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特開2022-176378インフルエンザウイルスに対する汎遺伝子型薬剤及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176378
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】インフルエンザウイルスに対する汎遺伝子型薬剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/712 20060101AFI20221117BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221117BHJP
   C12N 7/06 20060101ALI20221117BHJP
   C12N 15/44 20060101ALN20221117BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20221117BHJP
【FI】
A61K31/712
A61P31/16
A61K31/7125
A61K45/00
A61P43/00 121
C12N7/06
C12N15/44 ZNA
C12N15/113 100Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022162516
(22)【出願日】2022-10-07
(62)【分割の表示】P 2018543209の分割
【原出願日】2017-03-01
(31)【優先権主張番号】62/302,548
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エス. グレン
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル ハーゲイ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード パム
(57)【要約】
【課題】インフルエンザウイルスに対する汎遺伝子型薬剤及びその使用方法の提供。
【解決手段】試料中のインフルエンザA型ウイルスの阻害方法が提供される。方法の態様は、PSL2モチーフを有するウイルスRNA(vRNA)を含む試料を、PSL2モチーフに特異的に結合してインフルエンザA型ウイルスを阻害する有効量の薬剤と接触させることを含む。対象におけるインフルエンザA型ウイルス感染の治療または予防方法も提供される。細胞中のインフルエンザA型ウイルスを阻害する能力についての候補薬剤のスクリーニング方法もまた提供され、この方法は、試料を候補薬剤と接触させることと、その候補薬剤がvRNAのPSL2モチーフに特異的に結合するかを決定することとを含む。主題の方法において用途を見出すPB2 vRNA領域と相補的なオリゴヌクレオチド配列を含む化合物及び薬学的組成物もまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2016年3月2日に出願された米国仮特許出願第62/302,548号の利益を主張し、この出願は、その全体において本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザA型ウイルス(IAV)は、世界中で顕著な罹患及び死亡を引き起こすセグメント化RNAウイルスである。全ての現在承認されているIAV抗ウイルス薬は、ウイルスタンパク質に対して標的化され、サブタイプが限られ、全ての薬物クラスメンバーに対して上昇する抗ウイルス耐性が課題となっている。
【0003】
IAVゲノムは、最小14個の既知のウイルスタンパク質をコードする8個の一本鎖ネガティブセンスウイルスRNA(vRNA)セグメントからなる。vRNAは、核タンパク質(NP)ならびに、PB2、PB1、及びPAタンパク質を含む、ヘテロトリマーポリメラーゼ複合体と共に、完全ウイルスリボ核タンパク質(vRNP)を形成する。完全に感染性となるには、IAVビリオンは、各セグメントのvRNPの少なくとも1つを組み込まなければならない。各vRNPは、少なくとも1つの他のパートナーと相互作用し、パッケージングプロセスを誘導すると仮定されるセグメント間RNA-RNA及び/またはタンパク質-RNA相互作用により維持される可能性が高い超分子複合体を形成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様は、ゲノムセグメントPB2の5’パッケージングシグナル領域内で、パッケージングステムループ2(PSL2)と呼ばれる、IAVのRNA構造要素を破壊するように設計された汎遺伝子型組成物を提供する。PSL2構造の破壊は、IAVを劇的に阻害する。PSL2は、全ての試験されたインフルエンザA型サブタイプにわたり保存される。
【0005】
試料中のインフルエンザA型ウイルスの阻害方法が提供される。方法の態様は、PSL2モチーフを有するウイルスRNA(vRNA)を含む試料を、PSL2モチーフに特異的に結合してインフルエンザA型ウイルスを阻害する有効量の薬剤と接触させることを含む。いくつかの場合では、vRNAは、ビリオンまたは細胞から単離される。いくつかの場合では、vRNAは、ビリオン中にある。いくつかの場合では、vRNAは、感染細胞中にある。対象におけるインフルエンザA型ウイルス感染の治療または予防方法も提供される。細胞中のインフルエンザA型ウイルスを阻害する能力についての候補薬剤のスクリーニング方法もまた提供され、この方法は、試料を候補薬剤と接触させることと、その候補薬剤がvRNAのPSL2モチーフに特異的に結合するかを決定することとを含む。主題の方法において用途を見出すPB2 vRNA領域と相補的なオリゴヌクレオチド配列を含む化合物及び薬学的組成物もまた提供される。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
PB2 vRNA領域と相補的なオリゴヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド化合物であって、前記領域が、前記PB2 vRNAの5’末端コード領域の(-)センス表記中のヌクレオチド34~87を含む、オリゴヌクレオチド化合物、またはその塩。
(項目2)
前記PB2 vRNAの領域のパッケージングステムループ2(PSL2)モチーフの領域と相補的な少なくとも8個のヌクレオシドサブユニットを含むオリゴヌクレオチド配列を含む、項目1に記載の化合物。
(項目3)
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミデート、及びチオホスホルアミデート結合から選択されるヌクレオシド間結合を含む、項目1に記載の化合物。
(項目4)
前記オリゴヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチドを含む、項目1に記載の化合物。
(項目5)
前記オリゴヌクレオチドが、
5’ ACCAAAAGAAT 3’(配列番号45)、
5’ TGGCCATCAAT 3’(配列番号46)、
5’ TAGCATACTTA 3’(配列番号47)、
5’ CCAAAAGA 3’(配列番号48)、
5’ CATACTTA 3’(配列番号49)、
5’ CAGACACGACCAAAA 3’(配列番号50)、
5’ TACTTACTGACAGCC 3’(配列番号51)、
5’ AGACACGACCAAAAG 3’(配列番号52)、
5’ ACCAAAAGAAT 3’(配列番号53)、
5’ TGGCCATCAAT 3’(配列番号54)、
5’ TAGCATACTTA 3’(配列番号55)、
5’ CGACCAAAAGAATTC 3’(配列番号56)、
5’ CGACCAAAAGAATTC 3’(配列番号57)、
5’ GATGGCCATCAATTA 3’(配列番号58)、
5’ GATGGCCATCAATTA 3’(配列番号59)、
5’ TCTAGCATACTTACT 3’(配列番号60)、
5’ TCTAGCATACTTACT 3’(配列番号61)、
5’ GAATTCGGATGGCCA 3’(配列番号62)、
5’ GGCCATCAATTAGTG 3’(配列番号63)、
5’ TTCGGATGGCCATCA 3’(配列番号64)、
5’ AGCCAGACAGCGA 3’(配列番号65)、及び
5’ GACAGCCAGACAGCA 3’(配列番号66)から選択される配列を含む、項目1に記載の化合物。
(項目6)
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも5個のデオキシリボヌクレオチドユニットを含み、RNaseを動員することができる、項目5に記載の化合物。
(項目7)
前記オリゴヌクレオチドが、
LNA1:5’ AccAaaAGaaT 3’(配列番号67)、
LNA2:5’ TggCcATcaaT 3’(配列番号68)、
LNA3:5’ TagCAtActtA 3’(配列番号69)、
LNA4:5’ CCAAAAGA 3’(配列番号70)、
LNA5:5’ CATACTTA 3’(配列番号71)、
LNA6:5’ CagaCaCGaCCaaAA 3’(配列番号72)、
LNA7:5’ TAcTtaCTgaCagCC 3’(配列番号73)、
LNA8:5’ AGACacgaccaAAAG 3’(配列番号74)、
LNA9:5’ TACTtactgacaGCC 3’(配列番号75)、
LNA9.2:5’ TACttactgacAGCC 3’(配列番号76)、
LNA10:5’ ACCaaaagAAT 3’(配列番号77)、
LNA11:5’ TGGccatcAAT 3’(配列番号78)、
LNA12:5’ TAGcatacTTA 3’(配列番号79)、
LNA13:5’ CgacCAaaAGaattC 3’(配列番号80)、
LNA14:5’ CGACcaaaagaATTC 3’(配列番号81)、
LNA15:5’ GaTGgCcATcaAttA 3’(配列番号82)、
LNA16:5’ GATGgccatcaATTA 3’(配列番号83)、
LNA17:5’ TcTAgCaTActTacT 3’(配列番号84)、
LNA18:5’ TCTAgcatactTACT 3’(配列番号85)、
LNA19:5’ GAAttcggatgGCCA 3’(配列番号86)、
LNA20:5’ GGCCatcaattaGTG 3’(配列番号87)、
LNA21:5’ TTCGgatggccaTCA 3’(配列番号88)、
LNA22:5’ AGCCagacagCGA 3’(配列番号89)、
LNA23:5’ GACAgccagacaGCA 3’(配列番号90)、
LNA9.G74C:5’ TACTtactgacaGTC 3’(配列番号91)、及び
LNA9.T80C:5’ TACTtaccgacaGCC 3’(配列番号92)から選択される配列を含み、
大文字がLNAヌクレオチドを示し、小文字がDNAヌクレオチドを示す、項目5に記載の化合物。
(項目8)
細胞中のインフルエンザA型ウイルスの阻害方法であって、
PSL2モチーフを有するウイルスRNA(vRNA)を含む試料を、前記PSL2モチーフに特異的に結合して前記インフルエンザA型ウイルスを阻害する有効量の薬剤と接触させることを含む、方法。
(項目9)
前記薬剤が、項目1に記載のオリゴヌクレオチド化合物である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記試料を薬剤と接触させることが、前記ウイルスの少なくとも2log10の力価損失をもたらし、前記薬剤が、前記vRNAの前記PSL2モチーフの全体的な構造を破壊する、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記vRNAが、ビリオンまたは細胞から単離される、項目8に記載の方法。
(項目12)
対象におけるインフルエンザA型ウイルス感染の治療または予防方法であって、
それを必要とする対象に、ウイルスRNA(vRNA)のPSL2モチーフに特異的に結合する有効量の活性剤を含む薬学的組成物を投与することを含む、方法。
(項目13)
前記活性剤が、PB2 vRNAの領域と相補的な少なくとも8個のヌクレオシドサブユニットを含むオリゴヌクレオチド配列を含む化合物である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記薬剤が、項目1に記載のオリゴヌクレオチド化合物である、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記対象が、インフルエンザA型ウイルス感染の危険性があり、前記オリゴヌクレオチド化合物の前記投与が、前記対象を感染に対して1週間以上(例えば、2週間以上、3週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、等)保護する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記投与が、有効用量の前記オリゴヌクレオチド化合物の1週間に1回、2週間に1回、または1か月に1回の投与を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記薬学的組成物が、第2のオリゴヌクレオチド活性剤及び抗ウイルス薬から選択される追加の活性剤をさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目18)
前記対象が、インフルエンザA型ウイルス感染またはその疑いがあると診断される、項目12に記載の方法。
【0006】
当業者であれば、下に記載される図面が例示目的のみのためのものであることを理解するであろう。図面は、本教示の範囲をいかなる方法でも限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】野生型PB2(配列番号1)、ならびにパッケージング変異体vRNA、PB2m757(配列番号2)、m745(配列番号3)、1918パンデミック(H1N1)(配列番号4)、高病原性鳥(H5M=N1)(配列番号5)、及び2009豚(H1N1)(配列番号6)のRNA二次構造を描写する。
図1B】野生型PB2(配列番号1)、ならびにパッケージング変異体vRNA、PB2m757(配列番号2)、m745(配列番号3)、1918パンデミック(H1N1)(配列番号4)、高病原性鳥(H5M=N1)(配列番号5)、及び2009豚(H1N1)(配列番号6)のRNA二次構造を描写する。
図1C】野生型PB2(配列番号1)、ならびにパッケージング変異体vRNA、PB2m757(配列番号2)、m745(配列番号3)、1918パンデミック(H1N1)(配列番号4)、高病原性鳥(H5M=N1)(配列番号5)、及び2009豚(H1N1)(配列番号6)のRNA二次構造を描写する。
図1D】野生型PB2(配列番号1)、ならびにパッケージング変異体vRNA、PB2m757(配列番号2)、m745(配列番号3)、1918パンデミック(H1N1)(配列番号4)、高病原性鳥(H5M=N1)(配列番号5)、及び2009豚(H1N1)(配列番号6)のRNA二次構造を描写する。
図1E】野生型PB2(配列番号1)、ならびにパッケージング変異体vRNA、PB2m757(配列番号2)、m745(配列番号3)、1918パンデミック(H1N1)(配列番号4)、高病原性鳥(H5M=N1)(配列番号5)、及び2009豚(H1N1)(配列番号6)のRNA二次構造を描写する。
図1F】野生型PB2(配列番号1)、ならびにパッケージング変異体vRNA、PB2m757(配列番号2)、m745(配列番号3)、1918パンデミック(H1N1)(配列番号4)、高病原性鳥(H5M=N1)(配列番号5)、及び2009豚(H1N1)(配列番号6)のRNA二次構造を描写する。
図2】パネルA及びBは、全長PB2 vRNAの反応性を描写する。
図3A】パッケージング欠損変異、PB2m744b(配列番号8)、PB2m745(配列番号9)、PB2m55c(配列番号10)、及びPB2m757(配列番号11)による、野生型反応性(配列番号7)の破壊を描写する。
図3B】パッケージング欠損変異、PB2m744b(配列番号8)、PB2m745(配列番号9)、PB2m55c(配列番号10)、及びPB2m757(配列番号11)による、野生型反応性(配列番号7)の破壊を描写する。
図3C】パッケージング欠損変異、PB2m744b(配列番号8)、PB2m745(配列番号9)、PB2m55c(配列番号10)、及びPB2m757(配列番号11)による、野生型反応性(配列番号7)の破壊を描写する。
図3D】パッケージング欠損変異、PB2m744b(配列番号8)、PB2m745(配列番号9)、PB2m55c(配列番号10)、及びPB2m757(配列番号11)による、野生型反応性(配列番号7)の破壊を描写する。
図3E】パッケージング欠損変異、PB2m744b(配列番号8)、PB2m745(配列番号9)、PB2m55c(配列番号10)、及びPB2m757(配列番号11)による、野生型反応性(配列番号7)の破壊を描写する。
図4】PSL2構造を含有するヌクレオチド配列の保存を描写する。
図5A】PSL2RNA二次構造(図5C、配列番号12)の2次元Mutate-and-Map分析を描写する。
図5B】PSL2RNA二次構造(図5C、配列番号12)の2次元Mutate-and-Map分析を描写する。
図5C】PSL2RNA二次構造(図5C、配列番号12)の2次元Mutate-and-Map分析を描写する。
図5D】PSL2RNA二次構造(図5C、配列番号12)の2次元Mutate-and-Map分析を描写する。
図6】パネルA~Bは、以前に記載されたPR8PB2変異体(パネルA、配列番号13)に対する補償的変異の設計を描写する。
図7】パネルA~Dは、PR8PB2 vRNAの単一高度保存コドン(パネルA、配列番号14~15、パネルB、配列番号16~23、上から下)の同義的変異を描写する。
図8】PB2パッケージング変異体用語体系及び対応する変異の部位を示す表を描写する。
図9A】PSL2構造、PB2m731(配列番号24)、PB2m751(配列番号25)、及びPB2m748(配列番号26)に対する同義的変異の効果を描写する。
図9B】PSL2構造、PB2m731(配列番号24)、PB2m751(配列番号25)、及びPB2m748(配列番号26)に対する同義的変異の効果を描写する。
図9C】PSL2構造、PB2m731(配列番号24)、PB2m751(配列番号25)、及びPB2m748(配列番号26)に対する同義的変異の効果を描写する。
図10】パネルA~Iは、ウイルスパッケージング及び力価に対するPR8PB2パッケージング欠損変異体における補償的変異の効果を描写する。
図11】パネルA~Dは、PB2パッケージング欠損及び補償的変異体パートナー(パネルB、配列番号27)の多次元化学マッピングを描写する。
図12】パネルa~tは、2次元Mutate-Map-Rescue分析を描写する。
図13】2次元Mutate-Map-Rescue変異体についてのプライマー配列の設計を描写する。配列は、配列番号28~43、上から下に対応する。
図14】パネルA~Bは、パッケージング欠損ウイルスがインビボで弱毒化されることを描写する。
図15】パネルA~Dは、PSL2RNA構造(パネルA、配列番号44)を標的とするロックド核酸の抗ウイルス活性を描写する。
図16A】LNA-RNA結合についての分析を描写する。
図16B】LNA-RNA結合についての分析を描写する。
図17】パネルA~Bは、単回用量の例示的な化合物LNA9の鼻腔内投与後の時間に伴うマウスの生存及び体重減少パーセントを示す。
図18】パネルA~Dは、薬物圧力下での連続継代後のオセルタミビルに対するインフルエンザウイルスの感受性を示す。
図19】パネルA~Cは、薬物圧力下での連続継代後のウイルス及び薬物耐性ウイルスを含む、例示的な化合物LNA9に対するインフルエンザウイルスの感受性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
例示的な実施形態についてより詳細に説明する前に、下記の定義を記載し、説明において使用される用語の意味及び範囲を例示及び定義する。
【0009】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY
AND MOLECULAR BIOLOGY,2D ED.,John Wiley
and Sons,New York(1994)、及びHale&Markham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,N.Y.(1991)は、当業者に、本明細書で使用される用語の多くの一般的な意味を提供する。それでも、特定の用語は、明瞭さ及び参照しやすさのために、下に定義する。
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で特に明記されない限り、複数の参照物を含むことに留意しなければならない。例えば、「プライマー(a primer)」という用語は、1つ以上のプライマー、すなわち、単一のプライマー及び複数のプライマーを指す。請求項はいずれかの任意の要素を除外するように記載され得ることに、さらに留意されたい。このようなものとして、この記述は、請求項要素の列挙に関連した「単独で」、「のみ」、等のような排他的な用語の使用、または「消極的な」限定の使用ための先行詞として機能することが意図される。
【0011】
本明細書で使用される「試料」という用語は、1つ以上の目的の成分を含有する、そうである必要はないが典型的には流体形態の、物質または物質の混合物に関する。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「有効量」という用語は、いくらかの所望の局所または全身効果をもたらす物質(例えば、目的の薬剤)の量を指す。目的の活性剤の有効量は、これらに限定されないが、対象の体重及び年齢、治療される状態、状態の重症度、投与の方法、等を含む、様々な因子に応じて変動し、容易に決定、例えば、下の実験セクションにおいて提供されるデータのようなデータを使用して経験的に決定することができる。
【0013】
本明細書で使用される「試料」という用語は、1つ以上の目的の成分を含有する、そうである必要はないが典型的には流体、すなわち、水性形態の、物質または物質の混合物に関する。試料は、これらに限定されないが、例えば、血漿、血清、髄液、精液、リンパ液、皮膚の外部片、気道、腸管、及び泌尿生殖路、涙、唾液、乳、血球、腫瘍、臓器、及びまた(これらに限定されないが、細胞培地中の細胞、推定ウイルス感染細胞、組換え細胞、及び細胞成分の増殖からもたらされる馴化培地を含む)インビトロ細胞培養物構成要素の試料を含む、個体から単離された組織または流体のような、生体試料または固体のような様々な供給源に由来し得る。試料中の成分は、本明細書では「分析物」と称される。多くの実施形態では、試料は、少なくとも約10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、5×10、10、10、1010、1011、1012以上の種の分析物を含有する複合試料である。
【0014】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分、例えば、インタクトな抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体(Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995))、単鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異的抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、各々単一抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映する名称である、残留「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2断片をもたらす。
【0015】
本明細書で相互互換的に使用される「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、いずれかの長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、これは、コード化及び非コード化アミノ酸、化学または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、及び修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことができる。「融合タンパク質」という用語またはその文法的同等物は、典型的にはそれらの天然状態では結合していないが、典型的には単一連続ポリペプチドを形成するペプチド結合を通したそれらの各アミノ及びカルボキシル末端により結合している、複数のポリペプチド成分からなるタンパク質を意味する。融合タンパク質は、2つ、3つ、またはさらに4つ以上の異なるタンパク質の組み合わせであり得る。ポリペプチドという用語は、これらに限定されないが、非相同アミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を含むまたは含まない、非相同及び相同リーダー配列を有する融合体、免疫学的に標識されたタンパク質、検出可能な融合パートナーとの融合タンパク質、例えば、融合パートナーとして蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、等を含む融合タンパク質、等を含む、融合タンパク質を含む。
【0016】
一般に、ポリペプチドは、いずれかの長さ、例えば、2個超のアミノ酸、4個超のアミノ酸、約10個超のアミノ酸、約20個超のアミノ酸、約50個超のアミノ酸、約100個超のアミノ酸、約300個超のアミノ酸、通常は最大約500または1000個以上のアミノ酸のものであり得る。「ペプチド」とは、一般的には、2個超のアミノ酸、4個超のアミノ酸、約10個超のアミノ酸、約20個超のアミノ酸、通常は最大約50個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、5~30個のアミノ酸の長さである。
【0017】
「特異的結合」という用語は、異なる分析物の均質な混合物中に存在する特定の標的(例えば、PSL2)に優先的に結合する薬剤の能力を指す。いくつかの場合では、特異的相互作用は、試料中の望ましい分析物と望ましくない分析物とを、典型的には約10~100倍以上(例えば、約1000倍超)区別するであろう。いくつかの場合では、それらが捕捉剤/分析物複合体中で特異的に結合される場合、対象の薬剤と分析物(例えば、PSL2)との間の親和性は、少なくとも10-8M、少なくとも10-9M、通常は最大約10-10Mである。特異的結合は、ハイブリダイゼーション、ポリペプチド-核酸相互作用、または小分子-核酸相互作用を含むことができる。
【0018】
「オリゴヌクレオチド」とは、約2個及び約200個の連続的なサブユニットを有するリボース及び/またはデオキシリボースヌクレオシドサブユニットポリマーを指す。ヌクレオシドサブユニットは、これらに限定されないが、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、P3’→N5’ホスホルアミデート、N3’→P5’ホスホルアミデート、N3’→P5’チオホスホルアミデート、及びホスホロチオエート結合を含む、様々なサブユニット間結合により結合することができる。さらに、「オリゴヌクレオチド」は、糖(例えば、2’置換)、塩基(下の「ヌクレオシド」の定義参照)、ならびに3’及び5’末端に対する、当業者に知られる修飾を含む。オリゴヌクレオチド部分が複数のサブユニット間結合を含む実施形態では、各結合は同じ化学を使用して形成され得るか、または結合化学の混合物が使用され得る。「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸断片」、「核酸配列もしくはセグメント」、または「ポリヌクレオチド」という用語は、相互互換的に使用され、遺伝子、遺伝子によりコードされるcDNA、DNA、及びRNAとも相互互換的に使用され得る。
【0019】
「ロックド核酸」(LNA)は、リボース部分が2’酸素及び4’炭素を結合する追加の架橋で修飾されている、修飾RNAヌクレオチドである。架橋は3’末端立体構造中でリボースを「ロック」し、これはA形態二本鎖中でよく見られる。LNAヌクレオチドは、所望に応じてオリゴヌクレオチド中のDNAまたはRNA残基のような、いずれかの便利なヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体と混合することができる。LNAは、ワトソン-クリック塩基対形成原理に従って、DNAまたはRNAとハイブリダイズする。こうしたオリゴマーは、化学的に合成することができる。一般に、ロックドリボース立体構造は、塩基スタッキング及び骨格予備組織化を向上させ、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性(融解温度)を増加させる。
【0020】
開示は、単離または実質的に精製された核酸核酸分子、及びそれらの分子を含有する組成物を包含する。本開示の文脈では、「単離」または「精製」DNA分子またはRNA分子は、その天然環境から離れて存在し、したがって自然の産物ではないDNA分子またはRNA分子である。単離DNA分子またはRNA分子は、精製状態で存在し得るか、または、例えば、トランスジェニック宿主細胞のような、非天然環境中に存在し得る。例えば、「単離」もしくは「精製」核酸分子またはその生物学的に活性な部分は、組換え技法により産生される場合は他の細胞物質、もしくは培地を実質的には含まないか、または化学的に合成される場合は化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的には含まない。1つの実施形態では、「単離」核酸は、核酸が由来する生物のゲノムDNA中で核酸に自然に隣接する配列(すなわち、核酸の5’及び3’末端に位置する配列)を含まない。例えば、様々な実施形態では、単離核酸分子は、核酸が由来する細胞のゲノムDNA中で核酸分子に自然に隣接する約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、または0.1kb未満のヌクレオチド配列を含有することができる。開示されるヌクレオチド配列の断片及び多様体も本開示により包含される。「断片」または「部分」とは、ヌクレオチド配列の全長または全長未満を意味する。本開示のsiRNAは、当該技術分野において知られるいずれかの方法により、例えば、インビトロ転写により、組換えで、または合成手段により生成することができる。1つの例では、siRNAは、T7RNAポリメラーゼ、及びDNAオリゴヌクレオチドテンプレートのような、組換え酵素を使用することにより、インビトロで生成することができる。
【0021】
「小干渉」もしくは「短干渉RNA」またはsiRNAは、目的の遺伝子に標的化されるヌクレオチドのRNA二本鎖である。「RNA二本鎖」とは、RNA分子の2つの領域間での相補的対形成により形成された構造を指す。siRNAは、siRNAの二本鎖部分のヌクレオチド配列が標的化遺伝子のヌクレオチド配列と相補的である遺伝子に「標的化」される。いくつかの実施形態では、siRNAの二本鎖の長さは、30個未満のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、二本鎖は、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10個のヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、二本鎖の長さは、19~25個のヌクレオチドの長さである。siRNAのRNA二本鎖部分は、ヘアピン構造の一部であり得る。二本鎖部分に加えて、ヘアピン構造は、二本鎖を形成する2つの配列の間に位置するループ部分を含有し得る。ループは長さが変動し得る。いくつかの実施形態では、ループは、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個のヌクレオチドの長さである。ヘアピン構造は、3’または5’オーバーハング部分も含有することができる。いくつかの実施形態では、オーバーハングは、3’または5’オーバーハング0、1、2、3、4、または5個のヌクレオチドの長さである。
【0022】
「脂質」という用語は、本明細書で広く使用され、有機溶媒には可溶性であるが、水には可溶性だとしても難溶性である物質を包含する。脂質という用語は、これらに限定されないが、炭水化物、油、(脂肪酸、グリセリドのような)脂肪、ステロール、ステロイド、及びこれらの化合物の誘導体形態が挙げられる。好ましい脂質は、脂肪酸及びそれらの誘導体、炭水化物及びそれらの誘導体、ならびにコレステロールのような、ステロールである。本明細書で使用されるとき、脂質という用語は、脂質及び親水性部分の両方を含有する両新媒性化合物も含む。脂肪酸は、通常は、直鎖中に偶数の炭素原子(一般的には12~24個の炭素)を含有し、飽和または不飽和であってよく、様々な置換基を含有または含有するように修飾することができる。簡潔に、「脂肪酸」という用語は、例えば、オリゴヌクレオチドの修飾末端との、抱合反応により産生される脂肪アミドのような、脂肪酸誘導体も包含する。
【0023】
用語の他の定義は、明細書全体を通して出現し得る。
(発明を実施するための形態)
【0024】
様々な実施形態について説明する前に、本開示の教示が、記載される特定の実施形態に限定されず、そのようなものとして、もちろん、変わり得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語が、特定の実施形態を説明する目的のためのみのものであり、本教示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定的であることが意図されないことも理解されたい。
【0025】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、組織化目的のためのみのものであり、説明される主題をいかなる方法でも限定するものとは解釈されない。本教示は様々な実施形態と共に説明されるが、本教示がこうした実施形態に限定されることは意図されない。対照的に、本教示は、当業者により理解されるように、様々な代替物、変形、及び同等物を包含する。
【0026】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載されるものと同様または同等のいずれかの方法及び材料も、本教示の実施または試験に使用することができるが、いくつかの例示的な方法及び材料についてここで説明する。
【0027】
いずれかの刊行物の引用は、出願日前のその開示についてのものであり、本特許請求の範囲が、先行発明によってこうした刊行物に先行する権利を有さないという認識として解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は、独立して確認することができる実際の公開日とは異なり得る。
【0028】
当業者には本開示を読むと明らかになるように、本明細書において記載及び例示される個別の実施形態の各々は、本教示の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に切り離す、またはこれと組み合わせることができる、別々の成分及び特徴を有する。いずれかの引用される方法は、引用される事象の順序または理論的に可能であるいずれかの他の順序で実施することができる。
【0029】
本明細書で参照される、こうした特許及び刊行物内で開示される全ての配列を含む、全ての特許及び刊行物は、参照により明示的に組み込まれる。
【0030】
インフルエンザA型ウイルスを阻害するための方法
上で要約されるように、本開示の態様は、ゲノムセグメントPB2の5’パッケージングシグナル領域内で、パッケージングステムループ2(PSL2)と呼ばれる、IAVのRNA構造要素を破壊するように設計された汎遺伝子型組成物を含む。「汎遺伝子型」とは、組成物が、PSL2構造要素が保存される、様々な異なるタイプのIAVにわたり効果的であることを意味する。いくつかの場合では、主題の組成物は、広域スペクトルと称することができる。本明細書で使用されるとき、「広域スペクトル」という用語は、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、8個以上、10個以上の異なるウイルスのような、2個以上の異なるウイルスに対して活性である単一部分の抗ウイルス活性を指す。2個以上の異なるウイルスは、異なるウイルスサブグループ(例えば、インフルエンザA型グループ1もしくはインフルエンザA型グループ2)から選択され得るか、または同じグループ内(例えば、H1、H2、H5、H6、H8、及びH9グループ1インフルエンザA型ウイルスのうちの2個以上、もしくはH3、H4、H7、及びH10グループ2インフルエンザA型ウイルスのうちの2個以上)から選択され得る。
【0031】
PSL2構造の破壊は、IAVを劇的に阻害する。PSL2は、全ての試験されたインフルエンザA型サブタイプにわたり保存される。図1、パネルaは、主題の方法において標的化され得るPSL2構造の例を示す。図4は、PSL2構造を含有する目的のヌクレオチド配列の保存について例示する。いくつかの場合では、主題の組成物は、H1N1、H3N2、及びH5Nから選択される2つ以上のIAVに対する活性のような、IAVに対する広域スペクトル活性を有する。
【0032】
本開示の態様は、試料中のインフルエンザA型ウイルス(IAV)を阻害するための方法を含む。いくつかの実施形態では、方法は、PSL2モチーフを有するウイルスRNA(vRNA)を含む試料を、PSL2モチーフに特異的に結合してインフルエンザA型ウイルスを阻害する有効量の薬剤と接触させることを含む。いくつかの場合では、試料は、インビトロである。特定の場合では、試料は、インビボである。試料中のvRNAは、ビリオン中に含まれ得る。いくつかの場合では、vRNAは、ウイルス粒子に感染した細胞のような、細胞中に含まれる。
【0033】
本開示の態様は、細胞中のインフルエンザA型ウイルス(IAV)を阻害するための方法を含む。いくつかの実施形態では、方法は、PSL2モチーフを有するウイルスRNA(vRNA)を含む細胞を、PSL2モチーフに特異的に結合してインフルエンザA型ウイルスを阻害する有効量の薬剤と接触させることを含む。いくつかの場合では、細胞は、インビトロである。特定の場合では、細胞は、インビボである。
【0034】
いくつかの実施形態では、試料(例えば、細胞)中のvRNAは、PB2 vRNAを含む。本明細書で使用されるとき、「PB2 vRNA」とは、パッケージングステムループ2(PSL2)と呼ばれる保存されたRNA構造要素を含むウイルスRNA(例えば、IAV RNA)を意味する。薬剤は、PSL2モチーフの特定の部位に結合してvRNAの全体的な構造を破壊し、これによりウイルスを阻害することができる(例えば、図14参照)。例えば、図1は、野生型PB2及びパッケージング変異体vRNAのRNA二次構造を例示する。
【0035】
いくつかの実施形態では、試料(例えば、細胞)を薬剤と接触させることは、少なくとも2.5、少なくとも3、少なくとも3.5、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10log10のウイルスの力価損失のような、少なくとも2log10のウイルスの力価損失をもたらす。いくつかの実施形態では、薬剤は、vRNAのPSL2モチーフと相補的な配列を含む(例えば、本明細書に記載されるような)オリゴヌクレオチド化合物、またはその塩である。
【0036】
方法のいくつかの例では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、上に記載された配列のうちの1つ)のPB2 vRNAの領域への(例えば、ハイブリダイゼーションを介した)結合は、PB2 vRNAの全体的な二次RNA構造を破壊する。いくつかの場合では、主題の化合物は、PB2 vRNAの5’末端コード領域の(-)センス表記中のヌクレオチド34~87により定義される領域の少なくとも一部を標的とする。いくつかの場合では、化合物は、PB2 vRNAの5’末端コード領域の(-)センス表記中のヌクレオチド1~14により定義される領域の少なくとも一部を標的とする。方法のいくつかの例では、方法は、PSL2をvRNAに分解するようにRNaseを動員することをさらに含む。
【0037】
本開示の態様は、対象におけるインフルエンザA型ウイルス感染の治療または予防方法を含む。いくつかの実施形態では、方法は、それを必要とする対象に、(例えば、本明細書に記載されるような)ウイルスRNA(vRNA)のPSL2モチーフに特異的に結合する有効量の活性剤を含む薬学的組成物を投与することを含む。このようなものとして、いくつかの場合では、対象は、ウイルスに感染しているものである。特定の場合では、対象は、ウイルスに感染する危険性があるか、または感染している疑いがあるものである。いくつかの実施形態では、vRNAは、PB2 vRNAである。
【0038】
対象に薬剤を投与するためのいずれかの便利なプロトコルが使用され得る。使用される特定のプロトコルは、例えば、投与の部位及び薬剤が、例えば、オリゴヌクレオチド、抗体、タンパク質、ペプチド、または小分子であるかに応じて、変動し得る。インビボプロトコルについて、いずれかの便利な投与プロトコルが使用され得る。薬剤の同一性及び結合親和性、所望の応答、投与方法、例えば局所または全身、眼内、眼周囲、眼球後方、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮下、結膜下、鼻腔内、局所、点眼剤、i.v.s.c.、i.p.、経口、等、移植床または移植組織の半減期、細胞数、またはサイズに応じて、様々なプロトコルが使用され得る。
【0039】
主題の薬剤を含む薬学的組成物も提供される。いずれかの便利な賦形剤、担体、等を、組成物中に使用することができる。組成物において用途を見出す薬学的に許容される担体は、無菌水性または非水性溶液、懸濁液、及び乳濁液を含み得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注入可能な有機エステルである。水性担体としては、食塩水及び緩衝化媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、乳濁液、または懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、補液及び栄養補給剤、(リンゲルデキストロースをベースとするもののような)電解質補給剤、等が挙げられる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガス、等のような、防腐剤及び他の添加剤も存在し得る。薬剤組成物はまた、その後の再構成及び使用のために、凍結乾燥され得る。組成物は、本明細書に記載されるような担体も含むことができる。使用され得る担体の例としては、これらに限定されないが、ミョウバン、ミクロ粒子、リポソーム、及びナノ粒子が挙げられる。いずれかの便利な添加剤は、主題の活性剤の送達を増強するように主題の組成物中に含めることができる。目的の添加剤としては、細胞取込み増強剤、担体タンパク質、脂質、デンドリマー担体、炭水化物、等が挙げられる。
【0040】
いくつかの場合では、薬学部組成物は、1つ以上の追加の活性剤をさらに含む。目的の活性剤としては、本開示の追加のオリゴヌクレオチド化合物及びいずれかの便利な目的の抗ウイルス化合物または薬物が挙げられる。これらに限定されないが、アマンタジン、リマンタジン、ザナミビル、オセルタミビル、ぺラミビル、等を含む。
【0041】
薬剤
いずれかの便利な薬剤は、主題の方法及び組成物において目的の標的(例えば、PSL2)の薬剤として使用され得る。目的の薬剤としては、これらに限定されないが、PSL-2の配位子、PSL2結合抗体、PSL2のスキャフォールド化タンパク質結合剤、オリゴヌクレオチド、小分子、及びペプチド、またはこれらの断片、多様体、もしくは誘導体、または前述のいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0042】
本開示に関して薬剤として使用され得る抗体は、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異的抗体、Fab抗体断片、F(ab)抗体断片、Fv抗体断片(例えば、VまたはV)、単鎖Fv抗体断片、及びdsFv抗体断片を包含することができる。さらに、抗体分子は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であり得る。本開示に関して使用され得る抗体は、いずれかの免疫グロブリン定常領域に結合した、成熟または未処理の、いずれかの抗体可変領域を含むことができる。アミノ酸配列中の変化が、配列の75%以上、例えば、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上を維持する場合、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列中の微変化は、本開示により包含される。特に、保存的アミノ酸置換が考慮される。保存的置換は、それらの側鎖中で関連したアミノ酸のファミリー内で起こるものである。アミノ酸変化が機能性ペプチドをもたらすかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性を分析することにより決定することができる。いくつかの実施形態では、薬剤は、(例えば、本明細書に記載されるような)抗体断片である。
【0043】
いくつかの実施形態では、薬剤は、スキャフォールド化ポリペプチド結合剤である。スキャフォールドとは、そこからポリペプチド剤が生じる基礎的なペプチド性フレームワーク(例えば、コンセンサス配列または構造モチーフ)を指す。基礎的なスキャフォールド配列は、固定される残基及び、得られたポリペプチド剤に、標的受容体への特異的結合のような、異なる機能を与え得る多様体残基を含む。こうした構造モチーフは、特定の二次及び三次構造要素の組み合わせとして、またはあるいは、アミノ酸残基の同等の一次配列として、特徴分析され、構造的に比較され得る。いずれかの便利なスキャフォールド及びスキャフォールド化ポリペプチドは、主題の方法において薬剤として使用され得る。いくつかの実施形態では、こうした薬剤は、ファージディスプレイスクリーニングのような組換えスクリーニング方法を使用して同定され得る。目的のスキャフォールド化ポリペプチド結合剤としては、これらに限定されないが、アフィボディのような合成小タンパク質及び組換え小タンパク質が挙げられる。
【0044】
いくつかの場合では、薬剤は、PSL2に結合する小分子である。目的の小分子としては、これらに限定されないが、50超~約1000未満Da、または50超~約500未満Daのような、50超~約2,500未満ダルトン(Da)の分子量(MW)を有する小有機または無機化合物が挙げられる。「小分子」は、合成、組換え、または自然発生ポリペプチド及び核酸を含む、合成、半合成、または自然発生無機もしくは有機分子を含む、多数の生物及び化学クラスを包含する。目的の小分子は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含むことができ、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基を含むことができ、官能化学基のうちの少なくとも2つを含有することができる。小分子は、上記官能基のうちの1つ以上で置換された環式炭素または複素環式構造及び/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含むことができる。小分子は、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的類似体、またはこれらの組み合わせを含む、生体分子中でも見出される。
【0045】
オリゴヌクレオチド化合物
いくつかの実施形態では、薬剤は、オリゴヌクレオチドもしくはその誘導体、またはその塩(例えば、薬学的に許容される塩)である。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドは、(例えば、本明細書に記載されるような)PSL2モチーフの特定のセグメントと相補的である。主題の方法において用途を見出す相補的オリゴヌクレオチドは、いくつかの場合では、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、約12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、またはさらにこれを超えるような、少なくとも5個であろう。いくつかの場合では、相補的オリゴヌクレオチドは、25個以下のヌクレオチドの長さ、20個以下のヌクレオチドの長さ、または15個以下のヌクレオチドの長さような、30個以下のヌクレオチドの長さであり、長さは、阻害の効率、交差反応性の非存在を含む、特異性、等により決定される。本開示は、例えば、7または8~15個のヌクレオチドの長さの、PSL2機能の強い選択的な阻害剤であり得る、短いオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、活性剤は、PB2 vRNAの領域と相補的な少なくとも8個のヌクレオシドサブユニットを含むオリゴヌクレオチド配列を含む化合物である。いくつかの実施形態では、活性剤は、PB2 vRNAの領域と相補的な少なくとも8個及び20個以下(例えば、15個以下)のヌクレオシドサブユニットを含むオリゴヌクレオチド配列を含む化合物である。
【0046】
特異的領域または内在性鎖PSL2配列の領域は、オリゴヌクレオチド剤により相補されるように選択される。オリゴヌクレオチドの特異的配列の選択は、(例えば、本明細書に記載されるような)構造分析に基づき、いくつかの候補配列がインビトロまたは動物モデルにおいて標的IAVの阻害について分析される、経験的方法を使用し得る。標的PSL2のいくつかの領域がアンチセンス相補性について選択されるオリゴヌクレオチド及び配列の組み合わせも使用され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、薬剤は、vRNAのPSL2モチーフと相補的な少なくとも5個のヌクレオシドサブユニット(例えば、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、少なくとも16個、少なくとも18個、または少なくとも20個)を含むオリゴヌクレオチド化合物、またはその塩である。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドの結合のうちの1つ以上は、メチルホスホネート、P3’→N5’ホスホルアミデート、N3’→P5’ホスホルアミデート、N3’→P5’チオホスホルアミデート、ホスホロジチオエート、及びホスホロチオエート結合から選択される。特定の例では、オリゴヌクレオチド配列は、ロックド核酸である。特定の例では、オリゴヌクレオチド配列は、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、またはさらにこれを超えるような、1個以上のロックド核酸ヌクレオチドを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、薬剤は、少なくとも5個のデオキシリボヌクレオチドユニット(例えば、PSL2モチーフと相補的なユニット)(例えば、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、少なくとも16個、少なくとも18個、少なくとも20個)を含み、RNaseを動員することができるオリゴヌクレオチドである。いくつかの場合では、オリゴヌクレオチドは、標的vRNAのより小さな成分への分解を触媒するようにRNaseを動員する。RNaseを動員するためのいずれかの便利な方法及び部分は、主題の薬剤(例えば、オリゴヌクレオチド)中に組み込むことができる。いくつかの例では、オリゴヌクレオチド剤は、目的のRNaseを動員する配列をさらに含む。特に指示されない限り、本明細書で描写されるようなオリゴヌクレオチド配列は、DNA配列、(例えば、Uが任意でTを置換することができる)RNA配列、混合RNA/DNA配列、ならびに、LNA類似体のような、配列の1つ以上のヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである類似体、及び/または1つ以上のヌクレオシド間結合が、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミデート、もしくはチオホスホルアミデート結合のような非自然発生結合で置換される類似体を含む、これらの類似体を含むことを意味すると理解されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、
5’ ACCAAAAGAAT 3’(配列番号45)、
5’ TGGCCATCAAT 3’(配列番号46)、
5’ TAGCATACTTA 3’(配列番号47)、
5’ CCAAAAGA 3’(配列番号48)、
5’ CATACTTA 3’(配列番号49)、
5’ CAGACACGACCAAAA 3’(配列番号50)、
5’ TACTTACTGACAGCC 3’(配列番号51)、
5’ AGACACGACCAAAAG 3’(配列番号52)、
5’ ACCAAAAGAAT 3’(配列番号53)、
5’ TGGCCATCAAT 3’(配列番号54)、
5’ TAGCATACTTA 3’(配列番号55)、
5’ CGACCAAAAGAATTC 3’(配列番号56)、
5’ CGACCAAAAGAATTC 3’(配列番号57)、
5’ GATGGCCATCAATTA 3’(配列番号58)、
5’ GATGGCCATCAATTA 3’(配列番号59)、
5’ TCTAGCATACTTACT 3’(配列番号60)、
5’ TCTAGCATACTTACT 3’(配列番号61)、
5’ GAATTCGGATGGCCA 3’(配列番号62)、
5’ GGCCATCAATTAGTG 3’(配列番号63)、
5’ TTCGGATGGCCATCA 3’(配列番号64)、
5’ AGCCAGACAGCGA 3’(配列番号65)、及び
5’ GACAGCCAGACAGCA 3’(配列番号66)から選択される配列を含む。
【0050】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ ACCAAAAGAAT 3’(配列番号45)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’
TGGCCATCAAT 3’(配列番号46)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ TAGCATACTTA 3’(配列番号47)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ CCAAAAGA 3’(配列番号48)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ CATACTTA 3’(配列番号49)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ CAGACACGACCAAAA 3’(配列番号50)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ TACTTACTGACAGCC 3’(配列番号51)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’
AGACACGACCAAAAG 3’(配列番号52)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ ACCAAAAGAAT 3’(配列番号53)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ TGGCCATCAAT 3’(配列番号54)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ TAGCATACTTA 3’(配列番号55)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ CGACCAAAAGAATTC 3’(配列番号56)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ CGACCAAAAGAATTC 3’(配列番号57)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ GATGGCCATCAATTA 3’(配列番号58)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ GATGGCCATCAATTA 3’(配列番号59)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ TCTAGCATACTTACT 3’(配列番号60)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ TCTAGCATACTTACT 3’(配列番号61)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ GAATTCGGATGGCCA 3’(配列番号62)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ GGCCATCAATTAGTG 3’(配列番号63)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ TTCGGATGGCCATCA 3’(配列番号64)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ AGCCAGACAGCGA 3’(配列番号65)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列:5’ GACAGCCAGACAGCA
3’(配列番号66)を含む。
【0051】
いくつかの例では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、上に記載された配列のうちの1つ)のPB2 vRNA領域への(例えば、ハイブリダイゼーションを介した)結合は、PB2 vRNAの全体的な二次RNA構造を破壊する。
【0052】
オリゴヌクレオチド配列は、いずれかの便利な数のDNA、RNA、及びLNAヌクレオチドを含むことができる。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド配列のいくつかの例では、配列は、混合RNA/DNA配列である。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド配列のいくつかの例では、配列は、混合LNA/DNA配列である。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド配列のいくつかの例では、配列は、混合LNA/RNA配列である。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド配列のいくつかの例では、配列は、LNAヌクレオチドのみを含む。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド配列のいくつかの例では、配列は、DNAヌクレオチドのみを含む。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド配列のいくつかの例では、配列は、RNAヌクレオチドのみを含む。
【0053】
特定の例では、主題のオリゴヌクレオチドは、配列中のヌクレオチドのタイプの下記の配置のうちの1つ(例えば、配列番号45~66のうちの1つ)を有する:
Aが8個以上のLNAヌクレオチドの配列である、A、
Bが6~8個のDNAヌクレオチドの配列であり、各Aが3~4個のLNAヌクレオチドの配列である、A-B-A、
Bが7~8個のDNAヌクレオチドの配列であり、各Aが4個のLNAヌクレオチドの配列である、A-B-A、
各Lが1~2個のLNAヌクレオチドの配列であり、各Dが2個のDNAヌクレオチドの配列である、L-D-L-D-L-D-L、
各Lが1~2個のLNAヌクレオチドの配列であり、各Dが1~2個のDNAヌクレオチドの配列である、L-D-L-D-L-D-L、
各Lが1~2個のLNAヌクレオチドの配列であり、各Dが1~3個のDNAヌクレオチドの配列である、L-D-L-D-L-D-L、
各Lが1~2個のLNAヌクレオチドの配列であり、各Dが1~3個のDNAヌクレオチドの配列である、L-D-L-D-L-D-L-D-L、及び
各Lが1~2個のLNAヌクレオチドの配列であり、各Dが1~2個のDNAヌクレオチドの配列である、L-D-L-D-L-D-L-D-L。
【0054】
主題のオリゴヌクレオチド配列は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミデート、及び/またはチオホスホルアミデート結合のような、1つ以上の修飾ヌクレオシド間結合をさらに含み得る。非自然発生ヌクレオシド間結合は、主題のオリゴヌクレオチドの配列のいずれかの便利な位置で含まれ得る。
【0055】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、大文字がLNAヌクレオチドを示し、小文字がDNAヌクレオチド(すなわち、デオキシリボヌクレオチドユニット)を示す、下記の配列のうちの1つを有する:
LNA1:5’ AccAaaAGaaT 3’(配列番号67)、
LNA2:5’ TggCcATcaaT 3’(配列番号68)、
LNA3:5’ TagCAtActtA 3’(配列番号69)、
LNA4:5’ CCAAAAGA 3’(配列番号70)、
LNA5:5’ CATACTTA 3’(配列番号71)、
LNA6:5’ CagaCaCGaCCaaAA 3’(配列番号72)、
LNA7:5’ TAcTtaCTgaCagCC 3’(配列番号73)、
LNA8:5’ AGACacgaccaAAAG 3’(配列番号74)、
LNA9:5’ TACTtactgacaGCC 3’(配列番号75)、
LNA9.2:5’ TACttactgacAGCC 3’(配列番号76)、
LNA10:5’ ACCaaaagAAT 3’(配列番号77)、
LNA11:5’ TGGccatcAAT 3’(配列番号78)、
LNA12:5’ TAGcatacTTA 3’(配列番号79)、
LNA13:5’ CgacCAaaAGaattC 3’(配列番号80)、
LNA14:5’ CGACcaaaagaATTC 3’(配列番号81)、
LNA15:5’ GaTGgCcATcaAttA 3’(配列番号82)、
LNA16:5’ GATGgccatcaATTA 3’(配列番号83)、
LNA17:5’ TcTAgCaTActTacT 3’(配列番号84)、
LNA18:5’ TCTAgcatactTACT 3’(配列番号85)、
LNA19:5’ GAAttcggatgGCCA 3’(配列番号86)、
LNA20:5’ GGCCatcaattaGTG 3’(配列番号87)、
LNA21:5’ TTCGgatggccaTCA 3’(配列番号88)、
LNA22:5’ AGCCagacagCGA 3’(配列番号89)、及び
LNA23:5’ GACAgccagacaGCA 3’(配列番号90)。
【0056】
上に記載されたオリゴヌクレオチド配列の配列変異体も、本開示により包含される。本明細書に記載される配列のいずれかでは、1、2、3、4個以上のヌクレオチドが、向上した阻害活性、修飾剤との複合、等のような、所望の特性を提供するように変異され得ることは、理解されている。
【0057】
いくつかの場合では、本明細書に記載される配列のいずれか1つ(例えば、配列番号45~96のうちの1つ)は、より長い配列中に含まれ、例えば、追加の5’及び/または3’ヌクレオチドを含む。特定の例では、主題のオリゴヌクレオチドは、25個以下、20個以下、19個以下、18個以下、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、または10個以下のヌクレオチドの長さのような、30個以下のヌクレオチドの長さである。
【0058】
いくつかの場合では、主題のオリゴヌクレオチド化合物は、本明細書に記載される配列のうちの1つ(例えば、配列番号45~96のうちの1つ)に対する欠失を有する配列を含む。例えば、1、2、または3個のヌクレオチドが、配列、例えば、配列番号45~96のうちの1つの5’及び/または3’末端から欠失した配列である。いくつかの場合では、欠失配列は、配列番号45~96のうちの1つの5’末端から1個のヌクレオチドが失われている。いくつかの場合では、欠失配列は、配列番号45~96のうちの1つの3’末端から1個のヌクレオチドが失われている。いくつかの場合では、欠失配列は、配列番号45~96のうちの1つの5’末端から2個のヌクレオチドが失われている。いくつかの場合では、欠失配列は、配列番号45~96のうちの1つの3’末端から2個のヌクレオチドが失われている。
【0059】
特定の場合では、オリゴヌクレオチド配列は、標的PSL2配列中の単一ヌクレオチド多型(SNP)をカバーするように設計された変異を含むことができる。いくつかの場合では、オリゴヌクレオチドは、LNA9標的配列でのヌクレオチド変化を含有するPLS2標的配列に対して保護する単一変異部位を含むLNA9の修飾バージョンである。目的のSNP変異は、本明細書に記載される配列のいずれかに適用することができると理解されている。目的の変異配列としては、これらに限定されないが、下記:
5’ TACTTACTGACAGTC 3’(配列番号91)、
5’ TACTTACCGACAGCC 3’(配列番号92)、及び
5’ GGATTTCGGATGGCCA 3’(配列番号93)が挙げられる。
【0060】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、大文字がLNAヌクレオチドを示し、小文字がDNAヌクレオチドを示す、下記の配列のうちの1つを有する:
LNA9.G74C:5’ TACTtactgacaGTC 3’(配列番号94)、
LNA9.T80C:5’ TACTtaccgacaGCC 3’(配列番号95)、及び
LNA19.U56C:5’ GGATttcggatggCCA 3’(配列番号96)。
【0061】
特定の例では、オリゴヌクレオチドは、PSL2構造の特定の領域(例えば、ヌクレオチド34~87に対応するサブ領域)に対応する最大長さを有する。特定の例では、オリゴヌクレオチドの長さは、15個以下のヌクレオチド、14個以下のヌクレオチド、13個以下のヌクレオチド、12個以下のヌクレオチド、11個以下のヌクレオチド、10個以下のヌクレオチド、9個以下のヌクレオチド、8個以下のヌクレオチド、7個以下のヌクレオチド、またはさらにそれ未満のような、20個以下のヌクレオチドである。
【0062】
オリゴヌクレオチドは、当該技術分野において知られる方法(Wagner et al.(1993)、上記、及びMilligan et al.、上記参照)により化学的に合成され得る。オリゴヌクレオチドは、それらの細胞内安定性及び結合親和性を増加させるために、天然ホスホジエステル構造から化学的に修飾され得る。骨格、糖、または複素環塩基の化学を変更する多数のこうした修飾については文献に記載されている。
【0063】
骨格化学における有用な変化には、ホスホロチオエート、非架橋酸素の両方が硫黄で置換される、ホスホロジチオエート、ホスホロアミダイト、アルキルホスホトリエステル、及びボラノホスフェートがある。アキラルホスフェート誘導体としては、3’-O’-5’-S-ホスホロチオエート、3’-S-5’-O-ホスホロチオエート、3’-CH-5’-O-ホスホネート、3’-NH-5’-O-ホスホロアミデート、及びチオホスホルアミデートが挙げられる。ペプチド核酸は、ペプチド結合を含む全リボースホスホジエステル骨格を置換する。糖修飾も、安定性及び親和性を向上させるのに使用される。塩基が天然β-アノマーに対して反転される、デオキシリボースのα-アノマーが使用され得る。リボース糖の2’-OHは、親和性を悪化させることなく耐分解性を提供する、2’-O-メチルまたは2’-O-アリル糖を形成するように変更され得る。複素環塩基の修飾は、適切な塩基対形成を維持しなければならない。いくつかの有用な置換としては、デオキシウリジンのデオキシチミジンでの、5-メチル-2’-デオキシシチジン及び5-ブロモ-2’-デオキシシチジンのデオキシシチジンでの置換が挙げられる。5-プロピニル-2’-デオキシウリジン及び5-プロピニル-2’-デオキシシチジンは、それぞれ、デオキシチミジン及びデオキシシチジンで置換される場合、親和性及び生物活性を増加させることが示されている。
【0064】
オリゴヌクレオチド剤は、いずれかの便利な修飾剤で、例えば、修飾剤の、オリゴヌクレオチド配列の5’-及び/または3’末端との複合により、誘導体化され得る。いくつかの場合では、修飾剤は、細胞取込みを増強する部分(例えば、脂質)である。いずれかの便利な脂質は、主題のオリゴヌクレオチドと複合され得る。いくつかの例では、修飾剤は、任意のリンカーを介して5’または3’末端に結合した脂肪酸である。脂質基は、これらに限定されないが、炭化水素及び脂肪酸の誘導体を含む、脂肪族炭化水素または脂肪酸とすることができ、例としては、ミリスチン(テトラデカン)酸、パルミチン(ヘキサデカン)酸、及びステアリン(オクタデカン)酸のような、14~20個の炭素を有する飽和直鎖化合物、ならびにそれらの対応する脂肪族炭化水素形態、テトラデカン、ヘキサデカン、及びオクタデカンがある。使用され得る他の適切な脂質基の例としては、コレステロールのような、ステロール、置換脂肪酸、及び炭化水素、特にこれらの基の多フッ素化形態がある。脂質基の範囲は、アミン、アミド、エステル、及びカルバメート誘導体のような誘導体を含む。
【0065】
いくつかの場合では、修飾剤は、所望の活性(例えば、本明細書に記載される、RNaseの動員)を有するさらなる核酸配列である。特定の例では、修飾剤は、細胞特異的タンパク質のような、特定の標的へのオリゴヌクレオチドの送達を提供する特異的な結合活性を有する。いくつかの場合では、修飾剤は、目的の細胞特異的標的に特異的に結合する、目的の抗体である。特定の例では、抗体修飾剤は、ヘマグルチニン(HA)標的に特異的に結合する。
【0066】
オリゴヌクレオチド活性剤は、いずれかの便利な形態で使用することができる。いくつかの例では、オリゴヌクレオチド活性剤は、一本鎖である。いくつかの例では、オリゴヌクレオチド活性剤は、二本鎖である。いくつかの例では、オリゴヌクレオチド活性剤は、siRNAである。いくつかの例では、オリゴヌクレオチド活性剤は、shRNAである。いくつかの例では、オリゴヌクレオチド活性剤は、ssRNAである。いくつかの例では、ssRNAの1個以上のヌクレオチドは、LNAヌクレオチドで置換することができる。いくつかの例では、オリゴヌクレオチド活性剤は、ssDNAである。いくつかの例では、ssDNAの1個以上のヌクレオチドは、LNAヌクレオチドで置換することができる。
【0067】
治療方法
本開示の態様は、対象におけるインフルエンザA型ウイルス感染の治療または予防方法を含む。主題のオリゴヌクレオチド化合物は、パッケージングを効率的に破壊し、そうでなければ致死的な疾患をインビボで完全に予防することができる、新たなクラスの抗ウイルス治療薬としての用途を見出す。実施例セクションにおいて示されるように、例示的なオリゴヌクレオチド化合物のインビボ鼻腔内投与は、強力な抗ウイルス有効性をもたらし、マウスにおける致死的IAV感染を予防した。
【0068】
方法の態様は、それを必要とする対象に、対象を感染症について治療または対象における感染を予防するために、治療有効量の主題の化合物を投与することを含む。「治療有効量」とは、所望の生物学的効果(例えば、状態または疾患、インフルエンザA型ウイルス感染の治療または予防)を誘導するのに十分な化合物の濃度を意味する。「治療」とは、宿主に影響を及ぼす状態と関連した症状の少なくとも改善が達成されることを意味し、改善とは、パラメータ、例えば、治療されている状態と関連した症状の程度の少なくとも低減を指すように広範囲の意味で使用される。このようなものとして、治療は、病理学的状態、または少なくともそれと関連した症状が、宿主がその状態、または少なくともその状態を特徴付ける症状をこれ以上患っていないように、完全に阻害される、例えば、発生が予防される、または停止される、例えば、終了される状況も含む。よって治療は、(i)予防、すなわち、臨床症状を発症させないことを含む、臨床症状の発症のリスクを低減すること、例えば、有害な状態までの疾患進行を予防すること、(ii)阻害、すなわち、臨床症状の発症もしくはさらなる進行を停止すること、例えば、活動性疾患(例えば、感染症)を緩和もしくは完全に阻害すること、及び/または(iii)軽減、すなわち、臨床症状の退縮を引き起こすことを含む。インフルエンザA型ウイルス感染の文脈では、「治療する」という用語は、患者試料中のウイルス細胞の数を低減すること、ウイルス細胞の複製を阻害すること、及び感染症と関連した1つ以上の症状を改善することのいずれかまたは全てを含む。
【0069】
治療される対象は、治療される宿主が主題の化合物を使用する治療が可能なものである療法を必要とするものであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、インフルエンザA型ウイルス感染を有する疑いがあるものである。特定の実施形態では、対象は、インフルエンザA型ウイルス感染を有すると診断される。このようなものとして、いくつかの場合では、対象は、ウイルスに感染しているものである。
【0070】
特定の場合では、対象は、ウイルスに感染する危険性があるか、または感染している疑いがあるものである。いくつかの実施形態では、vRNAは、PB2 vRNAである。主題の方法は、対象のインフルエンザA型ウイルス感染を予防するのに使用することができる。「予防」とは、インフルエンザA型ウイルス感染の危険性がある対象が、通常は感染を引き起こすであろう条件下でのウイルスへの曝露にかかわらず、感染していないことを意味する。いくつかの場合では、主題の活性剤(例えば、オリゴヌクレオチド化合物)の投与は、対象を感染に対して、2週間以上、3週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、等のように、1週間以上保護する。複数回用量の主題の化合物は、対象の感染からの長期間にわたる保護を提供する主題の方法に従って投与することができる。タイミング及び投与量は、従来の方法を使用して容易に決定することができる。
【0071】
いくつかの場合では、主題の治療方法は、対象がインフルエンザA型ウイルス感染を有するかを決定または診断するステップを含む。決定ステップは、いずれかの便利な方法を使用して行うことができる。いくつかの場合では、決定ステップは、対象から生体試料を得ることと、試料をウイルス細胞の存在について分析することとを含む。試料は、細胞試料であり得る。決定ステップは、特定の変異を含むウイルス細胞の同定を含むことができる。
【0072】
したがって、様々な対象は、本明細書に記載される主題の化合物及び薬学的組成物を使用する治療が可能であり得る。本明細書で使用されるとき、「対象」及び「宿主」という用語は、相互互換的に使用される。一般的に、こうした対象は「哺乳類」であり、ヒトが目的である。他の対象としては、家庭用ペット(例えば、イヌ及びネコ)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、等)、齧歯類(例えば、マウス、モルモット、ラット、例えば、疾患の動物モデル)、及び非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー及びサル)を挙げることができる。
【0073】
投与される主題の化合物の量は、いずれかの便利な方法を使用して、薬学的に許容される希釈剤、担体、またはビヒクルと関連して所望の効果をもたらすのに十分な量となるように決定することができる。本開示の単位剤形についての仕様は、使用される特定の化合物及び達成される効果、ならびに宿主中の各化合物と関連した薬力学に依存するであろう。
【0074】
いくつかの実施形態では、主題の化合物の有効量は、約50ng/ml~約50μg/ml(例えば、約50ng/ml~約40μg/ml、約30ng/ml~約20μg/ml、約50ng/ml~約10μg/ml、約50ng/ml~約1μg/ml、約50ng/ml~約800ng/ml、約50ng/ml~約700ng/ml、約50ng/ml~約600ng/ml、約50ng/ml~約500ng/ml、約50ng/ml~約400ng/ml、約60ng/ml~約400ng/ml、約70ng/ml~約300ng/ml、約60ng/ml~約100ng/ml、約65ng/ml~約85ng/ml、約70ng/ml~約90ng/ml、約200ng/ml~約900ng/ml、約200ng/ml~約800ng/ml、約200ng/ml~約700ng/ml、約200ng/ml~約600ng/ml、約200ng/ml~約500ng/ml、約200ng/ml~約400ng/ml、または約200ng/ml~約300ng/ml)の範囲の量である。
【0075】
いくつかの実施形態では、主題の化合物の有効量は、約10pg~約100mg、例えば、約10pg~約50pg、約50pg~約150pg、約150pg~約250pg、約250pg~約500pg、約500pg~約750pg、約750pg~約1ng、約1ng~約10ng、約10ng~約50ng、約50ng~約150ng、約150ng~約250ng、約250ng~約500ng、約500ng~約750ng、約750ng~約1μg、約1μg~約10μg、約10μg~約50μg、約50μg~約150μg、約150μg~約250μg、約250μg~約500μg、約500μg~約750μg、約750μg~約1mg、約1mg~約50mg、約1mg~約100mg、または約50mg~約100mgの範囲の量である。その量は、単回投与量または合計一日量であり得る。合計一日量は、10pg~100mgの範囲、または100mg~約500mgの範囲、または500mg~約1000mgの範囲であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、単回用量の主題の化合物が投与される。他の実施形態では、複数回用量の主題の化合物が投与される。複数回用量がある期間にかけて投与される場合、主題の化合物は、1日2回(qid)、1日1回(qd)、1日おきに(qod)、2日おきに、週3回(tiw)、または週2回(biw)、ある期間にかけて投与することができる。例えば、化合物は、1日2回、1日1回、1日おきに、週3回、または週2回、1日~約2年以上の期間にかけて投与することができる。例えば、化合物は、前述の頻度のいずれかで、様々な要素に応じて、1週間、2週間、1か月、2か月、6か月、1年、または2年以上にわたり投与することができる。
【0077】
様々な方法のいずれかを使用して、治療方法が効果的であるかを決定することができる。例えば、主題の方法で治療された個体から得られる生体試料は、ウイルス細胞の存在及び/またはレベルについて分析することができる。対象に対する治療方法の有効性の評価は、いずれかの便利な方法を使用して、治療前、その間、及び/またはその後の対象の評価を含むことができる。主題の方法の態様は、治療に対する対象の治療応答を評価するステップをさらに含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、方法は、治療されている目的の疾患または状態と関連した対象の1つ以上の症状を診断または評価することを含む、対象の状態を評価することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象から生体試料を得ることと、試料を、例えば、目的の(例えば、本明細書に記載される)疾患または状態と関連したウイルス細胞またはその成分の存在について分析することとを含む。試料は、細胞試料であり得る。主題の方法の評価ステップは、いずれかの便利な方法を使用して、主題の化合物の投与前、その間、及び/またはその後に1回以上で行うことができる。特定の場合では、評価ステップは、ウイルス細胞の同定及び/または定量を含む。特定の例では、対象を評価することは、対象がウイルス感染症またはその症状を有するかを診断することを含む。
【0079】
スクリーニング方法
本開示の態様は、例えば、上で論評されるように、本発明の方法において用途を見出す薬剤を同定するように構成されたスクリーニングアッセイも含む。本開示の態様は、候補薬剤を細胞中のインフルエンザA型ウイルスを阻害する能力についてスクリーニングするための方法を含む。いくつかの例では、方法は、PSL2モチーフを含むウイルスRNA(vRNA)を含む試料を候補薬剤と接触させることと、候補薬剤がPSL2モチーフに特異的に結合するかを決定することとを含む。いくつかの場合では、PSL2モチーフに特異的に結合する薬剤は、インフルエンザA型ウイルス感染を有する対象を治療するであろう。評価または決定とは、所定の試験化合物が、動物モデル及び/または臨床アッセイのような、追加のアッセイにおける化合物のさらなる試験が望ましいような、所望の活性を有することを少なくとも予測することを意味する。
【0080】
候補薬剤は、小分子、オリゴヌクレオチド、抗体、及びポリペプチドから選択される。いくつかの例では、決定ステップは、細胞パラメータを検出することを含み、細胞中のパラメータの、候補薬剤と接触していない細胞中と比較した変化は、候補薬剤がPSL2モチーフに特異的に結合することを示す。いくつかの場合では、主題のスクリーニング方法は、SHAPE分析(プライマー伸長により分析される選択的2’-ヒドロキシルアシル化)の方法である。特定の例では、候補薬剤は、オリゴヌクレオチドである。
【0081】
薬物スクリーニングは、インビトロモデル、遺伝子改変細胞もしくは動物、または精製PSL2タンパク質を使用して行われ得る。リード薬剤の作用と競合、これを調整、または模倣する配位子を同定することができる。薬物スクリーニングは、PSL2モチーフの特定の部位に結合する薬剤を同定する。標識インビトロ結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合についての免疫アッセイ、等を含む、多種多様なアッセイがこの目的で使用され得る。本明細書に記載される構造研究から導かれるPSL2の3次元構造の知識は、IAV活性を特異的に阻害する小薬物の合理的設計ももたらすことができる。
【0082】
本明細書において使用される「薬剤」という用語は、PSL2に結合してIAVを阻害する能力を有する、いずれかの分子、例えば、オリゴヌクレオチド、タンパク質、または医薬品を表す。一般的には、複数のアッセイ混合物は、異なる薬剤濃度で並行して分析され、様々な濃度に対する特異的応答が得られる。典型的には、これらの濃度のうちの1つは、陰性対照として、すなわち、ゼロ濃度または検出レベル未満で作用する。
【0083】
候補薬剤は、オリゴヌクレオチド、抗体、ポリペプチド、及び有機分子、例えば、50超~約2,500未満ダルトンの分子量を有する小有機化合物のような、多数の化学クラスを包含する。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基、好ましくは官能化学基のうちの少なくとも2つを含む。候補薬剤は、多くの場合、上記官能基のうちの1つ以上で置換された環式炭素または複素環式構造及び/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。候補薬剤は、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的類似体、またはこれらの組み合わせを含む、生体分子中でも見出される。
【0084】
候補薬剤は、合成または天然化合物のライブラリーを含む多種多様な供給源から得られる。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチド及びオリゴペプチドの発現を含む、多種多様な有機化合物及び生体分子のランダム及び指向性合成には多数の手段が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物、及び動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、入手可能であるか、または容易に作製される。また、天然または合成的に作製されたライブラリー及び化合物は、従来の化学、物理、及び生化学的手段を通して容易に修飾され、コンビナトリアルライブラリーを作製するのに使用され得る。既知の薬理学的薬剤には、構造的類似体を作製するためのアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化、等のような、指向性またはランダム化学修飾が行われ得る。特定の実施形態における目的は、血液脳関門を通過する化合物である。
【0085】
スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、分子のうちの1つ以上は、シグナル生成システムのメンバー、例えば、標識に結合され得、標識は検出可能なシグナルを直接的または間接的に提供することができる。様々な標識としては、これらに限定されないが、放射性同位体、蛍光剤、化学発光剤、酵素、特異的結合分子、粒子、例えば、磁気粒子、等が挙げられる。特異的結合分子は、ビオチン及びストレプトアビジン、ジゴキシン及び抗ジゴキシン、等のような、ペアを含む。特異的結合メンバーについて、相補的メンバーは通常は、既知の手順に従って、検出をもたらす分子で標識されるであろう。
【0086】
様々な他の試薬がスクリーニングアッセイに含まれ得る。これらとしては、最適なタンパク質間結合を促進及び/または非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を低減するのに使用される、塩、中性タンパク質、例えば、アルブミン、洗浄剤、等のような試薬が挙げられる。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤、等のような、アッセイの効率を向上させる試薬が使用され得る。成分の混合物は、必要な結合をもたらすいずれかの順序で添加される。インキュベーションは、いずれかの適切な温度、典型的には4~40℃で行われる。インキュベーション期間は、最適活性について選択されるが、高速ハイスループットスクリーニングを促進するように最適化してもよい。典型的には、0.1~1時間で十分であろう。
【実施例0087】
下記の実施例は、当業者に、本発明をどのように実施及び使用するかの完全な開示及び説明を提供するために記載され、発明者が彼らの発明とみなすものの範囲を限定することも意図せず、下の実験が全てまたは行われた実験のみであることを表すことも意図しない。使用される数値(例えば、量、温度、等)に関して精度を確保する努力がなされたが、いくらかの実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。特に指示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはその近くである。標準的な略語、例えば、bp、塩基対、kb、キロベース、pl、ピコリットル、sまたはsec、秒、min、分、hまたはhr、時間、aa、アミノ酸、kb、キロベース、bp、塩基対、nt、ヌクレオチド、i.m.、筋肉内、i.p.、腹腔内、s.c.、皮下、等が使用され得る。
【0088】
材料及び方法
細胞及びウイルス:HEK293T及びMDCK細胞を、American Type
Culture Collection(Manasass,VA)から入手し、10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)において維持した。インフルエンザA/PR/8/34(PR8)H1N1ウイルスを、8プラスミド逆遺伝学システムを使用して作製した。組織培養された馴化インフルエンザA/Hong Kong/8/68(HK68)H3N2ウイルスを、ATCC(ATCC-VR-1679)から入手した。ウイルスは、10日齢特定病原体不在ニワトリ胚において35℃で増殖及び増幅させた(Charles River Laboratories、SPAEAS)。
【0089】
プラスミド構成物及びクローニング:インフルエンザウイルスA/PuertoRico/8/34(H1N1)[PR8]、A/New York/470/2004(H3N2)[NY470]、A/New York/312/2001(H1N1)[NY312]、A/Brevig Mission/1/1918(H1N1)[1918]、A/California/04/2009(H1N1)[CA09]、A/Vietnam/03/2004(H5N1)[VN1203]、及びA/Anhui/1/2013(H7N9)からの野生型PB2セグメントを含有するプラスミドを使用した。PR8パッケージング変異体vRNAの作製のために、我々は、PR8のPB2遺伝子を含有するpDZプラスミドの変異誘発のためのStratagene QuickChange
XL部位指向性変異誘発キット(Stratagene)を使用した。各変異構成物の配列を、自動化シーケンシングにより確認した。
【0090】
逆遺伝学及びウイルス力価測定:インフルエンザA/Puerto Rico/8/34(PR8)ウイルスを、8プラスミド逆遺伝学システム(Hoffman et al.,2000)を使用して作製した。簡潔には、組換えPR8ウイルスを作製するために、293T/MDCK共培養物の10細胞を、1ugの、ゲノムvRNA及びmRNAの同時合成のための双方向性二重PolI/IIプロモーターシステムを使用するプラスミド内に含有される8個のセグメントの各々のうちの1つで、Lipofectamine 3000(Invitrogen)トランスフェクトした。細胞をトランスフェクションの24時間後に回収し、10日齢ニワトリ胚(Charles River、研究グレード特定病原体不在卵)の尿膜腔に接種した。組換えウイルスのレスキューは、赤血球凝集活性により評価した。各々の新たにレスキューされたウイルスをプラーク力価測定し、変異を変異遺伝子のシーケンシングにより確認した。プラークアッセイは、コンフルエントなMDCK細胞に対して以前に記載されたように(Szretter et al.,2006)実施した。赤血球凝集(HA)アッセイは、96ウェル丸底プレートにおいて室温で、50ulのウイルス希釈液及び50ulのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の七面鳥赤血球の0.5%懸濁液を使用して行った。
【0091】
ウイルス増殖速度:PR8ウイルスについての増殖速度を、10日齢ニワトリ卵の100プラーク形成単位(PFU)のウイルス接種により決定した。接種の72時間後、尿膜腔液中のウイルス力価を、MDCK細胞に対するプラークの力価測定により決定した。
【0092】
パッケージ化vRNAの単離:パッケージ化vRNAをPR8変異ウイルスについて分析するために、10日齢卵に約1000PFUの組換えウイルスを接種し、72時間インキュベートした。尿膜腔液を採取し、上清を低速遠心分離により浄化した。浄化上清を次に、30%スクロースクッション上に積層し、30,000RPMで2.5時間にわたって超遠心分離した(Beckman Rotor SW41)。ペレット化ウイルスを、PBSに再懸濁させ、TRIzol(Invitrogen)抽出した。沈降vRNAを、20ulの最終体積の10mMトリス-HCl(pH8.0)に再懸濁させ、-80℃で保存した。
【0093】
パッケージ化vRNAのqPCR分析:約200ngの抽出vRNAを、ユニバーサル3’プライマー(5’-AGGGCTCTTCGGCCAGCRAAAGCAGG)(配列番号97)及びSuperscript III逆転写酵素(RT)(Invitrogen)を使用して逆転写した。RT産物を10,000倍希釈し、定量的PCR(qPCR)のためのテンプレートとして使用した。別個のPCRを次に、以前に記載されたように(Marsh et al.,2007)セグメント特異的プライマーで実施した。10ul反応混合物は、1ulの希釈RT産物、0.5uMのプライマー濃縮物、ならびにSYBR GreenER色素、200uMのデオキシヌクレオシド三リン酸、熱不安定性UDG、最適化SYBR Green Select Buffer、及びAmpliTaq DNAポリメラーゼUP酵素を含んだSYBR Select Master
Mix(Applied Biosystems)を含有した。相対vRNA濃度をサイクル閾値の分析により決定し、総vRNA量をHAvRNAのレベルの同等化により正規化した後、組込みの割合を野生型vRNAパッケージングのレベルに対して計算した。ウイルスパッケージング結果は、3通り定量化されたvRNAレベルでの、2つの独立したウイルス精製から導かれたvRNA組込み±標準偏差の平均レベル、n=6を表す。
【0094】
マウス感染:6~8週齢雌BALB/Cマウス(Jackson Laboratory)のグループに、イソフルランで浅く麻酔をかけ、50ulの1000PFUの野生型マウス馴化PR8(H1N1)ウイルス(ATCC)、PB2変異PR8組換えウイルス、または無菌PBSで鼻腔内感染させた。体重を毎日測定し、動物を10日目までまたは体重減少が20%を超えた際に人道的に犠死させた。全ての動物飼育及び実験手順は、National Institutes of Health Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animalsに従い、Stanford University Administrative
Panel on Laboratory Animal Careにより承認される。
【0095】
ロックド核酸(LNA)設計及び調製:ロックド核酸(LNA)を含有するオリゴヌクレオチドを、Exiqonからカスタム合成した。大文字は、LNAを示す。小文字は、典型的な(非ロックド)DNAヌクレオチドを示す。全てのオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含有した。LNAは、セグメントPB2のPSL2構造に含有される異なる配列と相補的となるように設計された。LNA8及び9は、RNAse-H動員のための一続きの6~8個のDNAヌクレオチドを含有するように設計される。全てのLNAの配列を下に示す。
LNA1:5’ AccAaaAGaaT 3’(配列番号67)
LNA2:5’ TggCcATcaaT 3’(配列番号68)
LNA3:5’ TagCAtActtA 3’(配列番号69)
LNA4:5’ CCAAAAGA 3’(配列番号70)
LNA5:5’ CATACTTA 3’(配列番号71)
LNA6:5’ CagaCaCGaCCaaAA 3’(配列番号72)
LNA7:5’ TAcTtaCTgaCagCC 3’(配列番号73)
LNA8:5’ AGACacgaccaAAAG 3’-RNase-H活性を含む(配列番号74)
LNA9:5’ TACTtactgacaGCC 3’-RNase-H活性を含む(配列番号75)
LNA9.2:5’ TACttactgacAGCC 3’(配列番号76)
LNA10:5’ ACCaaaagAAT 3’(配列番号77)
LNA11:5’ TGGccatcAAT 3’(配列番号78)
LNA12:5’ TAGcatacTTA 3’(配列番号79)
LNA13:5’ CgacCAaaAGaattC 3’(配列番号80)
LNA14:5’ CGACcaaaagaATTC 3’(配列番号81)
LNA15:5’ GaTGgCcATcaAttA 3’(配列番号82)
LNA16:5’ GATGgccatcaATTA 3’(配列番号83)
LNA17:5’ TcTAgCaTActTacT 3’(配列番号84)
LNA18:5’ TCTAgcatactTACT 3’(配列番号85)
LNA19:5’ GAAttcggatgGCCA 3’(配列番号86)
LNA20:5’ GGCCatcaattaGTG 3’(配列番号87)
LNA21:5’ TTCGgatggccaTCA 3’(配列番号88)
LNA22:5’ AGCCagacagCGA 3’(配列番号89)
LNA23:5’ GACAgccagacaGCA 3’(配列番号90)
【0096】
下記のオリゴヌクレオチドは、PSL2配列中の単一ヌクレオチド多型(SNP)をカバーするように設計された。下記の例示的な配列は、そのPLS2標的配列がLNA9標的配列でのヌクレオチド変化を含有するいくつかの鳥及びコウモリ株に対して保護する単一変異部位を含むLNA9の修飾バージョンである。同様の設計を本明細書に記載される配列のいずれかに適用することができることが理解されている。
【0097】
LNA9.G74C:5’ TACTtactgacaGTC 3’(配列番号94)
LNA9.T80C:5’ TACTtaccgacaGCC 3’(配列番号95)
LNA19.U56C:5’ GGATttcggatggCCA 3’(配列番号96)
【0098】
抗ウイルスアッセイ:LNAを、RNAseフリー水中で100μMで再構成し、分取し、単回使用前に-20℃で貯蔵した。Lipofectamine 3000(Life Technology)を使用して、LNAを細胞に、製造業者のプロトコルに従って1μM、100nM、10nM、及び1nMの最終濃度でトランスフェクトした。予防的抗ウイルスアッセイについて、10MDCK細胞を、指定LNAでトランスフェクトされる24時間前に6ウェルプレートに播種した。細胞を次に、トランスフェクションの4時間、2時間、または1時間後、0.01MOIのPR8(H1N1)またはHK68(H3N2)ウイルスで感染させた。感染後の治療抗ウイルス評価について、MDCK細胞を、記載されるようなPR8またはHK68で感染させた。LNAを次に、感染の4時間、2時間、または1時間後にトランスフェクトした。感染の48時間後、上清を回収し、ウイルス力価をプラークアッセイにより決定した。
【0099】
vRNAのインビトロ転写:各野生型単離物(PR8、1918、VN1203、NY470、NY312、CA09、及びA/Anhui/1/2013 H7N9)及びPR8パッケージング変異体クローンについて、PB2cDNAを、T7プロモーター下でセグメント特異的プライマーを使用してプラスミドから増幅させた。増幅cDNAを、InvitrogenDNAゲルキットを使用してゲル精製した。vRNAを次に、T7-MEGAscriptを使用して、インビトロ転写により作製した。SHAPEのためのvRNAを、MEGAclear(Thermofisher,cat.no.AM1908)により、キャピラリー電気泳動により確認された純度及び長さで精製した。
【0100】
vRNAのsf-SHAPE分析:PB2 vRNAを、100mMのHEPES、pH=8中(100mMのNaCl、2.5mMのMgCl、1分間65℃、室温で5分冷却、20~30分間37℃)で折り畳んだ。NMIAでの2分のアシル化(Wilkinson et al.,2006)及び逆転写(RT)プライマー伸長を、1分間45℃、25分間52℃、5分間65℃で、以前に記載されたように(Mortimer and Weeks,2009)行った。全ての標識化プライマーに6FAMを使用した。これらのプロトコルに対する例外は、下記の通りであった:(i)アシル化後のRNA精製は、エタノール沈降ではなく、RNA C&Cカラム(Zymo Research)を使用して行い、(ii)SHAPEプライマー緩衝液の添加前及び後に、混合液は2~5分間室温に置き、これはRT転写収率を顕著に向上させ、(iii)DNA精製は、96ウェル形式のSephadex G-50サイズ排除樹脂を使用して行い、次に真空遠心分離により濃縮し、プライマーのより顕著な除去をもたらし、(iv)ddGTP RNAシーケンシング反応では2pmolのRNAを使用した。
【0101】
ABI 3100 Genetic Analyzer(POP6マトリックスで充填した50cmキャピラリー)を、下記のパラメータに設定した:電圧15kV、T=60℃、注入時間=15秒。GeneScanプログラムを使用して、9.75ulのHi-Diホルムアミドに再懸濁させた精製DNAからなり、0.25ulのROX 500内部サイズ標準(ABI Cat.602912)が添加された各試料についてのデータを取得した。PeakScannerパラメータを、下記のパラメータに設定した:スムージング=なし、ウィンドウサイズ=25、サイズコーリング=ローカルサザン、ベースラインウィンドウ=51、ピーク閾値=15。断片250及び340を、ROX500標準から計算的に除外した(Akbari et al.,2008)。PeakScannerからのデータを次に、FAST(SHAPEトレースの高速分析)、カスタムプログラムを使用することによりSHAPEデータへと加工した(Pang et al.,2011)。FASTは、外部サイジング標準としてddGTPラダー、及びローカルサザン方法を使用して、ハンドリングエラーによるシグナルの差について自動的に補正し、シグナルの減衰について調整し、断片長さをヌクレオチド位置に変換する(Pang et
al.,2011及びPang et al.,2012)。
【0102】
RNA構造パラメータ:2.6及び-0.8kcal/molの勾配及び切片パラメータを提案されるように(Deigan et al.,2009)最初に試し、0.0kcal/molに近い(例えば、~-0.3)小さな切片は、(10%の最大エネルギー差以内で)最適でない構造の生成が少ないことが見出された。このパラメータ微差は、自動化FASTアルゴリズムによる実験及び対照データセット間で達成される正確なフィッティングによるものであり得る。その現行の実施では、FASTは、RNA構造に組み込まれ、MFC(Microsoft Foundation Classes)を必要とする。RNA構造は、RNAViz 2(De Rijk et al.,2003)を使用して描画及び色付けし、Adobe Illustratorで仕上げた。
【0103】
Mutate-and-map実験のための構成物設計、RNA合成、及び化学修飾:二本鎖DNAテンプレートを、以前記載されたような自動化MATLABスクリプト(NA_Thermo、「https:」続いて「//github.」続いて「com/DasLab/NA_thermo」で入手可能)により設計されるDNAオリゴマーのPCRアセンブリにより調製した(Kladwang and Cordero et al.,2011)。Mutate-and-map(M)のための構成物は、ワトソン-クリック同等物に対する全ての単一変異体を含む。変異/レスキューのための補償的変異体は、提案された二次構造における塩基対形成に基づいて設計した(Tian et al.,2014)。インビトロ転写反応、RNA精製、及び定量化ステップは、以前に記載された通りとした(Kladwang and Cordero et al.,2011)。1次元化学マッピング、mutate-and-map(M)、及び変異/レスキューを、96ウェル形式で、以前に記載されたように実施した(Kladwang
and VanLang et al.,2011、Kladwang and Cordero et al.,2011、Cordero et al.,2013)。簡潔には、RNAを加熱及び冷却して二次構造不均質性を除去し、次に適切に折り畳んでSHAPE試薬(5mg/mLの1-メチル-7-ニトロイサト酸無水物(1M7))でインキュベートし(Mortimer and Weeks,2007)、修飾反応物をクエンチし、RNAをポリ(dT)磁気ビーズ(Ambion)及びFAM標識化Tail2-A20プライマーにより回収し、RNAを70%エタノール(EtOH)により2回洗浄し、ddHOに再懸濁させ、続いてcDNAへの逆転写及び加熱NaOH処理を行ってRNAを除去した。最終cDNAライブラリーを磁気ビーズ分離により回収し、すすぎ、Hi-Diホルムアミド(Applied Biosystems)中でROX-350ラダーで溶出し、キャピラリー電気泳動シーケンサー(ABI3100)に装填した。データ加工、構造モデリング、及びデータ蓄積:HiTRACEソフトウェアパッケージバージョン2.0を使用し、CEデータを分析した(MATLABツールボックス及びウェブサーバーの両方が利用可能(Yoon et al.,2011、Kim et al.,2013))。トレースアラインメント、ベースラインサブトラクション、配列割当て、プロファイルフィッティング、減弱補正、及び正規化を、以前に記載されたように達成した(Kim et al.,2009、Kladwang et al.,2014)。配列割当ては、シーケンシングラダーからの照合で手動で達成した。データ駆動型二次構造モデルは、RNA構造パッケージバージョン5.4(Mathews et al.,2004)のFoldプログラムを使用して、2.6kcal/mol及び-0.8kcal/molの擬似エネルギー勾配及び切片パラメータで得た。Mデータセットについての2次元Zスコアマトリックス、及び螺旋的ブートストラップ信頼度値を、以前に記載されたように計算した(Tian et al.,2014、Kladwang
and VanLang et al.,2011)。Zスコアマトリックスを、1.0kcal/mol及び0kcal/molの勾配及び切片での塩基対的な擬似自由エネルギーとして使用した。二次構造画像をVARNAにより生成した(Darty et al.,2009)。1次元マッピング、mutate-and-map、及び変異/レスキューを含む、全ての化学マッピングデータセットは、RNA Mapping Database(「http:」続いて「//rmdb.stanford.」続いて「edu」)に蓄積されている(Cordero et al.,2012)。
【0104】
LNA標的化vRNAのSHAPE分析:PR8セグメントPB2のDNAテンプレートを、DNAオリゴマーのPCRアセンブリにより調製し、インビトロ転写反応、RNA精製、及び定量化ステップは、以前に記載された通りとした(Kladwang and
VanLang et al.,2011)。1次元SHAPE化学マッピングを、96ウェルプレート形式で、下記を例外として上で記載されたように行った:RNAを、記載されるように変性して再度折り畳んだ後、100nMの各々調製されたLNAを、折り畳まれたRNAに添加し、5mg/mLのSHAPE試薬1M7(1-メチル-7-ニトロイサト酸無水物)でインキュベートした。修飾クエンチング、RNA回収、再懸濁、逆転写、cDNAシーケンシング、及びデータ加工を、記載されるように行った。Kladwang and VanLang et al.,2011を参照されたい。
【0105】
実施例1:
IAVセグメントPB2パッケージングシグナルのSHAPE特徴分析は保存構造を同定する
プライマー伸長により分析される選択的2’-ヒドロキシルアシル化(SHAPE)及び計算的モデリングを、IAVセグメントPB2ゲノムvRNAに適用し、構造化RNAドメインを検索した。株A/Puerto Rico/8/1934(H1N1)「PR8」からのインビトロ転写全長(-)センスPB2 vRNAを、溶液中で折り畳み(Pang et al.,2011)、柔軟な一本鎖状態で存在するヌクレオチドと優先的に反応する求電子性SHAPE試薬を使用して調査した(Wilkinson et al.,2006)(図1)。この分析は、PB2を含む、全てのセグメントについての(-)センスRNAに対して(+)センスでのRNA二次構造保存について高い可能性を見出した最近の生物情報学研究(Priore et al.,2012、Moss et
al.,2011)と一貫して、2341ntのvRNAのほとんどが広く構造化されていないことを明らかにした(図2)。これらの以前の研究は、末端コード領域(TCR)を分析せず、代わりにPB2 5’TCRの末端の手前の80個のヌクレオチドで止まっている。SHAPE誘導モデリングは、ヌクレオチド34~87((-)センス表記)を含む、安定なRNA二次構造、最も注目すべきは、本明細書でパッケージングステムループ2(PSL2)(図1A)と称される、ステムループモチーフを含有するこの領域中のいくつかのエリアを示した。このセグメントは、未解明のメカニズムを介した変異分析を通したPB2パッケージングにおいて以前に示されたヌクレオチドのセットを含んだ(図1A~1B、環状ヌクレオチド参照)(Gao et al.,2012、Marsh
et al.,2008、Liang et al.,2008、Gog et al.,2007)。これらの従来の変異がPSL2構造の破壊を通して作用するという仮説を支持し、変異体のSHAPE分析は、全てが野生型PSL2構造を破棄した異なる立体構造をもたらした(図1C図3)。PSL2を包含する60ヌクレオチド領域は、異なるサブタイプ及び種由来の季節性及びパンデミック株の間で単一ヌクレオチドレベルでの100%近い配列保存を示し(図4)、インタクトなPSL2構造を維持するための厳しい生物学的要件の存在を示す。PB2 vRNA内の異なる下流配列はPSL2の二次構造を変え得るので、PSL2の構造的保存は、高病原性鳥H5N1及びパンデミック1918H1N1株を含む、様々なIAV株及びサブタイプから単離される全長野生型PB2
vRNAに対してSHAPE分析を行うことにより探究された。ステムループ内の2つの分岐するヌクレオチドの存在及び隣接する配列における顕著な分岐にかかわらず、PSL2ステムループ構造は、これらの多様な種及びサブタイプにわたるPB2RNAのSHAPE誘導モデリングにおいて回収された(図1D~1F)。
【0106】
図1A図1Fは、全長(-)センス野生型PB2 vRNAについて行われたSHAPE化学マッピングを示す。色は、SHAPE反応性を示し、ヌクレオチドが一本鎖である確率に比例する。全ての構造は、5’末端配列構造を強調するように切り取られる。エネルギー=SHAPE擬似自由エネルギーパラメータを使用してRNA構造モデリングアルゴリズムにより生成される決定構造のΔG自由エネルギー値。(図1A)株A/Puerto Rico/8/1934「PR8」(H1N1)からの野生型PB2RNA二次構造。色分けされた丸は、同義的変異がPB2パッケージングに影響を及ぼすことが報告されたヌクレオチド部位に対応する(Gao et al.,2012、Marsh et al.,2011)。(図1B)qPCRにより決定される、(図1a)における同義的変異体のパッケージング効率。3通り行われた結果。エラーバー=±SD。下の枠は、変異体名及び対応する変異変化を示す。ゲノム(-)センス指向で示されるヌクレオチド番号付け。(図1C)PB2パッケージング欠損変異体vRNA、m757(G44C)及びm745(A80U)のSHAPE決定構造。黒色枠=同義的変異の部位、(図1D図1F)異なるサブタイプを含む、パンデミック及び高病原性株からの野生型PB2のSHAPE決定構造:(図1D)1918パンデミック(A/Brevig Mission/1/1918(H1N1))、(図1E)高病原性鳥(A/Vietnam/1203/2004(H5N1))、(図1F)2009パンデミック「豚」(A/California/04/2009(H1N1))。
【0107】
図2、パネルA~Bは、全長PB2 vRNAのSHAPE反応性を示す。(図2、パネルA)IAV株A/Puerto Rico/8/1934(H1N1)からの全長(-)センスPB2 vRNAについてのヌクレオチド位置の関数としての平均SHAPE反応性(ウィンドウビンサイズ=100nt)。PSL2領域(青色で強調される、nt34~86)は、その第3の位置が保存され、vRNA内の最低SHAPE反応性のうちの1つを有する、高密度のコドンを有する、5’パッケージングシグナルドメインを包含する。PSL2後の領域は、比較的に構造化されていないが、ヌクレオチド1400と1500との間にRNA構造の存在について別の潜在的な部位を含有する。興味深いことに、この第2の内部領域は、2011年の生物情報学研究でも構造的要素を含有することが予測された(参考文献19)。(図2、パネルB)(図2a)からのPSL2領域の拡大図。ウィンドウビンサイズ=10nt。
【0108】
図3A図3Eは、パッケージング欠損変異が野生型SHAPE反応性を破壊することを示す。左:WTに対する変化としてプロットされた変異体SHAPE反応性。ヌクレオチド番号付けは、(-)センスvRNAの5’末端から開始する。オレンジ色バーは変異の部位を示す。エネルギー値は、SHAPE擬似自由エネルギーパラメータを使用してRNA構造モデリングアルゴリズムにより生成される予測構造のΔG自由エネルギーを表す。右:PR8株(H1N1)からの全長(-)センス変異体PB2 vRNAのSHAPE決定構造。画像は、5’末端領域を強調するように切り取られる。(図3A)野生型。パッケージング欠損変異体:(図3B)m744b(AG83、85UA)。(図3C)m745(A80U)。(図3D)m55c(CU35、36UC)。(図3E)m757(G44C)。
【0109】
図4は、PSL2構造を含有するヌクレオチド配列の保存を示す。多様なインフルエンザA型ウイルスサブタイプ及び株にわたる核酸配列アラインメントのグラフ表示(「weblogo.」続いて「berkeley」続いて「.edu」)。全体的な高さは、そのヌクレオチド位置での配列保存を表し、各位置内の記号の高さは、その部位での各ヌクレオチドの相対度数を示す。黒色枠=PSL2領域。アラインメントに含まれる配列:高病原性A/Brevig Mission/1/1918(H1N1)、パンデミック「豚インフルエンザ」A/California/04/2009(H1N1)、現代ヒトA/New York/470/2004(H3N2)、ヒトA/Puerto Rico/8/1934(H1N1)、高病原性鳥A/Vietnam/03/2004(H5N1)、ヒトA/Hong Kong/8/1968(H3N2)、及びヒトA/New
York/312/2001(H1N1)。(-)センス指向で番号付けされたRNAヌクレオチド。上記配列に対応するPB2の末端5’領域の配列アラインメント。網掛け青色枠は、PSL2RNA二次構造要素を包含する。黒色斑点は、分岐ヌクレオチド部位を示す。
【0110】
Mutate-and-Map戦略は、PSL2構造を検証し、新規パッケージング変異体を予測する。
PSL2RNA構造のSHAPE分析をさらに試験し、インビボ試験に必要な追加の情報を提供する変異を明らかにするために、多次元化学マッピング(Kladwang and Das,2010)方法をPSL2セグメントに適用した。第一に、mutate-and-map(M)測定は、PB2パッケージングにとって重要であることが以前に見出されているヌクレオチドでの変化を含む、各ステム残基の全体的変異後の化学反応性パターンの破壊を確認した(図5A、備考欄参照)(Marsh et al.,2008、Gog et al.,2007)。これらのMデータに基づく自動化計算分析は、SHAPE誘導PSL2構造を高い信頼度で回収し(図1C図3図5B図5D)、構造モデルをさらに検証した。第二に、予測試験として、補償的変異は、初期パッケージング欠損変異により破壊された野生型ステムループ構造における塩基対を復元するように設計された(図6、パネルA~B)。これらの変異-レスキュー多様体は、実際に、PSL2SHAPEパターンを復元し、モデル化構造のインビトロ検証における塩基対解像を提供し、PSL2構造の役割をインビボで試験するための配列多様体を提案した。
【0111】
図5A図5Dは、PSL2RNA二次構造の2次元Mutate-and-Map(M2)分析を示す。(図5A)全体的単一ヌクレオチド変異及び得られる化学的アクセシビリティのマッピングは、RNAの3次元構造における相互作用を明らかにする。PR8株PB2からのPSL2要素の単一ヌクレオチド解像での88個の単一変異にわたる、グレースケール(黒=最高SHAPE反応性)でプロットされた、化学的アクセシビリティ。反応性ピーク(左から右)は、PB2RNAの5’から3’末端までヌクレオチドに対応する。(Marsh et al.,2008により報告されるような)既知パッケージング変異に対応するヌクレオチド部位は、青色で右に示される。赤色矢印は、M2分析により予測される顕著なパッケージング欠損変異体部位を示す。(図5B)Zスコア分析(各残基での平均からの標準偏差の数値)より孤立したmutate-and-mapデータの強い特徴。Zスコアは、各ヌクレオチド反応性について、全ての変異体にわたるこのヌクレオチドの平均反応性を引き、標準偏差で割ることにより計算した(output_Zscore_from_rdat in HiTRACE)。四角は、mutate-and-mapデータにより導かれる二次構造モデルを示す。濃色記号は、構造化ヌクレオチド対形成の証拠を強調する。(図5C)ZスコアをRNA構造モデリングアルゴリズムに組み込むことから誘導される5’パッケージングシグナル領域(nt30~93)についてのRNA二次構造:緑色パーセント値として与えられるブートストラップ信頼度推定値。ブートストラップ値は、構造的信頼度の数値的に正確な指標を提供する。低いブートストラップ信頼度値は、代替構造モデルの存在を示す。(図5D)ブートストラップは、グレースケール網掛けで示される各塩基対についての値を支持する。
【0112】
図6は、以前に記載されたPR8PB2変異体に対する補償的変異の設計を示す。(図6、パネルA)以前に記載された同義的変異体(m757、m745、m55c)は、PSL2構造にマッピングされる。(図6、パネルB)補償的変異(m55c-comp、m745-comp、及びm757-comp)は、SHAPE及びmutate-and-map化学分析に基づき野生型PSL2構造を復元すると予測される部位で設計された。黒色枠内のヌクレオチドは、補償的変異の部位を示す。(-)センスvRNA指向が示される。構造を復元するのに非同義的変化が必要とされた変異について、コード化タンパク質配列における変更が示される。
【0113】
溶液中で観察されるPSL2ステムループ構造が細胞環境中のウイルスパッケージングと関連していたかを試験するために、Gog et al.,2007及びMarsh et al.,2008により報告された同じ9つの同義的変異(図1A図1B図7パネルA)ならびにM分析により特徴付けられる4つの新たな同義的変異を(図7、パネルB)を、PR8PB2遺伝子を含有するpDZプラスミドにクローニングした(Marsh et al.,2008、Liang et al.,2008、Gog et
al.,2007)(図8)。ここではPR8バックグラウンド中の9つの以前から知られる変異体のパッケージング効率は、WSN33ウイルス15において元々説明されたものと同等であった(図7、パネルC)。これらのうち、変異体m55c、m757、m745、及びm744bは、PSL2のステム領域内のそれらの位置に基づき、最も顕著な障害を示すことが予測された(図1C図3A図3F図7)。対照的に、PB2パッケージングに対して影響がない公表された変異(例えば、m731)は、構造化されていない頂点ループにマッピングしたか、またはPSL2の外に該当し、その構造的完全性を変更しなかった(図9A)(Marsh et al.,2008)。M分析によりインビトロPSL2構造に対して顕著な影響を有すると同定された3つの新規同義的変異体(m74-1、m74-2、及びm68)(図5A)は、PB2パッケージングの顕著な減少を示し、野生型PSL2構造と比較してSHAPE反応性に無視してよい変化をもたらした変異部位は、野生型様パッケージング効率レベルをもたらした(例えば、m56)(図7、パネルD)。
【0114】
図7は、PR8PB2 vRNAの単一高度保存コドンの同義的変異を示す。(図7、パネルA)PB2パッケージングに関与する以前に公表された同義的変異。上線は親PR8vRNA配列((+)センス指向)であり、変異単一ヌクレオチドは下線上の赤色の太文字である。導入された変異の番号付け及び用語体系は、Marsh et al.,2008及びGog et al.,2007による報告に基づく。黄色ハイライト領域は、PSL2構造を含有する配列を示す。(図7、パネルB)M2分析から同定された同義的変異(補足図4a参照)のpDZプラスミドへのクローニングのためのプライマー配列の設計。配列は(+)センス指向である。強調されたヌクレオチド=変異部位。(図7、パネルC~D)(図7、パネルC)以前に公表された同義的変異体、及び(図7、パネルD)M2分析同定同義的変異体についての親野生型PB2に対する変異体PB2パッケージングの割合を表すパッケージング効率。2つの独立した実験からの結果、3通り行われたアッセイ(n=6)。エラーバーは±SDを表す。
【0115】
図8は、PB2パッケージング変異体用語体系及び対応する変異の部位を示す。1)Marsh et al.,2008及びGog et al.,2007による報告に基づく、(青色で示される)PB2パッケージングに関与する以前に公表された同義的変異、ならびに2)(黒色で示される)PSL2構造設計単一変異体及び(赤色で示される)二重補償的変異体からの変異の名称及び部位を示す変異用語体系チャート。導入された変異の番号付け及び用語体系は、ゲノム(-)センスvRNAに基づく。変異がタンパク質コードの変化をもたらす例は、同義的(SYN)または非同義的(非SYN)フィールドにより示される。
【0116】
図9A図9Cは、PSL2構造に対する同義的変異の効果を示す。左:PR8株からの全長(-)センスPB2 vRNAについてのsf-SHAPE分析により決定されるPB2パッケージング変異体の予測RNA二次構造。明瞭さのためのみに、野生型構造は、右上隅の枠に示される。右:野生型に対する変異体反応性の変化として示されるSHAPE反応性グラフ。図見出しの下に示されるエネルギー値及びパッケージング効率パーセント。変異体:(図9A)m731。(図9B)m751。(図9C)m748。以前に記載された変異体の各々についてのPB2組込みのパッケージング効率パーセントを青色でハイライトする。
【0117】
補償的変異は、セグメントPB2についてのウイルスパッケージング(図10、パネルA~C、図6、パネルA~B)だけでなく、IAVパッケージングにおけるPB2の提案された階層的役割(Muramoto et al.,2006、Gao et al.,2012、Marsh et al.,2008)と一貫して、有害変異により影響されることが以前に報告された他のセグメントもレスキューした(図10、パネルD~F)。PB2パッケージングの回収に加えて、補償的変異は、欠損変異により引き起こされるウイルス力価減少の完全またはほぼ完全レスキューをもたらした(図10、パネルG~I)。いくつかの非同義的補償的変異は、他より良好にPB2パッケージングを復元することができ(m757-compと比較して、m745-comp及びm55c-comp)(図10、パネルA~C)、あるいは外因性付加を通したPB2タンパク質機能の不完全な復元を反映した。こうした外因性付加は、いくつかの非同義的変異がPSL2構造及びタンパク質配列の両方に影響を及ぼしたので、必要であった。PSL2構造の最も鋭敏な試験は、補足の野生型PB2タンパク質付加を必要としないパッケージング実験からのものであった。計算的列挙及び多次元変異-レスキュー実験(Tian et al.,2014)に基づき、共に同義的であり、野生型PB2タンパク質付加を不要にする、単一変異-レスキュー置換ペアが見出された(m52/m65、図11、パネルA~B、図12、パネルs、図13)。各変異を単独で行うこと(m52及びm65)は、4%PB2組込み未満のパッケージング効率及び4log10を超える力価減少、パッケージング欠損ウイルスについて以前に報告されたもの(すなわち、2log10)を上回る重度の障害をもたらした(図11、パネルC~D、図7、パネルc、図10)。変更された配列を有するにもかかわらず、PSL2構造を復元した二重変異m52/65-comp株に共に導入される場合、補償的変異は、パッケージング効率及びウイルス力価の両方を野生型レベルまで復元した。
【0118】
図10、パネルA~Iは、ウイルスパッケージング及び力価に対するPR8PB2パッケージング欠損変異体における補償的変異の効果を示す。(図10、パネルA~C)パッケージング欠損及び補償的変異体PB2 vRNAのパッケージング効率。非同義的変化が必要な補償的変異について、野生型PB2タンパク質発現プラスミドを、ウイルスレスキュー中にコトランスフェクトした。pWT=野生型PR8PB2タンパク質についてコードする発現プラスミド。wt親PR8ウイルスとの比較においてPB2 vRNAパッケージングの割合として与えられる値。2つの独立した実験からの結果、3通り行われたアッセイ(n=6)。(図パネルD~F)パッケージング欠損及び補償的変異体ウイルスのパッケージング効率ならびに、他の相互作用セグメント、PB1、PA、NP、及びMXのパッケージングに対するそれらの効果。3通り行われたアッセイ(n=6)。(図10、パネルG~I)プラークアッセイによるウイルス力価。PFU/mLでの結果、3通り行われたアッセイ。
【0119】
図11は、多次元化学マッピングが新規PB2パッケージング欠損及び補償的変異体パートナーを明らかにすることを示す。(図11、パネルA)1Dデータ誘導モデルからの塩基対形成を試験ならびに予測される良好な同義的PSL2欠損及び補償的変異体ペアを同定するための個別及び補償的二重変異のレスキュー(Mutate-Map-Rescue)分析での全体的単一ヌクレオチド変異マッピングからの電気泳動図結果。PR8株PB2からのPSL2要素の単一ヌクレオチド解像での88個の単一変異にわたる、グレースケール(黒=最高SHAPE反応性)でプロットされた、化学的アクセシビリティ。反応性ピーク(左から右)は、PB2RNAの5’から3’末端までヌクレオチドに対応する。Mutate-Rescueペアの完全なリストについては図12を参照されたい。(図11、パネルB)PSL2構造上の単一変異体m52(G52U)及びm65(C65A)、ならびに二重m52/65レスキューペアの変異設計。(図11、パネルC)同義的単一及び二重変異体mutate-and-rescueペアのパッケージング効率。wt親PR8ウイルスとの比較においてPB2 vRNAパッケージングの割合として与えられる値。2つの独立した実験からの結果、3通り行われたアッセイ(n=6)。(図11、パネルD)PFU/mLでのウイルス力価、3通りの結果。エラーバーは±SDを表す。
【0120】
図12パネルa~tは、2次元Mutate-Map-Rescue(M2R)分析を示す。変異/レスキュー結果は、PSL2RNA二次構造を検証する。1Dデータ誘導モデルからの塩基対形成を試験ならびに良好なPSL2欠損及び補償的変異体ペアを同定するための補償的二重変異でのSHAPE分析の電気泳動図。PR8株PB2からのPSL2要素の単一ヌクレオチド解像での88個の単一変異にわたる、グレースケール(黒=最高SHAPE反応性)でプロットされた、化学的アクセシビリティ。各々の試験されたペアについて、野生型、単一変異体1、単一変異体2、及び補償的二重変異体の「カルテット」は、比較のためにグループ化される。(図12、パネルa~r)非同義的mutate-and-rescueペア。全ての枠で囲まれていない電気泳動図は、破壊及び/またはレスキューが観察されなかったペアである。青色枠は、良好な欠損及びレスキュー変異を示す。(図12、パネルs)二重同義的mutate-and-rescueペア。緑色枠=良好な同義的欠損及びレスキューペア。(図12、パネルt)非同義的mutate-and-rescueペアについてのパッケージング効率。wt親PR8ウイルスとの比較においてPB2 vRNAパッケージングの割合として与えられる値。2つの独立した実験からの結果、3通り行われたアッセイ(n=6)。エラーバーは±S.Dを表す。
【0121】
図13は、2次元Mutate-Map-Rescue(M2R)変異体についてのプライマー配列の設計を示す。配列番号(28~43)上から下。M2R変異体のpDZプラスミドへのQuickChange変異クローニングに使用されるプライマー配列。配列は(+)センス指向である。左フィールドは、同義的(Syn.)または非同義的(非syn.)変化を示す。強調されたヌクレオチド=変異部位。枠内の変異体プライマーセットは、二重同義的変異体パートナー、m52及びm65を示す。
【0122】
インビボモデルにおけるPSL2構造の関連性を試験するために、6~8週齢BALB/Cマウスに、1000PFUの野生型PR8ウイルスまたはPSL2構造を破壊もしくは復元することが予測される変異を有する株を鼻腔内接種した。PSL2破壊変異-m745変異体株(20%パッケージング効率)または重度パッケージング欠損単一変異体ウイルス、m52(<4%パッケージング効率)-に感染したマウスは、PBS対照と比較して、それぞれ、体重減少または生存率のいずれかにおいて、低減した疾患の臨床的徴候を示すか、またはこれを示さなかった(図14、パネルA~B)。際立って、PSL2構造を復元する補償的変異を含むことは、ウイルス病原性をレスキューした:m52/65-comp及びm745-compに感染した動物は、野生型PR8に感染したマウスと同等の死亡プロファイル及び生存曲線を示した(図14、パネルA~B)。APLACガイドラインと一貫して、全てのマウスは、20%超の体重減少に到達後に人道的に犠死させた。
【0123】
図14パネルA~Bは、パッケージング欠損ウイルスがインビボで弱毒化されることを示す。単一PSL2破壊及び補償的PSL2復元二重変異体ウイルスに感染したマウスの体重減少及び生存パーセント。6~8週齢BALB/C雌マウスを、1000PFUのPR8野生型(wt)ウイルス、パッケージング欠損単一変異体ウイルス、m52及びm745、補償的二重変異体ウイルス、m52/65及びm745-comp、またはPBS対照に鼻腔内感染させた。マウスを、0日目体重減少パーセント及び生存パーセントについて毎日モニタリングした。2つの独立した実験、条件当たり6匹のマウスの平均としての結果。(図14、パネルA)体重減少パーセント。(図14、パネルB)(図14、パネルA)に描写される個別コホートのカプラン-マイヤー生存プロット。
【0124】
実施例2:
PSL2構造の治療設計及び標的化は、IAV感染をインビトロ及びインビボで阻害する
PSL2媒介性ウイルスパッケージングを標的とする治療可能性を探究するために、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含有する9つのロックド核酸(LNA)(Vester and Wengel,2004)を、要素の全体的なRNA二次構造を破壊し、これによりウイルス産生を阻害することが予測される主要残基に対して設計した(図15、パネルA)。設計されたLNAのうちの2つ、LNA8及びLNA9は、配列において、それぞれ、LNA6及びLNA7と同一であるが、RNase-H活性化に最適化された6~7個の非修飾(非ロックド)DNAヌクレオチドを有する。第一に、PSL2RNA二次構造に対してLNA結合が有する影響を評価するために、トウプリンティング及びSHAPE化学マッピングを、LNAの存在下でPB2 vRNAについて行った。抗ウイルスアッセイ結果での実証では、LNA6~9にコードされる配列は、野生型PSL2構造を結合及び破壊する最大の能力を示した(図16)。
【0125】
図15、パネルA~Dは、PSL2RNA構造を標的とするロックド核酸が、インビトロ及びインビボで強力な抗ウイルス活性を示すことを示す。(図15、パネルA)PSL2構造の異なる領域に対して設計された補償的ロックド核酸(LNA)の位置。(図15、パネルB)LNAを抗ウイルス活性についてスクリーニングするために、MDCK細胞を、0.01MOIのPR8(H1N1)ウイルスまたはA/Hong Kong/8/68(H3N2)ウイルスでの感染前の1時間にわたるLipofectamineトランスフェクションにより、100nMの各指定LNAで予備処理した。感染の48時間後、上清を回収し、ウイルス力価をプラークアッセイにより決定した。2つの独立した実験からの結果、3通り行われたアッセイ(n=6)。(図15、パネルC)滴定濃度(100nM、10nM、1nM)のLNA9での予備処理(RX)対感染後処理の時間経過。WT+Lipo=Lipofectamine対照での感染。予備処理:6ウェルプレート中のコンフルエントなMDCK細胞を、感染の2時間前または4時間前のいずれかにLNA9で処理した。処理された上清を指定の時点で取り出し、細胞を0.01MOIのwtPR8ウイルスに1時間感染させた。感染後処理について:MDCK細胞を、0.01MOIのPR8ウイルスに1時間感染させ、その後、上清を取り換え、細胞を感染の2または4時間前のいずれかにLNA9で処理した。上清を48時間後に回収し、ウイルス力価をプラークアッセイにより3通り決定した。図15、パネルdは、ウイルス感染マウスの生存に対する鼻腔内LNA処理の効果を示す。マウスに、PR8ウイルス感染の12時間前に、20ugのLNA9、スクランブルLNA、またはPBS(非感染対照)を鼻腔内投与した。全てのマウスは、8hpi及び36hpiで2つの追加の処理を受けた(条件当たりマウスn=7)。
【0126】
図16A図16Bは、LNA-RNA結合についてのSHAPE分析を示す。(図16A)PR8PB2 vRNAの存在下でLNA1、2、4、5、6/8、及び7/9(100nM)に行われたSHAPE分析の電気泳動プロファイル。S1、肝炎C型ウイルスIRES RNAと相互作用する小分子を、RNA結合の対照として追加した。左の欄、SHAPE試薬、1M7なしでの非標識化反応。右:標識試薬あり。(図16B)滴定濃度のLNAにおけるLNA-vRNA組み合わせについて行われるSHAPEの電気泳動プロファイル。各LNAについて、左セットの欄は、標識試薬なしである。
【0127】
次に、2つの異なるIAVサブタイプにわたるPSL2のLNA媒介性標的化の抗ウイルス可能性を決定する第1のパイロット実験において、MDCK細胞を、100nMの各LNAで予備処理し、0.01MOIの野生型PR8(H1N1)ウイルスまたは組織培養馴化A/Hong Kong/8/68(HK68)(H3N2)ウイルスのいずれかでの感染前の1時間にわたるLipofectamine(商標)トランスフェクションにより送達した。感染の48時間後、上清を回収し、ウイルス産生をプラークアッセイにより測定した(図15、パネルB)。PSL2の頂点ループのみに対して特異的なLNA(LNA1、LNA4)は、ウイルス力価に対する効果をほとんど~全く有さなかった。同様に、PSL2の3’塩基を標的とするLNA3及び5も、ウイルス産生を阻害しなかった。対照的に、LNA6による頂点ループ及び中間バルジの両方のヌクレオチドカバレッジは、PR8について2log10超の力価損失をもたらした(図15、パネルA~B)。LNA8、LNA6のRNase-H活性化コピーは、両方のウイルスに対する最大3logのさらにより大きな抗ウイルス活性をもたらした。最も驚くべきことには、LNA9、LNA7のRNase-H活性化コピーは、最も強い抗ウイルス能力を有し、ウイルス産生を、PR8及びHK68に対して、それぞれ、5log及び4log近く低下させた。
【0128】
最適な候補LNAを特定したので、LNA9の抗ウイルス活性の処理時間経過及び濃度パラメータをさらに調査した。MDCK細胞を、一回用量のLNA9の10倍希釈物で、0.01MOIの野生型PR8ウイルスでの感染の2または4時間前、あるいは、感染の2または4時間のいずれかに処理した。LNAで予め処理された細胞は、最も強力な抗ウイルス応答(4log超)を有し、最も低い希釈(1nM)でも強いウイルス阻害(2log超)を示した(図15、パネルC)。感染後治療の時間が増加するにつれ、抗ウイルス活性が減少する傾向があったが、試験された最も遅い添加時点でも、ウイルス力価の3log超抑制が達成された。
【0129】
実施例3:
インビボ有効性実験:長期単回用量予防
Balb/C雌マウス(5マウス/グループ)を、致死用量の野生型PR8ウイルスでの感染の3日前(-3日目)または感染の1日前(-1日目)のいずれかに、単回用量の20ugLNA9で予め鼻腔内処理した。マウスを、体重減少、臨床スコア、及び生存について毎日モニタリングした。図17、パネルAは、時間に伴うマウスの生存パーセントを示す。図17、パネルBは、投与後の時間に伴う体重減少パーセントを示す。
【0130】
感染の3日前の20ugLNA9の単回投与は、致死的インフルエンザ疾患からマウスを完全に保護した。未処理対照マウスは、それらが25%超の体重を失った場合、平均5.5日で、人道的に犠死させた。対照的に、予備処理グループは、最小の体重減少を示し、疾患の臨床的徴候がほとんど~全くなく、感染前の体重までの完全に回復した。
【0131】
この結果は、感染の数日前に投与される単回の吸入可能な用量のLNA9が、致死的疾患に対する長期保護を提供することができることを示し、主題の化合物が、インフルエンザ蔓延及びパンデミック中の予防処置において用途を見出し得ることを示す。
【0132】
実施例4:
薬物の存在下での連続継代後の、オセルタミビル及びLNA9に対するインフルエンザウイルスの感受性:薬物選択実験
オセルタミビル(タミフル)は、市場で最も広く使用され、備蓄されるニューラミニダーゼ阻害剤(NAI)である。全てのNAIと同様に、オセルタミビルは、薬物を収容するウイルスニューラミニダーゼ(NA)タンパク質における立体的構造再配置を必要とする。この再配置に影響を及ぼすNAタンパク質にけるいずれかの変異は、オセルタミビルの結合親和性を低減し、よって薬物有効性を低減する。とりわけ、(用語体系に応じてH275Y変異としても知られる)H274Y変異体は、オセルタミビル耐性と最もよく関連付けられる。免疫低下患者におけるH274Y変異の急速な選択は、最終手段のNAI薬、ぺラミビルの臨床的失敗をもたらし得、免疫低下宿主における多剤耐性ウイルスについての選択が、以前に考えられたよりも一般的であり得ることを示す。これは、最近のオセルタミビル耐性及びNAI耐性ウイルスの拡散と共に、一般的なNAIの使用を再評価する必要性を示す。新たなクラスの抗ウイルスの開発は、ヒトの健康に及ぼし得る未来のインフルエンザパンデミックの有害な影響を低減するためには急務である。
【0133】
PSL2ステムループを含有するセグメントPB2中の配列領域は、広範囲の宿主種からのIAVサブタイプ、株、及び単離物にわたり高度に保存され、その保存についての厳しい生物学的条件を反映する可能性が高い。この領域のSHAPE分析は、異なるサブタイプ及び宿主由来の季節性及びパンデミックウイルスの間でPSL2構造の維持を確認し、この構造要素が新規汎遺伝子型治療標的となり得る(よってLNA9がIAV単離物に対する広域スペクトルの可能性を有する)ことを強く示した。また、主題のLNAが、その変異能力に対して強い制約を明確に有する、高度に保存されたウイルスゲノムRNA標的を対象とするので、PSL2を標的とする主題のLNAは、NAIと比較して耐性の発達に対するより高い障壁を有することが期待される。
【0134】
薬物圧力下での連続継代後のLNA9対オセルタミビルに対するインフルエンザウイルスの感受性を調査した。オセルタミビルは、プラーク低減アッセイにより決定されるように、薬物処理の継代1でPR8に対して41nMの初期IC50を有した。増加する量の薬物での6回のみのウイルス継代後、オセルタミビルのIC50は、50uM-1000倍の増加倍率まで急増した。図18、パネルA~Dを参照されたい。比較において、LNA9の存在下でのウイルスの10回継代後、IC50は18から16pMまで安定を保った。図19、パネルA及びB。
【0135】
LNA9はまた、薬物耐性ウイルスを治療するのに使用することができる。A/WSN/33(H1N1)ウイルスの薬物耐性変異体を、H274Y耐性変異を含有するようにNA遺伝子を変異させた逆遺伝学ウイルスレスキューシステムを使用して作製した。このウイルスに対して、オセルタミビルは53uMのIC50を有する。重要なことに、LNA9は、WSN H274Yウイルスに対するその効力及び有効性をピコモル活性で維持した。図19、パネルC。この結果は、PSL2標的化LNAでのNAI耐性ウイルスの治療処置ための強力な証拠である。この結果はまた、異なるIAV単離物に対するLNA9の活性を強調する。
【0136】
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【0137】
前述の発明は、理解の明瞭さの目的のための例証及び例示により、いくらか詳細に説明されたが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、変更及び変形が行われ得ることは、当業者には容易に明らかとなる。
【0138】
したがって、前述は、本発明の原理を単に例証するものである。当業者は様々なアレンジを考案することができ、これは本明細書において明示的に説明または図示されていないが、本発明の原理を体現し、その精神及び範囲内に含まれることが明らかとなるであろう。さらに、本明細書に列挙される全ての例及び条件言語は、主に、読者が、本発明の原理及び当該技術分野を前進させるために発明者より与えられる概念を理解するのを助けることを意図し、こうした具体的に列挙される例及び条件に限定されないものと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、及び実施形態、ならびにこれらの具体例を列挙する本明細書の全ての記述は、これらの構造的及び機能的両方の同等物を包含することを意図している。加えて、こうした同等物は、現在知られている同等物及び将来開発される同等物の両方、すなわち、構造にかかわらず、同じ機能を行うように開発されたいずれかの要素を含むことが意図される。本発明の範囲は、したがって、本明細書で図示及び説明される実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の実施形態により体現される。
【0139】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本明細書に記載される開示は、下記の項によっても説明される。
項1.PB2 vRNAと相補的なオリゴヌクレオチド配列を含み、その領域が、PB2
vRNAの5’末端コード領域の(-)センス表記中のヌクレオチド34~87を含む、オリゴヌクレオチド化合物、またはその塩。
項2.PB2 vRNAの領域と相補的な少なくとも8個のヌクレオシドサブユニットを含むオリゴヌクレオチド配列を含む、項1に記載の化合物。
項3.オリゴヌクレオチドが、PB2 vRNAの領域のパッケージングステムループ2(PSL2)モチーフの領域と相補的である、項1~2のいずれか1つに記載の化合物。項4.オリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミデート、及びチオホスホルアミデート結合から選択されるヌクレオシド間結合を含む、項1~3のいずれか1つに記載の化合物。
項5.オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間結合の全てが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミデート、チオホスホルアミデート、及びホスホジエステル結合から選択される、項1~4のいずれか1つに記載の化合物。
項6.オリゴヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチドを含む、項1~5のいずれか1つに記載の化合物。
項7.オリゴヌクレオチドが、
5’ ACCAAAAGAAT 3’(配列番号45)、
5’ TGGCCATCAAT 3’(配列番号46)、
5’ TAGCATACTTA 3’(配列番号47)、
5’ CCAAAAGA 3’(配列番号48)、
5’ CATACTTA 3’(配列番号49)、
5’ CAGACACGACCAAAA 3’(配列番号50)、
5’ TACTTACTGACAGCC 3’(配列番号51)、
5’ AGACACGACCAAAAG 3’(配列番号52)、
5’ ACCAAAAGAAT 3’(配列番号53)、
5’ TGGCCATCAAT 3’(配列番号54)、
5’ TAGCATACTTA 3’(配列番号55)、
5’ CGACCAAAAGAATTC 3’(配列番号56)、
5’ CGACCAAAAGAATTC 3’(配列番号57)、
5’ GATGGCCATCAATTA 3’(配列番号58)、
5’ GATGGCCATCAATTA 3’(配列番号59)、
5’ TCTAGCATACTTACT 3’(配列番号60)、
5’ TCTAGCATACTTACT 3’(配列番号61)、
5’ GAATTCGGATGGCCA 3’(配列番号62)、
5’ GGCCATCAATTAGTG 3’(配列番号63)、
5’ TTCGGATGGCCATCA 3’(配列番号64)、
5’ AGCCAGACAGCGA 3’(配列番号65)、及び
5’ GACAGCCAGACAGCA 3’(配列番号66)から選択される配列を含む、項1~6のいずれか1つに記載の化合物。
項8.オリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチドである、項7に記載の化合物。
項9.オリゴヌクレオチドが、
LNA1:5’ AccAaaAGaaT 3’(配列番号67)、
LNA2:5’ TggCcATcaaT 3’(配列番号68)、
LNA3:5’ TagCAtActtA 3’(配列番号69)、
LNA4:5’ CCAAAAGA 3’(配列番号70)、
LNA5:5’ CATACTTA 3’(配列番号71)、
LNA6:5’ CagaCaCGaCCaaAA 3’(配列番号72)、
LNA7:5’ TAcTtaCTgaCagCC 3’(配列番号73)、
LNA8:5’ AGACacgaccaAAAG 3’(配列番号74)、
LNA9:5’ TACTtactgacaGCC 3’(配列番号75)、
LNA9.2:5’ TACttactgacAGCC 3’(配列番号76)、
LNA10:5’ ACCaaaagAAT 3’(配列番号77)、
LNA11:5’ TGGccatcAAT 3’(配列番号78)、
LNA12:5’ TAGcatacTTA 3’(配列番号79)、
LNA13:5’ CgacCAaaAGaattC 3’(配列番号80)、
LNA14:5’ CGACcaaaagaATTC 3’(配列番号81)、
LNA15:5’ GaTGgCcATcaAttA 3’(配列番号82)、
LNA16:5’ GATGgccatcaATTA 3’(配列番号83)、
LNA17:5’ TcTAgCaTActTacT 3’(配列番号84)、
LNA18:5’ TCTAgcatactTACT 3’(配列番号85)、
LNA19:5’ GAAttcggatgGCCA 3’(配列番号86)、
LNA20:5’ GGCCatcaattaGTG 3’(配列番号87)、
LNA21:5’ TTCGgatggccaTCA 3’(配列番号88)、
LNA22:5’ AGCCagacagCGA 3’(配列番号89)、
LNA23:5’ GACAgccagacaGCA 3’(配列番号90)、
LNA9.G74C:5’ TACTtactgacaGTC 3’(配列番号91)、及び
LNA9.T80C:5’ TACTtaccgacaGCC 3’(配列番号92)から選択される配列を含み、
大文字がLNAヌクレオチドを示し、小文字がDNAヌクレオチドを示す、項7に記載の化合物。
項10.オリゴヌクレオチドが、少なくとも5個のデオキシリボヌクレオチドユニットを含み、RNaseを動員することができる、項1~9のいずれか1つに記載の化合物。
項11.化合物のPB2 vRNAの領域への結合が、PB2 vRNAの全体的な二次RNA構造を破壊する、項1~10のいずれか1つに記載の化合物。
項12.化合物が、増強された細胞取込みを有するオリゴヌクレオチド複合体である、項1~11のいずれか1つに記載の化合物。
項13.化合物が、オリゴヌクレオチド-脂質複合体である、項12に記載の化合物。
項14.化合物が、細胞特異的タンパク質を含むオリゴヌクレオチド複合体である、項1~12のいずれか1つに記載の化合物。
項15.細胞中のインフルエンザA型ウイルスの阻害方法であって、PSL2モチーフを有するウイルスRNA(vRNA)を含む試料を、PSL2モチーフに特異的に結合してインフルエンザA型ウイルスを阻害する有効量の薬剤と接触させることを含む、方法。
項16.薬剤が、vRNAのPSL2モチーフと相補的な少なくとも8個のヌクレオシドサブユニットを含むオリゴヌクレオチド化合物、またはその塩である、項15に記載の方法。
項17.薬剤が、項1~14のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチド化合物である、項15または16に記載の方法。
項18.試料中のvRNAが、PB2 vRNAである、項15~17のいずれか1つに記載の方法。
項19.試料を薬剤と接触させることが、ウイルスの少なくとも2log10の力価損失をもたらす、項15~18のいずれか1つに記載の方法。
項20.薬剤が、vRNAのPSL2モチーフの全体的な構造を破壊する、項15~19のいずれか1つに記載の方法。
項21.vRNAが、ビリオンまたは細胞から単離される、項15~19のいずれか1つに記載の方法。
項22.vRNAが、ビリオンまたは感染細胞中に含まれる、項15~19のいずれか1つに記載の方法。
項23.試料が、インビトロである、項15~22のいずれか1つに記載の方法。
項24.試料が、インビボである、項15~19または22のいずれか1つに記載の方法。
項25.対象におけるインフルエンザA型ウイルス感染の治療または予防方法であって、それを必要とする対象に、ウイルスRNA(vRNA)のPSL2モチーフに特異的に結合する有効量の活性剤を含む薬学的組成物を投与することを含む、方法。
項26.vRNAが、PB2 vRNAである、項25に記載の方法。
項27.活性剤が、PB2 vRNAの領域と相補的な少なくとも8個のヌクレオシドサブユニットを含むオリゴヌクレオチド配列を含む化合物である、請求項25~26のいずれか1つに記載の方法。
項28.薬剤が、項1~14のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチド化合物である、項25~27のいずれか1つに記載の方法。
項29.対象が、インフルエンザA型ウイルス感染の危険性があり、オリゴヌクレオチド化合物の投与が、対象を感染に対して1週間以上(例えば、2週間以上、3週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、等)保護する、項25~28のいずれか1つに記載の方法。
項30 投与が、有効用量のオリゴヌクレオチド化合物の1週間に1回、2週間に1回、または1か月に1回の投与を含む、項29に記載の方法。
項31.投与が、対象の試料中のウイルスの少なくとも2log10の力価損失をもたらす、項25~30のいずれか1つに記載の方法。
項32.活性剤が、増強された細胞取込みを有するオリゴヌクレオチド複合体である、項25~30のいずれか1つに記載の方法。
項33.活性剤が、細胞特異的タンパク質を含むオリゴヌクレオチド複合体である、項25~31のいずれか1つに記載の方法。
項34.薬学的組成物が、細胞取込みの増強剤を含む、項25~31のいずれか1つに記載の方法。
項35.薬学的組成物が、第2のオリゴヌクレオチド活性剤及び抗ウイルス剤から選択される追加の活性剤をさらに含む、項25~31のいずれか1つに記載の方法。
項36.活性剤が、siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、またはアンチセンスDNAである、項25~31のいずれか1つに記載の方法。
項37.対象が、インフルエンザA型ウイルス感染の危険性があり、方法が、感染を予防する、項25~31のいずれか1つに記載の方法。
項38.対象が、インフルエンザA型ウイルス感染またはその疑いがあると診断され、方法が、感染を治療する、項25~31のいずれか1つに記載の方法。
項39.細胞中のインフルエンザA型ウイルスを阻害する能力について候補薬剤をスクリーニングするための方法であって、
PSL2モチーフを含むウイルスRNA(vRNA)を含む試料を候補薬剤と接触させることと、
候補薬剤がPSL2モチーフに特異的に結合するかを決定することと、を含み、
PSL2モチーフに特異的に結合する薬剤が、細胞中のインフルエンザA型ウイルスを阻害する、方法。
項40.候補薬剤が、小分子、核酸、及びポリペプチドから選択される、項39に記載の方法。
項41.決定ステップが、細胞パラメータを検出することを含み、細胞中のパラメータの、候補薬剤と接触していない細胞中と比較した変化が、候補薬剤がPSL2モチーフに特異的に結合することを示す、項40に記載の方法。
項42.PSL2モチーフに特異的に結合する薬剤が、インフルエンザA型ウイルス感染を有する対象を治療する、項39~41のいずれか1つに記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
【配列表】
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【外国語明細書】