治療に関する。
【0086】
より好ましくは、変形性関節症は急性症候性変形性関節症である。
【0087】
急性症候性変形性関節症により、急性変形性関節症と症候性変形性関節症を含む。
【0088】
実施例に記載のように、アネキシンA5は細胞死を減少させ、炎症を減少させることが示されている。したがって、本発明によれば、アネキシンA5タンパク質は、症状がこれら2つの事象によって引き起こされる変形性関節症、例えば急性症候性変形性関節症の治療に使用することができる。
【0089】
例えば、本発明は、関節の炎症を特徴とする急性症候性変形性関節症の一形態の予防および治療に関し得る。
【0090】
本発明は、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)の細胞死などの細胞死を特徴とする急性症候性変形性関節症の一形態の予防および治療に関し得る。
【0091】
本発明は、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)の細胞死などの関節の炎症および細胞死を特徴とする急性症候性変形性関節症の一形態の予防および治療に関し得る。
【0092】
本発明は、びらん性急性症候性変形性関節症の予防および治療に関し得る。
【0093】
任意選択で、変形性関節症は外傷性変形性関節症である。
【0094】
変形性関節症の上記のカテゴリーおよびサブカテゴリーの各々は、そのような変形性関節症の原因となるであろうものと同様に、ヒトの医学または獣医学の当業者に公知であろう。
【0095】
変形性関節症は、臨床検査(硬組織の拡大および関節の腫脹など)および対象の病歴に基づいて診断することができる。典型的には、臨床検査は、罹患した関節の形態に基づく診断を確認するためにX線を使用することができる。
【0096】
変形性関節症の診断方法は、医学の当業者に公知である。
【0097】
診断の際、変形性関節症は、WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Arthritis Index)(http://www.womac.org/womac/index.htm)スケールおよび放射線写真分類システムなどの国際的に認められているシステムを用いて等級付けすることができる。
【0098】
一実施形態では、本発明は、WOMACスケールおよび/または放射線写真分類システムを使用して特徴付けられる変形性関節症の予防および治療に関する。
【0099】
WOMACスケールは、多数の異なる種類の関節における変形性関節症を等級付けするために使用されるが、最も具体的には、膝関節および股関節における変形性関節症を等級付けするために使用される。スケールは、疼痛(5つの側面、それぞれ0~20の範囲で採点)、こわばり(2つの側面、それぞれ0~8の範囲で採点)、および機能上の制限(階段使用、立ち、曲げのような日々の活動など-17の側面、それぞれ0~68の範囲で採点)を考慮する。
【0100】
放射線写真分類システムは関節を見るためにX線を使用し、分類の多数のサブカテゴリー-トンプソンの等級付け(特に椎間板変性または椎間関節変性について)、レーンの等級付け(特に椎間板変性または椎間関節変性について)、ケルグレンの等級付け(特に頸部椎間板変性、椎間関節変性、または頸椎椎間関節変性について)、パトリアの等級付け(特に腰椎椎間関節変性について)、Weishauptの等級付け(特に、腰椎椎間関節変性について)、Samilson-Prieto分類(特に、肩関節について)、Kellgren-Lawrenceの等級付け(特に、膝関節の変形性関節症)、およびTonnis分類(特に、股関節変性について)が存在する。
【0101】
好ましくは、放射線写真分類システムは、トンプソンの等級付け、レーンの等級付けケルグレンの等級付け、パトリアの等級付け、Weishauptの等級付け、Samilson-Prieto分類、Kellgren-Lawrenceの等級付け、およびTonnis分類からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0102】
トンプソンの等級付けは、I~V(Iはより広範囲ではない変形性関節症であり、Vはより広範囲の変形性関節症である)に付番され、組織の構造、軟骨、および骨棘の存在を考慮に入れる。任意選択で、本発明は、トンプソンの等級付けによる放射線写真分類システムの要件を満たす変形性関節症の予防および治療を対象とし、対象はI以上、例えばII、またはII以上、またはIII、またはIII以上、またはIV、またはIVもしくはV、またはVの等級付けを示す。
【0103】
レーンの等級付けは0~3(0はより広範囲ではない変形性関節症であり、3はより広範囲の変形性関節症である)に付番され、関節腔狭小化、骨棘の存在、および硬化症の存在を考慮に入れる。任意選択で、本発明は、レーンの等級付けによる放射線写真分類システムの要件を満たす変形性関節症の予防および治療を対象とし、対象は0以上、例えば1、または1以上、または2、または2もしくは3、または3の等級付けを示す。
【0104】
ケルグレンの等級付けは、I~IV(Iはより広範囲ではない変形性関節症であり、IVはより広範囲の変形性関節症である)に付番され、関節腔狭小化、骨棘の存在、および硬化症の存在を考慮に入れる。任意選択で、本発明は、ケルグレンの等級付けによる放射線写真分類システムの要件を満たす変形性関節症の予防および治療を対象とし、対象はI以上、例えばII、またはII以上、またはIII、またはIIIもしくはIV、またはIVの等級付けを示す。
【0105】
Samilson-Prieto分類は「軽度」、「中等度」、および「重度」の等級付けで分類され、関節のサイズ、関節腔の狭小化、および硬化症の存在を考慮に入れる。任意選択で、本発明は、Samilson-Prieto放射線写真分類システムの要件を満たす変形性関節症の予防および治療を対象とし、対象は軽度または中等度または重度の等級付けを示す。
【0106】
Kellgren-Lawrenceの等級付けは0~4(0はより広範囲ではない変形性関節症であり、4はより広範囲の変形性関節症である)に付番され、関節腔狭小化、骨棘の存在、および硬化症の存在を考慮に入れる。任意選択で、本発明は、Kellgren-Lawrenceの等級付けによる放射線写真分類システムの要件を満たす変形性関節症の予防および治療を対象とし、対象は0以上、例えば1、または1以上、または2、または2以上、または3、または3もしくは4、または4の等級付けを示す。
【0107】
Tonnis分類は0~3(0は変形性関節症がないものであり、1はより広範囲ではない変形性関節症であり、3はより広範囲の変形性関節症である)に付番され、関節腔狭小化、骨嚢胞の存在、および関節の形状を考慮に入れる。任意選択で、本発明は、レントゲン写真分類システムがTonnis分類であるという要件を満たす変形性関節症の予防および治療を対象とし、対象は0以上、例えば1、または1以上、または2、または2もしくは3、または3の等級付けを示す。
【0108】
前述の分類および等級付けシステムが使用され解釈されるべきである方法は、医学の当業者に公知であろう。
【0109】
一実施形態では、変形性関節症は、関節内の上昇したTNF-α(アルファ)、または関節内の上昇したIL1-β(ベータ)、または関節内の上昇したTNF-αおよび上昇したIL1-βによって特徴付けられ得る。
【0110】
TNF-αは、TNF、カヘキシン(cachexin)、およびカケクチンとしても知られる腫瘍壊死因子アルファである。TNF-αは、炎症としばしば関連するサイトカインである。TNF-αは、変形性関節症、特にヒトにおける変形性関節症を引き起こす可能性がある炎症性因子(Charlier et al.,2016,Int.J.Mol.Sci,17,2146)であり得ると考えられている。
【0111】
IL1-βはインターロイキン-1ファミリーβであり、それはIL1受容体に結合する炎症誘発性サイトカインである。IL1-βは、変形性関節症、特にウマにおける変形性関節症を惹起し得る炎症性因子(Ross et al.,2012,Osteoarthritis and Cartilage,20:1583-1590)であり得ると考えられている。
【0112】
一実施形態では、本発明は、TNF-α(アルファ)の上昇を特徴とする変形性関節症の予防および治療に関する。
【0113】
別の実施形態では、本発明は、IL1-β(ベータ)の上昇を特徴とする変形性関節症の予防および治療に関する。
【0114】
別の実施形態では、本発明は、TNF-αの上昇およびIL1-βの上昇を特徴とする変形性関節症の予防および治療に関する。
【0115】
好ましくは、変形性関節症は外傷性変形性関節症であり、外傷性変形性関節症はIL1-βの上昇を特徴とする。
【0116】
一実施形態において、本発明は、以下のうちの1つ以上を特徴とし得る変形性関節症の予防および治療を対象とし得る:関節内の細胞からのICAM1発現の上昇、関節内の細胞からのRANKL発現の上昇、関節内の細胞からのIL6発現の上昇、関節内の細胞からのCOX2発現の上昇。
【0117】
ICAM1は細胞間接着分子1であり、表面抗原分類54(CD54)としても知られている。ICAM1は、疾患のマーカーとして、しばしば変形性関節症と関連している細胞表面糖タンパク質である。
【0118】
RANKLは、核因子カッパーBリガンドの受容体活性化因子であり、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー11(TNFSF11)、TNF関連活性化誘導サイトカイン(TRANCE)、オステオプロテゲリンリガンド(OPGL)、および破骨細胞分化因子(ODF)としても知られる。RANKLは膜タンパク質であり、TNFスーパーファミリーのメンバーである。RANKLは疾患のマーカーとして、しばしば変形性関節症と関連している(Komori 2016,Int.J.Mol.Sci.,17)。
【0119】
IL6はインターロイキン6であり、それはしばしば変形性関節症と関連する炎症誘発性サイトカインである(Mabey and Honsawek,2015,World Journal of Orthopedics,6(1):95-105)。
【0120】
COX2はシトクロムCオキシダーゼサブユニット2であり、略語:COXII、COII、およびMT-CO2によっても知られている。COX2はチトクロームCオキシダーゼ酵素の成分であり、関節炎のバイオマーカーとして変形性関節症と関連している。
【0121】
発現により、我々は、遺伝子に対応するRNA(リボ核酸)および/またはタンパク質の存在を含む。RNA発現およびタンパク質発現をいかにして検出するかは分子生物学の当業者に公知であろう。
【0122】
一実施形態では、本発明は、関節内の細胞からのICAM1発現の上昇を特徴とする変形性関節症の予防および治療に関する。
【0123】
別の実施形態では、本発明は、関節内の細胞からのRANKL発現の上昇を特徴とする変形性関節症の予防および治療に関する。
【0124】
別の実施形態では、本発明は、関節内の細胞からのIL6発現の上昇を特徴とする変形性関節症の予防および治療に関する。
【0125】
別の実施形態では、本発明は、関節内の細胞からのCOX2発現の上昇を特徴とする変形性関節症の予防および治療に関する。
【0126】
好ましくは、ICAM1発現は細胞表面上のICAM1タンパク質の発現である。
【0127】
好ましくは、RANKL発現は細胞表面上のRANKLタンパク質の発現である。
【0128】
好ましくは、1つ以上の細胞は、軟骨細胞(最も好ましくは関節軟骨細胞)、軟骨芽細胞、および骨芽細胞からなる一覧から選択される1つ以上の細胞型である。
【0129】
分子生物学の当業者であれば、前述のタンパク質および発現をどのようにして測定できるかを理解するであろう。
【0130】
一実施形態では、本発明は、以下のうちの1つ以上を特徴とし得る変形性関節症の予防および治療に関するものであり得る:関節の軟骨の損傷の減少、関節の軟骨の損傷の抑制、関節の軟骨の損失の減少、関節の軟骨におけるコラーゲン線維の分解の減少、関節の軟骨におけるコラーゲン線維の崩壊の減少、関節の軟骨におけるプロテオグリカン含有量の増加、関節の含水量の減少、関節の滑膜の損傷の減少、関節の滑膜の喪失の減少、関節の軟骨の損傷の抑制、関節の軟骨の損傷の減少、関節の滑膜のサイズの減少、関節の靭帯の損傷の減少、関節の軟骨の損傷の抑制、関節内の靭帯のサイズの減少、関節の半月板の損傷の減少、関節の軟骨の損傷の抑制、関節の半月板の喪失の減少、関節内の無機質化の減少、関節内の無機質化の抑制、関節内の石灰化の減少、関節内の石灰化の抑制、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)死の抑制、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)細胞死の減少。細胞死の抑制関節の骨成長(または骨棘)の減少、細胞死の抑制、関節の骨成長(または骨棘)の減少、骨成長の抑制、関節腔の増大、軟骨下硬化症(関節周囲の骨形成の増加)の減少、軟骨下硬化症の抑制、軟骨下嚢胞形成の減少、軟骨下嚢胞形成の抑制、関節の腫脹の減少、関節の炎症の抑制、および関節の炎症の減少。
【0131】
好ましくは、変形性関節症の予防および治療は、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)細胞死の抑制を特徴とし得る。
【0132】
好ましくは、変形性関節症の予防および治療は、軟骨細胞(好ましくは関節軟骨細胞)細胞死の減少を特徴とし得る。
【0133】
好ましくは、変形性関節症の予防および治療は、関節の炎症の抑制を特徴とし得る。
【0134】
好ましくは、変形性関節症の予防および治療は、関節の炎症の減少を特徴とし得る。
【0135】
B.関節
本発明は、対象の1つ以上の関節における変形性関節症の予防および治療に関する。医学の当業者に知られているように、関節は身体の骨の間の接続である。
【0136】
変形性関節症の予防および治療のために本発明を使用することができる関節は、例えば機能的分類、構造的分類、生物医学的分類、または解剖学的分類などのいくつかの方法で分類することができる。これらの分類は医学の当業者に公知であろう。
【0137】
関節の機能分類は、関節が許容する運動の種類および程度に関連し、3つの異なるカテゴリー:不動結合(可動性をほとんどまたは全く許容しない関節である-一般的には線維性連結)、半関節(わずかな動きを許容する関節である-一般的には軟骨性連結)、および滑膜性連結-可動関節としても知られる(自由に動く)に分類される。
【0138】
前述のように、一実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節または各関節は、滑膜性連結、半関節連結、および不動結合連結からなる一覧から選択することができる。
【0139】
本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる滑膜性連結の分類は、さらに以下の6つの群に分類することができる:平面関節(全動関節、滑走関節、または平面関節としても知られ、滑走運動を可能にする)、球関節(球関節とも呼ばれ、多数の軸の周りの移動を可能にする)、蝶番関節(蝶番関節としても知られ、1つの平面内のみでの移動を可能にする)、車軸関節(車軸関節、回転関節、または外側蝶番関節としても知られ、1つの平面内のみでの移動を可能にする)、顆状関節(顆状関節、楕円関節、または双顆関節としても知られ、2つの平面での移動を可能にする)、および鞍関節(鞍関節または相互関節による接合としても知られ、2つの平面での移動を可能にする)。滑膜性連結のこれら6つの群の全ては医学の当業者に公知であろう。
【0140】
好ましくは、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる滑膜性連結は、平面関節、球関節、蝶番関節、車軸関節、顆状関節、および鞍関節からなる一覧から選択される1つ以上の滑膜性連結である。
【0141】
好ましくは、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる平面関節は、例えば、肋椎関節、椎間関節、手根中央関節、手根中手指関節、中手間関節、仙腸関節、関節突起間関節、胸肋関節、距骨下関節(または距踵関節)、および肩鎖関節からなる一覧から選択される1つ以上の平面関節である。
【0142】
好ましくは、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる球関節は、脛骨足根骨関節、脛腓関節、肩関節(肩甲上腕関節としても知られる)、肩関節、距踵舟関節、および股関節(寛骨大腿関節としても知られる)からなる一覧から選択される1つ以上の球関節である。
【0143】
好ましくは、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる蝶番関節は、足関節、肘関節(腕橈関節としても知られる)、顎関節、指節間関節、後膝関節、または膝関節からなる一覧から選択される1つ以上の蝶番関節である。
【0144】
好ましくは、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる滑膜性連結は、環軸関節、環軸関節、近位橈骨関節、飛節、足根間関節、距踵舟関節、踵立方関節、および遠位橈尺関節からなる一覧から選択される1つ以上の滑膜性連結である。
【0145】
好ましくは、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる顆状関節は、環椎後頭関節、橈骨手根関節、中足指節関節、手首関節、手根間関節、橈骨手根関節、および中手指節関節(球節としても知られる)からなる一覧から選択される1つ以上の顆状関節である。
【0146】
好ましくは、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる鞍関節は、母指手根中手関節、踵立方関節、および胸鎖関節からなる一覧から選択される1つ以上の鞍関節である。
【0147】
より好ましくは、一実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に用いることができる関節は中手指節関節である。
【0148】
より好ましくは、別の実施形態では、本発明が変形性関節症の予防および治療に使用できる関節は手根関節である。
【0149】
より好ましくは、別の実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は脛骨足根骨関節である。
【0150】
より好ましくは、別の実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は、手根間関節である。
【0151】
より好ましくは、別の実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は、橈骨手根関節である。
【0152】
より好ましくは、別の実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用できる関節は肩関節である。
【0153】
より好ましくは、別の実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用できる関節は膝関節である。
【0154】
より好ましくは、別の実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は肘関節である。
【0155】
好ましくは、別の実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる両腕関節症の関節は、線維軟骨結合(例えば、椎間板間の関節、すなわち椎間関節)である。
【0156】
好ましくは、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる線維性連結は、縫合線、遠位脛腓関節、釘状関節、直線縫合、辺縁縫合、挟合、鋸歯状縫合、および鋸状縫合からなる一覧から選択される1つ以上の線維性連結である。
【0157】
医学の当業者に知られているように、関節の機能的分類に関して論じられた前述の関節はまた、構造的分類、生物医学的分類、または解剖学的分類に基づいて分類することができる。
【0158】
関節の構造的分類は、関節の骨をつなぐ結合組織の種類に関連し、3つの異なるカテゴリー:線維性連結(これは、大量のコラーゲン繊維を有する結合組織によって接合されている)、軟骨性連結(軟骨によって接合されている)、および滑膜性連結(滑膜腔を有し、結合組織および靭帯によって接合されている)に分類される。
【0159】
一実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は、線維性連結、軟骨性連結、および滑膜性連結からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0160】
関節の生物医学的分類は、関節の解剖学的構造および関節の生体力学的特性に関連しており、3つの異なるカテゴリー:単関節(2つの関節面を有する、例えば肩関節や股関節)、複雑関節(3つ以上の関節面有する-例えば、橈骨手根関節)、および複関節(2つ以上の関節面と1つの関節円板または半月板を有する、例えば膝関節)に分類される。
【0161】
一実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は、単関節、複雑関節、および複関節からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0162】
関節の解剖学的分類は、手の関節、肘関節、手首関節、腋窩関節、胸鎖関節、脊椎関節、顎関節、仙腸関節、股関節、膝関節、および、足の関節である11の異なるカテゴリーに分類される。
【0163】
一実施形態では、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は、手の関節、肘関節、手首関節、腋窩関節、胸鎖関節、脊椎関節、顎関節、仙腸関節、股関節、膝関節、および、足の関節からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0164】
関節の構造、分類、および命名が、ヒト対象と非ヒト対象(ウマおよびセクションDで説明される他の非ヒト対象など)とで異なることは、獣医学またはヒトの医学の当業者には公知であろう。したがって、ヒトの関節の非ヒト等価物が含まれる。たとえば、ヒトの手首関節は一部の非ヒト(ウマなど)の膝関節と同等であり、ヒトの膝関節は一部の非ヒト(ウマなど)の後膝関節と同等であり、ヒトの足根間関節は、一部の非ヒト(ウマなど)の飛節と同等である。
【0165】
ウマでは、手首関節は橈骨手根骨関節、手根中央関節、および手根中手関節から形成される。任意選択で、対象が非ヒト対象(例えばウマ)であるとき、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は、橈骨手根骨関節、手根中央関節、および手根中手関節からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0166】
馬では、後膝関節は大腿膝蓋関節、内側大腿脛骨関節、および外側大腿脛骨関節から形成される。任意選択で、対象が非ヒト対象(例えばウマ)である場合、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は、内側大腿脛骨関節、および外側大腿脛骨関節からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0167】
ウマでは、飛節は、仙椎間関節、近位足根間関節、遠位足根間関節、足根中足関節、および距踵関節から形成される。場合により、対象が非ヒト対象(例えばウマ)である場合、本発明を変形性関節症の予防および治療に使用することができる関節は、仙椎間関節、近位足根間関節、遠位足根間関節、足根中足関節、および距踵関節からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0168】
一実施形態では、変形性関節症は、1つ以上の関節、例えば2つ以上の関節、または3つ以上の関節、または4つ以上の関節、または5つ以上の関節、または6つ以上の関節、または7つ以上の関節、または8つ以上の関節、または9以上の関節、または10以上の関節、または11以上の関節、または12以上の関節、または13以上の関節、または14以上の関節、または15以上の関節、または16以上の関節、または17以上の関節、または18以上の関節、または19以上の関節、または20以上の関節、または21以上の関節、または22以上の関節、または23以上の関節、または24以上の関節、または25以上の関節、または26以上の関節、または27以上の関節、または28以上の関節、または29以上の関節、または30以上の関節、または31以上の関節、または32以上の関節、または33以上の関節、または34以上の関節、または35以上の関節、または36以上の関節、または37以上の関節、または38以上の関節、または39以上の関節、または40以上の関節に存在し得る。
【0169】
C.アネキシンA5
本発明の全ての態様において使用するためのアネキシンA5タンパク質は、ヒトアネキシンA5の配列などのアネキシンA5の配列からなるタンパク質を含み得る、本質的にそれからなる、またはそれからなり得る。好ましくは、ヒトアネキシンA5タンパク質は、N末端メチオニンを含むかまたは含まない、以下に示されるような、配列番号1の配列からなるタンパク質である。好ましくは、アネキシンA5タンパク質は、組換えヒトアネキシンA5タンパク質、例えば、組換え大腸菌宿主などの組換え宿主細胞生物において配列番号1の配列を有するタンパク質をコードする遺伝子を組換え発現することによって作製されたタンパク質である。
【0170】
ヒトアネキシンA5遺伝子によってコードされるタンパク質の配列は、以下のような配列番号1によって定義される。
【0171】
別の実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、ヒトアネキシンA5(任意選択で、N末端メチオニンを含むかまたは含まない、配列番号1の配列からなるタンパク質)の配列などのアネキシンA5の配列からなるタンパク質のバリアントまたは変異体を含み得る、本質的にそれからなる、またはそれからなり得る。例えば、バリアントまたは変異体の配列は、1以上の位置で、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、またはそれ以上の位置で、またはそれらまでの位置で、配列番号1(N末端メチオニンを含むかまたは含まないもののいずれか)の配列と異なり得る。
【0172】
別の実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、ヒトアネキシンA5(任意選択で、N末端メチオニンを含むかまたは含まない、配列番号1の配列からなるタンパク質)、またはそのバリアントもしくは変異体などの成熟アネキシンA5の生物学的に活性な断片を含み得る、本質的にそれからなる、またはそれからなり得る。
【0173】
アネキシンA5の生物学的に活性な断片は、全長アネキシンA5と機能的または結合的性質を共有する。アネキシンA5のエピトープ断片は、全長アネキシンA5に結合するモノクローナル抗体に結合する。アネキシンA5の「活性」は、そのタンパク質によって行われる任意の結合機能を意味し、そのさらなる例は以下にさらに定義される。
【0174】
本発明で使用することができるアネキシンA5タンパク質の生物学的に活性な断片は、非限定的にヒトアネキシンA5タンパク質(任意選択で、N末端メチオニンを含むかまたは含まない、配列番号1の配列からなるタンパク質)またはその修飾物を含む、アネキシンA5タンパク質の少なくとも約50の連続アミノ酸、通常少なくとも約100の連続アミノ酸、少なくとも約150の連続アミノ酸、少なくとも約200の連続アミノ酸、少なくとも約250の連続アミノ酸、少なくとも約260の連続アミノ酸、少なくとも約270の連続アミノ酸、少なくとも約280の連続アミノ酸、少なくとも約290の連続アミノ酸、少なくとも約300の連続アミノ酸、少なくとも約310の連続アミノ酸、および少なくとも約320までの連続アミノ酸を含み得、提供された配列に加えて、当該技術分野で公知の融合ポリペプチドをさらに含み得る。アネキシンA5配列は、任意の哺乳動物種または鳥類種、例えば霊長類種、特にヒト、マウス、ラット、ハムスターなどのげっ歯類、ウサギ、ウマ科、ウシ科、イヌ科、ネコ科など由来であり得る。特に重要であるのは、ヒトアネキシンA5タンパク質(任意選択で、N末端メチオニンを含むかまたは含まない、配列番号1の配列からなるタンパク質)である。
【0175】
典型的には、アネキシンA5タンパク質は、単量体アネキシンA5であるが、代替的に、二量体、融合タンパク質、PEG化バージョン、および他の修飾物を含み得る。別の実施形態では、アネキシンA5タンパク質は二量体、融合タンパク質、またはPEG化バージョンではなく、あるいは、組成物および/または製剤は、二量体、融合タンパク質、またはPEG化バージョンであるアネキシンA5タンパク質を含まない。二量体であるアネキシンA5タンパク質によって、我々は、共有結合を介して結合している2つの単量体アネキシンA5タンパク質の二量体を特に含む。
【0176】
アネキシンA5タンパク質は、以下のうちの1つ以上を含み得る:
a)ヒトアネキシンA5(任意選択で、N末端メチオニンを含むかまたは含まない、配列番号1の配列からなるタンパク質)の配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるタンパク質、
b)ヒトアネキシンA5の哺乳動物相同分子種、
c)a)またはb)の対立遺伝子または遺伝的バリアント、
d)N末端メチオニンを含むかまたは含まないヒトアネキシンA5、配列番号1と、50%、60%、70%、75%超、例えば80%、85%、90%超、またはさらにより好ましくは95%もしくは99%超同一であるタンパク質である、アネキシンの機能的類似体またはバリアント、
e)a)、b)、c)、またはd)のいずれかの生物学的に活性な断片、
f)a)、b)、c)、d)、またはe)のいずれかからなる単量体、それらを含むかもしくはそれらからなる二量体、またはそれらを含む融合タンパク質、ならびに
g)a)、b)、c)、d)、e)、またはf)のいずれかのPEG化バリアント。
【0177】
さらなる実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、上述のようなアネキシンA5タンパク質(例えば、ヒトアネキシンA5(N末端メチオニンを含むかまたは含まないもののいずれかの配列番号1など)、またはバリアント、類似体、変異体、もしくはそれらの生物学的に活性な断片、または上述のような二量体)の配列を有するタンパク質(a)に融合している融合パートナーの配列を含む1つ以上のタンパク質配列、(b)それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる、1つ以上のタンパク質配列、を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる、融合タンパク質であってもよく、そうでなくてもよく、またはそうである。例えば、非限定的に、融合タンパク質は:
-2つのアミノ酸配列の融合の場合、例えば:H2N-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-COOH、または
-3つのアミノ酸配列の融合の場合、例えば:H2N-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(a)-COOH、または
-4つのアミノ酸配列の融合の場合、例えば:H2N-(a)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(b)-(b)-COOH、または
-5つのアミノ酸配列の融合の場合、例えば:またはH2N-(a)-(a)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(a)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(a)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(a)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(a)-(b)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH2N-(a)-(b)-(b)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(a)-(b)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH2N-(b)-(b)-(b)-(b)-(a)-COOH、
から選択される一般構造を有し得、式中、(a)および(b)は、この段落で上に定義した通りである。(a)によって定義されるように、複数の融合パートナータンパク質の場合、複数の融合パートナーは同一でも異なっていてもよい。対象の任意の融合パートナーを使用することができる。例えば、融合パートナーポリペプチド配列は、患者の循環系内で分子の半減期を延長すること、および/または追加の治療特性(例えば、抗凝固、細胞阻害および/または殺傷)を付加することなど、分子にさらなる機能性を付加することに適し得る。(b)によって定義されるような、N末端メチオニンを含むかまたは含まないもののいずれかのヒトアネキシンA5(配列番号1など)の配列を有する複数のタンパク質配列、またはそのバリアントもしくは変異体、または上述の二量体を含む融合タンパク質の場合、それらのタンパク質は同一でも異なっていてもよい。
【0178】
本発明の一態様では、本発明に従って使用されるアネキシンA5は、ヒトアネキシンA5、および/またはそのPEG化もしくは二量体形態からなる。すなわち、一実施形態では、アネキシンA5は、活性剤を含む他の任意の部分と結合、コンジュゲート、またはその他の方法で結合および/または製剤化されていない。アネキシンA5タンパク質は、放射性ヌクレオチド、例えばTin-117mのような放射性部分と結合、コンジュゲート、またはその他の方法で結合および/または製剤化されていないことが好ましい。本発明によるアネキシンA5タンパク質、ならびにその製剤および/または組成物の治療的および予防的活性は、好ましくは主としてまたは排他的に、アネキシンA5部分の生物学的活性に依存する。したがって、本発明によるアネキシンA5タンパク質の定義は、最も好ましくは、WO2014/197681のTin-117mアネキシンV分子を除外し得る。
【0179】
本発明の一態様によれば、アネキシンA5を上記の治療における唯一の活性剤として使用することができる。
【0180】
特定の実施形態では、本発明によるアネキシンA5の機能的類似体、変異体またはバリアントは、N末端メチオニンを含むかまたは含まないヒトアネキシンA5、配列番号1と、50%、60%、70%、75%超、例えば80%、85%、90%超、またはさらにより好ましくは95%もしくは99%超同一である。
【0181】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは以下のように決定される。最初に、アミノ酸配列は、BLASTNバージョン2.0.14およびBLASTPバージョン2.0.14を含むBLASTZのスタンドアローンバージョンからのBLAST 2 Sequences(Bl2seq)プログラムを使用して、例えば配列番号1と比較される。このスタンドアローン版のBLASTZは、米国政府の国立生物工学情報センターのWebサイト(ncbi.nlm.nih.gov)から入手することができる。Bl2seqプログラムの使用方法を説明する説明は、BLASTZに付属のreadmeファイル見出し得る。Bl2Seqは、BLASTPアルゴリズムを使用して2つのアミノ酸配列間の比較を行う。2つのアミノ酸配列を比較するために、Bl2seqのオプションは次のように設定される:-iは、比較される最初のアミノ酸配列を含むファイルに設定され(例えば、C:¥seq1.txt)、-jは、比較される2番目のアミノ酸配列を含むファイルに設定され(例えば、C:¥seq2.txt)、-pはblastpに設定され、-oは任意の所望のファイル名(例えば、C:¥output.txt)に設定され、他の全てのオプションはデフォルト設定のままにする。たとえば、次のコマンドを使用して、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを生成することができる:C:¥Bl2seq-i c:¥seq1.txt-j c:¥seq2.txt-p blastp-o c:¥output.txt。2つの比較された配列が相同性を共有する場合、指定された出力ファイルはそれらの相同性の領域をアラインメントされた配列として提示するだろう。2つの比較された配列が相同性を共有しない場合、指定された出力ファイルはアラインメントされた配列を提示しないだろう。一旦アラインメントされると、一致の数は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を数えることによって決定される。
【0182】
同一性パーセントは、一致数を、同定された配列に示された配列の長さで割り、続いて得られた値に100を掛けることによって決定される。例えば、ある配列が、配列番号1に示される配列(配列番号1に示される配列の長さが320である)と比較され、そして一致の数が288である場合、その配列は、配列番号1に示される配列に対して90(すなわち、288÷320×100=90)の同一性パーセントを有する。
【0183】
したがって、アネキシンA5の機能的類似体、変異体またはバリアントは、1以上の位置に、保存的または非保存的のいずれかで、アミノ酸挿入、欠失または置換があったタンパク質であり得るが、但し、そのような変化が、アネキシンA5と同等の様式で機能するための基本的性質は有意には変化していないタンパク質をもたらすという条件である。これに関連して「顕著に」とは、バリアントの性質がなお異なる可能性があるが、元のタンパク質の性質と比較して明白ではないと当業者が言うことを意味する。
【0184】
「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組み合わせを意図する。
【0185】
そのようなバリアントおよび変異体は、当技術分野において周知のタンパク質工学および部位特異的変異導入の方法を使用して作製することができる。
【0186】
本発明によるアネキシンA5の機能的類似体、変異体またはバリアントは、アネキシンA5の二量体(例えば、DiAnnexin)またはその機能的類似体またはバリアント、あるいはPEG化アネキシンA5またはその機能的類似体またはバリアントであり得る。DiAnnexinA5およびPEG化アネキシンA5は、WO02/067857に開示されている。
【0187】
PEG化は、ポリペプチドまたはペプチド模倣化合物(本発明の目的のためには、アネキシンA5または機能的類似体もしくはバリアント)が、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)分子が1以上のアミノ酸またはその誘導体の側鎖に共有結合しているように修飾される、当業者に周知の方法である。それは構造化学技術(MASC)を変える最も重要な分子の1つである。他のMASC技術が使用されてもよく、そのような技術は、例えばインビボでのその半減期を延長するなど、分子の薬力学的特性を改善することができる。PEG-タンパク質コンジュゲートは、それが本発明のタンパク質またはペプチド模倣化合物と反応し、それと結合するように、まずPEG部分を活性化することによって形成される。PEG部分は分子量および立体配座がかなり異なり、初期部分(単官能性PEG;mPEG)は12kDa以下の分子量で線状であり、そして後部分は分子量が増加している。PEG技術における最近の革新であるPEG2は、30kDa(またはそれ以下)のmPEGのリジンアミノ酸へのカップリングを含み(PEG化は他のアミノ酸へのPEGの付加に拡張することができるが)、さらに、はるかに大きい分子量の線状mPEGのように振舞う分岐構造を形成する(Kozlowski et al.,2001)。PEG分子をポリペプチドに共有結合させるために使用され得る方法は、Roberts et al.(2002)Adv Drug Deliv Rev,54,459-476、Bhadra et al.(2002)Pharmazie 57,5-29、Kozlowski et al.(2001) J Control Release 72,217-224、およびVeronese(2001) Biomaterials 22,405-417、ならびにその中で引用されている参考文献において、さらに記載されている。
【0188】
PEG化の利点としては、腎クリアランスの減少が挙げられ、これは、いくつかの製品について、投与後により持続的な吸着および制限された分布をもたらし、おそらくは、より一定かつ持続的な血漿濃度、したがって臨床効果の増加をもたらす(Harris et al.(2001)Clin Pharmacokinet 40,539-551)。さらなる利点としては、治療用化合物の免疫原性の低下(Reddy(2001) Ann Pharmacother,34,915-923)、および低毒性(Kozlowski et al.(2001),Biodrugs 15,419-429)が挙げられ得る。
【0189】
アネキシンA5の機能的類似体、変異体またはバリアントは、アネキシンA5の配列またはそのバリアントまたは生物学的に活性な断片を含む融合タンパク質であり得る。したがって、例えば、アネキシンA5またはそのバリアントもしくは生物学的に活性なものは、患者の循環系内で分子の半減期を延長するためにおよび/または分子にさらなる機能性を付加するために1つ以上の融合パートナーポリペプチド配列に融合され得る。一実施形態では、アネキシンA5の融合タンパク質は本発明から除外される。
【0190】
アネキシンA5の「機能的」類似体、変異体、バリアントまたは生物学的に活性な断片は、生体膜上のホスファチジルセリンに、好ましくは、同一条件下でヒトアネキシンA5(配列番号1)によって示されるものの、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または約100%のレベルまで結合することができる。生体膜上のホスファチジルセリンへのアネキシンA5の結合を測定するための適切な方法は、当該技術分野において公知である(Vermes et al.(1995) J Immunol Methods,184(1):p.39-51)。
【0191】
アネキシンA5の「機能的」類似体、変異体、バリアントまたは生物学的に活性な断片は、さらに、または代替的に、本発明による治療のために、同一(すなわちモル当量)用量で使用するとき、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または約100%の治療活性のヒトアネキシンA5(配列番号1など)を有し得る。これに関連して、アネキシンA5の「機能的」類似体、変異体、バリアントまたは生物学的に活性な断片の治療活性は、ヒトアネキシンA5(配列番号1など)のそれと比較して、モル当量のヒトアネキシンA5の機能的類似体またはバリアントとヒトアネキシンA5とを比較することによって、決定され得る。
【0192】
アネキシンA5の機能的類似体、変異体、バリアントまたは生物学的に活性な断片は、任意選択で、50、40、30、20、10、5、4、3、2、もしくは1を超えない連続もしくは非連続の追加のアミノ酸、および/または50、40、30、20、10、5、4、3、2、もしくは1を超えない連続的もしくは非連続的のアミノ酸欠失、および/または50、40、30、20、10、5、4、3、2、もしくは1以下の連続的または非連続的のアミノ酸置換を有する、N末端メチオニンを含むかまたは含まないヒトアネキシンA5の配列(配列番号1など)からなり得る。
【0193】
D.治療の対象
本発明に従って治療される対象は、ヒト対象または非ヒト対象であり得る。
【0194】
一実施形態では、対象はヒト対象である。
【0195】
別の実施形態では、対象は非ヒト対象であり、ヒトではない哺乳類対象、鳥類、両生類、および爬虫類からなる群から選択され得る。
【0196】
好ましくは、ヒトではない哺乳類対象は、ウマ科、ウシ科、ラクダ、ブタ、ラマ、アルパカ、ヒツジ、ヤギ、イヌ科、ネコ科、ウサギ、またはげっ歯類からなる一覧から選択される1種以上である。
【0197】
好ましくは、ウマ科はウマまたはロバである。
【0198】
より好ましくは、対象はウマ、場合によりサラブレッドウマおよび/または競走馬である。
【0199】
最も好ましくは、対象はウマまたはヒトである。
【0200】
いくつかの実施形態では、本発明は、跛行を特徴とし得る変形性関節症の予防および治療に使用することができ、対象は非ヒト対象であり得る。
【0201】
好ましい一実施形態では、変形性関節症は跛行を特徴とし、対象はウマである。
【0202】
前述のように、限定的ではないが、変形性関節症は一般に、部分的には「消耗」によって引き起こされる疾患であると考えられており、これはしばしば対象のライフスタイルによって引き起こされる。サラブレッドウマおよび競走馬が訓練されるという性質のために、そのような馬の対象は変形性関節症を発症する危険性が高いと一般に考えられている。したがって、アネキシンA5タンパク質は、そのようなウマ対象における変形性関節症の治療に特に有効であり得る。
【0203】
好ましくは、ウシ科は、ウシ、バッファロー、バイソン、およびヤクからなる一覧から選択される1種以上である。
【0204】
好ましくは、げっ歯類はマウス、ラット、チンチラ、モルモット、およびリスからなる一覧から選択される1種以上である。
【0205】
好ましくは、鳥類はニワトリ、ガチョウ、アヒル、シチメンチョウ、ウズラ、およびハトからなる一覧から選択される1種以上である。
【0206】
好ましくは、爬虫類は、ヘビ、トカゲ、クロコダイル、ワニ、カメ、およびカメからなる一覧から選択される1種以上である。
【0207】
好ましくは、両生類はカエルまたはサンショウウオである。
【0208】
一実施形態では、対象は年少者ではない可能性があり、かつ/または身体的成長が完了している可能性がある。
【0209】
対象が身体的成長を完了したかどうかは、ヒトの医学または獣医学の当業者には公知であろう。「完了した身体的成長」という用語には、対象が身体的に成熟していることおよび/または対象が成人対象とみなされることが含まれる。
【0210】
一実施形態では、対象は性的に成熟していてもよい。
【0211】
対象が性的に成熟しているかどうかは、ヒトの医学または獣医学の当業者には公知であろう。「性的に成熟した」という用語には、対象が子孫を妊娠することができ、および/または対象が思春期を完了していることが含まれる。
【0212】
一実施形態では、対象は高齢対象であり得る。対象が高齢者とみなされる正確な年齢は、特に種によって異なり得る。任意選択で、高齢者という用語は、対象の年齢が、対象が属する種の平均寿命(世界規模で判断されるか、またはその対象が在住する特定の国の中で判断される)の50%、60%、70%、80%、90%または100%を超えることを示す。
【0213】
対象が高齢者であるかどうかは、ヒトの医学または獣医学の当業者に公知であろう。
【0214】
一実施形態では、対象はヒト対象であり得、45歳以上、例えば、46歳以上、47歳以上、48歳以上、49歳以上、50歳以上、51歳以上、52歳以上、53歳以上、54歳以上、55歳以上、56歳以上、57歳以上、58歳以上、59歳以上、60歳以上、61歳以上、62歳以上、63歳以上、64歳以上、65歳以上、66歳以上、67歳以上、68歳以上、69歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上、90歳以上、95歳以上、または100歳以上である。
【0215】
好ましい一実施形態では、対象はヒト対象であり得、55歳以上である。
【0216】
別の好ましい実施形態では、対象はヒト対象であり得、65歳以上である。
【0217】
別の好ましい実施形態では、対象はヒト対象であり得、75歳以上である。
【0218】
一実施形態では、対象はウマ対象であり得、5歳以上、例えば、6歳以上、7歳以上、8歳以上、9歳以上、10歳以上、11歳以上、12歳以上、13歳以上、14歳以上、15歳以上、16歳以上、17歳以上、18歳以上、19歳以上、20歳以上、21歳以上、22歳以上、23歳以上、24歳以上、25歳以上、26歳以上、27歳以上、28歳以上、29歳以上、30歳以上、31歳以上、32歳以上、33歳以上、34歳以上、35歳以上、36歳以上、37歳以上、38歳以上、39歳以上、または40歳以上である。
【0219】
1つの好ましい実施形態では、対象はウマ対象であり得、15歳以上である。
【0220】
別の好ましい実施形態では、対象はウマ対象であり得、25歳以上である。
【0221】
前述したように、排他的ではないが、変形性関節症は一般に高齢者に罹患する疾患であると考えられている。したがって、アネキシンA5タンパク質は、高齢者における変形性関節症の治療または予防において特に有効であり得る。
【0222】
E.投与計画
投与量およびタイミング:
【0223】
本発明の様々な実施形態に従って、アネキシンA5タンパク質、またはアネキシンA5タンパク質を含む薬学的にもしくは獣医学的に許容される組成物は、上述で定義された様式で対象を治療するために治療有効用量で投与され得る。
【0224】
一実施形態では、本発明の前述の態様のいずれかに従って、アネキシンA5タンパク質を関節または各関節に投与することができる。好ましくは、関節への投与は、関節包、軟骨(特に関節軟骨)、関節腔、および滑液のうちの1つ以上の中に対する。
【0225】
好ましい一実施形態では、関節への投与は、治療される関節または各関節の関節腔内へのアネキシンA5タンパク質の直接投与を含む。
【0226】
別の好ましい実施形態では、関節への投与は、治療される関節または各関節の滑液へのアネキシンA5タンパク質の直接投与を含む。
【0227】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5は治療される関節または各関節から遠位に投与することができる。例えば、アネキシンA5は、関節または各関節から遠位で、対象の血液中に投与することができる。一つの好ましい選択肢によれば、アネキシンA5は全身投与される。最も好ましくは、アネキシンA5は注射により全身投与される。
【0228】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5は治療される関節または各関節から遠位に投与されないであろう。
【0229】
当業者は、所望の治療効果を達成するために適切な投与量を容易に決定することができる。例えば、適切な投与量は、典型的には、変形性関節症、または関連する状態を治療または予防するために適切な量のアネキシンA5タンパク質を提供および維持するであろう。
【0230】
適切な投薬量は、血漿中のアネキシンA5の天然に存在する生理的レベルよりも高い、例えば1000μg/mlまで、例えば、5~900μg/ml、10~600μg/ml、20~500μg/ml、または30~40μg/mlの範囲内など、対象の血漿中のアネキシンA5タンパク質のレベルを達成および/または維持することを目的とし得る。約32~38μg/ml、または約34~36μg/mlの血漿レベルが適切であり得る。
【0231】
適切な投与量は、関節または各関節においてアネキシンA5の天然に存在する生理的レベルよりも高いレベル、例えば、関節または各関節においてアネキシンA5の天然に存在する生理的レベルよりも、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%高い、それらまで高い、またはそれらよりも高い、例えば、関節または各関節においてアネキシンA5の天然に存在する生理的レベルよりも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍またはそれ以上高い、それらまで高い、またはそれらよりも高い、対象の関節におけるアネキシンA5タンパク質のレベルを達成および/または維持することを目的とし得る。
【0232】
適切な投与量は、関節または各関節の滑液中のアネキシンA5の天然に存在する生理的レベルよりも高いレベル、例えば、関節または各関節の滑液中のアネキシンA5の天然に存在する生理的レベルよりも、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%高い、それらまで高い、またはそれらよりも高い、例えば、関節または各関節の滑液中のアネキシンA5の天然に存在する生理的レベルよりも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍またはそれ以上高い、それらまで高い、またはそれらよりも高い、対象の関節の滑液中のアネキシンA5タンパク質のレベルを達成および/または維持することを目的とし得る。
【0233】
治療計画は、例えば、例えば対象の循環におけるタンパク質の半減期が少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、またはそれ以上である場合に、対象におけるタンパク質の長期化した血液クリアランスを提供する様式でアネキシンA5タンパク質を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、投与の様式は、腹腔内注射または浸透圧ポンプである。他の実施形態では、投与経路は、長期間にわたる静脈内または関節内注射であり、例えば、上述のような1日投与量は、30分まで、1時間まで、2時間まで、4時間まで、6時間まで、8時間まで、12時間まで、16時間まで、または24時間までの期間にわたって送達される。
【0234】
治療計画は、例えば、対象におけるタンパク質の長期化した関節クリアランス、または長期化した滑液クリアランスを提供する様式でのアネキシンA5タンパク質の投与を含み得、例えば、タンパク質の半減期は、30分まで、1時間まで、2時間まで、4時間まで、6時間まで、8時間まで、12時間まで、16時間まで、24時間まで、2日間まで、3日間まで、4日間まで、5日間まで、6日間まで、7日まで、2週間まで、3週間まで、4週間まで、2ヶ月間まで、3ヶ月間まで、4ヶ月間まで、5ヶ月間まで、6ヶ月間まで、7ヶ月間まで、8ヶ月間まで、9ヶ月間まで、10ヶ月間まで、11ヶ月間まで、12ヶ月間まで、2年間まで、3年間まで、4年間まで、5年間まで、6年間まで、7年間まで、8年間まで、9年間まで、または10年間までである。
【0235】
好ましい一実施形態では、関節内のタンパク質の半減期は、約24時間まで、または少なくとも約24時間であり、および/または滑液中のタンパク質の半減期は、約24時間まで、または少なくとも約24時間である。
【0236】
治療計画は、例えば、対象におけるタンパク質の長期化した関節クリアランス、および/または長期化した滑液クリアランスを提供する様式でのアネキシンA5タンパク質の投与を含み得、例えば、タンパク質は、関節または滑液中に、30分まで、1時間まで、2時間まで、4時間まで、6時間まで、8時間まで、12時間まで、16時間まで、24時間まで、2日間まで、3日間まで、4日間まで、5日間まで、6日間まで、7日まで、2週間まで、3週間まで、4週間まで、2ヶ月間まで、3ヶ月間まで、4ヶ月間まで、5ヶ月間まで、6ヶ月間まで、7ヶ月間まで、8ヶ月間まで、9ヶ月間まで、10ヶ月間まで、11ヶ月間まで、12ヶ月間まで、2年間まで、3年間まで、4年間まで、5年間まで、6年間まで、7年間まで、8年間まで、9年間まで、または10年間まで、存在するかまたは検出可能である。
【0237】
例えば、一選択肢では、タンパク質は、関節に、約24時間まで、または少なくとも約24時間、および/または滑液中に、約24時間まで、または少なくとも約24時間存在するかまたは検出可能であり得る。
【0238】
治療有効用量のアネキシンA5タンパク質の投与は、いくつかの異なる方法で達成することができる。治療有効用量の適切な投与は、単回投与の投与を伴い得るか、または毎日、半週毎、毎週、2週間に1回、月1回、毎年などの投与の投与を伴い得る。
【0239】
治療計画は、例えば、対象へのアネキシンA5タンパク質の連続注入を含み得るか、または例えば1日1回、2回、3回、4回またはそれ以上の1回以上の投与を含み得る。例えば、1日2回のアネキシンA5タンパク質の投与は、1つの適切な投与計画であり得、そして各投与における投与量は、約0.1~25mg/患者の体重kg、例えば、約1~20mg/kg、約5~20mg/kg、約10~15mg/kgの範囲内であり得、例えば約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、または約14mg/kgが1つの適切な投与計画であり得る。
【0240】
一実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、少なくとも約1μg(マイクログラム)/ml、例えば、少なくとも約2μg/ml、少なくとも約3μg/ml、少なくとも約4μg/ml、少なくとも約5μg/ml、少なくとも約6μg/ml、少なくとも約7μg/ml、少なくとも約8μg/ml、少なくとも約9μg/ml、少なくとも約10μg/ml、少なくとも約11μg/ml、少なくとも約12μg/ml、少なくとも約13μg/ml、少なくとも約14μg/ml、少なくとも約15μg/ml、少なくとも約16μg/ml、少なくとも約17μg/ml、少なくとも約18μg/ml、少なくとも約19μg/ml、少なくとも約20μg/ml、少なくとも約21μg/ml、少なくとも約22μg/ml、少なくとも約23μg/ml、少なくとも約24μg/ml、少なくとも約25μg/ml、少なくとも約26μg/ml、少なくとも約27μg/ml、少なくとも約28μg/ml、少なくとも約29μg/ml、少なくとも約30μg/ml、少なくとも約31μg/ml、少なくとも約32μg/ml、少なくとも約33μg/ml、少なくとも約34μg/ml、少なくとも約35μg/ml、少なくとも約36μg/ml、少なくとも約37μg/ml、少なくとも約38μg/ml、少なくとも約39μg/ml、少なくとも約40μg/ml、少なくとも約41μg/ml、少なくとも約42μg/ml、少なくとも約43μg/ml、少なくとも約44μg/ml、少なくとも約45μg/ml、少なくとも約46μg/ml、少なくとも約47μg/ml、少なくとも約48μg/ml、少なくとも約49μg/ml、少なくとも約50μg/ml、少なくとも約55μg/ml、少なくとも約60μg/ml、少なくとも約65μg/ml、少なくとも約70μg/ml、少なくとも約75μg/ml、少なくとも約80μg/ml、少なくとも約85μg/ml、少なくとも約90μg/ml、少なくとも約95μg/ml、少なくとも約100μg/ml、少なくとも約110μg/ml、少なくとも約120μg/ml、少なくとも約130μg/ml、少なくとも約140μg/ml、少なくとも約150μg/ml、少なくとも約160μg/ml、少なくとも約170μg/ml、少なくとも約180μg/ml、少なくとも約190μg/ml、少なくとも約200μg/ml、少なくとも約210μg/ml、少なくとも約220μg/ml、少なくとも約230μg/ml、少なくとも約240μg/ml、少なくとも約250μg/ml、少なくとも約260μg/ml、少なくとも約270μg/ml、少なくとも約280μg/ml、少なくとも約290μg/ml、少なくとも約300μg/ml、少なくとも約350μg/ml、少なくとも約400μg/ml、少なくとも約450μg/ml、または少なくとも約500μg/mlの濃度で投与され得る。
【0241】
一実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、少なくとも約1μg(マイクログラム)/ml、例えば、少なくとも約2μg/ml、少なくとも約3μg/ml、少なくとも約4μg/ml、少なくとも約5μg/ml、少なくとも約6μg/ml、少なくとも約7μg/ml、少なくとも約8μg/ml、少なくとも約9μg/ml、少なくとも約10μg/ml、少なくとも約11μg/ml、少なくとも約12μg/ml、少なくとも約13μg/ml、少なくとも約14μg/ml、少なくとも約15μg/ml、少なくとも約16μg/ml、少なくとも約17μg/ml、少なくとも約18μg/ml、少なくとも約19μg/ml、少なくとも約20μg/ml、少なくとも約21μg/ml、少なくとも約22μg/ml、少なくとも約23μg/ml、少なくとも約24μg/ml、少なくとも約25μg/ml、少なくとも約26μg/ml、少なくとも約27μg/ml、少なくとも約28μg/ml、少なくとも約29μg/ml、少なくとも約30μg/ml、少なくとも約31μg/ml、少なくとも約32μg/ml、少なくとも約33μg/ml、少なくとも約34μg/ml、少なくとも約35μg/ml、少なくとも約36μg/ml、少なくとも約37μg/ml、少なくとも約38μg/ml、少なくとも約39μg/ml、少なくとも約40μg/ml、少なくとも約41μg/ml、少なくとも約42μg/ml、少なくとも約43μg/ml、少なくとも約44μg/ml、少なくとも約45μg/ml、少なくとも約46μg/ml、少なくとも約47μg/ml、少なくとも約48μg/ml、少なくとも約49μg/ml、少なくとも約50μg/ml、少なくとも約55μg/ml、少なくとも約60μg/ml、少なくとも約65μg/ml、少なくとも約70μg/ml、少なくとも約75μg/ml、少なくとも約80μg/ml、少なくとも約85μg/ml、少なくとも約90μg/ml、少なくとも約95μg/ml、少なくとも約100μg/ml、少なくとも約110μg/ml、少なくとも約120μg/ml、少なくとも約130μg/ml、少なくとも約140μg/ml、少なくとも約150μg/ml、少なくとも約160μg/ml、少なくとも約170μg/ml、少なくとも約180μg/ml、少なくとも約190μg/ml、少なくとも約200μg/ml、少なくとも約210μg/ml、少なくとも約220μg/ml、少なくとも約230μg/ml、少なくとも約240μg/ml、少なくとも約250μg/ml、少なくとも約260μg/ml、少なくとも約270μg/ml、少なくとも約280μg/ml、少なくとも約290μg/ml、少なくとも約300μg/ml、少なくとも約350μg/ml、少なくとも約400μg/ml、少なくとも約450μg/ml、または少なくとも約500μg/mlの濃度で、関節もしくは各関節および/または関節もしくは各関節の滑液中に、投与され得る。
【0242】
一実施形態において、アネキシンA5タンパク質は、約1μg/mlの濃度で、関節または各関節に投与される。
【0243】
別の実施形態において、アネキシンA5タンパク質は、約5μg/mlの濃度で、関節に投与される。
【0244】
別の実施形態において、アネキシンA5タンパク質は、約17μg/mlの濃度で、関節に投与される。
【0245】
別の実施形態において、アネキシンA5タンパク質は、約20μg/mlの濃度で、関節に投与される。
【0246】
別の実施形態において、アネキシンA5タンパク質は、約174μg/mlの濃度で、関節に投与される。
【0247】
別の実施形態において、アネキシンA5タンパク質は、約200μg/mlの濃度で、関節に投与される。
【0248】
投与当たりのアネキシンA5の総用量は、例えば、0.0001~3g、0.0001~1.75g、0.001~3g、0.001~1.75g、0.01~3g、0.01~1.75g、0.1~3g、または0.1~1.75g、例えば0.2~2g、0.5~1.5g、0.8~1.2gの範囲内の、または約1gのアネキシンA5であり得る。一実施形態では、全身投与当たりのアネキシンA5の総用量は、例えば、0.01~3g、0.01~1.75g、0.1~3g、または0.1~1.75g、例えば0.2~2g、0.5~1.5g、0.8~1.2gの範囲内の、または約1gのアネキシンA5であり得る。一実施形態において、関節投与あたりのアネキシンA5の総用量は、例えば、0.0001~1g、0.0001~0.5g、0.001~1g、または0.001~0.5gの範囲内の、例えば約0.0001g、約0.0005g、約0.001g、約0.005g、約0.01g、約0.05g、約0.1g、約0.5g、または約1gのアネキシンA5であり得る。
【0249】
一実施形態において、アネキシンA5タンパク質または組成物は、関節体積の少なくとも約1%、例えば、関節または各関節の体積の少なくとも約2%、関節または各関節の体積の少なくとも約3%、関節または各関節の体積の少なくとも約4%、関節または各関節の体積の少なくとも約5%、関節または各関節の体積の少なくとも約6%、関節または各関節の体積の少なくとも約7%、関節または各関節の体積の少なくとも約8%、関節または各関節の体積の少なくとも約9%、関節または各関節の体積の少なくとも約10%、関節または各関節の体積の少なくとも約11%、関節または各関節の体積の少なくとも約12%、関節または各関節の体積の少なくとも約13%、関節または各関節の体積の少なくとも約14%、関節または各関節の体積の少なくとも約15%、関節または各関節の体積の少なくとも約16%、関節または各関節の体積の少なくとも約17%、関節または各関節の体積の少なくとも約18%、関節または各関節の体積の少なくとも約19%、関節または各関節の体積の少なくとも約20%、関節または各関節の体積の少なくとも約21%、関節または各関節の体積の少なくとも約22%、関節または各関節の体積の少なくとも約23%、関節または各関節の体積の少なくとも約24%、関節または各関節の体積の少なくとも約25%、関節または各関節の体積の少なくとも約26%、関節または各関節の体積の少なくとも約27%、関節または各関節の体積の少なくとも約28%、関節または各関節の体積の少なくとも約29%、関節または各関節の体積の少なくとも約30%、関節または各関節の体積の少なくとも約35%、関節または各関節の体積の少なくとも約40%、関節または各関節の体積の少なくとも約45%、関節または各関節の体積の少なくとも約50%、関節または各関節の体積の少なくとも約55%、関節または各関節の体積の少なくとも約60%、関節または各関節の体積の少なくとも約65%、関節または各関節の体積の少なくとも約70%、関節または各関節の体積の少なくとも約75%、関節または各関節の体積の少なくとも約80%、関節または各関節の体積の少なくとも約85%、関節または各関節の体積の少なくとも約90%、関節または各関節の体積の少なくとも約95%、または関節または各関節の体積の少なくとも約100%の体積で、関節または各関節に投与され得る。
【0250】
好ましくは、アネキシンA5タンパク質または組成物は、約17%、関節または各関節の体積の約17.1%、関節または各関節の体積の約17.2%、関節または各関節の体積の約17.3%、関節または各関節の体積の約17.4%、関節または各関節の体積の約17.5%、関節または各関節の体積の約17.6%、関節または各関節の体積の約17.7%、関節または各関節の体積の約17.8%、関節または各関節の体積の約17.9%、または関節または各関節の体積の約18%の体積で、関節または各関節に投与される。
【0251】
1つの好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、関節または各関節の体積の約17.1%の体積で関節または各関節に投与される。
【0252】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、関節または各関節の体積の約17.4%の体積で関節または各関節に投与される。
【0253】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、関節または各関節の体積の約17.8%の体積で関節または各関節に投与される。
【0254】
一実施形態において、アネキシンA5タンパク質または組成物は、関節または各関節の、滑液の体積の少なくとも約1%、例えば、滑液の体積の少なくとも約2%、滑液の体積の少なくとも約3%、滑液の体積の少なくとも約4%、滑液の体積の少なくとも約5%、滑液の体積の少なくとも約6%、滑液の体積の少なくとも約7%、滑液の体積の少なくとも約8%、滑液の体積の少なくとも約9%、滑液の体積の少なくとも約10%、滑液の体積の少なくとも約11%、滑液の体積の少なくとも約12%、滑液の体積の少なくとも約13%、滑液の体積の少なくとも約14%、滑液の体積の少なくとも約15%、滑液の体積の少なくとも約16%、滑液の体積の少なくとも約17%、滑液の体積の少なくとも約18%、滑液の体積の少なくとも約19%、滑液の体積の少なくとも約20%、滑液の体積の少なくとも約21%、滑液の体積の少なくとも約22%、滑液の体積の少なくとも約23%、滑液の体積の少なくとも約24%、滑液の体積の少なくとも約25%、滑液の体積の少なくとも約26%、滑液の体積の少なくとも約27%、滑液の体積の少なくとも約28%、滑液の体積の少なくとも約29%、滑液の体積の少なくとも約30%、滑液の体積の少なくとも約35%、滑液の体積の少なくとも約40%、滑液の体積の少なくとも約45%、滑液の体積の少なくとも約50%、滑液の体積の少なくとも約55%、滑液の体積の少なくとも約60%、滑液の体積の少なくとも約65%、滑液の体積の少なくとも約70%、滑液の体積の少なくとも約75%、滑液の体積の少なくとも約80%、滑液の体積の少なくとも約85%、滑液の体積の少なくとも約90%、滑液の体積の少なくとも約95%、または滑液の体積の少なくとも約100%の体積で、関節または各関節に投与され得る。
【0255】
好ましくは、アネキシンA5タンパク質または組成物は、約17%、関節または各関節の、滑液の体積の約17.1%、滑液の体積の約17.2%、滑液の体積の約17.3%、滑液の体積の約17.4%、滑液の体積の約17.5%、滑液の体積の約17.6%、滑液の体積の約17.7%、滑液の体積の約17.8%、滑液の体積の約17.9%、または滑液の体積の約18%の体積で、関節または各関節に投与される。
【0256】
1つの好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、関節または各関節の滑液の体積の約17.1%の体積で関節または各関節に投与される。
【0257】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、関節または各関節の滑液の体積の約17.4%の体積で関節または各関節に投与される。
【0258】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、関節または各関節の滑液の体積の約17.8%の体積で関節または各関節に投与される。
【0259】
一実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、少なくとも約0.1ml、例えば、少なくとも約0.2ml、少なくとも約0.3ml、少なくとも約0.4ml、少なくとも約0.5ml、少なくとも約0.6ml、少なくとも約0.7ml、少なくとも約0.8ml、少なくとも約0.9ml、少なくとも約1ml、少なくとも約1.1ml、少なくとも約1.2ml、少なくとも約1.3ml、少なくとも約1.4ml、少なくとも約1.5ml、少なくとも約1.6ml、少なくとも約1.7ml、少なくとも約1.8ml、少なくとも約1.9ml、少なくとも約2ml、少なくとも約2.1ml、少なくとも約2.2ml、少なくとも約2.3ml、少なくとも約2.4ml、少なくとも約2.5ml、少なくとも約2.6ml、少なくとも約2.7ml、少なくとも約2.8ml、少なくとも約2.9ml、少なくとも約3ml、少なくとも約3.1ml、少なくとも約3.2ml、少なくとも約3.3ml、少なくとも約3.4ml、少なくとも約3.5ml、少なくとも約3.6ml、少なくとも約3.7ml、少なくとも約3.8ml、少なくとも約3.9ml、少なくとも約4ml、少なくとも約4.1ml、少なくとも約4.2ml、少なくとも約4.3ml、少なくとも約4.4ml、少なくとも約4.5ml、少なくとも約4.6ml、少なくとも約4.7ml、少なくとも約4.8ml、少なくとも約4.9ml、少なくとも約5ml、少なくとも約6ml、少なくとも約7ml、少なくとも約8ml、少なくとも約9ml、少なくとも約10ml、少なくとも約11ml、少なくとも約12ml、少なくとも約13ml、少なくとも約14ml、少なくとも約15ml、少なくとも約16ml、少なくとも約17ml、少なくとも約18ml、少なくとも約19ml、少なくとも約20ml、少なくとも約25ml、少なくとも約30ml、少なくとも約35ml、または少なくとも約40mlの体積で、関節または各関節に投与され得る。
【0260】
1つの好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、約1mlの体積で、関節または各関節(好ましくは手の関節を含む指の関節、または足の関節を含む指の関節、最も好ましくはヒト対象)に投与される。
【0261】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、約2mlの体積で、関節または各関節(好ましくは手首関節または母指関節、最も好ましくはヒト対象)に投与される。
【0262】
別の好ましい実施形態において、アネキシンA5タンパク質または組成物は、約4mlの体積で、関節または各関節に投与される。
【0263】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、約5mlの体積で、関節または各関節(好ましくは肘関節または股関節、最も好ましくはヒト対象)に投与される。
【0264】
別の好ましい実施形態において、アネキシンA5タンパク質または組成物は、約6mlの体積で、関節または各関節に投与される。
【0265】
別の好ましい実施形態では、アネキシンA5タンパク質または組成物は、約10mlの体積で、関節または各関節(好ましくは肩関節または膝関節、最も好ましくはヒト対象)に投与される。
【0266】
この文脈における「約」という用語は、記載の体積の±2ml、1.5ml、1ml、0.5ml、または0.1mlの意味を含む。
【0267】
場合によっては、治療上有効用量は、2以上の用量の漸増濃度(すなわち漸増用量)として対象に投与され、(i)全ての用量が治療上の用量であるか、または(ii)治療量以下の用量(または2回以上の治療量以下の用量)が最初に投与され、上記漸増によって治療量が達成される。漸増濃度(すなわち用量の増加)を説明するための1つの非限定的な例として、治療有効用量は、治療量以下の用量から始めて毎週投与することができ、その後の各用量は、治療用量に達するまで、特定の増分で(例えば0.5mg/kgずつ)、または、可変の増分で増加し得、治療用量に達する時点で、投与を中止するかまたは継続することができる(例えば、継続的な治療用量)。いくつかの実施形態では、治療上有効用量の投与は持続注入であり得、用量は経時的に変化し得る(例えば、漸増する)。いくつかの実施形態では、併用療法も投与される。
【0268】
投与量および頻度は、対象におけるアネキシンA5タンパク質の半減期に応じて変動し得る。
【0269】
いずれにしても、医師は個々の患者に最も適した実際の投与量を決定し、それは特定の患者の年齢、体重、および反応によって変動するであろう。上述の投与量は平均的な場合の例示である。当然ながら、より高いかまたはより低い投与量範囲が妥当である個々の事例があり得、それらも本発明の範囲内に含まれる。
【0270】
獣医学的使用のために、アネキシンA5タンパク質は、通常の獣医学的診療に従って適宜許容される製剤として投与され、獣医師は、ある特定の動物にとって最も適切であろう投与計画および投与経路を決定する。
【0271】
治療期間:
治療計画は治療上有益な期間継続してもよい。
【0272】
変形性関節症は、一般に慢性疾患であると考えられているので、対象の余命の間治療を継続することが必要である可能性がある。変形性関節症もまた、先に論じたように、若い対象よりも高齢の対象に罹患する可能性が高い疾患である。
【0273】
一実施形態において、アネキシンA5タンパク質は、対象が変形性関節症と診断されたときから対象の死まで対象に投与され得る。
【0274】
好ましくは、対象は高齢対象であり、アネキシンA5タンパク質は、対象が変形性関節症と診断されたときから対象の死まで対象に投与される。
【0275】
一実施形態において、アネキシンA5タンパク質は、対象が変形性関節症と診断されたときから対象がもはや変形性関節症と診断されなくなるまで対象に投与され得る。
【0276】
別の実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、例えば、高リスクのライフスタイルを送る対象(運動選手、競走馬など)、および/または、変形性関節症の家族歴を有する対象の場合に、変形性関節症との診断の前に、対象に投与され得る。
【0277】
一実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、1週間以上、例えば2週間以上、3週間以上、4週間以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、7か月以上、8か月以上、9か月以上、10か月以上、11か月以上、12か月以上、15か月以上、18か月以上、21か月以上、24か月以上、30か月以上、3年以上、42か月以上、4年以上、5年以上、6年以上、7年以上、8年以上、9年以上、10年以上、11年以上、12年以上、13年以上、14年以上、15年以上、16年以上、17年以上、18年以上、19年以上、20年以上、25年以上、30年以上、35年年以上、40年以上、または50年以上の期間、投与される。
【0278】
一実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、1週間以上、例えば2週間以上、3週間以上、4週間以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、7か月以上、8か月以上、9か月以上、10か月以上、11か月以上、12か月以上、15か月以上、18か月以上、21か月以上、24か月以上、30か月以上、3年以上、42か月以上、4年以上、5年以上、6年以上、7年以上、8年以上、9年以上、10年以上、11年以上、12年以上、13年以上、14年以上、15年以上、16年以上、17年以上、18年以上、19年以上、20年以上、25年以上、30年以上、35年年以上、40年以上、または50年以上の期間、週に1回投与される。
【0279】
一実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、1週間以上、例えば2週間以上、3週間以上、4週間以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、7か月以上、8か月以上、9か月以上、10か月以上、11か月以上、12か月以上、15か月以上、18か月以上、21か月以上、24か月以上、30か月以上、3年以上、42か月以上、4年以上、5年以上、6年以上、7年以上、8年以上、9年以上、10年以上、11年以上、12年以上、13年以上、14年以上、15年以上、16年以上、17年以上、18年以上、19年以上、20年以上、25年以上、30年以上、35年年以上、40年以上、または50年以上の期間、週に2回投与される。
【0280】
一実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、1か月以上、例えば2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、7か月以上、8か月以上、9か月以上、10か月以上、11か月以上、12か月以上、15か月以上、18か月以上、21か月以上、24か月以上、30か月以上、3年以上、42か月以上、4年以上、5年以上、6年以上、7年以上、8年以上、9年以上、10年以上、11年以上、12年以上、13年以上、14年以上、15年以上、16年以上、17年以上、18年以上、19年以上、20年以上、25年以上、30年以上、35年年以上、40年以上、または50年以上の期間、月に1回投与される。
【0281】
一実施形態では、アネキシンA5タンパク質は、1か月以上、例えば2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、7か月以上、8か月以上、9か月以上、10か月以上、11か月以上、12か月以上、15か月以上、18か月以上、21か月以上、24か月以上、30か月以上、3年以上、42か月以上、4年以上、5年以上、6年以上、7年以上、8年以上、9年以上、10年以上、11年以上、12年以上、13年以上、14年以上、15年以上、16年以上、17年以上、18年以上、19年以上、20年以上、25年以上、30年以上、35年年以上、40年以上、または50年以上の期間、月に2回投与される。
【0282】
投与経路:
注射(静脈内、皮下、または筋肉内注射など)、注入(静脈内注入など)、および/または血液脳関門を回避するための髄腔内送達を含む非経口投与が特に適しているが、任意の適切な投与経路を使用することができる。
【0283】
場合によっては、アネキシンA5タンパク質は、非経口的に、静脈内に、髄腔内に、動脈内に、腹腔内に、関節内に、筋肉内に、もしくは皮下に、または局所的に投与することができる。
【0284】
最も好ましくは、アネキシンA5タンパク質は、上述のように、関節もしくは各関節内および/または関節もしくは各関節内の滑液中に直接投与される。
【0285】
併用療法:
本発明に従う治療のための対象は、全体的な治療効果を提供するための量および回数でアネキシンA5を投与され得る。アネキシンA5は、単独で(単独療法)または他の薬剤と組み合わせて(併用療法)、混合してまたは別個に、同時にもしくは逐次的に投与することができる。併用療法の場合、投与量および投与回数は、例えば相加的または相乗的な治療効果をもたらすものであり得る。さらに、アネキシンA5の投与(第二のまたはさらなる薬剤を伴うかまたは伴わない)は、一次の、例えば一次治療として、または例えば、それまでに投与された療法(すなわち、アネキシンA5を伴う療法以外の療法)に対して不十分な反応を有する対象に対する二次治療として使用することができる。
【0286】
したがって、一実施形態では、対象は、1つ以上の治療的または予防的介入に加えて、アネキシンA5タンパク質療法で治療されてもよい。対象は、1つ以上の他の治療的もしくは予防的介入、または1つ以上の追加の治療的もしくは予防的治療とは別に、それを含む別個の製剤と同時に、またはそれと逐次的に、同一の組成物でアネキシンA5タンパク質療法を投与され得る。
【0287】
好ましくは、1つ以上の追加の治療的または予防的治療は、ライフスタイルの変更、投薬、および手術のうちの1つ以上から選択され得る。
【0288】
好ましくは、ライフスタイルの変更は、体重減少または運動であり得る。
【0289】
好ましくは、薬物は、鎮痛薬(疼痛の症状を和らげる薬)、制酸薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、カプサイシン、およびヒアルロン酸のうちの1つ以上であり得る。
【0290】
好ましくは、鎮痛薬は、アセトアミノフェン、パラセタモール、イブプロフェン、アスピリン、オピオイド(トラマドールなど)、およびグルココルチコイド(ヒドロコルチゾンなど)のうちの1つ以上である。
【0291】
好ましくは、NSAIDは、ナプロキセン、ジクロフェナク、COX-2選択的阻害剤(セレコキシブなど)のうちの1つ以上である。
【0292】
好ましくは、手術は、関節置換術(股関節置換術および膝関節置換術など)、骨切り術、および関節鏡視下手術のうちの1つ以上である。
【0293】
治療のための装置とキット:
【0294】
アネキシンA5タンパク質を含む薬学的組成物および獣医学組成物は、医療機器と共に投与することができる。装置は、携帯性、室温での保管、使いやすさなどの特徴を備えて設計されているため、緊急事態において、医療施設やその他の医療機器から取り外して、例えば、訓練を受けていない対象や現場の緊急要員によって使用することができる。装置は、例えば、アネキシンA5タンパク質を含む薬学的製剤を保存するための1つ以上の筐体を含み得、そして1以上の単位用量のアネキシンA5タンパク質を送達するように構成され得る。装置は、アネキシンA5も含む単一の薬学的組成物として、または2つの別々の組成物として、第2の薬剤を投与するようにさらに構成することができる。
【0295】
薬学的組成物および獣医組成物は注射器で投与することができる。薬学的組成物または獣医学組成物は、米国特許第5,399,163号、米国特許第5,383,851号、米国特許第5,312,335号、米国特許第5,064,413号、米国特許第4,941,880号、米国特許第4,790,824号、または米国特許第4,596,556号に開示されている装置などの無針皮下注射装置を用いて投与することもできる。周知のインプラントおよびモジュールの例には、制御された速度で薬剤を分配するための埋め込み型微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号、皮膚を通して薬剤を投与するための治療装置を開示する米国特許第4,486,194号、正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号、連続的な薬物送達のための可変流量植込み型注入装置を開示する米国特許第4,447,224号、マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを開示する米国特許第4,439,196号、浸透圧薬物送達システムを開示する米国特許第4,475,196号が含まれる。他の多くの装置、インプラント、送達システム、およびモジュールもまた公知である。
【0296】
アネキシンA5タンパク質はキットで提供することができる。一実施形態では、キットは、(a)アネキシンA5タンパク質を含む組成物を含む容器、および任意選択での(b)情報資料を含む。情報資料は、本明細書に記載の方法および/または治療的利益のための薬剤の使用に関連する記述的、説明的、マーケティング的または他の資料であり得る。
【0297】
一実施形態では、キットはまた、本明細書に記載される障害を治療するための第2の薬剤を含む。例えば、キットは、アネキシンA5タンパク質を含む組成物を含む第1の容器、および第2の薬剤を含む第2の容器を含む。
【0298】
キットの情報資料はその形態に限定されない。一実施形態では、情報資料は、化合物の製造、化合物の分子量、濃度、有効期限、バッチまたは製造場所の情報などに関する情報を含むことができる。一実施形態では、情報資料は、アネキシンA5タンパク質を、例えば適切な用量、剤形、または投与形態(例えば、本明細書に記載される用量、剤形、または投与形態)で投与して、本明細書に記載されるようなそれを必要とする対象を治療する方法に関する。情報は、印刷テキスト、コンピュータ可読資料、ビデオ記録、またはオーディオ記録、または実質的な資料、例えばインターネットへのリンクまたはアドレスを提供する情報を含む様々なフォーマットで提供することができる。
【0299】
アネキシンA5タンパク質に加えて、キット中の組成物は、溶媒もしくは緩衝剤、安定剤、または保存剤などの他の成分を含み得る。アネキシンA5タンパク質は、任意の形態、例えば液体、乾燥または凍結乾燥形態、好ましくは実質的に純粋および/または無菌の形態で提供することができる。アネキシンA5タンパク質が溶液中で提供されるとき、その溶液は好ましくは水溶液である。アネキシンA5タンパク質が乾燥形態として提供されるとき、再構成は一般に適切な溶媒の添加による。溶媒、例えば、滅菌水または緩衝液は、任意選択でキット中に提供され得る。
【0300】
キットは、薬剤を含む単一または複数の組成物のための1つ以上の容器を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、組成物および情報資料のための別々の容器、仕切り、または区画を含む。例えば、組成物は瓶、バイアル、または注射器に入れることができ、情報資料はプラスチック製のスリーブまたはパケットに入れることができる。他の実施形態では、キットの別々の要素は単一の分割されていない容器内に収容されている。例えば、組成物は、ラベルの形態の情報資料を付着させた瓶、バイアルまたは注射器に入れられる。いくつかの実施形態では、キットは、それぞれが1つ以上の単位剤形(例えば、本明細書に記載される剤形)の薬剤を含む複数(例えば、パック)の個々の容器を含む。容器は、組み合わせ単位用量、例えば、アネキシンA5タンパク質と第2の薬剤の両方を、例えば所望の比率で含む単位を含むことができる。例えば、キットは、複数の注射器、アンプル、ホイルパケット、ブリスターパック、または医療用デバイスを含み、例えば、それぞれが単一の組み合わせ単位用量を含む。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、水分または蒸発の変化に対して不透過性)、および/または遮光性であり得る。
【0301】
キットは、組成物の投与に適した装置、例えば注射器または他の適切な送達装置を任意選択で含む。装置は、一方または両方の薬剤が予め装填された状態で提供されてもよく、または空であるが装填に適していてもよい。
【0302】
F.関節の炎症の治療
これまで、多血小板血漿(PRP)が関節の炎症の治療に使用されていた。しかし、それが機能するメカニズムは理解されていなかった。方法は、患者の血漿から血小板を濃縮し、次いでそれらの濃縮血小板を同一の患者に再導入して炎症を軽減することを含む。本出願人は、PRPが通常の血漿よりも実質的に高いアネキシンA5レベルを有することを見出した。アネキシンA5タンパク質はPRPの活性成分であると仮定されているので、一般に関節炎を治療するための治療薬としてここに記載されている。
【0303】
第5の態様では、本発明は、対象における、1つ以上の関節の炎症の予防または治療に使用するためのアネキシンA5タンパク質を提供する。
【0304】
第5の態様の代替的な実施形態において、本発明は、対象の1つ以上の関節における炎症の予防または治療のための方法であって、
治療有効量のアネキシンA5タンパク質を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0305】
第5の態様の別の代替的な実施形態では、本発明は、対象の1つ以上の関節における炎症の予防または治療のための医薬の製造におけるアネキシンA5タンパク質の使用を提供する。
【0306】
一実施形態では、炎症は炎症性疾患によって引き起こされる。
【0307】
一実施形態では、炎症性疾患は、関節炎、エリテマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、強皮症、混合結合組織疾患、オスグッド-シュラッター病、ウイルス性肝炎、風疹、ベーチェット症候群、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、およびサルコイドーシスからなる一覧から選択される。
【0308】
好ましくは、関節炎は、関節リウマチ、変形性関節症、痛風、ループス、線維筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、若年性関節炎、強直性脊椎炎、および敗血症性関節炎からなる一覧から選択される。
【0309】
最も好ましくは、関節炎は関節リウマチである。
【0310】
一実施形態では、炎症は身体的損傷によって引き起こされる。
【0311】
一実施形態では、身体的損傷は、腱炎、滑液包炎、損傷した(例えば、裂傷)靭帯、損傷した(例えば、裂傷)腱、半月板の損傷、軟骨損傷、捻挫、骨折、骨折、欠けた骨、骨の脱臼、および腱鞘炎からなる一覧から選択される1つ以上である。
【0312】
本発明の第5の態様のさらなる実施形態には、本発明の第1から第4の態様に関して上に開示された実施形態および好ましい特徴が含まれる。例えば、本発明の第5の態様で言及される関節または各関節は、セクションBに開示されるように記載され得ることが含まれる。同様に、本発明の第5の態様に言及されるアネキシンA5タンパク質は、セクションCに開示されるように記載され得、本発明の第5の態様に言及される対象は、セクションDに開示されるように記載され得、および/または投与様式、投与量などは、セクションEに開示されるように記載され得る。
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【0313】
ここで本発明を、1つ以上の非限定的な実施例を参照しながら説明する。
【実施例0314】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技術を表し、したがってその実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることを当業者は理解されたい。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、それでも本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができる。
【0315】
実施例1
方法:変形性関節症(OA)患者由来の軟骨細胞をIL1β(10ng/mL)またはTNFα(10ng/mL)と、アネキシンA5(ANXA5)を含んで(100ng/mL、5μg/mL、20μg/mL)または含まず、培養した。IL1βまたはTNFαによる軟骨細胞の刺激は、炎症を起こした関節環境を模倣する。細胞を3、6、12、および18時間で回収した。ICAM‐1(細胞間接着分子1)、RANKL(核カッパ-βリガンドの受容体活性化剤)の表面発現およびヨウ化プロピジウム(PI)による細胞生存率を、フローサイトメトリーにより決定した。
【0316】
炎症関連遺伝子IL-6およびCOX-2の発現は、IL1β刺激OA軟骨細胞において測定した。OA軟骨細胞を10ngのIL1βで刺激し、異なる濃度のANXA5(0.1μg、5μg、および20μg/mL)のANXA5で6時間処理した。遺伝子の発現は、SYBRグリーン反応キットを使用してqPCRにより測定した。遺伝子発現をGAPDHに対して標準化し、そして遺伝子の相対的発現を2ΔΔCtを使用して測定した。
【0317】
結果:変形性関節症の表現型に寄与する要因は細胞死である。結果は、アネキシンA5による処理が、インビボ試験において変形性関節症関連細胞死を減少させることを示している。
【0318】
図1は、ヒトモデルにおいて、変形性関節症によって引き起こされる細胞死(TNFαの適用によって促進される)が、アネキシンA5によって阻害され、アネキシンA5処理細胞の生存率がTNFα処理を伴わない対照と同様である。
【0319】
図3に示されるように、炎症のさらに別の誘因であるIL1-βが、ウマの変形性関節症の発病機序と関連しているという同様の結果が見られる。用量依存的に、アネキシンA5が変形性関節症関連細胞死を阻害することが示されており、5μgおよび20μgの用量での処理は、IL1-β処理を伴わない対照に匹敵する細胞生存率をもたらす。さらに、
図3は、アネキシンA5タンパク質単独での処理は、IL1-β処理を伴わない対照と比較するとき、細胞生存率に影響を及ぼさないことを示している。
【0320】
変形性関節症に関連する細胞死を抑制するだけでなく、アネキシンA5による処理はまた、変形性関節症、および変形性関節症に関連する炎症のバイオマーカーを減少させる。
【0321】
ICAM1は、変形性関節症および軟骨細胞に関連する細胞活性化/炎症のマーカーである。
図2に示すように、アネキシンA5による処理は、TNFαおよびTNFαで処理されていない対照を使用して細胞死および炎症(両方とも変形性関節症の顕著な特徴)が促進される細胞と比較したとき、ICAM1の発現を減少させる。
【0322】
RANKLは、変形性関節症および軟骨細胞に関連する、細胞活性化/炎症のさらなるマーカーである。
図4に示すように、アネキシンA5による処理は、変形性関節症の炎症性関節モデルがIL1-βを使用して促進された細胞およびIL1-βで処理されていない対照と比較するとき、用量依存的にRANKLの発現を減少させる。5μgおよび20μgの用量でのアネキシンA5タンパク質による処理は、IL1-β処理を伴わない対照に匹敵するRANKL発現レベルをもたらす。さらに、
図4は、アネキシンA5タンパク質単独による処理が、RANKL発現に影響を及ぼさないことを示す。
【0323】
IL-6は変形性関節症に関連する炎症誘発性バイオマーカーであり、COX-2は関節炎のバイオマーカーである。
図5に示すように、アネキシンA5による処理は、変形性関節症状態がIL1-βを使用して誘導された細胞およびIL1-βで処理されていない対照と比較するとき、用量依存的にIL6とCOX2との両方の発現を減少させる。さらに、
図5は、アネキシンA5単独による処置がIL6またはCOX2発現に影響を及ぼさないことを示す。
【0324】
結論:アネキシンA5による処理は、変形性関節症に関連する細胞死の減少、変形性関節症バイオマーカーの減少、および変形性関節症関連炎症のバイオマーカーの減少を示すことから、変形性関節症の3つの主な顕著な特徴に劇的な影響を及ぼすことを実証する。
【0325】
変形性関節症に関連する細胞死の場合、アネキシンA5による処理は表現型を完全に救済し、それはアネキシンA5が非常に有効な変形性関節症治療薬の特徴を示すことを示す。
【0326】
当技術分野で考えられていたこととは反対に、これらのデータは、変形性関節症関節におけるアネキシンA5タンパク質の存在が、疾患の病因の媒介物質としてよりもむしろ損傷を修復および/または軽減するように機能することを示す。その結論は、アネキシンA5タンパク質が、変形性関節症疾患の2つの重要な媒介因子である、細胞死および炎症の影響を軽減することができることを示すこれらの実験における実証から得られる。
【0327】
さらに、炎症の異なる誘因を有する変形性関節症モデルにおけるアネキシンA5の有効性は、アネキシンA5が広範囲の異なる対象にわたって治療的に有効である可能性が高いことを示す。
【0328】
机上の実験例2
以下は、変形性関節症を治療するために、アネキシンA5タンパク質をウマに投与することの机上の実験例である。
【0329】
使用されるアネキシンA5タンパク質は、25mg/mLの滅菌溶液として送達されるヒト組換えアネキシンA5タンパク質である。タンパク質溶液は輸送中、凍結を維持する。配達時にタンパク質溶液は冷蔵庫(2~8℃)に保存するべきである。試料を希釈用に回収する前に、バイアル内のタンパク質原液を穏やかに回転させて均一にする。
【0330】
アネキシンA5タンパク質を希釈して「ビヒクル」を作り出す。ビヒクルは冷蔵庫に保管する必要がある。
【0331】
この試験では、3つの異なる関節ペアが使用される。橈骨手根関節と手根間関節がアネキシンA5の効果の評価に使用される一方で、チオバイオタル(tiobiotarsal)関節は潜在的なビヒクルの効果の評価に使用される。2つのタイプの関節について同一である滑液中の最終濃度を得るために、チオバイオタルサル関節はより大量の滑液を有するので、投与されるビヒクルの量は、橈骨手根関節/手根間関節に投与される体積と比較して2倍であろう。
【0332】
滑液中の2つの用量、20μg/mL(橈骨手根関節)および200μg/mL(手根間関節)のANXA5を試験する。
【表1】
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【0333】
本明細書に記載される任意の他の使用、方法または組成物に対して、本明細書に記載される任意の使用、方法または組成物を実施することができると考えられる。
【0334】
特許請求の範囲および/または本明細書において用語「含む」と合わせて使用される場合の「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、「1つ」を意味する場合もあるが、それはまた「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。
【0335】
特に明記しない限り、本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、記載されている値の、±50%、±40%、±30%、±20%、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の範囲を意味する。
【0336】
しかしながら、上記の説明は、本発明の様々な実施形態およびその多数の具体的な詳細を示しているが、それは限定ではなく例示として示されていることを理解されたい。本発明の主旨から逸脱することなく、多くの置換、変更、追加、および/または再編が本発明の範囲内で行われてもよく、本発明は、全てのそのような置換、変更、追加、および/または再編を含む。
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【0337】
本明細書に開示され請求される全ての組成物および/または方法は、本開示に照らして過度の実験をすることなく作製および実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される、組成物および/または方法、ならびに方法のステップまたはステップの順序に変更を加えてもよいことが当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連するある種の薬剤を本明細書に記載される薬剤の代わりに使用しても、同一または同様の結果が達成されることは明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似の置換および改変はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念内にあるとみなされる。